(54)【発明の名称】油圧継手構造、油圧継手構造を備えた油圧作動装置、油圧継手構造を構成する継手部分、並びに継手部分を備えた油圧発生ユニット、先端工具ユニット、油圧ホースユニット
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記雄部材の前記第1の開口端部と前記雌部材の第1の開口端部が第1の周溝を介して接続されており、前記第1の周溝は、前記雄部材の前記第1の軸線方向位置において前記雄部材の外周面上を円周方向に延びるものであるか、あるいは、前記雌部材の前記第1の軸線方向位置において前記雌部材の内周面上を円周方向に延びるもののいずれかであり、
前記雄部材の前記第2の開口端部と前記雌部材の第2の開口端部が第2の周溝を介して接続されており、前記第2の周溝は、前記雄部材の前記第2の軸線方向位置において前記雄部材の外周面上を円周方向に延びるものであるか、あるいは、前記雌部材の前記第2の軸線方向位置において前記雌部材の内周面上を円周方向に延びるもののいずれかである、ことを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の油圧継手構造。
【背景技術】
【0002】
従来から、可搬式油圧工具(油圧作動装置)として、鉄筋カッターおよび鉄筋ベンダーなどが知られている。このような油圧工具は、例えば、バッテリー駆動の油圧ポンプユニット(油圧発生ユニット)と、油圧ポンプユニットから供給された加圧された作動油により駆動されるカッターユニットおよび曲げユニット等の先端工具ユニット(ヘッドユニット)とを有する。最近では、このような油圧工具はレスキューツールとしても使用されるようになっている。油圧ポンプユニットを各種の先端工具ユニットで共用できるようにするために、油圧ポンプユニットと先端工具ユニットは連結および分離が可能となっている。また、作業対象物にアクセスする作業者の重量負担を低減するため、油圧ポンプユニットと先端工具ユニットとを比較的長い油圧ホースユニットを介して接続し、先端工具ユニットを主作業者が保持して操作し、油圧ポンプユニットを副作業者が保持して操作することも行われている。
【0003】
上記の可搬式油圧工具には、単動式(正方向動作のみ油圧で行い、逆方向動作はリターンスプリングで行うもの)のものと複動式(正逆両方向の動作を油圧で行うもの)のものとがある。複動式の場合には、油圧ポンプユニットと先端工具ユニットまでの間に2つの作動油ラインが設けられ、一方が加圧された作動油を先端工具ユニットに供給するために用いられ、他方が戻り油のために用いられる。可搬式油圧工具が、上述したように連結/分離可能な複数のユニットから構成されている場合、各ユニット間で作動油ライン(油路)を連結/分離する必要があり、このために油圧継手構造を構成するカプラーないしジョイントが各ユニットに設けられる。
【0004】
連結/分離可能な複数のユニットからなる複動式の油圧工具における油圧継手構造の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1には各ユニットの端面にポーティングコネクタおよびカプラーのいずれをも挿入できる2つの穴を用意し、2つのユニットの端面同士を突き合わせた状態で2つの作動油ラインを2つのポーティングコネクタを用いて接続したり、あるいは、上記穴に雄カプラー/雌カプラーを螺着しておき2つのユニットの連結時にカプラー同士を連結することが記載されている。
【0005】
特許文献1に示す装置では、ポーティングコネクタを使用する場合もカプラーを使用する場合も、2対の部材を同時に正確に位置決めする必要があり、連結作業が面倒である。またポーティングコネクタを用いた場合、ユニット同士を分離すると油路内の作動油が外部に漏洩する。カプラーを用いた場合には漏洩の問題は解決できるが、2つのユニットが分離されているときに、ポンプユニットを誤って動作させると加圧された作動油が吹き出すか、ポンプユニットにダメージを与える場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して油圧作動装置の一実施形態である油圧式レスキューツールについて説明する。なお、本願の添付図面に示される油路は、ドリルにより無垢の材料を穿孔することにより複数の直線的な穴を形成し、必要に応じて直線的な穴を交差させて接続し、また必要に応じて穴の端部を止め栓により閉鎖することにより形成されているが、このような油路の具体的形成方法は添付図面のみから当業者が容易に把握できることであるため、明細書中での説明は行わないものとする。なお、油圧作動装置は、従来から建設業界で広く用いられている、鉄筋カッターおよび鉄筋ベンダー等の油圧工具であってもよいことは言うまでもない。
