特許第5738989号(P5738989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5738989バイオガスをメタンリッチのガスに転化する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738989
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】バイオガスをメタンリッチのガスに転化する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/04 20060101AFI20150604BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20150604BHJP
   C25B 1/04 20060101ALI20150604BHJP
   C25B 1/00 20060101ALI20150604BHJP
   C25B 3/04 20060101ALI20150604BHJP
   C25B 11/04 20060101ALI20150604BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20150604BHJP
   C10L 3/08 20060101ALI20150604BHJP
   C10L 3/10 20060101ALI20150604BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150604BHJP
【FI】
   C07C1/04
   C07C9/04
   C25B1/04
   C25B1/00 Z
   C25B3/04
   C25B11/04 Z
   C01B3/56
   C10L3/08
   C10L3/10
   !C07B61/00 300
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-517027(P2013-517027)
(86)(22)【出願日】2010年7月9日
(65)【公表番号】特表2013-533245(P2013-533245A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2010004189
(87)【国際公開番号】WO2012003849
(87)【国際公開日】20120112
【審査請求日】2013年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】ハルドール・トプサー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン・ジョン・ベギルド
【審査官】 井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/078256(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0029264(US,A1)
【文献】 特表2009−506213(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/012154(WO,A1)
【文献】 米国特許第04133825(US,A)
【文献】 特開昭56−002919(JP,A)
【文献】 特開昭54−014403(JP,A)
【文献】 特開昭55−082188(JP,A)
【文献】 特開昭48−078105(JP,A)
【文献】 米国特許第04092129(US,A)
【文献】 KOPYSCINSKI,J.,ET AL.,"Production of synthetic natural gas (SNG) from coal and dry biomass - A technology review from 1950 to 2009",FUEL,2010年 2月 6日,VOL.89,NO.8,PP.1763-1783
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C25B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオガスを、メタンリッチのガスに転化する方法であって、該方法が、次の工程、
− 二酸化炭素を含むバイオガスを水蒸気と混合して、二酸化炭素、メタン及び水蒸気を含む混合物を形成する工程、
− 二酸化炭素、メタン及び水蒸気を含む該混合物を、高温固体酸化物電解槽セルユニット中で電気分解して、主として水素及び一酸化炭素を含むガスを得る工程、
