特許第5738777号(P5738777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738777
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
   H02M3/28 K
   H02M3/28 C
   H02M3/28 P
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-10758(P2012-10758)
(22)【出願日】2012年1月23日
(65)【公開番号】特開2013-150490(P2013-150490A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】金城 博文
(72)【発明者】
【氏名】重岡 恵二
(72)【発明者】
【氏名】林 裕二
(72)【発明者】
【氏名】中村 公計
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−284071(JP,A)
【文献】 特開2003−284330(JP,A)
【文献】 特開2009−106038(JP,A)
【文献】 特開2010−063238(JP,A)
【文献】 特開2002−305873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00− 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次巻線と2次巻線を有する変圧器と、
前記1次巻線に接続され、スイッチングすることで入力される直流電圧を交流電圧に変換して前記1次巻線に印加するスイッチ手段と、
前記2次巻線に接続され、前記2次巻線の交流電圧を直流電圧に変換して出力する変換手段と、
電圧指令と前記変換手段の出力する出力電圧に基づいて電流指令を求めるとともに、前記電流指令が最大電流指令以下のときには前記電流指令と前記1次巻線に流れる電流に基づいて、前記電流指令が前記最大電流指令より大きいときには前記最大電流指令と前記1次巻線に流れる電流に基づいて前記スイッチ手段を制御する制御手段と、
を備えた電力変換装置において、
前記制御手段は、前記スイッチ手段に入力される入力電圧と前記変換手段の出力する出力電圧に基づいて前記最大電流指令を調整することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
1次巻線と2次巻線を有する変圧器と、
前記1次巻線に接続され、スイッチングすることで入力される直流電圧を交流電圧に変換して前記1次巻線に印加するスイッチ手段と、
前記2次巻線に接続され、前記2次巻線の交流電圧を直流電圧に変換して出力する変換手段と、
電圧指令と変換手段の出力する出力電圧に基づいてデューティ指令を求めるとともに、1次巻線に流れる電流が最大電流指令以下のときにはデューティ指令に基づいて、1次巻線に流れる電流が最大電流指令より大きいときには1次巻線に流れる電流と最大電流指令に基づいてスイッチ手段を制御する制御手段と、
を備えた電力変換装置において、
前記制御手段は、前記スイッチ手段に入力される入力電圧と前記変換手段の出力する出力電圧に基づいて前記最大電流指令を調整することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記変換手段の出力する出力電流の増加に伴って出力電圧が垂下する垂下特性の傾きを指示する垂下特性傾き指令に基づいて前記最大電流指令を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記スイッチ手段に入力される入力電力に対する前記変換手段の出力する出力電力の割合である電力変換効率に基づいて前記最大電流指令を調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記1次巻線に流れる電流を補正するための補償ランプ波の傾きを指示するスロープ補償傾き指令に基づいて前記最大電流指令を調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御手段は、遅延時間に基づいて前記最大電流指令を調整することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
車両に搭載されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流指令と変圧器の1次巻線に流れる電流に基づいてスイッチ手段を駆動する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流指令と変圧器の1次巻線に流れる電流に基づいてスイッチ手段を制御する電力変換装置として例えば文献1に開示されているDC−DCコンバータがある。
【0003】
このDC−DCコンバータは、目標電圧と出力電圧の差分電圧に基づいて目標電流を求める。目標電流が所定値以下のときには、所定デューティ比のパルス信号を生成し出力する。一方、目標電流が所定値より大きくなると、デューティ比が所定デューティ比より小さい、デューティ比の制限されたパルス信号を生成し出力する。そして、トランスの1次巻線に流れる電流が目標電流より小さいときには、生成したパルス信号に基づいてトランジスタを制御する。一方、トランスの1次巻線に流れる電流が目標電流以上になると、パルス信号の出力を停止してトランジスタをオフする。
【0004】
