(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738776
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】圧力逃がし弁のための形状記憶合金トリガー
(51)【国際特許分類】
F16K 31/70 20060101AFI20150604BHJP
F16K 17/38 20060101ALI20150604BHJP
F17C 13/04 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
F16K31/70 B
F16K17/38 Z
F17C13/04 301D
【請求項の数】14
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-553064(P2011-553064)
(86)(22)【出願日】2010年3月3日
(65)【公表番号】特表2012-519816(P2012-519816A)
(43)【公表日】2012年8月30日
(86)【国際出願番号】US2010026009
(87)【国際公開番号】WO2010101976
(87)【国際公開日】20100910
【審査請求日】2013年3月1日
(31)【優先権主張番号】61/156,900
(32)【優先日】2009年3月3日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511167010
【氏名又は名称】ヘキサゴン テクノロジー アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マキンソン ジョン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】エイフーセン ジョン エイ.
【審査官】
関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3065038(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0011563(US,A1)
【文献】
実開昭61−183417(JP,U)
【文献】
特表2005−533956(JP,A)
【文献】
特開昭62−129487(JP,A)
【文献】
実開昭58−074666(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/64−31/72,
F16K 17/36−17/42,
F17C 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
第1の位置にあるレバーを備える弁であって、該第1の位置にある該レバーにより弁が閉じられる、弁と、
前記レバーに接続された第1の端部を有する長尺の形状記憶合金要素であって、前記形状記憶合金要素は、第1の長さを有するように引っ張られ、前記形状記憶合金要素の少なくとも一部分を、該形状記憶合金要素のオーステナイト変態温度の温度または該オーステナイト変態温度を超える温度に曝すことで、前記形状記憶合金要素を前記第1の長さ未満の第2の長さに縮めて、該形状記憶合金要素の前記第1の端部が前記レバーを第2の位置へと第1の方向に牽引して、前記弁が開かれる、形状記憶合金要素と、
前記長尺の形状記憶合金要素が切断されると、前記レバーを前記第1の位置および前記第2の位置とは異なる第3の位置へと前記第1の方向とは反対の第2の方向に付勢する付勢要素であって、該第3の位置へと付勢された前記レバーにより前記弁が開かれる、付勢要素と
を備える、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記弁は、圧力放出弁である、装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の装置であって、
圧力容器上に配置される、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であって、
前記弁は、前記圧力容器のボス上に搭載される、装置。
【請求項5】
請求項3に記載の装置であって、
前記長尺の形状記憶合金要素は、前記圧力容器の長さに沿って配置される、装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置であって、
前記弁は、1/4回転弁である、装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置であって、
前記形状記憶合金要素の少なくとも一部分が内部に配置される管をさらに備える、装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置であって、
前記管は、複数の穿孔を備える、装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置であって、