− 水素及び一酸化炭素を含む該ガス中の水素及び一酸化炭素を、一つ又はより多くのメタン化段階において触媒的にメタンに転化し、メタンリッチのガスを得る工程、
を含み、
前記二酸化炭素、バイオガス及び水蒸気を含む混合物が、0.1〜500ppmの硫化物化合物も含み、
その際、前記水素及び一酸化炭素を含むガスが、電気分解の後かつメタン化前に脱硫される、上記の方法。
【請求項2】
前記一つ又はより多くのメタン化段階が、断熱メタン化、その後の非断熱メタン化を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二酸化炭素、バイオガス及び水蒸気を含む混合物が、0.1〜200ppmの硫化物化合物も含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記バイオガス、二酸化炭素及び水蒸気を含む混合物が、次の反応に従って共電気分解される、請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
CO=CO+0.5O (1)
O=H+0.5O (2)
【請求項5】
前記高温固体酸化物型電解槽セルユニットが、制限された水蒸気改質活性を有するか、又は水蒸気改質活性を有さない燃料電極材料を含む、請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記燃料電極材料がニッケルを含まないか、又は前記燃料電極材料が全てセラミックである、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記燃料電極材料が、LSCM、Cu、CeO、チタン酸塩及びそれらの組合せからなる群から選択される化合物又は成分を含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記燃料電極材料が、10ミクロン以下の厚さを有するNi−YSZ電極、SYSZ電極又はNi−SSZ電極を含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記高温固体酸化物形電解槽セルユニットが熱的中性(thermoneutrally)に稼働する、請求項1〜のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記硫化物が、金属酸化物吸収材への吸収によって水素リッチガスから除去される、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記金属酸化物吸収材が、酸化亜鉛である及び/又は銅をベースとする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
一酸化炭素及び水素が、次の反応に従うメタン化工程においてメタンに転化される、請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
CO+3H=CH+HO (3)
【請求項13】
前記一つ又はより多くのメタン化工程が、周期律表の第6B族、第8族及びそれらの組合せからなる群から選択される金属を含む触媒によって触媒作用を受ける、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
バイオガスをメタンリッチのガスに転化するためのシステムであって、
− 任意に、バイオマスからバイオガスを形成させるための蒸解装置、
− 高温固体酸化物形電解槽セルユニットであって、その固体酸化物形電解槽セルユニットの下流に配置される一つ又はより多くのメタン化反応器と直列であり、その高温酸化物形解槽セルユニットのすぐ下流のメタン化反応器が、少なくとも一つの断熱反応器及びその少なくとも一つの断熱反応器の下流に配置される非断熱メタン化反応器である、該ユニット、
− プロセスガスの温度及び圧力を調整するための手段、
を含む、上記のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオガスをメタンリッチのガスに転化する方法に関する。より詳細には、本発明は、高温SOEC電解及びSNG技術を用いて、バイオガスを代替天然ガス(SNG)に改良(up−grading)する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスの転化から得られるバイオガスは、再生可能なエネルギーからの潜在的なエネルギー源を代表しており、地球規模での総エネルギー消費の一定割合(a percentage)に及んでいる。車両に使用される熱電気複合利用(CHP)及び圧縮メタン(NG)を含む、いくつかの最終使用の選択肢がある。しかしながら、1Nm毎に要する費用は明らかに法外である。これらの選択肢の注意は、バイオガス中の二酸化炭素の大部分を除去することによって、バイオガスをパイプライン供給品質に改良することに向けられてきた。
