特許第5738451号(P5738451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5738451含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法およびイオン性化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738451
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法およびイオン性化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 303/40 20060101AFI20150604BHJP
   C07C 311/48 20060101ALI20150604BHJP
   C07D 233/58 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   C07C303/40
   C07C311/48
   C07D233/58
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-83149(P2014-83149)
(22)【出願日】2014年4月14日
(62)【分割の表示】特願2009-84284(P2009-84284)の分割
【原出願日】2009年3月31日
(65)【公開番号】特開2014-196303(P2014-196303A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2014年4月14日
(31)【優先権主張番号】特願2008-317429(P2008-317429)
(32)【優先日】2008年12月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597065282
【氏名又は名称】三菱マテリアル電子化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】八柳 博之
(72)【発明者】
【氏名】小西 隆史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】本田 常俊
【審査官】 吉田 直裕
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−529477(JP,A)
【文献】 国際公開第00/65913(WO,A1)
【文献】 Jie Zhang et al.,Direct methylation and trifluoroethylation of imidazole and pyridine derivatives,Chem. Comm.,2003年,p.2334-2335
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 303/40
C07C 311/00−311/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法であって、
下記式(2)で表される含フッ素スルホニルイミド酸又は下記式(3)で表される含フッ素スルホニルイミド酸塩を、下記式(4)で表される硫酸ジアルキル又は下記式(5)で表される炭酸ジアルキルによりアルキル化することを特徴とする含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法。
(RfSONR ・・・(1)
(RfSONH ・・・(2)
(RfSON・M ・・・(3)
(RO)SO ・・・(4)
(RO)CO ・・・(5)
但し、上記式(1)〜(3)において、Rfは、フッ素又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基である。また、上記式(3)において、Mは、Li,Na,Kのいずれか一種の元素である。さらに、上記式(1)、上記式(4)及び上記式(5)において、Rは、炭素数1以上のアルキル基である。
【請求項2】
上記式(2)で表される含フッ素スルホニルイミド酸又は上記式(3)で表される含フッ素スルホニルイミド酸塩に対してモル比1〜50倍の上記式(4)で表される硫酸ジアルキル又は上記式(5)で表される炭酸ジアルキルを加えてアルキル化することを特徴とする請求項1に記載の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法。
【請求項3】
含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の溶解度が100g/l以下の溶媒を加えて、前記アルキル化することを特徴とする請求項1又は2に記載の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法。
【請求項4】
前記アルキル化を酸性条件下で行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法。
【請求項5】
前記アルキル化後に水を加えて、未反応の前記硫酸ジアルキルを分解することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法によって、含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物を製造する工程と、
前記含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物により、第3級アミンをアルキル化する工程と、を含むことを特徴とするイオン性化合物の製造方法。
【請求項7】
前記第3級アミンが、トリアルキルアミン、アルキルイミダゾール、アルキルピリジン、アルキルピロリジン又はアルキルピペリジンであることを特徴とする請求項6に記載のイオン性化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法およびイオン性化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スルホン酸誘導体であるN−アルキルビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドとして、アルキル基がメチル基(CH)であり、ペルフルオロアルキル基がトリフルオロメチル基(CF)又はノナフルオロブチル基(C)であるN−メチルビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びN−メチルビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドが知られている。
