特許第5738826号(P5738826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5738826-ビード自動アッセンブル装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738826
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】ビード自動アッセンブル装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/48 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
   B29D30/48
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-252818(P2012-252818)
(22)【出願日】2012年11月19日
(65)【公開番号】特開2014-100816(P2014-100816A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2014年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】安宅 郁夫
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−052624(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0267126(US,A1)
【文献】 特表2002−539990(JP,A)
【文献】 特公昭46−021301(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の羽部が環状に並設されて形成されたフォーマーの外周部にビードエイペックスゴムを巻き付けた後、前記羽部を起立させることにより、前記ビードエイペックスゴムの底面を内周縁部としてビードコアの外周部に接合し、前記ビードエイペックスゴム前記ビードコアを接合して、ビードの形成を行うビード自動アッセンブル装置であって、
前記複数の羽部の外周側の面に、ビードコア側の端部から外方に向けて立ち上がるようにテーパが設けられており、
前記複数の羽部の内周側の面が、前記フォーマーの中心軸に対して平行である
ことを特徴とするビード自動アッセンブル装置。
【請求項2】
前記テーパの角度αが、0°<α≦15°であることを特徴とする請求項1に記載のビード自動アッセンブル装置。
【請求項3】
前記テーパの角度αが、2°≦α≦8°であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のビード自動アッセンブル装置。
【請求項4】
トラック、バス用タイヤのビードを形成する装置であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のビード自動アッセンブル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのビードエイペックスゴムとビードコアとを自動的にアッセンブルして接合することによりビードを成形するビード自動アッセンブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生タイヤを組み立てる際には、ビード自動アッセンブル装置を用いて、断面形状が細長い三角形状のビードエイペックスゴムと、断面形状が多角形(通常は六角形)のビードコアとを自動的にアッセンブルして接合することによりビードを成形することが行われている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図2に、従来の代表的なビード自動アッセンブル装置の要部を模式的に示す。図2に示すように、ビード自動アッセンブル装置41は、ビードエイペックスゴムGを円筒形に巻き付けるためのフォーマー42を備えている。
【0004】
フォーマー42は、複数の羽部48が回転の中心軸Lの周りに環状に並んで配置されて構成され、各々の羽部48はビードコアCを保持するビードリング43の近傍に設けられた回転支軸44を支点として回転することにより起立するように構成されている。
【0005】
ビード自動アッセンブル装置を用いたビードの形成は以下のように行われる。まず、ビード自動アッセンブル装置41のビードリング43にリング状のビードコアCがセットされる。一方、所定幅で帯状に成形されたビードエイペックスゴムGがフォーマー42の外周面42a、即ち、各羽部48の外周面48aに巻き付けられる。
【0006】
フォーマー42に巻き付けられたビードエイペックスゴムGは、その後、回転支軸44を支点として回転することにより起立する羽部48と共に起立させられ、ビードエイペックスゴムGの底面を内周縁部として、ビードコアCの外周部に接合されることにより、ビードの形成が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−52624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のビード自動アッセンブル装置41においてフォーマー42は、フラットフォーマーであったため、横断面形状が略三角形であるビードエイペックスゴムGの巻き付けに際して、ビードエイペックスゴムGが螺旋状に巻き付く傾向があった。特に、トラックバス用タイヤ(TB用タイヤ)用のビードの形成において顕著であった。
