【実施例1】
【0020】
以下に、
図1〜
図10に基づいて、実施例1の垂直搬送装置Aについて説明する。
(構成)
まず、実施例1の垂直搬送装置Aの構成について説明する。
図1に示す実施例1の垂直搬送装置Aは、物流センターや工場などにおいて、下階F1と上階F2との間でキャレッジ10を昇降させるのに用いる搬送装置である。この実施例1の垂直搬送装置Aは、キャレッジ10に、自走する台車50を搭載していることを特徴としており、以下、その詳細について説明する。
【0021】
この実施例1の垂直搬送装置Aは、下階F1と上階F2とに上下方向(図において矢印Uが上方を示し、矢印Dが下方を示す)に貫通して形成された略矩形の上下搬送空間1と、この上下搬送空間1の外周を囲んで骨格を形成するフレーム20とを備えている。なお、フレーム20の外周には、薄板状の外装材30が設けられている。
【0022】
フレーム20は、
図2にその一部を示すように、複数の縦フレーム21と複数の横フレーム22とを組み合わせて形成されている。
【0023】
キャレッジ10は、箱枠状に形成されている。すなわち、キャレッジ10は、複数のフレームを平面状に組み合わせた床フレーム11と、複数のフレームを平面状に組み合わせた天井フレーム12と、この天井フレーム12と床フレーム11とを結合させた複数の柱フレーム13とによりキャレッジ収容空間14を囲む箱枠状に形成されている。
【0024】
図1に戻り、フレーム20の上部には、後述する台車50の移動方向に沿う方向である前後方向(矢印FFを前方とし、矢印RRを後方とする)の中間部に、懸架フレーム23が左右方向(矢印Lを左方向とし、矢印Rを右方向とする)に架け渡されている。この懸架フレーム23には、モータにより駆動される昇降駆動機構24が取り付けられ、この昇降駆動機構24により巻き取りおよび引き出しされる昇降ワイヤ(図示省略)にキャレッジ10が吊されており、昇降駆動機構24の駆動によりキャレッジ10が上下方向に昇降される。
【0025】
なお、
図2に示すように、キャレッジ10の床フレーム11および天井フレーム12には、左右両側に、昇降ガイド15,15が設けられている。これらの昇降ガイド15は、一対のガイドローラ15a,15aを備え、この一対のガイドローラ15a,15aが、フレーム20の左右両側の前後方向中央に配置されてフレーム20の上下方向に全長に亘って設けられた昇降ガイドレール25を前後方向から挟持している。この昇降ガイド15および昇降ガイドレール25は、キャレッジ10の昇降時に、キャレッジ10の前後・左右方向の移動が規制しながら昇降をガイドする。
【0026】
上下搬送空間1は、それぞれ、下階載込口2aと上階載込口2b,2cとにより、各階F1,F2に連通されている。なお、
図1では、図示を省略しているが、各階F1,F2において上下搬送空間1の外部には、各載込口2a〜2cの下端と略同じ高さに外部フロアFL(
図6など参照)が設けられている。
また、本実施例1では、下階載込口2aは、上下搬送空間1の前方側のみに設けられているが、上階載込口2b,2cは、前後に対向して設けられている。なお、必要に応じ、下階F1と上階F2の両方に1対の載込口を設けてもよいし、下階と上階の両方を1個の載込口のみとしてもよい。また、以下の説明において、各載込口2a,2b,2cについて説明する際に、各載込口2a,2b,2cのいずれかを特定することなく、各載込口2a,2b,2cに共通する構成について説明する際には、a,b,cの符号および下階、上階を省略して「載込口2」と表記して説明する。
【0027】
詳細な図示は省略するが、各載込口2には、上下にスライドして各載込口2を開閉するシートシャッタ装置90が設けられている。このシートシャッタ装置90は、
図9に示すシャッタモータ91の駆動により図示を省略したシート状のシャッタが各載込口2に沿って上下して各載込口2を開閉する。
【0028】