【0018】
図1および
図2に示すように、油圧式レスキューツールは、油圧発生ユニット100と、油圧発生ユニット100が発生する油圧により駆動される複動式の先端工具ユニット(「ヘッドユニット」とも呼ばれている)200、本例ではスプレッダーと、油圧発生ユニット100と先端工具ユニット200とを接続する油圧ホースユニット(以下、単に「ホースユニット」と称する)300とをから構成されている。油圧発生ユニット100とホースユニット300とは連結および分離が可能、また、先端工具ユニット200とホースユニット300も連結および分離が可能である。なお、後述するように、ホースユニット300を用いずに、油圧発生ユニット100と先端工具ユニットとを直結することもできる。
【0019】
図1には、油圧発生ユニット100、先端工具ユニット200およびホースユニット300を連結した状態が示されている。
図2には、油圧発生ユニット100とホースユニット300とを接続する油圧継手構造Cが拡大して示されており、
図3には、油圧発生ユニット100とホースユニット300とを分離した状態が示されている。
【0020】
図1に示すように、油圧発生ユニット100は、バッテリー駆動式の電動油圧ポンプユニットからなる。油圧発生ユニット100は、トリガスイッチ104が設けられたグリップ102を有しており、トリガスイッチ104を引くと、油圧発生ユニット100に内蔵された電動モータ106(
図1では見えない)が作動し、これによりポンプ108が回転し、吐出油路110に加圧された作動油が送り出されるように構成されている。また、作動油は、戻り油路112を通ってポンプ108に戻される。グリップ102の下端には、電動モータ106を駆動するための電源としてバッテリー103が装着されている。
【0021】
先端工具ユニット200であるスプレッダーは、複動式油圧シリンダ202を有する複動式工具ユニットである。すなわち、スプレッダーの開動作および閉動作の両方が油圧により行われる。油圧シリンダ202の第1チャンバ202aに第1油路201aから加圧された作動油が送り込まれると、ピストン204および当該ピストン204に固定されたロッド206が図中右方に移動して、スプレッダー200の一対のブレード208が開かれるとともに、第2チャンバ202b内にある作動油が第2油路201bを介して第2チャンバ202bから追い出される。また、第2チャンバ202bに加圧された作動油が送り込まれると、ピストン204およびロッド206が図中左方に移動して、スプレッダー200の一対のブレード208が閉じられるとともに、第1チャンバ202a内にある作動油が第1チャンバ202aから追い出される。
【0022】
ホースユニット300は一対の油圧ホース302a、302bを有しており、ホースユニット300が先端工具ユニット200に連結されると、油圧ホース302a、302bとチャンバ202a、202bを接続することができる。この接続関係は第2切換機構SW2(詳細後述)によって、切換および遮断することもできる。
【0023】
油圧発生ユニット100とホースユニット300とは油圧継手構造Cにより連結される。油圧発生ユニット100と、ホースユニット300とが連結されると、第1切換機構SW1の状態に依存して、油圧発生ユニット100のボディ内に形成された吐出油路110とホースユニット300の2つの油圧ホース302a、302bのいずれか一方とを連通させることができる。以下に、第1切換機構SW1について説明する。
【0024】
図2には、ポンプ108の吐出油路110から加圧された作動油が第1油圧ホース302aに供給されるときの状態が示されている。油圧発生ユニット100のボディ内に形成されたスプール弁穴に円筒形のスプール弁体120が軸線方向にスライド可能に嵌め込まれている。スプール弁体120内を軸線方向に延びる内部空間122が、作動油をポンプ108に戻すための前述した戻り油路112を成す。スプール弁体120は、使用者の手指によりレバー121を動かすことにより、移動させることができる。以下、本明細書において、
図2に示すスプール弁体120の位置を「第1位置」と呼ぶこととする。
【0025】
