(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
裏面から表面へ貫通するボルト貫通孔を有した建築用パネルと建築部材とを、相対的位置が調節自在に相互に固定するために建築部材表面に取り付けられる固定金具であって、
雄ネジ部を持つ軸部と、前記軸部の一端に垂直に設けられた板状の鍔部とを有し、建築用パネルのボルト貫通孔に挿通された状態でナットが締結される鍔付ボルトと、板状の台座であって、裏面で建築部材表面に当接するための当接部と、裏面に前記建築部材表面から離間して前記鍔付ボルトの前記鍔部を内包するための窪みを有したボルト保持部と、前記ボルト保持部を貫通するボルト挿通孔と、を有した台座と、
を備え、
前記鍔付ボルトの前記軸部は前記台座を裏面から表面の方向へ貫通して前記台座の前記ボルト挿通孔から突出し、前記鍔付ボルトの前記鍔部は前記台座の前記ボルト保持部の裏面の窪みに内包されて、前記鍔付ボルトが前記台座の前記当接部の裏面に平行な二方向に移動可能なように前記台座に遊嵌されている、
固定金具。
板状であり、両端部にはバーリング加工されたネジ孔が穿設され、前記ネジ孔には調整ネジが螺入されている定規金具が、前記建築用パネルの裏面に当接されて固定されており、
前記調整ネジの突出寸法が変更されることで、前記建築部材表面から前記建築用パネル裏面までの離間寸法が調整されている
ことを特徴とする請求項2に記載の固定構造。
最初に、板状であり、両端部にはバーリング加工されたネジ孔が穿設され、前記ネジ孔には調整ネジが螺入されている定規金具を、前記建築用パネルの裏面に当接させて固定する工程と、
前記調整ネジの突出寸法を変更することで、前記建築部材表面から前記建築用パネル裏面までの離間寸法を調整する工程と、
を有することを特徴とする請求項5に記載の固定方法。
【背景技術】
【0002】
中低層住宅を含む建物では、軽量気泡コンクリート(ALC)パネル等からなる外壁パネルを、躯体を構成する梁に取り付けると共に、隅部では該隅部に配置された柱に外壁と同一の材質を持ったコーナーパネルを取り付けて外壁を構成することが行われている。
【0003】
外壁パネル等のパネルを躯体に取り付ける際に、躯体がパネルで覆われた後はパネル裏面側からの作業ができないことがある。従来、そのような場合の対処方法としては、予め躯体側からボルトを突設しておき、そのボルトをパネルに設けられた挿通孔に挿通してボルトにナットを締結する方法や、パネルを躯体に取り付けるドリルねじ等を用いる方法などがあった。
前者の場合、躯体側から突設したボルトの位置及びパネルのボルト挿通孔の位置でパネルの取り付け位置が決定されてしまい、躯体側から突設したボルトの位置又はパネルのボルト挿通孔の位置のどちらかに製造上あるいは施工上の誤差があった場合にパネル位置を修正することが難しいという問題があった。後者の場合も、ドリルねじを電動工具でねじ込む際にパネルの位置がずれたまま固定してしまうとその後の修正が困難であるという問題があった。
【0004】
特許文献1には、角部に沿った軸を中心に回動可能な固定ボルトを設けた柱固定金具を用いてコーナーパネルを取付けることが記載されているが、パネルの取付け位置の調整は固定ボルトの回動角度だけで行うので自由度が低く、例えばパネル固定後の取付け位置の高さ調節が困難であった。
特許文献2には、台座部の長孔部にから突設され、その長孔部の長手方向に移動可能な支持ボルトを有する床支持装置の記載があるが、この支持ボルトは長孔部の長手方向にのみ移動可能であり、また、床材の施工を行う前に支持ボルトの位置を確定しなければならないので、同様の構造で、容易に位置の修正を行い得るように外壁パネルを躯体に取り付けるのは不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題を解決するものであり、外壁パネル等の建築用パネルと、建物の柱等や別の外壁パネル等の建