特許第5738515号(P5738515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5738515累積的なトウギャップ幅を決定するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738515
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】累積的なトウギャップ幅を決定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/14 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
   G01B11/14 H
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2008-331694(P2008-331694)
(22)【出願日】2008年12月26日
(65)【公開番号】特開2009-162753(P2009-162753A)
(43)【公開日】2009年7月23日
【審査請求日】2011年12月9日
(31)【優先権主張番号】11/968,395
(32)【優先日】2008年1月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー・ダブリュ・エンゲルバート
(72)【発明者】
【氏名】リード・ハンネボーム
(72)【発明者】
【氏名】エリック・レクター
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ヘイウッド
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−256119(JP,A)
【文献】 特表2007−532910(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/041768(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00〜11/30
9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
累積的なトウギャップ幅を決定するためのシステム(22)であって、
複合材料の像を記録するよう適合された少なくとも1つのカメラ(18)を有するインプロセス視認システム(1)と、
前記インプロセス視認システムと通信し、そこから像データを受取るよう適合されたデータ解析コンピュータ(24)とを含み、
前記データ解析コンピュータ(24)は複合材料におけるトウギャップの累積的なギャップ幅を計算するよう適合され、さらに
前記データ解析コンピュータと通信し、そこからデータ解析結果を受取るよう適合されたユーザインタフェース(26)を含み、
前記ユーザインターフェースは、クエリウィンドウ(49)の幅と高さを選択するように適合された累積的なギャップの密度クエリンターフェース(48)を含み、前記クエリウィンドウ内において前記累積的なトウギャップ幅が計算されるように構成され、前記データ解析コンピュータによる前記累積的なトウギャップ幅の計算が前記クエリウィンドウ(49)内部に見付けられた累積的なトウギャップ幅に限定されている、
システム。
【請求項2】
前記インプロセス視認システムは、
フレーム(2)および前記フレームによって担持される少なくとも1つのレーザ(14)と、
前記フレームによって担持される少なくとも1つのエリアライトとを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記データ解析コンピュータ(24)は、複合材料におけるトウギャップの前記累積的なギャップ幅を、最大許容可能な累積的ウギャップ幅の基準と比較するよう適合された、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記データ解析コンピュータ(24)は、複合材料におけるトウギャップの前記累積的なギャップ幅が前記最大許容可能な累積的ウギャップ幅の基準を満たす場合に複合材料の合格ステータスを表示するよう適合され、
前記データ解析コンピュータ(24)は、複合材料におけるトウギャップの前記累積的なギャップ幅が前記最大許容可能な累積的ウギャップ幅の基準を満たさない場合に複合材料の不合格ステータスを表示するよう適合される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記データ解析コンピュータ(24)は前記像データを表示するよう適合された、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