【0003】
そして、N−アルキルビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドの製造方法としては、下記の非特許文献1及び非特許文献2が知られている。具体的に、非特許文献1には、オルト酢酸トリメチル(CHC(OCH)をメチル化剤として、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミド酸をメチル化するN−メチルビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドの製造方法が開示されている。なお、非特許文献1には、ペルフルオロアルキル基として、トリフルオロメチル基(CF)及びノナフルオロブチル基(C)が開示されている。
【0004】
また、非特許文献2には、ジアゾメタン(CH)をメチル化剤として、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミド酸をメチル化するN−メチルビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドの製造方法が開示されている。なお、非特許文献2には、ペルフルオロアルキル基として、ノナフルオロブチル基(C)が開示されている。
【0005】
さらに、N−アルキルビス(フルオロスルホニル)イミドとして、アルキル基がメチル基(CH)及びエチル基(C)であるN−メチルビス(フルオロスルホニル)イミド及びN−エチルビス(フルオロスルホニル)イミドが知られており、その製造方法としては非特許文献3に記載のビス(フルオロスルホニル)イミド銀塩とヨウ化アルキルとの反応による方法が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】CHEM.COMMUN.,2003,2334−2335
【非特許文献2】Chemiker−Zeitung,96.Jahrgang(1972)Nr.10
【非特許文献3】Inorganic Chemistry,Vol.4,No.10,1965,1446−1449
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、非特許文献1に開示されているN−メチルビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドの製造方法では、メチル化剤であるオルト酢酸トリメチルが原料であるビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミド酸によって分解されるという副反応が生じるため、収率が低いという問題があった。また、上記副反応により生成するジメチルエーテルは可燃性であるため、取り扱い上、特段の注意が必要であった。
【0008】
また、非特許文献2に開示されているN−メチルビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドの製造方法では、メチル化剤であるジアゾメタンが爆発性を有する気体であるため、取り扱い上、特段の注意が必要であった。また、非特許文献3に開示されているN−アルキルビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法は、原料として使用するビス(フルオロスルホニル)イミド銀塩が高価であり、コストの面で問題があった。
【0009】
さらに、これまでに知られている含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物は少なく、炭素数2,3のペルフルオロアルキル基を有するN−アルキルビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミド、炭素数が2以上のアルキル基を有するN−アルキルビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミド、及び炭素数が3以上のアルキル基を有するN−アルキルビス(フルオロスルホニル)イミドが合成された事例は、報告されていなかった。
【0010】
ところで、イオン液体は、特に電池やキャパシタの電解質、反応溶媒や触媒等として期待されている。このイオン液体の従来の製造方法は、例えば下記反応式に示すように、含フッ素スルホニルイミド酸の塩と、イミダゾリウム臭化物塩のような第4級アミンのハロゲン化物塩とを塩交換する方法が一般的である。
【0011】
【化1】
【0012】
しかしながら、上記反応式に示すような従来のイオン液体の製造方法では、目的物であるイオン液体が塩を溶解させるため、副生成物の塩(MX)を完全に除去するのは困難であった。したがって、従来のイオン液体の製造方法では、イオン液体を高純度・高収率で製造することが困難であるという問題があった。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、特に炭素数2,3のペルフルオロアルキル基又は炭素数2以上のアルキル基を有するN−アルキルビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミド並びに炭素数3以上のアルキル基を有するN−アルキルビス(フルオロスルホニル)イミドを提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、収率が高く、取り扱いが容易な含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法を提供することを目的とする。
なお、本発明において含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物とは、N−アルキルビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミド及びN−アルキルビス(フルオロスルホニル)イミドを意味する。
【0015】
さらに、本発明は、純度及び収率が高いイオン性化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1] 下記式(1)で表される含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法であって、
