(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A)(成分A、BおよびCの重量部の合計に基づいて、)55〜90重量部の芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートであって、1.20〜1.30の塩化メチレン中で測定される相対溶液粘度を有する芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート、
B)(成分A、BおよびCの重量部の合計に基づいて、)10〜45重量部の
B.1)B.1.2)にB.1.1)がグラフトされる、エマルジョン重合によって製造される少なくとも1つのグラフトポリマーであって、
B.1.1)がB.1.1およびB.1.2の合計に基づいて、5〜95重量%の少なくとも1つのビニルモノマーであり、
B.1.2)がB.1.1およびB.1.2の合計に基づいて、95〜5重量%の、<0℃のガラス転移温度を有する骨格としての1以上の粒子状ゴムである、
グラフトポリマー、
B.2)任意成分である、ゴム非含有ビニル(コ)ポリマー、
B.3)バルク、溶液またはバルク−懸濁液重合法によって製造される、任意成分である、少なくとも1つのビニルモノマーの、<0℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つの骨格としての粒子状ゴムにおけるグラフトポリマー
を含有するゴム変性成分、
(ここでグラフトポリマーB.1およびB.3は任意に、グラフト粒子に加えて、その製造の結果として、ビニルモノマーのフリーの(コ)ポリマー、すなわちゴム粒子に化学的に結合しない、および/またはグラフト粒子内に有機溶媒に溶解しうる形態で含まれる(コ)ポリマーをも含有してもよい)
C)(成分A、BおよびCの重量部の合計に基づいて、)0〜25重量部のポリマー添加剤
を含有する組成物であって、
(i)ポリカーボネート組成物のゴム含有量は1〜6重量%であり、
(ii)成分Bにおいて少なくとも40重量%のグラフト粒子は200nmまでの(超遠心分離によって測定される)直径を有し、
(iii)直径400nmを超えるグラフト粒子の含有量が25重量%以下である
ことを特徴とする組成物。
成分Bにおいて少なくとも50重量%のグラフト粒子は200nmまでの(超遠心分離によって測定される)直径を有することを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
成分C)として、(成分A、BおよびCの重量部の合計に基づいて、)0.1〜5重量部の、内部および外部潤滑剤および離型剤、流動助剤、帯電防止剤、導電性添加剤、安定剤、抗菌活性のある添加剤、耐引っ掻き性改良剤、IR吸収剤、光沢剤、蛍光剤、染料および顔料およびブレンステッド酸化合物から成る群から選択される少なくとも1つの添加剤を含有する請求項3に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(成分A)
本発明に従って好適な成分Aによる芳香族ポリカーボネートは、文献から公知であり、または文献から公知の方法によって製造され得る(たとえば、芳香族ポリカーボネートの製造については、たとえば、シュネル(Schnell),「ポリカーボネートの化学と物理(Chemistry and Physics of Polycarbonates)」,インターサイエンス・パブリッシャーズ(Interscience Publishers),1964,およびドイツ特許公開第DE−AS 1 495 626号公報、DE−A 2 232 877号公報、DE−A 2 703 376号公報、DE−A 2 714 544号公報、DE−A 3 000 610号公報、DE−A 3 832 396号公報;芳香族ポリエステルカーボネートの製造については、たとえば、ドイツ特許公開第DE−A 3 077 934号公報参照)。
【0018】
芳香族ポリカーボネート製造はたとえば、ジフェノールとカルボン酸ハライド、好ましくはホスゲンとを、および/または芳香族ジカルボン酸ジハライド、好ましくはベンゼンジカルボン酸ジハライドとを、界面重縮合法によって、鎖重合停止剤、たとえば、モノフェノールを任意に使用して、かつ3官能性また3以上の官能性の分岐剤、たとえば、トリフェノールまたはテトラフェノールを任意に使用して、反応させることによって行われる。溶融重合法により、ジフェノールを、たとえば、ジフェニルカーボネートと反応させることによって製造することもできる。
【0019】
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートの製造用のジフェノールは好ましくは式(I)のものであり、
【化1】
ここで、
Aは単結合、C
1〜C
5アルキレン、C
2〜C
5アルキリデン、C
5〜C
6シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO
2−、C
6〜C
12アリーレンであり、これには任意にヘテロ原子を含有する他の芳香族環が縮合されてもよく、
または式(II)または(III)の基であり、
【化2】
Bは各場合、C
1〜C
12アルキル、好ましくはメチル、ハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素であり、
xはそれぞれ、互いに独立して0、1または2であり、
pは1または0であり、かつ
R
5およびR
6はX
1毎に独立して選択されてもよく、互いに独立して水素またはC
1〜C
6アルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルを示し、
X
1は炭素を示し、かつ
