(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
材料を熱および減圧の一方または両方に曝露して、初期脱水を生じさせ、その後追加水の喪失および分子間縮合プロセスまたは分子内縮合プロセスによりデヒドロサーマル的に架橋された、再水和された場合に多糖ゲルを提供する、実質的にコラーゲン不含の多糖の自由流動性の再水和可能な滅菌された粒子を含有するシール化パッケージングを含む物品。
多糖が、セルロース、キトサン、寒天、アルギネート、カラギーナン、キチン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、ガラクトマンナン、グリコーゲン、ヒアルロン酸、でんぷん、またはこれらの混合物;酸化多糖または塩;カルボキシメチルセルロース;キトサン;キトサンと別の多糖との混合物;またはカルボキシメチルセルロースとキトサンとの混合物;を含む、請求項1または2に記載の物品。
粒子が、再水和された場合に、少なくとも2日のゲル保持時間を有するように、材料を熱および減圧の一方または両方に曝露して、初期脱水を生じさせ、その後追加水の喪失および分子間縮合プロセスまたは分子内縮合プロセスにより、十分にデヒドロサーマル的に架橋される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の物品。
多糖が、セルロース、キトサン、寒天、アルギネート、カラギーナン、キチン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、ガラクトマンナン、グリコーゲン、ヒアルロン酸、でんぷん、またはこれらの混合物;酸化多糖または塩;カルボキシメチルセルロース;キトサン;キトサンと別の多糖との混合物;またはカルボキシメチルセルロースとキトサンとの混合物;を含む、請求項8または9に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0016] 参考文献と同様に、図面の様々な図における符号は、同様のエレメントを示す。図面中のエレメントは、同一縮尺というわけではない。
【0014】
[0017] 以下の詳細な説明は、特定の態様を記述したものであり、そして限定する意味では利用されない。本明細書中の全ての重量、量、および比は、特に記載しない限り重量である。以下に示される用語は、以下の意味を有する。
【0015】
[0018] 用語“接着”は、身体構造または補綴材料を、組織に対してくっつけること、組織と組織とを長期間の間緊密に接触させるようにくっつけること、または通常の開放空間を介して身体構造、補綴材料または組織を互いに結合させる組織を形成すること、をいう。
【0016】
[0019] 用語“抗菌性”は、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa、Streptococcus pneumonia、Haemophilus influenzae、またはMoraxella catarrhalisの1またはそれ以上の個体群における、90%より多い数値的減少(すなわち、少なくとも1-logオーダーの減少)を引き起こす能力のことをいう。
【0017】
[0020] 用語“付着した”および“接着した”は、細菌性バイオフィルムおよび表面に関連して使用される場合、バイオフィルムが表面上で確立され、そして少なくとも部分的に表面をコーティングするかまたは被覆し、表面からの除去に対していくらか抵抗性を有することを意味する。この関係性の性質が複雑であまりよく理解されていないため、付着または接についての具体的なメカニズムは、そのような使用により意図されない。
【0018】
[0021] 用語“細菌性バイオフィルム”は、細菌により生成される細胞外多糖(EPS)マトリクス中に含有される群落中の有機体(生物)を含む、表面に対して付着した細菌の群落を意味する。
【0019】
[0022] 用語“生体適合性”は、物質に関連して使用される場合、物質が、生体に対して顕著な有害作用または望まれない作用を何も示さないことを意味する。
【0020】
[0023] 用語“生物分解性”は、物質に関連して使用される場合、物質がin vivoで分解されまたは破壊されて、より小さな化学的種または物理的種を形成することを意味する。そのような分解プロセスは、酵素的、化学的または物理的であってもよい。
【0021】
[0024] 用語“生体吸収性”は、物質に関連して使用される場合、物質が、生体により吸収されることができることを意味する。
【0022】
[0025] 用語“粘着性”は、液体またはゲルに関連して使用される場合、水平面上に静置される場合の液体またはゲルが(全ての場合に必要というわけではないが)、それ自体にくっつき、そして単一の塊を形成する傾向があることを意味する。
【0023】
[0026] 用語“破砕される”は、粒子材料に関連して使用される場合、カッティング、研磨、微粉砕、粉末化、または外部から印加された力を使用したその他の粒子破砕プロセスにより、粒子が破砕されそしてサイズが小さくなったことを意味する。
【0024】
[0027] 用語“共形(conformal)”は、組織またはその他の身体構造に対して適用される組成物に関連して使用される場合、組成物が、組成物が適用される領域上に実質的な連続層を形成することができることを意味する。
【0025】
[0028] 用語“分離”、“除去”および“崩壊”は、表面に対して付着したかまたは接着した細菌性バイオフィルムに関連して使用される場合、最初には表面上に存在していた少なくとも顕著な量のバイオフィルムが、もはや表面に対して付着したりまたは接着したりしないことを意味する。分離、除去または崩壊の具体的なメカニズムは、その様な使用により意図されない。
【0026】
[0029] 用語“流体”は、物質に関連して使用される場合、物質が、その保管係数(G')よりも大きい損失係数(G'')そして1よりも大きい損失タンジェント(tan δ)を有する液体であることを意味する。
【0027】
[0030] 用語“ゲル”は、物質に関連して使用される場合、物質が変形可能なものであり(すなわち、固体ではない)、G''がG'未満でそしてtan δが1未満であることを意味する。
【0028】
[0031] 用語“ゲル化”は、ゲル層の形成に関連して使用される場合、G''がG'と等しくそしてtan δが1に等しい時間を意味する。
【0029】
[0032] 用語“止血”は、血流を止める機器または材料を意味する。
【0030】
[0033] 用語“ハイドロゲル”は、ゲルに関連して使用される場合、ゲルが、親水性でありそして水を含有することを意味する。
【0031】
[0034] 用語“水和”は、機器または物質に関連して使用される場合、機器または物質が、均一に分散された化学的な結合水を含有することを意味する。“完全に水和”された機器または物質は、水和のための追加の水を取り込むことができない。“部分的に水和”された機器または物質は、水和のための追加の水を取り込むことができる。
【0032】
[0035] 用語“内耳”は、三半規管および蝸牛を意味する。
【0033】
