特許第5738497号(P5738497)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機エンジニアリング株式会社の特許一覧

特許5738497共振結合型電力伝送システム、共振型電力送信装置及び共振型電力受信装置
<>
  • 特許5738497-共振結合型電力伝送システム、共振型電力送信装置及び共振型電力受信装置 図000002
  • 特許5738497-共振結合型電力伝送システム、共振型電力送信装置及び共振型電力受信装置 図000003
  • 特許5738497-共振結合型電力伝送システム、共振型電力送信装置及び共振型電力受信装置 図000004
  • 特許5738497-共振結合型電力伝送システム、共振型電力送信装置及び共振型電力受信装置 図000005
  • 特許5738497-共振結合型電力伝送システム、共振型電力送信装置及び共振型電力受信装置 図000006
  • 特許5738497-共振結合型電力伝送システム、共振型電力送信装置及び共振型電力受信装置 図000007
  • 特許5738497-共振結合型電力伝送システム、共振型電力送信装置及び共振型電力受信装置 図000008
  • 特許5738497-共振結合型電力伝送システム、共振型電力送信装置及び共振型電力受信装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5738497
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】共振結合型電力伝送システム、共振型電力送信装置及び共振型電力受信装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 17/00 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
   H02J17/00 B
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-555886(P2014-555886)
(86)(22)【出願日】2014年9月2日
(86)【国際出願番号】JP2014073067
【審査請求日】2014年11月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123434
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 英昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100156351
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 秀央
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(72)【発明者】
【氏名】阿久澤 好幸
(72)【発明者】
【氏名】酒井 清秀
(72)【発明者】
【氏名】江副 俊裕
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−177018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を供給する共振型電源、及び前記共振型電源により供給された電力を伝送する共振型送信アンテナを有する共振型電力送信装置と、
前記共振型送信アンテナにより伝送された電力を受信する共振型受信アンテナ、及び前記共振型受信アンテナにより受信された電力を負荷へ供給する受信回路を有する共振型電力受信装置とを備え、
前記共振型電源の共振特性値をQoとし、前記共振型送信アンテナの共振特性値をQtとし、前記共振型電力受信装置の共振特性値をQrとしたとき、0.5Qr≦√(Qo・Qt)≦1.5Qrを満たすように、前記共振型電源、前記共振型送信アンテナ、前記共振型受信アンテナ及び前記受信回路の特性インピーダンスを設定した
ことを特徴とする共振結合型電力伝送システム。
【請求項2】
前記共振型送信アンテナと前記共振型受信アンテナとの間の結合係数をkとしたとき、0.5≦k√(Qo・Qt)≦1.5を満たす
ことを特徴とする請求項記載の共振結合型電力伝送システム。
【請求項3】
前記共振型送信アンテナと前記共振型受信アンテナとの間の結合係数をkとしたとき、0.5≦k・Qr≦1.5を満たす
ことを特徴とする請求項記載の共振結合型電力伝送システム。