累積的なギャップ密度クエリインターフェース(48)は、前記カメラとによって記録された複数の個々の像フレームを表示し、前記クエリウィンドウ(49)は前記複数の個々の像フレームの部分集合である、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
累積的なギャップ密度クエリインターフェース(48)は、前記クエリウィンドウ(49)の画像を生成し、特定のトウギャップの位置と特定のギャップの幅に対する関係した情報を提供するように適合された、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
クエリウィンドウ(49)内で見られるギャップの合計をクエリウィンドウ(49)の高さで除すことにより、前記累積的なトウギャップ幅を求める、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
複合構造物におけるトウギャップの累積的なトウギャップ幅を決定する方法であって、
複合材料を与えるステップと、
前記複合材料の周期的な像を記録するステップと、
前記周期的な像からデータ解析コンピュータ(24)への画像データを受信するステップと、
前記複合材料におけるトウギャップの累積的なギャップ幅を計算するため前記画像データを解析するステップと、
前記データ解析コンピュータからのデータ解析結果をユーザインターフェース(26)に提供するステップとを含む、方法において、
前記ユーザインターフェースは累積的なギャップ密度クエリインターフェース(48)を含み、
前記累積的なギャップ密度クエリンターフェース(48)からクエリウィンドウ(49)の幅と高さを選択するステップであって、前記クエリウィンドウ内で前記累積的なトウギャップ幅が計算されるように構成されたステップをさらに含み、
前記累積的なトウギャップ幅の計算は、前記クエリウィンドウ内部に見つけられた該累積的なトウギャップ幅に限定されていることを特徴とする方法。
【請求項10】
最大の許容可能な累積的トウギャップ幅の基準に基づいて前記複合材料の合格/不合格のステータスを公式化するステップと、
前記複合材料におけるトウギャップの前記累積的な幅を前記最大許容可能な累積的ウギャップ幅の基準と比較するステップと、
前記複合材料におけるトウギャップの前記累積的な幅が前記最大許容可能な累積的ウギャップ幅の基準を満たすと前記複合材料を合格とし、前記複合材料におけるトウギャップの前記累積的な幅が前記最大許容可能な累積的ウギャップ幅の基準を満たさないと前記複合材料を不合格とするステップとをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記クエリウィンドウの画像を生成するステップと、
個々のトウギャップ(33)を共有するステップと、
特定の個々のトウギャップを強調するステップと、
前記トウギャップの位置のその幅に関した情報を提供するステップとを更に有する、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は複合構造物の製造に関する。より特定的には、この開示は、製作された複合構造物における累積的なトウギャップ幅を決定するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
複合構造物の製作方法は、ファイバ配置または自動照合プロセスを含む。このようなプロセスでは、複合材料からなる1つ以上のリボンまたはトウが、ツール、心棒または基板にレイダウンされ得、この基板は複合材料からなる下層となる圧縮された1つ以上の層であり得る。従来のファイバ配置プロセスは、局部的なニップ点における複合材料からなるプライの圧縮を助けるために熱源を利用することができる。複合材料からなるリボンまたはトウ、および下層となる基板は、圧縮力に晒される間にニップ点において加熱され得、プライの樹脂の粘着性を増加させて基板に対する接着を確実にする。この部分を完成するために、複合材料からなる付加的なストリップが並べて与えられて層を形成することができ、かつ圧密化プロセス中に局部的な熱および圧力に晒されてもよい。
【0003】
ファイバおよびテープ配置プロセスを用いて製作される複合構造物の検査には、複雑かつ詳細な検査ガイドラインが必要であり得る。ガイドラインは、トウギャップ、トウ重なり、捩れ、落下したトウおよび異物などの個別の不一致について許容基準を設定することができる。インプロセス視認技術により、製造プロセス中にこれらの不一致について許容/拒否を検出し、決定することが可能となり得る。ガイドラインはさらに、材料配置またはレイダウンの方向に直交する任意の12インチのエリア内の最大許容可能な累積的すなわち合計のトウギャップ幅について、要件を確立することができる。
【0004】
