(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
空調機器から供給される空調空気を吹き出し可能な吹出口装置であって、前記吹出口装置はアンビエント吹出部及びパーソナル吹出部を備え、前記パーソナル吹出部から吹き出す空調空気の風向、風量を変更する気流調整手段と、前記パーソナル吹出部からの風量を前記気流調整手段で増減させると前記アンビエント吹出部からの風量が相対的に減増する連係手段と、を設け、前記気流調整手段が前記パーソナル吹出部からの吹出風量を所定範囲内で増減可能であって、前記気流調整手段で前記吹出風量を最大限に設定したときも前記アンビエント吹出部からの吹き出しが維持される気流維持機能を設けたことを特徴とする吹出口装置。
前記パーソナル吹出部として、ノズル型の吹出部材と、前記吹出部材を傾動可能に保持する保持部材と、前記吹出部材の上流側に配置され前記吹出部材の回動操作に伴って開閉する流路開閉部材と、を設けた請求項1または2記載の吹出口装置。
前記吹出口装置が外コーンと内コーンとを有するアネモ型吹出口であって、前記外コーンと前記内コーンとの間の流路をアンビエント吹出部とし、前記内コーンの中央領域に前記パーソナル吹出部を設けた請求項1〜5のいずれかに記載の吹出口装置。
【背景技術】
【0002】
天井設置型の吹出口装置については、従来、様々な構造、機能を有するものが提案されているが、本願発明に関連する技術として、例えば、特許文献1〜4記載のものがある。
【0003】
特許文献1記載の「パーソナル吹き出し口システム」は、携行型無線操作器を操作し、吹き出し口の送風ファンの回転数を制御する一方、風向制御用モータを作動させて風向調整ベーンの傾き角度を制御することにより、個人の好みに適合した空調気流環境を個別的に形成するものである。
【0004】
特許文献2記載の「吹出口装置」は、調和空気の通路となる貫通孔が設けられた略球状体のノズル部と、その外周面に接した状態で当該ノズル部を回動自在及び離脱不可能に支持する支持枠と、ノズル部の貫通孔の開口を開閉するため貫通孔の貫通方向と移動可能に配設されたシャッター部と、を備えており、ノズル部を回動させることにより開口から吹き出す気流の風向を調整し、シャッター部を移動させることにより吹出状態を選択調整するものである。
【0005】
特許文献3記載の「空調装置」は、アネモスタットの内側案内板の上端部に介装されたファン装置と、空調空気を導くため内側案内板の下端部に球面継手状に支持された球面体と、球面体内に形成された吹出口と、を備え、球面体を手動操作して吹出口の方向を変えることにより、吹出口から吹き出される空調空気の風向を調整するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の「パーソナル吹き出し口システム」は、アンビエント空調機能及びパーソナル空調機能を兼備しているが、パーソナル空調用の空調空気の風向、風量を変更すると、空調空気の総風量が変動する可能性があるため、安定した空調状態を得ることが困難である。また、空調機から「パーソナル吹き出し口システム」に空調空気を供給するダクトは、アンビエント吹き出し口用とパーソナル吹き出し口用との複数系統に分ける必要があるので、施工に手間を要するだけでなく、ダクト関連資材の増大を招く。
【0008】
特許文献2記載の「吹出口装置」及び特許文献4記載の「空調装置」は、調和空気の風向及び風量を調整する機能を有しているのでパーソナル空調用として好適であるが、これらの装置はアンビエント空調機能を有していないので、アンビエント空調及びパーソナル空調を並行して実行するためには、他のアンビエント空調システムを構築するか、他のアンビエント空調システムと組み合わせる必要がある。
【0009】
また、特許文献3記載の「空調装置」は、風量調整手段としてファン装置が使用されているため、ファン駆動用のモータやそれを駆動及び制御するための電源が必要である。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、アンビエント空調機能とパーソナル空調機能とを有し、パーソナル空調用の空調空気の風量を変更しても、空調空気の総風量が変動し難く、居室内の空調負荷に応じた風量を安定供給することができ、居室内を快適な空調状態に保つことができる吹出口装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の吹出口装置は、空調機器から供給される空調空気を吹き出し可能な吹出口装置であって、前記吹出口装置はアンビエント吹出部及びパーソナル吹出部を備え、前記パーソナル吹出部から吹き出す空調空気の風向、風量を変更する気流調整手段と、前記パーソナル吹出部からの風量を前記気流調整手段で増減させると前記アンビエント吹出部からの風量が相対的に減増する連係手段と、を設け