【請求項4】
前記共振型送信アンテナの共振周波数と前記共振型受信アンテナの共振周波数は異なる
ことを特徴とする請求項1記載の共振結合型電力伝送システム。
【請求項5】
前記共振型電源の共振周波数は2MHz以上である
ことを特徴とする請求項1記載の共振結合型電力伝送システム。
【請求項6】
前記共振型送信アンテナと前記共振型受信アンテナとの間の共振結合による電力伝送方式は、磁界、電界、電磁誘導のうちのいずれかである
ことを特徴とする請求項1記載の共振結合型電力伝送システム。
【請求項7】
電力を供給する共振型電源と、
前記共振型電源により供給された電力を伝送する共振型送信アンテナとを有し、
前記共振型電源の共振特性値をQoとし、前記共振型送信アンテナの共振特性値をQtとし、前記共振型送信アンテナにより伝送された電力を受信する共振型受信アンテナ、及び前記共振型受信アンテナにより受信された電力を負荷へ供給する受信回路を有する共振型電力受信装置の共振特性値をQrとしたとき、0.5Qr≦√(Qo・Qt)≦1.5Qrを満たすように、前記共振型電源、前記共振型送信アンテナ、前記共振型受信アンテナ及び前記受信回路の特性インピーダンスを設定した
ことを特徴とする共振型電力送信装置。
【請求項8】
電力を供給する共振型電源、及び前記共振型電源により供給された電力を伝送する共振型送信アンテナを有する共振型電力送信装置により伝送された電力を受信する共振型受信アンテナと、
前記共振型受信アンテナにより受信された電力を負荷へ供給する受信回路とを有し、
前記共振型電源の共振特性値をQoとし、前記共振型送信アンテナの共振特性値をQtとし、自身の共振特性値をQrとしたとき、0.5Qr≦√(Qo・Qt)≦1.5Qrを満たすように、前記共振型電源、前記共振型送信アンテナ、前記共振型受信アンテナ及び前記受信回路の特性インピーダンスを設定した
ことを特徴とする共振型電力受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、共振型送受信アンテナの共振特性を利用して電力伝送を行う共振結合型電力伝送システム、共振型電力送信装置及び共振型電力受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、エネルギーを無線で転送する装置が知られている(例えば特許文献1−3参照)。この装置は、第1の共振器構造(共振型送信アンテナ)と、この第1の共振器構造から遠位に位置する第2の共振器構造(共振型受信アンテナ)から構成されている。第1の共振器構造は、電力供給源(交流出力型電源)からエネルギーを受け取って、電磁共鳴(磁界共振結合)により第2の共振器構造へ非放射で転送するものである。また、第2の共振器構造は、第1の共振器構造からのエネルギーを受けて外部負荷(受信回路)へ供給するものである。また、第1の共振器構造の共振特性値Q1及び第2の共振器構造の共振特性値Q2が下式(1)を満たすように設定されている。
√(Q1・Q2)>100 (1)
これにより、エネルギーの転送効率を下げることなく、第1,2の共振器構造間の距離を、その特徴的なサイズ(従来の電磁誘導による距離)よりも大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−177018号公報
【特許文献2】特表2012−502602号公報
【特許文献3】特表2009−501510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1−3に開示された従来装置では、第1,2の共振器構造の共振特性値Q1,Q2のみを考慮しており、第1の共振器構造に繋がる電力供給源による共振特性値の変動、及び第2の共振器構造に繋がる外部負荷による共振特性値の変動が考慮されていないという課題がある。
すなわち、高周波回路では、回路ブロック毎にインピーダンスの整合をとるインタフェースが必要となる。一方、従来装置では、第1,2の共振器構造の共振特性値Q1,Q2のみを考慮していることから、第1の共振器構造と電力供給源との間、及び第2の共振器構造と外部負荷との間に、上記インタフェースが設けられることになる。この構成の場合、第1,2の共振器構造間では、高効率に電力伝送を行うことができる。しかしながら、電力供給源及び外部負荷を含むシステム全体としてみた場合、上記のようなインタフェースがあることで、電力損失が非常に大きくなる。
【0005】
