(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部に吸込みキャビティを有する、多孔質外板(30)のパージングシステム(70)であって、多孔質外板(30)が、吸込みキャビティ(38)と外部大気とを流体連通可能に接続する複数の孔(36)を有するもので、パージングシステム(70)が、
外部大気の外部流を捕獲するように構成されている空気取り入れ口(72)と、
空気取り入れ口(72)を吸込みキャビティ(38)に流体連通可能に接続し、外部流を吸込みキャビティ(38)に運んで孔(36)から放出するディフューザー(98)と
を備えており、
空気取り入れ口(72)が、空気取り入れ口(72)によって捕獲された外部流から汚染物質を分離するように構成され、
空気取り入れ口(72)には、汚染物質を排出させるために内部に少なくとも一つのドレーン穴(88)が形成されている、パージングシステム(70)。
空気取り入れ口(72)が、開位置と閉位置との間を旋回により可動であって、かつ開位置にあるとき開口を画定するドア(112)を含んでいる、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のパージングシステム(70)。
空気取り入れ口(72)が、閉位置にあるときは外表面と概ね同一平面内に含まれる関係に位置するように構成されている、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のパージングシステム(70)。
多孔質外板(30)と、多孔質外板(30)に形成された複数の孔(36)によって外部大気と流体連通可能に接続された吸い込みキャビティ(38)とを有する層流制御システムのパージング方法であって、
外部大気の外部流に向かって空気取り入れ口(72)を展開するステップと、
空気取り入れ口(72)から吸込みキャビティに外部流を運ぶステップと、
運ばれた流れを孔(36)から放出することにより孔(36)をパージするステップと
を含み、
空気取り入れ口(72)が、空気取り入れ口(72)によって捕獲された外部流から汚染物質を分離するように構成され、
空気取り入れ口(72)には、汚染物質を排出させるために内部に少なくとも一つのドレーン穴(88)が形成されている、方法。
多孔質外板(30)が、それぞれ反対側に向く内側の外板表面(32)と外側の外板表面(34)とを画定しており、空気取り入れ口(72)が、外部流を捕獲するための開口を有しており、内側の外板表面が、開口における外部流の圧力に比例するキャビティ圧を有しており、外側の外板表面が、多孔質外板(30)上の外部流の局所的速度に関連する局所的静圧を有しており、前記方法が更に、
空気取り入れ口(72)及び孔(36)の少なくとも一方を、キャビティ圧が局所的静圧に打ち勝つのに十分に大きくなるように構成するステップ
を含む、請求項8に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
翼型の上を通過する空気の層流を維持することにより、航空機の空気力学と性能を改善できることが一般に知られている。例えば、空力面上での層流から乱流への境界層の遷移を遅らせることにより、外板の摩擦を小さくして空力抵抗を低減できることが既知である。層流から乱流への遷移を遅らせるための一の方法は、翼の前縁、尾翼面、及びエンジンナセルなどに沿った領域のような翼型の重要な領域に多孔質の外板を設置することによるものである。この多孔質外板は、通常、比較的小さなアパーチャ又は孔を大量に含んでいる。多孔質外板は、狭いスロット又は細長い孔を含むことにより多孔性を有することもできる。翼の前縁の多孔質外板に設けられる孔は、直径千分の数インチ(例えば0.0025インチ)に形成することができ、且つ隣り合う孔の間の間隔は百分の数インチ(例えば0.035インチ)とすることができる。
【0003】
多孔質外板に吸引力を印加することにより、翼型に付着する境界層の気流(即ち、付着線に沿って)は孔に引き込まれ、成長して最終的に乱流への遷移を早めうる小さな擾乱に対し境界流を安定させる。吸引力の適用は、境界層の速度プロファイルを、薄く、ロバストなものにする。最終的な結果として、境界層の遷移が遅れ、外板の摩擦抵抗が減少し、航空機の空力効率が上昇する。空力効率の上昇は、空力抵抗の低下により大きな燃料節減が達成可能な長距離飛行の巡航高度で特に注目に値する。
【0004】
吸引式の層流制御システムの広範な実施を妨げている課題の一つは、特定の条件下で発生しうる孔の汚染又は閉塞である。このようなに汚染は、層流制御システムの効果を減じうる大気汚染及び/又は人為的汚染が含まれる。例えば、多孔質の外板を備えた航空機が離陸及び急上昇する間に、低い雲に含まれる雨又は水分の形態の降水が孔を水で満たすことがあり、その水は、その後航空機が更に気温の低い高度に上昇すると凍結する。凍結した水分は、孔を閉塞させ、巡航の間に航空機の周りに層流を維持するうえでの吸引システムの効力を低下させる。地上での作業中に添加された氷結防止液のような人為的な汚染も、孔を氷結防止液で詰まらせることにより層流制御システムの効力を低下させうる。
【0005】
航空機の上に霜が蓄積することも、孔を閉塞させることにより吸引システムの効力を低下させうる。多孔質外板の外側の外板表面上に蓄積した霜は最終的には昇華するが、多孔質外板の内側の外板表面上の水分又は液体は、昇華が起こる表面積が比較的小さいことにより、孔内に捕捉されて残留する場合がある。更に、孔内の局所的な流れの速度は比較的低いので、孔内に捕捉された水分の表面張力による抗力に打ち勝つには不十分である。
【0006】
孔の詰まりを防ごうとする先行技術の試みには、加圧した空気を孔から外側に排出又は放出する能動的パージングシステムが含まれる。パージングシステムは、急上昇中に雨又は水分を含む雲に遭遇することが予測されるとき、離陸前に起動することができる。このようにして、このようなパージングシステムは、孔を閉塞していない状態に保ち、孔内に捕捉された残留液体の凍結を防止する。意図した目的のために有効であるが、従来技術によるパージングシステムは、その全体的な有用性を低下させる複数の欠点を有している。
【0007】