また、別のDC−DCコンバータがある。この別のDC−DCコンバータは、目標電圧と出力電圧の差分電圧に基づいて目標電流を求める。そして、トランジスタを制御してトランスの1次巻線に通電する。目標電流が定格値以下であり、出力電圧を目標電圧に制御する定電圧制御領域においては、1次巻線に流れる電流のピーク値が目標電流に達すると1次巻線への通電を停止する。一方、目標電流が定格値より大きくなり、出力電流を定格値に制御する定電流制御領域においては、1次巻線に流れる電流のピーク値が定格値に達すると1次巻線への通電を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−131116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、トランスの1次巻線に流れる電流は、インダクタンスの影響により時間とともに増加する。ここで、1次巻線に流れる電流の時間に対する傾きは、トランスのT型等価回路を用いた解析から明らかなように、DC−DCコンバータの入出力電圧によって変化する。
【0007】
前述したように、定電流制御領域では、1次巻線に流れる電流のピーク値が定格値に達すると1次巻線への通電を停止する。定格値が一定値である場合、DC−DCコンバータの入出力電圧が変化すると、1次巻線に流れる電流の傾きが変化する。その結果、1次巻線に流れる電流の平均値が変化してしまう。つまり、DC−DCコンバータの入出力電圧の変化によって、定電流制御領域におけるDC−DCコンバータの出力電流特性が変化してしまう。この場合、出力電流特性のばらつきを考慮して素子等の電流容量を大きめに設定しなければならない。そのため、DC−DCコンバータが大型化するとともにコストアップしてしまうという問題があった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、定電流制御領域において、入出力電圧の変化によって発生する出力電流特性のばらつきを抑えることができる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らは、この課題を解決すべく鋭意研究し試行錯誤を重ねた結果、電力変換装置の入出力電圧に基づいて最大電流指令を調整することで、定電流制御領域において、入力出力電圧の変化によって発生する出力電流特性のばらつきを抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の電力変換装置は、1次巻線と2次巻線を有する変圧器と、1次巻線に接続され、スイッチングすることで入力される直流電圧を交流電圧に変換して1次巻線に印加するスイッチ手段と、2次巻線に接続され、2次巻線の交流電圧を直流電圧に変換して出力する変換手段と、電圧指令と変換手段の出力する出力電圧に基づいて電流指令を求めるとともに、電流指令が最大電流指令以下のときには電流指令と1次巻線に流れる電流に基づいて、電流指令が最大電流指令より大きいときには最大電流指令と1次巻線に流れる電流に基づいてスイッチ手段を制御する制御手段と、を備えた電力変換装置において、制御手段は、スイッチ手段に入力される入力電圧と変換手段の出力する出力電圧に基づいて最大電流指令を調整することを特徴とする。
【0011】
前述したように、定電流制御領域における特性のばらつきは、電力変換装置の入出力電圧が変化することによって発生する。しかし、この構成によれば、制御手段は、電力変換装置の入出力電圧に基づいてスイッチング手段を制御するための最大電流指令を調整する。そのため、定電流制御領域において、入出力電圧の変化によって発生する出力電流特性のばらつきを抑えることができる。
【0012】
請求項2に記載の電力変換装置は、1次巻線と2次巻線を有する変圧器と、1次巻線に接続され、スイッチングすることで入力される直流電圧を交流電圧に変換して1次巻線に印加するスイッチ手段と、2次巻線に接続され、2次巻線の交流電圧を直流電圧に変換して出力する変換手段と、電圧指令と変換手段の出力する出力電圧に基づいてデューティ指令を求めるとともに、1次巻線に流れる電流が最大電流指令以下のときにはデューティ指令に基づいて、1次巻線に流れる電流が最大電流指令より大きいときには1次巻線に流れる電流と最大電流指令に基づいてスイッチ手段を制御する制御手段と、を備えた電力変換装置において、制御手段は、スイッチ手段に入力される入力電圧と変換手段の出力する出力電圧に基づいて最大電流指令を調整することを特徴とする。この構成によれば、制御手段が、電力変換装置の入出力電圧に基づいてスイッチング手段を制御するための最大電流指令を調整する。そのため、定電流制御領域において、入出力電圧の変化によって発生する出力電流特性のばらつきを抑えることができる。
【0013】
請求項3に記載の電力変換装置は、制御手段は、変換手段の出力する出力電流の増加に伴って出力電圧が垂下する垂下特性の傾きを指示する垂下特性傾き指令に基づいて最大電流指令を調整することを特徴とする。この構成によれば、定電流制御領域において、入出力電圧の変化に伴って発生する、出力電流に対する出力電圧の傾きのばらつきを確実に抑えることができる。
【0014】
請求項4に記載の電力変換装置は、制御手段は、スイッチ手段に入力される入力電力に対する変換手段の出力する出力電力の割合である電力変換効率に基づいて最大電流指令を調整することを特徴とする。この構成によれば、入出力電圧の変化に伴って発生する、定電流制御領域の開始点における出力電流のばらつきを確実に抑えることができる。
【0015】
請求項5に記載の電力変換装置は、制御手段は、1次巻線に流れる電流を補正するための補償ランプ波の傾きを指示するスロープ補償傾き指令に基づいて最大電流指令を調整することを特徴とする。この構成によれば、スロープ補償傾き指令の違いによる出力電流特性のばらつきを抑えることができる。
【0016】
請求項6に記載の電力変換装置は、制御手段は、遅延時間に基づいて最大電流指令を調整することを特徴とする。この構成によれば、遅延時間の違いによる出力電流特性のばらつきを抑えることができる。
【0017】
