(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
キーボードを有する本体部と、ディスプレイを有する表示部とをヒンジ機構によって回動可能に連結し、前記本体部と前記表示部とを、ディスプレイとキーボードが対面する0度位置からディスプレイとキーボードが同一方向を向いて互いに平行する180度位置を経て、ディスプレイとキーボードの背面同士が対面する360度位置まで回動可能とした電子機器であって、
前記表示部を前記本体部に対して前記180度位置から前記360度位置まで回動させる回動動作に連動し、前記本体部の上面から進退する脚部と、
前記脚部の基端部を支持し、前記本体部の内部で進退可能に設けられた上側ベース部材とを備え、
前記脚部は、前記表示部が前記本体部に対して前記0度位置から前記180度位置にある状態では、退動位置にあって前記本体部の上面から埋没している一方、前記表示部が前記本体部に対して前記180度位置から前記360度位置まで回動動作を行う場合に、該回動動作と連動して進動し、前記本体部の上面から突出するものであり、
前記上側ベース部材は、前記表示部が前記本体部に対して前記0度位置から前記180度位置にある状態では、弾性部材によって前記脚部を退動させる方向へと付勢され、前記脚部を前記本体部の上面に設けられた開口に埋没させた位置に保持しておく一方、前記表示部が前記本体部に対して前記180度位置から前記360度位置まで回動動作を行う場合に、前記弾性部材の付勢力に抗して進動し、前記脚部を前記開口から突出させるものであり、
前記本体部には、前記表示部の前記本体部に対する前記180度位置から前記360度位置までの回動動作に伴い、該本体部の本体筐体に対して前後方向に移動するスライド部材が設けられると共に、該スライド部材には、その移動方向に傾斜した押圧側傾斜面が設けられており、
前記上側ベース部材には、前記押圧側傾斜面と対向する方向に傾斜し、前記押圧側傾斜面と摺接可能な受け側傾斜面が設けられていることを特徴とする電子機器。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器10の斜視図であり、ヒンジ機構12L,12Rによって表示部14を本体部16から開き、両者を略直交させた状態を示す。
図2は、
図1に示す電子機器10のノート型PCとしての使用形態の一例を示す側面図であり、
図3は、
図2に示す状態から表示部14を開き方向に回動させて180度位置とした状態での側面図であり、
図4は、
図3に示す状態から表示部14をさらに開き方向に回動させて360度位置としたタブレット型PCとしての使用形態の一例を示す側面図である。
【0022】
本実施形態に係る電子機器10は、表示部14を本体部16に対して90度前後の角度位置に回動させた状態ではノート型PCとして好適に使用でき(
図1及び
図2参照)、表示部14を本体部16に対して360度位置まで回動させた状態ではタブレット型PCとして好適に使用できる(
図4参照)、いわゆるコンバーチブルタブレット型パーソナルコンピュータ(コンバーチブル型PC)である。
図4中に2点鎖線で示すように、360度位置から表示部14を少し起こせば、本体部16をベースとしたスタンド型のタブレット型PCとしても使用できる。なお、本発明は、このようなコンバーチブル型PC以外、例えば、携帯電話、スマートフォン、又は電子手帳等、表示部を本体部に対して360度位置まで回動可能な電子機器であれば好適に適用できる。
【0023】
以下、
図1及び
図2に示すノート型PCでの使用形態を基準とし、表示部14の前面14aに設けられたディスプレイ18を視認しながら本体部16の上面16aに設けられたキーボード20やクリックパッド21を操作する使用者から見た方向で、手前側を前側(前方)、奥側を後側(後方)と呼び、本体部16の厚み方向を上下方向、幅方向を左右方向と呼んで説明する。
【0024】
また、説明の便宜上、ヒンジ機構12L,12Rによる本体部16と表示部14の角度位置について、表示部14を本体部16に対して完全に閉じた状態とし、ディスプレイ18とキーボード20が対面した姿勢を0度位置(図示せず)と呼ぶ。そして、この0度位置を基準として、表示部14を開き方向に回動させる方向で角度を刻みながら説明するものとし、例えば、ディスプレイ18とキーボード20が同一方向(
図3では上方)を向いて互いに平行した姿勢を180度位置(
図3参照)と呼び、ディスプレイ18とキーボード20の背面同士、つまり表示部14の背面14bと本体部16の下面16bとが対面した姿勢を360度位置(
図4参照)と呼ぶものとする。
【0025】
図1に示すように、電子機器10は、ディスプレイ18を有する表示部14と、キーボード20を有する本体部16とを備え、表示部14と本体部16とが左右一対のヒンジ機構12L,12R(以下、まとめて「ヒンジ機構12」とも呼ぶ)によって0度位置から360度位置まで回動可能に連結されている。
