(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
呈色性化合物および顕色剤を含有し、外殻により覆われている粒子である体積平均粒子径0.5〜3.5μmのカプセル化着色剤粒子を重合性単量体に溶解または分散して混合組成物を形成し、
前記混合組成物中の前記重合性単量体を塊状重合することにより、前記混合組成物中に前記重合性単量体とそのポリマーを混在させ、
前記重合性単量体とそのポリマーとが混在している前記混合組成物を水性媒体中に分散し、
前記水性媒体中において前記重合性単量体を懸濁重合する、消色可能であるトナーの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本実施形態のトナーの製造方法は、呈色性化合物および顕色剤を含有し、外殻により覆われている粒子であるカプセル化着色剤粒子と、重合性単量体と、離型剤とを含む混合組成物を水性媒体中に分散し、前記水性媒体中において前記重合性単量体を懸濁重合する、消色可能であるトナーの製造方法である。
【0008】
本実施形態においては、まず、カプセル化着色剤粒子(以下、単に着色剤粒子とも称す)、重合性単量体、および離型剤を混合して混合組成物を得る。具体的には、重合性単量体である溶媒中にカプセル化着色剤粒子および離型剤を分散または溶解させる。
【0009】
この時、必要に応じ、混合組成物に重合開始剤、帯電調整剤等を混合しても良い。さらに、混合組成物に連鎖移動剤、架橋剤を混合することもできる。また、この混合の際、必要に応じ、ホモジナイザーやビーズミル等の分散機を使用しても良い。分散機を使用することにより、着色剤粒子や離型剤を均一に分散させることができる。
【0010】
さらに、本実施形態においては、混合組成物を後述する水性媒体に分散させる前に、混合組成物中の重合性単量体を塊状重合することが好ましい(以下、当該塊状重合を予備塊状重合と称す)。当該予備塊状重合においては、例えば、重合開始剤の存在下において、混合組成物を加熱する。当該予備塊状重合により、混合組成物中の例えば5〜50%の重合性単量体を重合することで、混合組成物中に重合性単量体とそのポリマーが混在した状態となる。その結果、予備塊状重合を行わない場合と比較して、混合組成物の粘度が大きくなる。
【0011】
予備塊状重合により混合組成物の粘度を上げると、この後工程での分散工程及び重合工程において、重合性単量体から生成されるポリマーからの着色剤粒子の脱離を防ぐことができる。本実施形態に係るカプセル化着色剤粒子は、粒子表面の親水性が高いため、通常のトナーで使用されている顔料より、トナーからの脱離が起り易い。したがって、予備塊状重合を行い着色剤粒子の重合性単量体から生成されるポリマーからの脱離を抑制することで、トナーの発色性をさらに高めることができる。
【0012】
予備塊状重合後の混合組成物の粘度は、トナーの発色性をさらに高める観点から、20℃において0.5Pa・s以上であることが好ましく、より好ましくは1 Pa・s以上、さらに好ましくは45 Pa・s以上である。なお、粘度の上限値については特に限定されず、当業者が適宜設定できるが、混合組成物中の成分の分散性を容易に保つことができるようにするために、20℃において500 Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは100 Pa・s以下である。したがって、本実施形態において、予備塊状重合後の混合組成物の粘度は、20℃において0.5Pa・s以上、500 Pa・s以下が好ましく、より好ましくは1 Pa・s以上、100 Pa・s以下であり、さらにより好ましくは45 Pa・s以上、100 Pa・s以下である。粘度は東機産業社製TVE-22LT(ロータ1°34’×R24)により測定できる。
なお、以下の説明においては、理解を容易とするために、重合性単量体およびそのポリマーを、重合性単量体等と総称する。
【0013】
続いて、着色剤粒子、重合性単量体(予備塊状重合を行う場合は、重合性単量体等)、および離型剤を分散させる、水性媒体を作成する。水性媒体とは、水または水を主成分(例えば、水の割合が80質量%以上)としてアルコールなどの水に溶解する溶媒が混合されている混合溶媒である。当該水性媒体は粒度分布が均一なトナー粒子を作成できることが好ましく、必要に応じて分散剤を含んでいてもよい。一例としては、リン酸三ナトリウムと塩化カルシウムを水中に溶解させ、加熱することにより反応させ、リン酸三カルシウムを水中に作成することにより、水性媒体の1つである分散剤を含む溶液を得ることができる。
さらに、必要に応じ、分散助剤として界面活性剤等を水性媒体に添加しても良い。
【0014】
次に、離型剤、重合性単量体等および着色剤粒子を含む混合組成物(分散相)を水性媒体(連続相)に分散させる。このときの分散相の連続相への分散の程度により、トナーとしての粒子径がほぼ確定される。粒子径の小さいトナーを作成したい場合、ホモジナイザーや高圧式微粒化機等の分散機を使用すると良い。