請求項7に記載の電力変換装置は、車両に搭載されることを特徴とする。この構成によれば、車両に搭載される電力変換装置で、定電流制御領域において、入出力電圧の変化によって発生する特性のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の回路図である。
図2】電流参照値が最大電流参照値以下である、定電圧制御領域における動作を説明するためのタイミングチャートである。
図3】電流参照値が最大電流参照値より大きい、定電流制御領域における動作を説明するためのタイミングチャートである。
図4】入力側回路の入力電圧及び出力側回路の出力電圧と、入力側回路の入力電流の傾きの関係を説明するためのグラフである。
図5】定電流制御領域における、入力側回路の入力電流の傾きと1次巻線に流れる電流の平均値の関係を説明するためのグラフである。
図6】最大電流参照値が一定値である場合の出力電流−出力電圧特性のグラフである。
図7】第1実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の出力電流−出力電圧特性のグラフである。
図8】第2実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の回路図である。
図9】別の実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本実施形態では、本発明に係る電力変換装置を、車両に搭載されバッテリの電圧を絶縁して降圧し電子装置に供給するDC−DCコンバータ装置に適用した例を示す。
(第1実施形態)
次に、第1実施形態のDC−DCコンバータ装置について説明する。まず、図1を参照して第1実施形態のDC−DCコンバータ装置の構成について説明する。ここで、図1は、第1実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の回路図である。
【0020】
図1に示すDC−DCコンバータ装置1(電力変換装置)は、バッテリB1の直流電圧を絶縁して降圧し、車両に搭載された電子装置S1に供給するフルブリッジ式コンバータである。DC−DCコンバータ装置1は、トランス10(変圧器)と、入力側回路11(スイッチ手段)と、出力側回路12(変換手段)と、制御回路13(制御手段)とを備えている。
【0021】
トランス10は、1次側に入力される交流電圧を絶縁した状態で降圧し2次側から出力する素子である。トランス10は、1次巻線100と、2次巻線101、102とを備えている。1次巻線100と2次巻線101、102の巻数比は、n1:n2に設定されている。つまり、巻線比がn1/n2に設定されている。1次巻線100の一端と他端は、入力側回路11に接続されている。2次巻線101、102は、直列接続されている。具体的には、2次巻線101の一端と2次巻線102の一端が接続されている。2次巻線101、102の他端、及び、2次巻線101、102の直列接続点は、出力側回路12にそれぞれ接続されている。
【0022】
入力側回路11は、1次巻線100とバッテリB1の間に接続され、スイッチングすることで入力されるバッテリB1の直流電圧を交流電圧に変換して1次巻線100に印加する回路である。入力側回路11は、4つのスイッチ、スイッチ110〜113を備えている。スイッチ110〜113は、スイッチングすることで入力されるバッテリB1の直流電圧を交流電圧に変換して1次巻線100に印加する素子である。スイッチ110、111及びスイッチ112、113は、それぞれ直列接続されている。具体的には、スイッチ110、112の一端が、スイッチ111、113の一端にそれぞれ接続されている。直列接続された2組のスイッチ110、111及びスイッチ112、113は、バッテリB1に並列接続されている。具体的には、スイッチ110、112の他端がバッテリB1の正極端に、スイッチ111、113の他端がバッテリB1の負極端にそれぞれ接続されている。つまり、スイッチ110〜113は、フルブリッジ接続されている。また、スイッチ110〜113の制御端は、制御回路13にそれぞれ接続されている。
【0023】
出力側回路12は、2次巻線101、102と電子装置S1の間に接続され、2次巻線101、102の交流電圧を直流電圧に変換して電子装置S1に供給する回路である。出力側回路12は、ダイオード120、121と、コイル122と、コンデンサ123とを備えている。
【0024】
ダイオード120、121は、2次巻線101、102にそれぞれ接続され、2次巻線101、102の交流電圧をそれぞれ整流する素子である。ダイオード120のアノードは2次巻線101の他端に、カソードはコイル122にそれぞれ接続されている。ダイオード121のアノードは2次巻線102の他端に、カソードはコイル122にそれぞれ接続されている。
【0025】
コイル122及びコンデンサ123は、ダイオード120、121によって変換された直流電圧を平滑化する素子である。コイル122の一端は、ダイオード120、121のカソードに接続されている。また、他端はコンデンサ123の一端に接続され、コンデンサ123の他端は2次巻線101、102の直列接続点に接続されている。さらに、コンデンサ123の一端は電子装置S1の正極端に、他端は電子装置S1の負極端にそれぞれ接続されている。
【0026】
制御回路13は、入力側回路11を制御する回路である。具体的には、電圧指令と出力側回路12の出力する出力電圧に基づいて電流参照値(電流指令)を求めるとともに、電流参照値が最大電流参照値(最大電流指令)以下(最大電流指令以下)である定電圧制御領域のときには電流参照値と1次巻線100に流れる電流に基づいて、電流参照値が最大電流参照値より大きい定電流制御領域のときには最大電流参照値と1次巻線100に流れる電流に基づいて入力側回路11を制御する。その際、入力側回路11に入力される入力電圧、出力側回路12の出力する出力電圧、垂下特性傾き指令値(垂下特性傾き指令)、電力変換効率、スロープ補償傾き指令値(スロープ補償傾き指令)及び遅延時間に基づいて最大電流参照値を調整する。