【0026】
表示部14は、ヒンジ機構12を通過した図示しないケーブルにより、本体部16と電気的に接続されている。ディスプレイ18は、例えば、タッチパネル式の液晶表示部によって構成される。
【0027】
本体部16は、扁平な箱状に形成された本体筐体22の後端縁部にヒンジ機構12が設けられると共に、本体筐体22の内部には、図示しない基板、演算装置、及びメモリ等の各種電子部品が収納されている。本体部16の上面16aの後方側部には、左右一対の上側脚部(脚部、クッション部)24,24が設けられている。上側脚部24は、本体部16の上面16aの開口、具体的には本体筐体22の上カバー22aに形成された開口25から出没可能であり(
図4及び
図8参照)、この出没動作(進退動作)は、ヒンジ機構12による表示部14の回動動作と連動する。
【0028】
次に、ヒンジ機構12の具体的な構成例を説明し、その後、ヒンジ機構12による表示部14の回動動作と連動する上側脚部24の進退構造について説明する。
【0029】
図5は、本実施形態に係る電子機器10に設けられるヒンジ機構12の構成を模式的に示す斜視図であり、表示部14が本体部16に対して0度位置から180度位置にある場合での左側のヒンジ機構12Lの状態を示している。以下では、ヒンジ機構12として、
図5(及び
図6)に示すように左側のヒンジ機構12Lを例示して説明するが、右側のヒンジ機構12Rは、左側のヒンジ機構12Lと左右対称構造であって、
図5中に2点鎖線で示すリンクピン26の取付位置が左右反対側となる以外は基本的には同一構造のため、その詳細な説明は省略する。
【0030】
図5に示すように、ヒンジ機構12L(12R)は、左右方向に延在する第1シャフト(第1軸)28と、第1シャフト28と平行して設置された第2シャフト(第2軸)30と、第1シャフト28及び第2シャフト30をそれぞれ回転可能に軸支した左右一対のガイドプレート32,32とを備える。一対のガイドプレート32,32間であって、第1シャフト28と第2シャフト30とに挟まれる位置には、第1シャフト28と第2シャフト30の間を往復移動可能且つ回転可能に支持されたフロートピン34が設けられている。
【0031】
第1シャフト28は、その両端が表示部14の筐体に設けられた図示しない嵌合孔に嵌入固定されることで該表示部14に対して回転不能な状態で連結される。第2シャフト30は、その両端が本体部16の本体筐体22に設けられた図示しない嵌合孔に嵌入固定されることで該本体部16に対して回転不能な状態で連結される。
【0032】
各ガイドプレート32は、両端が円弧状に形成された帯状のプレート部材であり、両端の円弧状部分にそれぞれ軸孔32a,32bが貫通形成されている。軸孔32aに第1シャフト28が回転可能に挿通され、軸孔32bに第2シャフト30が回転可能に挿通されている。これにより、表示部14は、第1シャフト28と共にガイドプレート32に対して回転可能に支持され、本体部16は、第2シャフト30と共にガイドプレート32に対して回転可能に支持される。
【0033】
各ガイドプレート32の軸孔32a,32bの間となる中央部分には、軸孔32a,32bの並び方向(
図5中で上下方向)に延在する長孔32cが形成されている。長孔32cには、フロートピン34両端の小径部34aが挿通される。
【0034】
フロートピン34は、両端の小径部34aがそれぞれ左右のガイドプレート32の長孔32cに対して内面側から挿通されると共に、中央の大径部34bによって長孔32cからの抜け止めがなされる。これにより、フロートピン34は、左右のガイドプレート32,32間であって第1シャフト28と第2シャフト30の間となる位置で、長孔32cの長手方向に沿って移動可能、且つ長孔32cを軸受として回転可能な状態で支持される。
【0035】
第1シャフト28及び第2シャフト30の左右のガイドプレート32,32間に位置する中央部分の外周面には、フロートピン34の大径部34bの一部を嵌合可能な円弧形状の溝部28a及び溝部30aが形成されている。
図5に示すように、溝部28a,30aは、表示部14が本体部16に対して、0度位置から180度位置にある状態で上方を向く位置に形成されている。従って、
図5に示す状態では、重力によって長孔32c内の下部に位置しているフロートピン34は、その大径部34bが第2シャフト30の溝部30aに嵌合している(
図6(A)〜
図6(D)参照)。
【0036】
図5中に2点鎖線で示すように、ヒンジ機構12L(12R)は、箱状のヒンジ筐体36を有する。ヒンジ筐体36は、その内面に各ガイドプレート32の周端面が固定されることで該ガイドプレート32を含むヒンジ機構12L(12R)の全ての構成要素をその内部に収容するものであり、第1シャフト28両端及び第2シャフト30両端のみがヒンジ筐体36の左右両側面から外部に突出し、それぞれ表示部14及び本体部16に連結される。
