(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738982
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】架橋ヒドロプロピル化ポリガラクトマンナンに基づく、表面を殺菌するための変形可能な材料
(51)【国際特許分類】
A01N 25/00 20060101AFI20150604BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20150604BHJP
A01N 47/44 20060101ALI20150604BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
A01N25/00 101
A01N33/12 101
A01N47/44
A01P3/00
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-506558(P2013-506558)
(86)(22)【出願日】2011年3月16日
(65)【公表番号】特表2013-525391(P2013-525391A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2011053921
(87)【国際公開番号】WO2011134715
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2014年1月14日
(31)【優先権主張番号】00600/10
(32)【優先日】2010年4月26日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】512240305
【氏名又は名称】ジョーカー、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】JOKER AG
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(72)【発明者】
【氏名】マインラート、フルリー
(72)【発明者】
【氏名】レネ、ハー.ディートリッヒ
【審査官】
太田 千香子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−305043(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/061028(WO,A1)
【文献】
特開2008−120765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 33/12
A01N 47/44
A01N 31/02
A01N 25/04
A61L 2/16
A61L 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、および
エタノール、2‐プロパノール、メタノール、1‐プロパノールおよびその混合物を含む群から選択される、25〜40重量%の溶媒成分、
塩化ベンザルコニウム、サッカリン酸ベンザルコニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、クロルヘキシジンおよびその混合物を含む群から選択される、1〜10重量%の活性殺菌性成分、
0.3〜1.5のエーテル化レベルを有する、3〜6重量%のヒドロキシプロピル化ポリガラクトマンナン、および
0.1〜0.5重量%のホウ酸または同量のホウ素イオン
を含んでなることを特徴とする、殺菌剤としての使用のための展性のある組成物。
【請求項2】
前記組成物が、その表面上への付着によって、生物起源の不純物を集めるのに適している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒドロキシプロピル化ポリガラクトマンナンのエーテル化レベルが0.6〜1.2である、請求項1または2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングしにくい表面を殺菌する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
技術水準
現在、細菌感染は、病院においても重要な問題であり、数多くの合併症を引き起こしている。これまでかなり長い期間にわたり細菌感染の治療には抗生物質が利用可能であったが、病原菌は、特に病院環境において、種々の抗生物質に対する耐性を発達させてきた。特に入院患者の免疫系は弱っていることが多く、それ故に入院患者は特に感染しやすいため、この種の多耐性の細菌の問題は、特に集中治療医学において、絶えず増加している。非常に一般的な抗生物質耐性株はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)株であり、この株は、毎年、すでに、米国内の集中治療棟における疾患の発病率の50%を超える割合を占めている。
【0003】
同様の問題は獣医学診療にも存在する。これは、ネコおよびイヌもしばしばMRSA保菌体であるためである。ここでも、家庭内のペットにおいて、抗生物質の不適切な使用により、多耐性の病原菌がもたらされる、とのことが研究により示されている("Occurrence of highly fluoroquinolone-resistant and methicillin-resistant Stapylococcus aureus in domestic animals", A. E. Lin, J. E. Davies, Can. J. Microbiol. 53, 925 (2007))。これらは、その後、飼い主および獣医学診療のスタッフへとうつり、また、その後、そこから再び動物およびヒトへと伝染することもある("High risk for nasal carriage of methicillin-resistant Staphylococcus aureus among Danish veterinary practitioners", A. Moodley et al, Scand. J. Work, Envir. & Health 34, 151 (2008))。