【0027】
ここで、最大電流参照値は、出力側回路12の出力する出力電流の最大値を指示するものである。垂下特性傾き指令値は、定電流制御領域において、出力側回路12の出力する出力電流の増加に伴って出力電圧が垂下する垂下特性の傾きを指示するものである。具体的には、出力電流に対する出力電圧の傾きを指示するものである。電力変換効率は、入力側回路11に入力される入力電力に対する出力側回路12の出力する出力電力の割合である。スロープ補償傾き指令値は、発振現象を防止するために1次巻線100に流れる電流を補正する後述する補償ランプ波の傾きを指示するものである。遅延時間は、後述するPWM信号が、スイッチのオフを指示してから実際にスイッチがオフするまでの時間である。
【0028】
制御回路13は、出力電圧検出部130と、電流参照値演算部131と、入力電圧検出部132と、最大電流参照値演算部133と、電流参照値選択部134aと、D/A変換部134bと、入力電流検出部135aと、スロープ発生部135bと、加算器135cと、比較器136と、基準信号発生部137と、PWM信号発生部138a、138bと、駆動回路139a、139bとを備えている。
【0029】
出力電圧検出部130は、電子装置S1に供給する出力側回路12の出力電圧を検出し、対応する所定電圧に変換して出力するブロックである。出力電圧検出部130は、出力側回路12の出力端に接続されている。具体的には、コンデンサ123の一端に接続されている。また、出力電圧検出部130は、電流参照値演算部131に接続されている。
【0030】
電流参照値演算部131は、出力電圧検出部130の出力電圧をデジタル値に変換するとともに、変換した出力電圧値とデジタル値として予め設定されている電圧参照値に基づいて電流参照値を決定し、デジタル値として出力するブロックである。具体的には、出力電圧値と電圧参照値の偏差を比例積分して電流参照値を求め、デジタル値として出力する。電流参照値演算部131は、出力電圧検出部130に接続されている。また、電流参照値選択部134aに接続されている。
【0031】
入力電圧検出部132は、入力側回路11に入力されるバッテリB1の電圧を検出し、対応する所定電圧に変換して出力するブロックである。入力電圧検出部132は、入力側回路11の入力端に接続されている。具体的には、スイッチ110、112の他端に接続されている。また、入力電圧検出部132は、最大電流参照値演算部133に接続されている。
【0032】
最大電流参照値演算部133は、入力電圧検出部132の出力電圧及び出力電圧検出部130の出力電圧をデジタル値に変換するとともに、変換した入力側回路11の入力電圧値及び出力側回路12の出力電圧値、デジタル値として予め設定されている電圧参照値、定格出力電流参照値、垂下特性傾き指令値、電力変換効率、スロープ補償傾き指令値及び遅延時間に基づいて最大電流参照値を調整し、デジタル値として出力するブロックである。ここで、定格出力電流参照値は、出力側回路12の定格出力電流を指示するものである。最大電流参照値演算部133は、具体的には、数1に従って最大電流参照値を求め、デジタル値として出力する。
【0033】
【数1】
【0034】
最大電流参照値演算部133は、入力電圧検出部132と出力電圧検出部130に接続されている。また、電流参照値選択部134aに接続されている。
【0035】
電流参照値選択部134aは、電流参照値が最大電流参照値以下である定電圧制御領域のときには電流参照値を、電流参照値が最大電流参照値より大きい定電流制御領域になると最大電流参照値を選択し出力するブロックである。電流参照値選択部134aは、電流参照値演算部131と最大電流参照値演算部133に接続されている。また、D/A変換部134bに接続されている。
【0036】
D/A変換部134bは、電流参照値選択部134aの選択した電流参照値又は最大電流参照値をアナログ電圧に変換して出力するブロックである。具体的には、電流参照値が最大電流参照値以下である定電圧制御領域のときには電流参照値を、電流参照値が最大電流参照値より大きい定電流制御領域になると最大電流参照値をアナログ電圧に変換して出力する。D/A変換部134bは、電流参照値選択部134aに接続されている。また、比較器136に接続されている。
【0037】
入力電流検出部135aは、バッテリB1から入力される入力側回路11の入力電流を検出し、対応する所定電圧に変換して出力するブロックである。つまり、1次巻線100に流れる電流を検出し、対応する所定電圧に変換して出力するブロックである。具体的には、スイッチ110、113がともにオンしたとき、及び、スイッチ111、113がともにオンしたときに1次巻線100に流れる電流の絶対値を検出し、対応する所定電圧に変換して出力するブロックである。入力電流検出部135aは、入力側回路11の入力端に設けられた電流センサに接続されている。具体的には、スイッチ111、113をバッテリB1に接続する配線に設けられた電流センサに接続されている。また、入力電流検出部135aは、加算器135cに接続されている。
【0038】
スロープ発生部135bは、デジタル値として予め設定されているスロープ補償傾き指令値、後述する基準信号CLK4及びリセット信号RSTに基づいて、発振現象を防止するために入力電流検出部135aの出力に加算する補償ランプ波を生成し出力するブロックである。スロープ発生部135bは、基準信号発生部137及び比較器136にそれぞれ接続されている。また、加算器135cに接続されている。
【0039】
加算器135cは、入力電流検出部135aの出力にスロープ発生部135bの出力する補償ランプ波を加算し出力するブロックである。加算器135cは、入力電流検出部135a及びスロープ発生部135bにそれぞれ接続されている。また、比較器136に接続されている。