[0036] 用語“中耳”は、鼓膜、耳小骨連鎖などの内部構造、乳様突起などの周囲の裏打ち構造および境界構造により規定される領域を意味する。
【0034】
[0037] 用語“粘膜接着性”は、機器または物質に関連して使用される場合、機器または物質が、粘液被覆上皮に対して接着し得ることを意味する。
【0035】
[0038] 用語“鼻腔または副鼻腔”は、鼻および洞内の通常は空気で満たされた通路および室を規定する様々な組織のことをいい、組織には鼻孔(nostrilsまたはnares)、鼻甲介(nasal conchaまたはturbinates)、前頭骨、篩骨、ちょう形骨洞および上顎洞、副鼻腔口および鼻咽頭が含まれる(しかし、これらには限定されない)。
【0036】
[0039] 用語“多糖”には、多糖の誘導体および修飾された多糖、ならびに個々の多糖種の誘導体および個々の修飾多糖種が含まれる。例えば、用語“カルボキシメチルセルロース”には、カルボキシメチルセルロース誘導体および修飾カルボキシメチルセルロースが含まれ、用語“キトサン”にはキトサン誘導体および修飾キトサンが含まれ、そして用語“でんぷん”には、でんぷん誘導体および修飾でんぷんが含まれる。
【0037】
[0040] 用語“保護”は、組織またはその他の身体構造上の組成物の層に関連して使用される場合、例えば、炎症性応答の調節、食作用、粘膜リモデリング、繊毛再生、または正常機能のその他の完全なまたは部分的な回復などの1またはそれ以上の治癒メカニズムを介して、層が、傷害組織表面、炎症組織表面または外科的修復組織表面を、正常な状態に戻すことを補助することができることを意味する。
【0038】
[0041] 用語“滞留時間”は、組織またはその他の身体構造上の保護ゲル層に関連して使用される場合、ゲル層またはその部分が巨視的観察のもとin vivoで依然としてその場に存在している期間を意味する。
【0039】
[0042] 用語“溶媒”は、溶質がその中で溶解されるかまたは懸濁される溶媒またはその他の担体を含有する、溶液または分散系を形成することを意味する。
【0040】
[0043] 用語“実質的にコラーゲン不含”は、牛海綿状脳症(BSE)または変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の伝播またはそれへの感染の潜在的リスクをもたらさないように、実質的に低量のコラーゲンを含有することを意味する。
【0041】
[0044] 用語“薄い”は、組織またはその他の身体構造上の保護層に関連して使用される場合、約2ミリメートル未満の平均厚を有することを意味する。
【0042】
[0045]
図1に関して、開示された治療方法は、例えば、患者の鼻腔または副鼻腔100中で行うことができ、鼻孔114a、114bを介してアクセスすることができる上顎洞110a、110bおよび前頭洞112a、112bが含まれる。鼻孔114a、114bを含めて患者の外的特徴が、点線で示されることに注目すべきである。患者が、例えば、慢性鼻副鼻腔炎を患っている場合、上顎洞110aの表面と関連する治療部位116などの1またはそれ以上の治療部位を、医学的にまたは必要であれば外科的に対処することができる。治療部位116には、上顎洞110aの線毛上皮が含まれ、そして細菌が生息する関連するバイオフィルムの関連した層が含まれていてもよい(
図1中には示さず)。治療部位は、天然の組織に限定される必要はなく、そして、細菌性バイオフィルムの層により少なくとも部分的に被覆されていてもよい、洞充填(sinus packing)またはステントなどの人工的構造が含まれてもよい(
図1中には示さず)。存在する場合、バイオフィルムは、病巣洗浄管(irrigation duct)(
図1においては隠されている)を含有する関節結合可能な送達チューブ122とともに、イントロデューサー122の遠位端にてノズル124へと流れそして従って治療部位へと流れることができる溶媒システムを介して、イントロデューサー120を使用して、治療部位116に対して適用することができる溶媒システム(例えば、U.S.特許出願公開No. US 2007/0264310 A1に記載される溶媒システム)を使用して除去することができる。溶媒システムおよびバイオフィルムの残留物を、吸引管(
図1においては隠されている)を介して、治療部位から除去することができる。開示された再水和されたゲル組成物を、同様に、イントロデューサー120中で同一のまたは異なる病巣洗浄管(irrigation duct)を使用して、治療部位にて適用することができる。当業者は、再水和されたゲル(そして必要であれば溶媒システム)を、その他の方法またはその他の装置を使用して、治療部位に対して適用することができることを理解するであろう。例示的なその他の方法には、動力スプレーまたはその他のスプレー塗布、洗浄(lavage)、ミスト、モッピング、ウィッキング、ドリッピング、そして穿孔(trephination)が含まれ、そして例示的なその他の装置には、スプレーノズル(例えば、単一成分または複数成分のスプレーノズル)およびシリンジ(例えば、単一バレルまたは複数バレルのガラスまたはプラスチックシリンジおよびバルブシリンジ)が含まれる。治療方法を、身体のその他の部分において行うこともできる。治療方法は、組織(例えば、粘膜組織)の治療や、耳、鼻、または喉の中またはその近傍、四肢または脊柱中の開口部、陥凹部、通路、または接合部の中またはその近傍の構造の治療を含む、血管外適用において、特に有用性を有する。
【0043】
[0046]
図2は、開示された治療方法において使用することができる例示的な機器200を示す。機器200には、ハンドル202およびイントロデューサー222が含まれ、その遠位端224(全般を参照)には、スプレーノズル、病巣洗浄管(irrigation duct)および吸引管が含まれる(
図2においては別々に番号を付けていない)。機器200には、場合によりさらに、第1のアクチュエータアッセンブリ226(全般を参照)および第2のアクチュエータアッセンブリ228(全般を参照)が含まれていてもよい。第1のアクチュエータアッセンブリ226中の調節ホイール230は、イントロデューサー222の曲げをもたらすようにユーザにより機能させることができ、そして第2のアクチュエータアッセンブリ228中の調節ホイール232は、イントロデューサー222の遠位端224からスプレーされる液体のイントロデューサー222に対する運動または回転をもたらすようにユーザーにより機能させることができる。ハンドル202は、一般に、様々なその他の機器成分200のためのハウジングとして、そしてイントロデューサー222のための支持体として、機能する。ハンドル202は、ピストル型グリップ様形状を有していてもよく、グリップ部分234およびノーズ236を規定する。グリップ部分234は、ユーザーの手により握られるようなサイズおよび形状を有し、一方でノーズ236は、イントロデューサー222に結合するように適合される。トリガ238および関連するセンサおよびバルブ(
図2においては示されていない)を使用して、開示された再水和ゲル(そして使用する場合、開示された溶媒システム)の、洗浄チューブ(irrigation tube)240を通じた流れ、そしてそれ故に遠位端224中そして所望の治療部位上でのスプレーノズルを介した流れを調節することができる。トリガ238を、多方向性の可動域とともに提供することができ、そして1またはそれ以上の追加のセンサおよびバルブ(