築部材とを相互に固定する際に、建築用パネル裏面側からの作業が不可能な場合であっても相対的位置の調整を容易に行うことができるようにする固定金具、固定構造及び固定方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の、裏面から表面へ貫通するボルト貫通孔を有した建築用パネルと建築部材とを、相対的位置が調節自在に相互に固定するために建築部材表面に取り付けられる固定金具は、雄ネジ部を持つ軸部と、前記軸部の一端に垂直に設けられた板状の鍔部とを有し、建築用パネルのボルト貫通孔に挿通された状態でナットが締結される鍔付ボルトと、板状の台座であって、裏面で建築部材表面に当接するための当接部と、裏面に前記建築部材表面から離間して前記鍔付ボルトの前記鍔部を内包するための窪みを有したボルト保持部と、前記ボルト保持部を貫通するボルト挿通孔と、を有した台座と、を備え、前記鍔付ボルトの前記軸部は前記台座を裏面から表面の方向へ貫通して前記台座の前記ボルト挿通孔から突出し、前記鍔付ボルトの前記鍔部は前記台座の前記ボルト保持部の裏面の窪みに内包されて、前記鍔付ボルトが前記台座の前記当接部の裏面に平行な二方向に移動可能なように前記台座に遊嵌されているようにして、課題を解決する。
【0008】
第2の解決手段は、第1の解決手段の固定金具を介して、裏面から表面へ貫通するボルト貫通孔を有した建築用パネルと建築部材とを相互に固定する固定構造を、前記固定金具は、前記当接部の裏面が前記建築部材表面に当接され、前記ボルト保持部の裏面が前記建築部材表面から離間されて、前記建築部材に固定されており、前記建築部材に固定された前記固定金具の前記鍔付ボルトは、前記建築用パネルの前記ボルト貫通孔を前記建築用パネルの裏面から表面の方向へ貫通しており、前記建築用パネルと前記建
築部材とは、所望の相対的位置に移動されてから前記鍔付ボルトに前記建築用パネルの表面側からナットを締結することによって、互いに固定されている固定構造とすることである。
【0009】
第3の解決手段は、第2の解決手段でさらに板状であり、両端部にはバーリング加工されたネジ孔が穿設され、前記ネジ孔には調整ネジが螺入されている定規金具が、前記建築用パネルの裏面に当接されて固定されており、前記調整ネジの突出寸法が変更されることで、前記建築部材表面から前記建築用パネル裏面までの離間寸法が調整されているようにすることである。
【0010】
第4の解決手段は、第2または第3の解決手段でさらに、前記建築用パネルはコーナーパネルであり、前記コーナーパネルの一方の面のみが第1の解決手段の固定金具1つにつき1本の鍔付きボルトにより固定されているようにすることである。
【0011】
第
5の解決手段は、第1の解決手段の固定金具を介して、裏面から表面へ貫通するボルト貫通孔を有した建築用パネルと建築部材とを相互に固定する固定方法を、前記固定金具を、前記当接部の裏面を前記建築部材表面に当接させ、前記ボルト保持部の裏面を前記建築部材表面から離間させて、前記建築部材に固定する工程と、前記建築部材に固定させた前記固定金具の前記鍔付ボルトを、前記建築用パネルの前記ボルト貫通孔に前記建築用パネルの裏面から表面の方向へ貫通させる工程と、前記建築用パネルと前記建
築部材とを、所望の相対的位置に移動させてから前記鍔付ボルトに前記建築用パネルの表面側からナットを締結することによって、互いに固定する工程と、を有するようにすることである。
【0012】
第
6の解決手段は、第
5の解決手段で、最初に、板状であり、両端部にはバーリング加工されたネジ孔が穿設され、前記ネジ孔には調整ネジが螺入されている定規金具を、前記建築用パネルの裏面に当接させて固定する工程と、前記調整ネジの突出寸法を変更することで、前記建築部材表面から前記建築用パネル裏面までの離間寸法を調整する工程と、を有するようにすることである。
【0013】
