(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
バッテリ(2)に結合された自動車のパワートレインに対する電力を充電及び/又は生成するための可逆充電装置(1)であって、単相又は三相電力供給ネットワークか、或いは電力供給先である負荷装置(3)に直接接続される第1の整流器段(6)と、前記バッテリ(2)に接続される第2のインバータ段(7)と、前記第1の整流器段(6)と前記第2のインバータ段(7)の間を流れる平均電流を調整する手段とを備えており、前記電力供給ネットワークと前記バッテリ(2)の間の電力の移動、又は負荷装置への供給を制御可能な制御手段(8)を有し、
前記第1の整流器段(6)が、第1のオン状態方向の電流を整流することができる第1の被制御整流手段と、前記第1のオン状態方向と反対の第2のオン状態方向の電流を整流することができる第2の被制御整流手段とを有することを特徴とする可逆充電装置。
前記制御手段(8)が、前記電力供給ネットワークの電流設定値に応じて前記ネットワークで生成された電流を調整可能な電流調整手段(20)と、負荷装置(3)の端子における電圧を調整可能な電圧調整手段(30)とを有することを特徴とする、請求項1に記載の可逆充電装置。
前記第1の整流器段(6)がフリーホイール手段を有し、当該フリーホイール手段は、前記第1の整流器段(6)のすべてのトランジスタがオフ状態のときに、電流が前記第2のインバータ段(7)を流れることを可能にすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の可逆充電装置。
前記フリーホイール手段が、電流が一方向に流れることを可能にする第1のフリーホイール回路と、電流が前記第1のフリーホイール回路の前記方向とは反対の他の方向に流れることを可能にする第2のフリーホイール回路とを有することを特徴とする、請求項3に記載の可逆充電装置。
前記フリーホイール手段が、少なくとも1つのフリーホイール・ダイオード(13a)及び/又は少なくとも1つのフリーホイール・トランジスタ(13b)を有することを特徴とする、請求項3又は4に記載の可逆充電装置。
電気パワートレイン装置を備えた自動車に搭載されるように設計されている可逆充電装置(1)において、前記第2のインバータ段(7)が、前記自動車の前記電気パワートレイン装置からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の可逆充電装置。
前記自動車に組み込まれたフィルタリング手段(5)を有しており、このフィルタリング手段(5)が、前記バッテリ(2)の前記充電中に前記装置(1)によって吸収された前記電力供給ネットワークの電流をフィルタリング可能であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の可逆充電装置。
前記自動車に組み込まれた前記フィルタリング手段(5)が、前記装置(1)が電力供給ネットワークに接続されたときに、前記装置(1)内の回路を電流ピークから保護することが可能な保護手段(60)を有することを特徴とする、請求項7に記載の可逆充電装置。
【背景技術】
【0002】
本明細書の文脈における「可逆性」とは、同一の装置が、電力供給ネットワークからバッテリに充電する第1の機能と、バッテリから配電網又は負荷装置へと電力を発生する第2の機能を有する能力を意味する。
【0003】
電気自動車の主要な欠点の一つは、その利用可能性に関する。とりわけ、そのバッテリが放電されてしまうと、電気自動車は再充電時間中ずっと利用できないままであり、これは数時間にも及び得る。バッテリの再充電時間を短くするために、ネットワークから受け取る電流を増やして充電電力を増すことが知られている。この電流を単相ネットワークからではなく三相ネットワークから受け取ることも提案されており、電流が三相電力供給ネットワークから受け取られるときの方が充電電力は大きい。
【0004】
再充電可能な電気又はハイブリッド自動車が大きな再充電電力を有し、よって急速充電を許容する場合、電子再充電トポロジが可逆性なので、2つの動作機会が生じる。
【0005】
第1の機能は、電力分配ネットワークのオペレータの設定値に応じて電力供給ネットワークへとエネルギを返還することを可能とし、それによって十分な数の自動車が供給された場合、電力供給ネットワークの管理を最適化する機会をオペレータに提供する。