図2中には示されない)と組み合わせて、遠位端224での吸引管を介した、そしてそれ故吸引チューブ242を通した、溶媒システム、バイオフィルム残留物およびその他のデブリの治療部位からの除去を、調節することができる。トリガ238を使用して、洗浄チューブ(irrigation tube)240中の別個の管腔を通じて、そしてそれ故に遠位端224中そして所望の治療部位上でのスプレーノズルを介して、開示された再水和ゲルの流れを調節することもできる。
【0044】
[0047] 適用された再水和されたゲルは、治療部位(例えば、鼻腔または副鼻腔、または四肢または脊柱の部分における開口部、陥凹部、通路または接合部)を満たすことができ、その場合、開示されたゲル層は、非常に厚くてもよく、そして空気またはその他の付近のガスに曝露されていなくてもよく、そして層を通じて様々な厚さを有していてもよい。開示された再水和されたゲルは、薄いフィルムまたはその他のコンフォーマルコーティングとして適用することもでき、その場合、開示されたゲル層は、相対的に薄く、そして空気またはその他の付近のガスに曝露され、そして層を通じて実質的に均質な厚さを有していてもよい。再水和されたゲル組成物は、粘着性、弾力性または粘弾性のものであってもよい保護層を提供する。保護層は、望ましくは、治療部位にて粘膜組織またはその他の天然の組織(例えば、軟骨または骨)に接着し、そしてゲル層の天然の分解または吸収が、例えば、1日〜数日(例えば、2、3または4日)、数週間または数ヶ月間のin vivoでの滞留時間の後に生じるまで、分離またはその他の崩壊に耐性である。その一方で、細菌の再定着または再感染を、顕著に減少または予防することができ、そして治癒の改善そして繊毛再生の改善が生じうる。保護ゲル層は、細菌接着忌避(repellence)、抗-感染性特性、局所免疫修飾、組織保護、疼痛または出血の減少または除去、炎症の軽減、繊毛再生のための環境の最適化、重大な生体構造(critical anatomy)に対する接着の減少、などを含む(しかしこれらには限定されない)、様々な治療上の利点を提供することができる。これらの利点は、a)殺菌、b)細菌定着の阻害、c)細菌の組織への接着性の阻害、d)組織の病的状態(morbidity)または膿瘍形成の減少、e)疾患再発の減少または予防(例えば、具体的には、細菌毒素およびEPSに関連する慢性炎症の減少)、f)例えば、血小板凝集を促進する湿潤創傷の維持により、または過剰なざらつきの形成を伴わない乾燥創傷の閉合による、治癒のあいだの組織のコーティングおよび保護、g)止血、h)粘膜の繊毛再生用の環境の最適化、i)繊毛の成長または再生の高速化、そしてj)(1または複数の)治療剤の治療部位への送達、を含む様々なメカニズムのために生じる可能性がある。望ましくは、保護ゲル層は、接着していない部分における繊毛を天然の律動的繊毛運動(すなわち、繊毛拍動)を自由に受けるようにしたまま粘膜の部分に接着することができ、所望される場合には抗菌剤または追加の治療剤も送達することができ、そして望ましくは細菌が治療部位に接着することを妨害しまたは予防することができる。
【0045】
[0048]
図3は、圧縮されていない状態の開示されたスポンジの例30を示し、そして
図4は、圧縮された状態の開示されたスポンジの例40を示す。再水和の前の圧縮されていないその形状において、スポンジ30は、本質的に無水多孔性多糖マトリクスを提供する。圧縮されたスポンジ(スポンジ40など)を、対立する圧盤(platen)を用いてプレスする技術、ローラーを回す技術(calendaring rollers)、外部空気圧または内部減圧に供されるプラスチックバッグ、そして当業者により想定されうるその他の圧縮技術、を含む様々な技術を使用して、デヒドロサーマル的な架橋の前または後に形成することができる。開示されたスポンジの圧縮された形状または圧縮されていない形状のいずれかを、医学的処置において使用することができる。スポンジ(例えば、スポンジ30またはスポンジ40)を治療部位に設置する前に、スポンジを所望のサイズまたは形状にトリミングすることができる(例えば、トリミングを製造部署にて行う場合には適切なパンチや型打ち機(die)を使用して、またはトリミングを設置の時点で行う場合にはハサミまたはメスを使用して)。その後、トリミングしていないスポンジまたはトリミングしたスポンジを、再水和することができる。以前に圧縮されている場合、スポンジを治療部位中に挿入する前、挿入する間、または挿入した後に、膨張させることができる。据え付けられたスポンジは、保護用ゲル層との関連で上述したもののような様々な治療上の利点を提供することができる。
【0046】
[0049] 非常に多様な多糖を、開示された再水和可能なゲル組成物および開示されたスポンジにおいて使用することができる。セルロースおよびキトサンに加えて、例示的な多糖には、寒天、アルギネート、カラギーナン、キチン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、ガラクトマンナン、グリコーゲン、ヒアルロン酸、でんぷん、およびハイドロゲルまたは自己保持性スポンジ中で形成することができるその他の生体適合性多糖が含まれる。誘導体(酸化多糖および塩を含む)および多糖の混合物(誘導体を含む)を、使用することもできる。多糖の混合物を含有する組成物は、その特性が単一の多糖を使用しては提供することができないものであるハイドロゲルおよびスポンジを形成するため、特に好ましい。例えば、CMCおよびキトサンを含有する組成物は、特に好ましい特性の組合せを提供する。その他の望ましい組成物には、アルギネート、ヒアルロン酸またはコンドロイチン硫酸と一緒にキトサンを含有するものが含まれる。選択された多糖(1または複数)を、望ましくは、以下にさらに詳細に説明されるデヒドロサーマル的な縮合反応を介して架橋することができ、そして多糖の混合物中の1つまたは全ての多糖を、そのように架橋することができる。選択された多糖(1または複数)は、望ましくは、水溶性であり、または例えば適切な酸性化によりそのようにすることができる。
【0047】
[0050] CMC、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヘミセルロース、ならびに酸化セルロースを含むそれらの誘導体を含む、様々なセルロースを、開示された再水和可能なゲル中および開示されたスポンジ中で使用することができる。例示的なセルロース材料は、Dow Wolff Cellulosics(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム生成物のWALOCEL
TM CRTライン)、Hercules, Inc.(例えば、セルロースガムとカルボキシメチルセルロース生成物のAQUALON
TMライン)、そしてSigma-Aldrich Co.(例えば、No. C4021微粒子セルロース)を含む、様々な商業的供給源から得ることができる。セルロース材料は、望ましくは、例えば、平均粒子径が約1 mm未満、約100μm未満、約1〜約80μm、または1μm未満である自由流動性の顆粒として、粒子形状で得ることができる。
