特許第5738605号(P5738605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738605
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】フォークリフト
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/10 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
   B66F9/10 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-4122(P2011-4122)
(22)【出願日】2011年1月12日
(65)【公開番号】特開2012-144333(P2012-144333A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2013年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183222
【氏名又は名称】住友ナコ マテリアル ハンドリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 幸浩
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−075622(JP,A)
【文献】 特開2003−073092(JP,A)
【文献】 特開昭58−036772(JP,A)
【文献】 特開平08−091790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00−11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の前輪、および、操舵に用いられる後輪が備えられた車両本体と、
該車両本体における前記前輪側に配置され、荷物の運搬に用いられる荷役部と、
前記車両本体に備えられ、前記荷役部を前記車両本体における前後方向に移動させるシリンダ部およびピストンを備えたアクチュエータ部が設けられたフォークリフトであって、
前記アクチュエータ部は、前記一対の前輪を結ぶ線上に存在する旋回中心から前記車両本体における前後方向に延びる直線上に配置され、
前記アクチュエータ部における後端を、前記旋回中心から、前記車両本体の後端であって前記旋回中心から最も遠い部分までの距離を旋回半径とした旋回軌道上または近傍に配置し、
前記アクチュエータ部における後端が配置される前記車両本体の後端部が、前記旋回軌道上または近傍に位置するように形成されていることを特徴とするフォークリフト。
【請求項2】
一対の前輪、および、操舵に用いられる後輪が備えられた車両本体と、
該車両本体における前記前輪側に配置され、荷物の運搬に用いられる荷役部と、
前記車両本体に備えられ、前記荷役部を前記車両本体における前後方向に移動させるシリンダ部およびピストンを備えたアクチュエータ部が設けられたフォークリフトであって、
前記アクチュエータ部は、前記車両における前後方向に延びる中心線上に配置され、
前記アクチュエータ部における後端を、前記一対の前輪を結ぶ線上に存在する旋回中心から、前記車両本体の後端であって前記旋回中心から最も遠い部分までの距離を旋回半径とした旋回軌道上または近傍に配置し、
前記アクチュエータ部における後端が配置される前記車両本体の後端部が、前記旋回軌道上または近傍に位置するように形成されていることを特徴とするフォークリフト。
【請求項3】
前記アクチュエータ部における後端近傍の隣接した領域には、錘が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のフォークリフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトに関し、フォークリフトの旋回時の接触を防止するのに適したフォークリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、荷物の運搬に用いられる車両として、リーチ式フォークリフト(以下、「フォークリフト」と表記する。)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。フォークリフトは、車両前方に荷物を扱うフォーク(つめ)や、フォークを上下方向に移動可能に支持するマスト(支柱)等を備えている。またフォークリフトの後輪は操舵を行う操舵輪とされ、前輪は操舵を行わない遊動輪とされている。フォークリフトは、フォークおよびマスト等が車両の前後方向に移動可能に取り付けられている点が、フォークおよびマスト等が車両の前方に直接取り付けられ、車両の後方にカウンタウエイトが設けられたカウンタバランス式フォークリフトと異なっている。
【0003】