mは4〜7、好ましくは4または5の整数を示し、但し、R
5およびR
6は少なくとも1つのX
1原子上では同じアルキルである。
【0020】
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)C
1−C
5アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)C
5−C
6シクロアルカン、ビス(ヒドロキシ-フェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホンおよびα,α−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼンさらにはその環臭素化および/または環塩素化誘導体である。
【0021】
特に好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンおよびその2−および4臭素化または塩素化誘導体たとえば、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンまたは2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ-フェニル)プロパンである。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
【0022】
ジフェノールは個別に使用されても、何らかの混合物として使用されてもよい。ジフェノールは文献から公知であり、または文献から公知の方法によって得ることができる。
【0023】
熱可塑性、芳香族ポリカーボネートの製造に好適な鎖重合停止剤はたとえば、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert.−ブチルフェノールまたは2,4,6−トリブロモフェノールだけでなく、長鎖アルキルフェノール、たとえば、4−[2−(2,4,4−トリメチルペンチル)]フェノール、4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノール(ドイツ特許公開第DE−A 2 842 005号公報による)またはアルキル置換基に全部で8〜20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノールまたはジアルキルフェノール、たとえば、3,5−ジ−tert.−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−tert.−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノールおよび2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノールである。使用される鎖重合停止剤の量は一般的に、各場合使用されるジフェノールのモル合計に基づいて、0.5mol%〜10mol%の間である。
【0024】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートを公知の方法で、好ましくは、使用されるジフェノールの合計に基づいて、0.05〜2.0mol%の3官能性また3以上の官能性の化合物、たとえば、3以上のフェノール性基を有するものを導入することによって、分岐してもよい。
【0025】
ホモポリカーボネートもコポリカーボネートも共に好適である。本発明に従う成分Aのコポリカーボネートを製造するために、使用されるジフェノールの全量に基づいて、1〜25重量%、好ましくは2.5〜25重量%のヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンを使用することもできる。これらは公知であり(米国特許第3 419 634号公報)、文献から公知の方法によって製造され得る。ポリジオルガノシロキサンを含有するコポリカーボネートの製造はドイツ特許公開第DE−A3 334 782号公報に記載される。
【0026】
好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAホモポリカーボネート以外では、ビスフェノールAと、ジフェノールのモル合計に基づいて15mol%までの、好ましいまたは特に好ましいと言われる他のジフェノール、特に2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンとのコポリカーボネートである。
【0027】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造用の芳香族ジカルボン酸ジハライドは、好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸の二酸二塩化物である。
【0028】
イソフタル酸とテレフタル酸の二酸二塩化物の1:20〜20:1の間の割合での混合物が特に好ましい。
【0029】
ポリエステルカーボネートの製造では、炭酸ハライド、好ましくはホスゲンを2官能性酸誘導体として、さらに取り入れる。
【0030】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造用鎖重合停止剤としては、上記モノフェノール以外では、そのクロロ炭酸塩および芳香族モノカルボン酸の酸塩化物が好適であり、これらは任意にC
1〜C
22アルキル基またはハロゲン原子によって置換されてもよく、さらには脂肪族C
2〜C
22モノカルボン酸クロライドも好適である。
【0031】
鎖重合停止剤の量は、フェノール性鎖重合停止剤の場合にはジフェノールのモルに基づいて、モノカルボン酸クロライド鎖重合停止剤の場合にはジカルボン酸ジクロライドのモルに基づいて、各場合0.1〜10mol%である。