下記式(2)で表される含フッ素スルホニルイミド酸又は下記式(3)で表される含フッ素スルホニルイミド酸塩を、下記式(4)で表される硫酸ジアルキル又は下記式(5)で表される炭酸ジアルキルによりアルキル化することを特徴とする含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法。
(RfSONR ・・・(1)
(RfSONH ・・・(2)
(RfSON・M ・・・(3)
(RO)SO ・・・(4)
(RO)CO ・・・(5)
但し、上記式(1)〜(3)において、Rfは、フッ素又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基である。また、上記式(3)において、Mは、Li,Na,Kのいずれか一種の元素である。さらに、上記式(1)、上記式(4)及び上記式(5)において、Rは、炭素数1以上のアルキル基である。
【0017】
[2] 上記式(2)で表される含フッ素スルホニルイミド酸又は上記式(3)で表される含フッ素スルホニルイミド酸塩に対してモル比1〜50倍の上記式(4)で表される硫酸ジアルキル又は上記式(5)で表される炭酸ジアルキルを加えてアルキル化することを特徴とする前項1に記載の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法。
[3] 含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の溶解度が100g/l以下の溶媒を加えて、前記アルキル化することを特徴とする前項1又は2に記載の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法。
[4] 前記アルキル化を酸性条件下で行うことを特徴とする前項1乃至3のいずれか一項に記載の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法。
[5] 前記アルキル化後に水を加えて、未反応の前記硫酸ジアルキルを分解することを特徴とする前項1乃至4のいずれか一項に記載の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法。
【0018】
[6] 前項1乃至5のいずれか一項に記載の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法によって、含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物を製造する工程と、
前記含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物により、第3級アミンをアルキル化する工程と、を含むことを特徴とするイオン性化合物の製造方法。
[7] 前記第3級アミンが、トリアルキルアミン、アルキルイミダゾール、アルキルピリジン、アルキルピロリジン又はアルキルピペリジンであることを特徴とする前項6に記載のイオン性化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物によれば、ハロゲン及びアルカリ金属フリーな純度の高いイオン液体の原料として期待されるN−アルキルビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミド及びN−アルキルビス(フルオロスルホニル)イミドを提供することができる。
【0020】
本発明の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法によれば、上記式(4)で表される硫酸ジアルキル又は上記式(5)で表される炭酸ジアルキルをアルキル化剤として用いるため、上記式(1)で表される含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物を収率よく製造することができる。また、可燃性ガスの使用及び発生がなく、取り扱い上、特段の注意が必要ないため、取り扱いが容易な製造方法を提供することができる。
【0021】
本発明のイオン性化合物の製造方法によれば、含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物をアルキル化剤として、アルキル化を受けてカチオンを生成する化合物をアルキル化するため、イミドアニオンとのイオン性化合物を一段階の反応で合成することができる。また、含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物は、ハロゲン及びアルカリ金属フリーなイオン液体の合成原料であるため、高純度のイオン液体を高い収率で製造することができる。特に、炭素数2,3のペルフルオロアルキル基を有するN−アルキルビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドを原料としてイオン性化合物を合成した際に、融点が100℃以下となる多種類のイオン液体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物について詳細に説明する。
【0023】
本発明の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物は、下記式(6)で表される含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物から選択された少なくとも1種の化合物である。
(RfSONR ・・・(6)
但し、上記式(6)において、Rfは、フッ素または炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基である。
また、Rは、炭素数1以上のアルキル基である。
【0024】
上記式(6)で表される含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物において、Rが炭素数1のメチル基としては、N−メチルビス(フルオロスルホニル)イミド((FSONCH)、N−メチルビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド((CFSONCH)、N−メチルビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド((CSONCH)、N−メチルビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド((CSONCH)、N−メチルビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド((CSONCH)が挙げられる。