前記形状記憶合金要素は、位置的に固定されている第2の端部を有している、装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置であって、
前記形状記憶合金要素は、第2の弁における第2のレバーに接続される第2の端部を有している、装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置であって、
前記レバーの前記第1の位置および前記レバーの前記第2の位置は、90°の回転角度だけオフセットされる、装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置であって、
前記第3の位置は、前記レバーの前記第1の位置と前記レバーの前記第2の位置との間のオフセットの回転方向と反対の回転方向に90°の回転角度だけ前記第1の位置からオフセットされる、装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置であって、
前記付勢要素は、ばねである、装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の装置であって、
前記形状記憶合金要素は、タンクの一端から他端まで螺旋配置である、装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
圧力容器は、一般に、例えば水素、酸素、天然ガス、窒素、プロパン、および他の燃料の貯蔵など、圧力下で種々の流体を収容するために使用される。適したコンテナ材料は、熱硬化性または熱可塑性樹脂によって共に結合された、巻かれたガラス繊維フィラメントまたは他の合成フィラメントのラミネート層を含む。ポリマーまたは他の非金属弾性のライナーまたはブラダーが、しばしば複合材シェル内に配設されて、容器を封止し、内部流体が複合材料に接触することを防止する。容器の複合材構成は、重量が軽いこと、ならびに、腐食、疲労、および完全破損に対する耐性などのいくつかの利点をもたらす。これらの特性は、圧力容器の構成において主要な力の方向に通常配向される強化繊維またはフィラメントの高い比強度に起因している。
【0002】
図1,2は、例えば米国特許第5,476,189号に開示されているような長尺状の圧力容器10を図示しており、米国特許第5,476,189号は、参照によって本明細書に援用される。容器10は、複数の端部14を有する本体部12を備えている。通常アルミニウムで構成されるボス16は、容器10の一端または両端に設けられ、容器10の内部と連通するためのポートを提供する。容器10は、外側複合材シェル18によって覆われた内側ポリマーライナー20から形成される。この場合、「複合材」は、例えばフィラメント巻き構造またはフィラメント積層構造などの繊維強化樹脂マトリクス材料を意味する。複合材シェル18は全ての構造負荷を分離し、ライナー20はガス障壁をもたらす。
【0003】
圧力容器が高熱にさらされると、火炎の場合と同様に、熱は、容器内のガスの圧力を増加させる。典型的な鋼製容器の場合、1つまたは複数の破裂ディスクが、容器の端部ポートにおける弁体内に設けられる。これらのディスクは、圧力増加に反応して、タンクが破裂する前にガスを放出する。
【0004】
しかしながら、複合材容器の場合、複合材は、鋼のように熱くならないので、圧力は、同じようにタンク内で上昇しない(このため、圧力増加によって作動される圧力放出弁は適切ではない)。しかしながら、熱にさらされ続けると、複合材容器内の圧力が増加して、最終的には、破裂が生じることにより、ガスの制御されない放出および/または爆発をもたらす。
【0005】
先行技術では、複数の温度センサが、タンクに沿った個別の場所に配置される。こうしたセンサは、タンク用の1つまたは複数の圧力逃がし弁に動作可能に結合される。こうした結合は、電気的に、化学的に、機械的に、または加圧ラインによって達成されてもよい。ある例では、複数の個別のセンサは、タンクの外側に沿って延びる加圧管内に締結される。しかしながら、いくつかの商品(たとえば高圧ガス)の輸送を規制する一部の当局は、輸送中に加圧されるラインまたはマニホールドの使用を抑制している。さらに、タンク上の個別の場所に配置されたセンサの使用は、センサ範囲にないタンクの部位を残している。
[概要]
本開示は、弁と、長尺状の形状記憶合金要素とを備える装置を説明する。弁は、第1の位置にあるレバーを備え、第1の位置にあるレバーにより弁が閉じる。長尺状の形状記憶合金要素は、レバーに接続された第1の端部を有する。形状記憶合金要素は、第1の長さを有するように引っ張られていて、形状記憶合金要素の少なくとも一部分が、当該形状記憶合金要素のオーステナイト変態温度の温度またはオーステナイト変態温度を超える温度に曝されて、形状記憶合金要素が第1の長さ未満の第2の長さに縮まることにより、形状記憶合金要素の第1の端部がレバーを第2の位置まで牽引して、弁が開かれる。
【0006】