また、式(1)の条件では、第1,2の共振器構造間の結合度が適切でない場合、つまり、第1,2の共振器構造間の距離によっては、ロスエネルギーが大きく、効率的な電力伝送が行えないという課題がある。また、上記条件では、第1,2の共振器構造のアンテナ構成が制限されてしまい自由度がなく、小型化、軽量化、低コスト化が困難であるという課題がある。また、上記条件では、第1,2の共振器構造の一部として用いるキャパシタに高電圧が加わるため、高耐圧なキャパシタ等の特殊部品が必要となり、小型化、軽量化、低コスト化が困難であるという課題がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、共振型電源及び受信回路の影響による共振特性値の変動を考慮した設定を行い、従来装置に対してシステム全体での電力伝送の高効率化を図ることができる共振結合型電力伝送システム、共振型電力送信装置及び共振型電力受信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る共振結合型電力伝送システムは、電力を供給する共振型電源、及び共振型電源により供給された電力を伝送する共振型送信アンテナを有する共振型電力送信装置と、共振型送信アンテナにより伝送された電力を受信する共振型受信アンテナ、及び共振型受信アンテナにより受信された電力を負荷へ供給する受信回路を有する共振型電力受信装置とを備え、共振型電源の共振特性値をQoとし、共振型送信アンテナの共振特性値をQtとし、共振型電力受信装置の共振特性値をQrとしたとき、0.5Qr≦√(Qo・Qt)≦1.5Qrを満たすように、共振型電源、共振型送信アンテナ、共振型受信アンテナ及び受信回路の特性インピーダンスを設定したものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、上記のように構成したので、共振型電源及び受信回路の影響による共振特性値の変動を考慮した設定を行い、従来装置に対してシステム全体での電力伝送の高効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態1に係る共振結合型電力伝送システムの構成を示す図である。
図2】この発明の実施の形態1に係る共振結合型電力伝送システムの構成を示す回路図である。
図3】この発明の実施の形態1における共振型送受信アンテナ間の距離と結合係数との関係を示す図である。
図4】この発明の実施の形態1に係る共振結合型電力伝送システムの電力伝送効率を示す図であり、(a)k√(Qo・Qt)>1,k・Qr>1の場合を示す図であり、(b)k√(Qo・Qt)≒1,k・Qr≒1の場合を示す図であり、(c)k√(Qo・Qt)<1,k・Qr<1の場合を示す図である。
図5】この発明の実施の形態1における共振型送受信アンテナの共振周波数の設定を説明する図であり、(a)共振型送受信アンテナの共振周波数を示す図であり、(b)共振型送受信アンテナの共振周波数の設定による電力伝送効率を示す図である。
図6】この発明の実施の形態1における共振型電源回路の別の構成を示す回路図であり、(a)ブリッジ型コンバータを示す図であり、(b)D級コンバータを示す図であり、(c)DE級コンバータを示す図である。
図7】この発明の実施の形態1における整流回路の別の構成を示す回路図であり、(a)E級整流回路を示す図であり、(b)倍電流整流回路を示す図であり、(c)半波整流回路を示す図であり、(d)倍電圧整流回路を示す図である。
図8】この発明の実施の形態1に係る共振結合型電力伝送システムの別の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る共振結合型電力伝送システムの構成を示す図であり、図2は具体的な回路図である。
共振結合型電力伝送システムは、図1,2に示すように、共振型電力送信装置1及び共振型電力受信装置2から構成されている。なお図2に示す共振結合型電力伝送システムでは、後述する共振型電源11の共振周波数が2MHz以上である場合を示しているが、2MHz未満のものを用いてもよい。
【0011】
共振型電力送信装置1は、共振型電源11、整合回路12及び共振型送信アンテナ13から構成されている。
【0012】
共振型電源11は、共振型送信アンテナ13への電力の供給を制御するものであり、直流又は交流の入力電力を所定の周波数の交流に変換して出力するものである。この共振型電源11は、共振スイッチング方式による電源回路で構成され、出力インピーダンスZo、共振周波数fo及び共振特性値Qoを有する。
