(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高圧凝縮器と低圧凝縮器、高圧蒸発器と低圧蒸発器、前記高圧凝縮器に接続された圧縮機と前記低圧凝縮器に接続された圧縮機を備え、前記高圧凝縮器で凝縮した冷媒を前記低圧凝縮器に導入する圧縮式冷凍機であって、
前記低圧凝縮器の冷媒出口に接続された出口配管と該出口配管から分岐する分岐配管を具備し、前記低圧凝縮器から前記出口配管を通して前記高圧蒸発器に供給する冷媒の一部を前記分岐配管を通して前記低圧蒸発器に供給する分岐手段を備え、前記出口配管に制御弁を設けると共に、前記分岐配管に制御弁を設けたことを特徴とする圧縮式冷凍機。
【背景技術】
【0002】
図11は従来のこの種の二重冷凍サイクルを備えた圧縮式冷凍機の概略構成例を示す図である。図示するように、本圧縮式冷凍機100は、低圧蒸発器101、高圧蒸発器102、低圧圧縮機103、高圧圧縮機104、低圧凝縮器105、及び高圧凝縮器106、低圧膨張弁107、高圧膨張弁108を備えている。
【0003】
低圧蒸発器101で蒸発された冷媒蒸気は低圧圧縮機103に送られ圧縮され、該圧縮された冷媒蒸気は低圧凝縮器105で凝縮され冷媒凝縮液となり、該冷媒凝縮液は低圧膨張弁107を介して低圧蒸発器101に送られ、低圧側冷凍サイクルが構成される。また、高圧蒸発器102で蒸発した冷媒蒸気は高圧圧縮機104に送られ圧縮され、該圧縮された冷媒蒸気は高圧凝縮器106で凝縮され冷媒凝縮液となり、該冷媒凝縮液は高圧膨張弁108を介して高圧蒸発器102に送られ、高圧側冷凍サイクルが構成される。
【0004】
低圧凝縮器105と高圧凝縮器106とは冷却水110が通る配管により、低圧蒸発器101と高圧蒸発器102とは冷水120が通る配管によりそれぞれ連絡されており、冷却水110は低圧凝縮器105から高圧凝縮器106へ、冷水120は高圧蒸発器102から低圧蒸発器101へと流れるようになっている。低圧蒸発器101及び高圧蒸発器102では、冷水120から熱を奪って冷媒を蒸発させ、冷水120を冷却させる。また、低圧凝縮器105及び高圧凝縮器106では、圧縮された冷媒が冷却水110により冷却され冷媒凝縮液となる。
【0005】
二重冷凍サイクルの圧縮式冷凍機は、一般に高圧側冷凍サイクルと低圧側冷凍サイクルの2つの冷凍サイクルを冷水及び冷却水で連絡することと、一方或いは両方の冷凍サイクルの圧縮ヘッドを小さくすることで省エネルギー化を図る冷凍機である。その接続方法などによりいくつかのパターンがあるが、基本的に、凝縮器、蒸発器、圧縮機、中間冷却器、膨張弁、過冷却器などの要素機器は、各々2台必要となる。これはコスト的に大きな負担となる。
【0006】
更に、冷凍サイクルがモータ等の機器に連通している場合には、冷媒の偏りを検出して補正することが必要となる。また、二重冷凍サイクルはそれ自体非常に高効率の冷凍サイクルであるが、更なる効率化が望まれている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されているような技術では、依然として冷凍サイクル側の機器、即ち凝縮器、蒸発器、中間冷却器、膨張弁、過冷却器等の要素機器が各々2台必要となり、コスト的に大きな負担になるという問題や、更に高効率化に応えることができなかった。なお、冷媒の偏りを是正し定格負荷から部分負荷(低負荷条件)までの幅広い範囲で高効率運転が行える圧縮式冷凍機としては、特許文献1に紹介したものがあるが、主電動機を1台として圧縮機のコストダウンを図ったことに伴う問題点を解決しようとするものであり、圧縮式冷凍機を用いた「二重冷凍サイクル」のコストダウンを図ったものではなく、冷凍効率の改善を図ったものでもない。
【0008】
そこで本特許出願の発明者は先行する他の特許出願(特許文献2等)において、既存の二重冷凍サイクルの圧縮式冷凍機に比して高効率で、且つ圧縮式冷凍機を構成する要素機器が少なくて済み安価な圧縮式冷凍機を提供することを目的とし、高圧凝縮器と低圧凝縮器、高圧蒸発器と低圧蒸発器、前記高圧凝縮器に接続された圧縮機と前記低圧凝縮器に接続された圧縮機を備え、前記高圧凝縮器で凝縮した冷媒を前記低圧凝縮器に導入する圧縮式冷凍機を提案している。同発明は、従来は2台づつ必要とされた中間冷却器、膨張弁、過冷却器などを1台とすることで、2重冷凍サイクルの冷凍機の大幅なコストダウンを実現するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許出願の発明に係る圧縮式冷凍機では、低圧蒸発器に供給される冷媒の温度が同発明以前の圧縮式冷凍機に比して大幅に低くなるので冷凍サイクルの効率が改善する反面、減圧に伴う気化(所謂フラッシュ)により発生する冷媒蒸気が減少することで、低圧蒸発器内における冷媒の流動が不活発となり、特に部分負荷時に伝熱性能が低下しやすいという問題があった。