、前記気流調整手段が前記パーソナル吹出部からの吹出風量を所定範囲内で増減可能であって、前記気流調整手段で前記吹出風量を最大限に設定したときも前記アンビエント吹出部からの吹き出しが維持される気流維持機能を設けたことを特徴とする。
【0012】
このような構成とすれば、一つの吹出口装置がアンビエント空調機能及びパーソナル空調機能を兼備したものとなる。また、アンビエント空調用として供給される空調空気をパーソナル空調用に利用しているので、気流調整手段を用いて、パーソナル吹出部から吹き出す空調空気の風量を増減させると、連係手段により、前記アンビエント吹出部からの風量が相対的に減増し、当該吹出口装置から吹き出す空調空気の総風量が殆ど変化せず、居室内の空調負荷に応じた風量を安定供給することができ、居室内を快適な空調状態に保つことができる。また、空調機器から当該吹出口装置に空調空気を供給するダクトは、アンビエント空調用及びパーソナル空調用の複数系統に分ける必要がないので、従来のアンビエント空調用吹出口と同様の施工方法で設置することができ、施工も容易である。
【0013】
また、本発明の吹出口装置では、前記気流調整手段が前記パーソナル吹出部からの吹出風量を所定範囲内で増減可能であって、前記気流調整手段で前記吹出風量を最大限に設定したときも前記アンビエント吹出部からの吹き出しが維持される気流維持機能を設け
ている。
【0014】
このような構成とすれば、居室内に居る人間が、前記気流調整手段を操作して、パーソナル吹出部からの吹出風量を最大限に設定することがあっても、アンビエント吹出部からの空調空気の吹き出しが停止しないので、居室全体の空調バランスが崩れるのを防止することができる。また、空調機器から供給された空調空気が全てパーソナル吹出部からの吹き出しに集中することによって発生し易くなる騒音の増大や圧力損失の上昇などを回避することができる。
【0015】
また、前記気流調整手段が、居室側から前記パーソナル吹出部を介して操作可能な構成とすることが望ましい。
【0016】
このような構成とすれば、居室内に居る人間の好みや要請に応じて様々なパターンに風向、風量が設定されるパーソナル空調において、調整作業が容易となる。
【0017】
さらに、前記パーソナル吹出部として、ノズル型の吹出部材と、前記吹出部材を傾動可能に保持する保持部材と、前記吹出部材の上流側に配置され前記吹出部材の回動操作に伴って開閉する流路開閉部材と、を設けることができる。
【0018】
このような構成とすれば、吹出部材を傾動させたり、回動させたりするという簡単な操作により、パーソナル吹出部から吹き出す空調空気の風向及び風量を的確に調整、設定することができるため、操作性が良好となる。
【0019】
一方、居室側から前記吹出部材の傾動操作及び回動操作を行うための操作器具が、当該吹出部材に着脱可能な構成とすれば、居室内に居る人間が操作器具を使用して、吹出部材を傾動させたり、回動させたりして、空調空気の風向及び風量を調整可能となるので、調整作業がさらに容易となる。
【0020】
また、前記パーソナル吹出部を複数個設ければ、1台の吹出口装置から異なる複数方向に向かって、同一または異なる風量にて、空調空気を吹き出すようにパーソナル吹出部の風向を設定したり、パーソナル吹出部からの気流を個別に停止したり、することが可能となる。また、複数のパーソナル吹出部の風向が互いに同方向となるように設定すれば、気流の合成効果が生じ、パーソナル吹出部から居室に向かって吹き出す空調空気の到達距離を増大させることもできるので、特に強い気流感を必要とする場合に有効である。
【0021】
さらに、前記吹出口装置が外コーンと内コーンとを有するアネモ型吹出口であって、前記外コーンと前記内コーンとの間の流路をアンビエント吹出部とし、前記内コーンの中央領域に前記パーソナル吹出部を設けた構成とすることもできる。
【0022】