【0013】
整合回路12は、共振型電源11の出力インピーダンスZoと共振型送信アンテナ13の通過特性インピーダンスZtとの間のインピーダンス整合を行うものである。この整合回路12は、インダクタL及びキャパシタCによるπ型やL型のフィルタで構成され、その通過特性インピーダンスZpを有する。
【0014】
共振型送信アンテナ13は、整合回路12を介した共振型電源11からの交流電力を入力して共振動作を行い、非放射型の電磁界を近傍に発生させることで、共振型受信アンテナ21に対して電力伝送を行うものである。この共振型送信アンテナ13は、コイル形状による共振型のアンテナであり、その通過特性インピーダンスZt、共振周波数ft及び共振特性値Qtを有する。
【0015】
また、共振型電源11の共振周波数fo及び共振特性値Qoは、共振型電源11の出力インピーダンスZoと整合回路12の通過特性インピーダンスZpから決まる。共振型送信アンテナ13の共振周波数ft及び共振特性値Qtは、共振型送信アンテナ13の通過特性インピーダンスZtと整合回路12の通過特性インピーダンスZpから決まる。
そして、この2つの共振特性値Qo,Qtから、共振型電力送信装置1は共振特性値Qtx=√(Qo・Qt)を有することになる。
【0016】
共振型電力受信装置2は、共振型受信アンテナ21、整流回路22及び受信回路23により構成されている。この共振型電力受信装置2は、共振周波数fr及び共振特性値Qrを有している。
【0017】
共振型受信アンテナ21は、共振型送信アンテナ13からの非放射型の電磁界と共振結合動作を行うことで電力を受信し、交流電力を出力するものである。この共振型受信アンテナ21は、コイル形状による共振型のアンテナであり、その通過特性インピーダンスZrを有する。
【0018】
整流回路22は、共振型受信アンテナ21からの交流電力を直流電力に変換する整流機能と、共振型受信アンテナ21の通過特性インピーダンスZrと受信回路23の入力インピーダンスZRLとの間のインピーダンス整合を行う整合機能を有する整合型整流回路である。整合機能は、インダクタL及びキャパシタCによるπ型やL型のフィルタで構成される。また、整流回路22は、通過特性インピーダンスZsを有する。なおここでは、整流回路22が整流機能及び整合機能を有するものとしたが、これに限るものではなく、整流効率は下がるが整流機能のみで構成してもよい。
【0019】
受信回路23は、整流回路22からの直流電力を入力し、所定の電圧へ変換して負荷(不図示)へ供給するものである。この受信回路23は、高周波電圧リップルを平滑するためのLCフィルタ(平滑フィルタ)と、所定の電圧へ変換するためのDC/DCコンバータ等で構成され、その入力インピーダンスZRLを有している。なお、DC/DCコンバータを設けず、平滑フィルタのみで構成してもよい。
【0020】
また、共振型電力受信装置2の共振特性値Qr及び共振周波数frは、共振型受信アンテナ21の通過特性インピーダンスZrと、整流回路22の通過特性インピーダンスZsと、受信回路23の入力インピーダンスZRLから決まる。
【0021】
なお、共振型送受信アンテナ13,21の共振結合による電力伝送方式は特に限定されるものではなく、磁界共鳴による方式、電界共鳴による方式、電磁誘導による方式、接触型の共振結合方式のいずれであってもよい。
【0022】
そして、本発明では、共振型電源11の共振特性値Qo、共振型送信アンテナ13の共振特性値Qt及び共振型電力受信装置2の共振特性値Qrに相関関係を持たせるように、各機能部の特性インピーダンスを設定する。すなわち、共振型電力送信装置1の共振特性値Qtx(=√(Qo・Qt))と共振型電力受信装置2の共振特性値Qrとを近づける(下式(2))。具体的には下式(3)の範囲内であればよい。
√(Qo・Qt)≒Qr (2)
0.5Qr≦√(Qo・Qt)≦1.5Qr (3)
【0023】
これにより、共振型送信アンテナ13に繋がる共振型電源11の影響による共振特性値の変動、及び共振型受信アンテナ21に繋がる受信回路23の影響による共振特性値の変動を考慮して、共振型電力送信装置1及び共振型電力受信装置2を設定することが可能となる。その結果、システム全体として高効率な電力伝送が可能となる。
【0024】
