特許第5738881号(P5738881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738881
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】ソレノイド・アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/16 20060101AFI20150604BHJP
   H02K 33/02 20060101ALI20150604BHJP
   H01F 7/122 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   H01F7/16 R
   H02K33/02 A
   H01F7/08 A
【請求項の数】23
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2012-538407(P2012-538407)
(86)(22)【出願日】2010年11月5日
(65)【公表番号】特表2013-510450(P2013-510450A)
(43)【公表日】2013年3月21日
(86)【国際出願番号】GB2010051849
(87)【国際公開番号】WO2011058344
(87)【国際公開日】20110519
【審査請求日】2013年10月31日
(31)【優先権主張番号】0919645.2
(32)【優先日】2009年11月10日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500331057
【氏名又は名称】センテック・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】デイムズ、アンドリュー
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平03−505769(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/122841(WO,A1)
【文献】 特開平07−037461(JP,A)
【文献】 特開2000−260619(JP,A)
【文献】 実開昭57−037214(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/06− 7/16
H02K 33/00−33/18
F02M 39/00−71/04
F16K 31/06−31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの極片(47,48;47,81;100,101;115;135,139,140)と、
アーマチュア(51;86;104;121;138)と、
第1及び第2の位置の間における前記アーマチュアの移動を、磁化に応じて生じるように配置された、電磁コイル(46;112)と、
前記アーマチュアが前記第1及び第2のそれぞれの位置にあるときに、前記第1及び第2の位置に前記アーマチュアを停止させるように配置され、かつ方向付けられた永久磁石(52;84;105;119;136)と、
前記アーマチュアを付勢するように配置され、かつ、前記アーマチュアが第2の位置に停止することを防ぐのに十分な力を提供するように構成されたスプリング(53;106;122;143)
を備える短行程のソレノイド・アクチュエータであって
ここで、前記スプリング(53;106;122;143)は、少なくとも20Ncm−2×A/tのばね定数k(N/μm)を有しており、ここで、Aは、極片(47,48)におけるcmでの有効面積であり、tは、前記アーマチュアと極片との間の、μmでのギャップ長である
【請求項2】
請求項に記載のアクチュエータであって、ここでは、前記スプリング(53;106;122;143)は、少なくとも40Ncm−2×A/tのばね定数kを有する。
【請求項3】
請求項又はに記載のアクチュエータであって、ここでは、前記有効面積Aは、0.2cmから5cmの間である。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアクチュエータであって、前記スプリング(53;106;122;143)は、行程を戻る方向を持つばね力を提供する。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載のアクチュエータであって、ここでは、前記スプリング(106;122;143)は、湾曲部又は湾曲部の組(89)を備える。
【請求項6】
請求項に記載のアクチュエータであって、ここでは、一つのあるいはそれぞれの湾曲部(106;122)は、長さ、幅及び厚さを有する、平坦なシート湾曲部であり、ここで、前記長さは、前記厚さより大きく、そしてここで、移動の方向は、前記湾曲部の長さに沿っている。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載のアクチュエータであって、ここでは、前記スプリング(53)は、共通軸を有する第1及び第2のチューブを備える同心状のチューブ・ベローを備えており、そしてここで、移動の方向は、前記軸に沿っている。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のアクチュエータであって、ここでは、第1及び第2の位置の間における前記アーマチュア(51)の移動距離は、500μm以下であるか、又は、100μm以下である
【請求項9】
請求項に記載のアクチュエータであって、ここでは、前記移動距離は、20〜80μmの間である。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のアクチュエータであって、ここでは、極及び/又はアーマチュアについての前記幅は、前記アーマチュアとポールとの間の前記ギャップ長の少なくとも10倍、少なくとも100倍、又は少なくとも200倍である。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のアクチュエータであって、ここでは、前記永久磁石(52;108)は、前記アーマチュア(51;107)によって支持されていて、アーマチュアと共に移動するようになっている。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のアクチュエータであって、ここでは、前記永久磁石(84)は、極片(47,81)によって支持されている。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のアクチュエータであって、ここでは、前記アクチュエータは、内側あるいは外側に向けられた磁化を持つ前記アーマチュアの中央におけるいずれかの側に配置された少なくとも二つの永久磁石を備える。
【請求項14】
請求項1に記載のアクチュエータであって、ここでは、前記永久磁石は、少なくとも1mmの厚さを持つ。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のアクチュエータであって、ここでは、前記永久磁石(52;119)は、環状である。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のアクチュエータであって、ここでは、前記コイルは、極の幅(w)の0.5倍以下の環状の幅(w)を有する。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載のアクチュエータであって、これは、他の電磁コイル(45)をさらに備える。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載のアクチュエータであって、ここでは、前記少なくとも一つの極片(115)は、移動の方向に沿って離間された第1及び第2の極(117,118)を提供し、さらにここでは、前記アーマチュア(121)は、前記第1及び第2の極(117,118)の間に配置されている。
【請求項19】
請求項1〜17に記載のアクチュエータであって、ここでは、前記少なくとも一つの極片は、移動の方向に沿って離間された第1及び第2の極片(47,48;47,81;100,101)を含んでおり、さらにここでは、前記アーマチュア(51;86;107)は、前記第1及び第2の極片の間に配置されている。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載のアクチュエータであって、ここでは、前記アクチュエータは、可変な上昇を可能にする直線動作を提供している。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載のアクチュエータであって、これはさらにチューブ(130)を含んでおり、
ここで、前記少なくとも一つの極片(135、139)は、内側及び外側の極片を含んでおり、
さらにここで、前記外側極片(135)及び前記少なくとも一つのコイル(133)は、前記チューブ(130)の外側に配置されており、
さらにここで、前記内側極片(139)及びアーマチュアは、前記チューブの内側に配置されている。
【請求項22】
請求項1〜2のいずれか1項に記載のアクチュエータを備える、流体流の制御用の装置(36)。
【請求項23】
請求項1〜2のいずれか1項に記載のアクチュエータを備える、燃料インジェクタ(36)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイド・アクチュエータに関するものであり、特に、しかし排他的でなく、燃料インジェクタにおいて使用されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
ソレノイド・アクチュエータは、多数の、異なる形態をとることができる。
【0003】