【0037】
ヒンジ筐体36の一方の側面であって、第2シャフト30の前側となる位置には、リンクピン26が突設されている(
図5中に2点鎖線で示すリンクピン26参照)。リンクピン26は、ヒンジ機構12と上側脚部24とを連動させるための部品であり、左右のヒンジ機構12L,12Rの内側面に設けられている(
図7も参照)。
【0038】
ヒンジ筐体36の他方の側面であって、長孔32cの後側となる位置には、ストッパ片37が突設されている(
図5中に2点鎖線で示すストッパ片37参照)。ストッパ片37は、180度位置となった表示部14と当接し、それ以上の回動を規制するための部材である(
図6(D)も参照)。
【0039】
次に、ヒンジ機構12による表示部14と本体部16の回動動作について説明する。
【0040】
図6は、
図5に示すヒンジ機構12を用いた表示部14の本体部16に対する回動動作を模式的に示す動作説明図であり、左側のヒンジ機構12Lの動作を代表的に示している。
図6において、
図6(A)は、0度位置を示す図であり、
図6(B)は、45度位置を示す図であり、
図6(C)は、135度位置を示す図であり、
図6(D)は、180度位置を示す図であり、
図6(E)は、225度位置を示す図であり、
図6(F)は、315度位置を示す図であり、
図6(G)は、360度位置を示す図である。
【0041】
表示部14を本体部16から開く方向に回動させる場合、先ず、
図6(A)〜
図6(D)に示す0度位置から180度位置までの間は、フロートピン34が溝部30aに嵌合しているため第2シャフト30の回転が規制され、本体部16及び第2シャフト30とヒンジ筐体36とが一体化している。従って、これら本体部16、第2シャフト30、及びヒンジ筐体36に対して、表示部14が第1シャフト28と共に該第1シャフト28を回動軸として回動し、例えば、
図2に示すようなノート型PCとしての使用が可能となる。
【0042】
図6(D)に示す180度位置(
図3も参照)では、表示部14の背面14bがヒンジ筐体36に設けられたストッパ片37に当接し、第1シャフト28を回動軸とした回動が規制される。この状態では、第1シャフト28の溝部28aが下方を向き、フロートピン34を受け入れ可能な位置となっている。
【0043】
続いて、表示部14を180度位置よりもさらに開き方向に回動させようとすると、今度は、
図6(E)に示すように、ストッパ片37を介して表示部14及び第1シャフト28とヒンジ筐体36とが一体となり、第2シャフト30を回動軸として回動し始める。この回動に伴い、フロートピン34が第2シャフト30の溝部30aから離脱して第1シャフト28の溝部28aに嵌入し、本体部16及び第2シャフト30とヒンジ筐体36との一体化が解除される。これにより、
図6(E)〜
図6(G)に示すように、180度位置より開き方向では、表示部14、第1シャフト28、及びヒンジ筐体36とが一体となり、本体部16に対して第2シャフト30を回動軸として回動する。
【0044】
最終的には、
図6(G)に示すように、表示部14が本体部16の背面側に回り込み、ストッパ片37が本体部16の背面に当接すると回動が規制されて360度位置となり、例えば、
図4に示すようなタブレット型PCとしての使用が可能となる。
【0045】
次に、ヒンジ機構12による表示部14の回動動作と連動する上側脚部24の進退構造について説明する。
【0046】
図7は、本体部16の内部構造を模式的に示す平面図である。
図7は、本体筐体22の上カバー22aを取り外し、上側脚部24及びこれを進退移動させるためのスライド部材38を模式的に示した平面図であり、左側のヒンジ機構12L及びこれと連動するスライド部材38は、0度位置での状態を示し、右側のヒンジ機構12R及びこれと連動するスライド部材38は、360度位置での状態を示している。また、
図8は、上側脚部24の進退動作を説明するための側面図であり、
図8(A)は、0度位置から180度位置までの間での上側脚部24及びスライド部材38の状態を示す図であり、
図8(B)は、270度位置での上側脚部24及びスライド部材38の状態を示す図であり、
図8(C)は、360度位置での上側脚部24及びスライド部材38の状態を示す図である。
【0047】
図7及び
図8に示すように、本体部16の本体筐体22内部には、平面視L字状に形成されたスライド部材38が、下カバー22bの上面(内面)上で前後方向に移動可能に設けられている。スライド部材38は、L字の一端部から後側に延びた係合アーム部38aと、L字の他端部であって上側脚部24の下方に配置された押圧プレート部38bとを備える。
