特許第5738678号(P5738678)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝ライフスタイル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5738678-洗濯機 図000002
  • 特許5738678-洗濯機 図000003
  • 特許5738678-洗濯機 図000004
  • 特許5738678-洗濯機 図000005
  • 特許5738678-洗濯機 図000006
  • 特許5738678-洗濯機 図000007
  • 特許5738678-洗濯機 図000008
  • 特許5738678-洗濯機 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738678
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 37/22 20060101AFI20150604BHJP
   D06F 39/00 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   D06F37/22
   D06F39/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-123341(P2011-123341)
(22)【出願日】2011年6月1日
(65)【公開番号】特開2012-249743(P2012-249743A)
(43)【公開日】2012年12月20日
【審査請求日】2014年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 直子
(72)【発明者】
【氏名】西村 博司
(72)【発明者】
【氏名】金田 至功
【審査官】 伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−184068(JP,A)
【文献】 特開平04−160240(JP,A)
【文献】 特開2011−041690(JP,A)
【文献】 実開昭62−119547(JP,U)
【文献】 特開平11−025202(JP,A)
【文献】 特開2009−216210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 1/00−51/02
F16F 9/00−9/54
F16F 11/00−13/02
F16F 15/00−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転槽を収容する水槽の振動を減衰するダンパを備え
前記ダンパは、
軸方向に形成された欠除部を有するシリンダと、
前記シリンダの内部に収容されたコイルと、
前記シリンダの内部に収容され、前記コイルが発生する磁界を誘導するヨークと、
前記ヨークとの間に隙間を存し前記ヨークを貫通して前記シリンダに挿設されたロッドと、
記隙間に充填された磁気粘性流体と
前記ヨークの外周部に設けられ前記コイルに給電するためのリード線が通されたブッシュと、
を有し、
前記ブッシュは、前記欠除部に対し前記シリンダの軸方向に挿入されて前記リード線とともに前記シリンダに固定されている洗濯機。
【請求項2】
コイルとヨークとが樹脂モールドにより一体化されて磁場ユニットを構成し、この磁場ユニットを回り止めする回り止め部をシリンダが有することを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
シリンダの軸方向に二部品で構成されたヨークが存し、そのうちの一方の部品がシリンダの回り止め部と係合して磁場ユニットの回り止めをし、この一方の部品と他方の部品とが回り止め関係を有することを特徴とする請求項2記載の洗濯機。
【請求項4】
前記ブッシュの前記シリンダ内に位置する部分は、前記欠除部より幅広に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の洗濯機。
【請求項5】