【0011】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、既存の二重冷凍サイクルの圧縮式冷凍機に比して高効率で、且つ圧縮式冷凍機を構成する要素機器が少なくて済み安価であり、且つ低負荷時の冷凍機の効率を向上することができる圧縮式冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本願発明は、高圧凝縮器と低圧凝縮器、高圧蒸発器と低圧蒸発器、前記高圧凝縮器に接続された圧縮機と前記低圧凝縮器に接続された圧縮機を備え、前記高圧凝縮器で凝縮した冷媒を前記低圧凝縮器に導入する圧縮式冷凍機であって、
前記低圧凝縮器の冷媒出口に接続された出口配管と該出口配管から分岐する分岐配管を具備し、前記低圧凝縮器から前記出口配管を通して前記高圧蒸発器に供給する冷媒の一部を前記分岐配管を通して前記低圧蒸発器に供給する分岐手段を備え、前記出口配管に制御弁を設けると共に、前記分岐配管に制御弁を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、本願発明は、上記圧縮式冷凍機において、前記低圧蒸発器に供給する冷媒の流量を前記低圧蒸発器の冷媒液面レベル及び/又は前記高圧蒸発器の冷媒液面レベルにより
前記出口配管に設けた制御弁又は前記分岐配管に設けた制御弁のいずれか又は両方を制御して制御することを特徴とする。
【0014】
また、本願発明は、上記圧縮式冷凍機において、前記低圧蒸発器に供給する冷媒の流量を当該圧縮式冷凍機の冷凍負荷又は相当する物理量により
前記出口配管に設けた制御弁又は前記分岐配管に設けた制御弁のいずれか又は両方を制御して制御することを特徴とする。ここで、圧縮式冷凍機の冷凍負荷とは、「冷水の出入口温度×冷却水量」に相当する量で、ここで必要となる冷水流量は需要先(客先)から信号でもらう等が一般的である。また、相当する物理量とは、・冷水の出入口温度差、・高圧蒸発器と低圧蒸発器の圧力差、・冷水の入口温度、・冷凍機の圧縮機の容量制御装置の開度、圧縮機の電流値等がある。これらの物理量は冷凍機が一般的に検出している物理量であり、客先からの提供を受ける必要が少ない。
【0016】
また、本願発明は、上記圧縮式冷凍機において、前記高圧凝縮器に接続された圧縮機と前記高圧凝縮器の間、前記低圧凝縮器に接続され
た圧縮機と前記低圧凝縮器との間、若しくは前記高圧凝縮器と前記低圧凝縮器との間の少なくともいずれかに制御弁を設けたことを特徴とする。
【0018】
また、本願発明は、上記圧縮式冷凍機において、前記出口配管に設けた前記制御弁は前記高圧蒸発器の冷媒液面レベルを検出する液面検出器の出力で前記高圧蒸発器の冷媒液面レベルが所定レベルになるように制御され、前記分岐配管に設けた前記制御弁は前記低圧蒸発器の冷媒液面レベルを検出する液面検出器の出力で前記低圧蒸発器の冷媒液面レベルが所定レベルになるように制御することを特徴とする。
【0019】
また、本願発明は、上記圧縮式冷凍機におい
て、前記出口配管に設けた制御弁に代えオリフィスを設け、前記低圧凝縮器から前記高圧蒸発器に供給する冷媒は、前記出口配管と該出口配管に設けた前記オリフィスを通して前記高圧蒸発器に供給されるようになってお
り、前記高圧蒸発器にオーバーフロー堰と、該オーバーフロー堰を越流した冷媒を通す越流冷媒配管と、該越流冷媒配管に設けたオリフィスとを備え、前記高圧蒸発器に供給され、前記オーバーフロー堰を越流した冷媒は前記越流冷媒配管と該越流冷媒配管に設けた前記オリフィスを通して前記低圧蒸発器に供給するように構成したことを特徴とする。
【0020】
また、本願発明は、上記圧縮式冷凍機において、前記分岐配管の制御弁は前記低圧蒸発器の冷媒液面レベルを検出する液面検出器の出力でその冷媒液面レベルが所定レベルになるように制御することを特徴とする。
【0021】
また、本願発明は、上記圧縮式冷凍機において、前記低圧凝縮器に接続された圧縮機は、前記高圧蒸発器の冷媒蒸気を圧縮して前記低圧凝縮器に送る低圧圧縮機であり、前記高圧凝縮器に接続された圧縮機は、前記低圧蒸発器の冷媒蒸気を圧縮して前記高圧凝縮器に送る高圧圧縮機であり、前記低圧凝縮器の冷媒出口に制御弁を備えた出口配管を接続し、該出口配管を通して前記低圧凝縮器から冷媒を供給する中間冷却器を設け、前記中間冷却器で冷却された冷媒を前記中間冷却器の冷媒出口にオリフィスを備えた出口配管を接続し、該出口配管及びオリフィスを通して前記中間冷却器からの冷媒を前記高圧蒸発器に供給するようにし、前記低圧蒸発器には前記中間冷却器の冷媒出口に接続した前記出口配管を分岐し制御弁を備えた分岐配管を通して冷媒を供給することを特徴とする。
【0022】
また、本願発明は、上記圧縮式冷凍機において、前記低圧凝縮器の冷媒出口に接続された出口配管の制御弁は前記低圧凝縮器の冷媒液面レベルを検出する液面検出器の出力でその冷媒液面レベルが所定レベルになるように制御し、前記分岐配管の制御弁は前記低圧蒸発器の冷媒液面レベルを検出する液面検出器の出力でその冷媒液面レベルが所定レベルになるように制御することを特徴とする。
【0023】