例えば、吸引式の層流制御システムに使用される既知のパージングシステムは、全て能動的なパージングシステムである。能動的なパージングシステムには、層流制御システムの孔を通して放出される加圧空気を供給するために、エンジン抽気の形態の追加的なエネルギー入力又はポンピング機器が必要である。加圧空気は、エンジン用空気圧縮機又は他のターボ機器から引き込むことができる。例えば、パージングシステム用の加圧空気は、高度バイパスターボファンエンジンのバイパス流の一部を引き出すことにより供給することができる。
【0008】
言うまでもなく、航空機のエンジンから加圧された空気を引き込むなどの能動的なパージングシステムのシステムアーキテクチャは、機能的及び構造的に複雑である。このような能動的パージングシステムには、複雑さと、製造費及び運転費を増大させうる構成部品及び機器を取り付ける必要がある。更には、能動的パージングシステムの構成部品は航空機の重量を増加させるので、層流制御システムに達成されるはずの燃料効率の利得を低下させる可能性がある。
【0009】
更には、民間定期航空機のような一部の航空機は、エンジンから大量のブリード空気を抽出しないように製造されることが多くなっている。ブリード空気の抽出は、従来、客室の加圧、及び飛行中の氷結防止といった目的で様々な航空機システムに使用されてきたが、現代の航空機の多くは、従来のエンジンが生成する空気圧による力(即ちブリード空気)の代わりに電力を使用することにより、エンジンが最大推力を生成するようにエンジンから抽出される空気圧による力の量を制限している。したがって、未来の航空機では、能動的パージングシステムに動力供給するために、従来のエンジン抽気を使用することはできなくなるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、従来技術には、能動的パージングシステムに関する複雑性と重量とを排除した、層流制御システム用パージングシステムに対する需要が存在する。更に、従来技術には、最小のメンテナンスを要する低コストの層流制御システム用パージングシステムに対する需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
層流制御システム用のパージングシステムに関する上記需要及びその他の需要は、多孔質外板の孔を清掃するための受動的パージングシステムを備えた本発明の実施形態により特に対処され、ある程度満たされる。有利には、本明細書に開示されるパージングシステムは、孔内における水分、結露、雨、雪、氷結防止液、昆虫の残骸、塵埃、及びその他の異物といった汚染物質の保持を防止することにより、多孔質外板に形成された孔が閉塞する可能性を低減するためのシステムと方法を提供する。
【0012】
更に、能動的パージングシステムに共通のエンジン抽気又はポンピング機器といった加圧空気を供給するための補助システムの必要性を排除することにより、本発明の実施形態は、そのような能動的パージングシステムに付随する複雑性及び重量という不利を回避する。これに関して、本明細書に記載される受動的パージングシステムは、コスト、重量、及び複雑性を低減することに関して技術的利益を提供する。更に、層流制御システムは、外板の摩擦が低減する結果として燃料燃焼の利点が実現される巡航高度において従来技術と同様に機能的である。
【0013】
一実施形態では、本パージングシステムは、前向きに且つ外部大気の高圧外部流に向かって配置可能な空気取り入れ口を備えている。パージングシステムは、層流制御システムの一部として、空気取り入れ口と多孔質外板に隣接する吸込みキャビティとを流体連通可能に接続するディフューザーを更に備えることができる。ディフューザーを通って運ばれる空気は、吸込みキャビティに運ばれた後、種々の汚染物質による閉塞の可能性を低減するために孔から放出される。
【0014】
空気取り入れ口は、翼型に取り付けることができ、翼型の直近の境界層を越えて延ばすことにより高圧の外部流に到達できる開位置に展開することができる。空気取り入れ口は、捕獲した外部流から大気中の湿度といった汚染物質を抽出することにより、乾燥空気を吸込みキャビティに届けることができる。このような気流は、気流が多孔質外板に形成された孔から放出されることにより、層流制御システムの動作を妨げるかもしれない以前から存在した雨、水、氷結防止液、又はその他の汚染物質といった液体が孔から除去されるように、ディフューザーによって吸込みキャビティに運ばれる。
【0015】
一実施形態では、空気取り入れ口は、開位置と閉位置との間で可動である。開位置では、空気取り入れ口は、航空機が大気中の湿気は汚染物質中を通過しうる離陸前、急上昇中、又はその他の飛行操作の間に、展開可能である。空気取り入れ口は、離陸前に開位置に展開し、その後、航空機が、一般的に気温が氷点下である巡航高度に達したときに後退させることができる。巡航高度に達した後は、空気取り入れ口は、残りの飛行を通して翼型の外側モールド線と同一平面内に位置する閉位置に維持することができる。
【0016】
空気取り入れ口は、好ましくは、空気取り入れ口によって捕獲される水をパージングシステムが抽出することを可能にする特徴を含んでいる。例えば、空気取り入れ口は、外側に湾曲したカウルを含むことができ、且つ外側のカウルの後端部にドレーン穴又はその他の排水用アパーチャを含むことにより、空気取り入れ口によって捕獲された液体を空気取り入れ口から逃がすことができる。このようにして、空気取り入れ口は、ディフューザーを介して吸込みキャビティに運ばれる気流に含まれる水分及びその他の汚染物質の巻き込みを防ぐ。
【0017】
別の実施形態では、空気取り入れ口は、吸込みキャビティに加圧空気が供給されるように、空気取り入れ口の開口が、到来する外部流に面するように展開することができる。空気取り入れ口は、多孔質外板が吸引されて境界層が薄く且つロバストになるような吸引力が生成されるように、空気取り入れ口の開口が到来する気流と反対方向に向くように展開することもできる。
【0018】