【0025】
ここで、アルキル基(R)がメチル基の場合には、特に炭素数2又は3のペルフルオロアルキル基(Rf)であるものはこれまでに知られておらず、また、イオン液体を合成する原料として好ましい。すなわち、N−メチルビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド((CSONCH)、N−メチルビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド((CSONCH)が特に好ましい。
【0026】
また、上記式(6)で表される含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物は、Rfが炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基であり、かつRが炭素数2以上のアルキル基であるものはこれまでに知られておらず、またイオン液体を合成する原料として好ましい。例えば、Rが炭素数2のエチル基としては、N−エチルビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド((CFSONC)、N−エチルビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド((CSONC)、N−エチルビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド((CSONC)、N−エチルビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド((CSONC)が挙げられる。また、Rが炭素数3のプロピル基としては、N−プロピルビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド((CFSONC)、N−プロピルビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド((CSONC)、N−プロピルビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド((CSONC)、N−プロピルビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド((CSONC)が挙げられる。
【0027】
さらに、上記式(6)で表される含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物は、Rfがフッ素であり、かつRが炭素数3以上のアルキル基であるものはこれまでに知られておらず、またイオン液体を合成する原料として好ましい。例えば、Rが炭素数3のプロピル基として、N−プロピルビス(フルオロスルホニル)イミド((FSONC)、Rが炭素数4のブチル基として、N−ブチルビス(フルオロスルホニル)イミド((FSONC)が挙げられる。
【0028】
本発明では、アルキル基(R)が炭素数1のメチル基である場合には、炭素数2又は3のペルフルオロアルキル基(Rf)とし、また、アルキル基(R)が炭素数2以上の場合には、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基(Rf)とし、アルキル基(R)が炭素数3以上の場合には、フッ素または炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基(Rf)とすることにより、これまでに知られていない含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物を提供することができる。さらに、これらを原料として一段階の反応でイオン性化合物を合成することにより、ハロゲン及びアルカリ金属フリーのイオン液体を得ることができる。
【0029】
特に、炭素数2,3のペルフルオロアルキル基を有するN−アルキルビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドは、これを原料としてイオン性化合物を合成した際に、融点が100℃以下となる多種類のイオン液体を得ることができることから、ハロゲン及びアルカリ金属フリーな純度の高いイオン液体の原料として有用である。
【0030】
次に、本発明の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法について、以下に説明する。
【0031】
本発明の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造法は、下記式(7)で表される含フッ素スルホニルイミド酸又は下記式(8)で表される含フッ素スルホニルイミド酸塩を原料とし、この含フッ素スルホニルイミド酸又は含フッ素スルホニルイミド酸塩に対してモル比で1〜50倍の下記式(9)で表される硫酸ジアルキル又は下記式(10)で表される炭酸ジアルキルをアルキル化剤として加えてアルキル化することを特徴とする。
(RfSONH ・・・(7)
(RfSON・M ・・・(8)
(RO)SO ・・・(9)
(RO)CO ・・・(10)
【0032】
上記式(7)で表される含フッ素スルホニルイミド酸を原料とし、上記式(9)で表される硫酸ジアルキルをアルキル化剤とした場合は、下記式(11)に示すような化学反応が生じ、含フッ素N−アルキルスルホニルイミドと硫酸(HSO)とが生成される。
【0033】
【化2】
【0034】
また、上記式(7)で表される含フッ素スルホニルイミド酸を原料とし、上記式(10)で表される炭酸ジアルキルをアルキル化剤とした場合は、下記式(12)に示すような化学反応が生じ、含フッ素N−アルキルスルホニルイミドと、二酸化炭素(CO)及びアルコール(ROH)とが生成される。
【0035】
【化3】
【0036】
さらに、上記式(8)で表される含フッ素スルホニルイミド酸塩を原料とし、上記式(9)で表される硫酸ジアルキルをアルキル化剤とした場合は、下記式(13)に示すような化学反応が生じ、含フッ素N−アルキルスルホニルイミドと硫酸塩(MSO)とが生成される。
【0037】
【化4】
【0038】