また、本願発明は、上記圧縮式冷凍機において、単一の缶胴を隔壁で上下に仕切って上部室と下部室とに構成し、前記上部室に前記高圧凝縮器を配置すると共に、下部室に前記低圧凝縮器を配置し、前記隔壁にオリフィスとしての孔を設け、前記高圧凝縮器から前記低圧凝縮器への冷媒の導入は前記隔壁に設けた孔を通して行うことを特徴とする。
【0024】
また、本願発明は、上記圧縮式冷凍機において、前記高圧蒸発器と前記低圧蒸発器を単一の缶胴に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本願発明において、高圧凝縮器で凝縮した冷媒液を低圧凝縮器に導入すると、低圧凝縮器若しくは中間冷却器の冷媒を直接低圧蒸発器に供給するよりも、一度高圧蒸発器に供給し、高圧蒸発器における冷媒温度まで冷媒を冷却した後に、低圧蒸発器に供給した方が、冷凍サイクル上、効率が改善される。しかしながら、蒸発器として満液式の蒸発器を使用する場合、供給される冷媒温度が低すぎると蒸発器内で冷媒のフラッシュ量が少なくなり、熱交換器内部の冷媒の流動が不活発となって伝熱性能が低下する可能性がある。そこで本願発明では、高圧蒸発器に供給する低圧凝縮器若しくは中間冷却器からの冷媒の一部を分岐して低圧蒸発器に供給するので、該低圧蒸発器の冷媒の流動が活性化し、伝熱性能が向上するから、低圧蒸発器の熱交換器を小型にすることができる。
【0026】
また、本願発明では、低圧蒸発器及び高圧蒸発器に冷媒液面レベルを検出する液面検出器を設け、低圧蒸発器及び高圧蒸発器の液面レベルが一定になるように供給される冷媒量を制御するので、低圧蒸発器及び高圧蒸発器の冷媒液面レベルが適正に維持され伝熱が良好に維持されると共に、各蒸発器内の冷媒量が一定となり、高圧凝縮器の冷媒量も略一定となり、冷媒蒸気の吹き抜け等が抑止される。
【0027】
また、本願発明では、高圧蒸発器にオーバーフロー堰を設け低圧凝縮器から高圧蒸発器及び低圧蒸発器に供給される冷媒量を低圧凝縮器内の冷媒液面レベルが一定に維持されるように供給すると共に、高圧蒸発器にオーバーフロー堰を越流した冷媒を低圧蒸発器にオリフィスを介して供給することにより、高圧蒸発器に過剰に供給された冷媒は低圧蒸発器に供給されることになり、高圧蒸発器の冷媒量が適正に維持されるだけでなく、高圧蒸発器内で冷却された冷媒が供給されることで、サイクル効率も改善される。また、低圧蒸発器に供給される冷媒量を制御する制御弁が一つで済むことと、オーバーフロー堰を越流する冷媒越流量が少なく抑えられることから、オーバーフロー堰を含むオーバーフロー機構が小さくなり、装置の低廉化に寄与する。
【0028】
また、本願発明では、低圧凝縮器から冷媒を中間冷却器に供給し、該中間冷却器で冷却された冷媒を冷媒出口にオリフィスを通して高圧蒸発器に供給するようにし、この高圧蒸発器に供給される冷媒を分岐して制御弁を通し低圧蒸発器に供給するので、低圧凝縮器内と低圧蒸発器内の冷媒量が略一定となり、高圧蒸発器内の冷媒量も略一定となる。
【0029】
また、本願発明では、低圧蒸発器に流入する冷媒は高圧蒸発器の飽和温度まで冷却されるため低圧蒸発器の負荷が小さくなる。更に、中間冷却器や膨張弁などの機器が1台で済むことになり、これにより既存の二重冷凍サイクルを具備する圧縮式冷凍機に比して安価で更に効率のよい圧縮式冷凍機を提供できるという効果が得られる。
【0030】
更に、本願発明では、圧縮機と凝縮器との間に設けられた制御弁を操作することにより、低負荷時には2台の圧縮機のどちらか一方のみにより冷凍機を運転することが可能となる。これにより、低負荷時の冷凍機の効率を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は本発明に係る二重冷凍サイクルの圧縮式冷凍機の概略構成例を示す図である。図示するように、本圧縮式冷凍機10−1は、低圧蒸発器(EL)12、高圧蒸発器(EH)14、低圧圧縮機16、高圧圧縮機18、低圧凝縮器(CL)20、及び高圧凝縮器(CH)22を備えている。各機器は冷媒配管で接続され、低圧圧縮機16及び高圧圧縮機18はそれぞれ独立した駆動モータ(M)で回転駆動される。
【0033】
低圧蒸発器12で蒸発された冷媒蒸気は低圧圧縮機16に送られ圧縮され、該圧縮された冷媒蒸気は制御弁V2を通って低圧凝縮器20に流入し凝縮され冷媒凝縮液となり、該冷媒凝縮液は制御弁(膨張弁)26を通って高圧蒸発器14に送られる。該高圧蒸発器14で蒸発した冷媒蒸気は高圧圧縮機18に送られ圧縮され、該圧縮された冷媒蒸気は制御弁V1を通って高圧凝縮器22に送られ凝縮されて冷媒凝縮液となり、該冷媒凝縮液はオリフィス24を通って低圧凝縮器20に導入される。
【0034】
なお、図示は省略するが、
図11と同様、高圧凝縮器22と低圧凝縮器20とは冷却水が通る配管により、低圧蒸発器12と高圧蒸発器14とは冷水の通る配管によりそれぞれ連絡されており、冷却水は低圧凝縮器20から高圧凝縮器22へ、冷水は高圧蒸発器14から低圧蒸発器12へと流れる。高圧蒸発器14及び低圧蒸発器12では、冷水から熱を奪って冷媒を蒸発させ、冷水を冷却させる。また、低圧凝縮器20及び高圧凝縮器22では、圧縮された冷媒が冷却水により冷却され冷媒凝縮液となる。