【0006】
第2の機能は、家庭内の電力網が故障した際に、自動車を代替電源として利用すること、或いは電力供給がない場所でこの電源を発電器として利用することを可能とする。
【0007】
特開2008−199780、特開2007−062642、特開平08−12612、米国特許5099186には、2つのインバータと、2つの装置と、DC/DCステップアップと、バッテリと連続バスの間の可逆性コンバータとを備える構成が記載されている。これらの構成は、単相ネットワークの場合のみ交換を可能とする。さらにインバータは、三相充電を有する電気自動車には適用できない。
【0008】
WO2004−009397には、リレーによる回路の再構成のみによって電力供給ネットワークに電力を送り返すことを可能にする電気自動車のバッテリの充電装置が記載されており、これは自動車に搭載不可能なフィルタリング・インダクタを最低限必要とする。さらに、この充電装置のバッテリの電圧は、電力供給ネットワークの電圧と適合しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の目的は、上述の欠点を解消することであり、とりわけ単相又は三相ネットワークから直接自動車のバッテリを充電し、かつ接触器を用いることなくそれを行い、そして負荷装置に電力供給、又はネットワークに電力返還することを可能とする組み込み式の可逆充電装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって本発明の主題は、第1の態様によれば、バッテリに結合された自動車の
パワートレイン用の充電及び/又は電力発生電子装置であって、電力供給ネットワーク或いは電力供給先である負荷装置に接続される第1の整流器段と、バッテリに接続される第2のインバータ段と、第1段と第2段の間を流れる平均電流を調整する手段とを備える。
【0011】
この装置は、電力供給ネットワークとバッテリの間の電力の移動、又は負荷装置への電力供給を制御可能な制御手段を有する。
【0012】
好ましくは、制御手段は、電力供給ネットワークの電流設定値に応じてネットワークの電力供給電流を調整可能な電流調整手段と、負荷装置の端子における電圧を調整可能な電圧調整手段を有する。
【0013】
さらに装置は、三相電力供給ネットワークや単相電力供給ネットワークなどの三相又は単相電気サービス、或いは負荷装置へと第1の整流器段を直接接続可能な接続手段を有することができる。
【0014】
整流器入力段を交流又は直流単相電源に接続することも可能である。
【0015】
有利には、第1の整流器段が、第1のオン状態方向の電流を整流可能な第1の被制御整流手段と、第1のオン状態方向と反対の第2のオン状態方向の電流を整流可能な第2の被制御整流手段とを有することができる。
【0016】
また第1段が、第1段の残りの要素がオフ状態のときに、電流が第2段を流れることを可能にするフリーホイール手段を有することができる。
【0017】
好ましくは、フリーホイール手段が、電流が一方向に流れることを可能にする第1のフリーホイール回路と、電流が第1の回路の方向と反対の他の方向に流れることを可能にする第2のフリーホイール回路とを有する。
【0018】
好ましくは、フリーホイール手段が、少なくとも1つのフリーホイール・ダイオード及び/又は少なくとも1つのフリーホイール・トランジスタを有する。
【0019】
フリーホイール・ダイオードは、入力段の一辺の短絡のために機能的に排除可能であれば、散逸損失を減少させる利点を有する。とりわけ、1つのダイオードにおける散逸は、直列の2つのダイオードと2つのトランジスタを電流が流れなければならないときよりもずっと少ない。これはまた、ドリフトや制御ロスの場合の動作の安全性にも利点を有する。とりわけこの場合、使用手順はすべてのトランジスタのオフ状態への命令に限られており、このとき固定子コイルの電流はこのダイオードを通って流れ続けることが可能である。
【0020】
フリーホイール・ダイオードのオン状態方向とは反対の方向に、フリーホイール・トランジスタを使用できる。この被制御フリーホイール・トランジスタは、電流がフリーホイール・ダイオードのオン状態方向と反対の方向に流れるときだけオン状態であり、第1段の他のトランジスタはオフの状態である。
【0021】
装置は少なくとも1つの電気
パワートレイン装置、すなわち少なくとも電気モータとインバータ段を備える装置を有する自動車に搭載されるべきものとすることができるため、第2のインバータ段は、有利には、自動車の