油圧発生ユニット100のボディ内には、前述した吐出油路110に加えて、第1油路114および第2油路116が形成されている。油路114、110、116は、スプール弁体120が挿入されているスプール弁穴の内周面に、スプール弁穴の軸線方向に等間隔で開口している。スプール弁体120の外周面には、3つの周溝123、124、125が形成されており、これらの周溝はスプール弁体120の軸線方向に並んでいる。スプール120には、両端の幅狭の周溝123、125を、戻り油路112を成す内部空間122に接続する半径方向穴が形成されている。中央の周溝124は、スプール弁体120の軸線方向位置に依存して、隣接する2つの油路(110および114、または110および116)を相互に連通させることができるように、広い幅を有している。
【0026】
スプール弁体120が「第1位置」にある
図2に示す状態においては、吐出油路110は、スプール弁体120の周溝124を介して第1油路114に接続される。また、第2油路116は、スプール弁体120の周溝125、当該周溝125に接続された半径方向穴を介して、スプール弁体120の内部空間122すなわち戻り油路112に接続されている。
【0027】
図2に示す第1位置にあるスプール弁体120を図中右方向に所定量(隣接する油路114、110、116の間隔に等しい量)移動させて「第2位置」(
図3を参照)に位置させることにより、スプール弁体120の周溝123を第1油路114に接続し、かつ、中央の幅広の周溝124により吐出油路110と第2油路116とを接続することができる。従って、このとき、吐出油路110は、スプール120の周溝124を介して第2油路116に接続され、また、第1油路114は、スプール120の周溝123、当該周溝123に接続された半径方向穴を介して、スプール120の内部空間122すなわち戻り油路112に接続される。
【0028】
次に、
図2および
図3を参照して、油圧発生ユニット100と油圧ホースユニット300とを接続する油圧継手構造Cについて説明する。油圧継手構造Cは、連結および分離可能に構成された第1継手部分C1および第2継手部分C2からなる。第1継手部分C1は油圧発生ユニット100の端部に設けられ、第2継手部分C2は、油圧ホースユニット300の油圧発生ユニット100側の端部に設けられている。
【0029】
第1継手部分C1は、油圧発生ユニット100のボディの一部を成す全体として円筒形の外筒130および円柱形の心棒132(第1継手部分C1の雄部材)とを有している。外筒130および心棒132の中心軸線は一致している。外筒130の内周面および心棒132の外周面の間に形成された円筒形のリング状の空間内に、円筒形のリング部材134が設けられている。リング部材134は、その内周面が心棒132の外周面に、そしてその外周面が外筒130の内周面によって案内された状態で、軸線方向に移動(スライド)可能である。リング部材134はバネ136により図中左側に付勢されており、
図3に示すように油圧発生ユニット100と油圧ホースユニット300が分離されているときには、リング部材134は油路からの作動油の漏洩を防止する「油路カバー位置」に位置する。リング部材134を「油路カバー位置」に適正に位置させるため、図示例ではボルトからなるストッパー138が設けられている。ストッパー138は、リング部材134の外周面に形成された軸線方向溝140に受け入れられている。リング部材134が「油路カバー位置」にあるときに、ストッパー138は、リング部材134端部に設けられたストップ面141と当接する(
図3を参照)。
【0030】
円柱形の心棒132すなわち雄部材の内部を、前述した第1油路114および第2油路116が軸線方向に延びている。第1油路114は、心棒132の第1の軸線方向位置において、心棒132の外周面に開口する開口端部114aを有する。第2油路116は、心棒132の第2の軸線方向位置(図示例では第1の軸線方向位置よりも図中左側の位置)で心棒132の外周面に開口する開口端部116aを有する。リング部材134の内周面には、周溝142が形成されている。周溝142は、リング部材134が「油路カバー位置」にあるときに、開口端部114aと開口端部116aとを連通させることができるような位置および幅を有するように形成されている。周溝142の両側においてリング部材134の内周面には、リング状のシール部材144が設けられている。従って、リング部材134が「油路カバー位置」にあるときには、一対のシール部材144によって、開口端部114aおよび開口端部116aからの作動油の漏出が防止される。また、作業者が誤ってトリガスイッチ104を引いてしまった場合でも、油路切換用のスプール120の位置に関わらず、ポンプ108から吐出油路110に送り出された加圧された作動油は、周溝142を通って戻り油路112に戻るため、作動油がシール部材144を越えて漏出することもなく、また、ポンプ108がダメージを受けることを防止することができる。
