特許第5738990号(P5738990)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738990
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】転動ノイズを減少させたトレッド
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20150604BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   B60C11/13 B
   B60C11/03 100C
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-517263(P2013-517263)
(86)(22)【出願日】2011年6月29日
(65)【公表番号】特表2013-529576(P2013-529576A)
(43)【公表日】2013年7月22日
(86)【国際出願番号】EP2011060883
(87)【国際公開番号】WO2012001031
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年4月23日
(31)【優先権主張番号】1055192
(32)【優先日】2010年6月29日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512068547
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(73)【特許権者】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】ブルナ アレクシス
(72)【発明者】
【氏名】フーシェ ベノワ
(72)【発明者】
【氏名】マルタン ディディエ ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】クァンティーヌ ベンジャミン
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−143900(JP,A)
【文献】 特開2004−058883(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102006031779(DE,A1)
【文献】 国際公開第2009/084666(WO,A1)
【文献】 特開2007−153338(JP,A)
【文献】 特開昭56−142703(JP,A)
【文献】 実開昭62−049402(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0170644(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/13
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏み面が路面に接触するようになったトレッド(1)を有する重車両アクスル用のタイヤであって、前記トレッドは、中間リブ(3)及び2つの縁部リブ(4,5)を画定する複数の円周方向溝(43,33,35)を有し、前記中間リブは、2つの円周方向溝に開口した横方向溝を備えておらず、各リブは、最小幅Lnを有し、各リブは、2つの側壁及び路面に接触するようになった接触フェースを有し、各円周方向溝(43,33,35)は、問題の円周方向溝の断面を部分的に遮るために該円周方向溝を画定する少なくとも1つの側壁に設けられた突出部として形成された複数の突起(46,36,56)を有する、タイヤであって、前記トレッドに関し、
・半閉鎖切欠き(37,37′,37″,57)が各突起(46,36,56)に向いた状態で、問題の前記溝を画定する隣接のリブに設けられており、前記半閉鎖切欠きは、前記隣接のリブの最小幅Lnのせいぜい60%に等しい軸方向長さLaを有し、前記溝の幅Lrにせいぜい等しい幅Leを備えた前記半閉鎖切欠きは、前記切欠きが相互作用する前記突起の主方向と少なくとも10°に等しい平均角度Bをなすよう差し向けられており、
・各突起(46,36,56)は、該突起が形成された前記溝の断面を該断面の表面の少なくとも30%且つせいぜい75%にわたって閉鎖し、
・特に水で覆われた路面上を走行しているときに流体の通過を可能にするために前記突起(46,36,56)と該突起が相互作用するよう設計された前記半閉鎖切欠き(37,37′,37″,57)を画定する前記壁との間に機能的隙間(J1,J2)が設けられている、タイヤ。
【請求項2】
