(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738489
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】電気コネクタ用のロック装置
(51)【国際特許分類】
H01R 13/639 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
H01R13/639 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-530065(P2014-530065)
(86)(22)【出願日】2011年9月16日
(65)【公表番号】特表2014-526778(P2014-526778A)
(43)【公表日】2014年10月6日
(86)【国際出願番号】CN2011079734
(87)【国際公開番号】WO2013037123
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2014年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】513022232
【氏名又は名称】ハルティング エレクトロニクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】HARTING Electronics GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】インタオ ワン
(72)【発明者】
【氏名】ジュンミン グオ
【審査官】
武山 敦史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−253812(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0059953(US,A1)
【文献】
特開2011−138686(JP,A)
【文献】
米国特許第07559785(US,B1)
【文献】
特開2010−177132(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3121328(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気ケーブル(810)用のケーブル側(110)と、対向コネクタ(10)に直接接点接続するための電気的な接点接続部(830)を有するプリント回路基板(820)を備えた接続側(120)とを有する2部分のシェル(200,300)と、
電気コネクタ(100)が前記対向コネクタ(10)に差し込まれるときに、前記電気コネクタ(100)を自動的に前記対向コネクタ(10)にロックするロックラッチ(600)と、を備える、電気コネクタ(100)用のロック装置であって、
前記シェル(200,300)は、上部シェル(200)及び下部シェル(300)から成っており、
前記ロックラッチ(600)は、前記下部シェル(300)の下側に形成された取付部(380)の内側に回転可能に取り付けられており、前記ロックラッチ(600)は、摺動要素(400)の内側に、前記摺動要素(400)によって包囲されるように配置されており、これにより、前記ロックラッチ(600)は、前記下部シェル(300)と前記摺動要素(400)との間に配置されており、
前記摺動要素(400)は、所定の距離だけ変位するように、前記上部シェル(200)に形成された、切欠きとしての摺動トラック領域(250,250’)の内側に係合する摺動ストッパ(420,420’)を有しており、
前記摺動要素(400)に引張り舌片(500)が設けられており、該引張り舌片(500)により、前記摺動要素(400)の軸方向の移動を始めることができ、
前記引張り舌片(500)によって前記摺動要素(400)が軸方向に変位されるときに、前記ロックラッチ(600)におけるフック(620)が僅かに上方移動を行い、その結果、相応に設けられた前記対向コネクタ(10)に対するロック解除動作が行われる、
ことを特徴とする、電気コネクタ用のロック装置。
【請求項2】
前記摺動要素(400)は、2つのガイドピン(410,410’)を備え、
前記ロックラッチ(600)は、2つのフォーク形ガイド(610,610’)を備え、
前記ガイドピン(410,410’)は、前記ロックラッチ(600)における前記フォーク形ガイド(610,610’)に係合する、請求項1の記載のロック装置。
【請求項3】
前記ロックラッチ(600)は、該ロックラッチ(600)及び前記下部シェル(300)に設けられた軸(650)により回転可能に取り付けられている、請求項1又は2記載のロック装置。
【請求項4】
前記ロックラッチ(600)の前記フック(620)は、ロック状態で、前記シェル(200,300)の外側で前記対向コネクタ(10)の凹部(11)に係合し、ロック解除状態で、前記シェル(200,300)に入り込む、請求項1から3までのいずれか1項記載のロック装置。
【請求項5】
少なくとも1つのコイルばね(140)は、差込方向で前記摺動要素(400)に作用する、請求項1から4までのいずれか1項記載のロック装置。
