【実施例1】
【0018】
本発明の実施例1である電池システム(蓄電システムに相当する)について、
図1を用いて説明する。
図1は、電池システムの構成を示す図である。本実施例の電池システムは、車両に搭載することができる。
【0019】
本実施例の電池システムは、組電池(蓄電装置に相当する)10を有する。組電池10は、直列に接続された複数の単電池(蓄電素子に相当する)11を有する。単電池11としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることができる。
【0020】
単電池11は、発電要素を電池ケースに収容したものである。発電要素は、充放電を行う要素であり、正極板と、負極板と、正極板および負極板の間に配置されるセパレータとで構成することができる。セパレータは、電解液を含んでいる。ここで、セパレータの代わりに、固体電解質を用いることもできる。
【0021】
単電池11の数は、要求出力などに基づいて、適宜設定することができる。本実施例では、複数の単電池11が直列に接続されているが、並列に接続された複数の単電池11が、組電池10に含まれていてもよい。
【0022】
電圧センサ21は、組電池10の端子間電圧(総電圧)を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。電流センサ22は、組電池10に流れる充放電電流を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。電流センサ22によって検出される値としては、充電電流を正の値とし、放電電流を負の値とすることができる。
【0023】
温度センサ23は、組電池10の温度を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。温度センサ23の数は、適宜設定することができる。複数の温度センサ23を用いるときには、互いに異なる位置に温度センサ23を配置することができる。
【0024】
コントローラ30は、メモリ30aを有しており、メモリ30aは、コントローラ30が所定処理を行うための各種の情報を格納している。本実施例では、メモリ30aが、コントローラ30に内蔵されているが、コントローラ30の外部にメモリ30aを設けることもできる。
【0025】
組電池10の正極端子には、システムメインリレーSMR−Bが接続されている。システムメインリレーSMR−Bは、コントローラ30からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。組電池10の負極端子には、システムメインリレーSMR−Gが接続されている。システムメインリレーSMR−Gは、コントローラ30からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。
【0026】
システムメインリレーSMR−Gに対しては、システムメインリレーSMR−Pおよび制限抵抗24が並列に接続されている。システムメインリレーSMR−Pは、コントローラ30からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。制限抵抗24は、組電池10をインバータ31と接続するときに、突入電流が流れるのを抑制するために用いられる。
【0027】
組電池10をインバータ31と接続するときには、システムメインリレーSMR−Bをオフからオンに切り替えるとともに、システムメインリレーSMR−Pをオフからオンに切り替える。これにより、制限抵抗24に電流が流れることになる。
【0028】
次に、システムメインリレーSMR−Gをオフからオンに切り替えた後に、システムメインリレーSMR−Pをオンからオフに切り替える。これにより、組電池10およびインバータ31の接続が完了する。一方、組電池10およびインバータ31の接続を遮断するときには、システムメインリレーSMR−B,SMR−Gをオンからオフに切り替えればよい。
【0029】
インバータ31は、組電池10からの直流電力を交流電力に変換し、交流電力をモータ・ジェネレータ32に出力する。モータ・ジェネレータ32としては、例えば、三相交流モータを用いることができる。モータ・ジェネレータ32は、インバータ31からの交流電力を受けて、車両を走行させるための運動エネルギを生成する。モータ・ジェネレータ32によって生成された運動エネルギは、車輪に伝達される。
【0030】