シリンダの欠除部に挿入したリード線の抑え用に、シリンダにキャップが装着されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、洗濯機、中でもドラム式洗濯機においては、外箱の内部に水槽が存在し、この水槽の内部に回転槽であるドラムが収容されていて、このドラムが水槽外のモータにより回転駆動されるようになっている。又、水槽は、外箱の底板上にサスペンションにより弾性支持して設けられており、そのサスペンションに、ドラムの回転振動に伴う水槽の振動を減衰するダンパが具えられている。この種のダンパには、通常、減衰力が不変のものが用いられているが、近年、減衰力が可変のものを用いる考えがあり、それには作動流体に磁気粘性流体(MR流体)を使用することが考えられている。
【0003】
磁気粘性流体は、例えば、オイルの中に鉄、カルボニル鉄などの強磁性粒子を分散させたものであって、磁力が印加されると強磁性粒子が鎖状のクラスタを形成することで粘度が上昇するものであり、それによって、例えば、脱水行程起動時の水槽の共振が現れる回転速度域で、磁気粘性流体の粘度を上げてダンパの減衰力を大きくすることにより、水槽の共振の発生を回避して脱水回転の立ち上がり性能を良くし、それ以後の脱水行程定常(高速回転)域では、磁気粘性流体の粘度を下げて減衰力を小さくすることにより、水槽の振動が外箱に伝わるのを避け、更にその振動が洗濯機を設置した家屋の床面に伝わるのを避けるようにすることが可能である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−184068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された、作動流体に磁気粘性流体を使用するダンパは、シリンダの内部に、コイルと、このコイルが発生する磁界を誘導するヨークが設けられ、そのコイルとヨークとをロッドがコイル及びヨークとの間に微小な隙間を存し貫通してシリンダに挿設され、そのロッドとコイル及びヨークとの間の隙間に磁気粘性流体が充填されているものであって、コイルが発生した磁界により、ヨークを介して磁気粘性流体に磁力を印加するようになっている。
【0006】
しかして、このものにおいては、コイルに給電するためのリード線の挿通構造として、シリンダに径方向に開通する孔が形成され、この孔に上記リード線がシリンダの径方向に通され、そして又、リード線を覆って保護するブッシュが上記シリンダの孔に同じくシリンダの径方向に圧入されて装着されていた。
このため、作業がしにくく、製造性が悪いという欠点を有していた。又、ブッシュの浮きや外れといった不良も発生しやすく、製品の信頼性が充分に得られていなかった。
【0007】
そこで、作動流体に磁気粘性流体を使用するダンパで水槽の振動を減衰するものにおける、製造性の向上、並びに製品の信頼性の向上を図り得る洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の洗濯機は、回転槽を収容する水槽の振動を減衰するダンパを備える。前記ダンパは、軸方向に形成された欠除部を有するシリンダと、前記シリンダの内部に収容されたコイルと、前記シリンダの内部に収容され、前記コイルが発生する磁界を誘導するヨークと、前記ヨークとの間に隙間を存し前記ヨークを貫通して前記シリンダに挿設されたロッドと、記隙間に充填された磁気粘性流体と、前記ヨークの外周部に設けられ前記コイルに給電するためのリード線が通されたブッシュと、を有する。前記ブッシュは、前記欠除部に対し前記シリンダの軸方向に挿入されて前記リード線とともに前記シリンダに固定されている
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態を示す、ダンパを含むサスペンション単体の縦断側面図
図2】洗濯機の全体を一部破断で示す縦断側面図
図3】シリンダの正面図
図4図3のIV−IV線に沿う横断面図
図5】ダンパのシリンダを破断したサスペンション単体の正面図
図6】シリンダの欠除部とブッシュとの関係を示す横断面図
図7】ダンパのコイルの配線接続状態を示す関係部分の斜視図
図8】第2の実施形態を示す図1相当図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、第1の実施形態につき、図1ないし図7を参照して説明する。