前記タイヤのトレッドは、中間リブ(3)及び2つの縁部リブ(4,5)を画定すると共に円周方向に一連の山部及び谷部を有するジグザグ形態で複数の円周方向溝(43,33,35)を有し、各溝の前記突起(46,36,56)は、問題の前記円周方向溝の断面を部分的に遮るために前記山部のところに形成され、他方、前記切欠きは、前記谷部中に通じるよう形成されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記突起(46,36,56)は、前記溝内の水の流れの作用を受けても撓むことがないようにするのに適した寸法を有する、請求項1又は請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
各溝についての突起(46,36,56)の数は、少なくとも4つの突起及び少なくとも4つの半閉鎖切欠きが路面と接触関係をなして永続的に存在するようなものである、請求項1〜のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項5】
各突起(46,36,56)と該突起が相互作用する前記半閉鎖切欠きの前記壁との間の前記機能的隙間は合計で、これら突起が形成されている前記溝の幅Lrに少なくとも等しい、請求項1〜のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重車両用のタイヤトレッド、特に駆動アクスルに取り付けられるよう設計されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
重車両用のタイヤは、性能、特にグリップ性能及び操舵性能(所与の軌道を辿る能力)の面で幾つかの要件を満たさなければならない。この目的のため、タイヤトレッドに全体として円周方向の向きの複数の溝を設けることが通例であり、これら溝は、複数の連続リブを画定する。これら溝は、雨天において路面を覆っている水を排出するチャネルとしての役目と或る特定の量の水を少なくとも一時的に貯蔵する有効容積部としての役目の両方を果たす。車両の駆動アクスルに取り付けられるタイヤの場合、これらタイヤは、タイヤを介して車両は走行している路面に伝達することができるということが必要不可欠である駆動トルクをも受ける。したがって、円周方向連続性を有するトレッドパターン設計を提供することが慣例であり、これは、円周方向における連続リブの存在によって達成される。
【0003】
タイヤの技術的性能の面で満たされるべき要件のうちのもう1つは、このタイヤが走行時に生じるノイズ、特に、路面との接触中、溝内部の共鳴ノイズ(騒音)に関する。
【0004】
この性能は、トルクなし(“コーストバイ(coast-by)”)で走行するとき及びトルクあり(“ドライブバイ(drive-by)”)で走行する場合に放出されるノイズを測定する標準試験において定められる。これら試験は、車両が7.5mの距離のところを通る際の騒音レベルを測定する。これら試験は、以下の文書、即ち、命令2001/43(CE)、ISO13325(2003)、ISO362‐1(2007)、ISO362‐1(2007)COR1(2009)、ISO362‐2(2009)に記載されている。
【0005】
公知のように(特に、国際公開第2009/084666(A)号パンフレットを参照されたい)、溝の底部又は溝の側壁によって支持された複数のスタッド又は突起を備えた突起を円周方向溝に設けることによって円周方向溝内の共鳴ノイズを減少させることが可能である。しかしながら、ロードノイズを減少させるのに十分に効果があるようにするためには、これらスタッドは、これら溝の断面全体又はこれら断面の少なくとも大部分を占めなければならない。このようにする際、排水性能が著しく低下することは明らかである。
【0006】
同一トレッド設計においてこれら2つの性能を両立させることは、本発明が解決しようとする課題である。
【0007】
国際公開第2009/084666(A)号パンフレットは、トレッドが全体として円周方向の向きの複数の溝及び横方向の向きの複数の溝を有するタイヤを示しており、これら溝は、材料のブロックを画定する。ロードノイズを減衰させるため、主として横方向溝の断面を閉鎖するよう設計された複数の突起を或る特定の円周方向溝に配置する措置が取られている。各突起は、横方向溝と対向して配置される。
【0008】
重車両用タイヤに利用されているこの種のトレッド設計は、良好な耐摩耗性と両立しない。というのは、かかるトレッド設計により、不規則な摩耗、即ち、タイヤの踏み面(トレッド表面)全体にわたって一様ではなく且つ規則的ではない摩耗を生じさせる場合のあるブロックが存在するようになるからである。
【0009】
定義
【0010】
切込みは、路面に接触したときに閉じるよう設計された切欠きである。
【0011】
ブロックは、トレッドに形成されていて、中空部又は溝によって画定されると共に側壁及び路面に接触するよう設計された接触フェースを有する凸状要素である。
【0012】
本明細書において「半径方向」という用語は、タイヤの回転軸線に垂直な方向を意味している(この方向は、トレッドの厚さの方向に一致している)。