【0015】
続いて、分散相が分散された連続相を攪拌しながら加熱することにより、重合性単量体の懸濁重合を行う。当該懸濁重合における反応条件は特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。例えば、反応温度は60℃から90℃、反応時間は5時間から10時間とすることができる。また、必要に応じ邪魔板を反応槽に設置するようにしてもよく、これにより粒度分布がシャープなトナーを得ることができる。なお、当該懸濁重合により形成されるポリマーの平均分子量については特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。
【0016】
重合終了後、酸により分散剤を溶解させ、洗浄と固液分離を行い、乾燥、外添を行い、トナーを得る。
【0017】
このように重合性単量体と、離型剤とともに、外殻により覆われているカプセル化着色剤粒子を水性媒体に分散させて重合性単量体の懸濁重合を行うことで、呈色性化合物と顕色剤は重合性単量体により消色されることがない。その結果、高発色で且つ定着性に優れたトナーを得ることができる。
【0018】
本実施形態において使用される重合性単量体としては当業者が適宜選択することができるが、例えばビニル系重合性単量体を用いることができる。ビニル系重合性単量体としては、スチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、フェニルスチレン、クロロスチレン等の芳香族系ビニル単量体類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のエステル系単量体類、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボン酸含有単量体類、アミノアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等のアミン系単量体類及びそれらの誘導体を単独または複数混合することにより使用できる。
【0019】
着色剤とは、トナーに色を付与する1種の化合物、または組成物をいう。本実施形態におけるカプセル化着色剤粒子は、呈色性化合物と、顕色剤とを含有するとともに、当該呈色性化合物と顕色剤とが含まれるコア部分が外殻(シェル材)によって覆われている。
呈色性化合物とは、代表的にはロイコ染料であり、顕色剤により発色することが可能な電子供与性の化合物である。例えば、ジフェ二ルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が挙げられる。
【0020】
具体的には、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、2−N,N−ジベンジルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−フェニル、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等である。さらに、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。これらは、2種以上混合して使用しても良い。
【0021】
呈色性化合物を呈色させる顕色剤は、ロイコ染料にプロトンを与える電子受容性化合物である。例えば、フェノール類、フェノール金属塩類、カルボン酸金属塩類、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸類、リン酸金属塩類、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステル金属塩類、亜リン酸類、亜リン酸金属塩類、モノフェノール類、ポリフェノール類、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体等があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等、さらにそれらの金属塩が挙げられる。これらは、2種以上混合して使用しても良い。
【0022】
具体的には、フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ジヒドロキシ安息香酸またはそのエステル、たとえば2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸メチル、レゾルシン、没食子酸、没食子酸ドデシル、没食子酸エチル、没食子酸ブチル、没食子酸プロピル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,6−ジヒドロキシアセトフェノン、3,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,3,4−トリヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