【0035】
本圧縮式冷凍機10−1では、上記のように高圧凝縮器22で凝縮した冷媒液はオリフィス24を通って低圧凝縮器20へと送られる。低圧凝縮器20には冷媒を過冷却させる過冷却器38(
図2参照)を設けてもよい。低圧凝縮器20で凝縮した冷媒液は制御弁(膨張弁)26を通して膨張して高圧蒸発器14へ送られる。低圧蒸発器12及び高圧蒸発器14にはそれぞれ液面検出器(LV)28、液面検出器(LV)30を備えており、低圧蒸発器12及び高圧蒸発器14の冷媒液面レベルを一定とするよう、制御弁(膨張弁)26及び冷媒を移動させる冷媒移動弁32の開度が制御される。具体的には、低圧蒸発器12の液面レベルの変化を液面検出器28で検出し、冷媒移動弁32の開度を制御することにより、高圧蒸発器14から低圧蒸発器12へ移動する冷媒量を調整し、高圧蒸発器14の冷媒液面を液面検出器30で検出し、制御弁(膨張弁)26の開度を制御することにより、低圧凝縮器20から高圧蒸発器14に移動する冷媒凝縮液量を制御して、低圧蒸発器12及び高圧蒸発器14の冷媒液面レベルが一定になるようにする。
【0036】
図2は、高圧凝縮器22と低圧凝縮器20を合体させた凝縮器の構成を示す図である。図示するように、凝縮器34は単一の缶胴(ケーシング)35を隔壁36で上下に仕切り、該隔壁36を介在させて上部室に高圧凝縮器22を下部室に低圧凝縮器20を配置し、高圧凝縮器22と低圧凝縮器20が上下に重なり合って配置された構成である。隔壁36にはオリフィス24として機能する小孔36aが設けられており、該小孔36aを通って冷媒は高圧凝縮器22から低圧凝縮器20に移動する。小孔36aの大きさは、高圧凝縮器22と低圧凝縮器20の圧力差と冷媒凝縮液の量により設計されるが、一般的に多少大きくても、蒸気の比容積は液に比べて格段に大きく、特に低圧冷媒とされるHFC245faやHCFC123では、冷媒蒸気の吹き抜け量は小さく、性能への影響は小さい。また、一般に圧力差がつく場合は冷媒凝縮液量が多くなるので、流量特性上、吹き抜け流量は抑制される。
【0037】
図3は、高圧蒸発器14と低圧蒸発器12を合体させた蒸発器40の構成を示す図である。図示するように、蒸発器40は単一の缶胴(ケーシング)41内を隔壁42で左右に仕切り、該隔壁42を挟んで高圧蒸発器14と低圧蒸発器12を水平に配置している。高圧蒸発器14と低圧蒸発器12はオーバーフロー堰44を介して隣り合っており、高圧蒸発器14からオーバーフロー堰44を越えて溢れた冷媒液は、隔壁42に設けた小孔42aを通って低圧蒸発器12側へと移動する。この場合も、小孔42aからの冷媒の吹き抜け流量は抑制される。
【0038】
図4は本発明に係る二重冷凍サイクルの圧縮式冷凍機の他の概略構成例を示す図である。図示するように、本圧縮式冷凍機10−2は、低圧蒸発器12、高圧蒸発器14、低圧圧縮機16、高圧圧縮機18、低圧凝縮器20、及び高圧凝縮器22を備えている点は、圧縮式冷凍機10−1と同様である。但し、オリフィス24に代えて、高圧凝縮器22と低圧凝縮器20との間に制御弁V3を設けている。この制御弁V3は、開閉操作を行うことができる以外は、オリフィス24と同等の機能を有する。
【0039】
図1に示す圧縮式冷凍機10−1では、高圧蒸発器14及び低圧蒸発器12の双方の冷媒液面レベルを液面検出器30、液面検出器28で監視し、その冷媒液面レベルの変化により冷媒移動弁32と制御弁(膨張弁)26の開度を制御した。
図4に示す圧縮式冷凍機10−2では、
図3に示すように高圧蒸発器14と低圧蒸発器12の間にオーバーフロー堰44を設け、該オーバーフロー堰44をオーバーフローした冷媒液を隔壁42に設けたオリフィス46としての小孔42aを介して低圧蒸発器12側に送る。ここで、制御弁(膨張弁)26の開度は低圧蒸発器12の液面レベルを液面検出器28で監視し、その液面レベルの変化に応じて制御する。
【0040】
このようにすると、高圧蒸発器14の液面レベルはオーバーフロー堰44により一定に保たれ、制御弁(膨張弁)26の開閉により低圧凝縮器20から高圧蒸発器14に供給される冷媒液量が変化し、オーバーフロー量が増減することになる。従って、低圧蒸発器12の冷媒液面レベルを液面検出器28で検出し、該冷媒液面レベル検出値によって制御弁(膨張弁)26の開度を制御することで、低圧蒸発器12の冷媒量と冷媒循環量は適切に制御されることになる。
【0041】
図5は本発明に係る二重冷凍サイクルの圧縮式冷凍機の他の概略構成例を示す図である。図示するように、本圧縮式冷凍機10−3は、低圧蒸発器12、高圧蒸発器14、低圧圧縮機16−1と16−2を備えた二段式の低圧圧縮機16'、高圧圧縮機18−1と18−2を備えた二段式の高圧圧縮機18'、低圧凝縮器20、高圧凝縮器22、中間冷却器(エコノマイザ)48を備えている。
【0042】