このような構成とすれば、アンビエント吹出部から吹き出す空調空気が、居室内の天井付近の室内空気を誘引しながら居室内の多方向に広く拡散するというアネモ型吹出口の機能を維持しつつ、パーソナル吹出部から吹き出す空調空気流によってパーソナル空調を行うようになるので、アンビエント空調時の空調効率を維持することができる。また、アンビエント吹出口として既設のアネモ型吹出口のコーンを交換するだけで、前述したパーソナル空調機能を持たせることができるため、改修工事や設置後の交換にも好適となる。
【0023】
また、前記パーソナル吹出部に気流拡散手段を設ければ、パーソナル吹出部から吹き出す空調空気に適度の拡散性を持たせることが可能となるので、広範囲で柔らかな気流を実現することができ、冷房時に発生し易いドラフトを緩和したり、抑制したりすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、アンビエント空調及びパーソナル空調を並行して実行することができ、パーソナル空調用の空調空気の風量を変更しても、空調空気の総風量が変動し難く、居室内の空調負荷に応じた風量を安定供給することができ、居室内を快適な空調状態に保つことができる吹出口装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1〜
図10に基づいて、本発明の第1実施形態である吹出口装置100について説明する。
図1〜
図6に示すように、吹出口装置100は、空調機器(図示せず)から空調ダクトを介して供給される空調空気を導入するため、前記空調ダクトに接続される短円筒形の流入経路10を有する箱体状のチャンバ11と、チャンバ11内の流入口12より低い位置に配置された切替ユニット20と、チャンバ11の下面開口部14に取り付けられた外コーン15と、を備えている。
【0027】
切替ユニット20は、チャンバ11内を水平に区画するように取り付けられた上面パネル21と、上面パネル21に開設された複数の通気口22,23から下方へ連設された円筒状の通気部材24,25と、通気部材24,25の下端部に取り付けられた下面パネル26と、下面パネル26の外周に沿って設けられた内コーン27と、を備えている。通気部材24,25内の軸心24c,25c方向の中央付近にはそれぞれ軸心24c,25cと直交する隔壁28,29が設けられ、軸心24c,24cと同軸をなす軸体30,31がそれぞれ隔壁28,29の中心に回転可能に軸支されている。
【0028】
隔壁28,29のそれぞれ軸体30,31を挟んだ対称位置には軸体30,31を中心に広がる扇形状の複数の開口部28a,29aが開設され、これらの開口部28a,29aをそれぞれ開閉するシャッタ32,33がそれぞれ軸体30,31に固定されている。シャッタ32,33の上面は、それぞれ軸体30,31から通気部材24,25の内周面に向かって拡径する半円錐形状をなしている。
【0029】
通気部材24,25の隔壁28,29より上方領域には、軸体30,31を挟んで対称をなす複数の側面開口部24a,25aが開設されている。通気部材24(25)の側面開口部24a(25a)と、隔壁28(29)の開口部28a(29a)とは、軸体30(31)を中心に位相が90度異なるように配置されているので、隔壁28(29)の開口部28a(29a)が無い部分の外側に通気部材24(25)の側面開口部24a(25a)が位置している。
【0030】
軸体30,31はそれぞれ独立して回転可能であり、軸体30(31)を正転・逆転させるとシャッタ32(33)が一体的に回転し、通気部材24(25)の側面開口部24a(25a)の「開・閉」及び隔壁28(29)の開口部28a(29a)の「閉・開」が連係して行われる。即ち、軸体30(31)を正転させてシャッタ32(33)を通気部材24(25)の側面開口部24a(25a)の全開状態にセットすると隔壁28(29)の開口部28a(29a)が全閉状態となり、この状態から軸体30(31)を逆転させていくと、通気部材24(25)の側面開口部24a(25a)が全開状態から全閉状態まで連続的に狭まっていき、これに伴って隔壁28(29)の開口部28a(29a)が全閉状態から全開状態まで連続的に拡がっていく。
【0031】