【0009】
フォーマー42にビードエイペックスゴムGが螺旋状に巻き付いた場合、巻き付けられたビードエイペックスゴムGの巻き付け始端部(先端面)と巻き付け終端部(後端面)とがずれてしまうため、例えば、図3(A)に示すように、ビードエイペックスゴムGの先端面と後端面との間にジョイント不良が発生したり、また、図3(B)に示すように、ビードコアCとビードエイペックスゴムG間に隙間が生じて接着不良が発生したりする問題があった。
【0010】
そして、このようなジョイント不良や接着不良が発生したビードを用いて製造されたタイヤは、品質不良を招く恐れがある。
【0011】
そこで、本発明は、ビードの製造に際して、ビードエイペックスゴムのジョイント不良や、ビードコアとビードエイペックスゴムとの間の接着不良の発生を抑制することができるビード自動アッセンブル装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、
複数の羽部が環状に並設されて形成されたフォーマーの外周部にビードエイペックスゴムを巻き付けた後、前記羽部を起立させることにより、前記ビードエイペックスゴムの底面を内周縁部としてビードコアの外周部に接合し、前記ビードエイペックスゴム前記ビードコアを接合して、ビードの形成を行うビード自動アッセンブル装置であって、
前記複数の羽部の外周側の面に、ビードコア側の端部から外方に向けて立ち上がるようにテーパが設けられており、
前記複数の羽部の内周側の面が、前記フォーマーの中心軸に対して平行である
ことを特徴とするビード自動アッセンブル装置である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、
前記テーパの角度αが、0°<α≦15°であることを特徴とする請求項1に記載のビード自動アッセンブル装置である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、
前記テーパの角度αが、2°≦α≦8°であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のビード自動アッセンブル装置である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、
トラック、バス用タイヤのビードを形成する装置であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のビード自動アッセンブル装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ビードの製造に際して、ビードエイペックスゴムのジョイント不良や、ビードコアとビードエイペックスゴムとの間の接着不良の発生を抑制することができるビード自動アッセンブル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係るビード自動アッセンブル装置の要部を模式的に示す図である。
図2】従来のビード自動アッセンブル装置の要部を模式的に示す図である。
図3】(A)はビードエイペックスゴムのジョイント不良を模式的に示す図であり、(B)はビードエイペックスゴムの接着不良を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態に基づき本発明を具体的に説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係るビード自動アッセンブル装置の一実施の形態を示す要部構成図である。ビード自動アッセンブル装置1は、フォーマー2、羽部起立機構3、およびビードリング4を備えている。
【0020】
フォーマー2は、ビードエイペックスゴムGを略円筒形に巻き付けるためのものであり、回転の中心軸Lに対して平行に配置されている。なお、このフォーマー2は、回転の中心軸Lの周りに環状に並んで配置された複数の羽部28により構成されている。
【0021】
複数の羽部28は、その外周面28aが、フォーマー2の外周面2aを構成している。複数の羽部28の外周面28aには、ビードコアC側の端部から外方に向けて立ち上がるようにテーパが設けられている。
【0022】
羽部28の外周面28aにテーパが設けられていることにより、横断面形状が略三角形であるビードエイペックスゴムGをフォーマー2の外周に巻き付けても、螺旋状に巻き付くことがない。この結果、従来発生していたジョイント不良や接着不良を抑制することができる。
【0023】
テーパの角度αは、ビードエイペックスゴムGの形状や大きさにより、適宜設定すればよいが、種々の形状/大きさのビードエイペックスゴムGに対応するためには、0°<α≦15°の範囲に設定されていることが好ましい。
【0024】
テーパの角度αが0°、即ち、従来のフォーマーの場合には、前記したように、ジョイント不良や接着不良の多発を招く。一方、15°を超えてαが設定されたフォーマーの場合には、ジョイント部が従来とは逆方向にずれてしまい、やはり、ジョイント不良や接着不良を招く可能性が高くなる。