【0003】
バイオガスは、例えば、地方自治体の廃棄物、汚水、草及び家畜排泄物から得ることができ、そして、グリーンエネルギー目的のための源として適している。それは、典型的に、60%メタン及び40%COからなり、そして、典型的に、約1,000ppmの量の硫黄を含む。さらに、バイオガス中の硫黄含有量は、現在、生物学的除去又はその他の方法で減少されている。
【0004】
バイオガスをエネルギーに転化するための現在の方法の例は、以下の開示で要約する。これらの方法は、主として、エネルギー生成のための燃料電池中で脱硫したバイオガスのメタン含有分を利用する。その他の方法は、バイオガスから得られたメタンを、燃料電池中で得られた水素を利用するための合成ガスへ改質することを含む。
【0005】
高メタン含有量を有するガス状又はガス化可能な燃料、例えば、様々な産業プロセスの不合格品からの天然ガス又はバイオガスの、軽質炭化水素、主として、エチレン及びエタンへの転化が知られている。
【0006】
国際特許出願第010000049号(特許文献1)は、事前の脱硫及びその他の汚染物質の除去を伴うか又は伴わない、そのような燃料を、ペロブスカイト型構造を有するか、又はナノ構造化される混合酸化物又は金属酸化物をベースとする特別な電極を備えた固体酸化物形燃料電池(SOFC)中で、メタンの酸化カップリングによってC炭化水素に転化する方法を開示している。
【0007】
米国特許出願第2007029264号(特許文献2)は、メタンを含むバイオガスの生成を開示している。バイオガスは、接触改質装置ユニットに供給されて、合成ガスが形成され、水蒸気も供給することができ、そして、水蒸気とメタンとの割合は、合成ガスが、水素リッチであるか、あるいは、一酸化炭素リッチであるように調整可能である。水蒸気とバイオガスとの割合を調整することにより、市場の条件に従って調整されるべきプロセスの出力が可能となる。合成ガスが水素リッチである場合、該ガスは電気を生成するために燃料電池に供給でき、一方、該ガスが一酸化炭素リッチである場合、そのガスは、フィッシャー−トロプシュ合成反応器中で液体炭化水素を生成させるのに使用できる
特許出願第2005330334号(特許文献3)は、有機廃棄物から得られるバイオガスを使用し、そして硫化水素を除去する脱硫器、種々の不純物を除去する精製塔、メタンガスを濃縮するメタンガス濃縮装置、及びガスタンクを備えた燃料ガス供給装置を開示しており、該装置において、得られたガスは、複数の燃料電池発電装置に供給され、そしてガスタンクには、バイオガスの供給不足を、補助燃料ガスで補償するための補助的な燃料ガス供給回路が設けられる。
【0008】
特許出願第2003277779号(特許文献4)は、高い効率で除去される硫黄化合物を有するバイオガスが、固体酸化物形電解質燃料電池の燃料として使用される方法を開示している。有機物質をメタン発酵に供することによって得られる、硫黄化合物を含むバイオガスは脱硫器へ送られる。鉄ベースの吸着材を含む吸着材がその脱硫器中で使用され、その結果、硫黄化合物中の硫化水素がそこで脱硫される。ゼオライトベースの吸着剤を含む吸収材が高度脱硫ユニット内で使用され、それにより、硫化メチル及びメチルメルカプタンのような、鉄ベースの脱硫器では除去されなかった硫黄化合物がそこで脱硫される。硫黄化合物を有するバイオガスは、完全に脱硫されて、燃料電池に供給される。燃料電池の性能は、そのように除去された硫黄化合物を有するバイオガスを使用することによって維持することができる。
【0009】
ドイツ国特許出願第10113879号(特許文献5)は、農業から生ずる有機廃棄物の発酵、下水処理プロセス、食品加工又はこの目的のために成長させた植物の発酵によって生成するバイオガスが、特に、MCFC溶融炭酸塩形燃料電池によって電気エネルギーに転化される、エネルギー生成システムを開示している。エネルギー生成システムは、発酵タンク、ガスホルダー、統合改質ユニット、ガスフィルター、ガスミキサー、熱交換器及び燃料電池を含む。微量の成分を含むのに加えて、バイオガスは、メタン及び二酸化炭素を含む。CO含有量は、好ましくは25〜50体積%である。アンモニア含有量は、好ましくは10〜30体積%であり、バイオガス生成残滓から誘導される。アンモニアガスは、バイオガス不純物スラッジをストリッピングすることによって生成する。燃料電池中でのその使用の前に、有害な微量成分、特に硫化水素をガスから除去し、その後に統合改質ユニットを通過させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許出願第010000049号