【0004】
感染を介しての合併症を避ける最も効率的な手段は、一般的には、適切な衛生処置により、具体的には患者が直接的または間接的に接触する可能性のある物および表面の定期的かつ十分な殺菌により、感染自体を避けることであると受け取られる。平らで滑らかな表面は、従来の液体殺菌剤を用いて比較的簡単に殺菌することができる。院内部門における消耗品は、通常、あらかじめ滅菌されたパッケージングにより供給される。他方では、例えば外科用または医療機器などの何度も繰り返し使用され得る機器および物は、オートクレーブにて滅菌することができる。
【0005】
しかしながら、病院においても使用することが避けられない例えばボールペン、携帯電話、ポケットベル、眼鏡、コンピュータのキーボード等の日常物は問題となる。こうした物は、しばしば手と接触するが、手は、特に数多くの病原菌を当然保菌している。このようにして、病原菌は、訪問者および患者によってのみならず、特に看護スタッフによっても、幅広い領域にわたって拡散し得る。もう一つの問題は、例えばコントロールボタンの場合のように、入り込むことが難しい隙間を有していることがある電子装置である。これらの隙間は、従来の表面殺菌では届かず、それ故、病原菌の温床である。
【0006】
前述の物は、通常、オートクレーブに入れることができず、また、液体殺菌剤は、表面使用の際にすべての裂け目に浸透することができるとは限らないため、実用的ではない。また、液体殺菌剤は電子部品にダメージを与える可能性もある。したがって、こうした問題のある物および表面を、平易に、また効果的に殺菌する、可能な方法を有することが望ましいであろう。
【0007】
WO02/055642では、固体粒子を表面から除去するためのクリーニング剤が開示されており、そこでは、擬塑性ポリガラクトマンナンゲル化合物が、狭い隙間に浸透し、そこに存在する固体粒子を集める。集められた粒子は当該化合物中に取り込まれ、その結果、未使用の表面が継続的にクリーニングに利用可能となる。前述のクリーニング化合物は、ほこりおよび綿ぼこりを効率的に集めることを目的とするものである。その表面の濡れは、殺菌剤としての使用には不十分である。
【発明の概要】
【0008】
発明の目的
本発明の目的は、前述のおよび他の欠点を呈さない、表面を殺菌する手段を提供することである。特に、この種の殺菌剤は、届きにくい裂け目にさえ浸透し、そこに生息する病原菌を全滅させる能力を有しているべきである。
【0009】
この種の殺菌剤は、素早くかつ効果的に病原菌を全滅させるものであるべきであり、それにより、院内部門における衛生要件を満足させ、かつ、病原菌が拡散しないよう効率的に予防する。特に、関連する規格、特には欧州規格EN1040およびEN13697を満たすものであるべきである。
【0010】
これらのおよび他の目的は、独立請求項に従った本発明にかかる殺菌剤としての使用のための展性のある(malleable)化合物により解決される。従属請求項中に、他の有利な実施形態が含まれている。
【0011】
発明の説明
殺菌剤としての使用のための展性のある化合物は、低分子の水混和性アルコールを含む、25〜40重量%、好ましくは30〜35重量%の溶媒成分、1〜10重量%、好ましくは2〜7重量%の活性殺菌性成分、0.3〜1.5のエーテル化レベルを有する、3〜6重量%のヒドロキシプロピル化ポリガラクトマンナンおよび0.1〜0.8重量%のホウ酸または同量のホウ素イオンを含む。残りの重量割合は、好ましくは水で補充される。
【0012】
本発明にかかる化合物は、その表面上に、付着によって、小さな粒子、特には生物起源の(biogenic)不純物を集めるのに有利に適している。これの利点は、本発明にかかる化合物の即座に局在化される殺菌効果のほかには、その表面に、例えば病原菌などの小さな粒子が付着したままとなり、そこでそれらが全滅する、ということである。この場合の曝露時間は、クリーニングされている表面においてよりも有意に大きく、このことは、殺菌効果が絶対的であるということを意味する。当該化合物を混練および成形することにより、自動的に、本発明の化合物が通常の方法で使用されている場合のように、粒子は恒久的にその化合物内に捕捉され、代替表面は生物起源および非生物起源の性質を有する外来性粒子をさらに集めることができる。
【0013】
本発明のこの種の化合物の、有利な一実施形態においては、当該溶媒成分は、エタノール、2‐プロパノール、メタノール、1‐プロパノールおよびその混合物を含む群から選択される。さらにより有利な一つの変形においては、当該溶媒成分は、エタノール、2‐プロパノールまたはその混合物である。
【0014】
塩化ベンザルコニウム、サッカリン酸ベンザルコニウム(benzalkonium saccharinate)、塩化ジデシルジメチルアンモニウム(didecyl dimethyl ammonium chloride)、クロルヘキシジンまたはその混合物は、本発明にかかる化合物の当該活性殺菌性成分として使用される。
【0015】
本発明にかかる化合物のもう一つの有利な変形においては、当該ヒドロキシプロピル化ポリガラクトマンナンのエーテル化レベルは0.5〜1.5である。0.6〜1.2のエーテル化レベルが特に有利である。
【0016】
本発明にかかる展性のある殺菌剤の作用は、液体殺菌剤というよりも、むしろ、擬塑性流動特性を有するゲル化合物の形態をしているこれに基づくものである。本発明にかかる殺菌剤を、例えば携帯電話またはコンピュータのキーボードなどの日常物上に圧着する場合には、当該化合物は、裂け目および隙間にも浸透することとなる。これは、他の方法では到達可能ではないであろう表面が、当該殺菌剤とも接触し、その結果、病原菌が全滅する、ということを意味する。必要な曝露時間の後、例えば1分後に、このゲル化合物は、この物から完全に除去される。
