(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施例)
図1ないし
図17は、本発明に係る美容器具の実施例を示す。なお、本発明における前後、左右、上下とは、
図2および
図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
図2において、美容器具は、本体部1と、本体部1の上端から上向きに突出する状態で設けた加熱ヘッド2と、本体部1の下端に設けたイオンクレンジング装置と、加熱ヘッド2およびイオンクレンジング装置の外面を覆う第1キャップ4(
図3参照)および第2キャップ5などで構成してある。第1キャップ4は、後述する第2ケース7に着脱可能に装着してあり、第2キャップ5は、後述する底蓋8に対して着脱可能に装着してある。
【0018】
(本体部の構造)
図2〜
図6に本体部1の詳細構造を示している。本体部1は、グリップを兼ねる第1ケース6と、第1ケース6に組付けられる第2ケース7と、第1ケース6の下側に配置される底蓋8などで構成してあり、第2ケース7の上端に先の加熱ヘッド2が組付けてある。本体部1の内部には、加熱ヘッド2を加熱する面状発熱体(熱源)11と、面状発熱体11に対して駆動電流を供給する電池(電源部)12が収容してある。この実施例では、第2ケース7に電池12と面状発熱体11を配置するようにした。また、第1ケース6の上端に臨んで、美容器具の運転状態を切換えて、電池12の給電状態を制御するスイッチボタン(スイッチ操作具)13を設けるようにした。第1ケース6と第2ケース7とは、互いに抜差しすることにより着脱できる。
【0019】
図5に示すように、第1ケース6は、丸筒状の内ケース15と、内ケース15を収容する透明な四角筒状の外ケース16とで二重筒状に形成してあり、両ケース15・16の間の隙間に装飾シート(装飾体)17が収容してある。このように、外ケース16の内部に装飾シート17を配置すると、外ケース16を介して装飾シート17を視認する際に、外ケース16の透明感によって装飾シート17の呈色状態を深みのあるものとすることができ、第1ケース6の外観を高級感に富むものとすることができる。また、模様や呈色状態が異なる複数の装飾シート17を用意しておくことにより、装飾シート17の種類数の分だけ美容器具の外観上のバリエーションを拡大できる。なお、装飾シート17を省く代わりに、内ケース15の外面、あるいは外ケース16の内面のいずれかに塗装等により装飾面(装飾体)を形成することができる。その場合にも、上記と同様に、外ケース16を介して装飾面を視認する際に、外ケース16の透明感によって装飾面の呈色状態を深みのあるものとすることができる。
【0020】
図6に示すように、第2ケース7は、前ケース7aと後ケース7bとを蓋併せ状に接合して構成してあり、その上半部分を丸筒状に形成して、面状発熱体11、スイッチボタン13、および回路基板19などを収容する制御区画20が設けてある。回路基板19は、前ケース7aと後ケース7bの接合面の間に挟持固定してある。前ケース7aの下半部には電池ホルダー21が一体に設けてあり、第2ケース7を第1ケース6から抜外した状態において、電池12を電池ホルダー21に着脱することができる。回路基板19には、加熱ヘッド2およびイオンクレンジング装置に対する給電状態を制御する制御回路が実装されており、さらに、スイッチボタン13で切換え操作されるスイッチ素子22が実装してある。上記のように、スイッチボタン13および回路基板19は、後述する肌用電極53から離れた本体部1の内部の制御区画20内に収容してある。
【0021】
スイッチボタン13の上縁および下縁に隣接して、イオンクレンジング装置用の第1通電表示部と、加熱ヘッド用の第2通電表示部とが設けてある。