検査ガイドラインの要件を満たすための既存の解決策は、人間の目による手動の目視検査を含み得る。検査ガイドラインに従って、オペレータが正しいサイズのいくつかの領域を無作為に選択することができる。次いで、このオペレータは、検査されることとなるエリアを規定する手動のテンプレートを用いることができる。オペレータは、プライの全表面積に対する領域の位置を決定して文書にするための手段を利用してもよい。各エリア内で、オペレータは視覚的にトウギャップを識別し、6インチのスケールまたはダイヤルノギスなどのツールを用いて手動で各々を測定することが求められ得る。すべての識別されたギャップの幅が文書にされてもよく、ギャップ幅の合計が計算され、その特定の領域について合計が決定されることができる。この手法は製造される各部分の各プライで実行されてもよい。
【0005】
検査ガイドラインの要件を満たすための既存の解決策は、多大なサイクルタイムおよび接触作業を必要とし、不正確な測定となる相当な危険性をもたらしかねない。この手法は小さな部品には実行可能であり得るが、大きな表面積には管理不可能かもしれない。この手法はまた労働集約型で、測定における誤りの可能性が高くなる傾向にある。疲労や誤りの危険性を減じるためには複数の検査官を必要とすることがあり、これは検査を完成するのに必要な接触作業を増加させ得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「熱可塑性ファイバの配置のための材質選定/製作の問題(Material Selection/Fabrication Issues for Thermoplastic Fiber Placement)」(「熱可塑性複合材料ジャーナル(Journal of Thermoplastic Composite Materials)」(1995年1月))
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
この開示は、概して累積的なトウギャップ幅の決定のためのシステムに向けられる。システムの例示的な実施例は、複合材料の像を記録するよう適合された少なくとも1つのカメラを有するインプロセス視認システムと、インプロセス視認システムと通信し、これから像データを受取るよう適合されるデータ解析コンピュータとを含む。データ解析コンピュータは、複合材料におけるトウギャップの累積的なギャップ幅を計算するよう適合されてもよい。ユーザインタフェースは、データ解析コンピュータと通信し、そこからデータ解析結果を受取るよう適合されてもよい。
【0008】
この開示はさらに、概して複合構造物におけるトウギャップの累積的なトウギャップ幅を決定する方法に向けられる。この方法の例示的な実施例は、複合材料を与えるステップと、複合材料の周期的な像を記録するステップと、複合材料における拒否すべき兆候の存在について複合材料の像を解析するステップと、拒否すべき兆候に基いて複合材料の合格/不合格ステータスを公式化するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】累積的なトウギャップ幅を決定するためのシステムの例示的な実施例の、インプロセス視認システムの部分的概略側面図である。
図2図1に示されるインプロセス視認システムの上面図である。
図3】累積的なトウギャップ幅を決定するためのシステムの例示的な実施例のブロック図である。
図4】視認システムのユーザインタフェースのスクリーン図である。
図5】テープストリップにトウギャップを有する、1対の積層複合材テープストリップの断面図である。
図6】実験室検証のために利用される、シミュレーションされたマルチコース積層物である。
図7】累積的なギャップクエリの選択メニューを示す。
図8】累積的なギャップクエリインターフェースを選択した場合の正面図である。
図9】累積的なギャップ解析を示すウィンドウである。
図10】累積的なトウギャップ幅を決定するための例示的な方法のフロー図である。
図11】航空機生産および使用方法論のフロー図である。
図12】航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
この開示は、概して、自動材料配置によって生成された部品または構造物の表面上におけるプライまたはトウの任意の指定エリア内のトウギャップ幅を決定するシステムおよび方法に向けられる。このシステムおよび方法は、あらゆる自動的に配置されたトウに対してアーカイブされたインプロセス視認データを利用し、そのトウ上で選択された表面エリア領域をクエリし、かつトウのその各表面積領域内で検出されるトウギャップ幅を合計することができる。したがって、システムおよび方法は多大な検査サイクルタイムを減じ、複合材料の製作においてトウギャップ幅測定の精度を強化することができる。
【0011】
図面を参照して、累積的なトウギャップ幅を決定するためのシステムの例示的な実施例は、以後システムと呼ぶが、図3の概略的ブロック図における参照番号22によって一般