隔壁28,29から下方に突出した軸体30,31の下端部には、それぞれ自在継手34,35及び支軸36,37を介してノズル型の吹出部材38,39が傾動可能に取り付けられている。吹出部材38,39は無底椀形状の本体部38a,39aと、本体部38a,39aから下方に連設された短円筒形状の口縁部38b,39bと、で形成され、本体部38a,39aの内周面にそれぞれ支軸36,37の両端部が回動可能に固定されている。
【0032】
通気部材24,25の下端開口部にはそれぞれ短円筒状のシール材40,41が付設され、吹出部材38,39の本体部38a,39aは、それぞれの外周面がシール材40,41の下縁部内に接触した状態を保ちながら、自在継手34,35を中心に傾動可能であるとともに、それぞれ軸体30,31を中心に回転可能である。
【0033】
ここで、
図7,
図8に基づいて、吹出口装置100の操作器具50と、操作器具50を用いたシャッタ32,33の開閉操作及び吹出部材38,39の傾動操作について説明する。なお、シャッタ32,33及び吹出部材38,39の構造、機能はそれぞれ同じであるため、シャッタ33の開閉操作及び吹出部材39の傾動操作について説明し、シャッタ32及び吹出部材38に関する説明は省略する。
【0034】
図8に示すように、操作器具50は、吹出口装置100の吹出部材38,39を居室側から傾動操作したり、回動操作したりするための道具である。
図7に示すように、操作器具50は、丸棒状の基材51の基端側にグリップ52が設けられ、先端側に係合部材53が設けられている。係合部材53は、
図8に示すように、吹出部材39の口縁部39bから本体部39a内に挿入・離脱可能な略円錐台形状の基体部53aと、基体部53aの先端に設けられた擂り鉢状の凹部53bと、凹部53bの周縁を直径方向に切り欠いた状態に開設された一対の係合溝53cと、を備えている。
【0035】
図8に示すように、居室内に居る操作者(図示せず)が操作器具50のグリップ52を手で握持して、天井部分に位置する吹出部材39の口縁部39bから本体部39aに向かって係合部材53を挿入し、自在継手35の下端部及び支軸37に対し、それぞれ凹部53b及び係合溝53cを係合させる。この状態でグリップ52を矢線S方向に振り子状に動かすと、それに伴って吹出部材39が自在継手35を中心に傾動するので、その傾動範囲内において、吹出部材39からの空調空気の吹出方向を任意に設定することができる。
【0036】
また、
図8に示すように、係合部材53の凹部53b及び係合溝53cを自在継手35の下端部及び支軸37に係合させた状態で、グリップ52をその軸心周り(矢線R方向)に正転・逆転させると、その回転が係合溝53c及び支軸37を介して軸体31に伝わり、軸体31を中心にシャッタ33が正転・逆転する。これにより、通気部材25の側面開口部25aの「開・閉」及び隔壁29の開口部29aの「閉・開」が連係して行われるので、通気部材25の側面開口部25a及び隔壁29の開口部29aの開度をそれぞれ0〜100%の範囲内で任意に設定することができる。吹出部材39及びシャッタ33の開度設定が終わったら、グリップ52をその軸心方向に引っ張ることにより、係合部材53を吹出部材39から離脱させることができる。
【0037】
図8に示すように、操作器具50を使用して吹出口装置100を操作すれば、高所での操作を回避することができるので安全であり、調整操作も容易である。また、吹出部材39内に挿入している操作器具50の基材51の長手方向が吹出部材39からの吹出方向に相当するので、居室内に居る執務者は自席に座ったままの状態で、操作器具50のグリップ52を自分の方に向けることにより、確実に自分の方に向かう空調空気流の設定が可能である。なお、操作器具50に基材51にその長手方向に伸縮する機能を設ければ、使用時に伸ばし、不使用時は縮めておくことが可能となるので、収納場所を取らない。
【0038】
ここで、
図4,
図5及び
図6に基づいて、吹出口装置100の機能について説明する。なお、
図4,
図5に示す吹出口装置100の切替ユニット20においては、通気部材24,25の側面開口部24a,25aが全開状態(開度100%)となり、隔壁28,29の開口部28a,29aが全閉状態(開度0%)となるようにシャッタ32,33がセットされている。
【0039】
図4,
図5及び