【0048】
[0051] 様々なキトサンを、開示された再水和可能なゲル中および開示されたスポンジ中で使用することができる。例示的な非修飾キトサンおよびそれらの塩(クエン酸塩、硝酸塩、乳酸塩、リン酸塩、塩化物塩、およびグルタミン酸塩を含む)を、KitoZyme S.A.、Fluka Chemie AG、FMC BioPolymer ASのNovaMatrixユニットおよびSigma-Aldrich Coを含む様々な商業的供給源から得ることができる。キトサンは、加水分解により窒素原子上のアセチル基を除去するためのキチン(ポリ-N-アセチル-D-グルコサミン)の脱アセチル化により、合成することもできる。得られたポリマーは、複数の繰り返しユニット(例えば、約30〜約3000の繰り返しユニット、約60〜約600の繰り返しユニット、または選択された最終用途のための所望され得るその他の量)を有し、そのいくつかまたは全ては脱アセチル化アミノ基を含有し(例えば、全繰り返しユニットの約30〜約100%または約60〜約95%)、残りの繰り返しユニットは(もし存在する場合には)アセチル化アミノ基を含有する。ポリマーはカチオン性であり、そしてグルコサミンモノマーから構成されるものと考えることができる。キトサンは、様々な数平均分子量(例えば、約5〜約2000 kDa、約10〜約500 kDa、または約10〜約100 kDa)を有してもよい。キトサンは、例えば、約50 kDa未満の数平均分子量を有する超低分子量材料、約50〜約200 kDaの数平均分子量を有する低分子量材料、約200〜約500 kDaの数平均分子量を有する中間分子量材料、または約500 kDaを越える数平均分子量を有する高分子量材料であってもよい。キトサン誘導体、例えば、1またはそれ以上のヒドロキシル基またはアミノ基が誘導体の可溶性または粘膜接着特性を変化させることを目的として修飾された誘導体、も使用することができる。例示的な誘導体には、チオール化キトサン、およびアセチル化キトサン、アルキル化キトサンまたはスルホン酸化キトサン(例えば、O-アルキルエーテル、O-アシルエステル、カチオン化トリメチルキトサンおよびポリエチレングリコールで修飾されたキトサン)などの非チオール化キトサン誘導体が含まれる。キトサン誘導体は、様々な供給源から得ることができる。例えば、チオール化キトサンを、ThioMatrix Forschungs Beratungs GmbHおよびMucobiomer Biotechnologische Forschungs-und Entwicklungs GmbHから得ることができるか、または例えば、公開PCT出願No. WO 03/020771 A1に記載される様に、そしてRoldo et al., Mucoadhesive thiolated chitosans as platforms for oral controlled drug delivery: synthesis and in vitro evaluation, European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics, 57, 115-121 (2004)、Krauland et al., Viscoelastic Properties of a New in situ Gelling Thiolated Chitosan Conjugate, Drug Development And Industrial Pharmacy, 31, 885-893 (2005)、Bernkop-Schnurch, Thiomers: A new generation of mucoadhesive polymers, Advanced Drug Delivery Reviews, 57, 1569-1582 (2005)、およびBernkop-Schnurch et al., Thiomers: Preparation and in vitro evaluation of a mucoadhesive nanoparticulate drug delivery system, International journal of Pharmaceutics, 317, 76-81 (2006)に記載される様に、キトサンと適切なチオール化反応物質とを反応させることにより調製することができる。キトサンは、望ましくは、粒子形状、例えば、平均粒子径が約1 mm未満、約100μm未満、約1〜約80μm、または1μm未満である自由流動性の顆粒として、得られる。
【0049】
[0052] その他の多糖(例えば、寒天、アルギネート、カラギーナン、キチン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、ガラクトマンナン、グリコーゲン、ヒアルロン酸、でんぷん)についての供給源およびタイプを、当業者は、セルロースおよびキトサンについて上記で得られるものと同様の選択特性に基づいて、選択することができる。混合物中に混合する場合、各多糖の量は、特性の所望の組合せを実現するために大幅に変動させてもよい。例えば、ブレンド中の2種の多糖の比を変化させることにより、ブレンドの生物分解性または生体吸収性および滞留時間を変化させることができる。2種の多糖の混合物は、例えば、約99〜約1%の第1の多糖と約1〜約99%の第2の多糖、または約80〜約20%の第1の多糖と約20〜約80%の第2の多糖、または約60〜約40%の第1の多糖と約40〜約60%の第2の多糖、を含有することができる。混合物中の多糖の種類および量の適切な選択にもかかわらず、調節可能な特性を有する再水和可能なゲルおよびスポンジを、得ることができる。例えば、CMCとキトサンとのブレンドは、キトサンによる良好な静菌性性能と、CMCによる制御的で持続的でそして調節可能な分解速度を有していてもよく、一方単独で使用されるキトサンは、もともと悪い機械的特性および再吸収特性を有するゲルまたはスポンジを形成する可能性があり、そして単独で使用されるCMCは、殺菌特性をもたないゲルまたはスポンジを形成する可能性がある。
【0050】
[0053] 開示された再水和可能なゲル組成物およびスポンジは、実質的にコラーゲン-不含である。望ましくは、再水和可能なゲル組成物およびスポンジは、実質的にコラーゲン不含であり(例えば、コラーゲンを全く含有しない)、それによりヒトにおいて制限なしに世界中で販売可能になる。
【0051】
[0054] 開示された再水和可能なゲル組成物およびスポンジは、場合により、パッケージングされそして最終消費者に対して販売される前に、架橋される。架橋は、好ましくは、デヒドロサーマル的な架橋プロセスを使用して行われる。開示された再水和可能なゲルについて、好ましくはこれが、自由流動性の再水和可能な多糖粒子の塊をデヒドロサーマル的に架橋して、自由流動性の再水和可能な架橋された多糖粒子を形成することにより、行われる。言い換えると、粒子は、好ましくは、自由流動性でありながらそしてその後の迅速な溶解および再水和を可能にしながら、それ自体が個々に架橋されている。開示されたスポンジについて、架橋は、好ましくは、適切な鋳型に所望の多糖の溶液を入れ、そして溶液を凍結乾燥して、所望の圧縮されていないスポンジ形状に対応する形状を有する多孔性の固体を形成することにより作製された、形を整えた多孔性物品を、デヒドロサーマル的に架橋することにより行われる。言い換えると、スポンジは、好ましくは、形を整えられそして架橋する前に多孔性にされる。