【特許文献2】米国特許出願第2007029264号
【特許文献3】特許出願第2005330334号
【特許文献4】特許出願第2003277779号
【特許文献5】ドイツ国特許出願第10113879号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の方法は、主として、バイオガス中のメタンの利用及びメタンからの硫黄の除去を取り扱うものである。バイオガスは、約60%メタンを含有し、そのメタンは、二酸化炭素よりもはるかに強力な温室効果を有するため、温室効果に対して多大に関与するものの代表である。
【0012】
したがって、バイオガスは、有用なエネルギーサービスを提供する一方で、バイオガスは最終的に二酸化炭素に転化されるため、バイオガスを処理してパイプライン供給品質を得、そして低減された温室効果への関与を有するプロセスの必要性がある。
【0013】
本発明の目的は、バイオガスを、パイプラインにおける天然ガスに追加するか又は天然ガスと置き換えるのに適した、メタンリッチのガスに転化することによって、バイオガスをパイプライン供給品質へ改良(upgrade)する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、バイオガスをメタンリッチのガスに転化するための方法であって、
− 二酸化炭素を含むバイオガスを水蒸気と混合して、二酸化炭素、バイオガス及び水蒸気を含む混合物を形成する工程、
− 二酸化炭素、バイオガス及び水蒸気を含む該混合物を、高温固体酸化物電解槽セルユニット中で電気分解し、水素及び一酸化炭素を含むガスを得る工程、
− 水素及び一酸化炭素を含む該ガス中の水素及び一酸化炭素を、一つ又はより多くのメタン化段階において触媒的にメタンに転化し、メタンリッチのガスを得る工程、
を含む、上記の方法を提供することによって達成される。
【0015】
本発明はまた、バイオガスをメタンリッチのガスに転化するためのシステムも含み、該システムは、
− 任意に、バイオマスからのバイオガスの形成のための蒸解装置又は発酵槽、
− 高温固体酸化物形電解槽セルユニットであって、その固体電解槽セルユニットの下流に配置される一つ又はより多くのメタン化反応器と直列であり、その高温酸化物形解槽セルユニットのすぐ下流のメタン化反応器は、少なくとも一つの断熱性反応器及びその少なくとも一つの断熱反応器の下流に配置される非断熱性メタン化反応器である、該ユニット、
− プロセスガスの温度を、該固体電解槽セルユニット及びメタン化反応器の前後、及びそれらの間で調整するための手段、
を含む。
【0016】
本発明の方法は、次の特徴を有する。
1. バイオガスをメタンリッチのガスに転化するための方法は、次の工程を含む。
− 二酸化炭素を含むバイオガスを水蒸気と混合して、二酸化炭素、メタン及び水蒸気を含む混合物を形成する工程、
− 二酸化炭素、メタン及び水蒸気を含む該混合物を、高温固体酸化物形電解槽セルユニット中で電気分解し、主として水素及び一酸化炭素を含むガスを得る工程、
− 水素及び一酸化炭素を含む該ガス中の水素及び一酸化炭素を、一つ又はより多くのメタン化段階で触媒的にメタンに転化し、メタンリッチのガスを得る工程。
2. 上記の二酸化炭素、バイオガス及び水蒸気を含む混合物が、電気分解の間存在する硫化物化合物も含む、上記の特徴1に記載の方法。
3. 上記の二酸化炭素、バイオガス及び水蒸気を含む混合物が、約0.1〜500ppmの硫化物化合物も含む、上記の特徴1又は2に記載の方法。
4. 上記の水素及び一酸化炭素を含むガスが、電気分解後かつメタン化前に脱硫される、上記の特徴1〜3のいずれか一つに記載の方法。
5. 上記のバイオガス、二酸化炭素及び水蒸気を含む混合物が、次の反応に従って共電気分解される、上記の1〜4のいずれか一つに記載の方法。
CO=CO+0.5O (1)
O=H+0.5O (2)
6. 上記の高温固体酸化物形電解槽セルユニットが、制限された水蒸気改質活性を有するか又は水蒸気改質活性を有さない燃料電極材料を含む、上記の特徴1〜5のいずれか一つに記載の方法。
7. 上記の燃料電極材料がニッケルを含まないか、又は該燃料電極材料が全てセラミックである、上記の特徴6に記載の方法。
8. 上記の燃料電極材料が、LSCM、Cu、CeO、チタン酸塩及びそれらの組合せからなる群から選択される化合物又は成分を含む、上記の特徴6に記載の方法。
9. 上記の燃料電極材料が、10ミクロン以下の厚さを有するNi−YSZ、SYSZ又はNi−SSZ電極を含む、請求項6に記載の方法。