【0032】
芳香族ポリエステルカーボネートはまた、取り入れた芳香族ヒドロキシカルボン酸を含有してもよい。
【0033】
芳香族ポリエステルカーボネートは線形でも、公知の方法で分岐されても(ドイツ特許公開第DE−A 2 940 024号公報およびDE−A 3 007 934号公報参照)いずれでもよい。
【0034】
分岐剤としては、たとえば、3官能性または多官能性のカルボン酸クロライド、たとえば、トリメシン酸トリクロライド、シアヌル酸クロライド、3,3’−,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸テトラクロライド、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸テトラクロライドまたはピロメリト酸テトラクロライドを(使用されるジカルボン酸ジクロライドに基づいて)0.01〜1.0mol%の量で、または3官能性または多官能性のフェノール、たとえば、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4−ヒドロキシ-フェニル)フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシ-フェニル)プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシフェニルイソプロピル]フェノキシ)メタン、1,4−ビス[4,4’−ジヒドロキシ-トリフェニル]メチル]ベンゼンを、使用されるジフェノールに基づいて0.01〜1.0mol%の量で使用することができる。フェノール性分岐剤はジフェノールと共に最初に充填してもよく;酸塩化物分岐剤は酸二塩化物と共に導入してもよい。
【0035】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネートでは、カーボネート構造ユニットの割合は所望どおりに変更してもよい。カーボネート基の割合は好ましくは、エステル基とカーボネート基の合計に基づいて、100mol%まで、特に80mol%まで、特に好ましくは50mol%までである。芳香族ポリエステルカーボネートのエステル部分およびカーボネート部分は共に重縮合物中にブロックの形態で存在しても、ランダムに分布してもよい。
【0036】
芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートの相対溶液粘度(η
rel)は、1.20〜1.30、好ましくは1.22〜1.28および特に好ましくは1.23〜1.27(0.5gのポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートの100ml塩化メチレン溶液について、25℃で測定)の範囲内である。
【0037】
(成分B)
成分Bはゴム変性成分である。
【0038】
(成分B.1)
成分Bは成分B.1として、エマルジョン重合によって製造され、骨格として粒子状ゴムを備えるグラフトポリマー、またはいくつかのグラフトポリマーの混合物を含有する。
【0039】
成分B.1は好ましくは、
B.1.1 (B.1.1およびB.1.2の重量%の合計に基づいて、)5〜95重量%、好ましくは20〜80重量%および特に好ましくは25〜60重量%の少なくとも1つのビニルモノマーの、
B.1.2 (B.1.1およびB.1.2の重量%の合計に基づいて、)95〜5重量%、好ましくは80〜20重量%および特に好ましくは75〜40重量%の、<0℃、好ましくは<−10℃および特に好ましくは<−20℃のガラス転移温度を有する1以上の骨格における、
1以上のグラフトポリマーを含有する。
【0040】
骨格B.1.2は好ましくは、0.05〜0.25μm、好ましくは0.08〜0.20、特に好ましくは0.10〜0.18μmの平均粒子サイズ(d
50値)を有する。
【0041】
モノマーB.1.1は好ましくは、
B.1.1.1 (B.1.1.1およびB.1.1.2の重量%の合計に基づいて、)50〜99重量%、好ましくは60〜80重量%および特に好ましくは70〜80重量%のビニル芳香族および/または環置換ビニル芳香族(たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)およびメタクリル酸(C
1〜C
8)アルキルエステル(たとえば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート)から成る群から選択される少なくとも1つのモノマーおよび
B.1.1.2 (B.1.1.1およびB.1.1.2の重量%の合計に基づいて、)1〜50重量%、好ましくは20〜40重量%および特に好ましくは20〜30重量%のビニルシアニド(不飽和ニトリル、たとえば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)、(メタ)アクリル酸(C
1〜C
8)アルキルエステル(たとえば、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート)、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸の誘導体(たとえば、無水物およびイミド)(たとえば、マレイン酸無水物およびN−フェニルマレイミド)から成る群から選択される少なくとも1つのモノマー
の混合物である。
【0042】
好ましいモノマーB.1.1.1は、モノマースチレン、α−メチルスチレンおよびメチルメタクリレートの少なくとも1つのから選択され、好ましいモノマーB.1.1.2は、モノマーアクリロニトリル、マレイン酸無水物およびメチルメタクリレートの少なくとも1つのから選択される。特に好ましいモノマーは、B.1.1.1がスチレンおよびB.1.1.2がアクリロニトリルである。