単純な、単動(single-action)のソレノイドは、アーマチュア(armature)と、電磁コイル(electromagnetic coil)(しばしば、単に「電磁石」として言及される)と、磁気コア(magnetic core)と、スプリングとを備える。電磁石を励磁することにより、アーマチュアが移動する。電流が遮断されると、スプリングがアーマチュアを復帰させる。単動ソレノイドに永久磁石を追加すると、アーマチュアを停止(latch)させることができる。したがって、電流が遮断されたとき、アーマチュアの位置が保たれる。アーマチュアを解放するために、電磁石は、反対の方向に流れる電流により励磁される。
【0004】
複動(double-action)のソレノイドは、通常、二つの電磁石を含む。例えば米国特許4751487Aに記載されているように、永久磁石を使うことによって、二重の停止(dual latching)を行うことができる。
【0005】
ある種のソレノイドでは、アーマチュアは、直線的に並進するのではなく、傾斜している。そのようなソレノイドの一例は、例えば米国特許1365898Aに記載されているように、バランスされたアーマチュア・トランスデューサ(balanced armature transducer)において見出される。
【0006】
ある種のソレノイド・アクチュエータを、燃料インジェクタ及びエンジンバルブにおいて使用できる。
【0007】
例えば、US2007/0095954Aは、退避位置と延長位置との間で移動可能なピントル(pintle)と、ピントルを退避位置に付勢する復帰スプリングとを有する燃料インジェクタを記載している。電磁コイルと可動アーマチュアとを有する、単動の非停止ソレノイドが使用されて、ピントルを延長位置に駆動することができる。したがって、電磁コイルが励磁されると、ピントルが延長位置に駆動され、そして、コイルへの励磁が停止すると、ピントルは、退避位置に戻る。
【0008】
EP1837516Aは、燃料バルブを開閉するために移動可能な、単動の、非停止アクチュエータと、閉位置に向けてアーマチュアを駆動する永久磁石と、開位置に向けてアーマチュアを駆動するスプリングと、永久磁石の磁界と干渉して、永久磁石によってアーマチュアに作用する力を少なくとも減少させる磁界を生成する電磁石とを記載している。電磁石が励磁されていないときは、永久磁石は、磁力を及ぼして、バルブを閉位置に保持する。電磁石が励磁されたときは、それは、永久磁石によって生成される力を減少させる磁界を生成する。スプリングの動きにより、アーマチュアは、開位置に移動する。電磁石がオフ状態に切り替わると、永久磁石の力がバルブを閉じる。あるいは、電磁石を通る電流の方向を反転させることは、バルブを閉じる磁界の生成に寄与しうる。
【0009】
EP2194543Aは、アーマチュアと、アーマチュアを第1の方向に移動させるように配置された第1電磁コイルと、第2の方向にアーマチュアを付勢してそれを第1の(つまり閉の)位置に保持するスプリングとを有する複動の非停止ソレノイド・アクチュエータを含む燃料インジェクタを記載している。ソレノイド・アクチュエータは、第2電磁コイルと、この第2電磁コイルに関連付けられた永久磁石とを含む。永久磁石は、第2の方向にアーマチュアを移動させて、アーマチュアを第1の位置に保持するように作用する磁界を生成する。第2電磁コイルは、永久磁石とは反対の方向に磁界を生成する。したがって、第2電磁コイルが励磁されると、それは、永久磁石の磁界をキャンセルする。それと同時に、あるいはその直後に、第1電磁コイルが励磁され、アーマチュアを、第1の方向において、第2の位置に移動させるようになっている。第1及び第2の電磁コイルでの励磁が停止すると、スプリングと永久磁石により生成された力が作用して、アーマチュアを、その第1の位置まで戻す。
【0010】
米国特許5494219Aは、アーマチュアと、第1及び第2のコイルと、第1及び第2の永久磁石とを備える複動アクチュエータを有する燃料噴射システムにおける制御バルブ・アセンブリを記載している。アーマチュアは、第1永久磁石によって、第1の位置に保持される。第1コイルは励磁されて、それは、第1永久磁石により生成される磁界をキャンセルする。それから、第2コイルが励磁されて、それは、第2永久磁石により生成される磁界と同じ方向における磁界を生成し、これによって、アーマチュアを第2の位置に引く。第1コイルがオフに切り替えられて、一旦、アーマチュアが第2の位置に達すると、第2コイルもオフに切り替えられる。アーマチュアは、第2永久磁石により、第2の位置に保持される。この工程を、第1及び第2のコイルの操作を交換しながら繰り返すことにより、アーマチュアを第1の位置に戻すことができる。
【0011】
米国特許5961045Aは、ポペット・バルブ部材を有する燃料インジェクタにおける制御バルブを記載しており、これは、ポペット・バルブ部材が取り付けられ、かつ永久磁石を含むアーマチュアと、コイルと、復帰スプリングとを有する単動ソレノイドを含む。それとともに、復帰スプリングと永久磁石とは、通常、ポペット・バルブ部材を第1の開位置において付勢する。永久磁石の向きとしては、コイルが励磁されたときに永久磁石がコイル及びフラックス・キャリア(flux carrier)から遠ざかり、ポペット・バルブを第2の閉位置に押すようになっている。
【0012】
EP1939440Aは、第1及び第2の独立操作可能なコイルの間に配置された永久磁石アーマチュアを含む、複動の、二重停止のソレノイドを有する燃料噴射バルブを記載している。第1及び第2のコイルが操作されるとソレノイド・アクチュエータは、アーマチュアを後退させ及び引き寄せ、これにより、アーマチュアにより支持されるニードルバルブを移動させることができる。
【0013】
例えばGB2208041Aに記載されるように、ソレノイド・アクチュエータを使用して、内燃チャンバにおける吸気及び排気バルブを制御することもできる。この構成において、バルブ閉鎖部材は、圧縮スプリングの力に対抗して、開又は閉の位置に向けて、永久磁石の極によりラッチされる。各位置に関連するコイルは、電流パルスにより作動するときは、バルブ閉鎖部材を保持する永久磁石の極における磁界をキャンセルし、そして、圧縮スプリングが、他の位置に向けて、谷閉鎖部材(vale closing member)を、中央のニュートラル位置を通って迅速に、移動させることができる。
【0014】
他のアクチュエータがWO2005/043266Aに記載されており、これは、超高速の工具サーボにおいて使用される。このアクチュエータは、第1及び第2のコイルと、永久磁石と、湾曲部(flexures)によって支持されるアーマチュアとを含む。
【発明の概要】
【0015】
本願発明は、改善されたソレノイド・アクチュエータを提供しようとするものである。
【0016】
本発明の実施形態における第1の面によれば、短行程ソレノイド・アクチュエータ(short travel solenoid actuator)が提供され、それは、少なくとも一つの極片(pole piece)と、例えば第1及び第2の極片の間に配置されるアーマチュアと、励磁に応答して、第1及び第2の位置の間で前記アーマチュアを移動させるように構成された電磁石コイルと、前記アーマチュアが前記第1及び第2の位置にそれぞれあるときに、前記第1及び第2の位置に前記アーマチュアを停止(latch)させるように配置され、かつ方向付けられた永久磁石と、アーマチュアを付勢(bias)するように構成されて、前記アーマチュアが前記第2の位置において停止(latching)することを防ぐために十分な力を提供するスプリングとを含む。
【0017】
用語「短行程(short travel)」が意図する意味は、ギャップに流れ込む磁束(magnetic flux)が流入あるいは流出する極(pole)あるいはアーマチュアのような、ギャップに隣接する磁性材料(magnetic material)における最も狭い幅(すなわち最も狭い有効幅(narrowest effective width))よりも小さい大きさのオーダのギャップ長を、アーマチュアと極片(単数又は複数)とが、少なくとも有すように構成されることである。もしギャップがより短くされている、あるいは、磁性材料がより広くされているならば、磁界は、ギャップの幅にわたって、いっそう均一となる。磁性材料の幅は、最大ギャップ長の少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも200倍、あるいは少なくとも500倍であってよい。好ましくは、スプリングは、中立点(neutral point)、すなわち、それが力を発揮しない位置を、第1及び第2の位置の一つに、あるいはそれらの間に持つ。
【0018】
十分に高いばね定数を持つスプリングにより、十分な力を提供できる。第1及び/又は第2の位置における停止領域(latching fields)は、おおよそ1から1.5Tの間にある。スプリング(あるいは、一つ以上のスプリングが用いられている場合には、集合的あるいは組み合わせとしてのスプリング)は、少なくとも20Ncm−2×A/tのばね定数k(N/μmにおいて)を持つことができる。ここで、Aは、cmで示される極片有効面積(active area of pole piece)、tはギャップ長(μmとして)である。有効面積は、極片の面(face)の面積マイナス、コイルによって取られる面積すなわち、磁性材料の面の面積、であってよい。スプリングは、少なくとも40Ncm−2×A/tのばね定数を有する。面積Aを、0.2cmと5cmとの間とすることができる。スプリングは、移動とは逆行する方向を持つばね力を提供することができる。スプリングは、例えば、長さ、幅及び厚さを持つ平坦シート湾曲部(flat sheet flexure)のような湾曲部を備えることができ、ここで、長さは、厚さよりも大きく、そして、移動の向き(direction of travel)は、湾曲部の長さ、あるいは、共通の軸を有する第1及び第2のチューブを備える同心チューブ・ベロー(concentric tube bellows)に沿っており、ここで、移動の向きはこの軸に沿っている。
【0019】
第1及び第2の位置の間におけるアーマチュアの移動距離は、500μm以下、200μm以下、あるいは、100μm以下である。移動距離は、20から80μmの間とすることができる。
【0020】