第7の解決手段は、第5または第6の解決手段でさらに、前記建築用パネルはコーナーパネルであり、前記コーナーパネルの一方の面のみを第1の解決手段の固定金具1つにつき1本の鍔付きボルトにより固定するようにすることである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の固定金具は、台座から突設された鍔付ボルトが台座に遊嵌されており、鍔付ボルトをパネルに対して平行な方向に所定の距離だけ移動させることができるので、パネル裏面側からの作業が不可能な場合であっても建築部材と建築用パネルとの相対的位置の調整を容易に行うことができる。
【0015】
請求項2の固定構造は、固定金具の鍔付ボルトが建築用パネルのボルト貫通孔にパネルの裏面から表面の方向へ挿通されており、鍔付ボルトにパネルの表面側からナットを締結することによって建築用パネルと建築部材とが固定されているので、パネル裏面側からの作業が不可能な場合であっても、建築部材と建築用パネルとの相対的位置を確認、微調整しながら固定位置の確定のやり直しを容易に行うことができる。
【0016】
請求項3の固定構造は、定規金具の両端部にネジ孔が穿設され、ネジ孔には調整ネジが螺入されているので、調整ネジの突出寸法を変更することで、建築部材表面から建築用パネル裏面までの離間寸法が調整されているようにすることができる。
【0017】
請求項
5の固定方法は、固定金具の鍔付ボルトを、建築用パネルのボルト貫通孔にパネルの裏面から表面へ挿通し、鍔付ボルトにパネルの表面側からナットを締結することによって、建築部材と建築用パネルとが固定されて、パネル裏面側からの作業が不可能な場合であっても、建築部材と建築用パネルとの相対的位置を確認、微調整しながら固定位置の確定を容易に行うことができる。
【0018】
請求項
6の固定方法は、定規金具の両端部にネジ孔が穿設され、ネジ孔には調整ネジが螺入されているので、調整ネジの突出寸法を変更することで、建築部材表面から建築用パネル裏面までの離間寸法を調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜
図4を参照して本発明の固定金具の好ましい実施形態について説明する。
図1において固定金具1は板状の台座10と鍔付ボルト20から構成されている。
図2及び
図3は、それぞれ台座10の正面図及び上方から見た平面図である。台座10は板状であり、表面はパネルに対向し、裏面で建築部材表面に対向するための部位である。
図2及び
図3を参照すると、台座10は当接部11と、裏面が窪んでいるボルト保持部12と、ボルト保持部12に開けられたボルト挿通孔13から成っている。当接部11はその裏面で建築部材表面に当接するための部位である。
図4は、鍔付ボルト20を示す。鍔付ボルト20は雄ネジが切られた軸部21と板状で軸部21の一端から軸部21に垂直な放射方向に延びる板状の鍔部22とからなる。鍔付ボルト20は台座10に遊びをもってルーズに嵌められることによって保持されるとともに、軸部21によってパネルを留める。
再び
図1を参照すると、鍔付ボルト20の軸部21が台座10の裏面から表面へボルト挿通孔13から突出し、鍔付ボルト20の鍔部22が台座10のボルト保持部12の窪みに内包されている。ボルト挿通孔13の開口は鍔付ボルト20の軸部21の断面よりも大きく、かつ、鍔部22の面よりも小さい。したがって鍔付ボルト20の軸部21は所定の距離だけ自身が延びる方向と垂直な二方向に平行移動することができる。
また、ボルト保持部12の、台座10の裏面に対する窪みは、底面が鍔付ボルト20の鍔部22の面よりも大きく、かつ、台座10の裏面からの深さが鍔部22の厚さよりも大きい。したがって、鍔付ボルト20の鍔部22は台座10の裏面から張り出すことなくボルト保持部12の窪みに納められており、軸部21同様にボルト保持部12に内包された状態で、軸部21と垂直な二方向に所定の距離だけ移動することができる。
【0022】