【0013】
「軸方向又は横方向」という用語は、タイヤの回転軸線に平行な方向を意味している。
【0014】
「円周方向」という用語は、軸方向と半径方向の両方向に垂直な方向を意味している。
【0015】
「外側に向かって軸方向」という用語は、タイヤの内部キャビティの外側の方へ差し向けられた方向を意味している。
【0016】
「赤道面」という用語は、回転軸線に垂直であり且つ軸方向最も外側に位置するタイヤの箇所を通る平面を意味しており、この赤道面は、事実上、タイヤを2つの実質的に等しい半部に分割している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第2009/084666(A)号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、良好なロードノイズ性能とそのトレッドの全体にわたる均一の摩耗特性の両方を有する重車両に取り付けられるタイヤを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、本発明の要旨は、踏み面が路面に接触するようになったトレッドを有する重車両アクスル用のタイヤであって、トレッドは、中間リブ及び2つの縁部リブを画定する複数の円周方向溝を有し、各リブは、最小幅Lnを有し、各リブは、2つの側壁及び路面に接触するようになった接触フェースを有し、各円周方向溝は、問題の円周方向溝の断面を部分的に遮るためにこの円周方向溝を画定する少なくとも1つの側壁に設けられた突出部として形成された複数の突起を有する形式のタイヤにある。このトレッドは、
半閉鎖切欠きが各突起に向いた状態で、問題の前記溝を画定する隣接のリブに設けられており、半閉鎖切欠きは、隣接のリブの最小幅Lnのせいぜい60%に等しい軸方向長さLaを有し、溝の幅Lrにせいぜい等しい幅Leを備えた半閉鎖切欠きは、切欠きが相互作用する突起の主方向と少なくとも10°に等しい平均角度Bをなすよう差し向けられており、
各突起は、この突起が形成された溝の断面をこの断面の表面の少なくとも30%且つせいぜい75%にわたって閉鎖し、
特に水で覆われた路面上を走行しているときに流体の通過を可能にするために突起とこの突起が相互作用するよう設計された半閉鎖切欠きを画定する壁との間に機能的隙間が設けられていることを特徴とする。
【0020】
この組み合わせにより、溝を部分的に塞ぐスタッドの存在により断面の減少と共鳴器としての役目と水の貯蔵要素としての役目の両方を果たす容積部を組み合わせることによって、路面と接触関係をなして通る際に溝内に生じる共鳴ノイズを減少させることが可能である。また、各突起がこれに向いて配置される切欠きの平均の向きとは異なる平均向きを有すること及びこの突起がそれ自体と切欠きの壁との間に十分な通路を残すことが必要不可欠である。切欠きの長さは、これが形成されているリブの剛性を過剰に損なうことがないようにするよう定められている。さらに、各切欠きの容積は、切欠きが通じる溝内を流れる水の少なくとも一部の貯蔵に適した容積を与えるよう定められる。したがって、それと同時に、空気の圧力を受けただけでは撓む又は曲がることのないようにするのに適した数の突起を備えた各溝の部分的閉鎖と容積が或る特定の共鳴周波数を抑制するのに適した共鳴器の役目を果たす一種のキャビティの存在を両方とも組み合わせることによって各溝内で生じるノイズを減少させることが良い。
【0021】
好ましくは、中間リブは、2つの円周方向溝に開口した横方向溝を備えていない。
【0022】
好ましくは、各突起は、この突起が形成された溝の断面をこの断面の表面の少なくとも50%且つせいぜい75%、さらにより好ましくは65%〜75%(両端の値を含む)にわたって閉鎖する。75%を超えると、水で覆われた路面上を走行しているときに溝内の液体の流れの減少率が高すぎる。
【0023】
好ましくは、本発明のタイヤのトレッドは、中間リブ及び2つの縁部リブを画定すると共に円周方向に一連の山部及び谷部を有するジグザグ形態で複数の円周方向溝を有し、各溝の突起は、問題の円周方向溝の断面を部分的に遮るために山部のところに形成され、他方、切欠きは、谷部中に通じるよう形成される。
【0024】
突起は、流れを半閉鎖切欠きの方へ差し向けるために溝内の水の流れの作用を受けても撓むことがないようにするのに適した寸法を有するのが有利である。
【0025】
好ましくは、各溝についての突起の数は、少なくとも4つの突起及び少なくとも4つの半閉鎖切欠きが路面と接触関係をなして永続的に存在するようなものである。
【0026】
好ましくは、各突起とこの突起が相互作用する半閉鎖切欠きの壁との間の機能的隙間は合計で、これら突起が形成されている溝の幅Lrに少なくとも等しい。「合計で」という表現は、突起の各側の隙間の合計であると理解されるべきである。
【0027】