更なる実施形態では、空気取り入れ口は、互いに一体化された第1のドアと第2のドアとを含むドアアセンブリとして構成することができる。第2のドアは、第1のドアに旋回可能に取り付けられて、第1のドアの一部を形成することができるので、第1のドアが開位置と閉位置の間で移動すると、第1のドアと共に第2のドアも移動する。第1のドア及び第2のドアの各々は、開位置と閉位置との間で旋回可能であり、開位置へ移動したときに開口を画定することができる。第1及び第2のドアの開口は、互いに反対側に向いていてよい。
【0019】
第1のドア開口は前向き(即ち、到来する外部流の方向に向く)に、第2のドアの開口は後ろ向きにすることができる。第1のドアの開口は、吸込みキャビティに運ばれて孔内の汚染物を除去するために孔から放出される外部流を捕捉するように構成することができる。第2のドアの開口は、第2のドアの後方に、吸込みキャビティ内のキャビティ圧より小さい外圧を有する外部領域を生成することができる。外圧は、吸込みキャビティ内に吸引力を生成することができ、これにより、多孔質外板近傍の外部流が孔から吸込みキャビティへと引き込まれる。
【0020】
ディフューザーは、長さ方向に沿って少なくとも一つの屈曲を有する流れの効率のよい形状に設けることができるので、空気取り入れ口によって捕獲された外部流に混入している汚染物は、ディフューザーの内表面上に堆積し、その後、収集された液体は、ディフューザーの最下点に随意で含まれるドレーン機構を介して流出できる。
【0021】
一実施形態では、本パージングシステムは、後退翼のような、後退角を有する前縁を含む翼型、又は前縁後退角を画定する尾翼面に設置することができる。空気取り入れ口とパージングシステムとを後退翼に取り付けることにより、キャビティ圧が、多孔質外板の内側の外板表面に沿った孔内に捕獲されていたであろう液体の表面張力の抗力に打ち勝つのに十分大きくなる。孔の寸法(即ち直径)及び構成は、外部の外板表面に印加される局所的静圧に起因する、吸込みキャビティと多孔質外板の外側の外板表面との間に必要な圧力差の低減が促されるように最適化することができる。例えば、比較的大きな直径の孔を設けることにより、表面張力の抗力に打ち勝つために吸込みキャビティ内に必要な圧力の量は、一般的に減少する。しかしながら、孔の大きさ及び構成は、層流を制御する目的で境界層の最適な吸引を達成するために、他の設計パラメータとの兼ね合いで考慮される。
【0022】
本発明は、更に、多孔質の外板を有する層流制御システムのパージング方法を提供し、この場合の多孔質外板は多孔質外板に設けられた複数の孔を介して外部大気に流体連通可能に接続する吸込みキャビティを含んでいる。この方法は、空気取り入れ口を外部大気の高圧外部流に開くステップと、その後ディフューザーを通して吸込みキャビティへと外部流を運ぶステップとを含む。本方法は、運ばれた流れを孔から外部大気へと放出して孔内の異物を清掃するか、又は液体、昆虫、泥土、塵埃、及びその他の汚染物質などの汚染物質の進入を防ぐことにより、多孔質外板に形成された孔をパージすることを含む。
【0023】
上述の特徴、機能、利点は、本発明の種々の実施形態において単独で達成することができるか、又は他の実施形態において組み合わせることができ、それら実施形態の詳細は、後述の説明及び添付図面において見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の上記の特徴及び他の特徴は、添付図面を参照することにより更に明らかとなる。図面を通して、同様の参照番号が同様の部品を指している。
【
図1】
図1は、パージングシステムを備える航空機の斜視図である。
【
図2】
図2は、航空機の尾部に取り付けられたパージングシステムの拡大斜視図であり、ディフューザーによって尾部の前縁に配置された多孔質外板と流体連通可能に接続する空気取り入れ口を更に示している。
【
図3】
図3は、一実施形態におけるパージングシステムの
図2の線3−3における断面図であり、閉位置にある空気取り入れ口を示している。
【
図4】
図4は、
図2の線4−4における断面図であり、開位置にある空気取り入れ口を示している。
【
図5】
図5は、
図2の線5−5における拡大断面図であって尾部の前縁を示している。前縁の吸込みキャビティへの気流によってキャビティ圧(p
c)が生成され、このキャビティ圧は、多孔質外板の内側の外板表面側で孔内に保持されている液体の表面張力の抗力に打ち勝つのに十分に大きい。
【
図6】
図6は、旋回して開位置へと展開し、高圧の外部流をディフューザーに流入させて吸込みキャビティに送達する空気取り入れ口の断面図であり、表面水の戻りが浸入することを制限するダイバーターチャネルを更に示している。
【
図7】
図7は、
図6の線7−7における空気取り入れ口の断面図であり、空気取り入れ口により捕獲された外部流に含まれる液体を排水するために、空気取り入れ口の後部に形成されることが好ましい一又は複数のドレーン穴を示している。
【
図8】
図8は、空気取り入れ口からディフューザーまでの相互接続を示すパージングシステムの分解斜視図であり、ディフューザーに収集された液体を排水するためにディフューザーに設置されたドレーン機構を更に示している。
【
図9】
図9は、別の実施形態におけるパージングシステムの断面図であり、翼型の外側モールド線と横方向に間隔を空けて位置するピトー型空気取り入れ口を示している。
【
図10】
図10は、空気取り入れ口が、前方に向く第1のドアと、第1のドアに旋回可能に取り付けられた後方に向く第2のドアとを有するドアアセンブリとして構成されているパージングシステムの斜視図である。
【
図11】
図11は、第1のドアが開位置にあり、第2のドアが閉位置にあるドアアセンブリを示す断面図である。
【
図12】
図12は、第2のドアが開位置にあり、第1のドアが閉位置にあるドアアセンブリを示す断面図である。
【
図13】
図13は、空気取り入れ口及びディフューザーを用いて層流制御システムをパージする方法である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
