特許第5738479号(P5738479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738479
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】酸化ウラン触媒体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/14 20060101AFI20150604BHJP
   B01J 23/12 20060101ALI20150604BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   B01J37/14
   B01J23/12 A
   B01J23/12 Z
   B01D53/36 104Z
【請求項の数】11
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-506914(P2014-506914)
(86)(22)【出願日】2012年7月25日
(65)【公表番号】特表2014-516315(P2014-516315A)
(43)【公表日】2014年7月10日
(86)【国際出願番号】EP2012064583
(87)【国際公開番号】WO2013023890
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2013年10月28日
(31)【優先権主張番号】102011081074.9
(32)【優先日】2011年8月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501315289
【氏名又は名称】アレヴァ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Areva GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ツェメク、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ランスマン、フォルカー
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−533059(JP,A)
【文献】 特表2010−533058(JP,A)
【文献】 特表2010−533113(JP,A)
【文献】 特表2010−533114(JP,A)
【文献】 特公昭45−020974(JP,B1)
【文献】 特開2005−139440(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/105751(WO,A1)
【文献】 英国特許出願公告第01258413(GB,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0180419(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0182801(US,A1)
【文献】 英国特許出願公告第01351803(GB,A)
【文献】 特開2000−258576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
B01D53/86,94
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
CNKI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を有する酸化ウラン触媒体の製造方法。
a)少なくとも50重量%の純度のUO2+x粉末(2)(ここで、x≦0.7である。)が第1の焼結プロセスにおいて焼結されてUO2+y中間生成物(14)(ここで、y≦0.25である。)となる工程、
b)UO2+y中間生成物(14)が酸素で酸化され、U8−z粉末(11)(ここで、z≦1である。)に変換される工程、
c)U8−z粉末(11)が圧縮されて、後の触媒体(1)に対応する形状を有する未加工品(15)となる工程、及び
d)未加工品(15)が、第2の焼結プロセスにおいて、酸素を含有する焼結雰囲気中、900℃以上で焼結される工程。
【請求項2】
工程a)においてUF6、UO3、UNH、U38又はUF4の変換により得られたUO2+x粉末(2)が使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)において粉末粒子が5μm〜500μmの平均粒径を有するUO2+x粉末(2)が使用されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
10μm〜150μmの平均粒径を有するUO2+x粉末(2)が使用されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
粉末粒子(3)が30nm〜300nmの平均径を有する微結晶(4)から成るUO2+x粉末(2)が使用されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)によるUO2+y中間生成物(14)の酸化が300℃以上の温度で行なわれることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
酸化が400℃〜500℃で行なわれることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