さらに、各載込口2a,2b,2cの前述したシートシャッタ装置90の外側には、各載込口2a,2b,2cを開閉する開閉ゲート(ゲート部材)40a,40b,40cが設けられている。なお、各開閉ゲート40の説明においても、各開閉ゲート40a,40b,40cに共通する構成について説明する際には、a,b,cの符号を省略して「40」と表記して説明する。
【0029】
これら開閉ゲート40は、それぞれ、各載込口2の左右両端部に固定され前後方向に突出された一対のゲートベース41,41と、各ゲートベース41に回動可能に支持された奥側扉(回動扉)42および手前側扉(回動扉)43を備えている。
【0030】
図3に示すように、奥側扉42の回動中心は、手前側扉43の回動中心よりも前後方向で載込口2に近い側に配置されており、図において二点鎖線で示すように、載込口2に沿って左右方向に配置させた閉状態では、前述したシートシャッタ装置90の図示を省略したシャッタの外側に奥側扉42と手前側扉43とが二重に重なって配置される。
【0031】
各扉42,43は、フレームにより柵状に形成され、回動中心から遠い側の先端部の下部には、それぞれローラ44とストッパ45とを備えている(
図3参照のこと)。なお、
図1では、斜視図の視線方向の見え方から、奥側扉42ではストッパ45のみが示され、手前側扉43ではローラ44のみが示されている。
【0032】
ローラ44は、図示を省略したフロアに沿って転動して各扉42,43の荷重を支持する。ストッパ45は、各扉42,43が
図3に示すように、各載込口2に対して直交する全開位置まで回動したときに各扉42,43の移動を規制する。このストッパ45は、
図4に拡大して示すように、各扉42,43の下端部に取り付けられたロッド支持部材45aに上下方向にスライド可能に支持された係合ロッド45bと、外部フロアFLに設けられ、各扉42,43の全開位置でロッド支持部材45aと当接して各扉42,43の開方向の回動を規制するとともに、その位置で係合ロッド45bが差し込まれる係合穴45cを有した受部材45dとを備えている。
【0033】
さらに、
図5に示すように、奥側扉42の下部内側には、扉側ガイドレール46が取り付けられている。この扉側ガイドレール46は、台車50の自走時にその方向をガイドするもので、上方に開いたコの字断面形状に形成されており、奥側扉42の回動中心に近い側である基端部には、基端側ほど水平方向の幅が広がる形状の進入ガイド部46aが形成されている。
【0034】
図1に戻り、キャレッジ10には、搬送物を搭載するための台車50が搭載されている。
台車50は、
図2に示すように、上方から見て長方形で、断面が上方に開口した略コの字状の台車ベース51と、台車ベース51上に形成された搬送物搭載空間56の水平方向の4周を囲む左柵52、右柵53、前扉54、後扉55とを備えている。
【0035】
左柵52および右柵53は、それぞれ、台車ベース51の左右の端縁に沿って立設されている。
前扉54および後扉55は、いわゆる観音開きになっており、左柵52の前端および後端に回動可能に支持された台車左扉54a,55aと、右柵53の前端および後端に回動可能に支持された台車右扉54b,55bとで構成されている。
したがって、台車50の搬送物を搭載する搬送物搭載空間56は、前扉54および後扉55の閉状態では、柵状の両柵52,53および両扉54,55で囲まれ、また、両扉54,55を開いて、前後から搬送物を出し入れすることができる。
【0036】
さらに、台車50には、キャレッジ収容空間14に対して前後方向に自走して搬入および搬出可能とする自走装置60およびこの自走装置60の駆動を制御する制御装置70(
図9参照)が設けられている。
【0037】
この自走装置60は、駆動機構61、駆動輪62a,62b、従動輪63a,63b、キャレッジ側ガイドレール(ガイド手段)64および前述の扉側ガイドレール(ガイド手段)46を備えている。
【0038】
駆動機構61は、台車ベース51の左側部に固定されており、
図6に示すように、駆動源となる台車モータ61aと、台車モータ61aの回転を減速するとともに方向を変える減速機構61bと、減速機構61bの回転を駆動輪62a,62bに伝達するチェーン61cと、チェーン61cと噛み合って駆動を伝達したりチェーン61cの位置を規定したりする複数のスプロケット61dとを備えている。