【0040】
比較器136は、D/A変換部134bの出力電圧と、補償ランプ波の加算された入力電流検出部135aの出力電圧の比較結果に基づいてリセット信号RSTを生成し出力する素子である。比較器136の一方の入力端は、D/A変換部134bに接続されている。また、他方の入力端は、加算器135cに接続されている。さらに、出力端は、スロープ発生部135b及びPWM信号発生部138bに接続されている。
【0041】
基準信号発生部137は、所定周期毎に基準信号CLK1〜CLK4を生成し出力するブロックである。ここで、基準信号CLK1は、後述するPWM信号PWM1H、PWM1Lを生成するための信号である。基準信号CLK2は、後述するPWM信号PWM2Hを生成するための信号である。基準信号CLK3は、後述するPWM信号PWM2Lを生成するための信号である。基準信号CLK4は、補償ランプ波を生成するための信号である。基準信号発生部137は、PWM信号発生部138a、138bに接続されている。また、スロープ発生部135bに接続されている。
【0042】
PWM信号発生部138aは、基準信号発生部137の出力する基準信号CLK1に基づいて、スイッチ110、111をスイッチングするためのPWM信号PWM1H、PWM1Lを生成し出力するブロックである。PWM信号発生部138aは、基準信号発生部137に接続されている。また、駆動回路139aに接続されている。
【0043】
PWM信号発生部138bは、基準信号発生部137の出力する基準信号CLK2、CLK3と比較器136の出力するリセット信号RSTに基づいて、スイッチ112、113をスイッチングするためのPWM信号PWM2H、PWM2Lを生成し出力するブロックである。PWM信号発生部138bは、基準信号発生部137に接続されている。また、比較器136に接続されている。さらに、駆動回路139bに接続されている。
【0044】
駆動回路139a、139bは、PWM信号発生部138a、138bの出力するPWM信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lに基づいてスイッチ110〜113をスイッチングする回路である。駆動回路139a、139bは、PWM信号発生部138a、138bにそれぞれ接続されている。また、駆動回路139aはスイッチ110、111の制御端に、駆動回路139bはスイッチ112、113の制御端にそれぞれ接続されている。
【0045】
次に、図1図3を参照してDC−DCコンバータ装置の動作について説明する。ここで、図2は、電流参照値が最大電流参照値以下である、定電圧制御領域における動作を説明するためのタイミングチャートである。図3は、電流参照値が最大電流参照値より大きい、定電流制御領域における動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0046】
図1に示す出力電圧検出部130は、電子装置S1に供給する出力側回路12の出力電圧を検出し、対応する所定電圧に変換して出力する。電流参照値演算部131は、出力電圧検出部130の出力電圧をデジタル値に変換する。そして、変換した出力電圧値とデジタル値として予め設定されている電圧参照値の偏差を比例積分して電流参照値を求め、デジタル値として出力する。
【0047】
入力電圧検出部132は、入力側回路11に入力されるバッテリB1の出力電圧を検出し、対応する所定電圧に変換して出力する。
【0048】
最大電流参照値演算部133は、入力電圧検出部132の出力電圧と出力電圧検出部130の出力電圧をデジタル値に変換する。そして、変換した入力側回路11の入力電圧値及び出力側回路12の出力電圧値、デジタル値として予め設定されている電圧参照値、定格出力電流参照値、垂下特性傾き指令値、電力変換効率、スロープ補償傾き指令値及び遅延時間に基づいて、最大電流参照値を調整し、デジタル値として出力する。具体的には、数1に従って最大電流参照値を求めデジタル値として出力する。
【0049】
電流参照値選択部134aは、電流参照値が最大電流参照値以下である定電圧制御領域のときには電流参照値を、電流参照値が最大電流参照値より大きい定電流制御領域になると最大電流参照値を選択し出力する。D/A変換部134bは、電流参照値演算部131の選択した電流参照値又は最大電流参照値をアナログ電圧に変換して出力する。
【0050】
基準信号発生部137は、所定周期毎に基準信号CLK1〜CLK4を生成し出力する。具体的には、図2及び図3に示すように、周期T0毎にハイレベルとなるパルス状の基準信号CLK1を生成し出力する。基準信号CLK1の出力タイミングと同一のタイミングで、周期T0毎にハイレベルとなるパルス状の基準信号CLK2を生成し出力する。基準信号CLK2の出力タイミングに対してT0/2だけ位相がずれたタイミングで、周期T0毎にハイレベルとなるパルス状の基準信号CLK3を生成し出力する。基準信号CLK1の出力タイミングを基準とし周期T0/2毎にハイレベルとなるパルス状の基準信号CLK4を生成し出力する。
【0051】
図1に示す入力電流検出部135aは、バッテリB1から入力される入力側回路11の入力電流、つまり1次巻線100に流れる電流を検出し、対応する所定電圧に変換して出力する。
【0052】
スロープ発生部135bは、デジタル値として予め設定されているスロープ補償傾き指令値、基準信号CLK4及びRSTに基づいて補償ランプ波を生成し出力する。具体的には、図2に示すように、基準信号CLK4の立上りタイミングに同期し、時刻t1からデッドタイムtd経過後にスロープ補償傾き指令値によって指示された傾きの補償ランプ波を出力する。そして、次の基準信号CLK4のタイミングである時刻t2までにリセット信号RSTが出力されたときには、リセット信号RSTに同期して、時刻t2までにリセット信号RSTが出力されないときには、時刻t2に同期して補償ランプ波を0Vにする。以降、同様にして補償ランプ波を生成し出力する。