永久磁石は、アーマチュアによって支持されることができ、これにより、アーマチュアと共に移動することができる。永久磁石は、極片により支持されることができる。アーマチュアは、平坦であってよく、アーマチュアの移動方向において厚さを持つことができる。アーマチュアの厚さを、少なくとも1mmとすることができる。アーマチュアの厚さは、3mmから5mmの間であってもよい。永久磁石は環状であってもよい。アクチュエータは、少なくとも二つの永久磁石を備えることができる。アクチュエータは、アーマチュアの中央の両側に配置された二つの永久磁石を備えることができ、それらは、放射状に向けられた(例えば、内向きに配置された)磁化(magnetisations)を有する。アクチュエータは、アーマチュア中心の周りに角度を持って間隔があけられた三つ又はそれ以上の(例えば4個、6個あるいは8個の)永久磁石を備えることができ、それらは、放射状に配置された(例えば内向きに配置された)磁化を有する。コイルは、第1極片の幅の0.1倍以下の環状幅(annular width)を持つことができる。
【0021】
アクチュエータは、他の電磁コイルを備えることができる。
【0022】
本発明の第2の面によれば、少なくとも一つの極片と、アーマチュアと、第1及び第2の位置の間でアーマチュアを移動させる電磁コイルと、少なくとも第1の位置においてアーマチュアを停止させるように構成された永久磁石と、アーマチュアを付勢するように構成されたスプリングとを備えるアクチュエータが提供される。
【0023】
本発明の第3の面によれば、アクチュエータを備える流体流(fluid flow)制御装置が提供される。
【0024】
本発明の第4の面によれば、アクチュエータを備える燃料インジェクタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の実施形態が、単なる例示として、添付の図面を参照しながら以下に説明される。
図1】硬質スプリング(stiff spring)を用いた単動ソレノイド・アクチュエータについての概略図である。
図2a図1に示されるアクチュエータにおけるアーマチュアの位置に対するコイル電流の飽和の依存性を示す。
図2b図1に示すアクチュエータにおけるスプリングの特性を示す。
図2c図1に示すアクチュエータにおける一定フラックス(constant flux)の磁力特性を示す。
図2d図1に示すアクチュエータにおける合成力の特性を示す。
図3】第1及び第2の背中合わせ(back−to−back)の単動アクチュエータを備えるアクチュエータの概略図である。
図4a図3に示すアクチュエータにおけるアーマチュア位置に対するコイル電流の飽和の依存性を示す。
図4b図3に示されるアクチュエータのためのスプリングの特性を示す。
図4c図3に示すアクチュエータのための磁力特性を示す。
図4d図3に示すアクチュエータのための、スプリングと磁気との合成力特性を示す。
図5】本発明によるソレノイド・アクチュエータの概略図である。
図5a図5に示すソレノイド・アクチュエータの透視断面である。
図6a図5に示すアクチュエータにおけるアーマチュア位置に対する、コイル電流飽和の依存性を示す。
図6b図5に示すアクチュエータにおけるスプリング特性を示す。
図6c図5に示すアクチュエータにおける磁力特性を示す。
図6d図5に示すアクチュエータにおける合成力特性を示す。
図6e図3及び図5に示されるアクチュエータのためのアーマチュアの位置によるインダクタンスの振る舞いを示す。
図7】本発明によるソレノイド・アクチュエータを含む燃料インジェクタの部分断面であって、チューブ・ベロー(tube bellows)のセットを含む。
図7a図6に示すチューブ・ベローのセットについての拡大された断面図である。
図8】チューブ・ベローのセットを備えない、図7に示されるソレノイド・アクチュエータのためのストロークに対する力のプロットを示す。
図9】チューブ・ベローのセットを備える、図7に示されるソレノイド・アクチュエータのためのストロークに対する力のプロットを示す。
図10図7に示すソレノイド・アクチュエータの透視断面図である。
図10a図10におけるソレノイド・アクチュエータのアーマチュアが第1位置にあるときの第1磁気回路を示す。
図10b図10におけるソレノイド・アクチュエータのアーマチュアが第2位置にあるときの第2磁気回路を示す。
図11】本発明による他のソレノイド・アクチュエータの透視断面図である。
図12】本発明によるさらに他のソレノイド・アクチュエータの透視断面図である。
図13】平坦シート湾曲部を示す。
図14】本発明によるソレノイド・アクチュエータの断面図である。
図14a図14に示すアクチュエータについての、分解した斜視図である。
図15a】四角形のアーマチュアにセットされた環状永久磁石についての平面図である。
図15b】円形状のアーマチュアにセットされた環状永久磁石についての平面図である。
図16a】四角形のアーマチュアにおける四角形磁石のセットについての平面図である。
図16b】円形状のアーマチュアにおける四角形磁石のセットについての平面図である。
図17】面外(out-of-plane)の永久磁石の配置についての断面図である。
図17a図17のアクチュエータのアーマチュアが第1位置にあるときの第1磁気回路を示す。
図17b図17のアクチュエータのアーマチュアが第2位置にあるときの第1磁気回路を示す。
図18】本発明によるウエットタイプのソレノイド・アクチュエータとパイプの断面図である。
【実施形態についての詳細な説明】
【0026】
本発明の実施形態を説明する前に、単動ソレノイド・アクチュエータの作動を最初に説明することにより、本発明の理解に役立てる。ソレノイド・アクチュエータの作動についての、以下の説明においては、同様の部品は同様の参照番号により示される。
【0027】
図1を参照すると、単動ソレノイド・アクチュエータが示されている。アクチュエータ1は、軸2を有しており、軸2の周りに巻かれた電磁コイル3と、コイル3に関連付けられた極片4と、極片4から軸方向に離間されたアーマチュア5と、ばね定数を有する圧縮スプリング6とを備えている。間隙tを有する空隙(air gap)7が、極片4とアーマチュア5との間に形成されている。
【0028】
極片4は、E−コア(E-core)の形態をとっている。極片4及びアーマチュア5は、全体として、平面視して四角形状となっている。
【0029】
アクチュエータ1は、負のx方向に沿ってバルブ・ヘッド(図示せず)を退避させてそれを弁座(valve seat)(図示せず)から外すことでバルブを開く燃料インジェクタ(図示せず)において使用可能である。しかしながら、アクチュエータ1は、正のx方向に沿ってバルブ・ヘッド(図示せず)が延出されてそれを弁座(図示せず)から外す燃料インジェクタ(図示せず)において使用可能である。
【0030】
図1は、完全な開位置にあるアクチュエータ1を示しており、すなわちt=tmaxであって、電磁コイル3は励磁されておらず、これは、最大変位であって、ここでは、バルブは、スプリングによって、依然として閉状態とされている。電磁コイル3を使用して、空隙7を閉じることができ、すなわちt=0であり、これには、適切な方向に流れる電流を用いてコイル3の励磁を行う。閉じられたときは、スプリング6により働く力Fは、最大磁気閉鎖力F(max)と等しくなる。
【0031】
極の幅(pole width)に比較した小さいギャップ長がt<<w及びt<<wであるとき、最大の磁気閉鎖力F(max)は、以下のように近似できる:
【0032】
(max)=A×0.5B・H (1)
【0033】
ここで、Aは、極(pole)4の面積であり(このケースではA=0.25×πd−Acoil、ここでAcoilはコイルの面積)、Bは磁界(magnetic field)、Hは磁界強度(magnetic filed intensity)であり、最大飽和界(maximum saturating field)におけるものである。磁気閉鎖力f(max)は、A×400,000Bにほぼ等しい。したがって、鉄の最大飽和界が2テスラであるとすれば、最大磁気閉鎖力F(max)は、鉄の極片4及びアーマチュア5において、約160Ncm−2である。磁気閉鎖力は、1.6テスラにおいて、約100Ncm−2である。小さいギャップ長のために、Fは、移動方向においてほぼ一定である。
【0034】
この例では、極片4及びアーマチュア5は、平面視(x軸に沿って見たとき)において、全体として正方形であり、tmaxは50μmであり、アーマチュアの厚さtは4mmであり、極片の厚さtは5.2mmであり、コイル厚さtは1.2mmであり、極片の幅dは14.4mmであり、コイル環状幅wは1.2mmである。したがって、このケースでは、最小の極の幅(minimum pole width)wは3mmであり、w/tは60である。
【0035】
アクチュエータ1が完全に開のときは、コイル3は、極片4における磁界Bが飽和する前に、最大電流Imaxを流すことができる。コイル3にリンクされた磁束を固定(fixing)して、コイル3を短くすることができる。
【0036】
図2aは、アーマチュア位置に対する飽和電流のプロット8を示す。図2aに示されるように、アーマチュア5が極4に向けて運ばれると、コイル3における飽和電流は直線的に減少する。
【0037】
図2bをさらに参照すると、アーマチュア位置に対するばね力Fのプロット9が示されている。図2bに示されるように、アクチュエータ1が閉じたとき、つまりt=0のときに、最大ばね力が作用する。ギャップサイズtが増加すると、ばね力Fは直線的に減少して、スプリング6が非圧縮でギャップサイズtが最大のとき、つまりt=tmaxのときにゼロに到達する。バルブとしての動作においては、バルブは、tmaxの前に着座して、閉鎖力が続くことを保障する。
【0038】
図2cをさらに参照すると、アーマチュア位置に対する、磁力についての第1、第2及び第3のプロット10、10、10が、三つの異なる電流値つまりそれぞれI=Imax、I=0.5max及びI=0に対応して示されている。図2cに示されるように、規定の電流に対応する磁力は、アーマチュアの位置に対して、一定値を維持する。
【0039】
ソレノイド・アクチュエータ1の振る舞いは、磁気エネルギEを考察することによって説明できる。
【0040】