【0052】
[0055] デヒドロサーマル架橋は、実質的に、個体状態の架橋プロセスであり、この場合、材料を熱および減圧の一方または両方に曝露して、初期脱水を生じさせ、その後追加水の喪失および分子間縮合プロセスまたは分子内縮合プロセスを介した架橋結合の形成を生じさせる。外部架橋剤を追加することは必要なく、そして開示された粒子の場合、そのような架橋剤の存在は、それらの自由流動性の性質をそのままにすることを困難にする可能性がある。デヒドロサーマル架橋は、望ましくは、架橋されるべき生成物を約1%未満の水分含量に対して水和すること、そして十分な追加的な加熱または減圧を使用して所望の架橋密度を達成すること、が関連する。例えば、減圧の非存在下にて、約80℃より高い温度、約90℃より高い温度、約100℃より高い温度または約120℃より高い温度を使用することができ、より高い温度が一般的にはより迅速な反応速度をもたらす。多糖は、望ましくは、褐色化を生じるのに十分なほどの程度には加熱せず、そして従って160℃未満の温度または150℃未満の温度が好ましい。かなり長い加熱時間を取る場合、例えば、140〜150℃で約40時間+ウォームアップおよびクールダウンのために全部で約20時間のあいだ、周囲圧力であることが必要である可能性がある。減圧を使用する場合、より低い温度を使用することができ、そして最大でも約1 mm Hgの圧力、および好ましくは最大でも約10
-3 mm Hgが好ましい。このように、温度が高くなればなるほど、必要とされる減圧または所定の架橋密度に達するために必要な加熱時間は低くなり、そして逆も成り立つ。したがって、少なくとも約10時間の時間、少なくとも約20時間の時間、少なくとも約30時間の時間または約40〜約60時間の時間(ウォームアップおよびクールダウンのために必要とされる時間を計測せず)を使用することができるが、正確な加熱時間または加熱時間の範囲を特定することは困難である。多くの事例において、例えば、適切な架橋の程度が得られたかどうかを評価するための、実施例において示されたゲル保持時間試験を使用して、加熱時間、温度および圧力を経験的に決定することで十分である。架橋されていないサンプルについて、ゲル保持時間は、例えば、1日以下であってもよく、一方適切な程度のデヒドロサーマル的な架橋を使用することにより、ゲル保持時間は、例えば、少なくとも2日、そして好ましくは約3〜約7日にまで延長することができる。架橋されていないサンプルは、デヒドロサーマル的に架橋されたその対応物と比較して、再水和するまでの時間がより長く、より多くの水を吸収し、またはより粘度の高いゲルまたはペーストを形成する、という傾向が見られる可能性がある。粉末形状に粉砕された従来法で架橋された材料と比較して、デヒドロサーマル的に架橋された粒子は、粉砕されていなくてもよく、縮合反応(例えば、水の喪失を引き起こす脱水反応、または塩化水素、メタノールまたは酢酸などの別の低分子の喪失を引き起こす反応)により架橋することができるが、その他の架橋反応(例えば、付加ポリマー化(例えば、ビニル基の付加)が関連する反応、イオン反応、またはスルフィド基またはアミン基が関連する反応)によっては架橋することができない。粉末形状に粉砕された従来法で架橋された材料と比較して、デヒドロサーマル的に架橋された粒子は、多分散性指数がより狭く、数平均分子量がより低く、さらなる架橋を受ける能力を有し、製造コストがより低く、そして製造のための必要資本がより低くてもよい。
【0053】
[0056] 2種またはそれ以上の多糖を使用して、開示された再水和可能なゲルを作製する場合、粒子をブレンドする前に、デヒドロサーマル的な架橋プロセスを1またはそれ以上の多糖に対して行うことができる。このことにより、各多糖成分についての架橋時間、温度、または減圧を含む特性を変化させ、その後個々のブレンド成分に対するデヒドロサーマル的な(1またはそれ以上の)架橋反応が完了した後に架橋された成分(または所望の場合には架橋されていない成分)をブレンドすることにより、ゲル化の挙動、ゲル化時間、そして埋め込み後の分解時間などの特性を、カスタマイズすることが可能になる。所望される場合、得られたブレンドを、追加的なデヒドロサーマル的な架橋反応に供することができる。製造部署において混合物を形成することと比較して通常は不便なことではあるものの、粒子は、別々に保存され、そして最終消費者により混合されてもよい。
【0054】
[0057] 開示されたスポンジについてのデヒドロサーマル的な架橋条件は、多糖粒子について使用することができる条件と同様である。2種またはそれ以上の多糖を使用して開示されたスポンジを作製する場合、多糖の混合物を溶液中で形成し、凍結乾燥して、そしてデヒドロサーマル的に架橋することができる。別のアプローチとして、そのような混合物中の1種またはそれ以上の多糖は、デヒドロサーマル的に架橋されてもよく、そしてその混合物中の残りの多糖(1または複数)はデヒドロサーマル的に架橋されたポリマー中に吸収(imbibed)されていてもよく、そして得られた膨張した物品は、凍結乾燥してスポンジを形成することができる。これらのそしてその他の関連するアプローチは、様々な程度の特性のカスタマイズを可能にすることができる。
【0055】
[0058] 開示された再水和可能なゲル組成物およびスポンジは、典型的には滅菌に供され、そして最終消費者への出荷前に適切なシール化パッケージング(例えば、シリンジ、バイアル、または適切な材料からなるバッグ)中におかれる。追加的な特性カスタマイズを、γ線照射処理または電子線処理(E-Beam)等の滅菌手順を使用して制御された鎖切断を生じさせることにより、行うことができる。同日に出願された同時係属中PCT出願公開No.WO2009/132229 A2(Attorney Docket Nos. P0035142.00および151-P-35142WO01)に記載される様に、低温イオン化放射線滅菌(例えば、低温E-Beam滅菌)を使用して、鎖切断の程度を制限することができる。
【0056】