図1の固定金具1は、
図3に示すように台座10が板厚方向に凡そ直角に曲がっているので、柱角部などの躯体出隅部の表面に取り付けるのに好適である。また、
図3に示したボルト保持部12は当接部11の裏面から表面へ台状に張り出すことで裏面に窪みを形成している。ボルト保持部12は当接部11に対して隆起しているので、当接部11を躯体表面に当接させて台座10を躯体に取り付けた際には、ボルト保持部12の表面側は盛り上がり、ボルト保持部12の裏面側は躯体表面から離間する。
図2及び
図3に示した台座10は例えば鋼板から切り出した片を直角に折り曲げるとともにその周縁の部分以外が外側に隆起してボルト保持部を成すようにプレス加工し、ボルト挿通孔を穿設することで形成することができる。
図2及び
図3に示した台座10の両端部分の一部は直角に折り曲げられるとともにボルト挿通孔が穿設されて、別の固定金具1’(
図7)又はバンド40(
図7)との連結を可能にして、固定金具1を躯体に固定するための屈折部14、15が形成されている。また、
図2及び
図3に示した台座10はボルト保持部12が形成された側ではない他方の面も隆起しており、この部分は鍔付ボルト20で後述するコーナーパネルの一方の面のみを固定しただけでは安定しない場合には、他方の面についてドリルねじにて補助的に固定するのが好ましく、その際のドリルねじの下地となることができる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態による固定金具の各構成の形状等は
図1〜
図3に示されているものに限られないことに注意する。当接部11は躯体表面に当接するのに適した形状であれば平面状あるいは曲面状であってもよい。ボルト保持部12の形状は裏面に形成した窪みが鍔付ボルト20の鍔部22を納めることができる形状であれば
図2及び
図3に示したような表面側に張り出した形状に限られない。また、台座10は屈折部14、15の代わりに接着剤等で直接固定金具1を躯体に固定するための部位を有していてもよいし、ボルト保持部12が形成された側ではない他方の面の隆起もドリルねじにて補助的に固定することを要しなければ必要ない。
【0024】
一実施例によれば、鍔付ボルト20の軸部21は直径6mmであり、
鍔部22は縦30mm×横20mmの略長方形である。台座10のボルト挿通孔13は縦16mm×横12mmの略長方形である。したがって鍔部22が当接部11と干渉しなければ鍔付ボルト20は縦方向に10mm、横方向に6mm移動しうる。鍔部22は縦30mm×横20mmの略長方形であるので、鍔付ボルト20が最大の位置の調整代を有するためには、ボルト保持部12の窪みの底部は縦40mm以上×横26mm以上の寸法を持てばよい。
【0025】
以上のように、
図1に示した固定金具1によれば、鍔付ボルト20の軸部21が台座10のボルト挿通孔13から裏面側から表面側方向に突出し、鍔付ボルト20の鍔部22が台座10のボルト保持部13に内包されることで、鍔付ボルト20は軸部22と垂直な二方向に所定の距離だけ移動できるように台座10に遊嵌されているので、裏面側からの作業が不可能な場合であっても、表面から鍔付ボルト20の位置調整を容易に行うことができる。
【0026】
図5〜
図7を参照して本発明の第1の固定構造について説明する。
図5は、第1の固定構造を示す、コーナーパネル3の貫通孔51を通る水平面における断面図である。固定金具1は当接部11の裏面が柱2の表面に当接され、ボルト保持部12の裏面が躯体表面から離間されて、躯体に固定されている。固定金具1の鍔付ボルト20がコーナーパネル3のボルト貫通孔51をコーナーパネル3の裏面から表面へ貫通している。コーナーパネル3は所望の位置に移動されてから鍔付ボルト20にコーナーパネル3の表面からナット30を締結することによって躯体に固定されている。
図6は、裏面から表面へ貫通するボルト貫通孔51を有した外壁を構成するコーナーパネル3である。