【0048】
係合アーム部38aの先端には、上下方向に延在し、下方が開口した係合凹部39が設けられている。ヒンジ機構12のリンクピン26に対し、係合凹部39を上から係合させることにより、リンクピン26と係合アーム部38a(スライド部材38)とが係合されると共に、リンクピン26は、係合凹部39内で上下方向に移動可能且つ回転可能な状態で保持される。押圧プレート部38bは、スライド部材38の進動方向となる後方に向かって漸次下方に傾斜した押圧側傾斜面40aと、押圧側傾斜面40aの頂部から前方へと延在した台座40bとを有する押圧台40を備える。押圧台40は、押圧プレート部38bに前後方向に延在形成され、一部に段部を設けたプレート部41の上面に設けられている。
【0049】
図8に示すように、上側脚部24は、本体筐体22の上カバー22aの開口25に配置されたゴム材料や樹脂材料で形成された脚部材である。上側脚部24は、その下端部(基端部)が上下動可能に本体部16内に設けられた上側ベース部材42によって支持されることで上下方向に進退し、開口25から出没することができる。
【0050】
図8に示すように、上側ベース部材42は、その上端面に上側脚部24が固着されたプレート状の部材である。上側ベース部材42は、その前端に左右方向に沿った軸ピン42aが設けられており、軸ピン42aが上カバー22aの下面に湾曲形成された軸受部43に軸支されている。上側ベース部材42は、後側に向かって漸次下方に傾斜した受け側傾斜面44aと、受け側傾斜面44aの下端部から後方に延在した台座44bとを有する受け台44を備える。受け側傾斜面44aは、スライド部材38の押圧側傾斜面40aと対向し、摺接可能である。受け台44の上部には、上側脚部24を支持する支持台42bが設けられている。なお、
図7では、図面の見易さを確保するため、上側ベース部材42を省略している。
【0051】
上側ベース部材42は、
図8(A)〜
図8(C)に示すように、軸ピン42aを回動軸として本体筐体22に対して上下方向に回動可能であり、この上側ベース部材42の上下動により、上側脚部24が開口25から出没する。上側ベース部材42には、一端が該上側ベース部材42を下方に押圧し、他端が上カバー22aの下面を上方に押圧するねじりコイルばね(弾性部材)45が配設されている。ねじりコイルばね45の付勢力により、上側ベース部材42は、下方へと常時付勢されており、これにより上側脚部24も常時開口25内に埋没する退動方向に付勢されている。
【0052】
次に、上側脚部24の進退動作について説明する。
【0053】
ヒンジ機構12による表示部14の回動動作時、ヒンジ筐体36の側面から突出したリンクピン26は、
図6(A)〜
図6(D)に示す0度位置から180度位置までは、その位置が変化しないヒンジ筐体36と共に同一位置に保持されており、第2シャフト30の前方側となる位置に留まっている。そして、表示部14が180度位置を超えて開き方向に回動されると、今度は第2シャフト30を軸心として回動するヒンジ筐体36に伴い、リンクピン26も次第に後方へと移動し(
図6(E)及び
図6(F)参照)、360度位置では、第2シャフト30の後方側となる位置まで移動することになる(
図6(G)参照)。
【0054】
このように、ヒンジ機構12では、表示部14の回動角度が180度位置までの間は、リンクピン26の前後方向位置は変化しないが、180度位置を超えた後は、その回動角度の増加に伴って後方側へと次第に移動することになる。
【0055】
従って、
図8(A)に示すように、0度位置から180度位置までの間は、上記のようにリンクピン26の前後方向位置は変化せずに位置P1に留まり、スライド部材38の位置も初期位置に留まっている。この際、押圧台40の押圧側傾斜面40aと受け台44の受け側傾斜面44aとは、互いに対向して近接又は僅かに接触した位置関係にある。このため、上側ベース部材42は、ねじりコイルばね45の付勢力によって下方に回動した退動位置にあり、上側脚部24は開口25内に埋没し、その上面が本体部16の上面16aと面一又は略面一となっている。つまり、
図2に示すようなノート型PCとしての使用時(0度位置から180度位置)には、上側脚部24は本体部16の上面16aの一部を形成しており、当該電子機器10の使用時に邪魔になることがなく、またその外観を損ねることもない。
【0056】
続いて、180度位置を超えて表示部14が回動されると、リンクピン26は第2シャフト30を軸心として開き方向へと回動するヒンジ筐体36により、該第2シャフト30を回動軸として旋回動作して上方に移動しつつ、その前後方向位置が後方に移動する。そして、例えば、270度位置では、リンクピン26は、
図8(B)に示す位置P2となる(
図6(E)及び
図6(F)も参照)。これにより、