中間冷却器48は低圧凝縮器20と高圧蒸発器14との間に設ける。中間冷却器48で気化した冷媒蒸気は、二段式の低圧圧縮機16'の中間吸込み口へ戻している。低圧凝縮器20から中間冷却器48に送る冷媒凝縮液は、低圧蒸発器12の冷媒液面レベルを液面検出器28で監視し、膨張弁(制御弁)52の開度を制御することにより制御する。また、中間冷却器48からの冷媒液はオリフィス50を通して高圧蒸発器14に送られる。
【0043】
図6は本発明に係る二重冷凍サイクルの圧縮式冷凍機の他の概略構成例を示す図である。図示するように、本圧縮式冷凍機10−4は、低圧蒸発器12、高圧蒸発器14、圧縮機17−1と17−2を備えた二段式の高圧圧縮機17、圧縮機19−1と19−2を備えた二段式の低圧圧縮機19、低圧凝縮器20、高圧凝縮器22、中間冷却器(エコノマイザ)48を備えている。
【0044】
本圧縮式冷凍機10−4では、中間冷却器48を低圧凝縮器20と高圧蒸発器14との間に設ける。低圧蒸発器12から高圧凝縮器22に送る冷媒蒸気を圧縮する高圧圧縮機17と、高圧蒸発器14から低圧凝縮器20に送る冷媒蒸気を圧縮する低圧圧縮機19を設けている。中間冷却器48で気化した冷媒蒸気は、低圧圧縮機19の中間吸込み口へ戻している。低圧凝縮器20から中間冷却器48に送る冷媒凝縮液は低圧蒸発器12の液面レベルを液面検出器28で監視し、膨張弁52の開度を制御することにより制御する。また、中間冷却器48からの冷媒液はオリフィス50を通って高圧蒸発器14に送られる。
【0045】
上記圧縮式冷凍機10−1〜10−4は、高圧凝縮器22で凝縮した冷媒液をオリフィス24(
図1、
図5参照)若しくは制御弁V3,V5(
図4、
図6参照)を通して低圧凝縮器20へ導くことにより、高圧側の冷媒凝縮液は一部気化し、低圧側の冷媒凝縮液と同じ温度まで冷却される。ここで気化した冷媒蒸気は、低圧凝縮器20でただちに凝縮するため、圧縮機の蒸気流量は増えず、実質的に冷凍機の負担は増えない。これにより、高圧側冷媒液は過冷却器を用いずに、低圧凝縮器20の温度まで冷却されたと同じ状態となる。なお、
図2に示すように、過冷却器38を設け、低圧側の冷媒液を過冷却すれば、更に冷凍機効率は向上する。
【0046】
また、低圧蒸発器12には高圧凝縮器22或いは中間冷却器48から直接冷媒液を導くのではなく、凝縮液を一度高圧蒸発器14に導き、そして高圧蒸発器14の内で該高圧蒸発器14の蒸発温度まで冷却された冷媒液を、低圧蒸発器12に導くことにより、膨張弁(制御弁(膨張弁)26、52)が1台でも低圧蒸発器12、高圧蒸発器14の2つの蒸発器に冷媒を供給でき、制御等も容易となる。中間冷却器48を設けた場合でも1台の中間冷却器48で全ての冷媒を冷却できる。
【0047】
また、高圧蒸発器14は、凝縮器(高圧凝縮器22、低圧凝縮器20)若しくは中間冷却器48との温度差に相当する冷媒を気化するが、低圧蒸発器12では、その分冷媒蒸気が減少する。ここで、圧縮式冷凍機10−4では、低圧蒸発器12から高圧凝縮器22への冷媒蒸気を圧縮する高圧圧縮機17と、高圧蒸発器14から低圧凝縮器20への冷媒蒸気を圧縮する低圧圧縮機19とを設けている場合、低圧圧縮機19側の冷媒蒸気流量が増えるが、高圧圧縮機17側の冷媒蒸気量が減少することになる。故に、所要動力が削減され、必要な動力が節減されることになる。なお、
図6では、二段式の圧縮機としているが、単段の圧縮機による場合でも同様の作用効果がある。
【0048】
なお、圧縮式冷凍機10−3のように低圧蒸発器12から低圧凝縮器20へ送る冷媒蒸気を圧縮する二段式の低圧圧縮機16'と、高圧蒸発器14から高圧凝縮器22へ送る冷媒蒸気を圧縮する二段構成の高圧圧縮機18'とを設けている場合、中間冷却器48で気化分離された冷媒蒸気は、低圧圧縮機16'の中間吸込み口に戻すほうが、凝縮器(高圧凝縮器22、低圧凝縮器20)と中間冷却器48のヘッド差が小さいので有利である。
【0049】
なお、高圧蒸発器14と低圧蒸発器12、或いは高圧凝縮器22と低圧凝縮器20の、いずれか一組を、単一の蒸発器或いは凝縮器とすることも考えられる。
図7は高圧蒸発器と低圧蒸発器を単一の蒸発器とした圧縮式冷凍機の概略構成例を示す図である。図示するように、本圧縮式冷凍機10−5は高圧蒸発器と低圧蒸発器を単一の蒸発器とした蒸発器13を備え、蒸発器13からの冷媒蒸気を高圧圧縮機18と低圧圧縮機16に送り、高圧圧縮機18で圧縮した冷媒蒸気を高圧凝縮器22に送り冷媒凝縮液とし、低圧圧縮機16で圧縮した冷媒蒸気を低圧凝縮器20に送り冷媒凝縮液としている。
【0050】
高圧凝縮器22の冷媒凝縮液をオリフィス24を通して低圧凝縮器20へ導入するようになっており、蒸発器13の冷媒液面レベルを液面検出器30で監視し、蒸発器13の冷媒液面レベルが一定となるように、制御弁(膨張弁)26の開度を制御し、低圧凝縮器20から蒸発器13に移動する冷媒凝縮液量を制御する。
【0051】