【0043】
グラフトポリマーB.1に好適な骨格B.1.2はたとえば、ジエンゴム、EP(D)Mゴム、すなわちエチレン/プロピレンおよび任意のジエンに基づくもの、アクリレート、ポリウレタン、シリコン、クロロプレンおよびエチレン/ビニルアセテートゴムさらにはシリコン/アクリレートコンポジットゴムである。
【0044】
好ましい骨格B.1.2は、たとえば、ブタジエンゴムおよびイソプレンゴムに基づくジエンゴム、またはジエンゴムの混合物またはジエンゴムのコポリマー、これらと他の共重合可能なモノマー(たとえば、B.1.1.1およびB.1.1.2による)との混合物であり、但し、成分B.1.2のガラス転移温度は<0℃、好ましくは<−10℃、特に好ましくは<−20℃である。純粋なポリブタジエンゴムが特に好ましい。
【0045】
特に好ましいグラフトポリマーB.1はたとえば、ドイツ特許公開第DE−OS 2 035 390号公報(=米国特許公開第US−A 3 644 574号公報)に、またはドイツ特許公開第DE−OS 2 248 242号公報(=英国特許第GB−PS 1 409 275号公報)に、およびウルマンズ(Ullmanns),エンサイクロペディエ・デア・テクニッシェン・ヘミー(Enzyklopadie der Technischen Chemie),vol.19(1980),p.280ffに記載されるような、たとえば、ABSまたはMBSポリマーである。
【0046】
特に好適なグラフトポリマーB.1はコア−シェル構造を有する。
【0047】
骨格B.1.2のゲル含有量は、好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%および特に少なくとも90重量%(トルエン中で測定)である。
【0048】
また、特に好適なグラフトポリマーB.1は、特に、米国特許第US 4 937 285号公報に従って、有機ヒドロ過酸化物とアスコルビン酸の開始剤システムを用いた、酸化還元開始によって製造されたポリマーである。
【0049】
公知のように、グラフトモノマーはグラフト反応時に骨格に必ずしも完全にグラフトしないので、本発明によれば、成分B.1は、骨格の存在中でグラフトモノマーの(共)重合によって得られた生成物およびワークアップ時共に形成される生成物を意味するものとも理解される。したがってこれらの生成物には、グラフトモノマーのフリーの、すなわちゴムに化学的に結合しない(コ)ポリマーと、さらには実際のグラフトポリマーとが含まれうる。
【0050】
B.1.2に従って好適なアクリレートゴムは好ましくは、アクリル酸アルキルエステルと、任意にB.1.2に基づいて40重量%までの他の重合可能なエチレン性不飽和モノマーとのポリマーである。好ましい重合可能なアクリル酸エステルには、C
1〜C
8アルキルエステル、たとえば、メチル、エチル、ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはC
1〜C
8ハロアルキルエステル、たとえば、クロロエチルアクリレート、およびこれらのモノマーの混合物がある。
【0051】
架橋目的のために、1より多くの重合可能な二重結合を有するモノマーを共重合してもよい。架橋モノマーの好ましい例は、3〜8個のC原子を有する不飽和モノカルボン酸と3〜12個のC原子を有する不飽和一価アルコールの、または2〜4個のOH基と2〜20個のC原子を有する飽和ポリオールのエステル、たとえば、エチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート;ポリ不飽和複素環状化合物、たとえば、トリビニルおよびトリアリルシアヌレート;多官能性ビニル化合物、たとえば、ジ−およびトリビニルベンゼン;だけでなく、トリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートである。好ましい架橋モノマーはアリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレートおよび少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有する複素環状化合物である。特に好ましい架橋モノマーは環状モノマートリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジンおよびトリアリルベンゼンである。架橋モノマーの量は好ましくは、骨格B.1.2に基づいて、0.02〜5および特に好ましくは0.05〜2重量%である。少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有する環状架橋モノマーの場合には、その量を骨格B.1.2の1重量%未満に制限するのが有効である。
【0052】
好ましい「他の」重合可能なエチレン性不飽和モノマーが、アクリル酸エステルに加えて、任意に骨格B.1.2の製造用に使用されてもよく、これにはたとえば、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC
1〜C
6アルキルエーテル、メチルメタクリレートおよびブタジエンがある。骨格B.1.2として好ましいアクリレートゴムは少なくとも60重量%のゲル含有量を有するエマルジョンポリマーである。
【0053】
B.1.2に従って好適な他の骨格は、ドイツ特許出願第DE−OS 3 704 657、DE−OS 3 704 655、DE−OS 3 631 540およびDE−OS 3 631 539号公報に記載されるようなグラフト−架橋点を有するシリコンゴムである。
【0054】