次に、図3を用いて、共振型送受信アンテナ13,21間の距離dと結合係数k(≒磁束鎖交率)との関係について説明する。ここで、共振型送受信アンテナ13,21(ヘリカル型アンテナ)の径Φを18[cm]とした場合、距離dと結合係数kとの関係は図3(b)のようになる。すなわち、距離dが近いほど結合係数kが大きくなり、距離dが遠くなるほど結合係数kが小さくなる。
しかしながら、本発明のように3つの共振特性値Qo,Qt,Qrに相関関係を持たせることで、電力伝送効率を下げることなく、共振型送受信アンテナ13,21間の距離を、従来の電磁誘導による距離よりも大きくすることができる。
【0025】
また、共振型電力送信装置1において、下式(4)を満たすように、各機能部の特性インピーダンスを設定する。具体的には下式(5)の範囲内であればよい。
k√(Qo・Qt)≒1 (4)
0.5≦k√(Qo・Qt)≦1.5 (5)
また、共振型電力受信装置2において、下式(6)を満たすように、各機能部の特性インピーダンスを設定する。具体的には下式(7)の範囲内であればよい。
k・Qr≒1 (6)
0.5≦k・Qr≦1.5 (7)
これにより、図4に示すように、システム全体としての電力伝送効率をより高めることができる。
【0026】
更に、図5(a)に示すように、式(2),(3)の条件下において、共振型送信アンテナ13の共振周波数ft(実線)と共振型受信アンテナ21の共振周波数fr(破線)とを異なる値に設定する。この際、理想的には、共振特性値Qtx,Qrの交点が最も高くなるように共振周波数ft,frをずらし、且つ、当該交点を共振型電源11の共振周波数foに一致させる。これにより、図5(b)に示すように、式(2),(3)での共振特性値を最大に近づけることができ、共振周波数(伝送周波数)foにおいて、電力伝送効率を最大に近づけることができる。
【0027】
次に、従来装置と本発明との違いについて説明する。
従来装置は、上述したように、第1の共振器構造(共振型送信アンテナ)の共振特性値Q1と、第2の共振器構造(共振型受信アンテナ)の共振特性値Q2とを式(1)を満たすように高く設定したものである。一方、本発明では、共振型電源11の共振特性値Qo、共振型送信アンテナ13の共振特性値Qt及び共振型電力受信装置2の共振特性値Qrという3つの共振特性値に相関関係を持たせたものである。その結果、電力伝送効率を下げることなく、共振型送受信アンテナ13,21間の距離dを、従来の電磁誘導による距離よりも大きくすることができる。つまり、本発明では、従来装置の共振特性値Q1,Q2に相当する共振型送受信アンテナ13,21の共振特性値√(Qo・Qt),Qrが従来装置よりも低い場合であっても、遠距離へ高効率な電力伝送が可能である。以下、具体例を示す。
【0028】
まず、共振型電源11の共振周波数foにおいて、共振型電源11の共振特性値Qoを4、共振型送信アンテナ13の共振特性値Qtを6に設定し、共振型電力受信装置2の共振特性値Qrを5に設定した場合を示す。
この場合、下式(8)の関係が成立する。
√(Qo・Qt)≒Qr≒5 (8)
【0029】
このとき、式(4),(6)から、下式(9)を満たす結合係数kの条件において、最も高効率な電力伝送が可能となる。
k≒1/5=0.2 (9)
【0030】
ここで、共振型送受信アンテナ13,21の径Φが18[cm]の場合(図3)、上記結合係数k=0.2を満たすためには、共振型送受信アンテナ13,21の距離dを約7cmに設定すればよい。また、その共振型送受信アンテナ13,21間の銅損を除く伝送効率ηは下式(10)となる。
η≒k√(√(Qo・Qt)・Qr)=99% (10)
【0031】
次に、共振型電源11の共振周波数foにおいて、共振型電源11の共振特性値Qoを40、共振型送信アンテナ13の共振特性値Qtを60に設定し、共振型電力受信装置2の共振特性値Qrを50に設定した場合を示す。
この場合、下式(11)の関係が成立する。
√(Qo・Qt)≒Qr≒50 (11)
【0032】
このとき、式(4),(6)から、下式(12)を満たす結合係数kの条件において、最も高効率な電力伝送が可能となる。
k≒1/50=0.02 (12)
【0033】
ここで、共振型送受信アンテナ13,21の径Φが18[cm]の場合(図3)、上記結合係数k=0.02を満たすためには、共振型送受信アンテナ13,21の距離dを約20cmに設定すればよい。また、その共振型送受信アンテナ13,21間の銅損を除く伝送効率ηは式(10)となる。
【0034】
次に、共振型電源11の共振周波数foにおいて、共振型電源11の共振特性値Qoを120、共振型送信アンテナ13の共振特性値Qtを80に設定し、共振型電力受信装置2の共振特性値Qrを100に設定した場合を示す。