図8(B)に示すように、リンクピン26はスライド部材38の係合アーム部38aの係合凹部39内で上方へと移動しつつ、該スライド部材38を後方へと引き寄せ移動させる。
【0057】
図8(B)に示すように、スライド部材38が後方へと移動すると、押圧台40の押圧側傾斜面40aと受け台44の受け側傾斜面44aとが互いに摺接し、軸ピン42aによって前後方向位置が規制された受け側傾斜面44aが、後方に移動する押圧側傾斜面40aからの押し上げ力を受ける。このため、上側ベース部材42が軸ピン42aを軸心として、ねじりコイルばね45の付勢力に抗して上方へと回動し、上側脚部24が上方へと進動して開口25から突出する。この際、例えば、
図8(B)に示す270度位置では、受け側傾斜面44aが押圧側傾斜面40aを完全に乗り越えており、押圧台40の台座40bと受け台44の台座44bが互いに当接した位置となっている。
【0058】
表示部14がさらに回動されると、リンクピン26は第2シャフト30を軸心として旋回動作して次第に下方へと移動しつつ、その前後方向位置がさらに後方に移動し、例えば、360度位置では、
図8(C)に示す位置P3となる(
図6(G)も参照)。このため、
図8(C)に示すように、リンクピン26はスライド部材38の係合アーム部38aの係合凹部39内で今度は下方へと移動しつつ、該スライド部材38をさらに後方へと引き寄せ移動させる。
【0059】
図8(C)に示すように、スライド部材38がさらに後方へと移動すると、押圧台40の台座40bと受け台44の台座44bが互いに水平方向に摺接するため、上側脚部24は開口25から突出した位置のまま保持される。つまり、
図4に示すようなタブレット型PCとしての使用時(例えば、360度位置)やスタンド型のタブレット型PCとしての使用時(例えば、270度位置)には、上側脚部24は本体部16の上面16a(
図4では下面となる)から突出しており、当該電子機器10を机の上等に載置する際の脚部として機能することになる。この際、上側ベース部材42は、受け台44の台座44bが、押圧台40の台座40bと面接触して安定しているため、上側脚部24のガタつきが防止される。
【0060】
一方、360度位置にある表示部14を閉じ方向に回動動作させる場合には、上記の開き方向への回動動作と逆方向の動作が生じるため、表示部14が360度位置から180度位置へと回動されるのに伴い、リンクピン26は前方へと移動する。これにより、押圧台40と受け台44とが、台座40bと台座44bの摺接状態から再び押圧側傾斜面40aと受け側傾斜面44aの摺接状態へと移行するのに伴い、上側ベース部材42もねじりコイルばね45の付勢力によって下方へと退動する。そして、表示部14が180度位置を下回った後は、
図8(A)に示すように、上側脚部24は再び開口25に埋没することになる。
【0061】
このような進退構造は、本体部16の上面16aに設けた上側脚部24だけでなく、本体部16の下面16bに設けた下側脚部50に適用してもよい。
【0062】
すなわち、
図2及び
図3に示すように、本体部16の下面16bの後方両側部には、当該電子機器10をノート型PCとして使用する際の脚部材となる下側脚部50が設けられている。従って、
図4に示すように、表示部14を360度位置とした場合、本体部16の下面16bと表示部14の背面14bとが対面配置されることになるが、このとき、ヒンジ機構12の構造や形状等によっては、下側脚部50が邪魔となり、360度位置としてタブレット型PCとして使用する際の電子機器10全体の厚みが大きくなり、取扱性や操作性が低下することが懸念される。
【0063】
なお、
図2及び
図3に示すように、本体部16の下面16bの前方両側部にも脚52が設けられている。但し、ノート型PCとしての使用時の操作性を考慮し、電子機器10を机の上等で後上がりに載置可能とすべく、前側の脚52よりも後側の下側脚部50の高さが高く設定されており、このため、360度位置では脚52よりも下側脚部50の高さの方が、電子機器10の厚みに対する影響が大きい。そこで、本実施形態では、後側の下側脚部50のみに進退構造を設けた構成を例示するが、前側の脚52にも同様な進退構造を設けてもよいことは勿論である。
【0064】
図9は、下側脚部50の進退動作を説明するための側面図であり、
図9(A)は、0度位置から180度位置での下側脚部50及びスライド部材54の状態を示す図であり、
図9(B)は、360度位置での下側脚部50及びスライド部材54の状態を示す図である。なお、
図9中の参照符号55は、下側脚部50が出没するように本体筐体22の下カバー22bに形成された開口である。
【0065】
図9に示すように、下側脚部50の進退構造についても、上記したスライド部材38及び上側ベース部材42と類似構成からなるスライド部材54及び下側ベース部材56を用いている。