車両を減速させたり、停止させたりするとき、モータ・ジェネレータ32は、車両の制動時に発生する運動エネルギを電気エネルギ(交流電力)に変換する。インバータ31は、モータ・ジェネレータ32が生成した交流電力を直流電力に変換し、直流電力を組電池10に出力する。これにより、組電池10は、回生電力を蓄えることができる。
【0031】
本実施例では、組電池10をインバータ31に接続しているが、これに限るものではない。具体的には、組電池10を昇圧回路に接続し、昇圧回路をインバータ31に接続することができる。昇圧回路を用いることにより、組電池10の出力電圧を昇圧することができる。また、昇圧回路は、インバータ31から組電池10への出力電圧を降圧することができる。
【0032】
本実施例の電池システムは、単電池11の電極電位(正極電位や負極電位)を推定し、推定された電極電位に基づいて、組電池10の入出力を制御することができる。まず、単電池11の電極電位を推定する処理について、
図2に示すフローチャートを用いて説明する。
図2に示す処理は、コントローラ30によって実行される。
【0033】
ステップS101において、コントローラ30は、電圧センサ21の出力から、組電池10の電圧を取得する。ステップS102において、コントローラ30は、単電池11の電圧を算出する。単電池11の電圧は、下記式(1)に基づいて算出することができる。
【0034】
Vcell=Vbat/N ・・・(1)
式(1)において、Vcellは、単電池11の電圧である。Vbatは、組電池10の電圧であり、ステップS101で取得された電圧である。Nは、組電池10を構成する単電池11の数であり、言い換えれば、直列に接続された単電池11の数である。
【0035】
組電池10では、すべての単電池11が直列に接続されているため、組電池10の電圧Vbatを単電池11の数Nで割れば、単電池11の電圧Vcellが分かる。並列に接続された単電池11が組電池10に含まれていても、直列に接続された単電池11の数に基づいて、単電池11の電圧Vcellを算出することができる。本実施例では、組電池10の電圧Vbatから、単電池11の電圧Vcellを算出しているが、これに限るものではない。
【0036】
具体的には、各単電池11に対して電圧センサを設ければ、各単電池11の電圧を検出することができる。また、組電池10を構成する、すべての単電池11を複数のブロックに分け、各ブロックの電圧(ブロック電圧という)を検出することもできる。各ブロックは、2つ以上の単電池11を含んでいる。ブロック電圧を検出したときには、ブロック電圧を、各ブロックを構成する単電池11の数で割れば、各単電池11の電圧Vcellを算出することができる。なお、本実施例のように、組電池10に対して1つの電圧センサ21を設けることにより、電圧センサ21の数を減らすことができる。
【0037】
また、いくつかの単電池11の電圧のみを検出し、他の単電池11の電圧を推定してもよい。例えば、直列に接続した単電池11のうちの1つの電圧を検出し、その他の単電池11の電圧は、検出した単電池11の電圧と同じ値であると推定してもよい。
【0038】
コントローラ30は、ステップS103において、単電池11の負極電位を算出し、ステップS104において、単電池11の正極電位を算出する。負極電位および正極電位を算出する方法について説明する。
【0039】
単電池11の電圧は、負極電位および正極電位によって構成される。負極電位および正極電位の比率を予め特定しておけば、単電池11の電圧から、負極電位や正極電位を算出することができる。ここでいう比率とは、単電池11の電圧のうち、負極電位および正極電位のそれぞれが占める割合である。
【0040】
負極電位および正極電位の比率は、以下に説明する方法によって求めることができる。
【0041】
単電池11を、開始電圧から終了電圧まで放電する。開始電圧および終了電圧の具体的な値は、適宜設定することができる。単電池11を放電している間、単電池11の負極電位および正極電位を測定する。単電池11の内部に、基準となる参照電極を配置しておけば、負極電位および正極電位を測定することができる。
【0042】
そして、単電池11の放電を完了したときに、負極電位の変化量ΔV(-)と正極電位の変化量ΔV(+)を算出する。本実施例では、負極電位および正極電位の比率を、電極電位の変化量ΔV(-),ΔV(+)の比率としている。負極電位および正極電位の比率に関する情報は、予めメモリ30aに格納することができる。上述した説明では、単電池11を放電したときの負極電位の変化量ΔV(-)および正極電位の変化量V(+)を算出しているが、単電池11を充電したときの負極電位の変化量ΔV(-)および正極電位の変化量V(+)を算出することもできる。