これより図面を参照する。図面に示すものは、本発明の好ましい種々の実施形態の説明のみを目的としており、それらを制限することを目的としているのではない。図示されるのは、パージングシステム70と、層流制御システムの一部とすることができる多孔質外板30に形成された孔36の受動的パージング方法である。受動的パージングシステム70は、外部大気48の高圧外部流50に向かって開かれる空気取り入れ口72を備える。外部流50は吸込みキャビティ38まで運ばれる。吸込みキャビティも層流制御システムの一部を形成している。運ばれた気流は、水分、結露、雨、雪、氷結防止液、異物、昆虫の残骸、及びその他の汚染物質により孔36が閉塞する可能性を低減するために、孔36から放出される。
【0026】
図1では航空機10に取り付けられているが、本明細書において開示されるパージングシステム70は、限定しないが、層流が望まれるあらゆる航空ビークル、陸上ビークル、又はその他の種類のビークルを含むあらゆる種類のビークル上に実施可能である。加えて、パージングシステム70は、層流の達成以外の機能性を有する多孔質表面をパージするために設置することができる。更に、
図1のパージングシステム70は、胴体12に連結された垂直尾翼18のような尾部に設置されているが、パージングシステム70は、限定しないが、翼16、水平尾翼20、又は胴体12、翼/機体、及びジェットエンジン14のナセルといった他の様々な空力部材を含むその他のあらゆる空力面を含め、航空機10のあらゆる場所に取り付けることができる。
【0027】
一実施形態では、パージングシステム70は、翼16の前縁24又は後縁26、尾翼表面、又はエンジン14入口の前縁といった翼型22の重要領域の層流制御システム内の孔36をパージする手段として、航空ビークルに設置される。パージングシステム70は、対象物の孔36又は孔内に捕捉された液体34をパージするために、気流が多孔質外板30の内側の外板表面32から外側の外板表面34に向かう方向に沿って流れることが望ましいビークルに取り付けることができる。孔36を通る気流は、種々の汚染物質により孔36が閉塞する又は詰まることを防止することもできる。
【0028】
図2は、
図1に示す垂直尾翼18のような翼型に取り付けられたパージングシステム70の拡大図である。広義には、パージングシステム70は、前向きとすることができる空気取り入れ口72と、空気取り入れ口72によって捕獲された気流を、多孔質外板30の内側の外板表面32へ運ぶ又は向けるディフューザー98とを含む。
図2に示すように、一実施形態では、空気取り入れ口72は前端82及び後端84を有し、空気取り入れ口72の前端82は、開位置74に展開されると開口78を提供する。空気取り入れ口72の後端84にテーパーを付けることにより、空気取り入れ口72に侵入する水分、降雨、又はその他の汚染物質を、空気取り入れ口72の後端84に向かって移動させることができ、空気取り入れ口72の後端84に形成されたドレーン穴88は、侵入したそのような汚染物質を外部大気48中に排出させることができる。これに関して、空気取り入れ口72は、空気取り入れ口72によって捕獲された外部流から、空気取り入れ口72内部への汚染物質の侵入に起因する汚染物質を分離することができる。空気取り入れ口72のドレーン穴88は、限定しないが、円形穴、スロット、穿孔、及び空気取り入れ口72からの汚染物質の除去を容易にする他のあらゆる構成を含む様々な構成に形成することができる。
【0029】
ディフューザー98は、空気取り入れ口72を、多孔質外板30の内側の外板表面32に流体連通可能に接続する。一実施形態では、ディフューザー98は、空気取り入れ口72を吸込みキャビティ38に流体連通可能に接続するディフューザー入口100とディフューザー出口102とを有し、吸込みキャビティ38は、例えば
図2の垂直尾翼18の前縁24のような翼型22の前縁24に配置される。吸込みキャビティ38は、翼型22の前縁24上の多孔質外板30と、前桁又はその他の部材とにより画定されて、層流制御システムの一部である吸引システムを介して吸引が行われる密封キャビティを提供する。
【0030】
図2では、単一の多孔質外板30が外部大気48の外部流50に曝されているが、多孔質外板30は、孔36を有する外板の外層と、孔36を有さず、外層から距離を置いて配置される外板の内層(図示しない)とを含んでもよい。このような二重外板(即ち、内層と外層)構造は、翼型22の前縁24の剛性を高めることができる。更に、これに関して、内層は、間隔を空けて配置された一連のハット域を含むことができ、これらのハット域は多孔質外板30の内側の外板表面32に取り付けられて前縁24に剛性を付与する。
【0031】
外板30が単一の層として設けられるか、多層構造に設けられるかに関係なく、ディフューザー出口102は、多孔質外板30の内側の外板表面32と流体連通可能に接続することができる。ディフューザー出口102は、翼16の前縁24と翼型22の最前桁とによって画定されるDチューブとも呼ばれる吸込みキャビティ38に流体を供給することができる。
【0032】
図では、多孔質外板30の孔36は、概ね一定の距離を置いて配置されたほぼ円形のる穴であるが、孔36は、様々な形状及び構成に形成することができ、例えば、スロット、非円形の穿孔、及びその他の形状又はそれらの組み合わせで、且つ一定でない間隔で形成することができる。孔36の特定の構成に関係なく、多孔質外板30は、境界層40の流れを好ましくは取り付け線42に沿った層の状態に安定化させるために、吸込みキャビティ38を外部大気48に流体連通可能に接続する。上述のように、孔36から吸引とは反対方向に空気を放出することにより、孔36をパージして孔36から汚染物質を取り除くことが容易になる。
【0033】
好ましい実施形態では、孔36の穴の大きさは0.0015インチ〜0.0030インチとすることができ、孔36の間隔は、約0.020インチ〜0.050インチとすることができる。但し、あらゆる間隔を適用することができ、孔36はどのような大きさでもよい。孔36は、好ましい構成では、直径約0.0015インチの円形断面を有する。吸引を改善するという機能的観点からは小さな直径が好ましいが、そのような小さな径は、製造に問題を生じる場合があり、直径の大きな孔36に捕捉された表面張力液54を放出する又は吹き飛ばすために必要な低圧と比較すると、多孔質外板30の内側の外板表面32上に捕捉された液体54の表面張力の抗力に打ち勝つためには比較的高圧が必要となる。これに関して、約0.0025インチという孔36の大きさは、約0.0015インチの大きさを有する孔と比較して、製造が容易であり、且つ表面張力に打ち勝つために必要な圧力が低くて済む。