まず、図2には、ドラム式洗濯機の全体構造を示しており、外箱1を外殻としている。この外箱1は、直方体状を成しており、そのうちの前面部(図2で右側)のほゞ中央部に洗濯物出入口2を形成し、この洗濯物出入口2を開閉する扉3を外箱1に枢支して設けている。又、外箱1の前面部の上部には、操作パネル4を設けており、その裏側(外箱1内)に運転制御用の制御装置5を設けている。
【0011】
外箱1の内部には、水槽6を配設している。この水槽6は軸方向が前後(図2で右左)の横軸円筒状を成すものであり、それを外箱1内の底板部1a上に、左右一対(一方のみ図示)のサスペンション7によって前上がりの傾斜状に弾性支持している。サスペンション7の詳細については、後に述べる。
水槽6の背部には、モータ8を取付けている。このモータ8は、この場合、例えば直流のブラシレスモータから成るもので、アウターロータ形であり、ロータ8aの中心部に取付けた回転軸(図示省略)を、軸受ハウジング9を介して水槽6の内部に挿通している。
【0012】
水槽6の内部には、ドラム10を配設している。このドラム10も軸方向が前後の横軸円筒状を成すもので、それを後部の中心部で上記モータ8の回転軸の先端部に取付けることにより、水槽6と同心の前上がりの傾斜状に支持している。又、その結果、ドラム10はモータ8により回転されるようになっており、従って、ドラム10は回転槽であり、モータ8はドラム10を回転させる回転槽駆動装置として機能するようになっている。
【0013】
ドラム10の周側部(胴部)には、小孔11を全域にわたって多数形成している。又、ドラム10及び水槽6は、ともに前面部に開口部12,13を有しており、そのうちの水槽6の開口部13と前記洗濯物出入口2との間を環状のベローズ14で連ねている。この結果、洗濯物出入口2は、ベローズ14、水槽6の開口部13、及びドラム10の開口部12を介して、ドラム10の内部に連なっている。
【0014】
水槽6の最低部である底部の後部には、排水弁15を介して、排水ホース16を接続している。又、水槽6の背部から上方そして前方には、乾燥ユニット17を配設している。この乾燥ユニット17は、除湿器18と、送風機19、及び加熱器20を有しており、ドラム10内の空気を吸引して除湿し、次いで加熱して、ドラム10内に戻す循環を行わしめることにより、洗濯物を乾燥させるようになっている。
【0015】
ここで、サスペンション7の詳細について述べる。サスペンション7はダンパ21を有しており、このダンパ21は、図1に示すように、主部材として、磁性材から成るシリンダ22と、同じく磁性材から成るロッド23とを具えている。このうち、シリンダ22は円筒状を成していて、下端部に取付部24を有し、この取付部24を、図2に示すように、前記外箱1の底板部1aに、主として取付板25、クッション26,27、及びナット28で取付けている。
これに対して、ロッド23は円棒状を成していて、上端部を、前記水槽6の左右両側における下部の前後の中間部に、主として取付板29、クッション30,31、及びナット32で取付けている。
【0016】
シリンダ22の下部の一箇所には、図3及び図4にも示すように、小円形の突部33を径方向の外方から内方への押込みハーフカットにより形成しており、シリンダ22の上下の中間部には、環状の凸部34を径方向の外方から内方へのローリングかしめによって形成し、その直上の一箇所に、小円形の突部35を上記突部33と同様のハーフカットにより形成している。更に、シリンダ22の上部の一箇所には、該シリンダ22の開放端部から軸方向の下方にU字状の欠除部36を形成しており、従って、この欠除部36はシリンダ22の開放端部でシリンダ22の軸方向の上方に開放している。
【0017】
これに対して、ロッド23の下端部には、図1及び図5に示すように、ストップリング73を取付け、その直上に下ヨーク37を嵌挿している。この下ヨーク37は、シリンダ22の軸方向に分けた二部品で構成したものであり、この場合、その二部品とも磁性材から成るヨークであって、上側が単位ヨーク37a、下側が単位ヨーク37bとなっている。
【0018】
これらの単位ヨーク37a,37bのうち、上側の単位ヨーク37aには、図1に示すように、係合部である凸起38を形成し、下側の単位ヨーク37bに被係合部である凹部39を形成して、これらを嵌合させて係合させることにより、上側の単位ヨーク37aに下側の単位ヨーク37bを回り止めしている。又、下側の単位ヨーク37bには、前記シリンダ22の突部35と対応してそれに係合する欠除部40を形成している。