ビフェノール、4,4’−ビフェノール、4−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4−[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,6−ビス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビス(ベンゼン−1,2,3−トリオール)]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビス(1,2−ベンゼンジオール)]、4,4’,4’’−エチリデントリスフェノール、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレントリス−p−クレゾール等がある。
【0023】
着色剤の外殻を形成するカプセル化剤(シェル材)についても特に限定されず、当業者が適宜設定できる。
【0024】
さらに、本実施形態においては、必要に応じて消色剤が含有される。消色剤は、呈色性化合物、顕色剤、消色剤の3成分系において、熱によりロイコ染料と顕色剤による発色反応を阻害し、無色にすることができるものであれば、公知のものが使用できる。
消色剤は、特に、特開昭60−264285、特開2005−1369、特開2008−280523等で公知である、温度ヒステリシスを有する消色剤を用いることが好ましい。
【0025】
温度ヒステリシスを有する消色剤を用いるとき、発色状態にある着色剤を含むトナーを特定の消色温度Th以上に加熱すると、消色化させることができる。さらに、消色したトナーをTh以下の温度に冷却しても消色状態が維持される。さらに温度を下げると特定の復色温度Tc以下においてロイコ染料と顕色剤による発色反応が再度復活し、トナーが発色状態に戻るという可逆的な発色消色反応を起こすことが可能である。特に、本実施形態において温度ヒステリシスを有するとき、消色剤は、室温をTrとするとTh>Tr>Tcという関係を満たすことが好ましい。
【0026】
この温度ヒステリシスを有する消色剤は、例えばアルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類が挙げられる。
特にエステル類が良い。具体的には、置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、脂肪酸と分岐脂肪族アルコールのエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等があげられる。これらは、2種以上混合して使用しても良い。
【0027】
カプセル化された着色剤粒子の形成方法は、界面重合法、コアセルベーション法、in situ重合法、液中乾燥法、液中硬化被膜法等がある。
特に、メラミン樹脂をシェル成分として使用するIn−Situ法、ウレタン樹脂をシェル成分として使用する界面重合法等が好ましい。
【0028】
In−Situ法の場合、まず、上記3成分(呈色性化合物、顕色剤、および必要に応じて加えられる消色剤)を溶解混合し、水溶性高分子または界面活性剤水溶液中に乳化させる。その後、メラミンホルマリンプレポリマー水溶液を添加し、加熱し重合することによりカプセル化することができる。
【0029】
界面重合法の場合は、上記3成分と多価のイソシアネートプレポリマーを溶解混合し、水溶性高分子または界面活性剤水溶液中に乳化させる。その後、ジアミンまたはジオール等の多価塩基を添加し、加熱重合することによりカプセル化することができる。
【0030】
カプセル化着色剤粒子の体積平均粒子径(D50)は特に限定されないが、0.5μm以上、3.5μm以下であることが好ましい。メカニズムは正確にはわかっていないが、着色剤をカプセル化した場合に体積D50を0.5μm以上、3.5μm以下とすることで、範囲外にある場合と比較して着色剤が重合性単量体から生成されるポリマー中に取り込まれやすくなる。その結果、トナーの発色性をさらに高めることができる。さらに、カプセル化着色剤の体積D50を0.5μm以上、3.5μm以下とすることで、範囲外にある場合と比較してトナーの微粉発生量も少なくすることができる。
【0031】
なお、体積平均粒子径とは、粒径から計算される個々の粒子の体積和から求められる、体積和が50%となるときに対応する粒子の粒径(体積D50)をいう。当該体積平均粒子径は、例えばMultisizer3(ベックマンコールター社製:アパーチャー径100μm)を用いて測定することができる。当該体積平均粒子径は、例えば50000個の粒子について測定することによりその値を得る。
【0032】
また、カプセル化した着色剤を、具体的な呈色性化合物および顕色剤の種類にもよるが、例えば−20〜−30℃下に置くなどすることにより、呈色性化合物と顕色剤とを結合させて発色させることができる。
【0033】