また、駆動機構61の台車モータ61aは、図示を省略したハーネスを介して、キャレッジ10側から電力供給が行われるとともに、駆動指令信号が伝達されるようになっている。
【0039】
図2に戻り、駆動輪62a,62bは、台車ベース51の左側部の前後端部に設けられており、従動輪63a,63bは、台車ベース51の右側部の前後端部に駆動輪62a,62bと同軸に設けられている(
図7参照)。なお、各輪62a,62b,63a,63bとしては、外周部にウレタン樹脂などの柔軟で摩擦抵抗の大きな素材を用いており、転動時に、台車50に振動を与えないとともに、スリップが生じにくいようにしている。
したがって、台車50は、駆動機構61の台車モータ61aを駆動させると、両駆動輪62a,62bが回転駆動され、前後に自走することができる。
【0040】
なお、
図7に示すように、キャレッジ10の床フレーム11は、左右一対の走行レール11a,11aを備えている。この走行レール11aは、図示のようにハット断面形状を成し、各輪62a,62b,63a,63bは、キャレッジ10にあっては、この走行レール11a,11a上を転動する。また、キャレッジ10が、各階F1,F2に配置された際には、走行レール11a,11aの上面が、各階F1,F2の外部フロアFLと略同一高さに配置されるよう構成されている。
【0041】
また、台車50が前後に自走する際には、両ガイドレール46,64により左右方向の位置を規制されながらガイドされるように構成されている。
すなわち、台車ベース51の左側端部には、それぞれ、4個の台車ガイドローラ(ガイド手段)67,67,67,67が、回転中心軸を上下方向に向けて所定の間隔で前後方向に一列に並設されている。
【0042】
そして、キャレッジ10の床フレーム11の左側端部には、これら台車ガイドローラ67の高さにキャレッジ側ガイドレール64が前後方向に沿って設けられている。このキャレッジ側ガイドレール64は、
図7および
図8に示すように、開口を上方に向けた断面コの字状に形成されている。そして、
図3に示すように、前後両端部には、前述した進入ガイド部46aと同様に、先端ほど左右方向の幅を広げた進入ガイド部64a,64aが設けられている。
【0043】
また、前述した扉側ガイドレール46は、キャレッジ10が各階F1,F2に停止したときのキャレッジ側ガイドレール64と左右方向および上下方向で同一軸線上に配置される。
したがって、開閉ゲート40を全開とした状態で、台車50を前後に自走させた際に、台車50に設けられた台車ガイドローラ67は、キャレッジ側ガイドレール64から扉側ガイドレール46へ、ならびにその逆に乗り移り可能となっており、これにより、台車50は、両ガイドレール64,46に沿って左右方向にぶれることなく前後方向にガイドされる。
【0044】
なお、各外部フロアFLには、駆動輪62a,62bが転動する走行レール11aの延長線上に、
図1および
図5に示す滑り止めプレート80が設置されている。この滑り止めプレート80は、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の薄板に、
図5に示すように、駆動輪62a,62bの走行ラインに沿って微小な穴を多数穿設し、駆動輪62a,62bとの摩擦抵抗を高めたものである。
【0045】
次に、
図9に示す制御装置70について説明すると、この制御装置70は、操作スイッチ71、収容位置センサ72、進出位置センサ73、人感センサ74からの信号に基づいて、駆動機構61の台車モータ61aおよびシートシャッタ装置90のシャッタモータ91の駆動を制御する。
【0046】
操作スイッチ71は、
図1に示すように、各奥側扉42に取り付けられており、