に表示される。システム22は、図1および図2に示され、下記に記載されるインプロセス視認装置1を含むことができる。インプロセス視認装置1は複合テープストリップまたはトウ32(図1)を照らして見るために適合されてもよく(図3)、このトウは、複合構造物30の圧密中にトウ32で形成されるトウギャップ33(図5)を含む。インプロセス視認装置1は、当業者に公知の自動ファイバまたは材料配置機械(示されない)と連動して作動してもよい。
【0012】
図3に示されるように、ユーザインタフェース26を有するデータ解析コンピュータ24がインプロセス視認装置1と通信することができる。データ解析コンピュータ24は、インプロセス視認装置1によって見えるトウ32上の選択され、クエリされた表面領域の像を受取り、格納するよう適合されてもよい。これらの像に基いて、データ解析コンピュータ24はまた、トウ32の材料配置またはレイダウンの方向に直交し得るトウ32のクエリされた表面領域(たとえば12インチ領域だが制限はない)内でトウギャップ33の累積的なギャップ幅を検出し計算するよう適合されてもよい。データ解析コンピュータ24は、計算された累積的なトウギャップ幅を最大許容可能な累積的なトウギャップ幅の基準と比較するようさらに適合されてもよい。データ解析コンピュータ24は、計算された累積的なトウギャップ幅が最大許容可能な累積的なトウギャップ幅の基準を満たす場合は、複合構造物30の継続的な製作のためにトウ32を受け取り(合格)、計算された累積的なトウギャップ幅が最大許容可能な累積的なトウギャップ幅の基準を満たさない場合は、製作のためのトウ32を拒否する(不合格)ように、プログラムされることができる。
【0013】
データ解析コンピュータ24に適した例示的なユーザインタフェース26のスクリーン図が図4に示される。ユーザインタフェース26は、さまざまな入力装置39、合格/不合格インジケータ40、インプロセス視認装置1によって見えるトウ32上の領域のリアルタイム像フレームを示す検査ウィンドウ41、および欠陥ウィンドウ42を含むことができるが、例であって制限はない。ユーザインタフェース26の入力装置39は、許容(合格/不合格)基準や検査ウィンドウ41に提示される像の像フレームサイズなどのパラメータの入力や変更を容易にすることができるが、例であって制限はない。図4に示される例において、いくつかの異なる幅のトウギャップ33を備えたトウ32のサンプルが検査ウィンドウ41に示される。ユーザインタフェース26の欠陥ウィンドウ42は、全幅、角度、長さ、および/または、トウ32のトウギャップ33の他のパラメータを表示してもよい。
【0014】
このユーザインタフェース26の合格/不合格インジケータ40には、合格ボタン40aおよび不合格ボタン40bを含んでもよい。データ解析コンピュータ24は、計算された累積的なトウギャップ幅が最大許容可能な累積的なトウギャップ幅の基準を満たす場合に合格ボタン40aを点灯させるよう適合され、計算された累積的なトウギャップ幅が最大許容可能な累積的なトウギャップ幅の基準を満たさない場合に不合格ボタン40bを点灯させるよう適合されてもよい。合格ボタン40aは赤などの目立つ色であり、不合格ボタン40bは緑などの異なる色であってもよいが、例であって制限はない。
【0015】
インプロセス視認装置1の例示的な構造が図1および図2に示される。一般に、図2に示されるように、インプロセス視認装置1は、1対の離れて間隔を置かれたフレームプレート3を含み得るフレーム2を含むことができる。図1に示されるように、フレームプレート3の各々は概して三角形の形状を有し得る。少なくとも1つのフレームプレートコネクタ4(図2)がフレームプレート3間に延在することができる。圧縮ローラ6がフレームプレート3間に延在することができる。
【0016】
レーザ取付けブラケット10が、フレーム2のフレームプレート3から延在することができる。レーザ配線14aを有する少なくとも1つのレーザ14がレーザ取付けブラケッ
ト10に与えられ得る。レーザ14はほぼ圧縮ローラ6に向かってレーザビーム15を放射するよう適合されることができる。カメラ配線18aを有する少なくとも1つのデジタルのカメラ18もまた、レーザ取付けブラケット10に与えられ得る。少なくとも1つのエリアライト16が、レーザ取付けブラケット10、または、概してカメラ18と圧縮ローラ6との間において、フレーム2のフレームプレート3のうち一方または両方に与えられてもよい。図2に示されるように、いくつかの実施例では、フレーム2の各フレームプレート3にエリアライト16が与えられてもよい。各エリアライト16はほぼ圧縮ローラ6に向かって光ビーム17(図1)を放射するよう適合されることができる。
【0017】