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス、酸価ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、または、それらのブロック共重合体、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、ライスワックスの如き植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろうの如き動物系ワックス、オゾケライト、セレシン、ぺトロラクタムの如き鉱物系ワックス、モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸、ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコールの如き飽和アルコール、ソルビトールの如き多価アルコール、リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N′−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N′−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N′−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪酸金属塩(−般に金属石けんといわれているもの)、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス、ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物、植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
【0034】
さらに、必要に応じて電荷調整剤、外添剤等を添加できる。
帯電制御剤としては、例えば含金属アゾ化合物が用いられ、金属元素が鉄、コバルト、クロムの錯体、錯塩、あるいはその混合物が望ましい。その他、含金属サリチル酸誘導体化合物も使用可能であり、金属元素がジルコニウム、亜鉛、クロム、ボロンの錯体、錯塩、あるいはその混合物が望ましい。
【0035】
外添剤として、トナー粒子に対して流動性や帯電性を調整するために、トナー粒子表面に、トナー全質量に対し、0.01〜20質量%の無機粒子を添加混合することができる。このような無機粒子としてはシリカ、チタニア、アルミナ、及びチタン酸ストロンチウム、酸化錫等の無機酸化物を単独であるいは2種以上混合して使用することができる。無機粒子は疎水化剤で表面処理されたものを使用することが環境安定性向上の観点から好ましい。また、無機粒子の粒径は特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。また、このような無機粒子以外に1μm以下の樹脂粒子をクリーニング性向上のために外添してもよい。
【0036】
また、本実施形態においては、例えば、以下に例示する連鎖移動剤、架橋剤、重合開始剤、分散剤、分散助剤をトナーの製造に用いることができる。
【0037】
連鎖移動剤としては、四臭化炭素、ドデシルメルカプタン、トリクロロブロモメタン、ドデカンチオール等が使用される。
【0038】
架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルナフタレン、ジエチレングリコールメタクリレート等の不飽和結合2個以上有するものが使用される。
【0039】
重合開始剤は、水溶性開始剤、油溶性開始剤のうちいずれも使用することができる。水溶性開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、2,2−アゾビス(2−アミノプロパン)等のアゾ系化合物、過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイト等が挙げられる。また、油溶性開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ系化合物、ベンゾイルペルオキシド、ジクロロベンゾイルペルオキシド等の過酸化物が使用される。また、必要であればレドックス系開始剤を使用することもできる。
【0040】
分散剤は、無機系分散剤、有機系分散剤のうちいずれも使用することができる。無機系分散剤は、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。有機系分散剤は、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン等が挙げられる。
【0041】