10. 上記の高温固体酸化物形電解槽セルユニットが熱的中性に(thermoneutrally)運転される、上記の特徴1〜9のいずれか一つに記載の方法。
11. 上記の硫化物が、金属酸化物吸収材への吸収によって水素リッチガスから除去される、上記の特徴2〜4のいずれか一つに記載の方法。
12. 上記の金属酸化物吸収材が、酸化亜鉛である及び/又は銅をベースとする、上記の特徴11に記載の方法。
13. 一酸化炭素及び水素が、次の反応に従うメタン化工程においてメタンに転化される、上記の特徴1〜12のいずれか一つに記載の方法。
CO+3H=CH+HO (3)
CO+4H=CH+2HO (4)
14. 上記の一つ又はより多くのメタン化段階が、周期律表の第6B族、第8族及びそれらの組合せからなる群から選択される金属を含む触媒によって触媒作用を受ける、上記の特徴1〜13のいずれか一つに記載の方法。好ましくは、該触媒は、第8族又は第8族と第6B族との組み合わせから選択される、例えば、ニッケルベースの触媒である。Haldor Topsoe A/Sより、市場から入手可能な触媒、例えばMCR及びPK7(登録商標)が適している。
15. 上記の二酸化炭素を含むバイオガスがメタンを含む、上記の特徴1〜14に記載の方法。典型的に、該バイオガスは、60モル%までのメタン及び40モル%二酸化炭素を含むことができる。バイオガスは、例えば、蒸解装置中でのバイオマスの嫌気性蒸解によって得られる。
16. 上記の一つ又はより多くのメタン化段階が、断熱メタン化、その後の非断熱メタン化を含む、上記の特徴1〜15のいずれか一つに記載の方法。断熱メタン化は断熱反応器中で遂行され、そして非断熱メタン化は、温度が制御される、例えば、沸騰水型反応器中で遂行される。
17. バイオガスをメタンリッチのガスに転化するためのシステムであって、該システムは、
− 任意に、バイオマスからのバイオガスの形成のための蒸解装置、
− 高温固体酸化物形電解槽セルユニットであって、その高温固体電解槽セルユニットの下流に配置される一つ又はより多くのメタン化反応器と直列であり、その高温固体酸化物形電解槽セルユニットのすぐ下流のメタン化反応器が、少なくとも一つの断熱反応器及びその少なくとも一つの断熱反応器の下流に配置される非断熱メタン化反応器である、上記のユニット、
− プロセスガスの温度及び圧力を、該固体電解槽セルユニット及びメタン化反応器の前後、及びそれらの間で調整するための手段、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の方法を例示する図である。
図2図2は、本発明の一実施態様における、スタックへの水素の提供を示す図である。
図3図3は、本発明の別の実施形態における、スタックへの水素の提供を示す図である。
図4図4は、本発明の更に別の実施形態における、スタックへの水素の提供を示す図である。
【0018】
高温固体酸化物形電解槽セルユニットは、一つ又はより多くの固体酸化物形電解槽セルスタックであって、複数の固体酸化物形電解槽セル及びスタックを運転するのに必要な手段を有する該スタックを有するものと定義される。
【0019】
二酸化炭素及び水の高温SOEC電気分解は、典型的に、500〜1,000℃の温度で起こる。
【0020】
SOECスタックにおいて、バイオガス中に存在する二酸化炭素及び水蒸気の共電気分解は、次の反応(1)及び(2)のそれぞれに従って起こる。
CO=CO+0.5O (1)
O=H+0.5O (2)
1モルのCOの電気分解により、1モルの一酸化炭素及び1/2モルの酸素が結果として形成される。1モルのHOの電気分解により、1モルの一酸化炭素及び1/2モルの酸素が結果として形成される。メタン化に関して、化学量論量の水素及び一酸化炭素を含むガスが得られる。
【0021】
本発明の方法のための運転圧力は、2バールゲージに等しいか又はそれより高い。最大圧力は、パイプライン圧力に対応して80バールゲージである。好ましくは、方法の圧力は、2〜20バールゲージであり、最も好ましくは、圧力は4〜8バールゲージである。
【0022】
電気分解の間に生じる酸素が、バイオマスをガス化するための蒸解装置中で使用するのに適しているため、SOECユニットが、バイオマス蒸解装置の位置に配置されるのが有利である。
【0023】
使用されるメタン化装置が沸騰水型反応器である場合、生成する水蒸気が電気分解工程で使用できるため、さらに有利である。
【0024】
本発明の方法によって得られる生成物は、メタンリッチのガスである。生成物ガスは、少なくとも95%のメタンを含む。
【0025】
反応(1)及び(2)は、強い吸熱性であるが、電気分解は、次の等式(3)により、二つの反応のそれぞれの電圧を調整することによって熱中性的(thermoneutrally)に運転することができる。