【0031】
油圧ホースユニット300の油圧発生ユニット100側の端部に設けられた第2継手部分C2は、その中心部に軸線方向に沿って延びる円柱形の内部空間が形成された全体として円筒形の筒体304(第2継手部分C2の雌部材)を有している。筒体304内には、第1油圧ホース302aと連通する第1油路306と、第2油圧ホース302bと連通する第2油路308とが形成されている。第1油路306は、筒体304の第1の軸線方向位置において、筒体304の内周面に開口する開口端部306aを有している。第2油路308は、筒体304の第2の軸線方向位置(図示例では第1の軸線方向位置より図中左側の位置)において、筒体304の内周面に開口する開口端部308aを有している。筒体304の内周面には、開口端部306aと連通する周溝306bが開口端部306aと同じ軸線方向位置に形成され、また、開口端部308aと連通する周溝308bが開口部308bと同じ軸線方向位置に形成されている。周溝306bと周溝308bとの間の軸線方向距離は、第1継手部分C1の心棒132に設けられた開口端部114aと開口端部116aとの間の軸線方向距離と同じである。
【0032】
筒体304の内周面の直径は、第1継手部分C1の心棒132の直径よりも僅かに大きく(「すきまばめ」程度の嵌め合い)、筒体304内に心棒132をスムースに挿入することができる。筒体304内には、円柱形の棒状部材312が設けられている。棒状部材312は筒体304内を、軸線方向に移動(スライド)可能である。棒状部材312はバネ314により図中右側に付勢されており、
図3に示すように油圧発生ユニット100と油圧ホースユニット300が分離されているときには、棒状部材312は油路306、308からの作動油の漏洩を防止する「油路カバー位置」に位置する。棒状部材312を「油路カバー位置」に適正に位置させるため、図示例では筒体304の内周面に形成された段差からなるストッパー316が設けられている。棒状部材312が「油路カバー位置」にあるときに、ストッパー316は、棒状部材312の端部に設けられた拡径部の表面からなるストップ面318と当接する。棒状部材312が「油路カバー位置」にあるときに、棒状部材312は第1油路306の開口端部306aおよびこれに連通する周溝306bと、第2油路308の開口端部308aおよびこれに連通する周溝308bを塞ぐ。
【0033】
筒体304の内周面には3つのリング状のシール部材320、322、324が設けられている。第1油路306の開口端部306a(および周溝306b)は、シール部材322とシール部材324との間の筒体304の第1の軸線方向位置において、筒体304の内周面に開口している。また、第2油路308の開口端部308a(および周溝308b)はシール部材320とシール部材322との間の筒体304の第2の軸線方向位置において、筒体304の内周面に開口している。棒状部材312が「油路カバー位置」にあるときには、シール部材320、322、324により、筒体304の第1油路306および第2油路308内にある作動油の外部への漏洩が防止される。
【0034】
図3に示す状態から、第2継手部分C2を第1継手部分C1に連結すると、
図2の状態になる。すなわち、第1継手部分C1の心棒132(雄部材)が、第2継手部分C2の筒体304(雌部材)の円柱形の内部空間内に挿入され、心棒132はバネ314を圧縮しながら棒状部材312を図中左方に押し込む。また、筒体304の端面がバネ136を圧縮しながらリング部材134を図中右方に押し込む。この状態におけるリング部材134および棒状部材312の位置を「退避位置」と呼ぶこととする。
【0035】
このとき、心棒132の外周面の第1の軸線方向位置と筒体304の内周面の第1の軸線方向位置が対面するとともに、心棒132の外周面の第2の軸線方向位置と筒体304の内周面の第2の軸線方向位置が対面する。そして、油圧継手構造Cの第1の軸線方向位置において油圧発生ユニット100の第1油路114の開口端部114aと油圧ホースユニット300の第1油路306の開口端部306aとが周溝306bを介して接続されて第1の接続部が構成され、また、油圧継手構造Cの第2の軸線方向位置において油圧発生ユニット100の第2油路116の開口端部116aと油圧ホースユニット300の第2油路308の開口端部308aとが周溝308bを介して接続されて第2の接続部が構成される。また、このとき、シール部材320、322、324が、心棒132の外周面と筒体304の内周面との間の隙間をシールする。