【0043】
本実施例では、単電池11の電圧が、負極電位および正極電位によって構成されているとしたが、これに限るものではない。具体的には、単電池11の電圧には、負極電位および正極電位だけでなく、電池部品の抵抗分や電解液の抵抗分を考慮することができる。
【0044】
電池部品は、単電池11を構成する部品であり、具体的には、上述した発電要素を構成する部品などがある。電池部品の抵抗分は、予め測定しておくことができるため、単電池11の電圧のうち、電池部品の抵抗分が占める割合を特定することができる。
【0045】
また、単電池11を放電している間、電解液の抵抗による電位変化量ΔVeを測定すれば、この電位変化量ΔVeを、単電池11の電圧のうち、電解液抵抗分が占める割合とすることができる。
【0046】
正極電位および負極電位の測定は、単電池10が所定環境にあるときに開始される。所定環境では、単電池11の温度、充電状態(SOC;State of Charge)および劣化状態のそれぞれが所定状態にある。SOCとは、満充電容量に対する現在の容量の割合を示す。ここで、単電池11が満充電状態にあるときには、SOCが100%となり、満充電状態の単電池11を放電するにつれて、SOCが低下する。
【0047】
劣化状態とは、摩耗などによる単電池11の劣化を示す。劣化状態を表す指標としては、例えば、抵抗変化率や容量変化率を用いることができる。抵抗変化率は、例えば、下記式(2)に基づいて算出することができる。
【0048】
ΔR=|Rini−Rn|/Rini ・・・(2)
式(2)において、ΔRは、抵抗変化率を示す。Riniは、初期状態(製造直後)における単電池11の内部抵抗を示し、Rnは、現在における単電池11の内部抵抗を示す。単電池11の内部抵抗は、単電池11の電流および電圧を測定することによって、算出することができる。単電池11の劣化が進行すると、単電池11の内部抵抗が上昇するため、抵抗変化率ΔRは、単電池11の劣化に応じて増加する。
【0049】
劣化状態を表す指標として、容量変化率を用いるときには、例えば、下記式(3)に基づいて、劣化状態を特定することができる。
【0050】
ΔC=|Cini−Cn|/Cini ・・・(3)
式(3)において、Ciniは、初期状態(製造直後)における単電池11の容量を示し、Cnは、現在における単電池11の容量を示す。単電池11が劣化すると、容量が低下し始めるため、容量変化率ΔCは、単電池11の劣化に応じて増加する。
【0051】
コントローラ30は、下記式(4)に基づいて、負極電位を算出し、下記式(5)に基づいて、正極電位を算出する。
【0052】
V(-)ref=Vcell×r(-)/(r(+)+r(-)) ・・・(4)
V(+)ref=Vcell×r(+)/(r(+)+r(-)) ・・・(5)
【0053】
式(4)において、V(-)refは、負極電位を示し、負の値である。式(5)において、V(+)refは、正極電位を示し、正の値である。また、式(4),(5)において、Vcellは、単電池11の電圧を示し、ステップS102で算出された値である。また、r(-),r(+)は、正極電位および負極電位の比における、それぞれの値を示し、メモリ30aから取得される。
【0054】
r(-),r(+)は、下記式(6)で示す関係を有する。
【0055】
r(-):r(+)=ΔV(-):ΔV(+) ・・・(6)
式(6)において、ΔV(-),ΔV(+)は、単電池11を放電(又は充電)したときの負極電位および正極電位の変化量である。
【0056】
上記式(4),(5)では、電池部品の抵抗分や電解液の抵抗分を考慮していないが、電池部品の抵抗分や電解液の抵抗分が分かる場合には、式(4),(5)の代わりに、下記式(7),(8)を用いればよい。
【0057】
V(-)ref=Vcell×r(-)/(r(+)+r(-)+rcell+re) ・・・(7)
V(+)ref=Vcell×r(+)/(r(+)+r(-)+rcell+re) ・・・(8)
式(7),(8)において、rcellは、電池部品の抵抗分の比を示し、reは電解液の抵抗分の比を示す。
【0058】
ステップS103において、コントローラ30は、式(4)に基づいて、負極電位を算出する。ステップS104において、コントローラ30は、式(5)に基づいて、正極電位を算出する。
【0059】