【請求項6】
前記上部シェル(200)を、保持成形部(215)により、接続側で前記下部シェル(300)に掛止させることができ、前記2つのシェル部分(200,300)を、2つのねじ(150,150’)により、ケーブル側で相互に固定することができる、請求項1から5までのいずれか1項記載のロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ケーブル用のケーブル側と、対向コネクタに直接に接点接続するための電気的な接点接続部を有するプリント回路基板の構成をした接続側とを有する2部分のシェルと、ロックラッチであって、ロックラッチにおいて、電気コネクタが対向コネクタに差し込まれるときに、電気コネクタは自動的に対向コネクタにロックされる、ロックラッチと、を備える、電気コネクタ用のロック装置に関する。
【0002】
発明の背景技術
この種のロック装置は、シールド対向コネクタ、いわゆるケージに連結される電気コネクタに必要である。SFPとしても知られたこのようなコネクタは、高いデータレートの信号を伝送するために、例えばイーサネットにおいて使用されている。このようなコネクタは、2芯の銅線に使用され、しかも光ファイバケーブルに適した電気光学変換器用に設計されている。
【0003】
そのようなコネクタ用の多数のロック機構が先行技術において既に知られている。このロック機構は、様々な方式で前記ケージに対するロック及び前記ケージからのロック解除を行う。米国特許第7507111号明細書において、同様の構造を有する光変換器モジュールが公知であり、この光変換器モジュールは、回転レバーを用いてロック解除することができる。ロック機構の小さな可動部品は、ここでは外側に配置されていて、自由に接近可能であり、その結果、可動部品は、損傷や汚染に対して保護されていない。
【0004】
発明の概要
本発明の課題は、簡単に操作することができる問題のないロック及びロック解除機構を備えたSFPコネクタを提供することである。
【0005】
この課題を解決するためのロック装置によれば、摺動要素の内側にロックラッチが配置されており、摺動要素は、所定の距離だけ変位するように、2部分のシェルの内側に配置されており、ロックラッチは、下部シェルの取付部の内側に回転可能に取り付けられており、摺動要素が軸方向に変位されるときに、ロックラッチにおけるフックが僅かに上方移動を行い、その結果、相応に設けられた対向コネクタに対するロック解除動作又はロック動作が行われる。
【0006】
本発明の好適な態様は、従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明は、ギガビットイーサネットにおける高周波数データ伝送用のシールド電気コネクタに関する。このコネクタは、極細の構成を有し、グラスファイバ及び銅ワイヤの両方が伝送媒体として提供されている。ここで記載の態様は、パッシブ銅ワイヤを使用し、パッシブ銅ワイヤは、光ファイバの態様と比べて低い電力消費量の利点を有する。その一方で、提案されたロック装置は、電気光学変換器の構成をしたSFPコネクタに簡単に適用することもできる。
【0008】
このいわゆるSFPコネクタ(SFP=Small Form−Factor Pluggable)の接続側は、対向コネクタの対応する接点接続部に接点接続するための接点接続表面を有するプリント回路基板を備える。コネクタシェルの接続側の構成及び寸法は、ここでは標準的な寸法で提供されている。
【0009】
コネクタシェルは、金属的にシールドしていて、かつロック解除機構を備えており、ロック解除機構は、ケーブル側に設けられた引張り舌片により作動させることができる。
【0010】
この種のコネクタは、いわゆるケージ、つまりシールドされた対向コネクタに連結されている。対向コネクタは、それ自体、通常、スイッチ、ルータ又はバスアダプタ用のシェルの内側で、換言するとイーサネットに使用される機器において、プリント回路基板上に直接に組み付けられている。これにより、コネクタは、対向コネクタに押し込まれるときに、シェルの対応する開口に押し込んでそこで強制的に掛止することができる。
【0011】
更に、ばね荷重を掛けられたロック解除機構には、対向コネクタをロック解除するための引張り舌片が設けられている。ここで特に好適には、ロック装置が、先行技術とは異なり、コネクタシェルの内側に配置されているので、部品(別の構成ではロック機構の外側に配置されていた)は、移動又は損傷され得ない。
【0012】
個々の信号ワイヤのケーブル接続は、ここでは関係ないので、詳しい説明はしない。個々のストランドは、これらがまとめられ、ブロックとして成形され、プリント回路基板と接点接続を行うように配置されていることを述べれば十分である。これにより、接続側においてプリント回路基板上で突出する接点接続トラックは、対向コネクタの対応する電気接点接続部に接点接続する。
【0013】
ここでは2つの部品、つまり下部シェル及び上部シェルから成り、信号を伝送するために内側に配置されたプリント回路基板を備え、好適には接続側に形成された機構により掛止されるコネクタは、連結されていて、2つのねじを用いてねじ止めされている。
【0014】