分散助剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が使用できる。アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルケニルコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸塩等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、アルキル4級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。これらは単独または複数併用して使用できる。
【0042】
本実施形態において使用可能である分散機としては、湿式で微粒化が可能であれば特に限定されないが、例えば、ナノマイザー(吉田機械興行社製)、アルティマイザー(スギノマシン社製)、NANO3000(美粒社製)、マイクロフルイダイザー(みずほ工業社製)、ホモゲナイザー(イズミフードマシナリー社製)等の高圧式微粒化機、ウルトラタラックス(IKAジャパン社製)、TKオートホモミクサー(プライミックス社製)、TKパイプラインホモミクサー(プライミックス社製)、TKフィルミックス(プライミックス社製)、クレアミックス(エム・テクニック社製)、クレアSS5(エム・テクニック社製)、キャビトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工社製)のようなローターステター型攪拌機、ビスコミル(アイメックス製)、アペックスミル(寿工業社製)、スターミル(アシザワ、ファインテック社製)、DCPスーパーフロー(日本アイリッヒ社製)、エムピーミル(井上製作所社製)、スパイクミル(井上製作所社製)、マイティーミル(井上製作所社製)、SCミル(三井鉱山社製)などのメディア攪拌機等が挙げられる。
【0043】
本実施形態のトナーは、例えば、非磁性である、一成分系現像剤または二成分系現像剤として例えばMFP(Multi Function Peripheral)などの画像形成装置に搭載されて電子写真方式の記録媒体への画像形成において使用することができる。二成分系現像剤に用いられる場合、使用できるキャリアについては特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。
【0044】
画像形成工程においては、記録媒体に転写された本実施形態のトナーによるトナー像が定着温度で加熱される結果、樹脂が溶融して記録媒体に浸透し、その後該樹脂が固化することにより記録媒体に画像が形成される(定着処理)。
【0045】
また、呈色性化合物と顕色剤とを含む着色剤を含む場合、記録媒体に形成された画像は、トナーの消色処理を行うことにより消去することができる。具体的な消色処理は、消色温度以上の加熱温度で画像が形成された記録媒体を加熱することにより、結合していた呈色性化合物と顕色剤とを解離させることで行うことができる。
【実施例】
【0046】
(実施例)
続いて、本実施形態のトナーについて、例を挙げて説明する。しかしながら、以下の実施例により本発明が何ら限定されるものではない。
【0047】
実施例1
<カプセル化着色剤粒子の作成>
ロイコ染料として3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1質量部、顕色剤として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5質量部、消色剤としてピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル化合物50質量部からなる成分(着色剤材料)を加温溶解した。さらに着色剤材料とカプセル化剤として芳香族多価イソシアネートプレポリマー20質量部、酢酸エチル40質量部とを混合した溶液を8%ポリビニルアルコール水溶液250質量部中に投入し、乳化分散した。70℃で約1時間攪拌を続けた後、反応剤として水溶性脂肪族変性アミン2質量部を添加し、さらに液温を90℃に保って約3時間攪拌を続けて無色のカプセル粒子を得た。さらに、このカプセル粒子分散体を冷凍庫(−30℃)に入れて発色させ、カプセル化着色剤粒子(青色の発色粒子C1)の分散体を得た。この発色粒子C1を島津製作所製SALD7000を用いて測定したところ、その体積平均粒径は2μmであった。また、完全消色温度Thは79℃で、完全発色温度Tcは−20℃であった。
【0048】
<着色剤粒子、重合性単量体、離形剤を含む分散相の作成>
上記、カプセル化着色剤粒子5質量部、重合性単量体として、スチレン80質量部、アクリル酸ブチル9質量部、アクリル酸1質量部、離形剤としてライスワックス4質量部、重合開始剤として、2、2-アゾビスジメチルバレロニトリル1質量部をIKA製ホモジナイザーT25を用いて混合し、70℃で10分間、予備塊状重合を行い、分散相を作成した。分散相の20℃における粘度は2.5Pa・sであった。
【0049】
<分散剤を含む連続相の作成>
イオン交換水75質量部中にリン酸三ナトリウム18質量部と塩化カルシウム7質量部を溶解させ、80℃で3分間反応させ、連続相を作成した。