本概要は、以下の詳細な説明でさらに説明する概念を簡略化した形態で導入するために提供される。本概要は、開示された主題または特許請求された主題の重要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図しておらず、また、開示された主題または特許請求された主題のそれぞれの開示された実施形態または全ての実施を説明することを意図していない。具体的には、一実施形態に関して本明細書で開示される特徴は、別の実施形態にも同等に適用可能であってよい。さらに、本概要は、特許請求された主題の範囲を決定するときの補助として使用されることを意図していない。多くの他の新規な利点、特徴、および関係は、本説明が進むにつれて明らかになるであろう。次に続く図および説明は、例証的な実施形態をより詳細に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
開示された主題は、添付の図を参照してさらに説明されるであろう。図では、同じ構造またはシステム要素は、いくつかの図にわたって同じ参照符号によって参照される。
【
図2】
図1のライン2−2に沿って切取った、このような圧力容器の一端を通る部分断面図である。
【
図3】本開示の圧力逃がし弁のための例示的な形状記憶合金トリガーを組み込んでいる長尺状の圧力容器の側面図である。
【
図4A】圧力逃がし弁が閉鎖位置にある、
図3の圧力容器の端部の一部分の概略図である。
【
図4B】圧力逃がし弁が第1の開放位置にある、
図3の圧力容器の端部の一部分の概略図である。
【
図4C】圧力逃がし弁が第2の開放位置にある、
図3の圧力容器の端部の一部分の概略図である。
【
図5】容器の各端部で圧力逃がし弁に接続された例示的な形状記憶合金トリガーを組み込んでいる長尺状の圧力容器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記で特定した図は、開示された主題の1つまたは複数の実施形態を記載しているものの、本開示で述べるように、他の実施形態も想定される。全ての場合において、本開示は、開示された主題を限定ではなく代表として提示する。本開示の原理の範囲および精神内に入る多くの他の変更形態および実施形態が、当業者によって考案され得ることが理解されるべきである。
【0009】
図は、一定の縮尺で描かれていない可能性がある。具体的には、一部の特徴は、明確にするために、他の特徴に対して拡大され得る。さらに、例えば上方(above)、下方(below)、上方(over)、下方(under)、上部(top)、底部(bottom)、側部(side)、右(right)、左(left)、垂直(vertical)、水平(horizontal)などのような用語が使用される場合、それらの用語は、説明を理解することを容易にするためだけに使用されることが理解される。構造が他の方向に配向されてもよいことは想定されている。
[詳細な説明]
本開示は、具体的には容器が火炎に曝されるときの、例えば複合材円筒状ガス貯蔵容器などの圧力容器の制御された減圧のためのセンサと弁との組立体を提供する。本開示は、圧力に基づいて弁を使用して過剰なガスを除去するというよりもむしろ、容器内からガスを放出するための温度作動式のセンサと弁との組立体21を提供する。
図3に図示されるように、1つの管22が、圧力容器10’の外側に搭載され、容器10’の長さに沿って延在している。例示的な実施形態では、管22は、ステンレス鋼で作られ、0.25インチの外径を有する。例示的な実施形態では、管22は、(
図4Cに示された)複数の穿孔40を有し、より自由な熱流が管22内に入ることができる。圧力除去または放出弁(PRV)24は、管22における第1の端部26付近のボス16’上に搭載される。
【0010】
例えばワイヤ28などの長尺状の形状記憶合金(SMA)要素は、約10%引っ張ること(ワイヤ28を伸ばすこと)によって「設定(set)」される。この引っ張りは、SMAのオーステナイト開始温度未満の温度で達成される。引っ張られたワイヤ28は、管22内に挿通され、PRV24のレバー32に対して固定される。ワイヤ28の第1の端部30は、PRV24のレバー32に取り付けられる。ワイヤ28の第2の端部34は、例えば、(例えば機械的締結具によって、またはワイヤ28における第2の端部34を覆って管22における第2の端部36を加締めることなどによって)管22における第2の端部36に取り付けられることなどによって、管22に対して固定される。例示的な実施形態では、ワイヤ28における第2の端部34は、圧力容器10’に対して位置的に固定される。
【0011】
例示的な実施形態では、PRV24は、従来の1/4回転弁である。
図4Aは、閉鎖位置にあるPRV24を示し、レバー32が垂直位置にある。こうした従来の1/4回転弁を用いて、レバー32を約90°(
図4Bまたは4Cに示された位置まで)回転させることによって、弁が開いて、ガスがボス16’から漏出することができる。
【0012】