図7は、本願発明の固定金具1が躯体表面に取り付けられていることを示す斜視図である。
【0027】
図5に示したのは、コーナーパネル3及びその双対のコーナーパネル3’を柱2に固定する固定構造の、コーナーパネル3、3’の上下いずれかの貫通孔51を通る水平面における断面図である。ここで柱2は略正方形断面の角形鋼管からなり少なくとも外壁の出隅部には立設されている。コーナーパネル3とコーナーパネル3’は互いに鏡像の関係とすることができる。
図6に示したコーナーパネル3は、ALCからなり、両端面が直交する2つの通り芯、すなわち、柱2の中心を通り、柱2の側面に平行な仮想線に一致するように固定される。コーナーパネル3は二片のうちの一片の上下に貫通孔51を有している。それぞれの貫通孔51には表面にザグリ孔52が形成されており、ナット30が表面に出ないようにすることができる。
【0028】
図7に示したのは、固定金具1とその双対の固定金具1’が柱に取り付けられている様子である。固定金具1の台座と固定金具1’の台座は互いに鏡像の関係とすることができる。固定金具1と固定金具1’の対向する屈折部14はボルト挿通孔に通したボルトとナットを締結することによって互いに連結されている。固定金具1と固定金具1’の連結に関わらない側の屈折部15には柱2を締め付けるバンド40が取り付けられている。バンド40は、帯状の鋼板からなり両端が直角に折り曲げられるとともにボルト挿通孔が穿設されて、固定金具1と固定金具1’のそれぞれの台座との連結片が形成されている。中間部は柱2の形状に対応して折り曲げられている。以上のように固定金具1、固定金具1’及びバンド40からなる連結体が柱2に固定されている。
【0029】
固定金具1の鍔付ボルト20は、ボルト保持部12に遊嵌されており、ナット30を締結するまでは、所定の距離だけ縦横に移動することができる。したがって、ナット30を緩めることにより、コーナーパネル3の裏面側からの作業が不可能な場合であっても、コーナーパネル3の固定位置を確認、微調整しながらコーナーパネル3の固定位置の確定のやり直しを容易に行うことができる。
【0030】
図8に示すようにナット30でコーナーパネル3を固定したうえで、さらにドリルネジ61を打ち込んでコーナーパネル3の固定をより強固にした構造とすることもできる。
【0031】
図9及び
図10を参照して本発明の第1の固定構造の第2の実施例について説明する。前記の実施例と共通の部分は符号を同じにして説明を省略する。
本実施例は、例えば、
図11に示すように、ベランダの外周部に取り付けられる平面モジュールの整数倍の幅を有する腰壁パネル105とコーナーパネル103とが取り合う部分において、腰壁パネル105の上端とコーナーパネル103下端が接するように構成した際、コーナーパネルや腰壁パネルでは覆われない部分83(
図11のハッチ部分)を覆うための、スティックパネルを柱に固定する為に適用している。ここでスティックパネルとは、幅の狭いスティック状のパネルであって、コーナーパネルを一方の裏面の延長線に沿って切断した際の、2つの分割片のうち幅の狭い分割片によって得ることができる。
図9において柱2に取り付けるスティックパネル4は一片の上下に貫通孔53を有している。それぞれの貫通孔53には表面にザグリ孔54が形成されている。
図10はスティックパネル4が躯体表面に固定された固定金具1を介して、躯体に固定されていることを示す断面図である。ナット30はザグリ孔54内で鍔付ボルト20に締結され、スティックパネル4を柱2に固定している。
前記コーナーパネル3による実施例の場合と同様に固定金具1の鍔付ボルト20は、ボルト保持部12に遊嵌されており、ナット30を緩めることにより、スティックパネル4の裏面側及び躯体平面部9側からの作業が不可能な場合であっても、スティックパネル4の固定位置を確認、微調整しながらスティックパネル4の固定位置の確定のやり直しを容易に行うことができる。