[0059] 開示された再水和可能なゲル組成物およびスポンジを、治療部位への設置または挿入の前に再水和することができ、または乾燥状態のまま設置してその後in situで再水和することができる(例えば、外部から供給される再水和用の液体を追加することを通じて、内在性の液体を取り込むことにより、またはその両方により)。スポンジを再水和することは、通常、比較的容易なことであり、そしてスポンジを水またはいずれかのその他の所望の有効成分を含有する水溶液を用いて浸漬するかまたは飽和させることにより行うことができる。例えば、通常の塩類溶液は、好ましくそして容易に利用可能な再水和溶液であり、そして所望の場合にはその他の材料(例えばリン酸緩衝塩類溶液(PBS))を使用することができる。上述した様に、再水和可能なゲル粒子を再水和することは、いくつかの乾燥粉末化材料が水と混合された場合に凝集物を形成する傾向があるため、さらなる困難性を提示する可能性がある。しかしながら、凝集物の形成は、再水和可能なゲル粒子を生体適合性の水-混和性極性分散剤中に分散することにより、その後分散物を十分な水性粒子溶媒(aqueous particle solvent)(すなわち、粒子用の水-ベースの溶媒)と混合して粒子を粘着性ハイドロゲルへと変換することにより、回避することができる。この様に、分散剤は、粒子用には十分に弱い(poor)溶媒であり、そのため粒子と分散剤との混合物は、真の溶液を形成しない。そのような分散の場合、粒子は、望ましくは、十分に小さく、そのため、例えば、粒子と分散剤とを一緒に攪拌することによりそれらを攪拌した後、分散は安定でありまたは準安定である(例えば、コロイド分散または適度に持続性の懸濁物)。理論に縛られることなく、水性粒子溶媒(aqueous particle solvent)の添加は、それぞれの懸濁された粒子の表面で、周囲の分散剤の水性粒子溶媒(aqueous particle solvent)層への溶解を介して、再水和をほぼ同時的に生じさせると考えられており、それにより水和されなかった多糖の可視的な凝集物を形成することなく粘着性ハイドロゲルの形成を可能にする。このように、乾燥粉末にされた多糖が通常はそのようにはならないにもかかわらず、分散された多糖は、水または水溶液と組み合わされて、凝集物-不含のハイドロゲルを形成することができる。多数の事例において、2本のシリンジのあいだで通過させること、穏やかに攪拌し、またはその他の単純な混合技術を使用して、そして機械的なスターラーを使用する必要なく、開示された方法を使用して、満足のいく凝集物-不含のゲルを調製することができる。開示された混合方法は、粉末多糖を水または酸性化水とともに単純に混合したのでは得ることができなかった、非常に濃縮されたハイドロゲルの形成を可能にすることができる。多糖濃度は、典型的には、選択された分子量に依存し、そして再水和されたゲルの例えば、約1〜約20%、約1〜約10%または約1〜約5%であってもよい。ゲルは、望ましくは、再水和の後30分未満、20分未満、10分未満、5分未満、1分未満、または再水和の後本質的にすぐに、形成することができる。すぐに再水和しない多糖について、粉末を飽和させて、そして粘度が上がって小さな穴を介しては多糖をスプレーしたりまたは分散したりできなくなる前に、それを注入することが望ましいであろう。
【0057】
[0060] 分散剤および水性粒子溶媒(aqueous particle solvent)の選択は、選択された多糖に依存する可能性がある。純水における可溶性が相対的に低いが、水を酸性化すると可溶性になるキトサンなどの多糖について、脱イオン水を分散剤として使用することができ、そして酸性化水を水性粒子溶媒(aqueous particle solvent)として使用することができる。分散剤と水性溶媒のその他の組合せも使用することができる。例えば、エタノール、イソプロパノールまたはアセトンを、多数の多糖についての分散剤として使用することができ(キトサンおよびキトサンを含有するブレンドを含む)、そして脱イオン水、通常の塩類溶液またはPBSを水性粒子溶媒(aqueous particle solvent)として使用することができる。
【0058】
[0061] 上述した開示された再水和可能なゲル粒子は、架橋されたものであっても架橋されていないものであってもよく、そして架橋されている場合には、架橋は、デヒドロサーマル的な架橋または別個の架橋剤(例えば、ゲニピン、酸化多糖またはグルタルアルデヒド)を使用して行われる架橋であってもよい。。別個の架橋剤を使用して架橋される場合、得られたポリマーは、場合によっては凍結乾燥されてもよく、そして必要な場合には、細かく砕いて自由流動性の粒子を提供することができる。
【0059】
[0062] 開示された再水和可能なゲル組成物およびスポンジには、場合により、再水和の前または後の様々なその他の有効成分が含まれていてもよい。例示的なその他の有効成分には、その他の溶媒、酸、塩基、緩衝化剤、抗菌剤、治療剤、およびその他のアジュバントが含まれる。酸、塩基または緩衝化剤は、例えば、ヒト組織と接触するために適切なpH、例えば、5よりも高いpH、ほぼ中性のpH、または8.5未満のpH、でゲルを維持することができる。例示的な緩衝化剤には、バルビタールナトリウム(barbitone sodium)、グリシンアミド、グリシン、塩化カリウム、リン酸カリウム、炭酸水素カリウムフタレート、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、およびそれらの共役酸が含まれる。
【0060】
[0063] 開示された再水和可能なゲル組成物およびスポンジは、望ましくは、別個の抗菌剤を追加する必要なしに、もともと抗菌性である。所望の場合、別個の抗菌剤を使用することができる。そのような抗菌剤の有用なリストは、例えば、上述したU.S.特許出願公開No. US 2007/0264310 A1中に見出すことができる。
【0061】
[0064] 開示された再水和可能なゲル組成物およびスポンジ中で使用することができる例示的な治療剤には、鎮痛薬、抗-コリン作動薬、抗-真菌剤、抗ヒスタミン剤、ステロイド性または非ステロイド性抗-炎症剤、抗-寄生虫剤、抗ウイルス剤、生物静力学的組成物、化学療法剤/抗腫瘍剤、サイトカイン、充血除去剤、止血剤(例えば、トロンビン)、免疫抑制剤、粘液溶解剤、核酸、ペプチド、タンパク質、ステロイド、血管収縮剤、ビタミン、これらの組合せ、そして当業者に知られているその他の治療用材料を含む、目的とする治療部位での使用のために適したいずれかの材料が含まれる。そのような治療剤の有用なリストは、例えば、上述のU.S.特許出願公開No. US 2007/0264310 A1中に見出すことができる。
【0062】
[0065] 開示された再水和可能なゲル組成物およびスポンジ中に含ませることができるその他のアジュバントには、染料、色素、またはその他の着色剤(例えば、FD & C Red No. 3、FD & C Red No. 20、FD & C Yellow No. 6、FD & C Blue No.2、D & C Green No. 5、D & C Orange No. 4、D & C Red No. 8、キャラメル、二酸化チタン、果物または野菜の着色剤(ビート粉末、またはβ-カロテン、ターメリック、パプリカ)、および当業者に知られているその他の材料);指示薬;アニス油、サクラ、桂皮油、柑橘油(例えば、レモン油、ライム油またはオレンジ油)、ココア、ユーカリ、ハーブ芳香剤(例えば、丁子油、セージ油またはカッシア油)、ラクトース、マルトース、メントール、ペパーミント油、サッカリン、シクラミン酸ナトリウム、スペアミント油、ソルビトール、スクロース、バニリン、冬緑油、キシリトール、およびこれらの混合物を含む(しかしこれらには限定されない)香味剤または甘味剤;抗酸化剤;消泡剤;および増粘剤およびチキソトロープ(thixotropes)を含むレオロジー修正剤;が含まれる。開示された再水和可能なゲル組成物およびスポンジは、望ましくは、患者の組織または構造(例えば、鼻腔または副鼻腔中の粘膜組織)に潜在的に悪影響を与える可能性がある成分を含有しない。