触媒体(1)の未加工品(15)が900℃〜1,300℃で焼結されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程d)の後に触媒体(1)が還元され、U38-zがUO2に変換されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
還元が300℃〜1,000℃の温度で行なわれることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
還元が400℃〜600℃の温度で行なわれることを特徴とする請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分として酸化ウランを含む触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ウランは、特許文献1から窺がえるように、例えば一酸化炭素から二酸化炭素へ、イソブテンからアクロレインへ、塩化水素から塩素へ、等の揮発性有機化合物の完全酸化のための、一連の酸化反応のための酸化触媒として使用されている。しばしば、触媒、特に酸化ウラン触媒、は、液状の活性成分を、例えばウラニル二水和物のような前駆体の懸濁液として又は気相中においてCVD(化学蒸着法)又はPVD(物理蒸着法)により、担体上に、設けることにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開102007033114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、酸化ウラン触媒の代替的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1に記載の方法により解決される。この場合、本発明の一般的思想は、酸化ウランから高い開放気孔率を有する焼結体を製造することにある。先ず、例えばAl23からなる、適切な担体を用意し、これに活性成分を加えなければならない公知の製造方法とは異なり、本発明によれば、担体と活性成分とを一体化した触媒が作られる。これにより、製造経費と担体上に活性成分を設ける手間が省ける。これに加えて、ここで用いられるウラン材料は弱放射性なので、例えば余剰若しくは不使用の前駆体懸濁液又は前駆体の製造時に生じる廃棄物の除染に関して、製造経費を高めるような余計な出費をしなくてもよい。
【0006】
第1の焼結プロセスでは、UO2+x粉末(ここで、x≦0.7である。)、好適には乾式又は湿式変換法において、UF6、UO3、UN、UNH、U38又はUF4の化学的変換により得られた粉末、が、UO2+y中間生成物(ここで、y≦0.25である。)に焼結される(工程a)。この場合、UO2+x粉末は、例えばAl23又はZrO2等の、金属酸化物の添加なしに使用してもよいが、このような添加物を50重量%まで含んでもよい。この場合、中間生成物は任意の構造の成形体である。しかし、また、UO2+x粉末を予め圧縮せずに焼結することも考えられるが、これは製造技術上の理由から実際的でない。好適には、中間生成物は、後の最終製品と同じ形、即ち、完成した触媒体の形、を有するように作られる。中間生成物の未加工品の圧縮及び以下に詳述する触媒体の未加工品の圧縮には、同一の圧縮装置が使用できる。
【0007】
次の工程b)では、焼結された中間生成物が酸素で処理され、UO2+yがU38-z(ここで、z≦1である。)に酸化される。この場合、中間生成物から、例えば5μm〜10μm、典型的には1〜30μm、の範囲の平均粒径を有する細かいU38-z粉末が生じ、その焼結活性は、出発UO2粉末に比べて弱められている。例えば5μm〜500μmの粒径を有し得る出発UO2粉末の粉末粒子は、それぞれ例えば50nm〜300nmの範囲の微結晶径を有する多数の小さな微結晶から形成されているが、これは比較的大きな焼結活性を意味し、これにより、気孔率の小さい緻密な焼結体の製造が促進される。本発明方法では、第1の焼結プロセス中に、最初に存在した微結晶がより大きな微結晶/粒子に溶融するので、第1の焼結プロセス後のみならず工程b)の酸化後にも、600倍まで大きい微結晶、即ち、微結晶径が1μm−3μmの微結晶、が生じ、このことは、このようにして作られる焼結体の高い気孔率又は小さい密度の観点から、有利である。しかし、更に重要な効果は、斜方晶の結晶構造を有するU38-zの密度が正六面体のUO2+yのそれよりも小さいので、酸化により元のUO2+y粒子の体積の増加が生じ、粒子に多数の亀裂が生じて、より小さな成分に分解されるところにある。これにより、粒子に多数の中空部分が生じる。その結果、第2の焼結プロセスにおいて中空部分は少なくとも部分的に維持され、大きな開放気孔率を有する触媒体が生じる。
【0008】
従属請求項には上述の方法の有利な発展形態が提示されている。
【0009】
本発明を添付の図面を参考して詳述する。図はそれぞれ著しく簡略化したものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明方法の出発粉末であるUO2+x粉末(ここで、x≦0.7である。)を示す。
図2図2は、微結晶を有する出発粉末のUO2+x粒子を示す。
図3図3は、UO2+x中間生成物又はU38-z触媒体の未加工品の製造を示す。
図4図4は、UO2+y中間生成物(ここで、y≦0.25である。)を酸素で酸化する工程を示す。