図1にさらに示されるように、システム22の典型的な用途では、インプロセス視認装置1は、複合テープからなる複数の隣接したストリップまたトウ32を含み得る複合構造物30上に位置決めされ得る。インプロセス視認装置1は、いかなる適切な支持構造物(示されない)を用いて複合構造物30の上で支持されてもよい。トウ32は、熱を与えると粘着性または流動性を有するようになる樹脂または他の材料に埋込まれた複数のファイバを含んでもよい。トウ32は、テーブルまたは心棒などのワーク面34上に配置されてもよいが、例であって制限はなく、当業者に公知の自動照合技術に従って複合構造物30を形成するために圧縮されてもよい。たとえば、リチャード・シャープ(Richard Sharp)らによる、「熱可塑性ファイバの配置のための材質選定/製作の問題(Material Selection/Fabrication Issues for Thermoplastic Fiber Placement)」と題されて「熱可塑性複合材料ジャーナル(Journal of Thermoplastic Composite Materials)」(1995年1月)において発表された記事で1つの従来型ファイバ配置プロセスが説明され、引用によって本願明細書に援用される。
【0018】
自動照合プロセスは、トウ32を材料びく(示されない)から自動照合機械会またはファイバ配置機械(示されない)まで導くステップを含み、インプロセス視認装置1はこれらの機械と連動して作用する。特に、トウ32は、インプロセス視認装置1の下のワーク面34に対して連続して自動的に導かれ、圧縮ローラ6の下に供給され得る。次いで、焦点を絞った熱エネルギが、入って来るトウ32と、以前にワーク面34に置かれて以前から圧縮されていたトウ32とに加えられ得る。圧縮ローラ6によって加えられる熱と圧力との組合せにより、トウ32は、圧縮されたトウ32の以前の層に対して圧密化され、それにより、付加的な複合構造物30の層を形成する。図6に示されるように、複数のトウ32がワーク面34に並んで置かれて、複合構造物30の複数の隣接したコースを形成する。圧縮ローラ6は、圧密化プロセス中に、図1の中の両矢印によって表示されるようにトウ32に沿って動かされてもよい。
【0019】
トウ32の複合構造物30に対する圧縮中に、積層されたトウ32間に図5に示されるトウギャップ33のような不一致が形成されることがある。したがって、システム22は、トウギャップ33の累積的なトウギャップ幅を計算するために、圧密化中に、複合構造物30上の表面領域および個々の表面領域においてトウ32に形成されたトウギャップ33を見て記録するよう動作してもよい。計算された累積的なトウギャップ33のトウギャップ幅を、トウギャップ33について最大許容可能な累積的なトウギャップ幅の基準と比較することによって、システム22のデータ解析コンピュータ24は、複合構造物30を製作するためにトウ32を受取るべき(合格)か拒否するべき(不合格)かを決定することができる。したがって、インプロセス視認装置1のレーザ14(図1および図2)は、圧縮ローラ6に概して隣接しているか近接した選択された表面領域でトウ32の表面に対してレーザビーム15を放射するよう動作することができる。エリアライト16もまた、トウ32の表面に対して光ビーム17を放射するよう動作し、この領域を照らす。カメラ18はトウ32の表面上の照らされた領域を見るために動作することができる。
【0020】
インプロセス視認装置1のカメラ18によって観測される像は、システム22のデータ
解析コンピュータ24(図3)のメモリに伝達され、格納され得る。この時点で、データ解析コンピュータ24は、複合構造物30上の選択された表面積に対応するトウ32のトウギャップ33の累積的なトウギャップ幅を計算し、計算された累積的なトウギャップ幅を、データ解析コンピュータ24のメモリに以前に予め格納された最大許容可能な累積的なトウギャップ幅の基準と比較することができる。計算された累積的なトウギャップ幅が最大許容可能な累積的なトウギャップ幅の基準を満たす場合、システム22のデータ解析コンピュータ24は、複合構造物30をさらに製作するためにトウ32を受取り、すなわち合格させることができる。この場合、データ解析コンピュータ24は、図4に示されるユーザインタフェース26上の合格/不合格インジケータ40のうち、合格ボタン40aを点灯させることができる。他方では、計算された累積的なトウギャップ幅が最大許容可能な累積的なトウギャップ幅の基準を満たさない場合、データ解析コンピュータ24は、複合構造物30をさらに製作するためのトウ32を拒否することができる。この場合、データ解析コンピュータ24は、ユーザインタフェース26上の合格/不合格インジケータ40のうち、不合格ボタン40bを点灯させることができる。
【0021】
データ解析コンピュータ24は、ユーザインタフェース26の検査ウィンドウ41(図4)において、カメラ18によってリアルタイムで観測される各像フレームを表示することができる。像フレームのサイズは、ユーザインタフェース26の制御入力装置39(図4)の操作によって選択的に調整することができる。
【0022】