上記圧縮式冷凍機10−5では、当然にしてその効果は減少するが、従来の単一冷凍サイクルの冷凍機に比しては、高性能の冷凍機となる。また、従来の冷凍機と同様、高圧凝縮器出口のオリフィス24を自動弁として開度を制御しても良く、制御弁(膨張弁)26についても、従来と同様に低圧凝縮器20の液面等により制御しても差し支えない。当然、制御弁(膨張弁)26として所謂フロート弁等を用いてもよい。
【0052】
図8は、本発明に係る二重冷凍サイクルの圧縮式冷凍機の他の概略構成例を示す図である。本圧縮式冷凍機10−6は、冷凍機は高圧蒸発器14と低圧蒸発器12とを備え、低圧凝縮器20の冷媒出口に制御弁(膨張弁)26を備えた出口配管31を接続し、該出口配管31の制御弁(膨張弁)26上流側に制御弁(膨張弁)29を備えた分岐配管33を設けている。低圧蒸発器12へ供給する冷媒は、低圧凝縮器20から出口配管31及び制御弁(膨張弁)26を介して高圧蒸発器14に冷媒を供給する冷媒から分岐配管33を介して分岐し、制御弁(膨張弁)29を介して供給している。前述したように、低圧凝縮器20若しくは中間冷却器48の冷媒を直接低圧蒸発器12に供給するよりも、一度高圧蒸発器14に供給し、高圧蒸発器14における冷媒温度まで冷却した後に、低圧蒸発器12に供給した方が、冷凍サイクル上、効率が改善する。
【0053】
上記のように冷媒を高圧蒸発器14における冷媒温度まで冷却した後に、低圧蒸発器12に供給することにより、冷凍サイクル上の効率は改善されるが、低圧蒸発器12として満液式の蒸発器を使用する場合、供給される冷媒温度が低過ぎると低圧蒸発器12内で冷媒蒸気が発生しないために熱交換器内部の冷媒の流動が不活発となる。即ち、低圧蒸発器12には従来に比べて温度の下がった冷媒が流入することで低圧蒸発器12内の冷媒のフラッシュ量が少なくなり、伝熱性能が低下する可能性があり、冷凍サイクル上の効率が改善しても、伝熱性能が低下することで、冷凍サイクル上の効率が改善の効果が相殺され、場合によっては逆効果となる可能性がある。特に、蒸発器内の冷媒流動が少ない低負荷時にはその影響が大きくなる可能性がある。このため、ここでは高圧蒸発器14に供給される、低圧凝縮器20の出口若しくは後述する中間冷却器の出口からの冷媒を分岐して直接低圧蒸発器12に導入することで、冷媒温度を高くして低圧蒸発器12内の冷媒の流動を活発化してやることで、伝熱性能を改善した。これにより、低圧蒸発器12からの冷媒液の全量を高圧蒸発器14に導入する場合に比してサイクル上の効率改善効果は劣るが、代わりに低圧蒸発器12の伝熱性能も悪化しないことになる。
【0054】
この場合、
図8のように低圧凝縮器20から冷媒を供給する場合は、低圧蒸発器12及び高圧蒸発器14の夫々に液面検出器28、30を設けてその液面を一定とするよう、低圧蒸発器12及び高圧蒸発器14のそれぞれの入口に設けた制御弁29、26を制御する方法がある。このようにすると、低圧蒸発器12及び高圧蒸発器14の液面が適正に維持されて伝熱が良好に維持されるとともに、低圧蒸発器12内及び高圧蒸発器14内の冷媒量が一定となり、高圧凝縮器22内の冷媒液がごく少量であることから、低圧凝縮器20内の冷媒量も略一定となり、冷媒蒸気の吹き抜け等が抑止される。
【0055】
また、上記例では、液面検出器28、液面検出器30の出力により、制御弁29、制御弁26を制御して低圧蒸発器12、高圧蒸発器14の液面が一定になるようにしているが、制御弁29、制御弁26は圧縮冷凍機の冷凍負荷又は相当する物理量で制御するようにしてもよい。ここで、圧縮冷凍機の負荷に相当する物理量としては、「冷水(
図11の冷水120を参照)の出入り口温度差」、「高圧蒸発器14と低圧蒸発器12の圧力差」、「冷水の入口温度」、「圧縮冷凍機の圧縮機容量制御装置の開度」、「圧縮機(低圧圧縮機16及び高圧圧縮機18)の電流値等がある。
【0056】
また、高圧蒸発器14に送る冷媒の一部を分岐して低圧蒸発器12に送る冷媒流量を制御弁26の弁開度を上記のように圧縮冷凍機の冷凍負荷による制御の他に、低圧蒸発器12の伝熱特性そのものを、冷水出口温度と低圧蒸発器12の蒸発温度との差(低圧蒸発器のアプローチ温度)により検出し、低圧蒸発器12の伝熱性能が悪化した場合に、制御弁26弁開度を大きくして低圧蒸発器12に送る冷媒流量を多くして、低圧蒸発器12の伝熱性能を改善することもできる。
【0057】
図9は、本発明に係る二重冷凍サイクルの圧縮式冷凍機の他の概略構成例を示す図である。本圧縮式冷凍機10−7は、低圧凝縮器20の冷媒出口にオリフィス53を備えた出口配管31の一端を接続し、他端を高圧蒸発器14の冷媒入口に接続している。出口配管31のオリフィス53より低圧凝縮器20側に制御弁(膨張弁)29を備えた分岐管33の一端を接続し、該分岐管33の他端を低圧蒸発器12の冷媒入口に接続している。低圧凝縮器20から出口配管31及びオリフィス53を介して高圧蒸発器14に送る冷媒液の一部を分岐配管33で分岐して制御弁(膨張弁)29を介して低圧蒸発器12に送っている。また、低圧凝縮器20の冷媒液面を略一定とするように液面検出器56の出力によりの弁開度を制御している。ここで、高圧蒸発器14にはオーバーフロー堰(OF)58を設け、このオーバーフロー堰58をオーバーフローした越流冷媒液を越流冷媒配管37及びオリフィス54を介して低圧蒸発器12に供給することとしている。これにより、高圧蒸発器14にて過剰に供給された冷媒は低圧蒸発器12に送られることとなり高圧蒸発器14内の冷媒量が適正に維持されるだけでなく、高圧蒸発器14内で冷却された冷媒が低圧蒸発器12に供給されることでサイクル効率の改善も図ることができる。また、制御弁(膨張弁)が制御弁29の一つで済むことと、冷媒のオーバーフロー量が少なく抑えられることからオーバーフロー機構が小さくなり、低廉化に寄与する。