アクチュエータ1に保持される磁気エネルギEは、体積についての0.5B・Hの積分をとることによって計算できる。理想的な軟質材料(soft material)と小さいギャップとを用いるアクチュエータにおいては、全磁気エネルギはギャップ7に蓄えられる。小さいギャップについては、磁界は均一である。ギャップ7の体積Vを、V=A×tとして計算できる。したがって、ギャップ7に保持される磁気エネルギEを、以下のようにして計算できる:
【0041】
=A×t×0.5B・H (2)
【0042】
F=A×0.5B・Hを用いて、この式は以下のように再表現できる:
【0043】
=F×t (2’)
【0044】
ここでFは、生成される力である。
【0045】
したがって、もし電位差(electrical potential difference)Vが、コイル3の端部間に適用され、そして、コイル3における電流Iの生成が許容されると、蓄積される磁気エネルギ量Eを以下のように表現できる:
【0046】
=0.5L×I (3)
【0047】
ここでLは、コイル3のインダクタンスである。もしコイル3が短絡されると、コイルにリンクする磁束は、短時間の間(コイルの抵抗によって磁気エネルギが消散するまで)、固定される。アーマチュア5が下降して、ギャップが小さくなると、このエネルギは、運動エネルギ(kinetic energy)に変換され、アクチュエータ1によって仕事が行われる。
【0048】
磁気飽和についての、異なる小部分における磁力が、アーマチュアの位置の関数として、図2cに示されている。既定の束(flux)において、磁力は一定である。しかしながら、図2aに示されるように、ギャップが増加すると、増加した電流量が必要とされる。
【0049】
図2dは、コイル3が三つの状態で準備されたときの位置に対する、合成されたスプリング及び磁気の力についてのプロット111、112、113を示しており、ここで三つの状態のうちの第1は、位置によって変化して(図2aでわかるように)最大飽和磁界Bmaxが適用されることになる電流Imaxが適用され、第2は、この電流の半分が適用され、第3は、コイルが開放回路(open circuit)となっている(つまり、コイル内を電流は流れない)。
【0050】
B=Bmaxという条件では、コイル3における電流Iは、ギャップサイズtによって(図2aに示すように)直線的に減少し、一方で、インダクタンスLは、ギャップサイズtによって直線的に増加する。上記の式3によると、保持された磁気エネルギEは、ギャップサイズtにより直線的に減少し、そして、上記の式2’によれば、磁力は一定に維持される。行われる全仕事Wを、以下のように表現できる:
【0051】
W=E(t=tmax)/tmax×Δt (4)
【0052】
ここでΔtは、ギャップサイズにおける変化である。明らかに、ギャップサイズtが、最大ギャップサイズ(すなわちt=tmax)からゼロのギャップサイズ(すなわちt=0)に変化すると、Δt=tmaxであり、W=Eである。したがって、ゼロのギャップサイズでは、束(flux)及び磁力は依然として同じであるが、電流I及び保持される磁気エネルギEは、このときゼロである。
【0053】
したがって、図2cに示されるように、もしコイル3が電流なしとなっているならば、それはどのような力も提供せず、そして、スプリング6は、ギャップ7の閉鎖に抵抗するようになり、したがって、それは、アーマチュア5を押しやる。しかしながら、もし極が最大の束(flux)を有すると、それは、一定の磁力を提供する。この力のオフセットは、結果としての正味の力(net force)が、アーマチュア5を極片4に向けて引くことを意味する。
【0054】
図3により、複動の、背中合わせのソレノイド・アクチュエータ12が参照される。図1に示す単動ソレノイド・アクチュエータ1と同様に、背中合わせのソレノイド・アクチュエータ12は、軸2を持ち、軸2の周りに巻かれた第1電磁コイル3と、第1コイル3に関連した第1極片4と、第1極片4から軸方向に離間されたアーマチュア5と、ばね定数kを持つ第1圧縮スプリング6とを備える。ギャップサイズtを持つ第1空隙7は、第1極片4とアーマチュア5との間に形成される。アクチュエータ12は、図1に示される単動ソレノイド・アクチュエータ1と同じ寸法を持つ。
【0055】
アクチュエータ12は、軸2の周りに巻かれた第2電磁コイル13と、第2電磁コイル13に関連した第2極片14と、ばね定数を持つ第2圧縮スプリング16とを含む。この例では、これらのばね定数は同じである。ギャップサイズuを持つ第2空隙17が、第2極片14とアーマチュア5との間に形成されている。この例では、u=tmax−tである。したがって、t=tmaxのとき、u=0であり、t=0のとき、u=tmaxである。
【0056】
したがって、アクチュエータ12は、背中合わせの単動アクチュエータ1の対として把握でき、これは、軸方向に離間されたコイル3,13を備え、そしてそれは、共通のアーマチュア5を共有する。
【0057】
極片4,14は、E−コアの形態をそれぞれとっており、平面視において概ね四角形状となっている。
【0058】
図4aは、第1及び第2のコイル3,13における電流についてのプロット8,18を、アーマチュア位置に対して、それぞれ示す。第1及び第2のコイル3,13における電流は、同じ方向である。図4aに示されるように、アーマチュア5が第1極片4(下側の極として示される)に向けて運ばれると、第2極片14における極を飽和させるために必要な、第1コイル3における電流値は、直線的に減少し、ここで、第1極片4における極を飽和させるのに必要な、第2コイル13における電流値は、直線的に増加する。
【0059】
図4b及び4cをさらに参照すると、位置に対するばね力Fのプロット9,19と、三つの異なる電流値、すなわちI=Isat、I=0.5sat及びI=0のそれぞれにおける、第1及び第2のコイル3,13についての、アーマチュア位置に対する磁力のプロット10,10,10,20,20,20とが示されている。Isatは、アーマチュア位置の関数である(図4a参照)。
【0060】
図4bに示されるように、第1ギャップ7が開いていて第2ギャップ17が閉じている、すなわちt=tmaxのときに、第2スプリング16により、最大ばね力が発揮される。
【0061】
図4cに示されるように、もしコイル3,13が、最大飽和電流値の半分を用いるように準備されているならば、閉鎖力10,20は、1/4に減る。なぜなら、力は、電流の平方に比例するからである。
【0062】
さらに図4dを参照すると、第1及び第2のスプリング6,16におけるばね力F,F’と、磁力とが加えられて、合成ばね力特性21,21,21,22,22,22が生じる。
【0063】
図4dに示されるように、もしコイル3,13が、電流なし(つまりI=0)として準備されるならば、アクチュエータ12は、力特性21,22を示し、ここでは、極片4,14のちょうど中間(midway)にアーマチュア12が配置されたときに存在する正味の力はゼロである。
【0064】
二つの電磁コイル3,13を使って、図1に示される単動ソレノイド1のソレノイド・アクチュエータ12についての磁気エネルギを2倍にすることができる。したがって、ソレノイド・アクチュエータ12は、2倍の力を発揮することができ、アーマチュア5を一層素早く動かすことができる。なぜなら、両装置において、同じサイズのアーマチュアを使うことができるからである。このことに拘わらず、図3に示されるアクチュエータ12は、二つの分離されたアクチュエータとしても効果的に振舞う。図4dに示されるようなばね力を用いて、アクチュエータを閉状態、つまりt=0に維持するために、電流が提供される。
【0065】
本発明は、少なくとも部分的には、背中合わせのアクチュエータと同じあるいは類似の能力を達成できるという洞察に基づくが、より効率的に、そしてある方法では、本発明において、アクチュエータは、閉じたアクチュエータ状態に、動力なしで引き込まれる。
【0066】
図5及び5bを参照すると、本発明によるソレノイド・アクチュエータ23が示されている。ソレノイド・アクチュエータ23は、内部に向けられた磁化(magnetisations)25を有する二つの永久磁石24を含む、修正されたアーマチュア5’を有する。アクチュエータ23は、図3に示されるアクチュエータ12と同じ寸法を有する。
【0067】
図5に示されるように、w=w=3mmであり、アーマチュアの厚さtは永久磁石の厚さtpmと同じであって、それは、おおよそ4mmであり、さらに、t=4mmである。アクチュエータ23は、二つのコイル3,13において、270アンペア・ターン(amp-turns)(2×15A×9巻き)である。しかしながら、アンペア・ターンは、これより低くても高くてもよく、例えば、アクチュエータあたりで50から500アンペア・ターンとすることができる。コイルは、0.25mm径のワイヤを備える。
【0068】
この例では、アクチュエータ23は、平面視において、すなわちx軸に沿って見たときに、四角形状である。スプリング6,16は、アーマチュア5と極片4,14の反対側部(opposite sides)とに取り付けられた一対の平坦な湾曲部の形態をとり、これによって、アーマチュア5と極片4,14が、湾曲部の間に挟まれる。
【0069】
図6aを参照すると、電流Iは、二つのコイルにおける電流の合計であり、なぜなら、それらは近接して結合(closely coupled)しているからである。線18’は、最大の正の電流を示し、これは、下部の極(lower pole)の飽和によって制約される。線18’’は、最大の負の電流を示し、これは、上部の極(upper pole)の飽和によって制約される。
【0070】
図6bに示されるように、スプリング6,16は、アーマチュア磁石23なしのアクチュエータ12(図3)と同じ特性9,19を有する。
【0071】
しかしながら、図6cに示されるように、永久磁石24の効果は、位置依存(position-dependent)の磁力を、極片4,14での磁界が飽和されていないときに、導入することである。したがって、最大の磁力は、アーマチュア磁石23なしのアクチュエータ12(図3)におけるそれと同じである。しかしながら、それを達成するために必要な電流は異なる。
【0072】