更にまた、上記式(8)で表される含フッ素スルホニルイミド酸塩を原料とし、上記式(10)で表される炭酸ジアルキルをアルキル化剤とした場合は、硫酸存在下のような酸性条件下にて、下記式(14)に示すような化学反応が生じ、含フッ素N−アルキルスルホニルイミドと、二酸化炭素(CO)と、アルコール(ROH)及び硫酸塩(MSO)とが生成される。
【0039】
【化5】
【0040】
但し、上記式(7)及び上記式(8)において、Rfは、フッ素又は炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基である。すなわち、上記式(7)で表される含フッ素スルホニルイミド酸としては、ビス(フルオロスルホニル)イミド酸((FSONH)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸((CFSONH)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸((CSONH)、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド酸((CSONH)、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド酸((CSONH)が挙げられる。
【0041】
また、上記式(8)で表される含フッ素スルホニルイミド酸塩としては、ビス(フルオロスルホニル)イミド酸塩((FSON・M)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸塩((CFSON・M)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸塩((CSON・M)、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド酸塩((CSON・M)、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド酸塩((CSON・M)が挙げられる。ここで、上記式(8)において、Mは、Li,Na,Kのいずれか一種の元素である。すなわち、上記式(8)で表される含フッ素スルホニルイミド酸塩は、より具体的には、ビス(フルオロスルホニル)イミド酸リチウム((FSON・Li)、ビス(フルオロスルホニル)イミド酸ナトリウム((FSON・Na)、ビス(フルオロスルホニル)イミド酸カリウム((FSON・K)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウム((CFSON・Li)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸ナトリウム((CFSON・Na)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸カリウム((CFSON・K)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸リチウム((CSON・Li)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸ナトリウム((CSON・Na)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸カリウム((CSON・K)、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド酸リチウム((CSON・Li)、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド酸ナトリウム((CSON・Na)、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド酸カリウム((CSON・K)、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド酸リチウム((CSON・Li)、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド酸ナトリウム((CSON・Na)、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド酸カリウム((CSON・K)が挙げられる。
【0042】
また、上記式(9)及び上記式(10)において、Rは、炭素数1以上のアルキル基である。すなわち、上記式(9)で表される硫酸ジアルキルとしては、硫酸ジメチル((CHO)SO)、硫酸ジエチル((CO)SO)、硫酸ジプロピル((CO)SO)、硫酸ジブチル((CO)SO)等が挙げられる。また、上記式(10)で表される炭酸ジアルキルとしては、炭酸ジメチル((CHO)CO)、炭酸ジエチル((CO)CO)、炭酸ジプロピル((CO)CO)、炭酸ジブチル((CO)CO)等が挙げられる。
【0043】
なお、上記式(8)で表される含フッ素スルホニルイミド酸塩を原料とする場合、すなわち、上記式(13)及び上記式(14)に示す場合は、酸性条件下でアルキル化を行うことが好ましい。これにより、含フッ素スルホニルイミド酸塩のアルキル化反応を促進することができる。
【0044】
本発明の一例として、上記式(7)で表される含フッ素スルホニルイミド酸を原料とし、上記式(9)で表される硫酸ジアルキルをアルキル化剤とした場合の製造方法を具体的に説明する。
先ず、反応容器内に原料である含フッ素スルホニルイミド酸を投入し、次にアルキル化剤である硫酸ジアルキルを原料に対して過剰に添加する。次に、反応容器を約100℃程度の温度に保ちつつ、1〜4時間程度撹拌しながらアルキル化させる。次に、生成物である含フッ素N−アルキルスルホニルイミドを濾別等によって単離する。
【0045】
ここで、上記アルキル化剤の添加量は、原料に対してモル比で1〜50倍とすることが好ましい。アルキル化剤の添加量がモル比で1倍未満であると、上記式(11)に示す生成反応が十分に促進せず、また析出する生成物の処理が困難となるため好ましくない。一方、アルキル化剤の添加量がモル比で50倍を超えると、製造の効率が低下したり、不要なコストが増大したりするため好ましくない。
【0046】
これに対して、アルキル化剤の添加量が上記範囲であると、上記式(11)に示す生成反応が十分に促進する。また、アルキル化剤である硫酸ジアルキルは、生成物である含フッ素N−アルキルスルホニルイミドに対して溶解度が100g/l以下の貧溶媒であるため、本例のように原料に対してモル比で5〜30倍のアルキル化剤が添加された反応系では、生成物が反応系に溶解せずに析出する。これにより、反応系から生成物の分離が容易となると共に、さらに、上記式(11)に示す生成反応を促進させることが可能となる。したがって、含フッ素N−アルキルスルホニルイミドを収率よく製造することができる。