フォークリフトは、倉庫に保管された荷物を積み出す用途、および、荷物を保管するために倉庫に積み込む用途に使用される。このとき、フォークリフトは倉庫の通路を走行した後、右方向または左方向に旋回して、通路の側方に設けられた棚などから荷物の積み出しや、棚への荷物の積み込みを行い、再び左方向または右方向に旋回し、荷物を運搬する目的地に向かって走行する。以下、フォークリフトが旋回して荷物を積み込む動作や、荷物を積み出す動作を「直角積付」と表記する。
【0004】
上述のようにフォークリフトが右方向または左方向に直角積付するのに必要な通路幅は、直角積付通路幅と呼ばれる。倉庫の通路の幅をこの直角積付通路幅以上にすることで、フォークリフトは通路の側壁や、棚や、倉庫に保管された荷物と接触することなく、直角積付することができる。
【0005】
ここで、直角積付通路幅について図5を参照しながら説明する。なお、図5では、2つの前輪と、左後ろに1つの操縦用の後輪とを備えたフォークリフトにおける直角積付通路幅について図示している。
【0006】
図5(a)では、フォークリフトが右旋回する場合の直角積付通路幅を説明している。この場合の直角積付通路幅は、フォークリフトの車体の左後端から右旋回中心PRまでの距離BRと、フォークリフトに積まれた荷物の右前端から右旋回中心PRまでの距離ARとの和(AR+BR)となる。
【0007】
図5(b)では、フォークリフトが左旋回する場合の直角積付通路幅を説明している。左旋回する場合の直角積付通路幅は、フォークリフトの車体の右後端から左旋回中心PLまでの距離BLと、フォークリフトに積まれた荷物の左前端から左旋回中心PLまでの距離ALとの和(AL+BL)となる。
【0008】
フォークリフトが右旋回するときの右旋回中心PRは、2つの前輪11の中心を結ぶ直線と、フォークリフトの車体の左後端およびフォークリフトに積まれた荷物PTの右前端を結ぶ直線と、の交点である。同様に、フォークリフトが左旋回するときの左旋回中心PLは、2つの前輪11の中心を結ぶ直線と、フォークリフトの車体の右後端およびフォークリフトに積まれた荷物PTの左前端を結ぶ直線と、の交点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−073092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
フォークリフトが直角積付する(荷物を積み出して旋回する、または、荷物を積み込む際に旋回する)とき、フォークリフトを荷物が置かれる棚に近づけることができれば、フォークリフトが旋回した際に、フォークリフトの車体が通路の反対側の側壁や棚に接触することを防止しやすくなる。
【0011】
しかしながら、フォークリフトが旋回する際には、荷物と棚との接触を避けるため、旋回中心PRから荷物が置かれる棚までの距離を距離AR以上とする必要がある。旋回する際には、同様に、旋回中心PLから荷物が置かれる棚までの距離を距離AL以上とする必要がある。そのため、フォークリフトを旋回させる際に、フォークリフトをこれらの距離AR,ALよりも、荷物が置かれる棚に近づけることができず、フォークリフトの車体が通路の側壁等に接触することを防止しにくくなる。
【0012】
上述の問題を解決する方法として、フォークリフトにおける前輪から前方への突出長さを短くする方法が考えられる。しかしながら、荷物を積んだリーチ式フォークリフトにおける前方への突出長さは、容易に短くできないという問題がある。つまり、フォークやマスト等における車両後方への引き込み(リーチイン)可能な範囲は、特許文献1に記載されているように、フォークおよびマスト等を移動させるリーチシリンダ等の配置位置や構成によって定まる。そのため、リーチイン可能な範囲を車両の後方に移動させて、前方への突出長さを短くすることは容易ではない。
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、直角積付を容易にすると共に、直角積付時にフォークリフトの車両本体が周辺に接触することを防止することができるフォークリフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明のフォークリフトは、後輪を操舵に用いるとともに、前輪側に荷物を運搬する荷役部を備え、この荷役部がアクチュエータ部により車両の前後方向に移動可能とされたフォークリフトである。アクチュエータ部はシリンダ部およびピストンを備えた長尺に形成されたものであり、シリンダ部およびピストンの一方が荷役部に取り付けられ、他方が車両本体に取り付けられる。またアクチュエータ部は、荷役部の移動方向である車両の前後方向に延びて配置される。
【0015】
さらにアクチュエータ部の後端は、フォークリフトの旋回中心から、車両本体の後端における旋回中心から最も遠い部分までの距離を旋回半径とした旋回軌道上、または、その近傍に配置されている。そのため、アクチュエータ部は、その後端を旋回軌道上または近傍に配置しない場合と比較して、上述の旋回半径を増加させることなく、フォークリフトの後ろ側に配置される。
【0016】
なお、フォークリフトが右旋回するときの旋回中心と、左旋回するときの旋回中心とが異なる場合には、アクチュエータ部が配置された位置において、右旋回および左旋回の両旋回軌道のうちの前方の軌道上、または、その近傍にアクチュエータ部の後端が配置される。