ステップS105において、コントローラ30は、単電池11の温度に応じて、負極電位を補正する。単電池11の温度としては、温度センサ23の検出結果を用いることができる。コントローラ30は、下記式(9)に基づいて、負極電位を補正する。
【0060】
V(-)c1=V(-)ref×K(T) ・・・(9)
式(9)において、K(T)は、温度に応じた補正係数を示す。V(-)c1は、補正後における負極電位を示し、V(-)refは、ステップS103で算出された正極電位を示す。
【0061】
メモリ30aには、
図3に示すマップが格納されている。
図3に示すマップは、温度および補正係数K(T)の対応関係を示す。
図3に示すマップは、予め実験を行うことにより、作成しておくことができる。SOCおよび劣化状態を一定とし、温度だけを変化させて、負極電位の変化を測定すれば、補正係数K(T)を求めることができる。
【0062】
単電池11の温度が基準温度Trefであるとき、補正係数K(T)は1となる。基準温度Trefとは、負極電位を測定したときの温度であり、上述した所定環境での温度である。コントローラ30は、温度センサ23の出力に基づいて、単電池11の温度を特定することができる。単電池11の温度を特定できれば、
図3に示すマップに基づいて、補正係数K(T)を特定することができる。
【0063】
本実施例では、
図3に示すマップを用いて、負極電位V(-)refを補正しているが、これに限るものではない。例えば、負極電位を、単電池11の温度を変数とした関数で表すことができれば、この関数を用いて、負極電位を算出(補正)することができる。
【0064】
ステップS106において、コントローラ30は、単電池11の温度に応じて、正極電位を補正する。具体的には、コントローラ30は、下記式(10)に基づいて、正極電位を算出する。
【0065】
V(+)c1=Vcell−|V(-)c1| ・・・(10)
式(10)において、Vcellは、単電池11の電圧であり、ステップS102で算出された値である。V(-)c1は、ステップS105で算出された負極電位の値である。V(+)c1は、単電池11の温度に基づいて補正された正極電位の値である。
【0066】
ステップS107において、コントローラ30は、単電池11のSOCに応じて、負極電位を補正する。具体的には、コントローラ30は、下記式(11)に基づいて、負極電位を算出(補正)する。
【0067】
V(-)c2=V(-)c1×K(SOC) ・・・(11)
式(11)において、K(SOC)は、SOCに応じた補正係数を示す。V(-)c1は、ステップS105で算出された負極電位の値である。V(-)c2は、単電池11のSOCも考慮に入れて、補正された負極電位の値である。
【0068】
メモリ30aには、
図4に示すマップが格納されている。
図4に示すマップは、SOCおよび補正係数K(SOC)の対応関係を示す。
図4に示すマップは、予め実験を行うことにより、作成しておくことができる。温度および劣化状態を一定にして、SOCだけを変化させて、負極電位を測定すれば、補正係数K(SOC)を求めることができる。
【0069】
単電池11のSOCが基準値SOCrefであるとき、補正係数K(SOC)は1となる。基準値SOCrefとは、負極電位を測定したときのSOCであり、上述した所定環境でのSOCである。
【0070】
コントローラ30は、電圧センサ21の出力に基づいて、単電池11のSOCを推定することができる。具体的には、コントローラ30は、電圧センサ21を用いて、単電池11のOCV(Open Circuit Voltage)を測定しておき、単電池11のOCVに基づいて、単電池11のSOCを特定することができる。
【0071】
単電池11のOCVおよびSOCは、対応関係にあるため、この対応関係を予め特定しておけば、単電池11のOCVから、単電池11のSOCを特定することができる。一方、電流センサ22の出力に基づいて、単電池11の充放電電流を積算しておけば、この積算値に基づいて、単電池11のSOCを推定することもできる。
【0072】
単電池11のSOCを特定できれば、
図4に示すマップに基づいて、補正係数K(SOC)を特定することができる。
【0073】
本実施例では、
図4に示すマップを用いて、負極電位を補正しているが、これに限るものではない。例えば、負極電位を、単電池11のSOCを変数とした関数で表すことができれば、この関数を用いて、負極電位を算出することができる。
【0074】
ステップS108において、コントローラ30は、単電池11のSOCに応じて、正極電位を補正する。具体的には、コントローラ30は、下記式(12)に基づいて、正極電位を算出する。