シール部材320、322は、開口端部114aと開口端部306aおよび周溝306bとの接続部の軸線方向両側に位置して、上述した第1の接続部を密封する。また、シール部材322、324は、開口端部116aと開口端部308aおよび周溝308bとの接続部の軸線方向両側に位置して、上述した第2の接続部を密封する。なお、周溝306b、308bが設けられているので、第1継手部分C1と第2継手部分C2との連結にあたって両者の軸線方向周りの相対的角度位置は任意である。すなわち、開口端部114a(116a)が開口端部306a(308a)に対面している必要はない。従って、連結作業が非常に容易になる。このような周溝は、心棒132の外周面の開口端部114a(116a)の位置に設けてもよいし、心棒132の外周面および筒体304の内周面の両方に設けてもよい。
【0036】
第2継手部分C2と第1継手部分C1との連結状態を維持するために、ロック機構が設けられており、これについて以下に説明する。第1継手部分C1の外筒130の外周面に沿って軸線方向にスライド可能なロックリング150が設けられている。ロックリング150の端部には面取り部152が設けられている。外筒130には、外筒130を半径(厚さ)方向に貫通する複数例えば6〜10個程度の数の半径方向穴が円周方向に均等に設けられている。各半径方向穴内には、長円断面を有するロックボール154が外筒130の半径方向に移動可能に保持されている。第2継手部分C2の筒体304の外周面には、ロックボール154を受け入れることができる環状凹部330が形成されている。環状凹部330の表面の曲率半径は比較的大きく、すなわち、環状凹部330は比較的緩やかな傾斜の表面を有している。ロックリング150は、ロックリング150と外筒130との間に介在するバネ158により、図中左方の「ロック位置(
図2参照)」に向けて付勢されている。
【0037】
図3に示す状態では、リング部材134に邪魔されてロックボール154が半径方向内側に向けて移動できないようになっているため、ロックリング150は図中左方に移動することはできない。
図2に示すように第2継手部分C2を第1継手部分C1に連結すると、ロックボール154と環状凹部330の軸線方向位置が一致し、ロックボール154が環状凹部330の深さ分だけ半径方向内側に向けて移動できるようになる。すると、ロックリング150がバネ158の力によって図中左方に移動しながら、ロックリング150の面取り部152がロックボール154を半径方向内側に向けて押し込み、ロックリング150はロックボール154を乗り越える。ロックリング150を所定の軸線方向位置(「ロック位置」)で停止させるため、外筒130の外周面にはストッパーリング156が設けられている。
図2に示す状態では、ロックリング150がロックボール154の半径方向外側への移動を防止しているため、第2継手部分C2と第1継手部分C1の連結は強固に維持される。第2継手部分C2と第1継手部分C1との連結状態を解除する際には、作業者がバネ158に逆らってロックリング150を図中右方に移動させてロックボール154を半径方向外側に向けて移動できるようにすれば、第2継手部分C2を第1継手部分C1から引き抜くときにロックボール154は環状凹部330の表面の比較的緩やかな傾斜表面にガイドされて半径方向外側に向けて移動する。
【0038】
ここまで、油圧発生ユニット100とホースユニット300の油圧発生ユニット100側端部との間の油圧継手構造Cについて説明してきたが、先端工具ユニット200であるスプレッダーとホースユニット300の先端工具ユニット200側端部との間の油圧継手構造C’も同じ構造を有している。このことは、油圧継手構造C’を拡大して示す
図4より明らかである。なお、油圧継手構造C’を示す
図4においては、油圧継手構造Cを構成する部材と同一部材には同一符号に「’(ダッシュ)」を付けてある。油圧継手構造CおよびC’が同一構造を有するということは、ホースユニット300を用いることなく、油圧発生ユニット100を先端工具ユニット200に直結することができることを意味しており、このような使用態様も当然に意図されている。油圧発生ユニット100を先端工具ユニット200に直結した状態が、
図5に示されている。
【0039】
なお、油圧継手構造C’を構成するホースユニット300の先端工具ユニット200側のエンドピース(端部材)には、継手部分C1’と油圧ホース302a、302bの端部との間に、
図1および