骨格B.1.2のゲル含有量は、25℃で好適な溶媒中で、これらの溶媒に不溶な割合として決定される(M.ホフマン(Hoffmann),H.クローマ(Kromer)R.クン(Kuhn),ポリマーアナリチック(Polymeranalytik)IおよびII,ゲオルグ・タイム−ベラグ(Georg Thieme-Verlag),スツットガルト 1977)。
【0055】
平均粒子サイズd
50は、粒子の50重量%が存在する前後の直径である。これは超遠心分離測定によって決定されてもよい(W.ショルタン(Scholtan),H.ラング(Lange),コロイド,Z.ウント・Z.ポリマー(Kolloid, Z. und Z. Polymere)250 (1972),782−796)。
【0056】
(成分B.2)
好ましい実施の形態では、成分Bはさらに、成分B.2としてゴム非含有ビニル(コ)ポリマーを含有する。
【0057】
成分B.2のゴム非含有ビニル(コ)ポリマーは、ビニル芳香族、ビニルシアニド(不飽和ニトリル)、(メタ)アクリル酸(C
1〜C
8)アルキルエステル、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(たとえば、無水物およびイミド)の群からの少なくとも1つのモノマーのゴム非含有ホモポリマーおよび/またはコポリマーである。
【0058】
B.2.1 (B.2.1およびB.2.2の重量%の合計に基づいて、)50〜99重量%、好ましくは60〜80重量%、特に好ましくは70〜80重量%の、ビニル芳香族(たとえば、スチレン、α−メチルスチレン)、環置換ビニル芳香族(たとえば、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)および(メタ)アクリル酸(C
1〜C
8)アルキルエステル(たとえば、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、tert.−ブチルアクリレート)の群から選択される少なくとも1つのモノマーおよび
B.2.2 (B.2.1およびB.2.2の重量%の合計に基づいて、)1〜50重量%、好ましくは20〜40重量%、特に好ましくは20〜30重量%の、ビニルシアニド(たとえば、不飽和ニトリル、たとえば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)、(メタ)アクリル酸(C
1〜C
8)アルキルエステル(たとえば、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、tert.−ブチルアクリレート)、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(たとえば、マレイン酸無水物およびN−フェニルマレイミド)の群から選択される少なくとも1つのモノマー
のビニル(コ)ポリマーB.2が特に好適である。
【0059】
ビニル(コ)ポリマーB.2は好ましくは、樹脂状で熱可塑性である。B.2.1がスチレンでB.2.2がアクリロニトリルのコポリマーが特に好ましい。
【0060】
これらのビニル(コ)ポリマーB.2は公知であり、フリーラジカル重合によって、特に、エマルジョン、懸濁液、溶液またはバルク重合によって製造されてもよい。好ましくはビニル(コ)ポリマーは40,000〜250,000g/mol、好ましくは60,000〜170,000g/molおよび特に好ましくは70,000〜140,000g/molの重量平均分子量Mw(GPCによって、基準としてポリスチレンを用いて決定される)を有する。
【0061】
成分B.1およびB.2は、全量または一部の量のB.1と全量または一部の量のB.2の事前混練物として使用されてもよい。
【0062】
本発明の意味する範囲内で、事前混練物という用語は、混練ユニット、たとえば、混練反応容器または二軸性押出し成形機内で、熱および/または機械的エネルギーを印加することによって、180℃〜300℃、好ましくは200℃〜280℃、特に好ましくは220℃〜260℃の温度に加熱し、これによって互いに溶融、混合および分散され、任意に真空を印加することで脱気され、そして再度冷却され、粒剤化される、グラフトポリマーB.1とゴム非含有ビニル(コ)ポリマーB.2との混合物と理解される。好ましい実施の形態では、グラフトポリマーB.1は、欧州特許出願第EP 0 768 157 A1およびEP 0 867 463 A1号公報に記載される方法に従って、水性状態で(すなわち、水の存在中で)使用される。
【0063】
本発明の意味する範囲内で成分Bに使用して好適な事前混練物は好ましくは、(各場合事前混練物に基づいて)10〜70重量部、特に好ましくは20〜60重量部、および最も好ましくは30〜55重量部のグラフトポリマーB.1と、(各場合事前混練物に基づいて)好ましくは30〜90重量部、特に好ましくは40〜80重量部、および最も好ましくは45〜70重量部のゴム非含有ビニル(コ)ポリマーB.2とを含有する。
【0064】
(成分B.3)
成分Bはさらに、任意にバルク、溶液またはバルク−懸濁液重合法で製造されるグラフトポリマーB.3をも含有してもよい。
【0065】
成分B.3は好ましくは、
B.3.1 (B.3.1およびB.3.1の重量%の合計に基づいて、)60〜95重量%、好ましくは70〜92重量%および特に好ましくは80〜90重量%の、
B.3.1.1 (B.3.1.1およびB.3.1.2の重量%の合計に基づいて、)65〜85重量%および好ましくは70〜80重量%の、ビニル芳香族(たとえば、スチレン、α−メチルスチレン)、環置換ビニル芳香族(たとえば、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)およびメタクリル酸(C