図6dは、合成されたスプリングと磁石の力についての、対応するプロット21’,21’,21’,22’,22’,22’を示す。
【0073】
飽和した界(saturated field)についての図4d及び6dにおいて、合成力の特性21,21’の比較から分かるように、アーマチュア5’において永久磁石24を配置することは、アクチュエータ23により提供される最大の力に影響しない。しかしながら、永久磁石24は、特に低い界(lower field)において、駆動条件を明らかに変更する。
【0074】
図6cからわかるように、アーマチュア5’は、負のばね効果にさらされる。すなわち、アーマチュア5’が、極片4,14に近づくように運ばれると、ゼロ電流における磁力が増加する。したがって、スプリング6,16なしで、アーマチュア5’は、t=0及びt=tmaxにおいて、停止する傾向がある。しかしながら、図6dからわかるように、スプリング6,16は、この効果を補償する効果を持つ。もし、ばね定数と負のばね定数とが整合するならば、力のバランスが可能である。さらに、一つ又は両方のばね定数は、さらに増加可能であり、これによって、それらは、負のばね定数を超え、中央、一端あるいは他端において安定したアクチュエータを生成し、これは、通常は、リレー、バルブ、あるいはインジェクタにおける閉位置である。
【0075】
図6eに示されるように、第1及び第2のコイル3,13は、電気的に、近接して結合(closely coupled)されており、ギャップが小さい(すなわちt<<d)ために、それらは単独のコイルとみなしうる。コイルからの束(flux)が、上方及び下方のギャップを連続(in series)で通過するので、アーマチュア5’のインダクタンス24は、位置に関して、実際上、一定であり続ける。しかしながら、永久磁石を持たないコイル3(図1及び3)におけるインダクタンス25は、それらが分離されるにつれて、速やかに減少し、コイル13(図3)におけるインダクタンス25は対応して増加する。
【0076】
両方のコイルがギャップに接続されているので、電流を、それらの間で共有できる(例えば、それらを直列で接続することによって)。したがって、アクチュエータ23は、銅損(copper losses)が低くなるので、より効率的に動作できる。適切に方向付けられた永久磁石を用いることによって、特に移動距離(length of travel)が短いときには、束の切り替え(flux switching)を用いて、アクチュエータ23が動作しうる。
【0077】
図5に示されるように、実施形態は、二つのEコアに基づいて示されている。しかしながら、極片についての異なる数、形状、及び構成を使用可能である。少なくとも一つの極片が、アーマチュアが位置し、かつ移動することができるギャップを形成するように配置される。一例として、第1及び第2の極片の間に、例えば第1及び第2のE−コアあるいはC−コアの間に、ギャップを提供可能である。しかしながら、単独の極片あるいは複数パート(multipart)の極片、例えばC−コア、における極の間にギャップを提供可能である。極片(単数又は複数)、アーマチュア及び永久磁石(単数又は複数)が配置されて、二つの異なる磁路(magnetic paths)を形成することができ(しかし、それは、磁性材料における部分、例えばアーマチュア及び/又は極片の部分を共有する)、これは、アーマチュアが、移動における反対側の端部における(あるいはそれに近い)異なる位置にあるときであり、アーマチュアが極片に接触するようになったときである。
【0078】
本発明の実施形態は、短移動(short-travel)の、束切り替え(flux-switched)のアクチュエータを提供でき、それは、高加速度の、起動−停止の応用(start-stop applications)において、例えば燃料インジェクタにおいて使用できる。このようなアクチュエータは、同じようなサイズの圧電アクチュエータ(piezoelectric actuator)よりも良い能力を持つ可能性がある。ある実施形態では、アクチュエータは、200Nまでの力を提供することができ、及び/又は、約50μmの典型的なストロークを持つことができる。ある実施形態では、アクチュエータは、約0.2msの開放(opening)及び/又は閉鎖(closing)時間を持つことができ、可能性としては、約50μsの開放及び/又は閉鎖時間を持つことができる。複数のインジェクション事象(multiple injection events)の間の遅れを、0.2msより小さくしうる。ある実施形態では、アクチュエータを含む燃料インジェクタは、従来のガソリン直接インジェクション(GDI)アクチュエータと同様の所要動力(power requirements)を持つことができ、及び/又は、それと同様のサイズを持つことができる。インジェクタにおけるゼロの戻り流(zero return flow)の可能性がある。しかも、アクチュエータは、直線的な動きを提供し、これにより、可変のバルブ・リフトが可能となる。
【0079】
本発明のさらなる実施形態が、以下に記載される。以下の記載においては、同様の部品は、同様の番号により示される。
【0080】
図7を参照すると、内燃エンジンにおいて使用するための燃料インジェクタ36が示される。
【0081】
燃料インジェクタ36は、末端においてスプレー開口39を有するノズル部38を含む、複数パートのインジェクタ・ハウジング37を備える。ピントル40は、ノズル部38を通って延び、頭部41を有する。ピントル頭部(pintle head)41は、バルブ座(valve seat)42と係合可能(engageable)となっている。
【0082】
ピントル40は、インジェクタ・ハウジング37内において、第1の、退避した位置と、第2の、延出した位置との間において、軸43に沿って移動可能である。退避した位置では、ピントル頭部41は、バルブ座42と組み合っている。延出した位置では、ピントル頭部41は、バルブ座42との係合を解除し、燃料を、高圧燃料チャンバ44から噴射することができる。
【0083】
燃料インジェクタ26は、本発明によるアクチュエータ44を含み、それは、束切り替え(flux switched)であり、またそれは、ピントル40を、退避位置と延出位置との間で直線的に往復動させるように操作可能である。
【0084】
アクチュエータ44は、軸43の周りに巻かれた第1及び第2の電磁コイル45,46と、第1及び第2の電磁コイル45,46にそれぞれ関連し、リング49によって分離され、かつ、ディスク形状の空間50を形成する第1及び第2の極片47,48と、同軸環状永久磁石52を含むディスク形状のアーマチュア51と、硬質のスプリング53、すなわち高いばね定数kを持つスプリングとを備える。硬質スプリング53は、高張力ステンレス鋼(high tensile stainless steel)から形成される一組の同心チューブ・ベロー(a set of concentric tube bellows)の形態をとる。
【0085】
図7aにおいてさらに詳しく示されるように、チューブ・ベロー53は、末端56に取り付けられた、内側及び外側のベロー54,55を備える。内側のベロー54は、外側のベロー55よりも長い。内側ベロー54における近位の端部57は、ピントル40に取り付けられ、外側ベロー55における近位の端部58は、インジェクタ・ハウジング37に取り付けられている。ピントル340は、アーマチュア51に、チューブ状スリーブ59を介して、取り付けられている。
【0086】
チューブ・ベロー53により発揮される力は、ベロー54,55における直径dと、バルブ座52の直径をポアソン比について修正したオリフィスの直径sとの一致によりバランスされるものであり、これにより、乾式の動作(dry actuation)を提供し、インジェクタからの燃料の還流を防ぐ。外側チューブ・ベロー55の直径dは、バルブ座42の直径dの約1.4倍である。
【0087】
チューブ・ベロー53は、延出位置におけるピントル40の停止(latching)を防ぐのに十分な力を提供する。らせん状の圧縮スプリング60は、校正ピン(calibration pin)61と、ピントル40の端部に接するプレート62との間において、軸方向に配置されている。したがって、ピン61を使用して、インジェクタ36を調整(trim)することができる。
【0088】
追ってさらに詳しく説明されるように、電磁コイル45,46の一つを省略しても、例えば駆動電流の方向を変えることによって、複動を実行することができる。
【0089】
アクチュエータ44は、高い電気機械的接続(high electromechanical coupling)を用いて、直線動作と、逆起電力検出(back emf sensing)を介した比例制御(proportional control)とを提供する。別の束(flux)測定ループ(図示せず)を用いて、他の制御、例えば前出のWO2005/043266Aに記載されたようなものを提供することができる。これを用いて、インジェクタ36を部分的に開くことの制御を正確に行うことができ、そして、例えば極片47,48のような端部停止に接触する前にアーマチュアを遅くすることによって、反発(bounce)を抑制することができる。
【0090】
電気機械的結合は、磁気回路に対して適切に配置された永久磁石を用いることによって、例えば、図5あるいは図7に示されるように、tpmを永久磁石の厚さとしtmaxをギャップサイズとしたときの比率(tpm+tmax)/tmaxを増すことによって、そして、コイルの周りで磁束がとる経路における磁気抵抗(reluctance)を、ギャップの磁気抵抗に比較して、十分小さく調整することによって、増加しうる。
【0091】
先に説明したように、より少ないアンペア・ターン(例えば、永久磁石のないアクチュエータ及び/又は短行程アクチュエータでないアクチュエータに比較して)を用いることができる。なぜなら、永久磁石42からの磁束は、コイル(単数又は複数)45,46からの磁束に追加されるからである。したがって、小さいコイルを使用可能である。
【0092】