コネクタの内側に配置されたロック機構は、基本的にロックラッチと摺動要素とを備える。引張り舌片は、ケーブル側で摺動要素に取り付けられており、この引張り舌片により、摺動要素は、差込方向とは逆向きに移動することができ、その移動は、ばねにより反転可能である。
【0015】
摺動要素に加えて、ロック機構は、傾動可能なロックラッチも備える。後者は、コネクタを、その外側で、対向コネクタに対してロックする。摺動要素の軸方向移動は、2つのガイドピンによりロックラッチに伝達される。ガイドピンは、それぞれロックラッチのフォーク形ガイドにおいて案内されている。
【0016】
ロックラッチは、T字形要素であり、上側の横方向領域の下側で、横方向領域に対して平行に延在する軸取付部を備え、軸取付部を通して軸が案内されており、軸は、シェルの軸孔に保持される。ロックラッチのこのような取付は、ロックラッチがシェルにおいて自由に回転できることを保証する。
【0017】
ロックラッチのフォーク形ガイドは、T字形状の横方向領域の外側端部に設けられている。フォーク形ガイドは、摺動要素の軸方向移動に関して、コネクタの内側に向かって所定の角度で方向付けて配置されていて、ロックラッチの第1の梃子腕を形成する。フォーク形ガイドのこのような配置の結果、ロックラッチは、摺動要素部分が第1の梃子腕部分により軸方向に移動させられるとき、所定の角度だけ軸を中心に回転させられる。
【0018】
ロックラッチの回転は、第2の梃子腕部分に伝達される。第2の梃子腕部分は、T字形状の縦方向領域により形成されている。フックは、対向コネクタに設けられた対応する凹部に掛止するために、第2の梃子腕部分の外面に設けられている。ロックラッチの回転により、フックが僅かにコネクタシェル内に上方移動させられ、対向コネクタに対するロック結合を解除する。
【0019】
したがってロック結合は、差込方向とは逆向きの引張り舌片の引張り移動により解除され、コネクタを、対向コネクタから取り外すことができる。
【0020】
発明の典型的な実施の形態は、以下においてより詳細に説明されていて、かつ図面に例示されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】対向コネクタと共に本発明に係るコネクタを示す図である。
【
図4a】
図3aの下部シェルの外側を示す図である。
【
図7a】単独でケーブル接続方向からみた摺動要素を示す図である。
【
図7b】差込方向からみた
図7aの摺動要素を示す図である。
【
図8a】ロック位置でコネクタの一部を示す部分断面図である。
【
図8b】ロック解除位置で
図8aのコネクタの一部を示す部分断面図である。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明に係る電気コネクタ100及び電気コネクタ100用に提供される対向コネクタ10が
図1に示されている。コネクタ100は、2つのシェル半部、つまり上部シェル200及び下部シェル300から成り、接続側120とケーブル側110とを有する。
【0023】
所定の軸方向範囲だけ変位させることができる引張り舌片500により作動させることができるロック解除機構が、2つのシェルの内側に配置されている。引張り舌片は、好適には、ロック解除機構の1つの構成要素である摺動要素400に取り付けられている。
【0024】
図2は、コネクタに付属する個々の部品の全体を分解図で示している。
【0025】
下部シェル300は、
図2では上に配置された上部シェル200と共に示されている。電気ケーブル810が取り付けられたプリント回路基板820が、下部シェル300に取り付けられており、ケーブル810を包囲するストレインレリーフ860が、下部シェル300に挿入されている。摺動要素400、及びロック解除機構に付属する傾動可能なロックラッチ600は、下部シェル300の下側に示されている。別個の軸650が、ロックラッチ600に設けられており、軸650は、ロックラッチ600における軸取付部640(
図6参照)及び下部シェル300における軸孔350,350’(
図4b参照)に押し込むことができ、したがって軸650を中心とするロックラッチ600の回転運動を可能にする。ロック解除機構は、引張り舌片500と、摺動要素400に作用する2つのコイルばね140,140’とにより完成されている。
【0026】
シールド要素700は、電気コネクタ100から対向コネクタ10にシールド作用を伝えるために設けられている。
【0027】
下部シェル300は、
図3a及び
図3bにより詳細に図示してある。下部シェル300は、2つの側壁310,310’と、ケーブル側に形成されたケーブル固定部370と、開いた接続側120とを有する半開きのシェルを備える。
【0028】
側壁310,310’の内側で、接続側120に向いた下部シェル300の前方領域に、階段状の構造部315,315’がそれぞれ設けられており、プリント回路基板820が電気コネクタ100に挿入されている場合、階段状の構造部315上でプリント回路基板820が支持され、これに対して別の側からプリント回路基板820を固定する2つの成形部215,215’が、上部ハウジング200に設けられている。接続側120におけるプリント回路基板820の固定は重要である。なぜならば対向コネクタ10との接点接続が前記プリント回路基板820上に配置された電気的な接点接続部830を介して生じるからである。