【0063】
[0066] 組織から水を除去すること、例えば、ポリープまたは浮腫性組織から液体を除去すること、が好ましい事例において、高浸透圧剤を、開示された再水和可能なゲル組成物およびスポンジ中で使用することができる。例示的な高浸透圧剤には、フロセミド、塩化ナトリウムゲルおよび組織から水を引き出すその他の塩調製物または粘膜層の浸透圧容量を直接的または間接的に変化させるその他の物質が含まれる。治療剤の持続性放出または遅延放出が望ましい場合、離型剤修正剤が含まれていてもよい。
【0064】
[0067] 望ましくは、開示された再水和可能なゲル組成物およびスポンジを、細菌性バイオフィルムを崩壊しそしてその回復を阻止する複数工程の処置手順の一部として使用することができる。例えば、洗浄/崩壊、殺傷、通気、保護/コーティング、そして回復(Healing)と幅広く分類することができる一連の工程を行うことができる。
図1および
図2に関連して検討する様に、洗浄/崩壊工程を、溶媒システムを投与することにより行うことができる。殺傷工程を、適切な抗菌剤を治療部位に適用することにより、行うことができる。このことは、例えば、別個に適用される組成物として溶媒システム中において、または溶媒システム中そして別個に適用される組成物中の両方において、抗菌剤を含ませることにより、達成することができる。抗菌剤を、手術後に適用しまたは投与することもできる。通気工程を、開口している閉塞された通路または部分的に閉塞された通路(例えば、鼻適用のための洞または洞小孔)により治療される組織に対して空気通路を提供しまたは空気通路を改良することにより、行うことができる。このことは、例えば、閉塞組織構造を外科的に除去することにより、またはそのような構造を手作業により排除することにより、達成することができる。保護/コーティング工程を、このように処理された組織の少なくとも部分を上述した開示されたゲル組成物でコーティングすることにより、またはこのように処理された組織の少なくとも部分を開示されたスポンジで被覆することにより、行うことができる。回復工程を、洗浄され、保護され、そしてシールされた組織表面を、例えば、炎症性応答の調節、食作用、粘膜リモデリング、繊毛再生、または正常な機能の完全なまたは部分的な回復、などの1またはそれ以上の治癒メカニズムを介して、正常の状態へと回復させることにより、行うことができる。複数工程の治療計画には、洗浄工程が含まれてもよくまたはその後に洗浄工程を行ってもよく、ここでは、ゲル組成物またはスポンジが、所望の期間、例えば、1日以上、3日以上、または約4〜7日内に、そして望ましくは大きな固形の塊を取り除くことなく、治療部位から消失する様に十分に生物分解性または生体吸収性である。開示された方法は、有利には、外科手術を必要とすることなく、例えば、通常の吸引/吸着技術を介して随意的な溶媒システムを適用しそして除去することにより、または罹患組織を単純に洗い流してその後に開示されたゲル組成物またはスポンジを適用することにより、達成することができる。比較されうる一連の工程は、中耳または内耳の部分における複数工程の治療計画において、行うことができる。そのような計画のさらなる詳細は、U.S.特許出願公開No. US 2007/0264310 A1中に見出すことができる。
【0065】
[0068] 本発明は、さらに、以下の限定的ではない実施例においてさらに説明される。
【実施例】
【0066】
実施例1 デヒドロサーマル的に架橋されたCMC
[0069] 粉末化カルボキシメチルセルロースナトリウム(Emerging Technologies, Inc.より入手したCMC 52MSC)を、1%二酸化チタンと混合した後、140℃にて10時間以上暖め、150〜160℃にて40時間加熱し、そして10時間かけて室温に冷却することにより、デヒドロサーマル的に架橋した。平均粒子径が約40μmである自由流動性の白色粉末が得られた。粉末は、ポリウレタンポーチ中に1.5グラム分でパッケージングされ、そして30 kGyでE-ビーム滅菌された。
【0067】
実施例2 シリンジ再水和および調製
[0070] 0.7 g分の実施例1のCMC粉末を、3 mLの脱イオン水と、10 mL LUER-LOK
TMシリンジ(Becton, Dickinson and Co.から入手)中で混合した。シリンジを2本目のそのような10 mLシリンジとLUER
TMコネクター(Becton, Dickinson and Co.より入手)を用いて接続し、そして粉末を再水和することを目的として、シリンジプランジャーを交互に押し下げた。多数の凝集物を含有するあまり十分に混合されていない塊が得られたが、凝集物がシリンジ間の通路を塞いだ。2回目の実行において、0.7 g分の実施例1のCMC粉末を、0.5 mLのエタノールと混合し、そして震盪させ、適切な安定な懸濁物が得られた。2本目のシリンジ中の3 mL分の脱イオン水を懸濁物に対して添加し、そして次いでシリンジプランジャーを交互に押し下げて有効成分を混合し、透明で均質なハイドロゲルを徐々に形成したが、それは完全に可視的な水和されていないCMC粒子を完全に含まないものであった。ハイドロゲルを、2.7 mm内径、10 cm長のカニューレを通じて標的表面上に容易に注入することができ、注目に値する凝集物がない、厚く非常に粘性の高い均一なゲルが得られた。ゲルは、いくらか、アモルファス-形状のスポンジの様に見えた。
【0068】
実施例3 接着
[0071] 実施例2のゲルのサンプルを、MTS引張試験機(MTS Systems Corp.)中のコラーゲン-コートしたピンの間に設置し、そして25.4 mm/minの分離速度で評価して、ゲル-コラーゲン結合に関して張力接着強度を決定した。約55 kPaの値を得たが、一方架橋されていないCMC粉末を用いて作製されたゲルを使用した場合にはわずか約35 kPaが得られた。
【0069】
実施例4 ゲル保持時間
[0072] 1.5 g分の実施例1の粉末を再水和して、実施例2の方法を用いて、凝集物-不含のゲルを形成した。ゲルを、200 mLのPBS中に沈め、次いで150μmの篩い上に注ぎ、排水させそして秤量した。ゲルを、回収したPBS溶液に戻し、一晩保管し、そして篩いと再秤量の手順をゲルが消失するまで繰り返した。結果として3日間の試験期間を、ゲル保持時間として記録した。デヒドロサーマル的な架橋を行うことなく実施例1のCMC粉末から作製したゲルは、1日未満のゲル保持時間を有した。
【0070】
実施例5 キトサン懸濁物およびゲル
[0073] カニの甲羅から得られた高分子量粉末化キトサン(Sigma-Aldrich Co.から入手したBIOCHEMICA
TM高粘度キトサン)を、10、25および50 g/Lの追加レベルで、脱イオン水中に懸濁した。各懸濁物の攪拌された50 mL分を、1M HClを用いて滴定した。10、25および50 g/Lの懸濁物を曲線A、曲線Bおよび曲線Cとしてそれぞれ同定する