【0032】
さらに当該コーナーパネル3及びスティックパネル4による実施例を組み合わせた形で、二重壁(平部パネルが背中合わせとなるように躯体に取り付けられて形成される壁)に対するパネル固定の実施例がある。
【0033】
図12〜
図14を参照して本発明の第2の固定構造について説明する。
図12において、パネルの裏面に固定される定規金具50は板状であり、両端部にバーリング加工されたネジ孔72が穿設され、ネジ孔72には調整ネジ73が螺入されている。
図13において、定規金具50がコーナーパネル3の裏面に当接されて固定されている。
図14の固定構造の断面図において、調整ネジ73の突出寸法が変更されることで、躯体表面からパネル3の裏面までの離間寸法が調整されている。
【0034】
図12に示したのは、コーナーパネル3の位置を調整するのに適した、もっぱらコーナーパネル3の裏面に固定される定規金具50である。
図12の定規金具50は略L字型の板状であり、コーナーパネル3の裏面に固定するためのボルト挿通孔71、両端部をバーリング加工のうえ穿設されたネジ孔72、該ネジ孔72に螺入された調整ネジ73から成っている。
図13に示すように、コーナーパネル3に穿設された定規金具用のボルト挿通孔(図示されていない)と定規金具50に穿設されたボルト挿通孔71の位置を合わせた状態で、コーナーパネル3の表面側から定規金具固定用貫通ボルト(図示されていない)を挿通し、定規金具50の裏面側から突出した定規金具固定用貫通ボルトに定規金具固定用ナット74を螺入し締結することで定規金具50はコーナーパネル3の裏面に取り付けられている。定規金具50は、固定金具1と干渉しない位置に複数取り付けられる。また、コーナーパネル3の調整ネジ73に対応する位置にはドライバー等を挿入して調整ネジ73を回転させる為の溝58が形成されているとよい。
【0035】
図14に示したのは、いずれかの定規金具50の調整ネジ7
3を通る水平面における断面図である。
図14に示されるように定規金具50の調整ネジ73の先端が柱2に当接することでコーナーパネル3の位置が規定される。よって調整ネジ73の突出寸法を変更することで、コーナーパネル3の水平2方向(左右、前後)の位置を調整することができる。
【0036】
なお、本実施形態におけるパネルの形状はコーナーパネルに限られるものではなく、スティックパネル4等であっても、裏面に定規金具50を固定することにより、調整ネジ73の突出寸法を変更することで、躯体表面からパネル裏面までの離間寸法が調整されているようにすることができる。
【0037】
図15を参照して本発明の第1の固定方法について説明する。まず、固定金具1を、当接部11の裏面を躯体表面2に当接させ、ボルト保持部12の裏面を躯体表面から離間させて、躯体に固定する。次に、躯体に固定させた固定金具1の鍔付ボルト20を、パネル3のボルト貫通孔51にパネル3の裏面から表面へ貫通させる。さらに、鍔付ボルト20をボルト貫通孔51に貫通させたパネル3を、所望の位置に移動させてから鍔付ボルト20にパネル3の表面側からナット30を締結することによって、躯体に固定する。
【0038】
図15に示したのは所定の階高と平面モジュールを有し、軸組が鉄骨の柱梁等で構成され、外壁がALCパネルで構成された工業化住宅における、外壁出隅部のALCパネルを躯体の柱表面に固定する実施例である。出隅部には断面L字状のコーナーパネル3、3’が出隅部の柱2に抱き合わせるように固定されるので、従来の方法では柱が障害となって、コーナーパネル3、3’裏面側(建物内側)からの作業が困難である。
固定金具1、1’は鍔付ボルト挿通孔13の位置が基準の高さになるように柱2に取り付ける。固定金具1、1’の固定は、台座10に鍔付ボルト20を遊嵌した状態で柱2の表面に当接するとともに、柱2の裏面側からバンド40を広げて巻きつけ、台座10の連結片とバンド40の連結片を当接して固定する。コーナーパネル3、3’のボルト挿通孔51に鍔付ボルト20を挿通し、ナット30をねじ入れ締結し柱2の所定の高さ位置に取り付ける。なお、柱2には固定金具1、1’を係止する手段がない為、固定作業中に位置がずれる虞があるが、ずれが鍔付ボルト20による位置の調整代の範囲であれば問題ない。