有利には、突起は、水が溝内を流れているときに、水により及ぼされる圧力の影響を受けて引っ込み又は撓むことがないようにするのに適した剛性を有する。このように、又、各突起及びこれに向いたリブとの間の機能的隙間により、液体の流れを半閉鎖切欠きの方向に逸らすことが可能であり、この半閉鎖切欠きは、所与の量の液体を一時的に貯蔵する一種のリザーバを形成する。突起の存在により円周方向溝内を流れるのが阻止されるのは、この同じ量の液体である。
【0028】
好ましくは、各突起は、溝の底部と新品状態における踏み面との間に延び、この突起のベースは、傾斜した前側隆起部を生じさせるために同じ突起の最も外側の部分よりも同一リブを画定する反対側のリブの壁の方に近い。各突起のベースの外方延長部として、踏み面まで次第に減少する前に、一定の長さの第1の部分が設けられるのが良い。各突起のベースLpiの長さは、この突起が形成されている溝の幅Lrの少なくとも60%に等しく、突起の最も外側の部分の軸方向長さLpsは、溝の同じ長さLrの少なくとも20%に等しく且つせいぜい50%に等しいことが有利である。これらの割合は、タイヤが新品の場合、即ち、まだ用いられていない場合に与えられる。
【0029】
本発明は、各溝についてタイヤと路面の接触の際に各溝について少なくとも4つの突起及びせいぜい約20個の突起が提供される場合、特に効果的である。これらの数値は、E.T.R.T.O規格により定められたタイヤの使用条件、即ち、ロードインデックス及び速度コードによって指示されたタイヤの耐荷重に相当するベンチマークインフレーション圧力に関連していると理解されたい。
【0030】
本発明の他の特徴及び他の利点は、添付の図面を参照して以下に行われる説明から明らかになろう。なお図面は、非限定的な実施例として、本発明の要旨の実施形態を示してい
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】直線から成る円周方向溝を有する本発明のタイヤトレッドの平面図である。
図2図1のII‐II線矢視断面図である。
図3】ジグザグ形態の溝を備えた本発明のタイヤトレッドの別の実施形態を示す図である。
図4】別の実施形態の部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図の記載内容を読み取りやすくするために、同一の参照符号が構造的であるにせよ機能的であるにせよいずれにせよ同一種類の要素を示している場合、かかる同一の参照符号は、本発明の種々の実施形態の説明に用いられる場合がある。
【0033】
図1は、直線から成る円周方向溝を有する本発明のタイヤトレッドの平面図である。この図1は、円周方向の向きの2つの直線から成る溝43,35を画定する3つのリブを備えたトレッド1の部分平面図を示している。円周方向は、矢印Cで示されている。リブのうち、1つの中間リブ3及び縁部リブ4,5が存在する。
【0034】
各リブ3,4,5は、それぞれ、路面に接触するようになった接触フェース30,40,50及び側方フェース31,32,41,42,51,52を有し、これら側方フェースは、円周方向に差し向けられた隆起部を形成するためにこれら接触フェースと交差している。
【0035】
縁部溝4の側壁41は、円周方向に距離D1だけ互いに隔てられている複数の突起46を有する。この場合、これら突起46は、リブ4の側壁41に垂直であるように差し向けられている(従って、これら突起は、壁面41に垂直である)。距離D1は、使用条件において路面と接触関係にある少なくとも4つの突起46が設けられるよう選択されている。各突起46は、走行時、路面と接触するよう設計された外側フェース460を有する(説明している実施例では、この外側フェース460は、縁部リブ4の接触フェース40のところに位置している)。各突起46は、この突起の主要方向(即ち、この場合、側方フェース41に垂直な方向)におけるタイヤの新品状態で測定された表面長さLps及び溝43の底部のところで測定された幅Lpiを有する。
【0036】
好ましくは、各突起の上側フェースの長さLpsは、この突起が形成されている溝の幅Lrの20%〜50%である。さらに、突起46のベースの長さLpi(溝の底部のところの突起の部分の長さ)は、溝の幅Lrの少なくとも60%(新品時)に等しい。
【0037】
各突起は、図1のII‐II線矢視断面図である図2でも理解できるように、溝43の底部430と縁部リブ4の接触フェース40との間に延びている。突起46の長さLpsは、溝43の底部のところで測定された同一突起の長さLpiよりも小さい。この場合、この突起46は、溝43の断面をこの断面の75%にわたって閉鎖する。突起46の厚さI1(円周方向に測定される)は、この場合、すべての突起について同一であり、突起の全高さにわたって一定である。
【0038】