図9に示すように、進出スイッチ71aと退入スイッチ71bとを備えている。なお、進出スイッチ71aは、台車50をキャレッジ10内のキャレッジ収容空間14から、上下搬送空間1の外部の外部フロアFL上へ進出移動させるためのスイッチである。また、退入スイッチ71bは、台車50を外部フロアFL上からキャレッジ収容空間14へ退入移動させるためのスイッチである。
【0047】
収容位置センサ72は、台車50がキャレッジ収容空間14内に完全に収容された位置に配置されていることを検出するセンサであり、
図7に示すように、台車ベース51から突出された検出片72aと、キャレッジ10に設けられ、台車50が収容位置に配置された際に検出片72aを検出するセンサ部72bとで形成されている。
【0048】
進出位置センサ73は、台車50がキャレッジ収容空間14から外部フロアFL上に完全に進出された位置に配置されていることを検出するセンサであり、上記の収容位置センサ72と同様の構成を、例えば、台車50と手前側扉43側のゲートベース41とに設置したり、台車50と扉側ガイドレール46とに設置したりして構成できる。
【0049】
人感センサ74は、台車移動用スペースSP内に人が立ち入ったことを検出するセンサであり、光電管センサなどを用いる。
【0050】
また、シャッタ開センサ75は、シートシャッタ装置90が全開となったことを検出するセンサであり、シャッタ閉センサ76は、シートシャッタ装置90が全閉となったことを検出するスイッチである。
【0051】
次に、制御装置70による制御について
図10のフローチャートに基づいて簡単に説明する。
【0052】
進出スイッチ71aが押されたときには(S1)、収容位置センサ72の検出に基づいて台車50が収容位置に配置されているか確認した上で(S2)、まず、シャッタモータ91を駆動させてシャッタ全開センサ75により全開が検出されるまでシートシャッタ装置90を開駆動させて載込口2を開き(S3)、その後、さらに進出位置センサ73が台車50を検出するまで(S7)台車モータ61aを駆動させる(S4)。なお、台車50の移動中に、人感センサ74が、作業者が、台車移動用スペースSP内に立ち入ったことを検出した場合(S5)は、台車モータ61aの駆動を停止させる(S6)。
【0053】
そして、進出位置センサ73の検出に基づいて台車50が、外部フロア上の進出位置に達したことを検出したら(S7)、台車モータ61aの駆動を停止した後(S8)、シートシャッタ装置90を、シャッタ委全閉センサ76により全閉が検出されるまで閉駆動させて載込口2を閉じる(S9)。
【0054】
また、退入スイッチ71bが押されたときには(S10)、進出位置センサ73の検出に基づいて台車50が進出位置に配置されているか確認した上で(S11)、シャッタモータ91を駆動させてシャッタ全開センサ75により全開が検出されるまでシートシャッタ装置90を開駆動させて載込口2を開き(S12)、その後、さらに収容位置センサ72が台車50を検出するまで(S16)台車モータ61aを駆動させる(S13)。なお、台車50の移動中に、人感センサ74が、作業者が、台車移動用スペースSP内に立ち入ったことを検出した場合(S14)は、台車モータ61aの駆動を停止させる(S15)。
【0055】
そして、収容位置センサ72の検出に基づいて台車50が、キャレッジ収容空間14内の収容位置に達したことを検出したら(S16)、台車モータ61aの駆動を停止した後(S17)、シートシャッタ装置90を、シャッタ全閉センサ76が全閉を検出するまで閉駆動させて載込口2を閉じる(S18)。
【0056】
次に、本実施例1では、台車50がキャレッジ収容空間14に収容された収容位置でキャレッジ10により昇降される際に、台車50の前後移動を規制する構造を備えており、その構成を説明する。
すなわち、
図3に示すように、台車50の台車ベース51の右後端部には、係合爪57が設けられている。この係合爪57は、右方向に開口した係合溝57aを備えている。一方、フレーム20には、台車50が収容位置に配置された際に、係合溝57aに差し込まれるよう左方向に突出した係合プレート27が設けられている。この係合プレート27は、フレーム20の上下方向の全長に亘って設けられているとともに、図示は省略するが、キャレッジ10が下階F1および上階F2に配置されたときのみ、台車50の係合爪57が通過できるよう一部を上下方向および左右方向に切欠して係合解除部(図示省略)が形成されている。