1〜C
8)アルキルエステル(たとえば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート)の群から選択される少なくとも1つのモノマーおよび
B.3.1.2 (B.3.1.1およびB.3.1.2の重量%の合計に基づいて、)15〜35重量%および好ましくは20〜30重量%の、ビニルシアニド(たとえば、不飽和ニトリル、たとえば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)、(メタ)アクリル酸(C
1〜C
8)アルキルエステル(たとえば、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、tert.−ブチルアクリレート)、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(たとえば、無水物およびイミド)(たとえば、マレイン酸無水物およびN−フェニルマレイミド)の群から選択される少なくとも1つのモノマー
の混合物の、
B.3.2 (B.3.1およびB.3.2の重量%の合計に基づいて、)5〜40重量%、好ましくは8〜30重量%および特に好ましくは10〜20重量%の、<0℃および好ましくは<−20℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つの骨格における
グラフトポリマーを含有する。
【0066】
バルク、溶液またはバルク−懸濁液重合法によって製造される成分B.3のグラフトポリマーは、好ましくは、0.1〜10μm、好ましくは0.2〜5μm、および特に好ましくは0.3〜2.0μmの平均粒子サイズ(d
50値)を有する。
【0067】
好ましいモノマーB.3.1.1はモノマースチレン、α−メチルスチレンおよびメチルメタクリレートの少なくとも1つから選択され、好ましいモノマーB.3.1.2はモノマーアクリロニトリル、マレイン酸無水物およびメチルメタクリレートの少なくとも1つから選択される。
【0068】
特に好ましいモノマーは、B.3.1.1がスチレンで、B.3.1.2がアクリロニトリルである。
【0069】
グラフトポリマーB.3に好ましい骨格B.3.2はたとえば、ジエンゴム、ジエン−ビニルブロックコポリマーゴム、EP(D)Mゴム、すなわちエチレン/プロピレンおよび任意のジエンに基づくもの、および1以上の上記タイプのゴムの混合物である。
【0070】
特に好ましい骨格B.3.2は、(たとえば、ブタジエンゴムまたはイソプレンゴムに基づく)ジエンゴム、(たとえば、ブタジエンおよびスチレンブロックに基づく)ジエン−ビニルブロックコポリマーゴム、ジエンゴムと他の共重合可能なモノマー(たとえば、B.3.1.1およびB.3.1.2による)とのコポリマーおよび上記タイプのゴムの混合物である。
【0071】
特に好ましい骨格B.3.2は、純粋なポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンブロックコポリマーゴムおよび純粋なポリブタジエンゴムとチレン−ブタジエンブロックコポリマーゴムの混合物である。
【0072】
グラフトポリマーB.3は一般的にフリーラジカル開始重合によって製造される。
【0073】
特に好ましいグラフトポリマーB.3はABSポリマーである。
【0074】
グラフトポリマーB.3はB.3.1.1およびB.3.1.2のフリーの、すなわちゴム骨格に化学的に結合せず、好適な溶媒(たとえば、アセトン)に溶解しうることを特徴とするコポリマーを含有する。
【0075】
成分B.3はB.3.1.1およびB.3.1.2のフリーのコポリマーを含有し、これは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって、基準としてポリスチレンを用いて決定されて、60,000〜200,000g/molおよび特に好ましくは70,000〜140,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0076】
成分Bのゴム変性スチレン樹脂内に含まれうる成分B.1〜B.3の量的割合は、一方では、組成物全体における成分AおよびBの割合によって決まり、他方では、成分B.1およびB.3の個々のゴム含有量、およびそのグラフト粒子のサイズ分布によっても決まる。
【0077】
原理的には、本発明による一方での組成物内での成分AおよびBの量的割合と、他方での成分B.1〜B.3の量的割合は、互いに次のように調整されねばならない。
(i)ポリカーボネート組成物の全ゴム含有量(すなわち、B.1およびB.3のエラストマー部分の合計)は1〜6重量%、好ましくは2.0〜5.5重量%および特に好ましくは2.5〜5.0重量%であり、
(ii)成分Bにおける全グラフト粒子の(すなわち、B.1およびB.3からのグラフト粒子を考慮して、)少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%は、超遠心分離によって測定されて、200nmまでの直径を有し、かつ
(iii)好ましい実施の形態では、さらに、成分Bにおける全グラフト粒子の25重量%まで、特に20重量%までは、超遠心分離によって測定されて、400nmより大きい直径を有する。
【0078】
好ましい実施の形態では、上記条件(i)〜(iii)を満足するなら、成分Bは、成分Bに基づいて、5〜50重量%、特に好ましくは8〜40重量%および最も好ましくは15〜35重量%の成分B.1と、成分Bに基づいて、50〜95重量%、特に好ましくは60〜92重量%および最も好ましくは65〜85重量%の成分B.2と、成分Bに基づいて、0〜25重量%、特に好ましくは0〜10重量%および最も好ましくは0重量%の成分B.3から成る。