この場合、下式(13)の関係が成立する。
√(Qo・Qt)≒Qr≒100 (13)
【0035】
このとき、式(4),(6)より、下式(14)を満たす結合係数kの条件において、最も高効率な電力伝送が可能となる。
k≒1/100=0.01 (14)
【0036】
ここで、共振型送受信アンテナ13,21の径Φが18[cm]の場合(図3)、上記結合係数k=0.01を満たすためには、共振型送受信アンテナ13,21の距離dを約30cmに設定すればよい。また、その共振型送受信アンテナ13,21間の銅損を除く伝送効率ηは式(10)となる。
【0037】
以上のように、この実施の形態1によれば、共振型電源11の共振特性値Qo、共振型送信アンテナ13の共振特性値Qt及び共振型電力受信装置2の共振特性値Qrに相関関係を持たせるように、各機能部の特性インピーダンスを設定したので、共振型電源11及び受信回路23の影響による共振特性値の変動を考慮して、共振型電力送信装置1及び共振型電力受信装置2を設定することが可能となり、従来装置に対してシステム全体として電力伝送の高効率化を図ることができる。また、共振型送受信アンテナ13,21の共振特性値に依らずに、電力伝送効率を下げることなく、共振型送受信アンテナ13,21間の距離を、従来の電磁誘導による距離よりも遠くすることができる。
【0038】
また、共振型送受信アンテナ13,21の共振特性値を高めなくてもよいため、共振型送受信アンテナ13,21は、共振特性値で制限されない自由度のあるアンテナ設計が可能となり、小型化、軽量化、低コスト化が可能となる。また、共振型送受信アンテナ13,21の一部として用いられるキャパシタに、高耐圧のキャパシタ等の特殊な部品を用いる必要はないため、小型化、軽量化、低コスト化が可能となる。
【0039】
なお、本発明の共振型電源11は、図2に示す回路構成に限るものではなく、例えば図6に示すような回路構成としてもよい。ここで、図6(a)はブリッジ型コンバータを示し、図6(b)はD級コンバータを示し、図6(c)はDE級コンバータを示している。
また、本発明の整流回路22は、図2に示す回路構成に限るものではなく、例えば図7に示すような回路構成としてもよい。ここで、図7(a)はE級整流回路を示し、図7(b)は倍電流整流回路を示し、図7(c)は半波整流回路を示し、図7(d)は倍電圧整流回路を示している。
【0040】
また図1では、共振型電力送信装置1に整合回路12を設けた場合を示した。しかしながら、これに限るものではなく、図8に示すように、整合回路12を設けずに構成してもよい。この場合、共振型電源11の共振周波数fo及び共振特性値Qoは、共振型電源11の出力インピーダンスZoと共振型送信アンテナ13の通過特性インピーダンスZtから決まる。また、共振型送信アンテナ13の共振周波数ft及び共振特性値Qtは、共振型送信アンテナ13の通過特性インピーダンスZtと共振型電源11の出力インピーダンスZoから決まる。
【0041】
また、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明に係る共振結合型電力伝送システムは、共振型電源及び受信回路の影響による共振特性値の変動を考慮した設定を行い、従来装置に対してシステム全体での電力伝送の高効率化を図ることができ、共振型送受信アンテナの共振特性を利用して電力伝送を行う共振結合型電力伝送システム等に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0043】
1 共振型電力送信装置、2 共振型電力受信装置、11 共振型電源、12 整合回路、13 共振型送信アンテナ、21 共振型受信アンテナ、22 整流回路、23 受信回路。
【要約】
電力を供給する共振型電源11、及び共振型電源11により供給された電力を伝送する共振型送信アンテナ13を有する共振型電力送信装置1と、共振型送信アンテナ13により伝送された電力を受信する共振型受信アンテナ21、及び共振型受信アンテナ21により受信された電力を負荷へ供給する受信回路23を有する共振型電力受信装置2とを備え、共振型電源11の共振特性値、共振型送信アンテナ13の共振特性値及び共振型電力受信装置2の共振特性値に相関関係を持たせるように、各機能部の特性インピーダンスを設定した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8