【0053】
図1に示す加算器135cは、入力電流検出部135aの出力にスロープ発生部135bの出力する補償ランプ波を加算し出力する。
【0054】
比較器136は、D/A変換部134bの出力電圧と補償ランプ波の加算された入力電流検出部135aの出力電圧の比較結果に基づいてリセット信号RSTを生成し出力する。具体的には、電流参照値が最大電流参照値以下である定電圧制御領域のときには、図2に示すように、補償ランプ波の加算された入力電流検出部135aの出力電圧と、電流参照値に相当するD/A変換部134bの出力電圧を比較する。一方、電流参照値が最大電流参照値より大きい定電流制御領域のときには、図3に示すように、補償ランプ波の加算された入力電流検出部135aの出力電圧と、最大電流参照値に相当するD/A変換部134bの出力電圧を比較する。そして、補償ランプ波の加算された入力電流検出部135aの出力電圧がD/A変換部134bの出力電圧より大きいときにハイレベルとなるリセット信号RSTを生成し出力する。
【0055】
図1に示すPWM信号発生部138aは、基準信号発生部137の出力する基準信号CLK1に基づいて、スイッチ110、111をスイッチングするためのPWM信号PWM1H、PWM1Lを生成し出力する。具体的には、図2及び図3に示すように、基準信号CLK1の立上りタイミングである時刻t1に同期し、時刻t1からデッドタイムtd経過後にハイレベルとなり、時刻t1からT0/2経過後の時刻t2に同期してローレベルとなるPWM信号PWM1Hを生成し出力する。また、時刻t2に同期し、時刻t2からデッドタイムtd経過後にハイレベルとなり、次の基準信号CLK1の立上りタイミングである時刻t3に同期してローレベルとなるPWM信号PWM1Lを生成し出力する。以降、同様にしてPWM信号PWM1H、PWM1Lを生成し出力する。
【0056】
図1に示すPWM信号発生部138bは、駆動信号発生部137の出力する基準信号CLK2、CLK3と比較器136の出力するリセット信号RSTに基づいて、スイッチ112、113をスイッチングするためのPWM信号PWM2H、PWM2Lを生成し出力する。具体的には、図2及び図3に示すように、時刻t2までにリセット信号RSTが出力されたときには、リセット信号RSTの立上りタイミングに同期してローレベルとなったPWM信号PWM2Lの立下りタイミングからデッドタイムtd経過後に、時刻t2までリセット信号RSTが出力されないときには、時刻t2からデッドタイムtd経過後にハイレベルとなり、時刻t3までにリセット信号RSTが出力されたときには、リセット信号RSTの立上りタイミングに同期して、時刻t3までにリセット信号RSTが出力されないときには、時刻t3に同期してローレベルとなるPWM信号PWM2Hを生成し出力する。また、時刻t3までにリセット信号RSTが出力されたときには、リセット信号RSTの立上りタイミングに同期してローレベルとなったPWM信号PWM2Hの立下りタイミングからデッドタイムtd経過後に、時刻t3までリセット信号RSTが出力されないときには、時刻t3からデッドタイムtd経過後にハイレベルとなり、時刻t3からT0/2経過後の時刻t4までにリセット信号RSTが出力されたときには、リセット信号RSTの立上りタイミングに同期して、時刻t4までにリセット信号RSTが出力されないときには時刻t4に同期してローレベルとなるPWM信号PWM2Lを生成し出力する。以降、同様にしてPWM信号PWM2H、PWM2Lを生成し出力する。
【0057】
図1に示す駆動回路139a、139bは、PWM信号発生部138a、138bの出力するPWM信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lに基づいてスイッチ110〜113をスイッチングする。具体的には、PWM信号PWM1H、PWM1L、PWM2H、PWM2Lがハイレベルのときスイッチ110〜113をそれぞれオンする。つまり、入力側回路11は、対角に配置された一方のスイッチのオン期間に対して、対角に配置された他方のスイッチのオン期間の位相を調整することによって対角に配置されたスイッチのオン期間が制御される。いわゆるフェーズシフト制御方式によって制御される。
【0058】
これにより、電流参照値が最大電流参照値以下である定電圧制御領域のときには、電流参照値とスロープ補償された1次巻線100に流れる電流に基づいて、電流参照値が最大電流参照値より大きい定電流制御領域のときには、最大電流参照値とスロープ補償された1次巻線100に流れる電流に基づいてスイッチ110〜113が制御される。その結果、バッテリB1の直流電圧が交流電圧に変換され、トランス10の1次巻線100に印加される。1次巻線100に交流電圧が印加されると、2次巻線101、102から降圧された交流電圧が出力される。出力側回路12は、2次巻線101、102の交流電圧を直流電圧に変換して電子装置S1に供給する。具体的には、定電圧制御領域においては、電圧参照値の一定の直流電圧を電子装置S1に供給する。一方、定電流制御領域においては、入出力電圧の変化に関わらず一定の出力電流特性で出力電圧を垂下させる。
【0059】
次に、図1図7を参照して効果について説明する。ここで、図4は、入力側回路の入力電圧及び出力側回路の出力電圧と、入力側回路の入力電流の傾きの関係を説明するためのグラフである。図5は、定電流制御領域における、入力側回路の入力電流の傾きと1次巻線に流れる電流の平均値の関係を説明するためのグラフである。図6は、最大電流参照値が一定値である場合の出力電流−出力電圧特性のグラフである。図7は、第1実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の出力電流−出力電圧特性のグラフである。
【0060】