【0029】
EMCシールディングされたシェルを達成するために、段付きの突出部が、側壁310,310’の縁部及び上部シェル200の側壁210,210’の縁部に設けられていて、2つのシェル200,300が組み合わされるとき、相互に内外に係合し、その結果、ある種のラビリンスシールを生じさせる。
【0030】
ケーブル側110では、電気ケーブル810のストレインレリーフ860用の取付部360が、下部シェル300においてケーブル固定部370の隣に追加的に設けられている。コイルばね140,140’用のばね取付部340,340’として働く2つの凹部が、下部シェル300の横方向端部の内側に設けられている。
【0031】
図4a及び
図4bは、下部シェル300を、同じく詳細に、但し外側からみた図で示している。ロックラッチ600をその内側に配置することができる取付部380は、ケーブル側110で下部シェル300に形成されている。軸650は、軸孔350,350’とロックラッチ600の軸取付部640とを通って押し通され、その結果、ロックラッチ600は、下部シェル300に回転可能に収容される。軸孔350,350’は、軸650を収容するために下部シェル300に設けられている。下部シェル300の外側に位置する孔390,390’は、シールド要素700を固定する働きをする。
【0032】
下部シェル300の外側ケーブル接続端部320は、摺動要素400により包囲されるように設けられており、その結果、内側に位置するロック解除機構が防護されている。
【0033】
上部シェル200は、その詳細が、
図5a及び
図5bに示されている。段付きの突出部を有する上述の側壁210,210’は、
図5aにおいて看取することができる。側壁210,210’は、下部シェル300の側壁310,310’と結合してEMCシールディングされたシェルを形成する。
図5aに示されているように、成形部215,215’は、組み立てられたシェル200,300にプリント回路基板820を固定する働きをする。
【0034】
図5bの詳細図は、ケーブル固定部270及びストレインレリーフ取付部260を示しており、ケーブル固定部270及びストレインレリーフ取付部260は、それぞれ下部シェル300に設けられた構成要素370,360と協働する。コイルばね140,140’用のばね取付部240,240’として働く凹部が、ケーブル接続端部における両方の縦長に延在する側方の内側に設けられている。
【0035】
摺動トラック領域250,250’を形成する切欠(切込部)が、それぞればね取付部240,240’に設けられている。摺動要素400は、両側で摺動トラック領域250,250’に係合し、その際、摺動ストッパ420,420’が、最大摺動行程を制限するように設けられている(
図8a及び
図8b)。
【0036】
図6は、ロックラッチ600を単独で示しており、ロックラッチ600は、下部シェル300に取り付けるために設けられている。ロックラッチ600は、T字形要素であり、「T」の横方向の領域は、第1の梃子腕部分601を形成し、「T」の縦方向の領域は、第2の梃子腕部分602を形成している。
【0037】
「T」の横方向の領域に対して平行に方向付けられたスリーブ状の軸取付部640は、第2の梃子腕部分602に対して第1の梃子腕部分601を連結する。軸取付部640は、ロックラッチ600の旋回点として働く。手前に図示された軸650により、ロックラッチ600は、下部シェル300に回転可能に収容されており、軸650は、軸取付部640を通って案内されている。軸650は、ここでは溝付きスプリングピンとして構成されており、この溝付きスプリングピンは、抜落ち防止のために、ばね張力を掛けつつ下部シェル300における孔350、350’に挿入されている。
【0038】
第1の梃子腕部分601の外側端部に、フォーク形ガイド610,610’がそれぞれ設けられており、フォーク形ガイド610,610’の開口は、ロックラッチ600の中心線660に対して所定の角度に、例えば図示の態様では45°の角度に配向されている。2つのフォーク形ガイド610,610’は、ケーブル接続端部320をフォーク形ガイド610,610’の間に収容することができ、かつ摺動要素400がロックラッチ600の周りに係合することができるような間隔を置いて相互に離れて配置されている。
【0039】
第2の梃子腕部分602は、その端部にフック620を備え、フック620は、ロックラッチ600の中心線660に関してフック620が第1の梃子腕部分601におけるフォーク形ガイド610,610’とは反対側に位置するように、配置されている。フック620は、対向コネクタ10における凹部11に対応する三角形の構成を有し、この凹部11にフック620がロック状態で掛止する。フック620は、対向コネクタをロックすることができるように、第2の梃子腕部分602に面する端部で平らにされている。電気コネクタ100が対向コネクタ10にロックされている場合、対向コネクタ10が弾性変形によりフック620に掛止されているので、ロック解除機構を解除する必要はない。
【0040】
図7a及び