図6に示すように切換機構SW2が設けられている。切換機構SW2は、油圧ホース302aに加圧された作動油が供給され、かつ、油圧ホース302bに戻り油が流されるように前述した切換機構SW1が調整された状態において、加圧された作動油を先端工具ユニット200の継手部分C2’の油路114’および油路116’のうちのいずれかに加圧された作動油が供給されるように切換を行うことができる。
【0040】
切換機構SW2の構成および作用を特に
図6を参照して説明する。切換機構SW2は、その外周面に周溝311、
315、313を有するスライド弁310を有しており、スライド弁310は、
図6中上下方向にスライド可能であって、
図6(a)に示す第1位置、
図6(b)に示す中立位置、
図6(c)に示す第2位置をとることができる。切換機構SW2には、油圧ホース302bに連通する第1油路401と、油圧ホース302aに連通する第2油路402と、第1油路401と第2油路403との間にこれら第1および第2油路401、402と平行に設けられた第3油路403を有している。第1油路401と第2油路402とは第4油路404により接続されており、作動油は第4油路404を図中上方向にも下方向にも自由に流れることができる。第2油路402と第3油路403とは第5油路405により接続されている。第5油路にはチェック弁406が設けられており、このため作動油は第5油路405を図中上方向にしか流れることができない。また、第2油路402にはチェック弁407が設けられており、作動油はチェック弁407を通って図中左方向に流れることはできず(チェック弁407を通る図中右方向の流れは許容される)、加圧された作動油が油圧ホース302aから第2油路402に流入してくると、その作動油は第5油路405に流入し、図中上方向に向かう。
【0041】
従って、スライド弁310が
図6(a)に示す第1位置にあるときには、油圧ホース302aから第2油路402に流入した加圧された作動油は、第5油路、周溝
315を通って油路114’に流入する。また、油路116’内の戻り油は、周溝311、第1油路401と通って油圧ホース302bに流入する。 スライド弁310が
図6(b)に示す中立位置にあるときには、油圧ホース302aから第2油路402に流入した加圧された作動油は、第5油路405、周溝
315に流れるがそこから先に進むことはできない。また、油路114’、116’内の作動油も油圧ホース302bまで進むことはできない。スライド弁310が
図6(c)に示す第2位置にあるときには、油圧ホース302aから第2油路402に流入した加圧された作動油は、第5油路405、第3油路403および周溝
315を通って油路116’に流入する。また、油路114’内にある戻り油は、周溝313、第2油路402、第4油路404および第1油路401を通って油圧ホース302bに流入する。
【0042】
ここまで、先端工具ユニット200が複動式の工具ユニットである場合について説明したが、油圧発生ユニット100には、単動式の工具ユニットを接続することもできる。
図7および
図8は先に説明した油圧発生ユニット100に、単動式先端工具ユニット用の油圧ホースユニット600を介して、単動式の先端工具ユニット500を接続した構成例を示している。図示された単動式の先端工具ユニット500はハサミカッターである。先端工具ユニット500は単動式の油圧シリンダ501を有しており、油圧シリンダ501の一側のチャンバ502に加圧された作動油を供給することにより、ピストン503が図中左方向に移動し、一対のブレード504が閉じようになっている。チャンバ502内の油圧を解放すると、リターンスプリング505がピストン503を押し戻し、一対のブレード504が開くようになっている。
【0043】
油圧ホースユニット600は、油圧発生ユニット100に設けられた継手部分C1と連結することができる単動用継手部分Csを有する。単動用継手部分Csは、先に説明した継手部分C2に対して以下の部分が異なっている。開口端部308aにつながっている第2油路308”が、第1油路306に合流している。すなわち、第1油路306および第2油路308”の両方が、この油圧ホースユニット600が有するただ一つの油圧ホース302aに接続されている(先に説明した継手部分C2においては、第2油路308は油圧ホース302bに接続されていた)。第2油路308”にはチェック弁601が設けられており、このチェック弁601は、開口端部308aから第2油路308”を油圧ホース302aに向かって流れる作動油の流れのみを許容し、油圧ホース302aから第2油路308”を開口端部308aに向かって流れて第1継手部分C1に戻ってゆく作動油の流れを禁止する。
【0044】
図7および