図6に示すように、空調機器(図示せず)から流入経路10及び流入口12を経由してチャンバ11内へ流入した空調空気は、切替ユニット20の上面パネル21に開設された複数の通気口22,23からそれぞれ通気部材24,25内へ流入する。通気部材24,25内へ流入した空調空気は通気部材24,25の側面開口部24a,25a及び隔壁28,29の開口部28a,29aの開度に応じて分流されるが、
図4,
図5に示す状態では、隔壁28,29の開口部28a,29aがシャッタ32,33で全閉されているので、通気部材24,25内に流入した空調空気の全量が通気部材24,25の側面開口部24a,25aを通過して、切替ユニット20とチャンバ11との隙間に流出し、外コーン15と内コーン27との隙間42を通過して居室内へ吹き出される。これにより、
図9に示すように、吹出口装置100の隙間42から吹き出す空調空気はその周辺の領域WAに拡散し、アンビエント空調100%の状態となる。
【0040】
一方、
図4,
図5に示す吹出口装置100において、通気部材24,25の側面開口部24a,25a及び隔壁28,29の開口部28a,29aがそれぞれ開いた状態(開度が0%を超え100%未満の状態)にセットされている場合は、空調空気は、それぞれの開度に応じて、通気部材24,25の側面開口部24a,25a及び隔壁28,29の開口部28a,29aの両方へ流れ込む。この後、通気部材24,25の側面開口部24a,25aを通過した空調空気は前述した流動過程を経て居室内へ吹き出され、隔壁28,29の開口部28a,29aを通過した空調空気は吹出部材38,39に向かって流動し、その本体部38a,39a及び口縁部38b,39bの内部を通過して居室内へ吹き出される。
【0041】
これにより、
図9に示すように、吹出口装置100の隙間42から吹き出す空調空気はその周辺の領域Waに拡散し、吹出部材38,39から吹き出す空調空気はそれぞれ領域38Wp,39Wpに進行し、アンビエント空調及びパーソナル空調が並行して行われる。この場合、予めセットされている吹出部材38,39の傾斜状態に応じて、口縁部38b,39bの軸心の延長線方向に空調空気が吹き出される。
【0042】
また、
図4,
図5に示す吹出口装置100において、通気部材24,25の側面開口部24a,25aが全閉状態(開度0%)で、隔壁28,29の開口部28a,29aが全開状態(開度100%)にセットされている場合は、通気部材24,25内へ流入した空調空気の全量が隔壁28,29の開口部28a,29aへ流れ込み、これらの開口部28a,29aを通過した空調空気は吹出部材38,39の内部を通過して、それぞれの傾斜状態に応じた方向に沿って居室内へ吹き出され、パーソナル空調100%の状態となる。
【0043】
前述したように、外コーン15と、切替ユニット20の内コーン27との隙間42を通過して吹き出される空調空気は居室内に向かって拡散するので、この隙間42がアンビエント吹出部として機能し、吹出部材38,39の口縁部38b,39bから吹き出される調和空気は、それぞれの吹出部材38,39の傾斜状態に応じた方向に沿って直線的に吹き出されるので、吹出部材38,39がパーソナル吹出部として機能する。
【0044】
また、自在継手34,35中心に吹出部材38,39を傾動させてその傾斜状態を変更することによって吹出部材38,39(パーソナル吹出部)から吹き出す空調空気の風向を変更することができ、シャッタ32,33を軸体30,31周りに回転させて隔壁28,29の開口部28a,29aの開度を変更することによって吹出部材38,39(パーソナル吹出部)から吹き出す調和空気の風量をそれぞれ変更することができる。即ち、隔壁28,29の開口部28a,29aとシャッタ32,33、及び、自在継手34,35を中心に傾動可能な吹出部材38,39が気流調整手段として機能する。
【0045】
さらに、
図6に示すように、軸体30,31中心のシャッタ32,33の正転・逆転操作により、隔壁28,29の開口部28a,29aを「開⇔閉」させ、パーソナル吹出部(吹出部材38,39)からの風量を「増⇔減」させると、これに伴って通気部材24,25の側面開口部24a,25aが「閉⇔開」してアンビエント吹出部(隙間42)からの風量が相対的に「減⇔増」する。即ち、通気部材24,25の側面開口部24a,25a、隔壁28,29の開口部28a,29a及びこれらを連動して開閉するシャッタ32,33が連係手段として機能する。
【0046】