【0079】
(成分C)
組成物はポリマー添加剤を成分Cとして含有してもよい。成分Cに従って好適な市販のポリマー添加剤は、添加剤、たとえば、難燃剤(たとえば、リンまたはハロゲン化合物)、防炎協力剤(たとえば、ナノスケール金属酸化物)、発煙抑制剤(たとえば、ホウ酸またはホウ酸塩)、ドリッピング防止剤(たとえば、フッ素化ポリオレフィン、シリコンおよびアラミドファイバの物質群からの化合物)、内部および外部潤滑剤および離型剤(たとえば、ペンタエリトリトールテトラステアレート、モンタンワックスまたはポリエチレンワックス)、流動助剤(たとえば、低分子量ビニル(コ)ポリマー)、帯電防止剤(たとえば、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのブロックコポリマー、他のポリエーテルまたはポリヒドロキシエーテル、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミドまたはスルホン酸塩)、導電性添加剤(たとえば、導電性カーボンブラックまたはカーボンナノチューブ)、安定剤(たとえば、UV/光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、エステル交換抑制剤、耐加水分解剤)抗菌活性のある添加剤(たとえば、銀または銀塩)、耐引っ掻き性改良剤(たとえば、シリコンオイルまたは硬質充填剤、たとえば、セラミック(中空)球体)、IR吸収剤、光沢剤、蛍光剤、充填剤および補強材料(たとえば、タルク、任意に粉ガラスまたはカーボンファイバ、ガラスまたはセラミック(中空)球体、マイカ、カオリン、CaCO
3およびガラスフレーク)さらには染料および顔料(たとえば、カーボンブラック、二酸化チタンまたは酸化鉄)および塩基清浄剤としてブレンステッド酸化合物、または1以上の上記添加剤の混合物である。
【0080】
好ましい実施の形態では、本発明による組成物は難燃剤を含まずかつ充填剤および補強材料を含まない。
【0081】
(成形組成物および成形物の製造)
本発明による熱可塑性成形組成物は、たとえば、それぞれの成分を公知の方法で混合し、これを好ましくは220℃〜330℃および特に好ましくは260〜300℃の温度で、常套の設備、たとえば、内部混合器、押出し成形機または二軸性押出し成形機内で、溶融混練および溶融押出しすることによって製造されうる。個々の成分の混合は、公知の方法で、連続的にでも同時にでも、約20℃(室温)ででもより高温で行われてよい。
【0082】
本発明は、したがって、本発明による組成物の製造方法も提供するものである。
【0083】
本発明による成形組成物は、いずれのタイプの成形物の製造に使用されてもよい。これらはたとえば、射出成形、押出し成形およびブロー成形法によって製造されてもよい。別の方法形態は、予め製造されたシートまたはフィルムから熱形成することによって成形物を製造するものである。
【0084】
これらの成形物の例は、フィルム、異形材、いずれかのタイプの、たとえば、家庭用品、たとえば、ジュースプレス、コーヒーメーカー、ミキサー用の;オフィス装置、たとえば、モニター、フラットスクリーン、ノートブック、プリンタ、複写機用のハウジング部品;シート、チューブ、電気設備ダクト、窓、ドアおよび建築分野(内装仕上げおよび外装用途)用の他の異形材さらには電気および電子部品、たとえば、スイッチ、プラグおよびソケットおよび市販車、特に自動車分野用部品である。
【0085】
また、本発明による成形組成物はたとえば、以下の成形物の製造にも好適である:鉄道列車、船、飛行機、バスおよび他の自動車用内装仕上げ、自動車用本体部品、小型変圧器を含む電気装置用ハウジング、情報処理および転送用装置のためのハウジング、医療装置用ハウジングおよび外装材、マッサージ装置およびそのためのハウジング、子供用のおもちゃの自動車、平坦な壁パネル、安全装置用ハウジング、断熱性輸送コンテナ、トイレおよび風呂設備用成形物、換気窓用カバーグリッドプレート、庭設備用ハウジング。
【0086】
特に本発明による成形組成物は、金属化成形物の製造に好適であり、好ましい実施の形態では、表面の金属化側上に少なくとも部分的に
凹面または凸面を備え、表面光沢に関して、特に表面光沢の均一性に関して、かつ熱耐性と靭性に関して要求が高い成形物にも好適である。本発明による成形組成物から成るこれらの成形物は、ポリカーボネートおよび/またはポリメチルメタクリレートの成形物に溶接することができる。
【0087】
特に好ましい実施の形態では、本発明による成形組成物はしたがって、リフレクタ機能を有するランプハウジングの製造に好適であり、これは任意にポリカーボネートまたはポリメチルメタクリレートから成る透明なランプカバーに溶接される。たとえば、好ましくは、本発明による成形組成物はしたがって、車のヘッドライトおよび車のリアライトの製造に好適である。
【0088】
射出成形部品の金属化では、原理的に先行技術から公知の全ての方法が好適である。たとえば、ECD(電着成膜)または電気鍍金、PVD(物理蒸着)およびCVD(化学蒸着)法をここでは記載することができる。
【0089】
射出成形部品は好ましくは、PVD法、たとえば、電子ビーム蒸着またはスパッタリング法によって金属化するのに好適である。
【実施例】
【0090】
A)
(成分A−1)
(100mlの塩化メチレンにおける0.5gのポリカーボネートの溶液について、25℃での測定で、)1.25の相対溶液粘度を有するビスフェノールAに基づく線形ポリカーボネート。
【0091】
(成分B.1−1)
