(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738544
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】目地構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/64 20060101AFI20150604BHJP
E04B 1/682 20060101ALI20150604BHJP
E06B 7/14 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
E04B1/64 C
E04B1/682 A
E06B7/14
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-120729(P2010-120729)
(22)【出願日】2010年5月26日
(65)【公開番号】特開2011-246949(P2011-246949A)
(43)【公開日】2011年12月8日
【審査請求日】2013年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】宇出 輝満
【審査官】
渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−251025(JP,A)
【文献】
特開2000−096943(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3135364(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3135365(JP,U)
【文献】
実開平3−15990(JP,U)
【文献】
特開平8−86164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/64−682
E06B 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁を形成する外壁材に形成された開口部と、
前記開口部内に嵌め込まれ、当該開口部との間に設けられた横目地及び縦目地のうち少なくとも前記縦目地が不定形シールでシールされた枠部材と、
前記縦目地の下部側に一対の側壁を含んで設けられ、先端側が前記外壁材の表面から突出すると共に一方の前記側壁から他方の前記側壁の上端よりも縦目地上方へ延出しかつ前記枠部材の側面に取り付けられる取付片が形成された撥水汚染防止手段と、
を有する目地構造。
【請求項2】
前記撥水汚染防止手段の前記取付片は前記不定形シールで覆われると共に前記取付片から前記建物外側に設けられる水切り本体部が目地から突出している、
請求項1に記載の目地構造。
【請求項3】
前記枠部材の下枠から縦枠の正面下部に亘って延設された水切り部材が設けられている、
請求項1又は請求項2に記載の目地構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の目地に用いられる目地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建物の外壁の目地にはシーリング材が設けられ、部材間で生じる隙間をシーリングしている。例えば、特許文献1では、建物の屋上に設けられたパラペットの張り出し部と建物の外装板との間の目地を埋めるため防水層が設けられるが、ここでは、外装板の上端部を挟み込んだ状態で保持する水切り金物を設け、パラペットの側面に取付けている。そして、この水切り金物とパラペットの張り出し部との間に防水層を設けている。
【0003】
一方、防水層を形成するためシリコン系のシーリング材が使用されるが、変性シリコンなどによるシーリング材には可塑剤が含まれているものが多い。可塑剤が含まれたシーリング材では、雨水が掛かることで可塑剤が流出し外壁表面に付着してしまう。これにより、外壁表面の親水性を低下させ外壁を汚れやすくしてしまう(いわゆる撥水汚染)。
【0004】
特に、外壁をくり抜いて設置する窓部材では、窓部材の窓枠の外形に沿って横目地及び縦目地が設けられるが、横目地と縦目地の交叉部において縦目地が途切れる場合、当該縦目地の下方では撥水汚染が目立ってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−231659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、シーリング材による縦目地の下方の撥水汚染を防止又は抑制する目地構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明に係る目地構造は、建物の外壁を形成する外壁材に形成された開口部と、前記開口部内に嵌め込まれ、当該開口部との間に設けられた横目地及び縦目地のうち少なくとも前記縦目地が不定形シールでシールされた枠部材と、前記縦目地の下部側に