各突起46は、突起の厚さI1だけ互いに距離を置いたところに位置する側方フェース461、462を有し、これら2つの側方フェースは、半径方向(即ち、タイヤの回転軸線を通る方向)に対して70°に近い角度Aをなして傾けられた端部フェース463に合体している。好ましくは、この厚さI1は、突起が作られている溝43の幅Lrの15%〜40%である。各突起は、半径方向に差し向けられた溝の底部430の近くに位置する一部分を有し、この部分は、この場合、溝の深さの20%に等しい高さdにわたって延びている。(好ましくは、この高さは、この深さの50%未満である)。
【0039】
各突起46は、突起を支持したリブ上で取った外側フェース460の中点とこのリブから最も遠くに遠ざかって位置する同一の外側フェース460上の端点を結ぶ直線の方向であると外側フェース460について定められた主要な向きを有する。
【0040】
半閉鎖切欠きが各突起に向いた状態で中間リブ3に設けられており、即ち、切欠き37がリブ3の側方フェース31上にのみ開口し、この側方フェース31は、上述の突起46が形成されている側方フェース41に向いている。各切欠き37は、軸方向(この軸方向は、円周方向Cに垂直である図中の矢印Tによって示されている)と角度Bをなして傾けられた主要な向きを有し、切欠き37のこの主要な向きは、この切欠きを画定する壁371,372の向きの平均方向であると定められる。この角度Bは,突起の主要な向きと半閉鎖切欠きの主要な向きとの向きの差の測定値である。向きのこの差は、ゼロ度を超え且つせいぜい70°に等しい。図示の場合、突起は、横方向Tに差し向けられており、当然のことながら、この突起に僅かな角度(30°未満)の傾きをつけ、この場合、この突起が交差する半閉鎖切欠きと十分な角度の差を維持することが可能である。
【0041】
この半閉鎖切欠き37は、正確に言えば、2つの側壁371,372を互いに連結する端壁370によって閉じられる。各切欠き37の幅Leは、各切欠き37が溝43上に開口してこの切欠きが交差する突起46によって占められた容積よりも多い貯蔵容積を形成する上で、適当である。
【0042】
中間リブ3の側方フェース32の各突起の上側フェース460に最も近い箇所を互いに隔てる機能的隙間J1,J2により、水で覆われた路面上を走行しているとき、半閉鎖切欠きを溝43内を流れている水で満たすことが可能である。この貯蔵は、一時的である。というのは、切欠きがもはや路面によって閉じられない場合、この切欠き内に入っている水は、遠心力によって放出されるからである。
【0043】
図1で見えるように、他の溝35は、中間リブ3の側方フェース32上に形成された複数の突起36を更に備えている。これら突起36は、縁部リブ5に形成された複数の半閉鎖切欠き57と相互作用するようになっている。これら突起36の幾何学的特徴は、突起46の幾何学的特徴とほぼ同じである。
【0044】
溝43についてであれ溝35についてであれ、突起46,36はそれぞれ、同一の平均距離D1だけ円周方向に距離を置いたところに位置している。
【0045】
中間リブ3についてであれ縁部リブ5についてであれいずれにせよ、半閉鎖切欠き37,57はそれぞれ、リブの連続性を提供し、かくして路面との接触時に切欠きの閉鎖を阻止する幅を確保するようリブの幅を部分的に占める。
【0046】
図1及び図2に示されているこの実施形態では、リブは、2つの円周方向溝に通じる横方向溝を備えておらず、図示していない実施形態では、単一の溝上に開口すると共に突起に向いた溝に加えて、2つの円周方向溝に通じる溝を設けることが可能である。また、対向した壁に対する1つの壁の機械的閉塞を生じさせるのに適した幾何学的形状のサイプを設けることが可能である。
【0047】
図3は、ジグザグの形態をした溝を有する本発明のタイヤトレッドの別の実施形態を示している。
【0048】
図3は、一連の山部と谷部により形成されたジグザグの形態をした幾何学的形状を有する4本の円周方向溝43,33,35を備えたサイズ245/70R17.5のタイヤトレッド1の踏み面を示している。これらジグザグの溝は、3つの中間リブ3及びトレッドの縁部を形成する2つの列をなすリブ4,5を画定している。
【0049】
縁部の列4,5は、それぞれ複数のブロック44,55を形成するよう横方向溝を更に備えている。縁部リブ4,5を画定する円周方向溝43,35は、他の溝について7mm及び8mmに等しい平均幅を有し(隣り合うリブ又はブロックに垂直に測定される)、トレッドは、水で覆われた路面上を走行しているとき、良好な排水性能を保持した上で転がり共鳴ノイズを減少させるよう本発明の複数の装置を備える。この場合、中間リブ3又は縁部リブのブロックは、円周方向に交互に山部と谷部を有する。各溝内において、騒音防止装置は、山部に形成された突起46,36,56と、共鳴ノイズを減少させると共に液体の適当な貯蔵を可能にするよう突起と相互作用することができるために突起と反対側に開口した半閉鎖切欠き37,37′,37″とから成っている。