パワートレインのインバータ段によって形成可能である。
【0022】
このように、充電装置は自動車に組み込まれ、自動車に既に存在するインバータ段が用いられる限りは、追加のインバータ出力段の使用を必要としない。
【0023】
有利には、装置は、自動車に組み込まれたフィルタリング手段を有し、このフィルタリング手段が装置によって引き出された電力供給ネットワークの電流をフィルタリングすることができる。
【0024】
三相電力供給ネットワークから引き出された電流は、本質的に、入力コンデンサ及び電磁環境両立性(EMC)フィルタによってフィルタリング可能であり、よってこの電流はネットワークへの接続条件の高調波テンプレートを満足させる。
【0025】
さらに、電気自動車の固定子コイルのインダクタンスを、電力バッファ・フィルタとして用いることもできる。とりわけ充電電力が大きいとき、そうした誘導性及び/又は容量性フィルタの空間要求及び重量は、自動車に搭載するには大きすぎる。
【0026】
好ましくは、自動車に組み込まれたフィルタリング手段は、装置が電力供給ネットワークに接続されたときに回路を電流ピークから保護することができる保護手段を有する。
【0027】
保護手段は、電力供給ネットワークの各相向けにトライアック、又は逆並列配置の2つのサイリスタなどのトライアックと等価な配置を有することができる。
【0028】
他の態様によれば、バッテリに結合された自動車の
パワートレインの
電力負荷及び/又は発生方法が提案される。
【0029】
この方法では、ユーザが、電力供給ネットワークとバッテリの間の電力の移動、又は受動的負荷装置への電力供給を制御する。
【0030】
電力の移動が電力供給ネットワークとバッテリの間で制御されているとき、有利には、電力供給ネットワークの各相で生じた電流を、電力供給ネットワークの電圧の測定値に基づいて生成された電流設定値に基づいて調整することが可能である。
【0031】
ユーザが負荷装置への電力供給を制御しているとき、有利には、負荷装置の端子における電圧を、調整ループの助けにより調整することが可能である。
【0032】
有利には、第1段を三相電力供給ネットワーク又は単相電力供給ネットワーク又は負荷装置に直接接続することが可能である。
【0033】
言い換えれば、第1段は接触器を使わずに、三相又は単相電力供給ネットワークに接続される。したがって、一方のコンフィギュレーションから他方への切り替えに接触器を用いる必要なしに、充電器としての動作、及び
パワートレインとしての動作を保証することが可能である。
【0034】
さらに、第1段を、直流単相電力供給ネットワークに直接接続することが可能である。
【0035】
有利には、フリーホイール手段の第2段の電流がフリーホイール相で流れることができる。
【0036】
よって、固定子コイルによって伝達された電流は、フリーホイール・ダイオード内を流れ続けることができる。
【0037】
好ましくは、電力供給ネットワークの電流は、統合フィルタリング手段の助けによりフィルタリングされる。
【0038】
有利には、統合フィルタリング手段が、電力供給ネットワークへの接続による電流ピークから保護されている。
【0039】
本発明の他の利点及び特徴は、本発明による充電及び/又は電力発生装置の非限定的な一実施例の詳細な説明、及び添付の図面を検討することで明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、バッテリ2に結合された電気又はハイブリッド自動車の
パワートレインの充電及び/又は電力発生装置1を図式的に示す。装置はさらに電力供給ネットワーク又は負荷装置3に結合されている。
【0042】
装置1は組み込み式の装置で、すなわち自動車に搭載されている。この装置は、再充電モードでは推進に必要な電力を供給するためにバッテリを充電し、発電モードではバッテリによって供給される電流から負荷装置に電力供給するように設計されている。さらに注意すべきことに、装置は単相電力供給ネットワークと三相電力供給ネットワークとのいずれかからバッテリを充電するように設計されている。最後に、装置は、再充電モードでは、ネットワークの電力供給設定値に応じて電力供給ネットワークへと電力を返還するように設計されている。
【0043】