したがって、係合爪57と係合プレート27とは、キャレッジ10が下階F1および上階F2に配置されたときのみ、係合爪57が係合プレート27の係合解除部に配置されて両者が前後方向に相対移動可能であり、キャレッジ10の上下昇降途中では、係合プレート27が係合爪57の係合溝57aに差し込まれた係合状態に維持されて、台車50が収容位置からフレーム20に対して前後方向に移動するのが規制される。
【0057】
(実施例1の作用)
次に、実施例1の垂直搬送装置Aの作用を説明する。
なお、この作用を説明するのにあたり、下階F1で搬送物を積み込み、上階F2の上階載込口2bで搬送物を降ろす場合の手順を説明する。
【0058】
(積み込み時)
下階F1において下階載込口2aから搬送物を積み込む際には、まず、作業者が、開閉ゲート40を、
図1に示すように開く。なお、このときキャレッジ10は、下階F1に配置されているものとする。
【0059】
このように開閉ゲート40を開く場合、奥側扉42および手前側扉43を、
図3において二点鎖線で示すように載込口2(a)に沿って前後に重なって配置された全閉位置から、同図において実線で示すように載込口2(a)に沿う方向に対して略直角の全開位置まで回動させる。そして、この全開位置で、各扉42,43は、ストッパ45のロッド支持部材45aが下階F1の外部フロアFLに設置された受部材45dに当接してそれ以上の開方向の回動が規制される。そこで、作業者は、ロッド支持部材45aの係合ロッド45bを、受部材45dの係合穴45cに差し込み、両扉42,43を固定させる。この両扉42,43の固定状態で、
図1に示すように、両扉42,43が略平行に配置され、柵状の両扉42,43の間に、台車移動用スペースSPが形成される。また、このとき、キャレッジ10に設けられたキャレッジ側ガイドレール64と、奥側扉42に設けられた扉側ガイドレール46とが同一軸線上に配置されて前後方向に延在される。
【0060】
次に、作業者は、台車移動用スペースSPの外部に移動した状態で、奥側扉42の先端に設けられた操作スイッチ71の進出スイッチ71aを押す。
これにより、制御装置70は、まず、シートシャッタ装置90を開駆動させて図示を省略したシャッタを上昇させて下階載込口2aを開いた後、台車モータ61aを台車前進方向に駆動させ、駆動輪62a,62bが回転して台車50が前進する。そこで、台車50は、キャレッジ収容空間14から外部フロアFL上の台車移動用スペースSPへ移動し、これに伴い、台車50の4個の台車ガイドローラ67がキャレッジ側ガイドレール64に沿って移動した後、前側のものから順に、扉側ガイドレール46に乗り移り、この扉側ガイドレール46に沿って移動する。両ガイドレール64,46は、
図7,
図8に示すように開口を上に向けたコの字断面形状に形成されていることから、台車50は、左右方向の移動を規制されて、正確に前方に移動する。また、外部フロアFLには、滑り止めプレート80が設けられていることから、駆動輪62a,62bには、スリップが生じにくい。
その後、台車50が外部フロアFLに完全に乗り移って進出位置センサ73が、台車50が進出位置に達したことを検出すると、制御装置70が台車モータ61aの駆動を停止させ、さらに、シートシャッタ装置90を閉駆動させて下階載込口2aを、図示を省略したシャッタにより閉じる。なお、この台車50の前進途中で、万一、作業者が台車移動用スペースSPに入った場合、人感センサ74がこれを検出し、台車モータ61aの駆動を停止し、台車50の前進はその時点で停止される。この場合、作業者が、台車移動用スペースSPの外に出て人感センサ74により検出されない状態となると、台車モータ61aは再び駆動して、台車50が前進する。
【0061】
次に、作業者は、台車50の前扉54を、