永久磁石は、EHグレードのNdBFe磁石を備えることができ、極片47,48は、例えば米国ニュージャージー州シナミンソンのHoeganaes Corporationにより販売されるAncorLam(商標)のような高抵抗焼結鉄(high-resistivity sintered iron)を備えることができる。
【0093】
図7では、アクチュエータ44が示されており、これは、ハウジング37よりも小さい直径を有する。しかしながら、この相違をかなり小さくできる。ハウジング37は、磁気リターンパス(magnetic return path)を提供しない。ある実施形態では、ハウジング37は、アクチュエータ44の外周を囲わない。
【0094】
さらに図8を参照すると、ストロークに対する力のプロット64,65,66が示されており、これは、チューブ・ベロー53を用いないアクチュエータ44についてのモデル化された能力を描写している。
【0095】
第1及び第2のプロット64,65は、最大の飽和磁気駆動力(maximum saturated magnetic driving force)を示しており、それを用いて、アーマチュア51を、第1及び第2の位置67,68の間で、閉鎖及び開放位置のそれぞれに応じて、動かすことができる。極のちょうど中間におけるアーマチュア51の位置を参照点として、つまりストロークが0μmとして使用できる。この例では、閉鎖及び開放位置67,68は−15μm及び+10μmである。閉鎖位置67は、10μmのマージンを許容することができ、これにより、アーマチュア51と極片47との間の接触前にバルブが着座することを保障できる。開放位置68により、バルブリフトを可変とすることができる。代替的には、バルブが極片に+25μmで到達したときに、バルブを完全に開放することができる。図7に示されるように、最大飽和の開放及び閉鎖力は、位置に関して実質的に一定であり、それらは約120Nの大きさを持つ。
【0096】
第3のプロット66は、ゼロ電流のときの、位置に対するアーマチュア51への磁力を示す。
【0097】
さらに図9を参照すると、ストロークに対する力のプロット64’,65’,66’が示されており、これは、チューブ・ベロー53を有するアクチュエータ44についての、モデル化された能力を描写している。
【0098】
ベロー53の効果は、図7に示されるプロット64,65,66を、チューブ・ベロー63におけるばね定数kによって、つまり約5Nμm−1によって、傾斜させることである。
【0099】
図10を参照すると、チューブ・ベロー53(図7)のないアクチュエータ44が、より詳しく示されている。
【0100】
図10に示されているように、第1及び第2の極片47,48(これらはそれぞれ、上部及び下部の極片としてそれぞれ参照されることがある)は、おおよその形状において環状であり外径douterと内径dinnerとを有している。第1及び第2の極片47,48は、反対側の面(opposing faces)71,72(図10において上部及び下部の面としてそれぞれ示されている)を有しており、これらはそれぞれ、環状の凹部73,74を有しており、それはコイル45,46を保持する。アーマチュア51は、第1及び第2の面75,76(図10において下部及び上部の面としてそれぞれ示す)を有する。アーマチュア51は、極片47,48の間に位置しており、アーマチュア51における第1及び第2の面75,76が、面71,72のそれぞれに面する。この例では、アクチュエータ44は、二つのコイル45,46において、270アンペア・ターン(2×15A×9巻き)で動作する。しかしながら、アンペア・ターンを、より低くあるいはより高くすることができ、例えば、アクチュエータあたりで50から500アンペア・ターンの間とすることができる。図10aを参照すると、アーマチュア51は、アーマチュア51の第1の面75が第1極片47の面71に突き当たる第1の位置にあるときは、電磁石52が、第1磁気回路77において磁界を生成する。図10aに示されるように、束ライン(flux line)78は、アーマチュア磁石52とアーマチュア51とを放射状に通り、第1極片47に入り、コイル46の周りを通り、アーマチュア51内に戻る。この例では、磁気材料において最も狭い幅は、アーマチュアにおける外側部分であり、それは幅WA2を有する。
【0101】
図10bを参照すると、アーマチュア51が、アーマチュア51の第2の面76が第2極片48の面72に突き当たる第2の位置にあるとき、永久磁石52は、第2磁気回路79内で磁場を生成する。図10aに示されるように、束ライン(flux lines)80は、アーマチュア磁石52とアーマチュア51とを放射状に通過し、第2極片48に入り、コイル47を回り、アーマチュア51に戻る。
【0102】
先に説明したように、2セットの巻線(windings)45,46すなわち電磁コイルを使用する必要はない。
【0103】
ソレノイド・アクチュエータ44は短行程となっている。換言すれば、極片47,48とアーマチュアとは、アーマチュア51が移動できる最大距離、すなわち、このケースでは、極片47,48とアーマチュア51との間に形成された最大ギャップtとして理解できるものが、磁性材料WA2における最も狭い幅よりも十分小さいように配置されている。この状況の下では、アーマチュアと極片との間のギャップは小さく、そのため、ギャップ内での磁界は均一である。
【0104】
最大ギャップ長は、少なくとも、磁性材料における最も狭い幅WA2より小さい大きさのオーダであり、すなわち、WA2>10tである。この例においては、ギャップは約50μmであり、有効(active)な幅は約2mmである。
【0105】
図11を参照すると、他のアクチュエータ44’が示されている。アクチュエータ44’は、図10に示されるアクチュエータ44と同様であるが、第1電磁コイル45を有していない。凹部73も同様に省略可能である。他のある実施形態では、第2電磁コイル46を省略可能である。
【0106】
前記した例においては、アーマチュア磁石が使用されている。しかしながら、アーマチュアと一緒には移動しない固定された極磁石(pole magnet)を代わりに使用することができる。
【0107】
図12を参照すると、さらに他のアクチュエータ44’’が示されている。アクチュエータ44’’は、図11に示されるアクチュエータ44’に類似している。しかしながら、アクチュエータ44’’は、前記した第2極片48(図10)に類似する基部82と、基部82から第1極片47へ向けて延びる環状壁部83(すなわち「極延長(pole extension)」)を有する第2極片81とを有している。永久磁石84は、壁部82における放射状の内面85の内側に、固定して配置されている。アーマチュア86は、極磁石84の内面87の内側であってかつ、第1及び第2の極片47,81の間に配置されている。永久磁石84の磁化は、放射状に向けられており、永久磁石84は、放射状の側壁88に入射する放射状の磁界と束ライン(flux line)(図示せず)を生成する。図12に示されるように、アーマチュア86は、10.5mmの直径dを有し、コイル46は、1.2mmの放射径(radial diameter)rを有し、極片は、20mmの直径を有する。この例では、磁性材料において最も狭い幅WA3は、アーマチュアの直径dに実質的に等しい。
【0108】
アクチュエータ44,44’,44’’は、実質的に類似する方法で動作するものであり、以降においては、第1のアーマチュア44(図7)を参照しながら説明する。
【0109】
図7を再度参照すると、第2コイル46及び、もしあれば、第1コイル45が励磁されないときは、アーマチュア51が第1の位置に停止し第1極片47に突き当たる。図7に示されるように、この位置は、ピントル頭部41が着座する閉鎖位置に対応する。第2コイル47は、アーマチュア51を第2極片に向けて引き付ける方向における電流の通過により励磁される。第1コイル45が使用されると、電流は、第1コイルを、同じような意味で通過しうる。したがって、ピントル頭部41は非着座(unseated)となる(接続された図に示す)。アーマチュア51が第2極片48に到達しうるとしても、硬質のスプリング53により、コイルが一旦非励磁となったときにアーマチュア51が保持されることを防ぐ。したがって、電流が減少し、あるいはオフに切り替えられたときは、アーマチュア51は、第1極片47に向けて戻るように移動する。
【0110】
先に説明したように、磁力に打ち勝って、開での停止(open latching)を避けるために、硬質のスプリングが使用されている。典型的には、ストロークの端部における、停止させる磁界は、約1から1.5Tである。これは、極片における約40から90Ncm−2の力を生み出す。もし、極の間におけるアーマチュアの移動量が50μmであるならば、磁気ばね定数(magnetic spring constant)は、極片におけるcmあたりで、約−1.6から−3.6Nμm−1である。スプリングは、これを越えるばね定数kを持つべきである。好ましくは、このばね定数kは、磁気ばね定数よりも約20から100%大きく、すなわち、極のcmあたりで、約+2から+4.5Nμm−1とされる。チューブ・ベローは、十分に高い値のばね定数を持つ。しかしながら、他の形態のスプリング、例えば皿ばね(Belleville washers)や湾曲部(flexures)を使うことができる。
【0111】
図13は、湾曲部89についての適切な形態を示す。湾曲部89は、平坦シートの湾曲部の形態をとっており、シート90を備えていて、それは、交互(interdigitated)のスロット91を有する実質的な平面であって、これらのスロットは、シート90における反対側の長い側部91,92から直交して延びる。湾曲部89は、完全に硬質タイプの302ステンレス鋼を備える。しかしながら、他の適切な材料も使用可能である。湾曲部89は、長さa、幅b、及び厚さcを持ち、ここで、c<<a,bである。
【0112】
図13に示されるように、その端部93,94の間で、移動方向に平行に、湾曲部89を引き延ばす(あるいは圧縮する)ことができる。換言すれば、平らな湾曲部の平面内で力が適用されるのであって、例えば、それに直交する方向ではない。
【0113】
このタイプのスプリングを、先に説明したアクチュエータ44,44’,44’’におけるチューブ・ベローの代わりに使用することができる。