【0017】
本発明にかかる有利な化合物は、25〜40重量%、好ましくは30〜35重量%のエタノールもしくはイソプロパノールまたはその混合物を含む。曝露時間が短い場合でさえ、所望の殺菌薬作用が達成されるよう、殺菌されている表面の十分な表面の濡れを確保するためには、殺菌効果のほかには、高いエタノール/イソプロパノール含有量が、特に有益である。さらに適切なアルコール成分は、他の低分子の水混和性アルコール、例えばメタノールまたは1‐プロパノールなど、である。
【0018】
当該展性のある殺菌剤の基本的なゲル化合物を作成するためには、後者は、修飾された、ホウ素濡れ(boron-wetted)ポリガラクトマンナンを含む。多糖であるポリガラクトマンナンは、例えば食品技術において、増粘およびゲル化剤のような親水コロイドとして使用される。無修飾ポリ‐ガラクトマンナンは、エタノールに可溶ではない。
【0019】
上記技術水準において知られているようなゲルクリーニング剤の場合においては、本発明にかかる殺菌剤に必要であるような、溶媒含有量の増加は、結果として不満足な粘稠度を有するゲルをもたらすことが分かっている。ホウ素含有量およびpH値次第では、その結果として生じる粘稠度は、やわらかく、かつ、粘着性のあるものであるか、または、もろく、かつ、砕けやすいものである可能性がある。この種のゲルは、もはや、細かい裂け目および隙間の奥に素早く到達し、そこでその表面を殺菌するのに必要である、必要な擬塑性流動能を有しない。
【0020】
十分にヒドロキシプロピル化されたポリガラクトマンナンの使用により、より高いアルコール含有量に対するゲルの耐容性が改善される、ということが、その後、分かった。この目的のためには、当該ポリガラクトマンナンのエーテル化レベル(ポリガラクトマンナンのアンヒドロヘキソース単位当たりのヒドロキシプロピル基の数)は、少なくとも0.3であり、好ましくは0.5〜1.5であり、特に好ましくは0.6〜1.2である。過度に高いエーテル化レベルは、ひいては、当該ゲル化合物の弾性の、望まれない低下をもたらすことが、試験により示されてきた。
【0021】
好ましい実施形態のうちの一つに従った本発明にかかる殺菌剤としての使用のための展性のある化合物は、3〜6重量%のポリガラクトマンナンを含み、かつ、6〜10のpH値で、0.1〜0.8重量%のホウ酸も含む。濡れに適したホウ素成分としては、例えば、四ホウ酸ナトリウムまたはホウ酸が挙げられる。pH値は、必要な場合には、例えばリン酸三ナトリウムなどのリン酸塩、または、炭酸ナトリウムを加えることによって調整してもよい。一方では、濡れの度合いは、当該殺菌剤の貯留性を保証するために、アルコール蒸発率が高すぎないようなレベルに設定しなければならず、また、他方では、十分な表面の濡れが生じないほど低く設定しなければならない。
【0022】
25℃にて測定される本発明にかかるこの種の化合物の粘度は、50,000〜250,000mPa・sであり、好ましくは100,000〜200,000であり、特に好ましくは120,000〜180,000mPa・sである。
【0023】
水および低分子アルコールに可溶であり、幅広いpH範囲にわたって効果的であり、加水分解安定性であり、かつ、界面活性剤に有利に適合性である物質は、原理的には、本発明にかかる展性のある殺菌剤の、主要な殺菌性および殺真菌性の活性成分として適している。当該対応する物質は、ヒトおよび動物には本質的に無害であるべきである。これは、クリーニングされている表面、特にはプラスチックおよび他のポリマー材料を攻撃するものであるべきではない。当該物質は、好ましくは生分解性である。適切な活性殺菌性成分は、例えば、第四級アンモニウム化合物、例えば、特には例えばC12=55%、C14=25%、C16=11%、C18=9%であるような、塩化ベンザルコニウム(塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム CAS68391‐01‐5)など、サッカリン酸ベンザルコニウム(benzalkonium saccharinate)、塩化ジデシルジメチルアンモニウム(didecyl dimethyl ammonium chloride)(CAS7173‐51‐5)、または、類似のものである。同様に、例えばグルコン酸クロルヘキシジンのような、クロルヘキシジンが適している。例えばホルムアルデヒドおよび1,5‐ペンタンジアールなどの、殺菌作用を有するアルデヒドは、同様に効果的であるが、その毒性のため、殺胞子剤効果が要求される特殊な塗布領域にしか使用することができない。活性殺菌性成分の割合は、1〜10重量%であり、好ましくは2〜7重量%である。
【0024】
本発明にかかる化合物は、表面の濡れをさらに改善するために、水溶性の、加水分解安定性の界面活性剤、例えば、例えばポリジメチルシロキサン‐ポリオキシアルキレンコポリマーなどの、非イオン性界面活性剤をさらに含有していてもよい。
【0025】
本発明にかかる殺菌剤の残りの重量割合は、記載したこれら構成成分のほかは、好ましくは水で補充される。
【0026】
本発明にかかる殺菌剤を、その殺菌効果について、特にMRSA(ATTC43300)に対して、規格EN1040("化学的な殺菌剤および消毒剤−基礎殺菌活性試験法および要件(フェーズ1), 1997")およびEN13697("化学的な殺菌剤および消毒剤−食物、工業、家庭、機関の分野において使用される化学的殺菌剤の殺細菌および殺真菌活性を評価するための定量的な無孔表面試験−機械的作用なしの試験法および要件(フェーズ2/ステップ2)")に従い、標準的な試験を用いて試験した。
【0027】
これらの試験により、1分および5分の両方の曝露時間について、前述の規格の要件を満足させる、100,000より多い(MRSA)病原菌の数の必要な減少がもたらされた。