図2に示すように開いて、台車ベース51の搬送物搭載空間56内に搬送物を積み込む。このとき、下階載込口2aと、台車50の搬送物搭載空間56との間は、台車50の後扉55と、シートシャッタ装置90の図示を省略したシャッタが存在し、作業者の下階載込口2aへの移動が規制されて安全性が確保される。
【0062】
積込作業を終えると、作業者は、前扉54を閉じ、その後、操作スイッチ71の退入スイッチ71bを押す。これにより、制御装置70は、まず、シートシャッタ装置90を開駆動させて、下階載込口2aを開いた後、台車モータ61aを、台車50を後退させる方向に駆動し、台車50は、両ガイドレール46,64にガイドされながら、外部フロアFL上の台車移動用スペースSPから下階載込口2aを通ってキャレッジ収容空間14内へ移動する。
【0063】
そして、台車50の全体がキャレッジ収容空間14内に配置された収容位置に達した時点で、収容位置センサ72がこれを検出し、制御装置70は台車モータ61aの駆動を停止させた後、さらにシートシャッタ装置90を閉駆動させて、下階載込口2aを閉じる。
したがって、台車50は、キャレッジ10に対して収容位置に配置される。
また、以上のように、台車50がキャレッジ10から下階載込口2aを通って外部フロアFLに出入りする間、台車移動用スペースSPは、左右両側を柵状の奥側扉42および手前側扉43で閉鎖されているため、不用意に台車移動用スペースSP内に機材や人が進入するおそれがない。
【0064】
なお、台車50をキャレッジ10に搭載した後は、作業者は、開閉ゲート40を閉じる。
この時点で、外部フロアFL上には、台車移動用スペースSPを囲う柵や、台車50をガイドするガイドレールなどが残らず、作業者の移動や他の搬送物の移動の傷害となることがない。また、下階載込口2aは、シートシャッタ装置90と開閉ゲート40とにより二重に遮蔽され、安全性の確保が成される。
【0065】
(昇降時)
次に、作業者は、キャレッジ10を上階F2へ上昇させる。
この上昇は、図示は省略するが、下階載込口2aの脇に設けられた上昇操作スイッチを操作して行う。これにより、昇降駆動機構24が駆動され、図示を省略した昇降ワイヤが巻き取られてキャレッジ10が上昇し、上階F2達すると自動的に停止される。
【0066】
この昇降の際に、台車50の係合爪57は、係合プレート27と前後方向に係合可能な状態で係合プレート27に沿って移動する。このため、地震などによりキャレッジ10に不慮の振動が生じたとしても、台車50は前後方向位置を係合プレート27により一定位置に規制される。また、台車50のキャレッジ10に対する左右方向への相対移動は、台車ガイドローラ67とキャレッジ側ガイドレール64との水平方向への係合により規制される。これにより、台車50がキャレッジ10に対して水平方向に相対移動するのが規制される。
【0067】
(搬送物降ろし時)
上階F2に上昇させた搬送物を、台車50から降ろす場合、まず、積み込み時と同様に上階載込口2bの開閉ゲート40を開き、奥側扉42および手前側扉43を、ストッパ45により全開位置に固定する。
【0068】
次に、作業者は、上階載込口2bに配置された奥側扉42に設けられた操作スイッチ71の進出スイッチ71aを押す。
これにより、積込時と同様に、シートシャッタ装置90が開駆動して上載込口2bが開かれた後、台車50の駆動機構61の台車モータ61aを駆動させ、台車50をキャレッジ10から上階F2の外部フロアFL上に移動させる。そして、台車50が進出位置に達したことを進出位置センサ73が検出した時点で、台車モータ61aの駆動が停止されるとともに、シートシャッタ装置90を閉駆動させて、上階載込口2bを閉じる。
【0069】
そして、作業者は、台車50の前扉54を開いて、搬送物を台車50から降ろす。
【0070】
なお、以上、搬送物を、下階F1の下階載込口2aから上階F2の上階載込口2bへ搬送する場合の作業の流れを説明したが、搬送物は、上階F2の上階載込口2cから取り出すこともできる。その場合の操作は、上述したのと同様であるが、上階載込口2cの奥側扉42に設けられた操作スイッチ71により進出スイッチ71aを押した場合、台車50は、フレーム20に対して、後方に移動することになる。