【0025】
より好ましいテーパの角度αは、2°≦α≦8°であり、この場合には、上記の効果を顕著に発揮させることができる。
【0026】
羽部起立機構3は、駆動装置36によって、複数のレバー35を介して、全ての羽部28を、フォーマー2のビードコアC側の端部に設けられている回転支軸34の周りに回転して起立させることができる。即ち、複数のレバー35が、駆動装置36によって、所定のストロークSで一斉に前進移動すると、点線で表示するように、全ての羽部28が、回転支軸34を支点にして回転して起立する。一方、複数のレバー35が、駆動装置36によって、所定のストロークSで一斉に後退移動すると、実線で表示するように、全ての羽部28が、回転支軸34を支点にして倒れて元の状態に戻る。
【0027】
ビードリング4は、ビードコアCを保持するためのものであり、フォーマー2のビードコアC側の端部(図1の左側)に配設されている。
【0028】
以上の構成からなるビード自動アッセンブル装置1に、リング状のビードコアCと、所定幅の帯状のビードエイペックスゴムGとが供給されることにより、ビードの形成が行われる。
【0029】
具体的には、横断面の形状が略三角形であるビードエイペックスゴムGは、底面側がフォーマー2のビードコアC側の端部に配置されるように、フォーマー2の外周面2a、即ち、複数の羽部28の外周面28aに巻き付けられる。このとき、前記したように、羽部28の外周面28aにテーパが設けられているため、螺旋状に巻き付くことがなく、ジョイント不良や接着不良の発生が抑制される。
【0030】
次に、フォーマー2の外周面2aにビードエイペックスゴムGが巻き付けられた状態で、羽部起立機構3が作動して、駆動装置36が、複数のレバー35を所定のストロークSで一斉に前進移動させる。これにより、点線で表示するように、全ての羽部28が回転支軸34を支点にして起立し、その結果、ビードエイペックスゴムGは、その一辺側の内径をそのままにしつつ他辺側が拡径されて、全体がドーナツ板状に形成されて、ビードリング43にセットされているビードコアCの外周部に接合される。これによりビードの形成が完了する。
【0031】
得られたビードにおいて、ビードエイペックスゴムGはジョイント不良や接着不良の発生が抑制されているため、このようなビードを用いて製造されたタイヤは安定した品質を発揮することができる。
【0032】
なお、TB用タイヤ(トラック用タイヤ、バス用タイヤ)のビードエイペックスゴムは、肉厚が厚いため、従来のビード自動アッセンブル装置では、特に、ビードエイペックスゴムがフォーマーへ螺旋状に巻き付きやすかった。しかし、本実施の形態のビード自動アッセンブル装置を用いることにより、ビードの形成に際してジョイント不良や接着不良の発生を抑制する効果を顕著に発揮させることができる。
【実施例】
【0033】
1.実施例および比較例
外周面に表1に示す角度αのテーパを有する羽部でフォーマーが形成されたビード自動アッセンブル装置を用いて、22.5−63S/1のビードコアと、ハード層およびパッキン層で構成されたビードエイペックスゴムとからビードを形成した。
【0034】
各ビード自動アッセンブル装置によるアッセンブル動作は、それぞれ1日繰り返して行い、不良品の発生状況を評価した。
【0035】
具体的には、ビードエイペックスゴムの先端面と後端面とのジョイント部のジョイント不良や、ジョイント部でのビードコアとビードエイペックスゴムとの間の接着不良など得られたビードの仕上がり状況を評価した。
【0036】
結果を表1に示す。なお、表1において、「◎」は不良品の発生率が1%未満、「○」は不良品の発生率が1%以上3%未満、「×」は不良品の発生率が3%以上であったことを示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1の実施例1〜実施例6より、羽部の外周面のテーパ角度αが0°<α≦15°の場合は、ビードエイペックスゴムの先端面と後端面とのジョイント部のジョイント不良や、ジョイント部でのビードコアとビードエイペックスゴムとの間の接着不良の発生が十分抑制されていることが分かる。
【0039】
特に、実施例2〜実施例4より、外周面のテーパ角度αが2°≦α≦8°の場合には、ジョイント不良や接着不良の発生がより抑制されていることが分かる。
【0040】
また、比較例1より、従来のように、外周面のテーパ角度αがα=0°の場合には、ジョイント不良や接着不良の発生を十分抑制できないことが分かる。
【0041】
また、比較例2より、外周面のテーパ角度αが15°より大きすぎる場合にも、ジョイント不良や接着不良の発生を十分抑制できないことが分かる。
【0042】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0043】
1、41 ビード自動アッセンブル装置
2、42 フォーマー
2a、42a フォーマーの外周面
3 羽部起立機構
4、43 ビードリング
28、48 羽部
28a、48a 羽部の外周面
34、44 回転支軸
35 レバー
36 駆動装置
C ビードコア
G ビードエイペックスゴム
α テーパの角度
L 中心軸
S ストローク
図1
図2
図3