一対の側壁を含んで設けられ、先端側が前記外壁材の表面から突出すると共に一方の
前記側壁から
他方の前記側壁の上端よりも縦目地上方へ延出しかつ前記枠部材の側面に取り付けられる取付片が形成された撥水汚染防止手段と、を有している。
【0008】
請求項1に記載の発明に係る目地構造では、建物の外壁を形成する外壁材に形成された開口部内に、窓部などの枠部材が嵌め込まれた場合において、枠部材と開口部との間に設けられた目地(横目地及び縦目地)のうち少なくとも縦目地が不定形シールでシールされる。この縦目地の下部に、先端側が外壁材の表面から突出する撥水汚染防止手段が
設けられている。
また、この撥水汚染防止手段は一方の側壁からは取付片が延出しており、当該取付片が枠部材の側面に取付けられる。したがって、枠部材には予め撥水汚染防止手段が固定されているため、開口部内に枠部材を嵌め込むと、当該撥水汚染防止手段が開口部の下角部に配置される。この状態で、枠部材と開口部との間に設けられた目地に不定形シールを充填して、当該目地をシールする。
【0009】
撥水汚染防止手段の先端側は外壁材の表面から突出しているため、縦目地内の不定形シールの表面を伝って流れる液体(雨水等)は、撥水汚染防止手段に到達すると当該撥水汚染防止手段の先端部を経て落下する。つまり、縦目地内の不定形シールの表面を伝って流れる液体は、縦目地の下方には流れない。
【0010】
請求項2に記載の発明に係る目地構造は、請求項1に記載の目地構造において、
前記撥水汚染防止手段の前記取付片は前記不定形シールで覆われると共に前記取付片から建物外側の水切り本体部が目地から突出している。
【0011】
請求項2に記載の発明に係る目地構造では、
撥水汚染防止手段の水切り本体部は縦目地から突出しているため、縦目地内の不定形シールの表面を伝って流れる液体(雨水等)は、撥水汚染防止手段に到達すると当該撥水汚染防止手段の水切り本体部を経て落下する。つまり、縦目地内の不定形シールの表面を伝って流れる液体は、縦目地の下方には流れない。
【0012】
請求項3に記載の発明に係る目地構造は、請求項1
又は請求項2に記載の目地構造において、
前記枠部材の下枠から縦枠の正面下部に亘って延設された水切り部材が設けられている。
【0013】
請求項3に記載の発明に係る目地構造では、
水切り部材の下方には横目地部分が設けられることとなるが、当該水切り部材は、枠部材の下枠から縦枠の正面下部に亘って設けられているため、当該横目地内の不定形シールに対して庇となって、横目地内の不定形シールには直接雨水が掛からないようにすることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、請求項1
〜3に記載の発明に係る目地構造によれば、シーリング材による縦目地の下方の撥水汚染を防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
また、開口部の下角部に撥水汚染防止手段を固定するだけなので、現行の枠部材をそのまま使用できるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項4に記載の発明に係る目地構造によれば、開口部内に枠部材を嵌め込むと、枠部材と開口部との間に設けられた縦目地の下部側に第3水切り部材の一部が挿入されるため、作業性が良いという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施の形態に係る目地構造が適用された窓部材を外壁パネルの開口部に嵌め込む前の状態を示す斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係る目地構造が適用された窓部材が外壁パネルの開口部に嵌め込まれた状態を示す正面図である。
【
図3】本実施の形態に係る目地構造が適用された窓部材が外壁パネルの開口部に嵌め込まれた状態を示す要部拡大斜視図である。
【
図4】本実施の形態に係る目地構造が適用された窓部材が外壁パネルの開口部に嵌め込まれ、目地にシーリング材が充填された状態を示す要部拡大斜視図である。
【
図5】本実施の形態に係る目地構造の変形例を示す、
図3に対応する要部拡大斜視図である。
【
図7】その他の実施形態に係る目地構造が適用された窓部材を外壁パネルの開口部に嵌め込む前の状態を示す斜視図である。
【
図8】その他の実施形態に係る目地構造が適用された窓部材が外壁パネルの開口部に嵌め込まれ、目地にシーリング材が充填された状態を示す要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る目地構造の一実施形態について説明する。