【0114】
アクチュエータが軸対称(axisymmetric)(例えば円筒状)である必要はないが、平坦の、積層タイプの形態、例えば箱形状極片と四角形アーマチュアを有するものとすることができ、これについては以下に説明する。
【0115】
図14及び14aを参照すると、アクチュエータ96が示されており、これは、軸97に沿って動作する。アクチュエータ96は、全体として長尺状であり、平面視において四角形状である。
【0116】
アクチュエータ96は、第1及び第2の極片100,101の周りに巻かれた第1及び第2のコイル98,99を含む。極片100,101は、四角形の断面を持つ「U」コアの形態を全体としてとり、互いに固定された状態で、一対の剛性プレート102により、ねじ103の第1セットを介して、保持される。全体として平坦なアーマチュア104は、平面視して全体として四角形状であり、極片100,101間に設置される。四角形状の永久磁石105は、アーマチュア104の中央に組み込まれる。
【0117】
プレート102は、アクチュエータ96における第1及び第2の反対側部(opposite sides)に取り付けられる。
【0118】
一対の平坦シート湾曲部106は、第1セットのねじ103と第2セットのねじ107(それらは剛性プレート102に取り付けられていない)とを介して、極片100,101をアーマチュア104に取り付ける。各湾曲部106は、極片100,101と対応する剛性プレート102の間に挟まれている。各プレート102と湾曲部106は、一対のスペーサ・バー108あるいはワッシャ(図示せず)により分離されている。アクチュエータ96の寸法は、おおよそ同じであり、すなわち、u≒v≒wである。これらの寸法を10mmより大、20mmより大、あるいは50mmより大とすることができる。寸法を100mm未満とすることができる。この例では、アクチュエータは、u=14mm,v=14mm,w=12.5mmの寸法を持つ。この例では、磁性材料において最も狭い幅wA4は、極片の幅wと実質的に等しい。アクチュエータ96は、ねじによって一体に保持される必要はない。例えば、一部又は全部を溶接、クランプ、あるいは圧着(crimped)することができる。
【0119】
湾曲部106は、少なくとも20Ncm−2×A/tあるいは40Ncm−2×A/tの(合成された)ばね定数kを持つことができ、ここでAは極の面積でありtはギャップ長である。この例では、Aは約0.2から5cmであり、t(及び移動距離)は100μmよりも少なく、例えば30から80μmの間である。
【0120】
一つ又はそれ以上の永久磁石を使用して、それらを、多様な方法で配置することができる。例えば、単独の、連続的で円形状のリングの形態をとる、一つの永久磁石を用いることができる。
【0121】
図15a及び15bを参照すると、環状永久磁石の使用例が示されている。図15aは、正方形アーマチュア5内に配置される、単独で連続的な円形状のリングの形態をとる単独の永久磁石26を示している。図15bは、ディスク形状のアーマチュア51内に配置される、単独で連続的な円形状のリングの形態をとる単独の永久磁石52を示す。図15a及び15bでは、永久磁石26の内側に位置する軟質磁性材料(soft magnetic material)5,51の部分の面積は、永久磁石26の外側に位置する軟質磁性材料5,51の部分の面積とほぼ同じである。
【0122】
一つより多い永久磁石を使うこともできる。したがって、二つ、三つ、四つ、あるいはそれ以上の永久バー磁石(permanent bar magnet)のセットを、角度を持って間隔を有するように、内側に向けられた磁化を有するアーマチュアの中央(それは移動の軸も規定する)の周りに配置することができる。
【0123】
図16a及び16bを参照すると、いくつかの永久磁石を使用する例が示されている。図16aは、正方形のアーマチュア5の中に配置された四つのバー形状の永久磁石26,26,26,26を示す。磁石は、反対方向の磁化を伴って互いに対面する対として配置されている。一つの対を省略することができ、これによって、二つの磁石のみ、例えば第1及び第3の磁石26,26が存在することになる。図16bは、円形状のアーマチュア51内に配置された四つのバー形状の永久磁石52,52,52,52を示す。やはり、一対の磁石を省略できる。同様に、磁石の内部及び外部にある軟質な磁性材料の面積は、ほぼ同じである。
【0124】
先に説明したように、一対の磁石を省略することができ、そのときは、二つの磁石のみが存在する。しかしながら、一対の磁石は、アーマチュアを横切って延びることができる。
【0125】
図16cを参照すると、アーマチュア51を横切って延びる二つのバー磁石を含む例が示される。磁石52,52の内側に(つまり間に)ある軟質な磁性材料の面積は、磁石52,52の外側にある軟質な磁性材料の面積とほぼ同じである。
【0126】
極磁石(pole magnets)が使用される場合は、図15a,15b,16a,16b及び16cに示されるものに類似する磁石配置を使用することができる。
【0127】
先に説明した例では、永久磁石(単数又は複数)とアーマチュアは、同じ平面内に存在し、平面内において配向された磁化を有する。しかしながら、永久磁石(単数又は複数)をアーマチュアとは異なる平面内に置くことによって配置を修正して、永久磁石(単数又は複数)を回転させ、磁化がアーマチュアの平面内に向けられないようにすることもできる。
【0128】
図17を参照すると、他のアクチュエータ111が示されている。アクチュエータ111は、図12に示される、極磁石を用いるアクチュエータ44’と類似している。
【0129】
アクチュエータ111は、軸112を有しており、この軸の回りには、(複数パートの)極片115におけるキャビティあるいは盲凹部(blind recess)114の内側において、コイル113が巻かれている。極片115は、全体として、四角形状の断面を有するトロイド(toroid)の形態をとる。極片115は、内表面116に沿って走るスロットを有し、それによって、第1及び第2の極117,118を備える「C」−形状のコアを形成することができる。アクチュエータ111は、磁化が軸112に平行に向けられた環状の永久磁石119を収容する。永久磁石119の束(flux)は、平坦かつ、切頭(truncated)かつ、円錐形状の環状片すなわちインサート120により、導かれる。インサート120は、右手(right-hand)の三角形状横断面を持ち、それは、軸方向に向けられた束(flux)を、束が放射方向に向くように、案内することができる。平らなアーマチュア121は、極117,118の間にある。アクチュエータは、硬質スプリング122を含み、それは例えば、少なくとも20Ncm−2×A/tあるいは40Ncm−2×A/tのばね定数kを持ち、ここでAは極の面積、tはギャップ長である。この例では、Aは約0.2から5cmであり、t(及び移動の長さ)は、100μmより小さく、例えば、約30から80μmの間である。この例では、磁性材料において最も狭い幅wA5は、アーマチュアの直径に実質的に等しい。
【0130】
図17に示されるように、アーマチュア121は、軸112に垂直となる平面P内にある。しかしながら、永久磁石119は、平行して存在するが、平面Pから離間している。
【0131】
図17a及び17bは、アーマチュアが第1(下方)及び第2(上方)の位置にあるときに極片115、磁石119及びアーマチュア121を通る磁気回路124,126をそれぞれ通って流れる磁束123,125を示す。
【0132】
前記したインジェクタでは、アクチュエータは、乾式(dry-type)のアクチュエータである。しかしながら、アクチュエータを湿式(wet-type)とすることができ、そこでは、アーマチュアは、流体(気体あるいは液体)が通過できる、薄い壁を有するチューブあるいは通路の内部において、配置されかつ移動する。極片、コイル及び、選択的には、永久磁石(単数又は複数)は、チューブの外側に配置される。
【0133】
図18を参照すると、パイプすなわちチューブ130と、パイプ130を通る流体の流れを制御するアクチュエータ131とが示されている。アクチュエータ131は、図12に示されるアクチュエータ44’’と同様の構造を有する。しかしながら、アクチュエータ131におけるいくつかの部品がパイプ130の内側に配置され、他の部品がパイプ130の外側に配置される。
【0134】
アクチュエータ131は、軸132を有し、その回りに、第1及び第2の、軸方向に離間されたコイル133,134が、パイプ130の外側にある外側極片135の内側において巻かれている。外側極片135は、全体として環状の形状であり、一つより多い部品から作られていて、パイプ130の回りにそれを適合させている。外側極片135は、一つ又はそれ以上の永久磁石136を収容しており、それは、第1及び第2のコイル133,134の間において、パイプ130のどちらかの側に、あるいはその周囲にある。図18に示されるように、磁石(単数又は複数)136は、内側に向けられた磁化を有する。
【0135】
ディスク形状のアーマチュア138は、永久磁石(単数又は複数)136の間において、かつ、軸方向に離間された内側極片139,140の間において、パイプ130の内側に存在する。図18に示されるように、外側及び内側の極片135,139,140は、全体として、間にアーマチュア138が存在する第1及び第2の極141,142を有する「C」形状のコアを形成する。
【0136】
アクチュエータ131は、硬質スプリング143を含み、それは例えば、20Ncm−2×A/tあるいは40Ncm−2×A/tのばね定数kを有しており、ここでAは極の面積であり、tはギャップ長である。この例では、Aは約0.2から5cmであり、t(及び移動の距離)は、100μmより小さく、例えば約30から80μmの間である。
【0137】
スプリング143は、一端においてアーマチュア138に取り付けられ、他端において、硬質プレート144を介してパイプ130の内側壁に取り付けられた、溝付き棒湾曲部(slotted rod flexure)の形態をとり、硬質プレートは、一側から他側にプレートを通過する流体の流れを許容する貫通通路(through channels)145を有する。