【0071】
(実施例1の効果)
以上説明した実施例1の垂直搬送装置Aは、以下に列挙する効果を備えている。
a)載込口2から台車50が自走により出入りして搬送物をキャレッジ10に積み込むようにしため、従来、載込口2の前に設置されていた搬送物の積み込み用の水平搬送装置が不要となった。これにより、垂直搬送装置Aの設置に必要なスペースを抑え、空間効率を向上させることが可能となり、かつ、部品点数削減およびコスト削減を図ることが可能となった。特に、本実施例1のように、上階F2において前後に両上階載込口2b,2cを有する場合のように、載込口2の数が多くなればなるほど、部品点数およびコスト低減を図ることが可能となる。
【0072】
b)台車50が自走するようにしたため、上下搬送空間1の前後に載込口2を設け、前後のどちらからも出入可能とすることが容易で、載込口2の設置自由度が高くなり、かつ、本実施例1のように、前後の両方に載込口2を設けることにより、搬送効率の向上を図ることが可能である。
【0073】
c)台車50が自走するようにしたが、台車50は、キャレッジ側ガイドレール64および扉側ガイドレール46にガイドされて、キャレッジ10内およびキャレッジ10の外部の外部フロアFL上を移動するようにしたため、台車50は、走行時にキャレッジ10の内外で左右方向にずれることなく前後移動し、載込口2の出入をスムーズに、確実に行うことができる。
【0074】
d)扉側ガイドレール46は、載込口2を開閉するのに伴って奥側扉42を回動させるのに伴って、載込口2に沿って配置された状態と、台車50の移動方向に沿うように、載込口2に対して直交方向に延在された状態とに移動する。
したがって、開閉ゲート40を閉じたときには、外部フロアFL上に台車50をガイドする手段が配置されないため、外部フロアFLにおける搬送作業性に優れる。
【0075】
e)各載込口2に設置した開閉ゲート40は、奥側扉42と手前側扉43とを設け、両者が全開状態となったときに、台車50が進出する台車移動用スペースSPの左右両側を囲うため、別途、柵などを設けることなしに、台車50が移動する場所への人や物の進入を確実に防止することができる。しかも、台車50がキャレッジ10内に退入して開閉ゲート40を閉じた状態では、外部フロアFLに柵などが残ることが無く、使い勝手に優れる。
【0076】
f)台車50において搬送物搭載空間56は、水平方向の4周を左柵52、右柵53、前扉54、後扉55により囲んだため、搬送物が台車50から落下しにくい。しかも、前扉54と後扉55とにより、搬送物搭載空間56を前後から開閉可能としたため、上記b)のように載込口2を前後に設けた場合の台車50への搬送物の積み降ろしが容易となり、高い作業効率を得ることができる。
【0077】
g)台車50に係合爪57を設ける一方、フレーム20に係合プレート27を設け、両者を前後方向に係合させたため、昇降途中で、台車50がキャレッジ10に対して前後方向に移動するのを規制することができ、かつ、台車50の台車ガイドローラ67がキャレッジ側ガイドレール64に対し左右方向に係合していることから、昇降途中で、台車50がキャレッジ10に対して水平方向に移動して脱落するのを防止できる。
【0078】
h)外部フロアFLにおいて駆動輪62a,62bの転動経路上に滑り止めプレート80を設けた。このため、油類を使用する工場などにおいて、外部フロアFLに駆動輪62a,62bのスリップを招く流体が落下したとしても、駆動輪62a,62bにスリップが生じるのを抑制できる。
しかも、滑り止めプレート80は、金属製薄板に微小孔を穿設しただけの簡単な構成でありながら、ウレタンなどの柔軟な素材を用いた駆動輪62a,62bのスリップを確実に防止することができる。また、ディンプルと称される微小突起を多数設けたものと比較して、台車50に振動が生じるのを抑えることができ、かつ、市販の軟質素材の滑り止めテープを用いる場合と比較して、耐久性を向上できる。
【0079】