更に、下側の単位ヨーク37bには、中心側に下軸受41を収納し、下側の単位ヨーク37bから上側の単位ヨーク37aには、中心側に下オイルシール42を収納している。又、上側の単位ヨーク37aの上部外周部には、環状の溝43を形成している。
【0019】
ロッド23の下ヨーク37直上部分には、Oリング44を介して、下コイル45を巻装した下ボビン46を嵌挿しており、更に、ロッド23の下ボビン46直上部分には、Oリング46aを介して、中間ヨーク47を嵌挿している。中間ヨーク47は磁性材から成っており、この中間ヨーク47の下部と上部のそれぞれ外周部には、環状の溝48,49を形成している。
【0020】
ロッド23の中間ヨーク47直上部分には、Oリング50を介して、上コイル51を巻装した上ボビン52を嵌挿しており、ロッド23の上ボビン52直上部分には、Oリング53を介して上ヨーク54を嵌挿している。従って、この場合、上コイル51及上ボビン52と、下コイル45及び下ボビン46は、その二組が中間ヨーク47を間にしてその上下に存在している。
【0021】
上ヨーク54は、前記下ヨーク37と同様に、シリンダ22の軸方向に分けた二部品で構成したものであり、この場合、その二部品とも磁性材から成るヨークであって、上側が単位ヨーク54a、下側が単位ヨーク54bとなっている。
これらの単位ヨーク54a,54bのうち、下側の単位ヨーク54bには、外周部の下側一箇所に凹部55を形成しており、この凹部55にブッシュ56を収納している。ブッシュ56は、前記下コイル45と上コイル51とに連なった2本のリード線57,58(図3及び図5参照)を覆って保護するもので、例えばプラスチック製であり、それらリード線57,58を通して導出させた孔59,60を有している。
【0022】
又、ブッシュ56は、図1図3、及び図6に示すように、前記シリンダ22の欠除部36に嵌着されるようになっていて、このブッシュ56の、シリンダ22内に位置する部分56aの幅W図6参照)を、シリンダ22の欠除部36の幅Wより充分に大きく形成し、すなわち、ブッシュ56の、シリンダ22内に位置する部分56aをシリンダ22の欠除部36より幅広に形成している。更に、この場合、ブッシュ56の、欠除部36に嵌着される部分56bの幅Wを、欠除部36の幅Wよりやゝ大きく形成することで、ブッシュ56が欠除部36に圧入して嵌着されるようにしている。
【0023】
なお、図7に示すように、リード線57は下コイル45の巻き始端部に連なり、リード線58が上コイル51の巻き終端部に連なっているが、下コイル45の巻き終端部と上コイル51の巻き始端部との間は渡り線61で連ねており、すなわち、下コイル45と上コイル51は直列に接続している。
【0024】
上ヨーク54の下側の単位ヨーク54bの下部外周部には環状の溝62を形成しており、この溝62から、上ヨーク54(下側の単位ヨーク54b)と上ボビン52との間、上ボビン52及び上コイル51の外周、上ボビン52と中間ヨーク47との間、中間ヨーク47の溝49,48を含む外周、中間ヨーク47と下ボビン46との間、下ボビン46及び下コイル45の外周、下ボビン46と下ヨーク37(上側の単位ヨーク37a)との間、下ヨーク37(上側の単位ヨーク37a)の溝43にかけては、モールド樹脂63を施して固化させることにより、それら上ヨーク54(下側の単位ヨーク54b)、上ボビン52及び上コイル51、中間ヨーク47、下ボビン46及び下コイル45、下ヨーク37(上側の単位ヨーク37a)を樹脂モールドにより一体化し、上ヨーク54の上下側の単位ヨーク54a及び下ヨーク37の下側の単位ヨーク37bを含んで磁場ユニット64を構成している。
【0025】
又、この場合、上ヨーク54、上ボビン52、中間ヨーク47、下ボビン46、及び下ヨーク37と、ロッド23との間には、図1に示すように、微小な隙間65が存在しており、従って、ロッド23は上ヨーク54及び下ヨーク37をそれらとの間に微小な隙間65を存し貫通していて、その隙間65には磁気粘性流体(MR流体)66を充填している。