図9に示すように、スライド部材54及び下側ベース部材56は、
図8に示すスライド部材38及び上側ベース部材42を180度回転させ、その上下をひっくり返したような構成となっている。そこで、
図9に示すスライド部材54及び下側ベース部材56について、
図8に示すスライド部材38及び上側ベース部材42と同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略するものとする。
【0066】
スライド部材54は、平面視L字状に形成され、下カバー22bの上面(内面)上で前後方向に移動可能に設けられており、係合アーム部38aと押圧プレート部38bとを備える。スライド部材54は、スライド部材38と比べて、上下の向きが押圧台40と反対となる押圧台58を備える以外は、基本的に同一構造である。スライド部材54の押圧台58は、スライド部材54の進動方向となる後方に向かって漸次下方に傾斜した押圧側傾斜面58aと、押圧側傾斜面58aの下端部から前方に延在した台座58bとを有する。押圧台58は、押圧プレート部38bに前後方向に延在形成され、一部に段部を設けたプレート部59の下面に設けられている。
【0067】
図9に示すように、下側脚部(脚部、クッション部)50は、本体筐体22の下カバー22bの開口55に配置されたゴム材料や樹脂材料で形成された脚部材である。下側脚部50は、その上端部(基端部)が上下動可能な下側ベース部材56によって支持されることで上下方向に進退し、開口55から出没することができる。
【0068】
下側ベース部材56は、その下端面に下側脚部50が固着されたプレート状の部材であり、後端の軸ピン42aによって本体筐体22に対して上下方向に回動可能である。この下側ベース部材56の上下動により、下側脚部50が開口55から出没する。下側ベース部材56には、一端が該下側ベース部材56を上方に押圧し、他端が下カバー22bの上面を下方に押圧するねじりコイルばね(弾性部材)60が配設されている。ねじりコイルばね60の付勢力により、下側ベース部材56は、上方へと常時付勢されており、これにより下側脚部50も常時開口55から突出する進動方向に付勢されている。
【0069】
下側ベース部材56は、上側ベース部材42と比べて、上下の向きが受け台44と反対となる受け台62を備える以外は、基本的に同一構造である。下側ベース部材56の受け台62は、後側に向かって下方に漸次傾斜した受け側傾斜面62aと、受け側傾斜面62aの頂部から前方に延在した台座62bとを有する。受け側傾斜面62aは、スライド部材54の押圧側傾斜面58aと対向し、摺接可能である。
【0070】
次に、下側脚部50の進退動作について説明する。
【0071】
図9(A)に示すように、0度位置から180度位置までの間は、リンクピン26の前後方向位置は変化せずに位置P1にあるため、スライド部材54も初期位置に留まり、押圧台58の台座58bと受け台62の台座62bとが互いに当接した位置となっている。このため、下側ベース部材56は、軸ピン42aを軸心として、ねじりコイルばね60の付勢力に抗して下方へと回動し、下側脚部50は下方へと進動して開口55から突出している。つまり、
図2に示すようなノート型PCとしての使用時(0度位置から180度位置)には、下側脚部50は本体部16の下面16bから突出しており、当該電子機器10を机の上等に載置する際の脚部として機能することになる。この際、下側ベース部材56は、受け台62の台座62bが、押圧台58の台座58bと面接触して安定しているため、下側脚部50のガタつきが防止される。
【0072】
続いて、180度位置を超えて表示部14が回動されると、リンクピン26は第2シャフト30を軸心として開き方向へと回動するヒンジ筐体36により、該第2シャフト30を軸心として旋回動作して上方に移動しつつ、その前後方向位置が後方に移動し、次いで下方に移動しつつ、その前後方向位置がさらに後方に移動する。そして、360度位置では、リンクピン26は、
図9(B)に示す位置P3となる(
図6(E)〜
図6(G)も参照)。これにより、リンクピン26はスライド部材54の係合アーム部38aの係合凹部39内で上方から下方へと移動しつつ、該スライド部材54を後方へと引き寄せ移動させる。
【0073】
図9(B)に示すように、スライド部材54が後方へと移動すると、押圧台58と受け台62とが、台座58bと台座62bの摺接状態から押圧側傾斜面58aと受け側傾斜面62aの摺接状態へと移行するのに伴い、下側ベース部材56がねじりコイルばね60の付勢力によって上方へと退動する。このため、
図9(B)に示す360度位置では、下側ベース部材56は、ねじりコイルばね60の付勢力によって上方に回動した退動位置にあり、下側脚部50は開口55に埋没し、その下面が本体部16の下面16bと面一又は略面一となっている。つまり、