本発明の第1の固定方法によればパネル裏面側からの作業が不可能な場合であっても、パネル位置を確認、微調整しながらパネル位置の確定を容易に行うことができる。
【0039】
本発明の第2の固定方法について実施例によって詳細に説明する。まず、コーナーパネル3、3’に定規金具50を取り付ける。その際、定規金具50の調整ねじの突出寸法を製品誤差、施工誤差がない場合の値にしておくのが好適である。次に柱2に固定金具1、1’を鍔付ボルト挿通孔13の位置が基準の高さになるように取り付ける。続いて、コーナーパネル3、3’の鍔付ボルト挿通孔13に固定金具1、1’の鍔付ボルト20を挿通し、ナット30で締結し一旦固定する。この際、高さ調整はしないでもよい。続いて、パネル表面の出寸法の確認を行い、出寸法を修正すべき箇所とその値を記録する。続いて、ナット30を緩め、修正を必要とする部位の調整ネジ73を必要量回転させる。続いて、ナット30を締めパネル表面の出寸法を確認する。必要に応じ調整ネジ73による調整とコーナーパネル3、3’の出寸法の確認作業を繰り返す。続いて、コーナーパネル3、3’の上下位置の確認を行い、修正が必要な場合にはナット30を緩め上下位置の調整を行う。なお、コーナーパネル3、3’を持ち上げていない限り鍔付ボルト20は鍔付ボルト挿通孔13の下端側に寄った状態になるので、下方向にずらして調整する際にはコーナーパネル3、3’を持ち上げて行う必要がある。最後に必要に応じて他方の面についてもドリルねじ61にて固定する。
以上の手順によれば、さらに容易に躯体表面からパネル裏面までの離間寸法を調整しながらパネル位置の確定を行うことができる。
【0040】
以上のように、一般にはパネルを取り付けた後は柱等の躯体構成物が障害となって、パネル裏面側からの作業が困難であるが、上記構成によれば、前面からの作業のみで外壁パネル等の建築用パネルと建物の柱等の建築部材との前後方向、左右方向、上下方向の相対的位置の調整が可能である。
【0041】
図16は、
図11に示したハッチ部分を覆うためのスティックパネル104を、柱ではなく腰壁パネル105の裏面に固定する際に適用した、本発明の固定方法の別の実施例を説明するための図である。
図17に示した固定金具100の台座は、コ字形状でスティックパネル104の両側端面を挟むように所定の高さに2ケ取り付けられる。固定金具100の台座は、左右勝手が異なる場合にも同一形状品が使用できるように、鍔付ボルト挿通孔113が穿設されたボルト保持部112が両面に形成されている。実際に鍔付ボルト120が遊嵌されるのは、腰壁パネル105裏面に対向する側のボルト保持部のみである。
鍔付ボルト挿通孔113に連続してスリット116が設けられて、鍔付ボルト120の鍔部を固定金具100の表面側からボルト保持部112に嵌め込めるように構成されている。この構成により、固定金具100をスティックパネル104に取り付けた後に鍔付ボルトを、当該スリット113を通して嵌め込み、台座で保持させることができる。
スティックパネル104は、腰壁パネル105の所定位置に穿設されたボルト貫通孔113に鍔付ボルト120を挿通し、ナット130で締結することで腰壁パネル105に仮固定される。そして、腰壁パネル105を所定の位置に固定し、適宜ナット130を緩め隣接する平部パネル107と化粧溝の高さが一致するように調整した後、再度ナット130で締結して固定する。
【0042】
また、例えば、建物のリフォーム工事において既存の外壁を撤去することなく、既存外壁を新たな外装パネルで覆うような場合、表面側からのみの作業を余儀なくされるが、このような場合にも本発明を適用することが可能である。