【0047】
また、反応温度は、0〜200℃の範囲が好ましく、50〜150℃の範囲がより好ましい。
また、反応時間は、0.5〜200時間の範囲が好ましく、1〜50時間の範囲がより好ましい。
【0048】
また、生成物の反応系からの分離方法は、上記式(6)に示す含フッ素N−アルキルスルホニルイミドにおいて、Rfが炭素数2〜4のペルフルオロアルキル基であり、かつRが炭素数1のメチル基である場合には、生成物が固体として反応系から析出するため、濾過により容易に単離することができる。
一方、Rfが炭素数4のペルフルオロブチル基であり、かつRが炭素数2のエチル基である場合には、生成物は液体であるため、反応系から分液することにより単離することができる。
【0049】
また、本発明の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法の別の例として、生成物である含フッ素N−アルキルスルホニルイミドに対する貧溶媒を反応系に加えても良い。この場合、生成物に対する貧溶媒として、含フッ素N−アルキルスルホニルイミドの溶解度が100g/l以下の溶媒であることが好ましく、10g/l以下の溶媒であることがより好ましい。なお、具体的に生成物に対する貧溶媒としては、アセトニトリル(CHCN)、ジメチルスルホキシド(CHSO)等の非プロトン性極性溶媒やクロロホルム(CHCl)等の塩素系溶媒等が挙げられる。
【0050】
本例のように、含フッ素N−アルキルスルホニルイミドの溶解度が100g/l以下である貧溶媒を反応系に加えることにより、生成物が反応系に溶解せずに析出するため、反応系から生成物の分離が容易となると共に、さらに上記式(11)に示す生成反応を促進させることができる。
【0051】
さらに、本発明の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物の製造方法の別の例として、上記式(11)〜(14)に示す生成反応後に反応系に水を添加し、未反応のアルキル化剤を分解した後に生成物を単離しても良い。なお、生成反応後の反応系に水を添加すると、下記式(15)に示すような化学反応により、未反応のアルキル化剤である硫酸ジアルキルが分解されて、アルコール及び硫酸が生成する。
【0052】
【化6】
【0053】
ところで、上記式(6)において、Rfがフッ素又は炭素数1あるいは2のペルフルオロアルキル基である場合などは、生成物の含フッ素N−アルキルスルホニルイミドが反応系に残存する硫酸ジアルキルに対して溶解性があるため、反応系からの分離が困難となり、収率が低下してしまう。
【0054】
しかしながら、上記のように生成物の反応系からの分離が困難な場合であっても、本例のように、反応後に水を添加して未反応の硫酸ジアルキル又は炭酸ジアルキルを分解することにより、反応系に残存する硫酸ジアルキル又は炭酸ジアルキルに溶解する生成物を、効果的に分離することができる。また、反応系に添加する水は、生成物であるN−アルキルビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドに対する貧溶媒としても働くため、反応系から生成物を効果的に析出させることができる。
【0055】
以上説明したように、本発明の製造方法によれば、アルキル化剤として工業的に安価に生産される硫酸ジアルキル及び炭酸ジアルキルを用いており、このアルキル化剤を原料に対して過剰に添加するという簡略な工程によって含フッ素N−アルキルスルホニルイミドを収率よく製造することができる。また、生成物である含フッ素N−アルキルスルホニルイミドの貧溶媒である硫酸ジアルキル(又は炭酸ジアルキル)、アセトニトリル、水等を反応系に添加するため、生成物の分離が容易な製造方法である。さらに、本発明の製造方法では、上記式(11)〜(15)に示すように、目的の生成物以外に硫酸、二酸化炭素、硫酸塩及びアルコールが生成するが、可燃ガス等が生成することはない。したがって、原料及び生成物に特段の注意が必要ないため、取り扱いが容易な製造方法を提供することができる。
【0056】
次に、本発明の含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物を用いたイオン液体の製造方法について、以下に説明する。
【0057】
本発明のイオン液体の製造方法は、アルキル化を受けてカチオンを生成する化合物を、含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物によりアルキル化することを特徴とする。
【0058】
アルキル化を受けてカチオンを生成する化合物としては、トリアルキルアミン、アルキルイミダゾール、アルキルピリジン、アルキルピロリジン又はアルキルピペリジンなどの第3級アミン類であることが好ましい。トリアルキルアミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエチルメチルアミン等が挙げられる。また、アルキルイミダゾールとしては、メチルイミダゾール、エチルイミダゾール、プロピルイミダゾール等が挙げられる。また、アルキルピリジンとしては、3−メチルピリジン、3−エチルピリジン等が挙げられる。また、アルキルピロリジンとしては、N−メチルピロリジン、N−エチルピロリジン等が挙げられる。また、アルキルピペリジンとしては、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン等が挙げられる。
【0059】
アルキル化を受けてカチオンを生成する化合物として第3級アミンを用いた場合は、下記式(16)に示すような化学反応が生じ、イミドアニオンとのイオン性化合物が一段階の反応で合成される。
【0060】
【化7】
【0061】
また、アルキル化を受けてカチオンを生成する化合物としてアルキルイミダゾールを用いた場合は、下記式(17)に示すような化学反応が生じ、イミドアニオンとのイオン性化合物が一段階の反応で合成される。
【0062】
【化8】
【0063】