【0017】
なお、アクチュエータ部の後端を旋回軌道の近傍に配置するとは、アクチュエータ部が車両の内部に収納され、かつ、車両の後端が旋回軌道上に沿って形成されている場合には、アクチュエータ部の後端を旋回軌道にできる限り近づけた位置に配置することである。
【0018】
アクチュエータ部を、旋回中心から車両本体における前後方向に延びる直線上に配置することで、その他の位置に配置する場合と比較して、より車両本体における後方側に寄せて配置することができる。例えば、フォークリフトが右旋回するときの旋回中心と、左旋回するときの旋回中心とが同じ場合には、このようにすることで、アクチュエータ部を最も後方に配置することができる。
【0019】
あるいは、アクチュエータ部を、車両本体における前後方向に延びる中心線上に配置することで、その他の位置に配置する場合と比較して、より車両本体における後方側に寄せて配置することができる。例えば、フォークリフトが右旋回するときの旋回中心と、左旋回するときの旋回中心とが異なる場合には、このようにすることで、アクチュエータ部を最も後方に配置することができる。
【0020】
アクチュエータ部における後端近傍の隣接した領域に錘を設けることにより、この錘を荷役部に荷物を積んだ際のカウンタウエイトとして働かせることができる。アクチュエータ部における後端近傍の隣接した領域は、その他の領域と比較して空間が狭く、フォークリフトに用いられる機器を配置するのに利用しにくい領域であるが、この領域に形状の自由度が高い錘を配置することにより、有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のフォークリフトによれば、アクチュエータ部を、その後端を旋回軌道上または近傍に配置しない場合と比較して、上述の旋回半径を増加させることなく、フォークリフトの後ろ側に配置することができる。その結果、アクチュエータ部により前後方向に移動される荷役部も車両本体に対して、より後方に引き込まれ、旋回中心から車両本体の前方に突出する長さを短くすることができるため、直角積付を容易にすることができるという効果を奏する。更に、フォークリフトの直角積付時の旋回中心から、車両本体の後端における旋回中心から最も遠い部分までの距離を旋回半径とした旋回軌道が拡大していないため、直角積付時にフォークリフトの車両本体が周辺に接触することを防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るフォークリフトの全体構成を説明する模式図である。
図2図1のフォークリフトにおけるリーチシリンダの配置位置を説明する模式図である。
図3図1のフォークリフトの左または右旋回時におけるパレットの右または左前端から旋回中心までの距離A、および、車両本体の左または右後端から旋回中心Pまでの距離Bを説明する模式図である。
図4図2のフォークリフトにおける後端形状の他の例を説明する模式図である。
図5】フォークリフトが右旋回および左旋回する場合の直角積付通路幅を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の一実施形態に係るフォークリフト(リーチ式フォークリフト)について、図1から図4を参照して説明する。図1は本実施形態に係るフォークリフト1の全体構成を説明する模式図であり、図1(a)は平面視図であり、図1(b)は側面視図である。
【0024】
本実施形態のフォークリフト1は、荷物の運搬に用いられるものであり、特に工場や、倉庫や、貨物駅や港湾等の構内における荷役作業に用いられるものである。フォークリフト1には、図1に示すように、運転者が乗り込む車両本体10と、荷物を取り扱う荷役部20と、が主に設けられている。
【0025】
図2(a)は、従来のフォークリフトにおけるリーチシリンダの配置位置を説明する図であり、図2(b)は、図1のフォークリフト1におけるリーチシリンダ30の配置を説明する図である。
【0026】
車両本体10には、フォークリフト1の走行に用いられる前輪11および後輪12、前輪11が配置されているアウトリガー13、運転者が乗り込む運転席14と、が主に設けられている。さらに、車両本体10には、図2(b)に示すように、荷役部20を車両本体に対して前後方向に移動させるリーチシリンダ(アクチュエータ部)30が設けられている。
【0027】
前輪11は、図1(a)および図1(b)に示すように、アウトリガー13の前方端部にそれぞれ配置された一対の車輪である。本実施形態では、前輪11が、車両本体10に対して回転軸の向きが固定された遊動輪である例に適用して説明する。後輪12は車両本体10の左後端に配置された一つの車輪である。後輪12は、モータ等の駆動部(図示せず)から回転駆動力が伝達される駆動輪であると共に、車両本体10に対する回転軸の向きが変更可能とされた、フォークリフト1の進行方向を定める操舵輪でもある。本実施形態では、運転席14の下方に、補助輪(図示省略)が設けられている例に適用して説明する。なお、後輪12は上述のように一つだけ備えられていてもよいし、前輪11と同様に車両本体10の左右に一対が備えられていてもよく、特に限定するものではない。