【0050】
このタイヤの通常の使用条件では、即ち、8barに等しいインフレーション圧力で且つ2240kgの荷重下において、接触領域の平均長さ(172mm)は、トレッド上のこれら騒音防止装置の数を定める。具体的に説明すると、騒音防止効果を発揮するようにするためには、各溝が少なくとも1つの騒音防止装置(突起及び半閉鎖切欠きを有する装置)を接触状態で有するようにすることによって溝の共鳴周波数を変えることが必要である。この場合、各突起46,36,56は、溝の断面を閉鎖し、この場合、各突起は、この断面の約50%にわたって形成される。各突起46,36,56は、溝の底部と新品状態の踏み面との間に延びる。この場合、縁部溝内に4個の騒音防止装置が設けられると共に永続的に接触状態にある中間溝に9個の騒音防止装置が設けられる(好ましくは、溝1本当たり4〜12個のスタッドが接触領域に設けられる)。
【0051】
突起46,36,56は全て、この場合、同一の幾何学的寸法を有する。踏み面上で測定した各突起46の長さLpsは、溝43の底部のところで測定された同一突起の長さLpiよりも小さく、この場合、長さLpsは、溝の幅の30%に等しく(好ましくは、20〜50%)、長さLpiは、溝幅の60%に等しい(好ましくは、50%を超える)。 各突起の厚さ(円周方向に測定される)は、この場合、突起全てについて同一であり、これら突起の高さ全体にわたって一定である。この厚さは、平均で2mmである。
【0052】
さらに、各突起46に向いて半閉鎖切欠きが各中間リブ3に形成され、即ち、半閉鎖切欠き37がリブ3のたった1つの側方フェース32上に軸方向に開口し、この側方フェース32は、上述の突起が形成されている側方フェースに向いている。各切欠き37は、軸方向と角度Bをなして傾けられた主要な向きを有する(図3に矢印Tで示されているこの軸方向は、円周方向Cに垂直である)。この角度Bは、突起の主要な向きと半閉鎖切欠きの主要な向きとの向きの差の測定値である。この場合、この角度Bは、23°である(好ましくは、この角度は、10〜50°である)。
【0053】
この図3の裏付けにより説明する実施例では、理解できるように、赤道面の最も近くに位置する2本の溝33は、縁部列の近くに位置する溝内の騒音防止装置の数と比較して、騒音防止装置の数が多い(この場合、この数は、2倍を超える)。これら騒音防止装置により、溝の固有共鳴振動数を変えることが可能であり、これら振動数は、トレッドの中間部分の溝(赤道面の各側における)とトレッドの縁部に隣接して位置する溝との間では異なることが有利である。赤道面の最も近くに位置する2本の溝のうちの各々に関し、突起(及びこれら突起と相互作用する半閉鎖切欠き)は、溝を画定する一方の壁及びこれに向いた他方の壁に交互に形成される。この形態の追加の利点は、これが本発明の騒音防止装置の減少した数の使用によってトレッドの縁部の機械的耐攻撃性に悪影響を及ぼすことがないということにある。
【0054】
図4は、この最後に述べた実施形態に関し、部分側面図を示している。この図4では、2つのリブ3相互間に溝33の一部分が存在し、突起36がリブ3の山部に半閉鎖切欠き37′と交互に組み合わせ状態で形成され、この切欠き37′の延長部として、サイプ39が設けられ、このサイプ39の壁は、接触時にサイプと相互作用するためにジグザグの幾何学的形状を有する。サイプ39′も又、各リブ3の幅全体を貫通した状態で設けられている。
【0055】
各突起の平均幅は、この場合、半閉鎖切欠きの幅の25%(好ましくは、15%〜40%)に等しく又は約2mmに等しい。各突起と隣接のリブとの間の全隙間は、円周方向溝の幅よりも大きい(この実施形態の場合、全隙間は、9mmである)。
【0056】
半閉鎖切欠き37′の軸方向長さは、これが形成されているリブの幅の半分に実質的に等しい(「軸方向長さ」という用語は、軸方向Tにわたって切欠きの投影長さを意味している)。
【0057】
また、図3で注目されるべきこととして、半閉鎖切欠きは、同一の仕方で差し向けられた同一のリブに設けられ、これら半閉鎖切欠きは、2つの隣り合うリブ3上で互いに逆に傾けられている。かくして、トレッドの作図は、方向性を示しているわけではなく、即ち、トレッドは、好ましい走行方向を与えるものではない。当然のことながら、当業者であれば、半閉鎖切欠きの適当な傾斜によって方向性を示す設計が得られるよう本発明を利用することができる。
【0058】
縁部について、実質的に連続した縁部を提供するためにブロックを材料のブリッジによって互いに連結する措置も又取られる。
【0059】
当然のことながら、本発明は、上述すると共に図示した実施例には限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲に属する状態でこの実施例について種々の改造例を想到できる。
図1
図2
図3
図4