装置1は、充電装置1を電力供給ネットワーク又は負荷装置3に接続可能とするための接続手段4を有する。例えば、好適な接続手段は、SAE規格J1772に準拠した矢崎社製の市販の工業用コネクタ・アセンブリとできる。他の同様のプラグもまた好適である。装置はまた、装置1によって引き出された電源供給ネットワークの電流をフィルタリング可能とするフィルタリング手段5を有する。
【0044】
装置1はまた、フィルタリング手段5の出力に結合され、電力供給ネットワーク3から生じる交流電流の整流を可能とするか、又はバッテリ2に接続された第2のインバータ段7を介して電力供給ネットワーク3に伝達される電流の整流を可能とする第1の整流器段6を有する。第1段6及び第2段7は、独立したコントローラであり得る第1及び第2の制御手段8、9によってそれぞれ制御される。
【0045】
入力段6の第1の制御手段8は、入力段6の出力電流を測定するためのモジュール10から生じた信号を入力として受け取り、さらに再充電モードでは、第1の整流器段6から生じた平均電流の調整を制御することを可能とする。とりわけ、第1の整流器段6から生じた平均電流は、電力供給ネットワーク3によって供給される最大電流に基づいて、及び少なくとも第1の整流器段6によって整流された最大電圧とバッテリ2の電圧の間の比に等しい係数に応じて確立された電流値に等しくなるように制御される。
【0046】
図2は、バッテリ2に結合された電気又はハイブリッド自動車の
パワートレインの充電及び/又は電力発生装置1の一実施例を詳細に示す。
【0047】
図2に示す装置1は、利用可能な3つの相を有する。3つの相は、三相電力供給ネットワーク又は単相電力供給ネットワークに結合可能である。後者の場合、利用可能な2つの相が単相電力供給ネットワークの相と中性線に結合され、利用可能な3つ目の相は使用されない。3つの相はまた、三相又は単相モードで電力供給される負荷装置にも結合可能である。
【0048】
第1の整流器段6は、電流の流れの第1方向でオン状態のダイオード11aを有する第1の整流回路を有し、これらのダイオードはトランジスタ12aに直列結合されている。第1の整流回路は、並列結合された3つの同じ枝路を有する。枝路のそれぞれが、1つのダイオード11a、2つのトランジスタ12a、1つのダイオード11aを順に有する直列構成を持つ。各枝路はまた別個の相に結合され、結合は2つのトランジスタ12aの間で行われている。
【0049】
第1の整流回路は、電流の流れの第1方向でオン状態である少なくとも1つのフリーホイール・ダイオード13aに並列結合されている。
【0050】
さらに第1の整流器段6は、トランジスタ12bに直列結合された、第1方向と反対の電流の流れの第2方向でオン状態のダイオード11bを有する第2の整流回路を有する。第2の整流回路もまた、並列結合された3つの同じ枝路を有する。枝路のそれぞれが、1つのダイオード11b、2つのトランジスタ12b、1つのダイオード11bを順に有する直列構成を持つ。各枝路はまた別個の相に結合され、結合は2つのトランジスタ12bの間で行われている。
【0051】
この第2の整流回路は、第1の流れ方向と反対の電流の流れの第2方向でオン状態である少なくとも1つのフリーホイール・トランジスタ13bに並列結合されている。
【0052】
第1及び第2の整流回路は、6つの整流枝路と2つのフリーホイール枝路とを備える唯一の回路を作るように共に結合されている。
【0053】
第1の整流器段6の出力は、入力段6から生じた電流を測定するためのアンメータなどのモジュール10に、第1の整流器段6の制御を介してこの電流を調整する目的で結合されている。
【0054】
第2のインバータ段7は、3つの固定子コイル14を介して測定モジュール10の出力に結合されている。各固定子コイル14の入力は、測定モジュール10に結合されている。したがって、整流器入力段6から生じた電流は、第2のインバータ段7の回路の3つの枝路へと分割される。
【0055】
詳細には、第2のインバータ段7はさらに、並列結合された3つの枝路を備える回路を有する。各枝路は、それぞれ並列結合されたダイオード15とトランジスタ16とを備える2つの配列の直列結合を備える。同一の枝路の2つのダイオード16は、同じオン状態方向に取り付けられている。
【0056】
各コイル14は第2のインバータ段7の回路の枝路に結合されている。結合は直列結合されている2つの構成部分の間で行われている。
【0057】
第2のインバータ段7はさらに、バッテリ2に結合されている。