【0028】
アウトリガー13は、車両本体10における下方前方に設けられた一対のアーム状の部材であり、車両本体10における前面下端の左右端から、前方に向かって平行に並んで延びて配置されたものである。一対のアウトリガー13,13の間には荷役部20が配置され、荷役部20は一対のアウトリガー13,13の間を前後方向に移動可能とされている。
【0029】
運転席14は、運転者がフォークリフト1に乗り込み、起立した姿勢でフォークリフト1を運転操作する場所である。運転席14は、車両本体10における右後端に設けられ、上述の後輪12を操舵するためのハンドル15が設けられている。その他にも、荷役部20を操作するレバー等の操作部16が運転席14に設けられている。なお、運転者は上述のように起立した姿勢でフォークリフト1を運転してもよいし、座った姿勢でフォークリフト1を運転してもよく、特に限定するものではない。
【0030】
リーチシリンダ30は、荷役部20を車両本体10の前後方向に移動させる油圧シリンダであり、図2(b)に示すように、車両本体10における前後方向に延びる中心線CL上に沿って配置されたものである。リーチシリンダ30には、円筒状に形成されたシリンダ部31と、シリンダ部31の中を円筒の軸線に沿って移動するピストン32と、が主に設けられている。
【0031】
シリンダ部31は、車両本体10に固定されるものであり、内部をピストン32によって2つの部屋に仕切られたものである。シリンダ部31には、それぞれの部屋に加圧された油が外部から流入したり、内部から外部へ油が流出したりする流入出口33が設けられている。
【0032】
ピストン32は、シリンダ部31に供給された油の圧力を受けて、シリンダ部31から突出してリーチシリンダ30の全長を延ばしたり、シリンダ部31の内部に収納されてリーチシリンダ30の全長を縮めたりするものである。ピストン32における車両本体10の前方端部は、荷役部20に取り付けられている。
【0033】
なお、車両本体10には、リーチシリンダ30に昇圧した油を供給する油圧ポンプ(図示せず)や、昇圧された油の供給先を制御する切換弁(図示せず)や、油を蓄える油タンク(図示せず)などが収納されている。
【0034】
荷役部20には、図1(a)および図1(b)に示すように、荷物を積むために用いられるフォーク21と、フォーク21が取り付けられる昇降体22と、フォーク21および昇降体22が上下方向に移動するマスト23と、が主に設けられている。
【0035】
フォーク21は、昇降体22の前面に設けられた一対のアーム状の部材であり、昇降体22における前面下端の左右端から、前方に向かって平行に並んで延びて配置されたものである。フォーク21は、荷物が載せられる約直方体状に形成されたパレットPTの挿入孔に差し込まれるものであり、パレットPTのみ、または、荷物が載せられたパレットPTを持ち上げたり、降ろしたりするものである。
【0036】
昇降体22は、フォーク21を支持するものであり、かつ、マスト23との間に配置された昇降シリンダ(図示せず)により、マスト23に沿って上下方向に移動可能とされたものである。
【0037】
マスト23は、平行に対向して配置された一対の柱状の部材であり、上下方向に延びて配置されたものである。さらに、一対のマスト23,23は、間に配置されたフォーク21および昇降体22が上下方向に昇降可能に支持するものである。
【0038】
ここで、本実施形態の特徴である、リーチシリンダ30の配置位置などについて図2を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、フォークリフト1における直角積付時の旋回中心Pが左右の前輪11の回転軸を結んだ直線上であって、左右の前輪11の中央にある例に適用して説明する。
【0039】
本実施形態では、車両本体10の後端の形状が、図2(b)に示すように、旋回中心Pから車両本体10における左右の後端までの距離Rを旋回半径とする旋回軌道TO上を、当該旋回軌道TOに沿って形成されている。そして、リーチシリンダ30は、その後端が車両本体10の内側壁面に近接して配置されている。言い換えると、リーチシリンダ30の後端は、従来のフォークリフトにおける車両本体10の後端よりも後方に配置されている。
【0040】
従来のフォークリフトと比較すると(図2(a)参照。)、車両本体10の後端の中央部が後方へ突出している距離DAだけ、リーチシリンダ30の後端が、車両本体10の後方(図2(b)の下方)に移動している。それによって、リーチシリンダ30が最も収縮(リーチイン)した状態における、リーチシリンダ30またはピストン32における車両本体10の前方(図2(b)の上方)の端部が、後方へ距離DCだけ移動している。
【0041】
距離DCは、荷役部20を最も前方に突出(リーチアウト)した際の車両本体10との相対位置を同じに設定すると、距離DAの約半分の長さとなる。その一方で、リーチアウトした際の荷役部20と車両本体10との相対位置が変わることを許容すると、距離DAと約同等の長さにすることができる。