磁気粘性流体66は、既述のように、例えば、オイルの中に鉄、カルボニル鉄などの強磁性粒子を分散させたもので、磁力が印加されると強磁性粒子が鎖状のクラスタを形成することで粘度が上昇するものである。
【0026】
以上のように構成して後、ロッド23と共に磁場ユニット64を、前記シリンダ22の内部に、上方より下ヨーク37の下側の単位ヨーク37bがシリンダ22の凸部34に衝止されるまで挿入することにより、図1に示すように、上下両コイル51,45、上下両ヨーク54,37及び中間ヨーク47を含む磁場ユニット64とロッド23の下部とがシリンダ22の内部に位置して固定されようにしている。
【0027】
又、このとき、下ヨーク37においては、前記凸起38と凹部39との嵌合により上側の単位ヨーク37aに回り止めした下側の単位ヨーク37bの欠除部40をシリンダ22の前記突部35に係合させることにより、磁場ユニット64を回り止めし、磁場ユニット64のブッシュ56部分(リード線57,58部分)の位置をシリンダ22の前記欠除部36の位置に合致させて、その欠除部36にブッシュ56(リード線57,58)をシリンダ22の軸方向に挿入(圧入)して嵌着し固定している。従って、シリンダ22の前記突部35は、磁場ユニット64をそのように回り止めする回り止め部たるものであり、欠除部40は回り止め対応部たるものである。
【0028】
なお、上ヨーク54の下側の単位ヨーク54bの中心側には第1の上オイルシール67をあらかじめ収納しており、上側の単位ヨーク54aの中心側には第2の上オイルシール68と上軸受69をあらかじめ収納している。これらのうち、上オイルシール67,68は前記下オイルシール42とで前記磁気粘性流体66の漏れを抑止するためのものであり、上軸受69は前記下軸受41とでロッド23を支承するためのものである。
【0029】
そして、シリンダ22の上端部にはキャップ70を被嵌して装着し、その外周部をかしめることによって、磁場ユニット64を抜け止めし、且つ前記シリンダ22の欠除部36に挿入したブッシュ56(リード線57,58)の抑え(抜け止め)をするようにしている。なお、シリンダ22の前記突部33はリード線57,58の途中部を係留するホルダを取付けるためのものである。
【0030】
かくして、ダンパ21を構成しており、このダンパ21のシリンダ22の外部上方に位置したロッド23の上部には、ばね座71を設け、このばね座71と上記キャップ70との間に、ロッド23を囲繞する圧縮コイルばねから成るスプリング72を装着し、かくして、前記サスペンション7を構成し、このサスペンション7の、前記外箱1の底板部1aに対する取付け並びに前記水槽6に対する取付けにより、外箱1の底板部1a上に水槽6を弾性支持するようにしている。
【0031】
次に、上記構成の洗濯機の作用効果を述べる。
上記構成の洗濯機においては、洗濯時や脱水時もしくは乾燥時の、ドラム10を回転させる折り、該ドラム10の回転に伴い、水槽6が上下方向を主体に振動する。この水槽6の上下振動に応動して、サスペンション7では、水槽6に取付けたダンパ21のロッド23が、スプリング72を伸縮させつつ、キャップ70、上軸受69、上オイルシール67,68、上ヨーク54、上ボビン52、中間ヨーク47、下ボビン46、下ヨーク37、下オイルシール42、及び下軸受41を通って、シリンダ22内を上下方向(軸方向)に往復動する。
【0032】
このようにロッド23が上記各部品(磁場ユニット64)を通って上下方向に往復動するとき、ロッド23と上下両ヨーク54,37及び中間ヨーク47との間の隙間65に充填した磁気粘性流体66は、その粘性による摩擦抵抗でサスペンション7に減衰力を与え、水槽6の振幅を減衰させる。
しかして、このとき、中でも水槽6が共振するとき、ダンパ21の上下両コイル51,45にリード線57,58を介して通電(直流)をする。すると、その両コイル51,45による磁界が発生して、磁気粘性流体66に磁力が印加され、磁気粘性流体66の粘度が高まる。
【0033】
詳細には、両コイル51,45に通電したことで、ロッド23−磁気粘性流体66−上ヨーク54−シリンダ22−中間ヨーク47−磁気粘性流体66−ロッド23の磁気回路が発生すると共に、ロッド23−磁気粘性流体66−中間ヨーク47−シリンダ22−下ヨーク37−磁気粘性流体66−ロッド23の磁気回路が発生し、それぞれ磁束が通過する箇所の磁気粘性流体66の粘度が高まる。特に磁束密度の高いロッド23と上ヨーク54との間、中間ヨーク47とロッド23との間、及び下ヨーク37とロッド23との間の、各磁気粘性流体66の粘度が高まり、摩擦抵抗が増加する。