【0058】
再充電モードであるとき、すなわち装置1が電力供給ネットワークに接続されているとき、装置1の充電を最適化可能である。装置1の最適化は、第1の整流器段6の最小出力平均電流を最高値に放置せずに、バッテリ2の電圧に応じて調整することを備える。バッテリがネットワークから一定の電力供給で充電される間にもバッテリに入力される電流量が減少するので、第1の整流器段6の最小出力平均電流は低減可能であり、固定された所定の電流値だけ、バッテリ2に入力される電流の値より上に維持される。この所定の電流値は、第1の整流器段6の出力平均電流が常に、第1の整流器段6の平均出力電流信号にリップルなどの欠点があっても、バッテリに入力される電流より高いことを保証するように選ばれる。
【0059】
非制限的な代表的実施例では、装置1は32アンペアの電流を供給する400ボルト三相電力供給ネットワーク3に接続されている。バッテリ2の電流はおよそ70アンペアで、バッテリ電圧は300ボルトである。したがって制御手段8は、固定された所定値を20アンペアに設定する。よってバッテリ2の電流が70アンペアと測定されたとき、第1の制御手段8は、最小出力平均電流が90アンペアに等しく(すなわち、バッテリ2の70アンペアに20アンペアの固定された所定値を加算したものに等しく)なるように第1段6を制御する。
【0060】
これにより第1の整流器段6の効率は、低電流をスイッチするトランジスタ12のロスを減らすことで改善される。
【0061】
こうした条件の下では、充電装置が第1の整流器段6の出力、すなわちフリーホイール・ダイオード13aの端子で、バッテリ2の電圧よりも低い平均電圧を得る。
パワートレイン・インバータを備える第2のインバータ段7及び固定子コイル14はこのようにして制御することができる。
【0062】
具体的には、低平均電圧は、その間この端子での電圧が、ダイオード13aの接続点の電圧低下で上下するものの事実上ゼロとなるフリーホイール・ダイオード13aのフリーホイール相、すなわち導電相によるものである。
【0063】
こうして入力段の第1の制御手段8により、フリーホイール相によって第1の整流器段6の各トランジスタ12aを順次制御することができ、したがって、トランジスタ・スイッチング信号のデューティサイクルを調整することで、或いは調整ループを用いることで、或いは調整ループを使用し、かつ調整ループから到来する所定の値に従って電力供給ネットワーク相に電流を送るためにスイッチング信号のデューティサイクルを調整することで、整流器入力段6を直接制御することが可能である。この電力供給ネットワーク相電流は、可変デューティサイクルを有する高周波数パルス(ネットワーク周波数より最低でも10倍は高い)で分配され、電流設定値と共に変化する。ダイオード13Aは、すべてのトランジスタがオフ状態のときにフリーホイール・ダイオードとして作用し、よって整流器入力段6が突然固定子での電流の流れを止めてしまうことを防止する。
【0064】
例えば、フリーホイール・ダイオード13aの端子における電圧スペクトルを最適化し、固定子14の端子の電圧を可能な限り小さくし、よって整流器出力電流の電圧リップルを最小化することが可能である。次いでこの電圧は、電気自動車の固定子によって、さらにフィルタリングされる。
【0065】
スイッチングの数を最小とし、よって第1の整流器段6によって生じるロスを最小とすることも可能である。一方、この場合に生じる電圧は、例えば電力供給ネットワーク周波数の最大6倍の低周波数の高調波を含み、よってこれは固定子コイル14によってあまりフィルタリングされない。したがって、第1の整流器段6のロスの低減と、固定子コイル14で低周波数の高調波によって引き起こされる(主に熱による)ロスとの間に妥協点を探ることができる。
【0066】
第1段6の第1の制御手段8は、第1の整流器段6のトランジスタ12aの制御電極に印加さる電流パルスの循環比によって、三相電力供給ネットワーク3から引き出された電流を制御する。
【0067】
第2のインバータ段7は、電気自動車の
パワートレインに特有の要素を有する。言い換えれば、この実施例における
パワートレインのインバータ段は、装置1の第2段7を構成する。
【0068】
この場合、第2段の機能は、第1の整流器段6から生じた調整電流に基づいて、第1の整流器段6から生じた平均電流よりも常に小さい規定の充電電流を、バッテリに供給することである。
【0069】