図5図5は、UO2+y粒子から酸化により生じたU38-z粒子(ここで、z≦1である。)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による、例えば円筒状の触媒体1の、製造のために、出発粉末としてUO2粉末2、好適には六フッ化ウラン(UF6)、三酸化ウラン(UO3)、硝酸ウラニル(UN)、硝酸ウラニル六水化物(UNH)、八酸化三ウラン(U38)又は四フッ化ウラン(UF4)から湿式化学又は乾式化学変換により得られた粉末が使用される。公知の方法は、その中間段階により、例えばAUC(アンモニウム−炭化ウラニル)法又はADU(アンモニウム−二ウラン酸塩)法と呼ばれる。乾式化学変換法では、UF6が、水及び気相の水素により、直接二酸化ウランに変換される。上述の種類のUO2+x粉末は、通常は、5μm〜500μm、しばしば10μm〜150μmの平均粒径を有する粉末粒子3を有する。粉末粒子自体は、約50nm〜300nmの大きさの多数の微結晶4の集合体である。個々のUO2+x粒子3は、従って、言わば種々に方向付けられた多数の微結晶からなる構成体である。
【0012】
まず第1の方法工程(工程a)において、UO2+x粉末が第1の焼結プロセスで焼結される。好適には、富化されたUO2+xが使用されるが、このものは、原子力発電所の核燃料ペレットの製造中にウラン富化により生じる。UO2+x粉末2は、例えば円筒状の未加工品5に圧縮され、このものは、円筒状の中空室6を有する鋳型7に充填され、矢印9の方向に鋳型7へ挿入されるピストン8で、典型的には5〜7g/cm3の密度に、圧縮される(図3)。また、例えば二軸プレスやアイソスタチックプレス等の他の圧縮方法及び対応する他の圧縮度合も利用可能である。UO2+xの理論密度は、約11g/cm3である。未加工品5の焼結は、炉(図示せず)において、UO2+y(ここで、y≦0.25である。)が得られるように実施される。これを保証するために、例えばH2を含む雰囲気中、1,500℃〜1,800℃で又はCO2を含む雰囲気中、1,100℃〜1,200℃で焼結される。焼結後に、中間生成物として、例えば円筒状のUO2+y焼結体が生じる。
【0013】
これに続く方法工程(工程b)において、中間生成物14が、第1の焼結プロセスで使用された炉とほぼ同じ炉16において、酸化されてU38-z粒子(ここで、z≦1である。)となり、その際、U38-z粉末11に崩壊する。中間生成物14の形は、それ故、問題にならない。中間生成物14として最終製品である触媒体1と同じ形が選ばれるときには、各未加工品の圧縮には同一の装置(鋳型7、ピストン8)が使用できる。第1の焼結プロセスの効果は、これに続く酸化で得られるU38-z粉末がより乏しい焼結活性を示し、これにより、密度が小さく高い気孔率を有する焼結体の製造が促進されることにある。別の効果は、U38の密度が8.38g/cm3でUO2の密度よりも小さいので、UO2+yから形成されるU38-z粒子10が膨張し、部分的に破片12に崩壊し、そのなかに亀裂の形の中空部分13を形成することにある(図5参照)。酸化は、典型的には300℃〜600℃の温度で、例えば3時間内で、行なわれる。
【0014】
次の方法工程(工程c)では、U38-z粉末11が、上述のように、典型的には5g/cm3−6g/cm3の密度で、後の触媒体1の形に相応する形で、例えば単軸で、未加工品15に圧縮される。また、例えば二軸プレスやアイソスタチックプレス等の他の圧縮方法及び相応する他の圧縮度合いも利用可能である。触媒体1は、例えば直径7mm、高さ10mmの、円筒体である。U38-z粉末には、圧縮前にプレス補助剤、例えば0.2重量パーセントのポリエチレンワックス、が添加される。プレス補助剤は、また、中間生成物14の製造時にも使用できる。
【0015】
上述の方法で得られた未加工品15は、第2の焼結プロセス(工程d)で焼結され、その際、これは、U38-z組成範囲が変化しないで残されるような雰囲気内で行なわれる。これを保証する雰囲気は、酸素を含むか又は空気から成り、焼結中、1,000℃〜1,300℃の温度が維持される。最後に高い開放気孔率とそれに応じて触媒反応が行なわれる大きな内表面積を有する触媒体1が得られる。
【0016】
上述のようにして製造されたU38-z触媒体1は、約1,000℃〜1,200℃までの大気で安定である。還元条件下での使用には、触媒体は、300℃〜1,000℃、有利には400℃〜600℃の温度で、例えばH2、H2−N2、H2−Ar等のH2を含む雰囲気中で、還元処理され、U38-zがUO2に変換される。UO2は、大気中では、約120℃までしか安定でないが、還元条件下では約1,000℃まで多孔体として安定である。
【0017】
(例)
上述のようにして製造された円筒状のUO2中間生成物14は、450℃で3時間酸化された。その際に生じたU38-z粉末は、0.2%のプレス補助剤(PEワックス)と混合され、5g/cm3〜5.5g/cm3の密度で、1gの重量の円筒状未加工品15に圧縮される。未加工品15は、次いで、炉中で焼結雰囲気としての空気により1時間、1,280℃(チャージA)又は1,100℃(チャージB)で焼結される。
【0018】
この場合、以下の特性を有する触媒体1を得ることができた。
【0019】
【表1】
【0020】
開放気孔率は、全気孔率の一部として示されており、その際、全気孔率(容積%)は、全気孔率=(1−密度/理論密度)×100で得られる。UOの理論密度は、10.96g/cm、Uのそれは、8.38g/cmである。
【符号の説明】
【0021】
1 焼結体
2 UO2+x粉末
3 粉末粒子
4 微結晶
5 円筒状未加工品
6 中空室
7 鋳型
8 ピストン
10 U38-z粒子
11 U38-z粉末
12 破片
13 中空部分
14 中間生成物
15 未加工品
16 炉
図1
図2
図3
図4
図5-6】