【0026】
【数1】
【0027】
しかしながら、ニッケルを含む従来の燃料電極を用いる運転は、吸熱反応である次の等式(4)によるスタック内での内部水蒸気改質のための活性に起因したスタックの考慮すべき冷却を引き起こすことになる。
【0028】
CH+HO=CO+3H (4)
スタックの考慮すべき冷却により、スタックの運転の間の許容できない性能となる結果となる。さらに、メタン含有量が低減するのは望ましくなく、これは電気の形態でこの吸熱プロセスに熱を供給することも必要である。さらに、次のメタン化段階は発熱性であるため、熱も過剰に放出されることになるであろう。
【0029】
この問題は、非常に制限された改質活性か、又は改質活性のない燃料電極を用いることにより改質活性を低減することによって解決される。そのような燃料電極の例は、ニッケルを含まないか、又は制限された量のニッケルを含む電極か、あるいは全てセラミックの燃料電極である。
【0030】
燃料電極材料の例は、
− LSCM、Cu、CeO、チタン酸塩及びそれらの組合せからなる群から選択される化合物又は成分を含む燃料電極材料。
− 10ミクロン以下の厚さを有する、ニッケル及びイットリア安定化ジルコニア(Ni−YSZ)電極、ストロンチウム及びイットリア安定化ジルコニア(SYSZ)電極又はニッケル及びストロンチウム安定化ジルコニア(Ni−SSZ)電極を含む燃料電極材料。
【0031】
二酸化炭素を含むバイオガスはまた、例えば、硫化水素、HSの形態の硫化物化合物も含み得る。硫化物の存在は、燃料電極中に存在するニッケルに化学吸着するため、望ましい。これは、水蒸気改質のための燃料電極の活性の著しい減少を結果として招く。
【0032】
二酸化炭素を含むバイオガスは、バイオマスからのバイオガス中にすでに存在し得るか、又は二酸化炭素を含むバイオガスに意図的に加えることができる硫化物化合物を含み得る。硫化物化合物が0.1〜200ppmの量で存在することが好ましい。というのも、これにより、ZnO床による調節が可能となるからである。硫化物化合物が1ppmの量で存在することがより好ましい。
【0033】
硫化水素の量は、水蒸気改質活性を著しく低減することと、その一方で、同時に、電気分解のための電気化学活性を低減しないこととの間の妥協である。
【0034】
例えば、250〜450℃においてZnOにわたり平衡を保つことのできる必要量のHS(0.1〜500ppm)を提供するために、HSを形成するために、SOECユニットに入る前に、水素もまた二酸化炭素及び硫黄を含むバイオガスに添加することもできる。電気分解後で、かつ断熱性のメタン化の前に、得られた水素及び一酸化炭素を含むガスは、必要に応じて、例えば、ZnO床中で、任意に、Cu保護床中で250〜350℃で運転して最終的に脱硫される。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態において、SOECスタックからの、主として水素及び一酸化炭素を含む(生成物)ガスの再循環を用いて、SOECスタックに水素が提供される。このガスは二つの冷却の流れに分割される。その少量部分は、原動力として水蒸気(反応物)を用いるエジェクターによって再循環される。
【0036】
あるいはまた、主として水素及び一酸化炭素を含むガスは、それを二酸化炭素、メタン及び水蒸気を含む混合物へ添加することによってSOECに再循環され、任意に、その組み合わされた混合物及び再循環ガスは、それらをSOECに進入させる前に加熱される。
【0037】
本発明の別の実施形態において、上記の反応(2)により水蒸気から水素を生成する小型の追加のSOECスタックを用いることによって、水素がSOECスタック(主要なSOECスタック)に提供される。水蒸気(反応物)の流れは、熱交換器中での予熱後、二つの流れに分割される。小さい流れは、別の熱交換器で入口温度、典型的に、流れの一部が水素へ電気分解されるSOECスタックの約800℃に、さらに予熱される。水素を含む流れは、その次に主要なSOECスタックへ送られる。
【0038】
硫化水素含有量の均衡を、例えば、340℃で保つことにより、1ppmの硫化水素含有量が結果として得られ、これは燃料電極中のニッケル表面の90%が硫黄で覆われることに相当する。ニッケル表面の90〜95%が硫黄で覆われているのが好ましい。というのも、これにより、水蒸気改質と、電気化学活性との間に良好な折衷状態が得られるからである。この形態はまた、シータSとして表すことができる:
θS=0.90−0.95
本発明の方法の実施形態は、図1に図解されている。
【0039】