バッテリを流れる電流の高調波スペクトルを制限するために、第2のインバータ段7の各枝路を、第1段6の制御手段8から独立可能な第2の制御手段9で制御することも可能である。第2のインバータ段7の回路の各枝路のパルスの位相は、例えば3分の1周期ずれている。
【0070】
第2のインバータ段7の回路の各枝路は、特有の調整ループを用いて、個別に、又は集合的に、すなわち各枝路の制御に同じ循環比を適用して駆動可能である。
【0071】
電流の流れの第2方向でオン状態であるダイオード11bと、トランジスタ12bと、フリーホイール・トランジスタ13bとを備える第2の整流回路は、充電器を可逆にすることができる。すなわち、装置1は電力発生モードでも使用可能である。発電モードでの動作は、フリーホイール・トランジスタ13bによって制御されるフリーホイール相を除けば、再充電モードでの機能と対称的である。
【0072】
電力発生モードでの第1段6の制御は、装置1の接続次第で異なる。具体的には、装置1が装置1によって電力供給先である負荷装置に接続されている場合、装置1が電力供給ネットワークに接続されて電力を電力供給ネットワークに返還する場合とは制御は異なる。
【0073】
こうした制御の違いを
図3、4を用いて説明する。
【0074】
図3は、装置1が電力供給ネットワークに接続されたときの、第1段6の電流調整用の制御手段20の一例を示す。
【0075】
この制御の際立った特徴は、ネットワークに注入される電圧と同調して、電流の振幅、すなわち電力を制御することである。制御手段20は、第1の整流器段6の第1の制御手段8に含まれる。
【0076】
制御手段20は、電力供給ネットワークで生じた電流を調整するために作られたものである。この手段はまた、電流設定値の同調、ネットワークの電圧、この電流の振幅の閉ループ制御、トランジスタの制御を生じる調整ストラテジの確立を可能にする。これらは、例えばデジタル・コントローラである計算手段21と、PLL(位相ロックループ)回路などの同調手段22と、第1の比較手段23と、電流調整手段24と、加算手段25と、事前処理手段26と、ストラテジック手段27とを備え、これらの手段23〜27は、デジタル・コントローラにおける数学関数として実施可能である。
【0077】
制御の原理は、一方で電力供給ネットワークの管理者によって課された接続条件を満足し、他方で力率を最大化するために、供給された電力と電流形状とを制御するために電力供給ネットワークで生じた電流を確定することにあり、力率はネットワークの電流と電圧の間の位相差のコサインによって定義される。
【0078】
装置が電力供給ネットワークに再注入を望む電流の振幅に対応した電流設定値A
Inetworkは、同じく入力として電力供給ネットワークの電圧測定値U
Networkを受け取る計算手段21に伝達され、この電圧は、例えば位相ロックループなどの同調手段22を介して電力供給ネットワークの配給者によって課されたものである。したがって計算手段21は、ネットワークの末端における電圧と同調したネットワーク電流の設定値を、出力として伝達する。
【0079】
ネットワーク電流の設定値は第1の比較手段23に伝達され、この手段はまた、入力として、装置1によって電力供給ネットワークに実際に返還された電流に対応したネットワーク電流の測定値を受け取る。第1の比較手段23は、ネットワーク電流設定値とネットワーク電流測定値の間に存在する差を特定し、この差の値を電流調整手段24に伝達する。
【0080】
次いで電流調整手段24は、加算手段25に調整信号を出力として伝達し、加算手段はさらに入力として、ネットワーク電流設定値を修正可能な事前処理手段26を介して計算手段21から発せられたネットワーク電流設定値を受け取る。加算手段25は、出力として、2つの入力信号から得られた信号を、電力供給ネットワークへと発生された装置1の電流を調整するために、例えば、参照テーブルにおいてデジタル・コントローラのメモリに記憶された値に応じて、装置1の制御を決定可能なストラテジック手段27へと伝達する。
【0081】
図4は、装置1が負荷装置に接続されたときに第1段6の電圧を調整する制御手段30の一実施例を示す。制御手段30は、第1の整流器段6の第1の制御手段8に含まれている。
【0082】
この構成では、負荷装置は最大許容電流の限度内で、伝達される電流に関係なく、調整された電圧を供給されなくてはならない。
【0083】