【0138】
アクチュエータ131は、座(seat)(図示せず)に係合する頭部(図示せず)を有するピントル146をも含む。
【0139】
このタイプのアクチュエータは、燃料インジェクタ(あるいは他のタイプの流体流制御装置)を製造するコストの減少を助ける。さらに、もし、燃料取入口がアクチュエータの中央にあることが好ましいのであれば、このタイプのアクチュエータを使用できる。
【0140】
燃料(あるいは他の流体)は、薄いチューブ130によって、コイル133,134から離される。チューブ130は、燃料(あるいは流体)の圧力に耐える程度に十分に厚くなっており、そして、最大磁気抵抗とうず損失(eddy loss)との下で磁束を通過させる程度に十分に薄くなっている。例えば0.12mm厚の高張力磁気ステンレス鋼(high-tensile magnetic stainless steel)からチューブを形成できる。しかしながら、他の材料及び/又は厚さのチューブを使用することもできる。
【0141】
本発明によるアクチュエータの実施形態は、一つ又はそれ以上の利点を有する。
【0142】
例えば、永久磁石のバイアスにより、使用されるべきアンペア・ターンの数を少なくすることができ、これにより、より小さいコイル横断面の使用が可能となり、極片において必要な磁路の長さ(magnetic path length)を減らすことができる。これは、磁気損失(magnetic leakage)の減少に寄与し、このことにより、さらに少ない数のアンペア・ターンの使用が可能となる。
【0143】
アクチュエータは、制御が容易であり、閉ループの位置制御を用いて、従来のソレノイド・アクチュエータよりも、効果的に制御される。なぜなら、アクチュエータは、駆動電流に対して直線的な応答を持ち、そして、アクチュエータにおいて密結合の性質(close coupled nature)があるからである。
【0144】
電流と力の間の関係における直線性があるので、必要ならばいずれかの方向において電流がアクチュエータを通過することにより、迅速な能力を達成するための駆動が可能になる。
【0145】
全体としての移動質量(例えば、インジェクタの応用におけるアーマチュアとピントルの和)の間の関係を設計において調整して、正しいばね定数を選ぶことによって、所望の開放/閉鎖速度を与えることができる。より硬質のスプリングを用いると、一層の迅速さが可能となるが、開状態を維持するためには、より大きな電流が必要となる。
【0146】
図6dを図2dと比較すると、開放力の2倍までを適用できることが理解できる。なぜなら、第1の極4(図5)からのアーマチュアへの開放の磁力は、ばね力と結合され、そして、第2の極14(図5)への磁気クランプ力(magnetic clamping force)の除去によって解放されるからである。
【0147】
磁気回路内の短いギャップにより、温度を持つバイアス磁石からの束における可逆減少(reversible reduction in flux)についての温度補償(NdFeBにおいては〜0.1%/℃)が、温度の降下につれて全体のギャップを増やすことによって、可能となり、これにより、バイアス束の変化率(rate of change of bias flux)を、アーマチュア位置定数(armature position constant)を用いて維持できる。これは、一片(すなわち「セパレータ」)を用いて行われ、それは、アーマチュアよりも低い拡大係数(lower expansion coefficient)を持つ極片分離(pole piece separation)を設定する。例えば、もしアーマチュアが、全体としてのギャップtmaxよりも100倍厚いならば、セパレータとアーマチュアとの間の温度係数の差は、100で除した約0.1%/℃、つまり10ppm/℃に設定される。例えば、鉄粉(iron dust)アーマチュアを用いると、これは、コバール(Kovar)あるいはアルミナのスペーサを用いて達成しうる。極片の側部に取り付けられたスペーサを用いると、より広い全体ギャップを補償することができ、あるいは、温度係数におけるより小さい差を用いることができる。例えば、全体(上部と下部の和)の束ギャップ(flux gap)である100μmを、アーマチュアよりも5ppm低い拡張係数を持つスペーサと、図14に示される配置と同様な上部と下部の極片への取り付けの間に20mmの距離を持つ極片材料とにより補償可能である。
【0148】
理解されることとして、前記した実施形態に対する多様な変更が可能である。そのような変更は、アクチュエータ及びその構成部品の設計、製造及び使用において既知の、そして、ここに記載された特徴に代えてあるいはそれに追加して使用されうる等価な、他の特徴を含むことができる。一実施形態の特徴を、他の実施形態における特徴によって代替し、あるいは補充することができる。
【0149】
例えば、スプリングは、二つ又はそれ以上のスプリング、あるいは、他の弾性的な付勢手段(resilient biasing means)を備えることができる。スプリング(単数又は複数)を配置して、他の位置にあるアーマチュアを付勢することができる。例えば、アーマチュアは、アーマチュアの移動における両端に停止することができる。
【0150】
アクチュエータを、異なるタイプの燃料インジェクタ、例えば、ガソリン、軽油、液化石油ガス、水素、あるいは圧縮天然ガスを使うものにおいて使用することができる。アクチュエータを、後処理インジェクタにおいて、例えばAdBlue(登録商標)あるいは他の選択的触媒還元システム(selective catalytic reduction system)のために使用することができる。燃料インジェクタは、ピントル・タイプのインジェクタである必要はなく、例えば、ニードル・タイプのインジェクタであってもよい。
【0151】
アクチュエータは、インジェクタにおいて使用される必要はなく、自動車ポンプ(automotive pump)において、例えばガソリン、軽油、水あるいは潤滑油を移送するために使用されてもよい。アクチュエータは、圧力及び/又は流量の制御アクチュエータとして、バルブ、例えばエンジンバルブ、取入れ及び排出バルブ、気流、あるいはABSのために使用されてもよい。
【0152】
アクチュエータを、ガスや液体のような流体のポンプあるいは流量制御において使用することができる。例えば、アクチュエータを空圧又は液圧において使用することができる。
【0153】
アクチュエータを、拡声器あるいは自動制御ツール(servo tool)として使用することができる。
【0154】
アクチュエータは、100μmまで、200μmまで、あるいは500μmまでのストロークを持つことができる。
【0155】
永久磁石(単数又は複数)を、アーマチュアの中心からの様々な距離において、配置することができる。例えば、永久磁石(単数又は複数)は、アーマチュアを、幅あるいは直径2・wを有する内部領域と、幅あるいは直径wを有する外部領域とに分けることができる。比率2・w/wを、1から4の間、好ましくは約2とすることができ、これにより、内部及び外部領域における束密度(flux density)はほぼ同じとなる。永久磁石(単数又は複数)は、環状の幅wを持つことができ、比率w/wを、約0.2から1の間とすることができ、好ましくは、約0.5とすることができ、これによって、磁石は、アーマチュアを比較的に小型化することに寄与する。
【0156】
永久磁石及びコイル(単数又は複数)は、例えば永久磁石が、コイルと同じ内径及び外径を持つ環状であるときに、隣接することができる。しかしながら、永久磁石及びコイル(単数又は複数)は、例えば四つの永久磁石が使われているときに、実質的に隣接することができ、それらは、コイルを覆うように設置されうる。アーマチュアは、好ましくは、平坦で平面状、例えば、円形状あるいは楕円状のディスク、又は、四角形あるいは多角形の板あるいはシートである。
【0157】
スプリングを、鋼以外の材料、例えば、少なくとも150×10Nm−1のヤング率を持つ材料から形成することができる。
【0158】
一定のあるいは小さい力を付与する低kのスプリング、例えば、通常のコイルばねの形態におけるものを使用して、装置を小型化することができる。
【0159】
他の硬質又は軟質の磁性材料を使用することもできる。例えば、極片とアーマチュアの軟質磁石領域を、積み重ねられ又は巻き取られた、例えばNanoperm(登録商標)のようなスピン溶融リボン(spin melt ribbon)から巻き取られた電気鋼板の積層(electrical steel laminate)から形成することができる。極片を積層させることができる。永久磁石(単数又は複数)を、他の希土類材料あるいはフェライトから形成することができる。アーマチュアと極磁石(pole magnets)との両方を使用することができる。
【0160】
前記した実施形態では、コイルは、極片内に保持されて固定されている。しかしながら、ある実施形態では、コイルはアーマチュアと共に移動することができる。
【0161】
ある実施形態では、二つの極を提供する単一の極片を使用することができる。
【0162】
この出願では、特徴についての特定の組み合わせに向けて請求項が定式化されているけれども、理解されるべきこととして、本発明における開示の範囲は、明示的あるいは暗示的にここに記載された何らかの新規な特徴あるいは、特徴についての何らかの新規な組み合わせ、あるいはそれらの一般化を含み、それは、現在の請求項に記載されている発明と同じであるかどうかと関係なく、さらに、本発明が解決するのと同じ技術的課題の一部又は全部を軽減するかどうかと関係ない。出願人は、ここに、本願あるいはそれから派生する別出願の手続き過程において、新しい特徴及び/又はそのような特徴の組み合わせとなるように新しい請求項を定式化することができることについて、注意を喚起する。
図1
図2
図3
図4
図5
図5a
図6
図7
図7a
図8
図9
図10
図10a
図10b
図11
図12
図13
図14
図14a
図15a
図15b
図16a
図16b
図16c
図17
図17a
図17b
図18