硫化物化合物もまた含有し得る、二酸化炭素及びメタンを含むバイオガス1は、圧縮機2により、所望の運転圧力に圧縮され、そして熱交換器3中で予熱される。水4は、ポンプ5によって圧縮され、熱交換器6中で蒸発及び予熱され、そしてその次に、予熱され、圧縮されたバイオガスと混合される。バイオガスと水蒸気との組み合わされた流れ7は、その次に、脱硫器8中で所望の硫化物化合物含有量まで脱硫される。硫黄含有量の所望レベルは、脱硫器の運転温度を調整することによって得られる。その混合物は、熱交換器8中で、固体酸化物形電解セル(SOEC)スタック(複数)10の必要な入口温度、典型的に、約800℃にさらに予熱される。SOECスタック10では、反応(1)及び(2)による、バイオガス中に存在する二酸化炭素と、流れ2からの水蒸気との共電気分解が起こる。
【0040】
CO=CO+0.5O (1)
O=H+0.5O (2)
SOECスタックは、約1.33Vで、熱的中性(thermoneutral)に近い状態で運転することができる。排出ガス12は、熱交換器13中で、例えば、300℃に冷却され、そして硫化物が存在する場合には、その後水素及び一酸化炭素を含むガス14は、任意にCu保護を有するZnO床15中で脱硫され、その後、水素と一酸化炭素とをメタンの量が増大したガス17に転化するために、断熱メタン化反応器16へ送られる。少なくとも一つに断熱反応器を用いて、一つ又はより多くの追加のメタン化段階を遂行してもよい。
【0041】
メタンの量が増大したガス17の中に存在するメタンの量は、温度制御されたメタン化装置19、例えば、沸騰水型反応器、におけるメタン化段階を含むことによってさらに増大する。その反応器から得られたガス20は、メタン及び水、そして少量の水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を含む。熱交換器20中でガスを冷却した後に水22が除去されて、代替天然ガス(SNG)として適しており、そしてパイプライン供給のために圧縮されるメタンリッチのガス23が得られる。運転圧力は、典型的に約6バールgであり、そして最後のメタン化装置の温度、典型的に約280℃は、メタン含有量及び残存する一酸化炭素及び二酸化炭素を関して要求されるパイプライン供給品質に合わせるよう調整される。別の酸素リッチ流れ24もまた、プラントにおけるSOEC中で生成され、そして酸素消費工程のために送ることができる。
【0042】
反応物の温度又は圧力の中間調節は、いくつかの又は全ての反応段階の間で、それぞれの段階における最適な反応条件を確保するために実施することができる。
【0043】
流れ7の中の水蒸気は、メタン化装置19中かつ熱交換器13、18及び21中で利用可能な熱を利用することによって、完全に又は部分的に生成される。この熱はまた、バイオガス1、及びSOECへの供給予熱器9の予熱のために使用することもできる。9における最終的な温度調整は、電気又は高温熱源を使って実施することができる。
【0044】
図2で示される本発明の別の実施形態において、反応(2)に従って水蒸気から水素を生成する小型のSOECスタックを使って、SOECスタックに水素が提供される。熱交換器で予熱された後に、水蒸気の流れは二つの流れに分割される。少量の流れ24は、熱交換器25中でSOECスタック26の入口温度、典型的に、800℃に予熱され、そして該スタックでは、水蒸気の一部が水素へ電気分解される。水素を含む流れ27は、次にSOECスタック10へ送られる。
【0045】
図3で示される本発明の別の実施形態において、SOECスタック10からの生成物ガスの再循環を使って、SOECスタックに水素が提供される。流れ12は、冷却器13の後で二つの流れ14及び18に分割される。少量部分28は、圧縮機30の入口温度にさらに冷却され、そして流れ31としてSOECスタック予熱器の上流へ戻される。
【0046】
図4に示される本発明のさらに別の実施形態において、SOECスタック10からの生成物ガスの再循環を使って、SOECスタックに水素が提供される。流れ12は、冷却器13の後に二つの流れ14及び32に分割される。駆動力として熱交換器6から生ずる水蒸気を使うエジェクター33を使って少量部分32が再循環される。
【0047】
図3図4において、水素は、0.1〜10モル%、好ましくは約1モル%の量でSOECスタックに供給される。この水素の含有量は、式(5)に従ってニッケル含有燃料電極のバルク硫化(bulk suphidation)を阻止する。
【0048】
Ni+HS=Ni+2H (5)
この反応は、Niが789℃で溶融するため、非常に有害である。
【実施例】
【0049】

この例は、図1に示した本発明方法を示す。表1は、図1における様々な流れの運転条件及びガスの組成を示している。
【0050】
【表1】
図1
図2
図3
図4