【0034】
表面張力の抗力に打ち勝つために、孔36は、好ましくは、内側の外板表面32上の孔36の断面積が、多孔質外板30の外側の外板表面34上の孔36の断面積より大きくなるような、軸方向に沿ったプロファイルを有する。これに関して、孔36は、好ましくは円錐を逆さまにした形状を有することができ、更に好ましくは、軸方向断面に沿って見た場合にガウス形状(即ち釣鐘形状)を有する。いずれの場合も、孔36は、好ましくは、多孔質外板30の外側の外板表面34側より内側の外板表面32側で大きくなるように形成される。
【0035】
孔36の間隔は、変動してもよく、一定でもよく、又はそれらの組み合わせでもよい。例えば、孔36の間隔は、前縁24の最前点に沿って比較的一定とすることができる。加えて、孔36の間隔は、前縁24の最前点から後方に伸びる長さに方向沿って、徐々に大きくすることができる。同様に、孔36の間隔は、前縁24の縦方向の長さに沿って変化しても、又は前縁24の長さに沿って一定でもよい。
【0036】
図2〜4は、翼型22の一方の側に配置された空気取り入れ口72を有する一実施形態のパージングシステム70を示している。図示の一実施例は、航空機10の垂直尾翼18に取り付けられている。しかしながら、パージングシステム70のこの実施形態は、限定しないが、翼16の前縁24及びエンジン14入口の前縁を含むビークルの他の位置にも適用可能である。空気取り入れ口72は、翼型22に沿って流れる境界層の干渉又は妨害を最小化する位置に設置することができる。例えば、空気取り入れ口72は、航空機10の垂直尾翼18又は水平尾翼20の先端に取り付けることができるか、又は航空機10の胴体12の後端に向かって取り付けることができる。図示の一実施形態では、空気取り入れ口72は、パージングシステム70によって多孔質外板30に放出流56が供給される翼型22に取り付けるように構成することができる。しかしながら、上述のように、空気取り入れ口72は、翼型22上の層流を混乱させない位置に取り付けることができる。これに関して、空気取り入れ口72を、航空機10の多孔質外板30の位置とは共通でない区域に取り付けることが考慮される。例えば、空気取り入れ口72は、空気取り入れ口72から尾部及び/又は翼16又は航空機10のその他の空力面上の吸込みキャビティ38まで高圧外部流50を運ぶディフューザー98を有する航空機10の胴体12に取り付けることができる。
【0037】
好ましい実施形態では、空気取り入れ口72は、
図3に示す閉位置76にあるとき翼型22の外側モールド線28の表面とほぼ同一平面内に位置するように取り付けられる。空気取り入れ口72は、例えば
図4に示すように空気取り入れ口72の後端84側に配置された旋回軸92を中心として旋回させることにより、開位置74へと展開される。理想的には、空気取り入れ口72は、簡単に展開及び収容できるように構成される。
図3に示すように平面内に空気取り入れ口72を収容することにより、巡航時の抗力が容易に低下される。好ましい実施形態では、空気取り入れ口72は、空気取り入れ口72の開口78における吸気圧力を最大にするために、外部流50の局所的流線方向に対して方向付けることができる。
【0038】
空気取り入れ口72の展開は、限定しないが、離陸前などのパイロットによる起動を含む任意の数の異なる様式により行うことができる。これに関して、空気取り入れ口72は、出発前に離陸のためにフラップがセットされたとき、開位置74に展開することができる。加えて、又はパイロットによる起動と組み合わせて、空気取り入れ口72は、特定の環境条件又はその他の大気パラメータを感知したときなどに自律的に開位置74に展開することができる。例えば、雨又は雪といった降雨事象の間に、センサは、多孔質外板30の外側の外板表面34上に水分を検出して、水分を表わす信号をアクチュエーション機構96に伝送することができ、アクチュエーション機構は空気取り入れ口72を自律的に開位置へと展開することができる。同様に、多孔質外板30の内側の外板表面に沿ってセンサを用いることにより、降雨事象後に外側の外板表面34が乾燥したが内側の外板表面32に水分が保持されている結果、表面張力により保持されている水分の存在を検出することができる。
【0039】
更に、空気取り入れ口72は、孔36を詰まらせるか又は閉塞する可能性のある昆虫の残骸、塵埃、及びその他の形態の汚染物質を含むその他の異物の存在を検出するアクチュエーション機構96により、展開することができる。昆虫が存在する環境では、空気取り入れ口72は、多孔質外板30の外側の外板表面34上に昆虫の残骸が所定のレベルまで蓄積したことを検出すると、開位置74に展開される。空気取り入れ口72は、高濃度の昆虫を有することが既知の領域では、パイロットによって展開されてもよい。
【0040】
空気取り入れ口72が開位置に展開されるきっかけとなる事象又は条件の種類に関係なく、空気取り入れ口72は、好ましくは、空気取り入れ口72の外部大気48への展開を容易にする形状及び構成を有している。空気取り入れ口72の開口78は、境界層40の厚みを越えた位置まで外側に向かって横方向に延びることにより、高圧外部流50が捕獲されて吸込みキャビティ38に運ばれることが可能になる。一実施形態では、空気取り入れ口72の外側カウル86の最も外側の表面が、翼型22の外側モールド線28から少なくとも約6インチ離れて位置する開位置74に、空気取り入れ口72を展開できるように構成することが考慮される。しかしながら、空気取り入れ口72を外部流50に開く範囲は、様々な飛行パラメータでの局所的境界層40に応じて決まる。理想的には、空気取り入れ口72は、空気取り入れ口72が、最大量の高圧流を捕獲して吸込みキャビティ38に送達できるように、比較的運動量の低い境界層40の進入を制限する範囲に展開される。これに関して、空気取り入れ口72は、開位置74と閉位置76との間の位置に展開することができる。
【0041】