電圧調整制御手段30は、第2の比較手段31と、電圧調整手段32と、飽和手段33と、ストラテジ手段34を備える。これらの手段30〜34は、デジタル・コントローラにおける数学関数として実施可能である。
【0084】
電圧設定値は、装置1が連結された負荷装置に伝達しなければならない電圧に対応するもので、第2の比較手段31に伝達され、比較手段31はまた、入力として、負荷装置の端子における装置1によって伝達された電圧の測定値U
loadを受け取る。第2の比較手段31は、2つの信号の間の差を特定し、得られた信号を電圧調整手段32に伝達する。
【0085】
電圧調整手段32は、飽和手段33に伝達する電圧調整信号を決定し、飽和手段33は、コンバータに過負荷を掛けないように、装置1によって負荷装置に伝達される電流の振幅を飽和させることができ、よってそのインピーダンスが低すぎるとき、伝達される電流を最大限まで制限するために、負荷装置に印加される電圧を減らす。
【0086】
飽和手段33は出力として、必要であれば飽和した状態で、信号をストラテジ手段34に伝達し、ストラテジ手段34は、例えば、負荷装置の端子で生じる装置1の電圧を調整するために、参照テーブルによって飽和手段33から受け取った信号を所望の電圧値にマッチさせることで、装置1の制御を決定することができる。
【0087】
制御装置9の構造は、実質的に制御装置8と同じでよい。これらの制御手段は、単一の共通コントローラ又は2つの独立した別個のコントローラとして実施可能である。
【0088】
図5は、装置1の他の実施例を示す。図中、
図2と同一の要素には同じ符号が付与されている。
【0089】
本実施例では、3つの相がP
1、P
2、P
3で示され、中性相がNで示されている。この場合、第2のフリーホイール・ダイオード17が、第1の整流器段6の第1のフリーホイール回路に追加され、第2のフリーホイール・トランジスタ18が、第1の整流器段6の第2のフリーホイール回路に追加される。第2のフリーホイール回路17は、第1のオン状態方向において第1のフリーホイール・ダイオード13aの上流で直列に結合されている。第2のフリーホイール回路18は、第2のオン状態方向において第1のフリーホイール回路13bと直列に結合されている。
【0090】
中性線は、直列接続された2つのフリーホイール・ダイオード13a、17によって形成された枝路に、2つのフリーホイール・ダイオード13a、17の間で結合されており、且つ直列接続された2つのフリーホイール回路13b、18によって形成された枝路に、2つのフリーホイール・トランジスタ13b、18の間で結合されている。
【0091】
単相電力供給ネットワークの中性線を2つのフリーホイール・ダイオード13a、17を備える枝路に結合された専用入力に結合することによって、本実施例に基づいて作られた装置1を、単相電力供給ネットワークで用いることも可能である。
【0092】
図6は、統合フィルタリング手段5を保護する手段60を図式的に示す。
【0093】
フィルタリング手段5は、各相間のフィルタリングを行うために、電磁環境両立性(EMC)フィルタ5aと、「星型」配置されたフィルタリング・コンデンサ5bを備える。EMCフィルタ5aは、例えば、装置1の第1段6、第2段7のトランジスタによって生じた電流パルスをフィルタリングできるコモンモードのインダクタ及びコンデンサ・フィルタである。フィルタリング手段5は、このようにして吸収された電流のフィルタリングを可能とし、よって電流は、高調波に関してネットワーク・オペレータによって課されたネットワーク接続要件及び自動車分野の要件を満足させる。
【0094】
中性相Nを考慮に入れた構成では、中性相フィルタリング・コンデンサ5cが、さらに、中性線Nとフィルタリング・コンデンサ5bの共通点Cの間に配置されている。後者のコンデンサ5cは、中性線と相の間でフィルタリングを行うことができる。
【0095】
「星形構成」にコンデンサを配置する代わりに、「三角」構成(図示せず)に、すなわち各相とEMCフィルタリング手段5aの出力の中性線の間にコンデンサを置くことにより、コンデンサ5bを配置することも可能である。これにより、そこを通過する電流の値が減少する。この「三角」構成では、中性相フィルタリング・コンデンサ5cを設ける必要がない。
【0096】
再充電モードでは、EMCフィルタリング手段5a及び/又はフィルタリング・コンデンサ5bなどの入力コンデンサの初期電圧と、電力供給ネットワークの電圧の間の差が接続時に大きいため、装置1の電力供給ネットワークへの接続が、大きな電流ピークの発生原因となり得る。