図5中に示されるように、pH値は、酸の添加とともに徐々に低下した。pH値は、約pH 6および1 mL未満の酸添加での変曲点を通過したが、これは注目に値するゲル形成の開始に対応した。高粘度ゲルが、およそpH 4.5でそして曲線A、曲線B、および曲線Cのそれぞれについて約2、3、または5 mLの酸付加で、pH値が別の変曲点を通過した時点までに得られた。さらに低いpH値で、キトサンは、完全に水和され、そして添加酸はさらに水を酸性化し、そしてゲルを希釈した。
【0071】
[0074] 別の実行において、高分子量キトサンの1%溶液を、キトサン粉末を1%酢酸を含有する脱イオン水に対して添加することにより、形成した。この溶液は、37℃にてBROOKFIELD
TM DV-II+ ProコーンとそしてCP-52コーンスピンドルを備えたプレート粘度計とにより評価した場合に、453 cPの粘度を有していた。同様に調製した低分子量キトサン(Sigma-Aldrich Co.から入手したBIOCHEMICA低粘度キトサン)の1%溶液は、185 cPの粘度を有していた。
【0072】
実施例6 デヒドロサーマル的に架橋されたキトサン接着
[0075] 実施例1の方法を使用して、低分子量および高分子量の粉末化キトサンを、90℃にて10時間、または120℃にて20時間、デヒドロサーマル的に架橋し、様々な量の1M HClを添加して、ゲルを形成し、そして実施例3の方法を使用して接着について評価した。
図6は、90℃で架橋されたキトサンについての接着結果を示し、そして
図7は、120℃で架橋されたキトサンについての接着結果を示す。
【0073】
[0076] 別の実行において、中間分子量キトサンを、実施例1の方法を使用して120℃にて40時間デヒドロサーマル的に架橋し、そして実施例2の方法を使用して、接着について評価した。約65 kPaの値が得られたが、一方で架橋されていないCMC粉末を用いて作製されたゲルを使用した場合にはわずか約41 kPaが得られた。
【0074】
実施例7 多糖ブレンド
[0077] 一連の実行において、粉末化されたキトサン(超低分子量の乳酸キトサンオリゴ糖、またはBIOCHEMICA
TM低粘度または中間粘度のカニ甲羅キトサン、全てSigma-Aldrich Co.から入手)を、単独で、キトサンのブレンド中で、または実施例1の粉末化CMCとのブレンド中で、使用し、そして様々な量のHClまたは酢酸を用いて酸性化した水と混合した。得られた混合物を、粉末化スターラーを使用して5分間攪拌した。そのようにすることにより、以下に記載する抗微生物試験を行うことができるが、しかし外科手術の前に行うことが必要とされる場合には、それほど便利とは言えない。攪拌された溶液を評価して、得られたゲルのE. coli、S. aureus、P. aeruginosa、およびいくつかの事例ではS. pneumoniaeに対する抗微生物活性を決定した。抗微生物活性評価は、阻害プレート手順の改良ゾーンを使用したが、この場合に、少量のゲルを寒天プレートを横切って筋状にし、これに所望の微生物で新たに筋をつけた。抗微生物剤を浸した紙ディスクを寒天表面に置き、そして抗微生物剤が寒天を通じて外見上は拡散するという、阻害試験の従来からのゾーンとは異なり、ゲルの粘性は、そのような拡散を阻止した。この様に、結果は、実際は幾分ブール(Boolean)なものであったが、主として阻害が生じたかどうかについての指標を提供した。結果を、以下の表1に示す。
【0075】
【表1-1】
【0076】
【表1-2】
【0077】
[0078] 表1の結果は、キトサン、およびキトサンと多糖カルボキシメチルセルロースとのブレンドを、再水和して、固有の抗微生物特性を有するゲル層を提供することができることを示す。
【0078】
実施例8
[0079] 自由流動性の架橋された粉末を、乾燥粉末化多糖ポリマー(カルボキシメチルキトサンなど)を水中に溶解して、約5 wt.%のポリマーを含有する粘度の高い溶液を作製することができる。10 wt.%のジアルデヒドでんぷんまたは0.1 wt.%のグルタルアルデヒドを含有する架橋剤溶液を、各溶液を10 mL LUER-LOK
TMシリンジ(Becton, Dickinson and Co.より入手)中に入れ、シリンジをLUER
TMコネクター(Becton, Dickinson and Co.より入手)を用いて互いに接続し、そしてシリンジプランジャーを交互に押し下げて2つのシリンジ間で数回液体を交換することにより、ポリマー溶液と迅速に混合することができる。架橋が生じる短い停留(dwell)期間の後、粘着性のゲルが得られるはずである。ゲルを、凍結し、そして凍結したゲルを凍結乾燥して、その後凍結乾燥生成物をすりつぶすことにより、粒子に変換することができる。
【0079】
実施例9
[0080] 自由流動性の架橋された粉末を、非溶媒液体架橋剤または非溶媒架橋溶液中に乾燥粉末化多糖ポリマーを浸漬することにより、調製することができる。実施例8において使用される乾燥粉末化カルボキシメチルキトサン開始材料を、エチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、Sigma-Aldrichより入手するE27203エチレングリコールジグリシジルエーテル)中に、架橋を生じさせることができる十分な時間の間、浸漬することができる。自由流動性で架橋された粒子の得られた塊を、メタノールで洗浄して、残留架橋剤を除去し、そして穏やかに加熱して乾燥させることができる。選択された多糖に依存して、様々な架橋剤を使用することができる。例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテルを、ヘキサメチレンジグリシジルエーテルまたはヒドロキシル基またはアミン基に対して反応性のその他のグリシジル架橋剤と置換することができる。多糖が一次(primary)アミン基を含有する場合、適切に反応性である架橋剤(ジアルデヒドでんぷん、酸化メチルセルロース、またはグルタルアルデヒドなど)を使用することができる。
【0080】
実施例10
[0081] 等量のPBS中2.5 wt.%溶液のカルボキシメチルキトサンおよび10 wt.%ジアルデヒドでんぷんを、実施例8に記載される10 mLシリンジのように2本の3 mLシリンジを使用して迅速に混合した。得られた粘着性のハイドロゲルを、シリンジの背面から押し出し、そしてその形状を維持する塊を提供した。
【0081】
実施例11
[0082] 等量のPBS中5 wt.%カルボキシメチルキトサン溶液を、凍結の場合もそして室温の場合も両方とも、E-ビーム照射を通じて架橋させた。得られたハイドロゲルを凍結乾燥して、容易に粉末化可能なスポンジにした。PBS中においた場合に、このスポンジは、3〜7日維持された。
【0082】
[0083] 好ましい態様を記載することを目的として、本明細書中に具体的な態様を説明しそして記載したが、当業者には、同一の目的を達成すると予想された幅広い様々な代替的なまたは均等な実施が、本発明の概念から離れることなく示されそして記載された特定の態様と置換しうるものであることを理解するであろう。この用途は、本明細書中で検討された好ましい態様のいずれの適合またはバリエーションもカバーする様に意図される。したがって、本発明は、請求の範囲およびその均等範囲によってのみ限定されることが明確に意図される。