図6は、空気取り入れ口72の断面図であり、空気取り入れ口72の後端に位置する旋回軸92を示している。図示のように、空気取り入れ口72は、前端82に配置された開口78と、後端84にディフューザー入口100と一緒に配置可能な取り入れ口出口80とを含む。一実施形態では、空気取り入れ口72は外側カウル86を含むことができ、外側カウルは同カウルから内側に延びる一対の側壁を有している。外側カウル86の少なくとも内表面は湾曲していてよいか、又は外側カウル86は、好ましくは、空気取り入れ口72からの水又はその他汚染物質の排出が促される構造を有する。
【0042】
図7では、空気取り入れ口72の後端84に一又は複数のドレーン穴88(例えば、円形穴、細長いスロットなど)が形成されていることにより、外部流50に混入している、及び開位置にある空気取り入れ口72によって捕獲された可能性のある液体54又は汚染物質の排出が容易となっている。液体54及び/又は汚染物質を重力の影響下で容易に排出するために、ドレーン穴88は空気取り入れ口72の下端に偏っている。しかしながら、ドレーン穴88は、後端84の長さに沿った液体54の排水を促すために、空気取り入れ口72の後端84に沿って間隔を空けて形成してもよい。液体は、航空機10が暴風雨又は雲を通過する際に空気取り入れ口72によって捕獲されうるものである。
【0043】
図6は、空気取り込み口72の前端82に随意で配置できるダイバーターチャネル90を示しており、このチャネルは、表面水の戻りを分岐させることにより、空気取り入れ口72及び/又はディフューザー98への表面水の浸入を防ぐ目的で、楔形、C字形、又はその他適切な構成に形成される。表面水52の戻りは、航空機10が降雨事象の中を飛行すると翼型22に沿って後方へ流れる。ダイバーターチャネル90は、
図6に示した位置以外にも種々の位置に取り付けることができる。理想的には、ダイバーターチャネル90は、翼型22の外側モールド線28からの突起が最小となるように、これに関しては、空力抗力を最小にするために約0.020〜約0.200インチとなるように、構成される。
【0044】
別の実施形態では、ダイバーターチャネル90は、外側モールド線28内に形成された溝を含むことができる。この溝は、外側モールド線28に沿って空気取り込み口72の開口78の周縁の少なくとも一部に延びることができ、チャネルの周りの表面水52の戻りが空気取り入れ口72の周りで排水されることにより、ディフューザー98内に浸入することを防止するような形状を有することができる。言うまでもなく、ダイバーターチャネル90には、表面水52の戻りが空気取り入れ口72に浸入することを制限するために、様々な大きさ、形状、及び構成が考慮可能である。また別の実施形態では、ダイバーターチャネル90は、空気取り入れ口72が後退しているとき、又は閉位置76に配置されているとき、翼型22の外側表面46又は航空機の他の部位とほぼ同一平面内に位置するように作動させることができる。
【0045】
図5は、吸込みキャビティ38に対して連通可能に取り付けられるディフューザー出口102を有する翼型22の拡大断面図を示す。図示の吸込みキャビティ38は翼型22の前縁24に隣接して配置されているが、吸込みキャビティ38の位置は、翼型22に沿ったいずれの位置とすることもでき、前縁24に限定されない。
図5に示すように、ディフューザー98の断面積は、好ましくは、空気取り入れ口72から吸込みキャビティ38への流れを拡大するために次第に大きくなる。
【0046】
図3及び4に最もよく示すように、ディフューザー98の、空気取り入れ口72に隣接するディフューザー入口100の大きさは、吸込みキャビティ38におけるディフューザー出口102の大きさより小さい。これに関して、ディフューザー98の断面積は、好ましくは、ディフューザー入口100からディフューザー出口102に向かう方向に沿って拡大する。断面積は、ディフューザー98を通る流れの速度を減少させるのに十分に拡大させることができる。これに関して、ディフューザー98は、空気取り入れ口72によって捕獲された外部流50を、その滑らかな内表面と湾曲した構造とにより拡散させることができる。このようにして、ディフューザー98は、外板の摩擦抗力又は流れの方向の突然の変化によるエネルギー損失を最小にして、流れを効率的に運ぶことができる。
【0047】
図6では、ディフューザー入口100は、スペーサー106などにより、翼型22の内側の外板表面32に取り付けられており、スペーサー106は、ディフューザー入口100に取り付けられたフランジ94と翼型22の内表面との間の間隔の差異に合わせて種々の厚みを有することができる。
図8に示すように、パージングシステム70は、スペーサー106と、翼型22の外板に形成された開口78の周囲に延びる複数の締め金具とを用いて設置することができる。
【0048】
開口78は、空気取り入れ口72の形状に合わせた大きさ及び構造を有することができる。図では、一般に長方形又は正方形の空気取り入れ口72に合わせて長方形であるが、スペーサー106及び開口78、又は空気取り入れ口72のために翼型22に形成された切り抜きには、他の様々な大きさ及び構造が考慮可能である。ディフューザー98は、翼型22に直接取り付けることができるか、又はスペーサー106に取り付け、次いでこのスペーサーを、複数の締め金具、接着剤を用いて、又はそれらを組み合わせた方法により、翼型22に取り付けることができる。
【0049】
図4及び8に示す一実施形態のディフューザー98は、空気取り入れ口72によって捕獲された外部流50に由来する水分及びその他の異物といった汚染物質の抽出を容易にするために、その長さに沿って少なくとも一回曲がっていてよい。これに関して、ディフューザー98は、流路が曲がっていることより汚染物質が抽出されるような形状を有することができる。
図8に最もよく見られるように、ディフューザー98は、捕獲された汚染物質が、重力の影響によりディフューザー98の内表面に沿って下方に流れ、その後ドレーン機構104から排出されるような構造を有する。
【0050】
ディフューザー98は、ディフューザー98に収集された流体又はその他の汚染物質を排出するために、ディフューザー98の最下点に位置することができる少なくとも一つのドレーン機構104を含むことができる。