図6は、実験室検証のために利用される、シミュレーションされたマルチコース積層物の複数の像フレーム36を示す。積層または複合構造物30は、右から左へそれぞれ「コース1」、「コース2」、「コース3」とラベル付けされたトウ32の3つのコースを含む。圧密化過程全体にわたってインプロセス視認装置1(図1図3)のカメラ18によって連続して見られる複数の個々の像フレーム36が各トウ32に示される。トウ32の表面上にレーザ14のレーザビーム15(図1)が衝突することによって形成されるレーザ線37が各像フレーム36に示される。各レーザ線37は歪んでおり、各コースで積重ねられ、または積層されたトウ32間のトウギャップ33が露呈されている。図6のように、複合構造物30がトウ32の並んだ複数のコースを含むことができるので、カメラ18の各像フレーム36はいくつかの用途において2つ以上のコースをカバーすることができる。
【0023】
図6に示されるトウ32の複数のコース上の像フレーム36は、たとえば、図7に示されるメニュー46を呼び出して、メニュー46の「テストジョブ」を選択して「プライ1」をクリックすることにより、データ解析コンピュータ24に表示することができる。次いで、「プライ1」を右クリックし、メニュー46の「累積的なギャップ密度クエリ」を選択することによって、トウギャップ33の累積的なギャップ幅を決定するプロセスが始められ得る。メニュー46は、部品または複合構造物30の完全なリストを含むよう設計することができ、それぞれにおいてプライ番号ごとに累積的なギャップ決定結果が利用可能である。
【0024】
図8に示される累積的なギャップ密度クエリインターフェース48は、累積的なギャップが計算されているクエリウィンドウまたは周辺領域の寸法の選択を容易にすることができる。累積的なギャップ密度クエリインターフェース48においては、クエリウィンドウ49の長さは、3つの材料コースのうちの2つの幅に対応する。クエリウィンドウ49はプライにわたって連続して「段階的(stepped)」なのでいかなる選択された寸法でもよく、ギャップはカバーされる各領域内で合計される。
【0025】
クエリウィンドウ49のサイズが選択されると、累積的なギャップ密度クエリインターフェース48で「OK」をクリックすることにより、図9に示されるような像を生成し得
る。トウギャップ33は像において実線で表示される。特定のトウギャップ33をハイライトすることにより、ギャップが検出されたプライコースおよび像フレームを与えることができ、それはさらに、トウギャップ33の幅およびそのx座標位置を与えることができる。クエリウィンドウ49のギャップインジケータ線50は、クエリウィンドウ49内で合計されているギャップを表示することができる。クエリウィンドウ49においてカーソルを位置決めすることにより、クエリ結果ボックス51にクエリ結果を表示することができる。累積的なギャップ幅の合計は、像フレーム36のクエリウィンドウ49の高さで除した、クエリウィンドウ49内で見られるギャップの合計であり得る。図9に示される例において、クエリウィンドウ49の高さは1つの像フレーム36の高さと等しい。累積的なギャップ密度は、クエリウィンドウ49で除した累積的なギャップの合計であり得る。
【0026】
次に図10を参照して、累積的なトウ幅ギャップを決定するための例示的な方法のフローチャート1000が示される。ブロック1002では、複合材料が表面に配置されることができる。ブロック1004では、複合材料は観察されることができる。ブロック1006では、複合材料の周期的な像が記録されることができる。ブロック1008では、複合材料の像は拒否すべき兆候の存在について解析されることができる。ブロック1010では、検査中の複合材料の面積、合格/不合格ステータス、および評価基準が表示され得る。
【0027】
次に図11および図12を参照して、この開示の実施例は、図11に示されるような航空機製造および使用方法78、ならびに図12に示されるような航空機94のコンテキストにおいて用いることができる。例示的な方法78は、生産前に、航空機94の仕様および設計80、ならびに材料調達手配82を含むことができる。生産中には、航空機94の構成要素およびサブアセンブリ製造84およびシステムインテグレーション86が起る。その後、航空機94は使用90に配置されるために認証および引渡し88を通過することができる。顧客による使用中、航空機94は、定期メンテナンスおよびサービス92(これはまた、修正、再構築、改装などを含み得る)を予定され得る。
【0028】
方法78の各プロセスは、システムインテグレータ、第三者、および/またはオペレータ(たとえば顧客)によって実行されたり実現されたりし得る。この説明のためには、システムインテグレータとは、いかなる数の航空機製造業者および主なシステム下請契約者も制限なく含むことができる。第三者とは、いかなる数のベンダ、下請契約者、供給業者も制限なく含み得、オペレータとは、航空会社、リース会社、軍事企業体、サービス組織などであり得る。
【0029】