【0075】
V(+)c2=Vcell−|V(-)c2| ・・・(12)
式(12)において、Vcellは、単電池11の電圧であり、ステップS102で算出された値である。V(-)c2は、ステップS107で算出された負極電位の値である。V(+)c2は、単電池11のSOCに基づいて補正された正極電位の値である。
【0076】
ステップS109において、コントローラ30は、単電池11の劣化状態に応じて、負極電位を補正する。具体的には、コントローラ30は、下記式(13)に基づいて、負極電位を算出(補正)する。
【0077】
V(-)c3=V(-)c2×K(R) ・・・(13)
式(13)において、K(R)は、劣化状態に応じた補正係数を示す。V(-)c2は、ステップS107で算出された負極電位の値である。V(-)c3は、単電池11の劣化状態も考慮に入れて、補正された負極電位の値である。
【0078】
メモリ30aには、
図5に示すマップが格納されている。
図5に示すマップは、劣化度および補正係数K(R)の対応関係を示す。劣化度とは、劣化状態を表す指標であり、上述したように、抵抗変化率や容量変化率を用いることができる。
図5に示すマップは、予め実験を行うことにより、作成しておくことができる。温度およびSOCを一定にして、劣化状態だけを変化させて、負極電位を測定すれば、補正係数K(R)を求めることができる。
【0079】
単電池11の劣化度が基準値Rrefであるとき、補正係数K(R)は1となる。基準値Rrefとは、負極電位を測定したときの劣化度であり、上述した所定環境での劣化度である。
【0080】
単電池11の劣化度は、上述したように抵抗変化率又は容量変化率を算出することによって取得することができる。抵抗変化率を算出するときには、単電池11の内部抵抗を求めておけばよい。容量変化率を算出するときには、単電池11の容量を求めておけばよい。単電池11の劣化度を特定できれば、
図5に示すマップに基づいて、補正係数K(R)を特定することができる。
【0081】
本実施例では、
図5に示すマップを用いて、負極電位を補正しているが、これに限るものではない。例えば、負極電位を、単電池11の劣化度を変数とした関数で表すことができれば、この関数を用いて、負極電位を算出することができる。
【0082】
ステップS110において、コントローラ30は、単電池11の劣化状態に応じて、正極電位を補正する。具体的には、コントローラ30は、下記式(14)に基づいて、正極電位を算出する。
【0083】
V(+)c3=Vcell−|V(-)c3| ・・・(14)
式(14)において、Vcellは、単電池11の電圧であり、ステップS102で算出された値である。V(-)c3は、ステップS109で算出された負極電位の値である。V(+)c3は、単電池11の劣化状態に基づいて補正された正極電位の値である。
【0084】
図2に示す処理では、負極電位の値に補正係数を掛けて、負極電位を補正しているが、これに限るものではない。具体的には、正極電位の値に補正係数を掛けることにより、正極電位を補正することができる。この場合には、正極電位に対応する補正係数を、温度、SOCおよび劣化状態のそれぞれにおいて、用意しておく必要がある。正極電位を補正した後は、単電池11の電圧Vcellから補正後の正極電位を減算することにより、負極電位を求めることができる。
【0085】
また、温度による電極電位の補正、SOCによる電極電位の補正、劣化状態による電極電位の補正を行う順序は、適宜設定することができる。すなわち、
図2で説明した順序で、電極電位を補正する必要はない。
【0086】
本実施例では、単電池11の温度、SOCおよび劣化状態に応じて、正極電位や負極電位を補正しているが、これに限るものではない。具体的には、単電池11の温度、SOCおよび劣化状態のうち、少なくとも1つに応じて、正極電位や負極電位を補正することもできる。
【0087】
例えば、負極電位を補正するときには、ステップS105,S107,S109の処理のうち、少なくとも1つの処理を行うことができる。正極電位を補正するときには、ステップS106,S108,S110の処理のうち、少なくとも1つの処理を行うことができる。また、本実施例では、正極電位および負極電位を、それぞれ補正することで算出しているが、正極電位および負極電位のいずれか一方のみを補正して算出した後、算出した一方の電位の値を単電池11の電圧から減算することで、他方の電位を算出してもよい。
【0088】