図2では、空気取り入れ口72は、ディフューザー出口102の高さより高い位置に設置されている。ドレーン機構104がディフューザー出口102又は空気取り入れ口72より低い位置に配置されることにより、空気取り入れ口72によって捕獲された液体54又は汚染物質は、ディフューザー98の最下点に配置されうるドレーン機構104に集まることができる。パージングシステム70は、空気取り入れ口72がディフューザー出口102より低い位置に配置されることにより、吸込みキャビティ38に液体などの汚染物質が浸入する可能性が最小化されるように構成することができる。
【0051】
図8は、翼型22に関してディフューザー98と空気取り入れ口72との相互接続性を示している。ディフューザー98は、一又は複数のセクションに分けて提供することができ、これらのセクションは、ディフューザー98の接合端に形成された互いに嵌合するフランジ94による機械的締結を介するなどして接合可能である。ディフューザー98の両端も、それぞれ空気取り入れ口74及び吸込みキャビティ38と互いに嵌合するフランジ94を含むことができる。図のディフューザー98は概ね管状であるが、ディフューザー98には、他の様々な大きさ、形状、及び構成が考慮可能である。有利には、受動的パージングシステム70は可動部分を有さず、よって加工、組立て、及び設置が単純に行われる。
【0052】
図9は、ピトー型の空気取り入れ口72を備えたパージングシステム70の一実施形態を示しており、空気取り入れ口72は翼型22の外側モールド線28から横方向に離れて位置している。これに関して、空気取り入れ口72は、開口78が連続的に高圧の外部流50に曝されるように取り付けられる。しかしながら、空気取り入れ口72は、翼型22の空気力学の破断を避けるために、後退させて外側モールド線28表面と同一平面内に収容するか、又は外側モールド線28表面より実質的に下方に収容することもできる。
【0053】
翼型22の外側モールド線28に対して固定に空気取り入れ口72を取り付けることの利点は、ディフューザー98へ戻ろうとする表面水52の取り込みを防止できることである。加えて、翼型22の外側モールド線28に対して固定に空気取り入れ口72を配置することにより、空気取り入れ口72は、外部流50の高圧リカバリーを達成し、運動量の小さい境界層40の空気の取り込みを回避することができる。しかしながら、上述のように、空気取り入れ口72は、
図3及び4に示すものと同様の展開可能な構成で提供することができ、この場合、空気取り入れ口72は、使用に際して開位置74へと外側に向かって旋回し、使用しないときは閉位置76へと旋回することができる。
【0054】
図1及び2に示すように、本明細書に開示されるパージングシステム70は、外側の外板表面34に掛かる局所的静圧qと比較した場合に、吸込みキャビティ38内に生成された圧力が、多孔質外板30の内側の外板表面32に設けられた孔36内に捕捉された液体54の表面張力の抗力より大きくなるように、後退翼22に設置される。上述のように、孔36は、液体内部の表面張力の抗力により内側の外板表面32に沿って液体54が保持されるような大きさを有することができる。液体54の表面張力の抗力に打ち勝って、液体54を外部大気48に放出するために、吸込みキャビティ38内のキャビティ圧pcは、多孔質外板30の外側の外板表面34に掛かる局所的静圧qより大きいことが必要である。
【0055】
従来技術に既知であるように、所定の飛行高度における表面上の局所的静圧は、表面近傍の外部流50の局所的速度の二乗に関連している。また、吸込みキャビティ38内のキャビティ圧pcは、空気取り入れ口72の開口78における外部流50の圧力に関連している。したがって、多孔質外板30の内側の外板表面32に沿って孔36内に保持される液体54の表面張力の抗力に打ち勝つためには、孔36は、キャビティ圧pcと局所的静圧qとの差異がこの表面張力の抗力に打ち勝つのに十分大きくなるような大きさ及び構造を有さなければならない。孔36の大きさをそのように構成することにより、孔36内の液体54は、キャビティ圧の下で、外部大気48中に容易に放出される。孔36は、好ましくは、キャビティ圧pcを蓄積させて孔36内の表面張力の抗力を克服するのに十分な集約的漏出領域を生むような大きさ及び構造を有する。一実施形態では、孔36は、十分なキャビティ圧pcを生成するために幅が最小となるような大きさ及び構造を有することができる。同様に、全ての孔36の断面積の和は、孔36内に保持された液体54が放出されるように局所的静圧qに打ち勝つのに必要なキャビティ圧pcの量を決定するうえでの因子となりうる。
【0056】
パージングシステム70が設置される翼型22の前縁後退角λ
LEも、最適な孔36の大きさと孔36の間隔とに関係している。理想的には、空気取り入れ口72は、それによって収集される圧の合計が局所的静圧qに等しくなるように構成することができる。例えば、比較的低い飛行高度において、200ノットでは、局所的静圧qは約1psiである。空気取り入れ口72及びパージングシステム70の好ましい構成は、吸込みキャビティ38への約1psiの送達を可能にするものである。表面張力の抗力に打ち勝つのに必要なディフューザー98の質量流量は、孔36の断面積の合計を決定することと、吸込みキャビティ38の断面積と、局所的静圧qの下で吸込みキャビティ38に掛かる外圧の分布とを求めることにより、計算することができる。
【0057】
外圧の分布は、翼型22の前縁の後退角λ
LEの影響を受ける。これに関して、翼型22の前縁の後退角λ
LEは負でありうる(即ち、飛行方向に対して翼の前縁が前進角を有する)。圧力は、通常、前縁の後退角λ
LEの余弦の二乗により変動するので、一般的には、前縁の後退角λ
LEを増加させると、外側の外板表面34に沿って掛かる局所的静圧qがそれに比例して低下する。前縁の後退角λ
LEが比較的小さい翼型の場合、吸込みキャビティ38と外部大気48との圧力差Δpはそれに比例して小さいので、孔36は比較的大きな直径に形成される。
【0058】