図1に示すDC−DCコンバータ装置1において、入力側回路11の入力電流は、インダクタンスの影響により図2及び図3に示すように、時間の経過とともに増加する。ここで、入力側回路11の入力電流の時間に対する傾きは、トランスのT型等価回路を用いた解析から明らかなように、図4に示すように、DC−DCコンバータ装置1の入出力電圧によって変化する。例えば、入力電圧が小さいほど、また、出力電圧が大きいほど1次巻線100に流れる電流の傾きが小さくなる。
【0061】
図1に示すDC−DCコンバータ装置1において、定電流制御領域では、入力側回路11の入力電流のピーク値が最大電流参照値に達するとバッテリB1から入力側回路11への通電を停止する。最大電流参照値が一定値である場合、例えば、DC−DCコンバータ装置1の入力電圧が低下すると、図4に示すように、入力側回路11の入力電流の傾きが小さくなる。その結果、図5に示すように、1次巻線100に流れる電流の平均値が大きくなってしまう。つまり、図6に示すように、DC−DCコンバータ装置1の入力電圧の低下によって、定電流制御領域におけるDC−DCコンバータ装置1の出力電流が増加してしまう。DC−DCコンバータ装置1の出力電圧が増加した場合も同様である。
【0062】
しかし、第1実施形態によれば、制御回路13は、入力側回路11に入力される入力電圧と出力側回路12の出力する出力電圧に基づいて最大電流参照値を調整する。例えば、入力電圧が低下したときには、最大電流参照値が小さくなるように、入力電圧が増加したときには、最大電流参照値が大きくなるように調整する。そのため、図7に示すように、車両に搭載されるDC−DCコンバータ装置1で、定電流制御領域において、入出力電圧の変化によって発生する出力電流特性のばらつきを抑えることができる。
【0063】
第1実施形態によれば、制御回路13は、垂下特性の傾きを指示する垂下特性傾き指令値に基づいて最大電流参照値を調整する。そのため、定電流制御領域において、入出力電圧の変化に伴って発生する、出力電流に対する出力電圧の傾きのばらつき、つまり垂下特性のばらつきを確実に抑えることができる。
【0064】
第1実施形態によれば、制御回路13は、電力変換効率に基づいて最大電流参照値を調整する。そのため、入出力電圧の変化に伴って発生する、定電流制御領域の開始点における出力電流のばらつきを確実に抑えることができる。
【0065】
第1実施形態によれば、制御回路13は、入力電流検出部135aの出力を補正すための補償ランプ波の傾きを指示するスロープ補償傾き指令値に基づいて最大電流参照値を調整する。また、PWM信号が、スイッチのオフを指示してから実際にスイッチがオフするまでの時間である遅延時間に基づいて最大電流参照値を調整する。そのため、スロープ補償傾き指令の違いや遅延時間の違いによる出力電流特性のばらつきを抑えることができる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のDC−DCコンバータ装置について説明する。第2実施形態のDC−DCコンバータ装置は、第1実施形態のDC−DCコンバータ装置が、電流参照値選択部で電流参照値と最大電流参照値のうちいずれかを選択し、選択結果に基づいてPWM信号発生部でPWM信号を生成するのに対して、電圧参照値に基づいて求めたデューティ指令値と、最大電流参照値に基づいて生成したリセット信号に基づいてPWM信号発生部でPWMを生成するようにしたものである。第2実施形態のDC−DCコンバータ装置は、制御回路を除いて第1実施形態のDC−DCコンバータ装置と同一構成である。
【0067】
まず、図8を参照して制御回路の構成について説明する。ここで、図8は、第2実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の回路図である。
【0068】
図8に示すDC−DCコンバータ装置2(電力変換装置)は、バッテリB2の出力する直流電圧を絶縁して降圧し、車両に搭載された電子装置S2に供給するフルブリッジ式コンバータである。DC−DCコンバータ装置2は、トランス20(変圧器)と、入力側回路21(スイッチ手段)と、出力側回路22(変換手段)と、制御回路23(制御手段)とを備えている。
【0069】
トランス20は、1次巻線200と、2次巻線201、202とを備えている。トランス20は、第1実施形態のトランス10と同一構成である。入力側回路21は、スイッチ210〜213を備えている。入力側回路21は、第1実施形態の入力側回路11と同一構成である。出力側回路22は、ダイオード220、221と、コイル222と、コンデンサ223とを備えている。出力側回路22は、第1実施形態の出力側回路12と同一構成である。
【0070】
制御回路23は、電圧指令と出力側回路22の出力する出力電圧に基づいてデューティ指令値(デューティ指令)を求めるとともに、1次巻線200に流れる電流が最大電流参照値(最大電流指令)以下(最大電流指令以下)のときにはデューティ指令値に基づいて、1次巻線200に流れる電流が最大電流参照値より大きいときには1次巻線200に流れる電流と最大電流参照値の比較結果に基づいて入力側回路22を制御する。ここで、デューティ指令値は、スイッチのオン期間の割合を指示するものである。制御回路23は、出力電圧検出部230と、デューティ演算部231と、入力電圧検出部232と、最大電流参照値演算部233と、D/A変換部234と、入力電流検出部235aと、スロープ発生部235bと、加算器235cと、比較器236と、基準信号発生部237と、PWM信号発生部238a、238bと、駆動回路239a、239bとを備えている。
【0071】
出力電圧検出部230は、第1実施形態の出力電圧検出部130と同一構成である。
【0072】