本実施形態の吹出口装置100においては、シャッタ32,33を回転させ、通気部材24,25の側面開口部24a,25aの開度を0〜100%の範囲で変化させると、隔壁28,29の開口部28a,29aが100%〜0%の範囲で変化するので、必要に応じて、パーソナル空調を停止してアンビエント空調のみを実行したり、アンビエント空調を停止してパーソナル空調のみを実行したりすることができる。
【0047】
なお、吹出口装置100においては、隔壁28,29の開口部28a,29aの開度を100%にセットして、吹出部材38,39からの吹出風量を最大限に設定したときにアンビエント吹出部(隙間42)からの吹き出しが維持される気流維持手段を設けることもできる。気流維持手段としては、例えば、チャンバ11内に導入された空調空気を外コーン15と内コーン27との隙間42に流入させるための通気経路(図示せず)を、切替ユニット20の上面パネル21外周とチャンバ11内面との間に設けたり、前記通気経路を上面パネル21に開設したりすることができる。また、前記通気経路は常時開状態を保つ方式あるいは必要に応じて開閉可能な方式とすることができる。
【0048】
例えば、
図11,
図12に示す吹出口装置101においては、上面パネル21xの複数箇所に、コ字状のカット部102を設け、カット部102で囲まれた羽根板部103が居室側に向かって下り勾配をなすように下方へ折り曲げることにより、チャンバ11内に導入された空調空気を外コーン15と内コーン27との隙間42に流入させるための通気経路104を形成している。なお、羽根板部103の勾配角度は使用条件に応じて設定することができる。
【0049】
このような気流維持手段を設ければ、居室内に居る人間が、前記気流調整手段を操作して、パーソナル吹出部(吹出部材38,39)からの吹出風量を最大限に設定することがあっても、アンビエント吹出部(隙間42)からの空調空気の吹き出しが停止しないので、居室全体の空調バランスが崩れるのを防止することができる。また、空調機器(図示せず)から供給された空調空気が全てパーソナル吹出部(吹出部材38,39)からの吹き出しに集中することによって発生し易くなる騒音の増大や圧力損失の上昇などを回避することができる。
【0050】
前述したように、吹出口装置100は1台でアンビエント空調機能及びパーソナル空調機能を兼備し、操作器具50を用いて、パーソナル吹出部(吹出部材38,39)から吹き出す空調空気の風量を増減させると、アンビエント吹出部(隙間42)からの風量が相対的に減増するので、当該吹出口装置100から吹き出す空調空気の総風量が殆ど変化しない。このため、居室内の空調負荷に応じた風量を安定供給することができ、居室内を快適な空調状態に保つことができる。また、空調機器(図示せず)から吹出口装置100に空調空気を供給するダクトは、アンビエント空調用及びパーソナル空調用の複数系統に分ける必要がないので、従来のアンビエント空調用吹出口と同様の施工方法で設置することができ、施工も容易であり、ダクト資材の増大を回避することができる。
【0051】
また、パーソナル吹出部として、ノズル型の吹出部材38,39と、吹出部材38,39を傾動可能に保持する保持部材(自在継手34,35)と、吹出部材38,39の上流側に配置され吹出部材38,39の回動操作に伴って開閉する流路開閉部材(開口部28a,29aを有する隔壁28,29とシャッタ32,33)と、を設けたことにより、吹出部材38,39を傾動させたり、回動させたりするという簡単な操作で、パーソナル吹出部38,39から吹き出す空調空気の風向及び風量を的確に調整、設定することができるため、操作性が良好である。なお、
図4に示すように、自在継手34,35と、隔壁28a,29aとの間には、それぞれバネ43,44が配置されているため、吹出部材38,39を回動操作する際に適度な操作抵抗力を保持することができる。
【0052】
吹出口装置100は複数のパーソナル吹出部(吹出部材38,39)を備えているため、
図9に示すように、1台の吹出口装置100から異なる複数方向W1,W2に向かって空調空気を吹き出すようにパーソナル吹出部(吹出部材38,39)の風向を設定することが可能である。また、複数のパーソナル吹出部(吹出部材38,39)からの風向が互いに同方向W3となるように設定することにより、パーソナル吹出部(吹出部材38,39)から居室に向かって吹き出す空調空気の到達距離を増大させることもできる。さらに、複数の吹出部材38,39を設けたことにより、特に夏場に外出先から居室に戻った場合など、パーソナル吹出部からの気流を強く感じたい場合に有効である。