【0097】
保護手段60は、トライアック61、或いは逆並列式に結合された2つのサイリスタ62などのトライアックと等価な配置を有し、本実施例によれば相P
1、P
2、P
3、Nの各々に関して、電力供給ネットワーク3への接続手段4とフィルタリング手段5の間に挿入されている。保護手段60は、フィルタリング・コンデンサの予負荷の原理に従って動作し、トライアック61のトリガーゲートの制御を介して、導通と、よって始動時の電流ピークとを制限することができる。
【0098】
図7は、一実施形態による、電力供給ネットワークへの、自動車の
パワートレインの充電及び/又は電力発生装置1の電力発生方法のフローチャートを示す。
【0099】
最初のステップ701では、ネットワーク電流振幅の設定値A
Inetworkが、装置1からネットワークに伝達することが望まれる電流の振幅に応じて伝達される。
【0100】
次のステップ702では、配給者によって課されたネットワーク電力供給電圧U
networkが測定される。この電圧は測定されて位相ロックループなどの同調手段22に注入され、その後ステップ703で、入力としてさらにネットワーク電流振幅設定値を受け取り、出力としてネットワーク電流設定値Setpoint(I
Network)を伝達する計算手段21に挿入される。
【0101】
次のステップ704では、装置1によって電流供給ネットワークに伝達された電流I
Networkが測定されて、それをステップ705でネットワーク設定値Setpoint(I
Network)と比較する。
【0102】
ステップ706では、ステップ705で特定された差に基づいて電流調整が決定される。こうして決定された調整は、ステップ707で、先に事前処理手段によって処理されたネットワーク電流設定値Setpoint(I
Network)に加算される。
【0103】
最後のステップ708では、得られた信号が、装置1の制御を決定するストラテジック手段27へと注入され、ストラテジック手段27は電力供給ネットワークに所望の電流を伝達する。
【0104】
図8は、一実施形態による、自動車の
パワートレインの充電及び/又は電気発生装置から負荷装置に電力供給する方法のフローチャートを示す。
【0105】
最初のステップ801では、負荷装置電圧設定値U
setpointが、装置1から負荷装置に伝達することが望まれる電圧に応じて伝達される。
【0106】
次のステップ802では、装置1によって負荷装置の端子に伝達された電圧U
loadが測定される。
【0107】
次いでステップ803では、電圧設定値U
setpointと測定電圧U
loadとが比較され、測定された差が調整手段32に伝達され、調整手段32は、次のステップ804で、チャージにおいて望ましい電圧が得られるように、装置1によって負荷装置に与えられるべき電流設定値を伝達することが可能な電圧調整を決定する。
【0108】
次のステップ805では、先のステップで決定された電流設定値が、コンバータに過負荷を掛けないように飽和される。これは、インピーダンスが低くなりすぎたときに負荷装置に加わる電圧が低下するという効果を有する。
【0109】
最後のステップ806では、得られた信号がストラテジ手段34に注入され、負荷装置の端子に望ましい電圧を得るために、設定値に対応した電流を伝達するように、装置1の制御を決定する。
【0110】
上述の装置1は、バッテリ電圧が常に電力供給ネットワークの最大電圧より高いことを必要とする制約から免れることができる。
【0111】
さらに装置1は、電力バッファ・フィルタとして装置1の固定子コイル14のインダクタンスのみを利用することを可能とする。とりわけ、充電電力が大きいとき、そうした誘導性及び/又は容量性フィルタの空間要求及び重量は、自動車に搭載するには大きすぎるものとなる。
【0112】
さらに装置1は、動作モードの切り替えに接触器を用いる必要なしに、充電モード或いは
ドライビングモードでの装置の動作を許容することができる。
【0113】
これはバッテリ2をさらに急速に充電することができる。
【0114】
さらに装置1は、接触器の必要なしに、三相又は単相モードにおける自動車から負荷装置への電力供給を可能とする。
【0115】
装置1はさらに、装置に生じた電力を、接続先の電力供給ネットワークへと返還することを可能とする。