デューティ演算部231は、出力電圧検出部230の出力電圧をデジタル値に変換するとともに、変換した出力電圧値とデジタル値として予め設定されている電圧参照値に基づいてデューティ指令値を求め、デジタル値として出力するブロックである。デューティ演算部231は、出力電圧検出230に接続されている。また、スロープ発生部235b及びPWM信号発生部238bに接続されている。
【0073】
入力電圧検出部232及び最大電流参照値演算部233は、第1実施形態の入力電圧検出部132及び最大電流参照値演算部133と同一構成である。
【0074】
D/A変換部234は、最大電流参照値演算部233の出力する最大電流参照値をアナログ電圧に変換して出力するブロックである。D/A変換部234は、最大電流参照値演算部233に接続されている。また、比較器236に接続されている。
【0075】
入力電流検出部235aは、第1実施形態の入力電流検出部135aと同一構成である。
【0076】
スロープ発生部235bは、デジタル値として予め設定されているスロープ補償傾き指令値(スロープ補償傾き指令)、デューティ指令値、基準信号CLK4及びリセット信号RSTに基づいて、補償ランプ波を生成し出力するブロックである。
【0077】
加算器235cは、第1実施形態の加算器135cと同一構成である。
【0078】
比較器236、基準信号発生部237、PWM信号発生部238aは、第1実施形態の入力電流検出部235、比較器236、基準信号発生部237、PWM信号発生部238aと同一構成である。
【0079】
PWM信号発生部238bは、基準信号発生部237の出力する基準信号CLK2、CLK3、デューティ演算部231の出力するデューティ指令値、及び、比較器236の出力するリセット信号RSTに基づいて、スイッチ212、213をスイッチングするためのPWM信号PWM2H、PWM2Lを生成し出力するブロックである。具体的には、補償ランプ波の加算された入力電流検出部235aの出力電圧がD/A変換部234bの出力電圧以下であり、リセット信号RSTが出力されないときには、デューティ指令値に基づいて、補償ランプ波の加算された入力電流検出部235aの出力電圧がD/A変換部234bの出力電圧より大きく、リセット信号RSTが出力されたときには、リセット信号RSTによって決定されるデューティに基づいてPWM信号PWM2H、PWM2Lを生成し出力する。これにより、結果的に、1次巻線200に流れる電流が最大電流参照値以下のときには電圧参照値と出力電圧に基づいて、電流参照値が最大電流参照値より大きいときには最大電流参照値と1次巻線200に流れる電流に基づいてスイッチ212、213を制御することになる。PWM信号発生部238bは、基準信号発生部237、デューティ演算部231及び比較器236に接続されている。また、駆動回路239bに接続されている。
【0080】
駆動回路239a、239bは、第1実施形態の駆動回路139a、139bと同一構成である。
【0081】
動作については、PWM信号PWM2H、PWM2Lの生成の仕方が異なるだけで、第1実施形態のDC−DCコンバータ装置1と同一であるので、説明を省略する。
【0082】
次に、効果について説明する。第2実施形態によれば、PWM信号PWM2H、PWM2Lの生成の仕方が異なるだけであり、結果的に第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0083】
なお、第1及び第2実施形態では、電力変換効率が予め設定されている例を挙げているが、これに限られるものではない。測定するようにしてもよい。
【0084】
また、第1及び第2実施形態では、入力側回路が、4つのスイッチをフルブリッジ接続して構成される例を挙げているが、これに限られるものではない。図9に示すように、入力側回路31は、1つのスイッチ310によって構成されていてもよい。この場合、PWM信号発生部及び駆動回路は1系統でよい。図1に示すPWM信号発生部138a及び駆動回路139aに相当する部分は不要となる。また、PWM信号発生部338に対する基準信号も1つだけでよい。図9に示すように、制御回路33は、出力電圧検出部330と、電流参照値演算部331と、D/A変換部332と、入力電流検出部333(電流検出手段)と、マスク回路334(電流検出手段、マスク手段)と、比較器335(リセット信号生成手段)と、基準信号発生部336(基準信号生成手段)と、PWM信号発生部337(駆動手段)と、マスク信号発生部338(電流検出手段、マスク信号生成手段)と、駆動回路339(駆動手段)だけでよい。
【符号の説明】
【0085】
1、2・・・DC−DCコンバータ装置(電力変換装置)、10、20・・・トランス(変圧器)、100、200・・・1次巻線、101、102、201、202・・・2次巻線、11、21、31・・・入力側回路(スイッチ手段)、110〜113、210〜213、310・・・スイッチ、12、22・・・出力側回路(変換手段)、120、121、220、221・・・ダイオード、122、222・・・コイル、123、223・・・コンデンサ、13、23、33・・・制御回路(制御手段)、130、230、330・・・出力電圧検出部、131、331・・・電流参照値演算部、132、232、332・・・入力電圧検出部、133、233、333・・・最大電流参照値演算部、134a、334a・・・電流参照値選択部、134b、234、334b・・・D/A変換部、135a、235a、335a・・・入力電流検出部、135b、235b、335b・・・スロープ発生部、135c、235c、335c・・・加算器、136、236、336・・・比較器、137、237、337・・・基準信号発生部、138a、138b、238a、238b、338・・・PWM信号発生部、139a、139b、239a、239b、339・・・駆動回路、231・・・デューティ演算部、B1、B2・・・バッテリ、S1、S2・・・電子装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9