【0034】
かくして、ロッド23が前記各部品、特には上下両コイル51,45と、上ヨーク54、中間ヨーク47、及び下ヨーク37を通って上下方向に振動するとき、中でも水槽6が共振するときの、摩擦抵抗が増加することにより、減衰力が大きくなる。これにより、水槽6に振動が発生しにくくできる。
【0035】
なお、水槽6の共振が現れる回転速度域以後の高速回転域には、両コイル51,45の通電をせず、あるいはその通電を少なくして、ダンパ21の減衰力を小さくし、それにより、水槽6の振動が外箱1に伝わるのを避け、更にその振動が洗濯機を設置した家屋の床面に伝わるのを避けることができる。
【0036】
このように上記構成の洗濯機では、回転槽であるドラム10を収容する水槽6の振動を減衰するダンパ21が、シリンダ22の内部に収容した上下両コイル51,45が発生する磁界により、ロッド23と上下両ヨーク54,37及び中間ヨーク47との間の磁気粘性流体66に磁力を印加して該磁気粘性流体66の粘度を高めることにより、ロッド23の往復動に対する摩擦抵抗を増加させて減衰力を大きくし、水槽6に振動が発生しにくくできるものであり、その中で、両コイル51,45に給電するためのリード線57,58の挿通構造としては、シリンダ22にこれの軸方向に欠除部36を形成し、この欠除部36に、リード線57,58を、シリンダ22の軸方向に挿入して固定している。
【0037】
このようにしたことで、従来の、リード線をシリンダの径方向に開通した孔にシリンダの径方向に通し、又、ブッシュを上記シリンダの孔に同じくシリンダの径方向に圧入して装着していたものより、リード線57,58の挿通作業がしやすく、製造性を向上できる。又、ブッシュ56の浮きや外れといった不良も発生しにくくでき、製品の信頼性を向上できる。
【0038】
加えて、上記構成の洗濯機では、両コイル51,45と上下両ヨーク54,37及び中間ヨーク47とを樹脂モールド(モールド樹脂63)により一体化して磁場ユニット64を構成し、この磁場ユニット64を回り止めする回り止め部たる突部35をシリンダ22が有している。これにより、磁場ユニット64のリード線57,58部分の位置をシリンダ22の上記欠除部36の位置に合致させて、その欠除部36に対するリード線57,58の挿入を、シリンダ22内への磁場ユニット64の挿入と合わせて正確且つ容易にできて、製造性を一層向上できる。併せて、この場合、組立て後には、磁場ユニット64を回り止めし続け得ることにより、リード線57,58にねじれのストレスがかかることを抑止でき、リード線57,58の損傷や断線のおそれを生じないようにもできる。
【0039】
又、シリンダ22の軸方向に二部品で構成されたヨークとして下ヨーク37が存し、そのうちの一方の部品である下側の単位ヨーク37bが、シリンダ22の回り止め部である上記突部35と欠除部40により係合して磁場ユニット64の回り止めをし、この下側の単位ヨーク37bと他方の部品である上側の単位ヨーク37aとが、凸起38と凹部39との嵌合による回り止め関係を有するものとしている。これにより、下ヨーク37がシリンダ22の軸方向に二部品で構成されたものであっても、磁場ユニット64の回り止め(シリンダ22の欠除部36に対する磁場ユニット64のリード線57,58部分の位置合わせ)をする組立てが支障なくでき、製造性の一層の向上が確実にできる。
【0040】
更に、リード線57,58を覆って保護するブッシュ56がシリンダ22の欠除部36に嵌着され、このブッシュ56の、シリンダ22内に位置する部分56aをシリンダ22の欠除部36より幅広に形成している。これにより、シリンダ22の欠除部36に挿入したリード線57,58の保護がブッシュ56によりできるばかりでなく、シリンダ22の欠除部36に嵌着したブッシュ56の外れを一層確実に防止でき、製品の信頼性を更に向上できる。
【0041】
そして、シリンダ22の欠除部36に挿入したリード線57,58の抑え用に、シリンダ22にキャップ70を装着している。これにより、リード線57,58の抜け止めが確実にでき、リード線57,58の損傷、断線のおそれを一層生じないようにできる。