【0053】
吹出口装置100は、外コーン15と内コーン27とを有するアネモ型吹出口であり、外コーン15と内コーン27との間の流路(隙間42)をアンビエント吹出部とし、内コーン27の中央領域にパーソナル吹出部(吹出部材38,39)を設けている。このため、アンビエント吹出部(隙間42)から吹き出す空調空気が、居室内の天井付近の室内空気を誘引しながら居室内の多方向に広く拡散するようになるので、必要時にパーソナル空調を行っても、アンビエント空調の効果を維持することができる。また、アンビエント吹出口として既設のアネモ型吹出口のコーンを交換するだけで、前述したパーソナル空調機能を持たせることができるため、改修工事や設置後の交換にも好適となる。
【0054】
次に、
図13〜
図18に基づいて、本発明の第2〜第4実施形態である吹出口装置200,300,400について説明する。なお、
図13〜
図18に示す吹出口装置200,300,400において
図1〜
図5に示す吹出口装置100と共通する部分については同じ符号を付して説明を省略する。
【0055】
図13,
図14に示す吹出口装置200においては、パーソナル吹出部として、切替ユニット20xに無底腕形状の吹出部材38x,39xを設けているため、内コーン27の下面から突出する吹出部材38x,39xの一部を小さくすることができ、外観性が良好である。また、吹出部材38x,39xの開口部38c,39cの内周面は短円筒形状をなしているため、
図4に示す吹出部材38,39の口縁部38b,39bに相当する部分が無くても、開口部38c,39cから吹き出す空調空気に直線的方向性を持たせることができる。その他の部分の構造、機能は吹出口装置100と同じである。
【0056】
図15,
図16に示す吹出口装置300においては、パーソナル吹出部(吹出部材38,39)の口縁部38b,39bにそれぞれ気流拡散部材60が着脱可能に装着されている。気流拡散部材60は、通気部材24,25の軸心24c,25c(
図3,
図4参照)を中心に同心円状に配置された複数の気流拡散板60aを備えている。その他の部分の構造、機能は吹出口装置100と同じである。
【0057】
図15,
図16に示すように、気流拡散部材60が装着されているとき、パーソナル吹出部(吹出部材38,39)から吹き出す空調空気は、吹出部材38,39で設定された方向に向かって領域W4に示すように拡散しながら流動するので、冷房時のドラフト発生を回避することができる。なお、気流拡散部材60が装着されていないときは、パーソナル吹出部(吹出部材38,39)から吹き出す空調空気は吹出部材38,39で設定された方向に向かって領域W5に示すように直進的に流動する。
【0058】
図17,
図18に示す吹出口装置400においては、切替ユニット20yを構成する通気部材24,25内の軸心24c,25c方向の中央付近にそれぞれ軸心24c,25cと直交する隔壁28,29が設けられ、軸心24c,24cと同軸をなす軸体30y,31yがそれぞれ隔壁28,29の中心に回転可能に軸支されている。通気部材24,25の下端部にはそれぞれ吹出部材38y,39yが軸心24c,25cを中心に回転可能に取り付けられ、軸体30y,31yの下端部30a,31aがそれぞれ吹出部材38y,39yより下方に露出している。
【0059】
吹出部材38y,39yは略短円筒状の本体部38d,39dと、本体部38d,39dの内側にそれぞれ軸心24c,25cと立体交差するように配置された複数の支軸70と、支軸70を中心に傾動可能に取り付けられた偏向板71と、を備えている。軸体30y,31yの下端部30a,31aをそれぞれ軸心24c,25c周りに正転・逆転させると、軸体30y,31yに固着されたシャッタ32,33が正転・逆転して、隔壁28,29の開口部28a,29aの「開⇔閉」と、通気部材24,25の開口部24a,25aが「閉⇔開」とが連動して行われる。
【0060】
また、軸心24c,25cを中心とする吹出部材38y,39yの回転操作と、支軸70を中心とする偏向板71の傾動操作と、をそれぞれ独立して行うことにより、吹出部材38y,39yからの空調空気の吹出方向をそれぞれ独立して設定することができる。その他の部分の構造、機能は吹出口装置100と同じである。