例示的な実施形態では、ワイヤ28のオーステナイト変態温度まで、またはその温度を超えて、ワイヤ28を過熱すると、ワイヤ28が6〜8%だけ収縮する。そのため、変態されたワイヤの各1フィートについて、ワイヤ28によって回復された引っ張りは、ワイヤ28を0.72〜0.96インチだけ縮める。ワイヤ28が短くなると、第1の端部30は、(0.06インチのワイヤ径の場合)約120ポンドの力で引いて、レバー32を回動させ、PRV24を開く。例示的な実施形態では、容器10’の必要な部位を、ワイヤ28の変態温度に、またはその温度を超えた温度に曝すことで、
図4Bに図示された開放位置までレバー32を牽引するのに適切にワイヤ28が縮まるように、開示されたトリガーが設計される。例示的な実施形態では、PRV24は、ワイヤ28全体の収縮が1インチでトリガーするように設計されている。ワイヤ28の端部30は、図示された実施形態では、レバー32の端部に取り付けられている一方、ワイヤ32は、PRV24を開くのに必要とされる変位および牽引力を考慮して、特定の用途に適切なように別の位置でレバー32に取り付けられ得る。
【0013】
センサとの弁との組立体21をトリガーするための熱は、SMAワイヤ28の長さに沿ってどこにでも存在し得る。例示的な実施形態では、SMAワイヤ28は、容器10’の実質的に全長に沿って容器表面に平行な実質的に直線で延在するので、圧力容器10’を当該圧力容器10’の全長にわたり保護する。他の実施形態では、管22およびワイヤ28は、火炎または高温が検出される可能性があるさらなる位置まで延在する。ワイヤ28の任意の部位が、定められた温度を超えて加熱される場合、ワイヤは、一定の程度だけ収縮することになる。ワイヤ28が十分に収縮する場合、ワイヤ28の端部30の移動がレバー32を牽引して、PRV24を開く。PRV24がこうして開いた状態で、容器10’内からの、加圧されたガスが、制御された方式で開いたPRV24を通して漏出できる。
【0014】
したがって、SMAワイヤ28は、容器10’の全長に沿った温度センサとして機能するので、局所的な火炎に反応して、容器10’からガスを放出することができる。開示されたトリガー構成は、あらゆる長さの容器、さらに、非常に長い圧力容器を保護するのに使用され得る。2つ以上の管22およびワイヤ28が、単一の弁24上で使用され得る。管22およびワイヤ28は、一直線の経路に限定されるのではなく、ワイヤ28が管22内で可動である限り曲げられ得る。例えば、タンクの一端から他端まで螺旋配置で置かれたSMAワイヤ28は、タンクの全ての側部に関する保護ならびにタンクの長さについての保護を提供する。管22は、センサワイヤ28の性能に悪影響を与える可能性がある環境条件からセンサワイヤ28を保護する。この構成は、比較的安価なセンサ組立体21をもたらす。オーステナイト変態温度を超える温度にワイヤ28が曝されるときにPRV24がトリガーされることになるだけであるため、開示されたセンサ組立体21は誤ったトリガー動作を最小限にする。変態温度は、ワイヤ合金組成によって決定される。1つの例示的な実施形態では、合金は、54.79重量%ニッケルおよび45.21重量%チタンであり、100℃(212°F)の変態温度を有する。力の量は、形状記憶要素またはワイヤ28の断面積(例えば直径)を選択することによって制御され得る。約0.06インチの直径を有する例示的なワイヤは、周囲温度が特定の合金の変態温度を超えると、約120ポンドの引張りを生じる。より大きな力は、より大きな断面積を有するワイヤで達成される。生じる力は、長さおよび温度に本質的に無関係であるので、より高い温度またはより大きな熱入力は、変態によって生じる力を著しく増加または減少させないことになる。センサ組立体21は、所定場所に置かれると、圧力容器10’の寿命の間、本質的にメンテナンスフリーである。形状記憶ワイヤ28は、変態が起こるまで、本質的に応力下にない。
【0015】
圧力放出デバイスはまた、ワイヤ28が切断される場合にトリガーされるように設定され得る。例示的な実施形態では、レバー32は、(例えば、ばね38などによって)
図4Aの「オフ」位置から約90°の回転角度だけオフセットされる
図4Cに示される方向に(
図4A,4Bにそれぞれ示される「オフ」位置と「オン」位置との間のオフセットと反対の方向に)付勢される。そのため、ワイヤ28が切断され、もはやレバー32上に牽引力を加えない場合、レバー32が
図4Cに図示された位置に自動的にはじかれることにより、PRV24が開く。
【0016】
図5に図示される別の例示的な実施形態では、ワイヤ28の第2の端部34は、第2のPRVのレバーに取り付けられる。ワイヤ28の第2の端部34が第2のPRVのレバーに取り付けられることで、2つのPRVが作動できることになり、両方の端部14’から容器10’を通気させる。さらに別の実施形態では、開示された管とSMA弁とセンサとの組立体21は、例えば火炎鎮圧システムなどの(PRVだけでなく)あらゆるデバイスを作動させるのに使用され得る。
【0017】
本開示の主題がいくつかの実施形態を参照して説明されてきたが、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細において変更が行われ得ることを当業者は認識するであろう。さらに、一実施形態に関して開示されたあらゆる特徴は、別の実施形態に組み込まれてもよく、その逆もそうである。