なお、アルキル化剤としての含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物は、炭素数2,3のペルフルオロアルキル基を有するN−アルキルビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドが好ましい。炭素数2,3のペルフルオロアルキル基を有するN−アルキルビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドをアルキル化剤とした場合、融点が100℃以下となる多種類のイオン液体を得ることができる。
【0064】
以上説明したように、本発明のイオン液体の製造方法によれば、含フッ素N−アルキルスルホニルイミド化合物をアルキル化剤として、アルキル化を受けてカチオンを生成する化合物をアルキル化する構成を有している。このため、イミドアニオンとのイオン性化合物を一段階の反応で合成することができる。また、N−アルキルビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドは、ハロゲン及びアルカリ金属フリーなイオン液体の合成原料であるため、高純度のイオン液体を高い収率で製造することができる。特に、炭素数2,3のペルフルオロアルキル基を有するN−アルキルビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドを原料としてイオン性化合物を合成した際に、融点が100℃以下となる多種類のイオン液体を得ることができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例によって本発明の効果をさらに詳細に説明する。なお、本発明は実施例によって、なんら限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
先ず、100mlのフラスコに、原料としてビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド酸((CSONH)20gを仕込み、アルキル化剤として硫酸ジメチル((CHO)SO)65gを加えた。なお、原料に対するアルキル化剤の添加量は、モル比で14倍であった。次に、フラスコ内の温度を100℃に保って4時間撹拌させた後、室温下で1時間撹拌させた。次に、反応液を濾過し、濾過上の結晶をアセトニトリル30gで洗浄した後、40℃で減圧乾燥した。これにより、生成物としてN−メチルビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド((CSONCH)17g(収率83%)を得た。
【0067】
(実施例2)
原料に対するアルキル化剤の添加量をモル比で1倍にした他は実施例1と同様に反応を行ったところ、生成物としてN−メチルビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド((CSONCH)15g(収率75%)を得た。
【0068】
(実施例3)
原料及びアルキル化剤に、さらにアセトニトリルを10g加えた他は実施例2と同様に反応を行ったところ、生成物としてN−メチルビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド((CSONCH)18g(収率88%)を得た。
【0069】
(実施例4)
先ず、500mlのフラスコに、原料としてビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド酸((CSONH)100gを仕込み、アルキル化剤として硫酸ジエチル((CO)SO)265gを加えた。なお、原料に対するアルキル化剤の添加量は、モル比で10倍であった。次に、フラスコ内の温度を100℃に保って20時間撹拌させた。次に、1Lのフラスコに、水550gを仕込み、次いで、反応液を投入し、フラスコ内の温度を40℃に保って20時間撹拌させた。このように余剰の硫酸ジエチルを分解させた後、分液することにより、生成物としてN−エチルビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド((CSONC)99g(収率94%)を得た。
【0070】
(実施例5)
先ず、50mlのフラスコに、原料としてビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド酸((CSONH)5gを仕込み、アルキル化剤として硫酸ジメチル((CHO)SO)20gを加えた。なお、原料に対するアルキル化剤の添加量は、モル比で15倍であった。次に、フラスコ内の温度を100℃に保って20時間撹拌させた後、室温下で1時間撹拌させた。次に、実施例4と同様の処理を行い、生成物としてN−メチルビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド((CSONCH)4.7g(収率92%)を得た。
【0071】
(実施例6)
先ず、50mlのフラスコに、原料としてビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸((CSONH)5gを仕込み、アルキル化剤として硫酸ジメチル((CHO)SO)20gを加えた。なお、原料に対するアルキル化剤の添加量は、モル比で15倍であった。次に、フラスコ内の温度を100℃に保って20時間撹拌させた後、減圧蒸留を行い、蒸留物5gを得た。次に、実施例4と同様の処理を行い、生成物としてN−メチルビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド((CSONCH)4.9g(収率95%)を得た。
【0072】
(実施例7)
先ず、100mlのフラスコに、原料としてビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド((CSONH)3.0gを仕込み、アルキル化剤として炭酸ジメチル((CHO)CO)14.0gを加えた。なお、原料に対するアルキル化剤の添加量は、モル比で30倍であった。次に、フラスコ内の温度を90℃に保って6時間撹拌させた。続いて、反応液を濃縮し、N−メチルビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド((CSONCH)2.5g(収率83%)を得た。
【0073】
(実施例8)
先ず、300mlのフラスコに、原料としてビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドカリウム((CSONK)10.0gを仕込み、アルキル化剤として硫酸ジメチル((CHO)SO)45.1gを加えた。なお、原料に対するアルキル化剤の添加量は、モル比で15倍であった。次に、濃硫酸2.3gを加えフラスコ内の温度を100℃に保って20時間撹拌させた。続いて、水200gを加えて50℃にて2時間攪拌させた後、室温まで冷却してろ過をおこない、N−メチルビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド((CSONCH)8.5g(収率90%)を得た。