図10は、ドアアセンブリ110が、第1のドアに旋回可能に取り付けられた第2のドア114を有するように構成された空気取り入れ口72の斜視図である。図示のように、第2のドア114は、第1のドア112の一部を形成している。第1のドア112及び第2のドア114の各々は、開位置と閉位置との間を旋回により移動可能であり、開位置74に移動したとき、各々は開口78を画定する。第1のドア112の開口78は、好ましくは、第2のドア114の開口78とは反対方向に向く。これに関して、第1のドア112及び第2のドア114の開口78は、互いに反対方向を向く。
図10に示すように、第1のドア112の開口78は前向き(即ち、到来する外部流50の方向に向く)、第2のドア114の開口は後ろ向きとすることができる。
【0059】
図11はドアアセンブリ110の断面図であり、図では、第1のドア112が開位置74にあり、第2のドア114が閉位置76にある。図示のように、第1のドア112の開口78は、到来する外部流50を捕獲するために前向きとすることができ、捕獲された外部流は、空気取り入れ口72に関して上述したものと同様の方法で孔36内の汚染物質が除去されるように、吸込みキャビティ38に運ばれて孔36から放出される。第1のドア112は、第1の旋回軸116を中心として開位置74と閉位置76との間を旋回可能である。
【0060】
図12は、ドアアセンブリ110の断面図であり、図では、第2のドア114が開位置74にあり、第1のドア112が閉位置76にある。第2のドア114は、第2の旋回軸118を中心として開位置74と閉位置76との間を旋回可能である。開位置74に移動すると、第2のドア114の開口78は、第2のドア114の後方に、吸込みキャビティ38内部のキャビティ圧pcより小さくなりうる外圧peを有する外側領域を生成しうる。外圧peは吸込みキャビティ38内部に吸引力を生成し、この吸引力によって外部流50が孔36を通って吸込みキャビティ38内に引き込まれ、次いでドアアセンブリ110の方へ流れて第2のドア114の開口78から外部大気48中に放出される。
【0061】
図13は、本明細書において開示されるパージングシステム70を、多孔質外板30を有する層流制御システムをパージするための方法論の観点から説明している。図示及び上述のように、本層流制御システムは、多孔質外板30に直接隣接して配置される吸込みキャビティ38を含む。これに関して、吸込みキャビティ38は、多孔質外板30に形成された複数の孔36により外部大気48に流体連通可能に接続している。一実施形態では、多孔質外板30は、境界流40の制御が望まれて、吸気を用いて同制御が行われる翼型の一領域に配置することができる。これに関して、層流制御システムは、水平又は垂直尾翼の前縁24上に、又は翼20の前縁24に沿って設置することができる。しかしながら、パージングシステム70は、あらゆる位置、且つ航空ビークルに限定されず、陸上ビークル及び他の種類のビークルも含むことができるあらゆるビークルに設置された層流制御システムをパージできるように適合させることができり。
【0062】
図13に示すように、本方法は、外部大気48の外部流50に向かって空気取り入れ口72を開くステップ150を含むことができる。外部流50は、高圧でありえ、空気取り入れ口72を外部流に向かって開くことができるように、境界層40に隣接しうる。本方法のステップ152は、外部流50の少なくとも一部を空気取り入れ口72に形成された開口78から吸込みキャビティ38へと運ぶことを含む。
図1〜11に示すように、そのような運搬は、ディフューザー98を使用することで容易に行われ、このディフューザーの断面積は、好ましくは、気流が空気取り入れ口72から吸込みキャビティ38へ運ばれるにつれて、気流の速度が低下するように、徐々に拡大させる。ステップ154は、吸込みキャビティ38内に運ばれた気流を孔36から放出することにより孔36をパージして、孔36内の、液体及び/又はその他の異物などの汚染物質を除去すること、及び/又は航空機10が雲又は雨を通過して飛行するときに起こりうる汚染により孔36が閉塞する又は詰まることを防止することを含む。
【0063】
本方法は、更に、空気取り入れ口72を開位置74と閉位置76との間で展開させるステップを含む。空気取り込み口72の展開のこのような作動は、パイロットによる作動及び/又は環境による作動(即ち自動)で行うことができるか、或いはそれらを組み合わせて行うことができる。例えば、空気取り入れ口72を、航空機10の離陸前に一般に行われるようなフラップの使用により自動的に展開することが考慮可能である。更なる実施形態では、パージングシステム70は、空気取り入れ口72がパイロットにより起動されて展開された状態になるように構成することができる。更に、空気取り入れ口72は、吸込みキャビティ38内に所望の圧力を達成するために、加えて航空機10が動作する飛行パラメータ、並びに高度及び局所的な気象条件のような環境的検討事項を考慮して、閉位置76と開位置74との間のいずれの位置にも展開することができる。
【0064】
加えて、層流制御システムをパージする方法は、空気取り入れ口72によって捕獲された外部流50から液体54又は異物などの汚染物質を抽出することを含む。汚染物質のこのような抽出は、空気取り入れ口72の形状を、汚染物質が外側カウル86の内側に衝突した後空気取り入れ口72の後端84に向かって案内されて、そこに形成されたドレーン穴88から排出されるように構成することにより、行うことができる。同様に、本方法は、更に、汚染物質がディフューザー98の側壁に向かい、ディフューザー98の最下部に配置されるドレーン機構104に収集されるように、外部流50を空気取り入れ口72から吸込みキャビティ38まで運ぶステップを含む。
【0065】
上述の説明は、例示を目的としているのであって、限定のために提供されているのではない。上記開示内容により、当業者であれば、本明細書に開示された実施形態の範囲及び理念の範囲内で変形例を考案できるであろう。更に、本明細書に開示された実施形態の種々の特徴は、単独で、又は互いに様々に組み合わせて使用することができ、それらの特徴が本明細書に開示された特定の組み合わせに限定されることは意図されていない。したがって、特許請求の範囲が、ここに例示された実施形態によって制限されることはない。