【0050】
<トナーの作成>
上記連続相90質量部と分散相10質量部を、邪魔板が設置された反応槽へ投入し、IKA製ホモジナイザーT25を用いて6500rpmで分散を行った。続いて、攪拌翼をパドル翼に変更し、80℃で8時間重合をさせ、トナー分散液を得た。
次に、このトナー分散液へ、クエン酸を投入し、無機分散剤を溶解させた後、ろ過及びイオン交換水による洗浄を繰り返し行い、ろ液の導電率が50μS/cmとなるまで洗浄した。その後、真空乾燥機を用いて含水率が1.0質量%以下になるまで乾燥させ、乾燥粒子(トナー母粒子)を得た。
乾燥後、添加剤として、疎水性シリカ2質量部、酸化チタン0.5質量部をトナー母粒子表面に付着させ、消色可能なトナーを得た。得られたトナーについて、コールター社マルチサイザー3(アパーチャー100μm)を用いて粒子径を測定したところ、50%個数平均径Dpが9.5μmであった。また、CV(標準偏差/50%個数平均径Dp)は32%であった。
【0051】
得られたトナーを、シリコーン樹脂で被覆したフェライトキャリアと混合し、東芝テック製MFP(e−studio 4520c)を用いて付着量0.6mg/cm
2で画像出力をおこなったところ、かぶりの無い画像が得られた。続いて、定着器温度を70℃に設定し、紙送り速度を30mm/secに調整し、画像濃度0.5の発色画像を得た。
得られた発色画像を、e−studio 4520cにおいて定着器温度を100℃に設定し、紙送り速度100mm/secで搬送することにより、画像が無色になることが確認された。
消色した画像を−20℃の冷凍庫に保管し、消色以前の画像濃度0.5に復帰することを確認した。
【0052】
実施例2
予備塊状重合の条件を70℃で20分とし、分散相の粘度を45Pa・sにした以外は実施例1と同じ条件でトナーを作成した。コールター社マルチサイザー3を用いてトナーの粒子径を測定したところ、50%個数平均径Dpが9.2μmであった。また、CV(標準偏差/50%個数平均径Dp)は25%で、非常にシャープな粒度分布であった。消去前の画像濃度は0.6であった。
【0053】
実施例3
予備塊状重合を行わず、分散相の粘度が0.02Pa・sであること以外は、実施例1と同じ条件でトナーを作成した。コールター社マルチサイザー3を用いてトナーの粒子径を測定したところ、50%個数平均径Dpが7.2μmであった。また、CV(標準偏差/50%個数平均径Dp)は43%で、着色剤粒子の脱離が一部発生しており、ブロードな粒度分布であった。消去前の画像濃度は0.4であった。
【0054】
比較例1
<ロイコ染料を含有する分散相の作成>
ロイコ染料として、クリスタルバイオレットラクトン2質量部、顕色剤として没食子酸プロピル3質量部、重合性単量体として、スチレン80質量部、アクリル酸ブチル9質量部、アクリル酸1質量部、離形剤としてライスワックス4質量部、重合開始剤として、2、2-アゾビスジメチルバレロニトリル1質量部をIKA製ホモジナイザーT25を用いて混合し、
分散相を作成した。
【0055】
<分散剤を含む連続相の作成>
イオン交換水75質量部中にリン酸三ナトリウム18質量部と塩化カルシウム7質量部を溶解させ、80℃で3分間反応させ、連続相を作成した。
【0056】
<トナー粒子の作成>
上記連続相90質量部と分散相10質量部を、邪魔板が設置された反応槽へ投入し、IKA製ホモジナイザーT25を用いて6500rpmで分散を行った。続いて、攪拌翼をパドル翼に変更し、80℃で8時間重合をさせ、トナー分散液を得た。
次に、このトナー分散液へ、クエン酸を投入し、無機分散剤を溶解させた後、ろ過及びイオン交換水による洗浄を繰り返し行い、ろ液の導電率が50μS/cmとなるまで洗浄した。その後、真空乾燥機を用いて含水率が1.0質量%以下になるまで乾燥させ、乾燥粒子を得た。
乾燥後、添加剤として、疎水性シリカ2質量部、酸化チタン0.5質量部をトナー粒子表面に付着させ、消色可能なトナーを得た。コールター社マルチサイザー3を用いて粒子径を測定したところ、50%個数平均径Dpが8.6μmであった。また、CV(標準偏差/50%個数平均径Dp)は48%でであった。
得られたトナーを、シリコーン樹脂で被覆したフェライトキャリアと混合し、東芝テック製MFP(e−studio 4520c)で付着量0.6mg/cm2で画像出力をおこなったところ、画像濃度が0.15と極めて薄い発色濃度であった。
【0057】
このように、実施例および比較例の結果から、本実施形態のトナーの製造方法によれば、発色性および定着性に優れた消色可能であるトナーを提供でき、特に予備塊状重合を行うことで、さらに発色性を高めることができる。
【0058】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
以上に詳述したように、この明細書に記載の技術によれば、発色性および定着性に優れた消色可能であるトナーの製造方法を提供することができる。