【0042】
以上に対して、図8は第2の実施形態を示すもので、第1の実施形態と同一又は同様の部分には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ述べる。
このものの場合、コイル81及びボビン82は一組であり、その直上に上ヨーク83を配置し、直下に下ヨーク84を配置している。この関係上、シリンダ85は第1の実施形態のシリンダ22よりも軸方向に短くなっている。
【0043】
又、上ヨーク83は単一の部品であり、一方、下ヨーク84は、軸方向に分けた二部品で構成しており、そのうち、上側が磁性材から成るヨーク本体84a、下側がワッシャ84bとなっている。
更に、そのうちのヨーク本体84aには、第1の実施形態における下ヨーク37の下側の単位ヨーク37bの欠除部40に相当する欠除部86を形成し、ワッシャ84bに例えば直線状のカット部87を形成している。加えて、ヨーク本体84aには係合部である凸起88を形成し、ワッシャ84bに被係合部である孔89を形成して、これらを嵌合させて係合させることにより、ヨーク本体84aにワッシャ84bを回り止めしている。
【0044】
そして、上ヨーク83の下部外周部の溝62から、上ヨーク83とボビン82との間、ボビン82及びコイル81の外周、ボビン82と下ヨーク84との間、下ヨーク84の上部外周部の溝43にかけて、モールド樹脂63を施して固化させることにより、それら上ヨーク83、ボビン82及びコイル81、下ヨーク84を樹脂モールドにより一体化し、磁場ユニット90を構成している。
【0045】
以上の構成で、磁場ユニット90をロッド23と共にシリンダ85の内部に挿入する折りには、上記凸起88と孔89との嵌合によりヨーク本体84aに位置決めしたワッシャ84bのカット部87をシリンダ22の突部35に合致させてそれとの衝突を避け、ヨーク本体84aの欠除部86をシリンダ22の突部35に嵌合しており、ワッシャ84bはシリンダ22の凸部34に当接して磁場ユニット90を落ち止めしている。
【0046】
従って、この場合も、シリンダ85の軸方向に二部品で構成されたヨークとして下ヨーク84が存し、そのうちの一方の部品であるヨーク本体84aが、シリンダ85の回り止め部である突部35と欠除部86により係合して磁場ユニット90の回り止めをし、このヨーク本体84aと他方の部品であるワッシャ84bとが、凸起88と孔89との嵌合による回り止め関係を有するものとしている。これにより、下ヨーク84がシリンダ85の軸方向に二部品で構成されたものであっても、磁場ユニット90の回り止め(シリンダ85の欠除部36に対する磁場ユニット90のリード線57,58部分の位置合わせ)をする組立てが支障なくでき、製造性の一層の向上が確実にできる。
【0047】
以上説明した洗濯機は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、特に洗濯機の全体としては、ドラム式に限られず、水槽と回転槽を縦軸状に有する縦軸形洗濯機にも同様に適用して実施できるし、乾燥機能を有していなくでも良いなど、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【0048】
そのほか、本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
図面中、6は水槽、10はドラム(回転槽)、21はダンパ、22はシリンダ、23はロッド、35は突部(回り止め部)、36は欠除部、37は下ヨーク、37aは上側の単位ヨーク(他方の部品)、37bは下側の単位ヨーク(一方の部品)、38は凸起、39は凹部、40は欠除部、45は下コイル、47は中間ヨーク、51は上コイル、54は上ヨーク、56はブッシュ、57,58はリード線、56aはブッシュのシリンダ内に位置する部分、W,Wは幅、63はモールド樹脂、64は磁場ユニット、65は隙間、66は磁気粘性流体、70はキャップ、81はコイル、83は上ヨーク、84は下ヨーク、84aはヨーク本体(一方の部品)、84bはワッシャ(他方の部品)、85はシリンダ、86は欠除部、88は凸起、89は孔、90は磁場ユニットを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8