コア−シェル構造を有し、エマルジョン重合によって製造されたABSグラフトポリマーであって、これは、43重量%の、スチレンのアクリロニトリルに対する割合が77:23重量%であるスチレン−アクリロニトリルコポリマーのシェルの、57重量%の粒子状骨格におけるABSグラフトポリマーであり、グラフト粒子、すなわち、化学的に結合したグラフトシェルを備える粒子状ゴム骨格は、約150nmの平均粒子サイズd
50を有し、骨格は純粋なポリブタジエンゴムから成る。55重量%のグラフト粒子は超遠心分離によって測定されて、200nm未満の直径を有し、15重量%のグラフト粒子は超遠心分離によって測定されて、400nmより大きい直径を有する。
【0092】
(成分B.2−1)
23重量%のアクリロニトリルと77重量%のスチレンのSANポリマー。
【0093】
(成分B−1)
50重量%の成分B.1−1と50重量%の成分B.2−1から成る事前混練物。
【0094】
(成分C−1)
離型剤としてのペンタエリトリトールテトラステアレート。
【0095】
(成分C−2)
以下の式(V)に従うビス(2−ヒドロキシ−3−シクロヘキシル−5−メチルフェニル)メタンの亜リン酸エステル。
【化3】
【0096】
ZSK−25二軸性押出し成形機(コペリオン,ウェルナー&フライデラア(Coperion, Werner & Pfleiderer))を用いて、以下の組成物を260℃の溶融温度で混練した:
A−1 65.46%
B−1 14.00%
B.2−1 19.70%
C−1 0.74%
C−2 0.10%
【0097】
組成物は3.8重量%のエラストマー含有量を有する。
【0098】
ISO 11443に従って、260℃の温度で1000
−1のせん断速度で、組成物について測定したところ、190Pasの溶融粘度であった。
【0099】
ISO 306に従って決定されたVicatB120値は126℃であり、高い熱耐性測定値であった。
【0100】
ISO180/1Aに従う23℃での切り欠き衝撃試験では、材料は頑丈な破砕機能を示した。決定された切り欠き衝撃強さ値は40kJ/m
2であった。
【0101】
部分的に凹凸形状の表面を有する成形物を、本発明によるこの組成物から射出成形法によって製造し、PVD(物理蒸着)によって金属化した後に、外観的に評価したところ、高い光沢を示し、成形物全体の光沢の均一性は先行技術による組成物から成形された比較可能な成形物に比べて高かった。
【0102】
B)
(成分A−1)
(100mlの塩化メチレンにおける0.5gのポリカーボネートの溶液について、25℃での測定で、)1.25の相対溶液粘度を有するビスフェノールAに基づく線形ポリカーボネート。
【0103】
(成分A−2)
(100mlの塩化メチレンにおける0.5gのポリカーボネートの溶液について、25℃での測定で、)1.28の相対溶液粘度を有するビスフェノールAに基づく線形ポリカーボネート。
【0104】
(成分B−1a〜B−7a)
成分B−1a〜B−7aは、エマルジョン重合されたABSグラフトポリマーを含むABSポリマーであって、これを、エマルジョン重合されたABS、スチレン−アクリロニトリルコポリマーおよび塊状重合されたABSを様々な含有量で混合することによって製造した。ABSポリマーのモノマーの組成を赤外線スペクトロスコピーによって決定し、グラフト粒子サイズ分布を超遠心分離によって測定した(表1)。
【0105】
【表1】
【0106】
(成分C−1)
離型剤としてのペンタエリトリトールテトラステアレート。
【0107】
(成分C−2)
以下の式(V)に従うビス(2−ヒドロキシ−3−シクロヘキシル−5−メチルフェニル)メタンの亜リン酸エステル。
【化4】
【0108】
(成分C−3)
顔料としてのカーボンブラック。
【0109】
(成形組成物の調製および試験)
表2に挙げる物質を、二軸性押出し成形機(ZSK−25)(ウェルナー・ウント・フライデラア(Werner und Pfleiderer)において、225rpmの速度で260℃の溶融温度で20kg/時間の生産量で混練し粒状化する。
【0110】
化合物の溶融粘度を、260℃で、1000s
−1のせん断速度で、ISO 11443に従って測定した。
【0111】
本組成物の違いを特徴付けるために、射出成形ダイを選択して湾曲した表面、鋭く尖った先端部、穴および溶接ライン等を備える物品を製造し、光沢度の不均一性(曇り)を明らかにした。
【0112】
異なる組成の粒剤を110℃で4時間対流式乾燥機で乾燥した。
【0113】
成形物品を、射出成形機、クラウス−マーファイ(Krauss-Maffei)KM 350モデルにおいて、280℃の溶融温度で、85℃のダイ温度でかつ40mm/sの射出速度で、乾燥した粒剤から製造した。
【0114】
成形物を、150nmの厚さを有するアルミニウム層で、電子ビーム蒸着によってコートし、コートされた成形物品の光学特性に関して、酸化処理の影響を最小限にするために、直ちに外観評価した。
【0115】
金属化した成形物品の光沢度および生じた反射率を評価した(評価「+」は最高光沢/反射率に等しく;評価「−」は著しく低い光沢/反射率に等しい)。さらに、「曇り」に鑑みて光沢度の均一性を評価した(評価「+」は光沢の均一性が高い/「曇り」が低いことであり;評価「−」は光沢の均一性が著しく低い/「曇り」が高いことである)。
【0116】
【表2】
【0117】
表2の実施例は、本発明の組成物による金属化成形物品のみが、高い光沢度と、それによる高い反射率および光沢の高い均一性、すなわち低い曇りとを併せ持つことを示す。
【0118】
1〜6重量%の請求される範囲外のゴム含有量を有する組成物を使用する場合には、金属化物品では光沢および光沢の均一性が共に低い(実施例1、V1およびV3参照)。
【0119】
さらに、>400nmの直径を有するグラフト粒子(成分B)含有量が25重量%を超える場合には、高い均一性の光沢が得られるが、光沢度および反射率は悪化する(実施例5および6)。