(目地構造の構成)
まず、本発明の実施の形態に係る目地構造の構成について説明する。
【0023】
図6には、建物の概略正面図が示されている。
図6に示されるように、この建物10は一階部分12と、一階部分12の上に据付けられた二階部分14と、二階部分14の上に据付けられた屋根部分16と、を含んで構成されている。一階部分12、二階部分14及び屋根部分16の外周部には、外壁パネル(外壁材)18がそれぞれ設けられている。これらの外壁パネル18は、例えばサイディング材が用いられ、複数枚の外壁パネルで構成されている。
【0024】
外壁パネル18の中央部には窓部材20が設けられており(後述する)、室内を開閉可能としている。ここで、
図1及び
図2に示されるように、窓部材20は引違いサッシ22と引違いサッシ22の外側に設けられた窓枠24とを備えており、窓枠24の下枠24Aの表面からは、下枠24Aの全長に亘って水切り板28が室外側へ向かって突出している。
【0025】
この水切り板28は断面が略L字状を成しており、窓枠24の下枠24Aの表面から室外側へ向かって略水平に突出した後、斜め前方下部へ向かって外壁パネル18の表面から離間する方向へ屈曲している。つまり、水切り板28は後述する横目地36の表面を覆うように庇となって、当該横目地36に直接雨水が掛からないようにしている。
【0026】
一方、
図1に示されるように、外壁パネル18の室内側には、断熱材等が収容された壁部30が設けられているが、窓部材20を設けるため外壁パネル18及び壁部30には開口部18A、30Aがそれぞれ形成されている。壁部30の開口部30Aの大きさは、外壁パネル18の開口部18Aよりも小さく設定されており、外壁パネル18の開口部18Aの内周部と壁部30の開口部30Aの内周部との間には段差が設けられている。
【0027】
窓枠24が外壁パネル18の開口部18A(及び壁部30の開口部30A)内に嵌め込まれた状態で、窓枠24の表面と外壁パネル18の表面は略面一の状態となるように設定されており、この状態で窓枠24の水切り板28は外壁パネル18の表面から突出する。
【0028】
また、
図2及び
図3に示されるように、窓枠24の外周面と外壁パネル18の開口部18Aの内周面との間には目地32が設けられている。目地32は、建物の高さ方向に沿って設けられた縦目地34と、建物の水平方向に沿って設けられた横目地36と、で構成され、横目地36と縦目地34の交叉部において、縦目地34が途切れている。
【0029】
目地32内にはシール部材が設けられることとなるが、シール部材としては、シーリング材などの不定形シール(湿式シール)が充填される場合と、ガスケットなどの定形シール(乾式シール)が嵌め込まれる場合とがあり、この目地32の少なくとも縦目地34には不定形シールが充填されている。
【0030】
不定形シールの場合、シーリング材37(
図4参照)に含有された可塑剤やシリコンオイルが、雨水によって外壁パネル18の表面に付着し、当該外壁パネル18の表面の親水性を低下させ汚れやすくしてしまう。特に、窓枠24の周りに設けられる目地32において、横目地36と縦目地34の交叉部A(
図2参照)において縦目地34が途切れる場合、当該縦目地34の下部の汚れが問題となる(いわゆる撥水汚染)。
【0031】
このため、本実施形態では、
図1及び
図3に示されるように、窓枠24の縦枠24Bの側面下部に、正面視で略U字状を成す水切り部材(第1水切り部材)38が固定されている。この水切り部材38の一方の側壁40からは取付片42が延出しており、当該取付片42がビス44などを介して、窓枠24の縦枠24Bの側面下部に取付けられる。
【0032】
このため、水切り部材38は窓枠24の下枠24Aの底面から垂下した状態となるが、横目地36の幅分、垂下する長さに設定され、
図3に示されるように、窓枠24が外壁パネル18の開口部18A内に嵌め込まれた状態で、水切り部材38の底壁46が外壁パネル18の開口部18Aの下角部48に配置(挿入)される。この状態で、水切り部材38の先端側が外壁パネル18の表面から突出するように設定されている。
【0033】
そして、水切り部材38の一方の側壁40と対向する側壁50が、外壁パネル18の開口部18Aに面接触すると共に、側壁40は窓枠24の縦枠24Bの下方の位置となるように設定されている。つまり、水切り部材38の底壁46が、縦目地34の幅方向の全域に亘って縦目地34の下部に配置されることとなる。なお、ここでは、水切り部材38の側壁40と取付片42を直線的に繋いでいるが、取付片42の基部を屈曲させ、水切り部材38の側壁40が窓枠24に設けられた水切り板28の下方に配置されるようにした方が好ましい。