【0074】
(実施例9)
先ず、300mlのフラスコに、原料としてビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドカリウム((CSONK)10.0gを仕込み、アルキル化剤として硫酸ジメチル((CHO)SO)45.1gを加えた。なお、原料に対するアルキル化剤の添加量は、モル比で15倍であった。フラスコ内の温度を100℃に保って1時間時間撹拌させたところ反応液全体がゲル化したため、以降無攪拌にて19時間保持した。続いて、水200gを加えて50℃にて2時間攪拌させた後、室温まで冷却してろ過をおこない、N−メチルビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド((CSONCH)5.2g(収率55%)を得た。
【0075】
(実施例10)
・N−メチルビス(フルオロスルホニル)イミドの合成
撹拌子、冷却管、温度計を附した100mlのフラスコに、硫酸ジメチル((CHO)SO)86.4g(685.5mmol)、ビス(フルオロスルホニル)イミドカリウム((FSONK)10.0g(45.7mmol)、ジオキサン(O(CHCHO)4.0g(45.7mmol)を仕込み100℃加熱下2時間撹拌した。続いて、イオン交換水150gに注ぎ入れ、70℃にて1時間攪拌させた。攪拌の後、分液することにより目的とするN−メチルビス(フルオロスルホニル)イミド(下層)4.0g(収率45%)を得た。更に、クロロホルムを用いて水層(上層)を抽出した後、溶媒を濃縮することにより、回収目的物2.6g(総収率74%)を得た。
【0076】
(実施例11)
先ず、100mlのフラスコに、原料としてビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドカリウム((CSONK)5.0gを仕込み、アルキル化剤として炭酸ジメチル((CHO)CO)21.8gを加えた。なお、原料に対するアルキル化剤の添加量は、モル比で30倍であった。次に、濃硫酸2.4gを加えフラスコ内の温度を95℃に保って24時間撹拌させた。続いて、水50.0gを加えて50℃にて2時間攪拌させた後、室温まで冷却してろ過を行った後に、減圧乾燥を行い、N−メチルビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド((CSONCH)4.0g(収率83%)を得た。
【0077】
(実施例12)
・1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドの合成
撹拌子、冷却管、温度計を附した50mlのフラスコに、N−エチルビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド((CSONC)35.0g(85.6mmol)を仕込み、80℃に加熱下でメチルイミダゾール7.4g(90.2mmol)を滴下し、更に75℃にて1時間攪拌した。この後100℃加熱下2〜3Torrで3時間真空乾燥を行い1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド41.6g(収率99%)を得た。なお、融点は、−3〜−4℃であった。
【0078】
(実施例13)
・1−エチル-3−メチルイミダゾリウム・ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドの合成
撹拌子、冷却管、温度計を附した50mlのフラスコに、N-エチルビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド((CSONC)40.0g(78.6mmol)を仕込み、90℃に加熱下メチルイミダゾール6.8g(82.9mmol)を滴下し、更に95℃にて1時間攪拌した。その後、100℃に加熱下2〜3Torrで3時間真空乾燥を行い1−エチル-3−メチルイミダゾリウム・ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド45.5g(収率98%)を得た。なお、融点は、32〜33℃であった。
【0079】
(比較例1)
先ず、100mlのフラスコに、原料としてビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド酸((CSONH)20gを仕込み、次いでメチル化剤としてオルト酢酸トリメチル(CHC(OCH)58gを加えた。なお、原料に対するメチル化剤の添加量は、モル比で14倍であった。また、オルト酢酸トリメチルの添加と同時に、ジメチルエーテルが発生した。
【0080】
次に、フラスコ内の温度を60度に保って3時間還流させた後、反応液の組成をH−NMR及び19F−NMRで確認したところ、生成物の他に原料のビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド酸及び酢酸メチルが確認された。また、過剰分のオルト酢酸トリメチルは全て消失しており、酢酸メチルとジメチルエーテルに分解されていた。
【0081】
次に、オルト酢酸トリメチル29gを追加投入して20時間還流させた後、酢酸メチルを減圧留去した。この濃縮物にアセトニトリル50gを加えてスラリーとし、濾過した。これにより、生成物としてN−メチルビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド((CSONCH)8g(収率40%)を得た。
【0082】
(比較例2)
先ず、100mlのフラスコに、原料としてビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド酸((CSONH)20gを仕込み、アルキル化剤として硫酸ジメチル((CHO)SO)2gを加えた。なお、原料に対するアルキル化剤の添加量は、モル比で0.5倍であった。次に、フラスコ内の温度を100℃に保って撹拌し、生成物であるN−メチルビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド((CSONCH)の反応率を19F−NMRで追跡した。この結果、40時間で反応率が25%に達して以降、反応率の増加は確認されなかった。