図12に示されるように、例示的な方法78によって生成された航空機94は、複数のシステム96および内部100を備えた機体98を含むことができる。高水準システム96の例は、推進系102、電気系104、油圧系106および環境システム108の1つ以上を含む。いかなる数の他のシステムも含まれることができる。航空宇宙例が示されるが、この発明の原理は、自動車産業などの他の産業に適用されることができる。
【0030】
本願明細書に具体化された装置は、生産および使用方法78の段階のうち任意の1つ以上に使用され得る。たとえば、生産プロセス84に対応する構成要素またはサブアセンブリは、航空機94の使用中に生成される構成要素またはサブアセンブリに似た態様で製作または製造され得る。また、航空機94の組立てを実質的に促進したりコストを減じたりすることにより、たとえば生産段階84および86において1つ以上の装置実施例が利用され得る。同様に、航空機94がメンテナンスおよびサービス92に使用されている間に、1つ以上の装置実施例が利用され得る。
【0031】
この開示の実施例が一定の例示的な実施例に関して記載されたが、当業者には他の変形
例が思い浮かぶので、特定の実施例は制限ではなく例示目的であることが理解される。
また、本発明は以下に記載する態様を含む。
(態様1)
累積的なトウギャップ幅を決定するためのシステムであって、
複合材料の像を記録するよう適合された少なくとも1つのカメラを有するインプロセス視認システムと、
前記インプロセス視認システムと通信し、そこから像データを受取るよう適合されたデータ解析コンピュータとを含み、
前記データ解析コンピュータは複合材料におけるトウギャップの累積的なギャップ幅を計算するよう適合され、さらに
前記データ解析コンピュータと通信し、そこからデータ解析結果を受取るよう適合されたユーザインタフェースを含む、システム。
(態様2)
前記インプロセス視認システムは、フレームおよび前記フレームによって担持される少なくとも1つのレーザを含む、態様1に記載のシステム。
(態様3)
前記フレームによって担持される少なくとも1つのエリアライトをさらに含む、態様2に記載のシステム。
(態様4)
前記データ解析コンピュータは、複合材料におけるトウギャップの前記累積的なギャップ幅を、最大許容可能な累積的なトウギャップ幅の基準と比較するよう適合された、態様1に記載のシステム。
(態様5)
前記データ解析コンピュータは、複合材料におけるトウギャップの前記累積的なギャップ幅が前記最大許容可能な累積的なトウギャップ幅の基準を満たす場合に複合材料の合格ステータスを表示するよう適合される、態様4に記載のシステム。
(態様6)
前記データ解析コンピュータは、複合材料におけるトウギャップの前記累積的なギャップ幅が前記最大許容可能な累積的なトウギャップ幅の基準を満たさない場合に複合材料の不合格ステータスを表示するよう適合される、態様5に記載のシステム。
(態様7)
前記データ解析コンピュータは前記像データを表示するよう適合された、態様1に記載のシステム。
(態様8)
複合構造物におけるトウギャップの累積的なトウ幅ギャップを決定する方法であって、
複合材料を与えるステップと、
前記複合材料の周期的な像を記録するステップと、
前記複合材料における拒否すべき兆候の存在について前記複合材料の前記像を解析するステップと、
前記拒否すべき兆候に基づいて前記複合材料の合格/不合格ステータスを公式化するステップとを含む、方法。
(態様9)
前記複合材料における拒否すべき兆候の存在について前記複合材料の前記像を解析する前記ステップは、前記複合材料におけるトウギャップの累積的な幅について前記複合材料の前記像を解析するステップを含む、態様8に記載の方法。
(態様10)
前記拒否すべき兆候に基づいて前記複合材料の合格/不合格ステータスを公式化する前記ステップは、
最大許容可能な累積的なトウギャップ幅の基準を確立するステップと、
前記複合材料におけるトウギャップの前記累積的な幅を前記最大許容可能な累積的なトウギャップ幅の基準と比較するステップと、
前記複合材料におけるトウギャップの前記累積的な幅が前記最大許容可能な累積的なトウギャップ幅の基準を満たすと前記複合材料を合格とし、前記複合材料におけるトウギャップの前記累積的な幅が前記最大許容可能な累積的なトウギャップ幅の基準を満たさないと前記複合材料を不合格とするステップとを含む、態様8に記載の方法。
(態様11)
前記複合材料の前記周期的な像を表示するステップをさらに含む、態様8に記載の方法。
【符号の説明】
【0032】
1 インプロセス視認装置、2 フレーム、3 フレームプレート、4フレームプレートコネクタ、6 圧縮ローラ、10 ローラ取付けブラケット、14 レーザ、15 レーザビーム、16 エリアライト、18 デジタルカメラ、30 複合構造物、32 トウ、34 ワーク面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12