i)台車50を外部フロアFLに移動させて積み込み・降ろし作業を実行する際は、載込口2は、シートシャッタ装置90により閉じられるため、作業時の安全性確保を行うことができる。しかも、このとき、シートシャッタ装置90の手前には、台車50の後扉55が閉じられていることから、上記安全性確保をより確実に行うことができる。
【0080】
j)開閉ゲート40の閉状態では、載込口2は、シートシャッタ装置90と開閉ゲート40とにより、二重に閉鎖されるため、安全性を確保できる。
【0081】
k)制御装置70は、台車50の自走中に、人感センサ74が人を検出した場合は、自走を停止するようにしたため、安全性を確保できる。
【0082】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態および実施例1について詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態および実施例1に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0083】
例えば、実施例1では、上下搬送空間1として、下階F1と上階F2の2階建て構造に跨って延在されたものを示したが、3階以上の複数階構造にも適用することができる。
【0084】
また、実施例1では、キャレッジとして箱枠状のものを示したが、キャレッジは、台車を上下に搬送可能なものであれば、底部および外周部がパネルに囲まれた箱状など他の形状に形成してもよい。同様に、台車も、周囲を柵状の左右柵52,53および前後扉54,55で囲んだ例を示したが、その形状はこれに限定されず、パネルで囲むなどの他の形状に形成してもよい。
【0085】
また、実施例1では、滑り止めプレート80として、微小孔が穿設されたものを示したが、駆動輪のスリップを抑制可能であれば、板にディンプルなどの突起を設けたり、市販の軟質素材の滑り止めテープを貼ったりした構造としてもよい。また、走行レール11aの上面に、滑り止めプレート80と同様の滑り止め構造を設けてもよい。
【0086】
また、実施例1では、駆動輪は、前後2輪の例を示したが、左右2輪としてもよいし、あるいは、対角の2輪としたり、4輪としたりしてもよい。
【0087】
また、実施例1では、ガイド手段は、複数のガイドレール46,64およびこれを転動する台車ガイドローラ67を用いたが、これらは、実施例1とは逆に、ガイドローラをキャレッジ10および奥側扉42に設け、ガイドレールをキャレッジ10に設け、ガイドレールがガイドローラに沿って移動するようにしてもよい。
【0088】
また、第1係合部および第2係合部として、実施例1で示した第1係合部材としての係合プレート27と、第2係合部材としての係合爪57との形状の関係を逆にし、突起状の第2係合部材が溝状の第1係合部材に係合するようにしてもよい。
【0089】
また、実施例1では、ゲート部材としての開閉ゲート40は、一対の回動扉としての奥側扉42および手前側扉43を備えたものを示したが、ゲート部材としては、これに限定されず。例えば、閉時には、載込口2に沿って蛇腹状に折り畳み、開時には、載込口2の直交方向に伸張させるような他の構造のものを用いてもよい。この場合も、扉側ガイドレールをゲート部材に取り付けておくことで、実施例1と同様にガイドローラが乗り移るようにすることは可能である。
【0090】
また、実施例1では、回動扉として両扉42,43が、台車移動用スペースSPの幅方向を囲むようにしたが、ゲート部材とは別に、このような台車移動用スペースSPの幅方向を囲む柵を設けてもよい。この場合も、この柵を、例えば蛇腹状やスライドさせるなどして載込口の前方から移動させるように構成してもよい。
【0091】
また、実施例1では、自走装置60による台車50の自走は、制御装置70の制御により、自動的に収容位置および進出位置で停止するようにしたが、このような制御装置に代えて、作業者のスイッチ操作している間、台車モータ61aが駆動するようないわゆるリモートコントロール構造としてもよい。