【0034】
(目地構造の作用・効果)
次に、本発明の実施の形態に係る目地構造の作用・効果について説明する。
【0035】
本実施形態では、
図1に示されるように、窓枠24の縦枠24Bの側面下部に、正面視で略U字状を成す水切り部材38を取付け、窓枠24の下枠24Aの底面から垂下させるようにしている。そして、窓枠24を外壁パネル18の開口部18Aに嵌め込んだ状態で、
図3に示されるように、水切り部材38の底壁46が外壁パネル18の開口部18Aの下角部48に配置(挿入)されると共に、水切り部材38の先端側が外壁パネル18の表面から突出するように設定されている。この状態で、
図4に示されるように、窓枠24の外周面と外壁パネル18の開口部18Aの内周面との間に設けられた目地32にシーリング材37を充填して、当該目地32をシールする。
【0036】
このように、水切り部材38の先端側が外壁パネル18の表面から突出しているため、縦目地34内のシーリング材37の表面を伝って流れる液体(雨水等)は、水切り部材38に到達すると当該水切り部材38の先端部を経て落下する。つまり、縦目地34内のシーリング材37の表面を伝って流れる雨水は、縦目地34の下方には流れないこととなる。このため、シーリング材による縦目地34の下方の撥水汚染が防止又は抑制される。
【0037】
また、ここでは、窓枠24には予め水切り部材38が固定されているため、外壁パネル18の開口部18A内に窓枠24を嵌め込むと、当該水切り部材38が開口部18Aの下角部48に配置されるため、作業性が良い。また、現行の窓部材20をそのまま使用できるため、窓部材20の設計変更などが不要である。
【0038】
なお、ここでは、外壁パネル18の開口部18A内に窓枠24を嵌め込む前に、窓枠24の縦枠24Bの側面下部に予め水切り部材38を取付けるようにしたが、外壁パネル18の開口部18A内に窓枠24を嵌め込んだ後に、当該水切り部材38を窓枠24の縦枠24Bの側面下部に取付けても良い。
【0039】
またさらに、
本発明の実施形態ではなく参考例として、図5に示されるように、窓枠24に固定するための取付片42(
図3参照)をなくしても良い。この場合、窓枠24を外壁パネル18の開口部18A内に窓枠24を嵌め込んだ後(嵌め込む前でも良い)、水切り部材(第1水切り部材)52を開口部18Aの下角部48に挿入し、接着剤又はビス等によって当該開口部18Aの下角部48に固定する。
【0040】
<その他の実施形態>
上記の実施形態では、窓枠24とは別に、水切り部材38(
図3参照)又は水切り部材52(
図5参照)を設けて、当該水切り部材38又は水切り部材52を開口部18Aの下角部48に挿入するようにしている。
【0041】
しかし、本実施形態では、窓枠24の下枠24Aに設けられた水切り板28を利用し、
図7及び
図8に示されるように、窓枠24の下枠24Aから縦枠26Bの側面下側に亘って延設された水切り部材(第3水切り部材)54としている。
なお、本形態は本発明の実施形態ではなく参考例である。
【0042】
このため、外壁パネル18の開口部18A内に窓枠24を嵌め込むと、窓枠24と外壁パネル18の開口部18Aとの間に設けられた縦目地34の下部側に、水切り部材54(水切り部材56の一部)が挿入されることとなる。つまり、水切り部材54が縦目地34の下部側に配置される。なお、ここでは、水切り板28と水切り部材54を区別できるように境界部分を実線で示しているが、実際には水切り部材56としてこれらは一体に設けられている。
【0043】
ここで、水切り部材54の下方には、横目地36の端部(縦目地34の下部)が設けられることとなるが、水切り板28と同様、水切り部材54が庇となって、当該横目地36の端部には直接雨水が掛からないように設定される。
【0044】
以上のような構成により、縦目地34の下方の撥水汚染を防止又は抑制することができる。このように、窓枠24の下枠24Aに水切り部材54を形成することで、窓枠24や外壁パネル18の開口部18Aに水切り部材を取付ける必要がなく、作業性がさらに良くなる。
【0045】
なお、上記の説明では窓部について説明したが、外壁パネル18に形成された開口部18A内に嵌め込まれる枠部材であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 建物
18A 開口部
18 外壁パネル(外壁材)
24 窓枠(枠部材)
28 水切り板(水切り部材)
32 目地
34 縦目地
36 横目地
37 シーリング材(不定形シール)
38 水切り部材(
撥水汚染防止手段)
42 取付片
52 水切り部材(
撥水汚染防止手段)
56 水切り部材(
撥水汚染防止手段)
58 水切り本体部