【0042】
さらに、本実施形態に係るフォークリフト1の車両本体10における後端内部であって、リーチシリンダ30と隣接する領域には、荷役部20が荷物を持ち上げた際にバランスを取る働きをするカウンタウエイト(錘)34が設けられている。一般に、本実施形態のリーチ式フォークリフトは、カウンタバランス式フォークリフトと比較して、カウンタウエイト34を設ける必要性は低いが、カウンタウエイト34を設けることにより、荷役部20により荷物を持ち上げた際の安定性を向上させることができる。
【0043】
なお、車両本体10における後端は、上述のように、旋回軌道TO上を、当該旋回軌道TOに沿って形成されていてもよいし、リーチシリンダ30が配置されている近傍のみ、旋回軌道TO上またはその近傍にまで突出する形状に形成されてもよく、特に限定するものではない。
【0044】
次に、上記の構成からなるフォークリフト1における働きについて図1および図2を参照しながら説明する。
フォークリフト1は、図1に示すように、荷役部20をリーチインした状態で荷物の近傍にまで走行し、フォーク21がパレットPTの挿入孔と対向する位置で停止する。その後、リーチシリンダ30における後方側の部屋に昇圧された油が供給され、ピストン32がシリンダ部31から突出し、荷役部20をフォークリフト1の前方に押し出す(リーチアウトされる)。これにより、フォーク21がパレットPTの挿入孔に差し込まれる。
【0045】
その後、荷役部20によってパレットPTが持ち上げられるとともに、リーチシリンダ30おける前方側の部屋に昇圧された油が供給され、ピストン32がシリンダ部31の内部に引き込まれ、荷役部20が車両本体10に引き寄せられる(リーチインされる)。このとき、本実施形態のフォークリフト1では、従来のフォークリフトと比較して、旋回中心Pから前方に突出する長さが距離DCだけ短くなっている。
【0046】
図3は、図1のフォークリフト1の左または右旋回時におけるパレットPTの右または左前端から旋回中心Pまでの距離A、および、車両本体10の左または右後端から旋回中心Pまでの距離Bを説明する模式図である。
【0047】
そしてフォークリフト1は、右方向、または、左方向に旋回し、所望の位置まで走行した後、荷物を置くため再び右方向、または、左方向に旋回する。フォークリフト1が旋回する際、旋回中心Pから前方に突出する長さが距離DCだけ短くなっているため、図3に示すように、フォークリフト1が持ち上げている荷物であるパレットPTの右または左前方の端部から旋回中心Pまでの距離Aも短くなる。
【0048】
つまり、旋回時における荷物と棚との接触を防止するために確保する必要がある、荷物を置く棚、あるいは、荷物を積む棚からフォークリフト1における旋回中心Pまでの距離を短くすることができる。言い換えると、フォークリフト1をこれらの棚に寄せた状態で旋回を行うことができる。その結果、フォークリフト1における車両本体10の左または右後方の端部と、上述の棚とは反対側の通路の壁面や棚等との距離を確保しやすくなり、接触を防止することができる。
【0049】
図4は、図2のフォークリフト1における後端形状の他の例を説明する模式図である。
なお、上述の実施形態のように、フォークリフト1が右旋回、および、左旋回する際の旋回中心Pが同じである場合には、図2に示すように、一つの旋回軌道TOに基づいてフォークリフト1における車両本体10の後端の形状や、リーチシリンダ30の配置位置を定めてもよいし、図4に示すように、右旋回における旋回中心PRの位置と、左旋回における旋回中心PLの位置とが異なる場合には、右旋回における旋回軌道TOR、および、左旋回における旋回軌道TOLの両者に基づいて、車両本体10の後端の形状や、リーチシリンダ30の配置位置が定められる。具体的には、旋回軌道TORおよび旋回軌道TOLの内、車両本体10に近い軌道上または近傍に沿って、車両本体10の後端の形状が形成される。
【0050】
このとき、中心線CL上で旋回軌道TORおよび旋回軌道TOLが交差し、この交点において車両本体10が最も後方に突出する距離が長くなる。そのため、リーチシリンダ30を中心線CL上に配置することで、リーチシリンダ30を最も後方に配置することができる。
【0051】
なお、上述の実施形態では、リーチシリンダ30が中心線CLと平行に、かつ、中心線CL上に配置された例に適用して説明したが、リーチシリンダ30の後端が、従来のフォークリフトにおける車両本体10の後端よりも後方に配置されていれば、リーチシリンダ30が中心線CLと間隔をあけて、かつ、中心線CLと平行に配置されていてもよいし、リーチシリンダ30が中心線CLと交差して配置されていてもよく、特に限定するものではない。
【符号の説明】
【0052】
1…フォークリフト、10…車両本体、20…荷役部、11…前輪、12…後輪、30…リーチシリンダ(アクチュエータ部)、31…シリンダ部、32…ピストン、34…カウンタウエイト(錘)
図1
図2
図3
図4
図5