図2に示す処理を行うことにより、現在の単電池11における正極電位および負極電位を推定することができる。
図2に示す処理は、所定のタイミングにおいて、繰り返して行うことができる。そして、推定された電極電位に基づいて、組電池10の充放電を制御することができる。
【0089】
図6は、組電池10の充放電を制御するときのフローチャートを示す。
図6に示す処理は、コントローラ30によって実行することができる。
【0090】
ステップS201において、コントローラ30は、
図2の処理で推定された正極電位が上限値よりも高いか否かを判別する。上限値は、予め設定された値であり、メモリ30aに格納しておくことができる。ここで、単電池11の電圧が上限電圧および下限電圧の範囲内で変化するように、単電池11の充放電が制御されることがある。ステップS201で用いられる上限値としては、上述した上限電圧に対応した値とすることができる。
【0091】
ステップS201において、正極電位が上限値よりも高いときには、ステップS202の処理に進む。また、正極電位が上限値よりも低いときには、ステップS203の処理に進む。
【0092】
ステップS202において、コントローラ30は、組電池10の入力(充電)を制限する。組電池10の入力を制限する場合には、予め設定された制限値Winを低下させる場合や、組電池10の入力を禁止する場合が含まれる。制限値Winは、予め設定された値であり、組電池10の入力を許容する上限値(単位:W)である。
【0093】
ステップS203において、コントローラ30は、
図2の処理で推定された正極電位が下限値よりも低いか否かを判別する。下限値は、予め設定された値であり、メモリ30aに格納しておくことができる。下限値としては、単電池11の電圧に基づいて単電池11の充放電を制御するときの下限電圧に対応した値とすることができる。
【0094】
ステップS203において、正極電位が下限値よりも低いときには、ステップS204の処理に進む。また、正極電位が下限値よりも高いときには、本処理を終了する。ステップS204において、コントローラ30は、組電池10の出力(放電)を制限する。組電池10の出力を制限する場合には、予め設定された制限値Woutを低下させる場合や、組電池10の出力を禁止する場合が含まれる。制限値Woutは、予め設定された値であり、組電池10の出力を許容する上限値(単位:W)である。
【0095】
図6に示す処理では、正極電位に基づいて、組電池10の充放電を制御しているが、これに限るものではない。具体的には、
図2の処理で推定された負極電位に基づいて、組電池10の充放電を制御することができる。すなわち、負極電位が、予め定められた上限値および下限値の間で変化するように、組電池10の充放電を制御することができる。ここでの上限値および下限値は、単電池11の電圧に基づいて単電池11の充放電を制御するときの、上限電圧および下限電圧に対応した値である。一方、正極電位および負極電位の両者に基づいて、組電池10の充放電を制御することもできる。
【0096】
本実施例によれば、単電池11の電圧ではなく、単電池11の電極電位(正極電位や負極電位)を推定するため、単電池11の内部状態を推定しやすくなる。単電池11の電圧は、正極電位および負極電位によって決定されるため、単電池11の内部状態を推定するときには、正極電位および負極電位を監視することが好ましい。
【0097】
また、推定した電極電位に基づいて、単電池11(組電池10)の充放電を制御することにより、正極および負極の状態に応じた充放電を行うことができる。これにより、例えば、単電池11の入出力の範囲を広げることができ、単電池11を効率良く使用することができる。言い換えれば、単電池11の入出力特性の性能を、最大限まで引き出すことができる。
【0098】
ここで、単電池11の電圧だけを監視する構成では、例えば、単電池11の電圧が、上限電圧に到達したときに、単電池11の入力が制限されることになる。しかし、単電池11の電圧が上限電圧(又は下限電圧)に到達していても、正極電位は、上限値(又は下限値)に到達していないことがある。この場合には、正極電位が上限値(又は下限値)に到達するまで、単電池11を充電(又は放電)することができる。
【0099】
また、単電池11の電圧が上限電圧(又は下限電圧)に到達していなくても、正極電位は、上限値(又は下限値)に到達している可能性もある。この場合には、単電池11の電圧が上限電圧(又は下限電圧)に到達する前に、単電池11(組電池10)の入力(又は出力)を制限することができ、単電池11を保護することができる。