図7bは、それぞれケーブル接続方向及び差込方向からみた摺動要素400を示している。摺動要素400は、薄肉のU字形要素である。摺動要素400は、下部シェル300のケーブル接続端部320に取り付けられ、ロックラッチ600は、ケーブル側320と摺動要素400との間に配置される。
【0041】
引張り舌片500を収容しかつ固定する働きをする成形部430が、内側で摺動要素400の下側部分の中央に設けられている。摺動ストッパ420,420’が、摺動要素400の側方アームに一体的に形成されている。これらの摺動ストッパ420,420’は、上部シェル200の摺動トラック領域250,250’に係合し、摺動要素400の最大軸方向摺動行程を制限する。
【0042】
コイルばね140,140’用の取付ピン440,440’、及びロックラッチ600のフォーク形ガイド610,610’がその周りに係合するガイドピン410,410’は、それぞれ摺動要素400の側方アームの内側に位置している。
【0043】
取付ピン440,440’は、摺動要素400と共に、シェル200,300のばね取付部240,240’、340,340’の内側で移動する。引張り舌片500が引っ張られると、摺動要素400は、ゆえに軸方向の摺動距離だけ差込方向とは逆向きに移動させられ、その結果、コイルばね140,140’は、摺動要素400における取付ピン440,440’により圧縮されている。引張り舌片500が解放されると、摺動要素400は、コイルばね140,140’のエネルギにより、所期位置に変位し戻される。
【0044】
摺動要素400の移動中、ガイドピン410,410’は、ピンの周りに案内された、ロックラッチ600のフォーク形ガイド610,610’に作用する。ロック解除機構が作動させられると、ガイドピン410,410’は、ロックラッチ600を、位置固定であるが回転可能な軸取付部640に関して傾動させ、その結果、第2の梃子腕部分602は、フック620でもって、下部シェル300に引き込まれ、対向コネクタ10に対するロック接続部は解離される。
【0045】
引張り舌片500が解放されると、ガイドピン410,410’は、フォーク形ガイド610,610’と共に、ロックラッチ600を戻す。摺動要素400のこのばね付勢による戻しは、電気コネクタ100と対向コネクタ10との間のロック接続を確保する。
【0046】
電気コネクタのケーブル接続端部は、
図8aに、ロック位置で電気コネクタ100の一部で示されており、ロック解除機構は部分的に断面図で示されている。
【0047】
ロックラッチ600は、電気コネクタ100に対して平行に水平のロック位置に位置する。フック620は、対向コネクタ10に対するロックを可能にするために電気コネクタ100から突出している。摺動要素400は、摺動トラック領域250における摺動ストッパ420により規定された前端位置に内側で作用するコイルばね140,140’により押圧されている。摺動要素400のガイドピン410は、ロックラッチ600のフォーク形ガイド610の最も内側の位置に位置しており、その結果、ロックラッチ600は、回転を阻止されている。
【0048】
最後に、
図8bは、ロック解除位置で、
図8aの電気コネクタのケーブル接続端部を示している。
図8bでも、ロック解除機構は部分的に断面図で示されている。
【0049】
摺動要素400は、ばね作用に対抗する引張り舌片500の作用により後端位置に引っ張られている。図示された後端位置は、
図8aの前端位置と同様に、摺動トラック領域250における摺動ストッパ420により規定されている。ばね作用に対抗してロック解除機構を解放する摺動要素400の摺動行程は、矢印450により示されている。
【0050】
摺動要素400により差込方向とは逆向きに移動させられたガイドピン410は、フォーク形ガイド610に作用し、ロックラッチ600を、軸650を中心に時計回り方向に回転させる。ロックラッチ600の回転により、フック620が僅かに上方移動させられ、これにより、ロックフック620は、シェル200,300に引っ込み、対向コネクタ10に対するロック接続を解除する。
【符号の説明】
【0051】
10 対向コネクタ
11 凹部
100 電気コネクタ
110 ケーブル側
120 接続側
140,140’ コイルばね
150,150’ ねじ
200 上部シェル
210,210’ 側壁
215,215’ 成形部
240,240’ ばね取付部
250,250’ 摺動トラック領域
260 ストレインレリーフ取付部
270 ケーブル固定部
300 下部シェル
310,310’ 側壁
315,315’ 階段状の構造部
320 ケーブル接続端部
340,340’ ばね取付部
350,350’ 軸孔
360 ストレインレリーフ取付部
370 ケーブル固定部
380 取付部
390,390’ 孔
400 摺動要素
410,410’ ガイドピン
420,420’ 摺動ストッパ
430 成形部
440,440’ コイルばね用の取付ピン
450 摺動行程
500 引張り舌片
600 ロックラッチ
601 第1の梃子腕部分
602 第2の梃子腕部分
610,610’ フォーク形ガイド
620 フック
640 軸取付部
650 軸
660 中心線
670 回転軸線
700 シールド要素
810 電気ケーブル
820 プリント回路基板
830 電気接点接続部
860 ストレインレリーフ