図8は不作動状態を示しており、心棒132(雄部材)内の油路116から第2油路308”内に流入した加圧された作動油は、チェック弁601のボールを押しのけて油圧ホース302aの根本部分まで到達できるが、作動油は第1油路306、油路114を通ってポンプに戻ってしまので、単動式の先端工具ユニット500には加圧された作動油は供給されない。この状態から、スプール弁120を図中左方にずらすと(すなわちスプール弁120を「第2位置」から「第1位置」に移動させると)、心棒132(雄部材)内の油路114から第1油路306を通って油圧ホース302aの根本部分まで到達するとともに、第2油路308”内にも流れ込もうとする。しかし、第2油路308”設けられたチェック弁601によりその流れが妨げられるため、加圧された作動油は、油圧ホースユニット600の油圧ホース302aを通って、先端工具ユニット500に供給される。
【0045】
図9には、
図6に示した切換機構SW2と置換することができる、
図6に示した切換機構SW2の変形例としての切換機構SW2’が示されている。
図9の切換機構SW2’は、
図9(b)に示す中立位置において加圧された作動油が弁体により堰き止められるのではなく戻り油路に戻されるようになっている点において、
図6に示した切換機構SW2と機能的に異なっている。
図9の切換機構SW2’の構成について以下に説明する。なお
図9において、
図6に示した構成要素と同一ないし類似の部材については、
図6に記載された参照符号に「’(ダッシュ)」ないし「”(ツー(ダブル)ダッシュ)」を付してある。
【0046】
切換機構SW2’は、その外周面に周溝311’、
315’、313’を有するスライド弁310’を有しており、スライド弁310’は、
図9中上下方向にスライド可能であって、
図9(a)に示す第1位置、
図9(b)に示す中立位置、
図9(c)に示す第2位置をとることができる。スライド弁310’の内部には、軸線方向に沿って中心油路410が設けられており、この中心油路410の両端が、周溝311’、313’の溝底で開口しており、周溝311’、313’を相互に接続している。切換機構SW2’には、油圧ホース302bに連通する第1油路401’と、油圧ホース302aに連通する第2油路402’と、第1油路401’と第2油路402’との間にこれら第1および第2油路401’、402’と平行に設けられた第3油路403’を有している。第1油路401’と第3油路403’とは第4油路411により接続されている。第4油路411の下端部にチェック弁414が設けられており、作動油は、第1油路401’から第3油路403’に流れ込むことはできるが、その逆に流れることはできない。第2油路402’にはチェック弁413が設けられており、作動油は図中左から右方向にチェック弁413を通って流れることができるが、その逆に流れることはできない。なお、
図9に示す切換機構SW2’は、油圧ホース302bに加圧された作動油が供給されるように(すなわち油圧ホース302aが戻りラインとして使用される)切換機構SW1をセットした状態で使用することを前提としている。
【0047】
スライド弁310’が
図9(a)に示す第1位置にあるときには、油圧ホース302bから第1油路401に流入した加圧された作動油は、第4油路411を通って第3油路403’に流入し、スライド弁310’の周溝
315’を通って油路116”に流入する。また、油路114”内の戻り油は、周溝313’、第2油路402と通って油圧ホース302aに流入する。
スライド弁310’が
図9(b)に示す中立位置にあるときには、油圧ホース302bから第1油路401に流入した加圧された作動油は、スライド弁310’の周溝
315’、中心油路410および周溝313’を順次通って第2油路402’に流入し、油圧ホース302aに流入する。
スライド弁310’が
図9(c)に示す第2位置にあるときには、油圧ホース302bから第1油路401’に流入した加圧された作動油は、第4油路411、第3油路403’およびスライド弁310’の周溝
315’を順次通って油路114”に流入する。また、油路116”内にある戻り油は、スライド弁310’の周溝311’、中心油路410および周溝313’を順次通って第2油路402’に流入し、油圧ホース302aに流入する。
【0048】
図9の切換機構SW2’は、
図6の切換機構SW2と異なり、中立位置においてスライド弁310’によって加圧された作動油を堰き止めないので、ポンプ308に負担をかけることがなく、スライド弁310’を中立位置から第1位置または第2位置にスムースに移動することができる。