【0058】
図9に示す圧縮式冷凍機において、低圧蒸発器12には高圧蒸発器14からオーバーフロー堰58を越流し越流冷媒配管37及びオリフィス54を通って供給される冷媒と、分岐管33の制御弁(膨張弁)29を通って供給される冷媒とが供給されている。ここで、制御弁29が全閉の場合、
図1と略同一とになる。冷水の出入り温度差等により圧縮冷凍機の低負荷を検出した場合、制御弁29を開いて低圧凝縮器20の熱い冷媒を低圧蒸発器12に送ることで、低圧蒸発器12の伝熱性能の改善を図ることができる。これにより高圧凝縮器22で凝縮した冷媒を低圧凝縮器20に導入することで二重冷凍サイクルの圧縮冷凍機のサイクル効率を改善するという効果は低下するが、低圧蒸発器12の伝熱性能の低下を改善することになる。
【0059】
図10は、本発明に係る二重冷凍サイクルの圧縮式冷凍機の他の概略構成例を示す図である。本圧縮式冷凍機10−8では、低圧凝縮器20の冷媒出口に接続した出口配管31に制御弁52を設け、低圧凝縮器20からの冷媒を中間冷却器(ECO)48に供給するようにしている。中間冷却器48の冷媒出口にはオリフィス50を備えた出口配管39を接続し、該出口配管39に制御弁(膨張弁)60を備えた分岐配管43を接続している。中間冷却器48からの冷媒は出口配管39及びオリフィス50を介して高圧蒸発器14に供給され、該高圧蒸発器14に供給され冷媒の一部を分岐し、分岐配管43及び制御弁60を介して低圧蒸発器12に供給する。本圧縮式冷凍機10−8では、低圧凝縮器20内の冷媒液面を略一定とするよう、制御弁52の開度を低圧凝縮器20の冷媒液面レベルを検出する液面検出器62の出力で制御して低圧凝縮器20から中間冷却器48への冷媒供給量を制御すると共に、中間冷却器48から低圧蒸発器12に供給される冷媒流量は制御弁60の開度を低圧蒸発器12の液面検出器28の出力により制御している。ここで、低圧蒸発器12への冷媒供給量は、低圧蒸発器12の冷媒液面が略一定となるように、低圧蒸発器12の液面検出器28の出力により制御される。このようにすると、低圧凝縮器20内と低圧蒸発器12内の冷媒量が略一定となるため、高圧蒸発器14内の冷媒量も略一定となる。なお、二段式の低圧圧縮機16’の低圧圧縮機16−1と高圧凝縮器22との間には制御弁V7が接続され、低圧圧縮機16−1からの圧縮冷媒は制御弁V7を通して高圧凝縮器22に供給される。
【0060】
次に上記本発明に係る二重冷凍サイクルの圧縮式冷凍機について、圧縮機の一方のみを停止する場合について説明する。圧縮機は運転中には冷媒は一方向にしか流れないが、停止すると、冷媒が逆流するため、特段の配慮が必要となる。また、冷媒配管を通して缶胴同士が均圧化するため、運転中の缶胴と停止中の缶胴とが隣り合っている場合などには運転中とは全く異なる圧力差が生じ、通常の隔壁では耐圧が不足する等の課題があることが知られている。更に、各々の熱交換器の接続状態によっては、望ましくない冷媒の移動と、それに伴う熱の移動とが生じて、冷凍機の効率を悪化させるという問題もある。
【0061】
例えば、
図11に示す従来構成の二重冷凍サイクルの圧縮式冷凍機100では、高圧側圧縮機104を停止すると、高圧側圧縮機104を通して高圧側凝縮器106と高圧側蒸発器102とが均圧化するために、高圧側凝縮器106の圧力は高圧側蒸発器102と略同じ圧力となる。一方、高圧側蒸発器102の圧力は、通水されている冷却水110により冷却され、略低圧側蒸発器101と等しくなる。従って、高圧側凝縮器106と低圧側凝縮器105との間には、低圧側圧縮機103の出入り圧力差と略等しい圧力差がかかる。高圧側凝縮器106と低圧側凝縮器105とは、前述したように一つの缶胴を隔壁により区分することが好ましいが、このように大きな圧力差(HFC245faの冷媒の場合で、0.2MPa程度)が生じると、隔壁の設計が難しくなる。更に凝縮器同士や蒸発器同士が、配管や圧縮機のシール管等を通じて連通している場合等では、望ましくない冷媒の移動が生じて効率を低下させる。そのために、本発明に係る圧縮式冷凍機では、次のような方法を採る。
【0062】
先ず、