図4に示すようなタブレット型PCとしての使用時(例えば、360度位置)やスタンド型のタブレット型PCとしての使用時(例えば、270度位置)には、下側脚部50は本体部16の下面16b(
図4では上面となる)から埋没しており、対面配置された本体部16の下面16bと表示部14の背面14bの間で邪魔となり、電子機器10全体の厚みが大きくなることが回避される。
【0074】
一方、360度位置にある表示部14を閉じ方向に回動動作させた場合には、上記の開き方向への回動動作と逆方向の動作が生じるため、表示部14が360度位置から180度位置へと回動されるのに伴い、リンクピン26は前方へと移動する。これにより、今度は、押圧台58の押圧側傾斜面58aと受け台62の受け側傾斜面62aの摺接作用により、下側ベース部材56がねじりコイルばね60の付勢力に抗して下方へと進動し、表示部14が180度位置を下回った後は、
図9(A)に示すように、下側脚部50は再び開口55から突出することになる。
【0075】
上記した進退構造を有する上側脚部24と下側脚部50とは、両者を1台の電子機器10に併設してもよいし、一方のみを設けても勿論よい。上側脚部24と下側脚部50とを同時に設ける場合には、上側脚部24を支持した上側ベース部材42と、下側脚部50を支持した下側ベース部材56とを進退移動させるスライド部材38,54を、それぞれ本体部16内に設ければよい。また、これらスライド部材38,54は、
図10に示すように、上側ベース部材42と下側ベース部材56とを同時に駆動可能な1つのスライド部材70として構成されてもよい。
【0076】
図10に示すように、スライド部材70は、リンクピン26に係合される係合アーム部38aと、上側ベース部材42及び下側ベース部材56を進退移動させる押圧プレート部70aとを備え、この押圧プレート部70aに、上下一対の押圧台40,58を備えた構成となっている。従って、スライド部材70によれば、上側の押圧台40で上側ベース部材42を進退移動させることができ、同時に、下側の押圧台58で下側ベース部材56を進退移動させることができる。
【0077】
本体部16の下面16bから進退する下側脚部としては、
図9に示した下側脚部50に代えて、
図11に示す下側脚部80を用いてもよい。
【0078】
図11は、変形例に係る下側脚部80の進退動作を説明するための側面図であり、
図11(A)は、0度位置から180度位置での下側脚部80及びスライド部材82の状態を示す図であり、
図11(B)は、360度位置での下側脚部80及びスライド部材82の状態を示す図である。
【0079】
図11に示すように、下側脚部(脚部、クッション部)80は、本体筐体22の下カバー22bに形成された凹部83に配置されたゴム材料や樹脂材料で形成された脚部材である。下側脚部80の一端側には、左右方向に貫通した軸孔80aが形成されている。軸孔80aには、リンクアーム84の一端に設けられた円筒部84aが回転不能な状態で嵌合固定され、円筒部84aの内孔には、下カバー22bに支持された軸ピン86が回転可能な状態で挿通されている。リンクアーム84は、下側脚部80の長手方向(
図11(A)で略上下方向)から多少屈曲した方向に延在するように、円筒部84aが軸孔80aに対して所定の角度位置で固着されている。
【0080】
スライド部材82は、上記のスライド部材54と同様、平面視L字状に形成され、下カバー22bの上面(内面)上で前後方向に移動可能に設けられており、係合アーム部38aと係合プレート部82aとを備える。係合プレート部82aの前端部には、上下方向の長孔88が左右方向に貫通形成されており、長孔88には、リンクアーム84の他端に形成された円筒部84bが回転可能且つ上下方向に移動可能な状態で挿入されている。
【0081】
図11(A)に示すように、0度位置から180度位置までの間は、リンクピン26の前後方向位置が変化せずに位置P1にあるため、スライド部材82も初期位置に留まり、リンクアーム84の円筒部84bは、スライド部材82の長孔88の下端側に位置している。このため、下側脚部80は、下カバー22bの凹部83の後端側の傾斜壁83aに当接し、その先端(下端)が凹部83から突出している。つまり、
図2に示すようなノート型PCとしての使用時(0度位置から180度位置)には、下側脚部80は本体部16の下面16bから突出しており、当該電子機器10を机の上等に載置する際の脚部として機能することになる。この際、下側脚部80は、凹部83内で後下がりの傾斜壁83aに当接して安定しているため、そのガタつきが防止される。
【0082】
続いて、180度位置を超えて表示部14が回動されると、リンクピン26が後方へと次第に移動し、360度位置では、
図11(B)に示す位置P3となり(
図6(E)〜
図6(G)も参照)、スライド部材82が後方へと引き寄せ移動される。