図1の圧縮式冷凍機10−1では、高圧凝縮器22と高圧圧縮機18との間に制御弁V1を設け、高圧圧縮機18を停止する場合には、該制御弁V1を閉止することとした。このようにすると、高圧蒸発器14における冷媒の蒸発が止まり、制御弁(膨張弁)26により高圧蒸発器14は減圧され、一部気化した冷媒が、逆に高圧蒸発器14において凝縮液化することになる。一方、低圧蒸発器12は、低圧圧縮機16が運転中であるために、高圧蒸発器14よりも低圧となるため、この圧力差に駆動されて冷媒は高圧蒸発器14から低圧蒸発器12へと移動する。従って、冷凍機の運転は問題なく継続される。
【0063】
上記圧縮式冷凍機10−1では、更に低圧凝縮器20と低圧圧縮機16との間にも制御弁V2を設け、低圧圧縮機16を停止する場合には、該制御弁V2を閉止することとした。このようにすると、高圧圧縮機18の運転により、高圧凝縮器22で凝縮した冷媒液は、凝縮しなかった冷媒蒸気とともに、オリフィス24を通って低圧凝縮器20へと流れる。低圧凝縮器20における冷却水の温度は、高圧凝縮器22のそれよりも低いため、冷媒液の一部が一度気化するが、低圧凝縮器20では未凝縮の蒸気とともにこれを冷却凝縮する。ここで、低圧圧縮機16が運転していないため、低圧凝縮器20の熱負荷は非常に小さく、冷媒液は、冷凍機の冷却水入口温度に非常に近い温度まで冷却される。このため、冷凍機の効率は更に向上する。但し、この場合には運転中の高圧蒸発器14の方が、低圧蒸発器12よりも低圧となり、冷媒が逆流する可能性がある。その場合は、冷媒移動弁32を閉止するのがよい。
【0064】
上記の場合、どちらの場合であっても、高圧凝縮器22と低圧凝縮器20の圧力は、オリフィス24を通して連通されるために略等しくなる。従って、隔壁にかかる圧力は通常の運転中と同程度かそれ以下となり、隔壁に格別耐圧を持たせる必要がなくなる。なお、上記圧縮式冷凍機10−1は2個の制御弁V1、V2を有しているが、常に停止する圧縮機を一方の圧縮機(低圧圧縮機16又は高圧圧縮機18)に限定すれば、一方すなわち停止する側のみでよい。
【0065】
次に、
図4の圧縮式冷凍機10−2について説明する。本圧縮式冷凍機10−2では、
図1の圧縮機(低圧圧縮機16、高圧圧縮機18)と凝縮器(低圧凝縮器20、高圧凝縮器22)との間に制御弁V1、V2を設けることに代えて、高圧凝縮器22と低圧凝縮器20との間に、制御弁V3を設け、高圧圧縮機18を停止する場合、該制御弁V3を閉止することとした。このようにすると、高圧凝縮器22内の冷媒は気化すると高圧圧縮機18を通って高圧蒸発器14へと流入するが、高圧凝縮器22内の冷媒保有量はごく少ないため、冷媒が無くなると逆流は生じなくなる。このとき、高圧凝縮器22は高圧蒸発器14とは同じ圧力となるため、高圧凝縮器22と低圧凝縮器20とが隣り合わせの場合は、隔壁に耐圧が必要となるが、一般に冷媒蒸気の制御弁と冷媒液の制御弁では、比容積が大きく異なるために、冷媒液の制御弁である制御弁V3は小さい。そのため、大きい2つの制御弁V1,V2を具備する圧縮式冷凍機10−1に比して、安価に製作することが可能となる。なお、冷媒の循環については、圧縮式冷凍機10−1と同様である。
【0066】
次に、
図5の圧縮式冷凍機10−3について説明する。本圧縮式冷凍機10−3では、高圧圧縮機18−1と高圧凝縮器22の間に制御弁V4を設け、高圧圧縮機18'を停止する場合にこれを閉止することとした。この場合の作用及び効果は
図1の圧縮式冷凍機10−1と同等である。但し、本圧縮式冷凍機10−3では低圧圧縮機16−1と低圧凝縮器20の間には制御弁を設けていない。なぜなら、ここに制御弁を設けても、低圧圧縮機16'を停止すると、中間冷却器48から低圧圧縮機16'へと冷媒が逆流するため、そこにも制御弁を設ける必要があり、一つの制御弁の操作のみで圧縮機を1台停止させるということが達成できない、即ち「圧縮式冷凍機を構成する要素機器が少なくて済み」という本願の目的が達成できないからである。こうすることで、本圧縮式冷凍機10−3では制御弁V4の一つの操作のみで圧縮機を1台停止できる。
【0067】
次に、
図6の圧縮式冷凍機10−4について説明する。本圧縮式冷凍機10−4では、高圧凝縮器22と低圧凝縮器20との間に制御弁V5を設け、高圧圧縮機17を停止した場合に、これを閉止することとした。この場合も、
図4の圧縮式冷凍機10−2と同等の作用効果を得ることができる。
【0068】
次に、
図7の圧縮式冷凍機10−5について説明する。本圧縮式冷凍機10−5では高圧圧縮機18と高圧凝縮器22との間に、制御弁V6を設けている。この場合も、
図1の圧縮式冷凍機10−1と同等の作用効果を得ることができる。
【0069】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態例では、低圧圧縮機と高圧圧縮機をそれぞれ個別の駆動モータで回転駆動する例を示したが、1個の駆動モータで低圧圧縮機と高圧圧縮機を回転駆動するように構成してもよい。なお、直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造であっても、本願発明の作用効果を奏する以上、本願発明の技術範囲である。