【0083】
図11(A)及び
図11(B)から明らかなように、リンクアーム84の一端の円筒部84aが下カバー22b側の軸ピン86によって軸支されているため、スライド部材82が後方へと移動するのに伴い、長孔88に挿入された他端の円筒部84bは、長孔88内で回転しながら上昇し、次いで下降する。そして、この円筒部84bの移動により、リンクアーム84が軸ピン86を回動軸として
図11中で時計回りに回動し、最終的には、
図11(B)に示す360度位置での回動角度に設定される。このため、リンクアーム84の回動動作に伴い、円筒部84aと固定されている下側脚部80も軸ピン86を回動軸として
図11中で時計回りに回動し、下側脚部80の全体が凹部83内に収容され、その下面が本体部16の下面16bと面一又は略面一となる。つまり、
図4に示すようなタブレット型PCとしての使用時(例えば、360度位置)やスタンド型のタブレット型PCとしての使用時(例えば、270度位置)には、下側脚部80は本体部16の下面16b(
図4では上面となる)から埋没しており、対面配置された本体部16の下面16bと表示部14の背面14bの間で邪魔となり、電子機器10全体の厚みが大きくなることが回避される。
【0084】
以上のように、本実施形態に係る電子機器10によれば、表示部14を本体部16に対して180度位置から360度位置まで回動させる回動動作に連動し、本体部16の上面16a又は(及び)下面16bから進退する上側脚部24又は(及び)下側脚部50(80)を備えることにより、表示部14を本体部16に対して回動させた場合であっても、上側脚部24又は(及び)下側脚部50(80)を当該電子機器10の使用形態に応じた適切な出没位置へと自動的に進退させることができるため、高い操作性や取扱性を得ることができ、またキーボード20等が誤って机の上等に接触し、傷や破損を生じることを防止することができる。
【0085】
すなわち、本体部16の上面16aから進退する上側脚部24を設けることにより、表示部14の180度位置から360度位置の回動と連動して該上側脚部24を進退させることができるため、例えば、コンバーチブル型PCである電子機器10を360度位置に変形させてタブレット型PCとして使用する場合に、上側脚部24を本体部16の上面16aから自動的に突出させて脚部として機能させ、電子機器10の安定した操作が可能となり、さらにこの使用時に下面側となるキーボード20等の傷や破損を回避することができる。また、電子機器10をノート型PCとして使用する際には、上側脚部24を本体部16の上面16aに埋没させておくことができるため、この使用時に上側脚部24が邪魔となることが防止でき、また外観が損なわれることも回避できる。
【0086】
一方、本体部16の下面16bから進退する下側脚部50(80)を設けることにより、表示部14の180度位置から360度位置の回動と連動して該下側脚部50を進退させることができるため、例えば、コンバーチブル型PCである電子機器10を360度位置に変形させてタブレット型PCとして使用する場合に、下側脚部50を本体部16の下面16bに自動的に埋没させることができるため、機器全体の厚みが大きくなり取扱性や操作性が損なわれることを防止できる。また、電子機器10をノート型PCとして使用する際には、下側脚部50を本体部16の下面16bから突出させることができるため、下側脚部50を本体部16の下面16bから突出させて脚部として機能させ、電子機器10の安定した操作が可能となる。
【0087】
電子機器10では、ヒンジ機構12として、第1軸である第1シャフト28が回転終点位置まで回転した後、第2軸である第2シャフト30が回転を開始する2軸構造を採用しており、0度位置から180度位置までは第1シャフト28が回転し、180度位置から360度位置までは第2シャフト30が回転するものとしている。これにより、簡素な構成でありながらも、表示部14を本体部16に対して0度位置から360度位置まで回動可能に連結することができ、しかも、180度位置を境として、第1シャフト28と第2シャフト30の回転が切り替わるため、上側脚部24及び下側脚部50(80)を駆動するスライド部材38,54(82)をヒンジ機構12によって円滑に移動させることが可能となる。
【0088】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0089】
上側脚部24や下側脚部50(80)の進退構造は、上記したスライド部材38,54(82)と、上側ベース部材42及び下側ベース部材56等を用いた構造以外であっても勿論よく、さらには、表示部14の回動動作を図示しない角度センサで検出し、その検出結果に応じて図示しない電動モータを駆動することで上側脚部24や下側脚部50(80)を進退させる構造等としてもよい。