図8に示すように、第1通電表示部および第2通電表示部は、それぞれ回路基板19に設けたLED(第1光源)23およびLED(第2光源)24と、各LED23・24に対応して設けられる第1導光体26および第2導光体27とで構成してある。LED23・24は、先のスイッチ素子22の上下に実装されて、第1導光体26および第2導光体27の内端と正対している。第1導光体26と第2導光体27とは、透明なプラスチック材で一体に成形されて、1個のレンズユニット25として構成してある。レンズユニット25は、第2ケース7の制御区画20の下部前面に組付けてあり、同ユニット25と前ケース7aとが協同してスイッチボタン13を出没自在に案内している。符号28はスイッチボタン13を外向きに押出し付勢する圧縮コイル形のばねである。
【0022】
スイッチボタン13をばね28に抗して1回押込み操作すると、スイッチ素子22がオン状態になり、このオン信号を受けた制御回路がイオンクレンジング装置に電池12の電力を供給する。同時に下側のLED23が点灯して第1通電表示部を発光表示させ、美容器具の運転状態が、イオンクレンジングのための第1モードになっていることを第1導光体26を介して表示する。スイッチボタン13をもう一度押込み操作すると、スイッチ素子22のオン信号を受けた制御回路が、イオンクレンジング装置への給電を停止し、面状発熱体11に電池12の電力を供給する。同時に上側のLED24が点灯して、第2通電表示部を発光表示させ、美容器具の運転状態が、マッサージと化粧料の展伸のための第2モードになっていることを第2導光体27を介して表示する。さらに、スイッチボタン13を押込み操作すると、スイッチ素子22のオン信号を受けた制御回路が、全ての給電路を遮断して電力の供給を停止して待機状態になる。
【0023】
(加熱ヘッドの構造)
図7、
図8に加熱ヘッド2の詳細構造を示している。加熱ヘッド2は、アルミニウム製の丸棒に旋削加工と研削加工とを施して上下に長い軸状体に形成してあり、その上半部に伝熱部30が形成され、その下端にフランジ状の受熱部31が形成してある。伝熱部30は、その上端に設けた半球状のマッサージ面32と、マッサージ面32の下側に連続する断面円形の肌摺接面33とで砲弾状に形成してある。また、伝熱部30と受熱部31との間には、加熱ヘッド2を第2ケース7に装着するための装着軸34が丸軸状に形成してある。肌摺接面33は、リップクリームなどを唇表面に塗伸ばす展伸面として機能し、さらに唇をマッサージするためのマッサージ面として機能する。
【0024】
加熱ヘッド2の内部には、後述する温度センサー41を収容するための中空部35が下向きに開口する状態で形成してあり、中空部35の開口縁の周囲に、面状発熱体11の熱を受継ぐリング状の受熱部31が張出してある。このように、受熱部31から伝熱部30に至る加熱ヘッド2の全体を筒状に形成すると、中空部35の容積の分だけ伝熱部30の体積を小さくできるので、面状発熱体11から受熱部31に伝えられた熱を、速やかに伝熱部30へ伝導することができる。先の装着軸34を前後ケース7a・7bの対向面に設けた軸受部36で軸支することにより、加熱ヘッド2は第2ケース7で回転自在に支持される。つまり、加熱ヘッド2は本体部1で回転自在に支持されている。前後ケース7a・7bに設けた軸受部36は、隙間を介して上下に隣接する上下2段の半円状のフランジ壁36aで構成してある(
図7参照)。
【0025】
図6に示すように、面状発熱体11は、絶縁性のベースフィルム11aの上面にヒーター線11bをつづら折り状に配置し、その上面を絶縁性の保護フィルム11cで覆ったフィルムヒーターからなる。ベースフィルム11aの周縁の2個所には電極38が設けてある。両フィルム11a・11cの中央に装着穴39を形成することにより、面状発熱体11はリング状に形成されている。ヒーター線11bはステンレス製の板材にエッチング加工を施して形成されており、リング状のベースフィルム11aの全面にわたってつづら折り状に連続し、高密度に配置した状態で形成してある。面状発熱体11のリング径は、受熱部31のリング径と概ね一致させてあるので、面状発熱体11で発生した熱を、受熱部31へ向かってむらのない状態で放射して、加熱ヘッド2を効果的に加熱することができる。
【0026】
面状発熱体11と、後述する温度センサー41とを支持するために、加熱ヘッド2の内部に加熱部ホルダー40が配置してある。
図7において、加熱部ホルダー40は、面状発熱体11を支持する皿状のベース部43と、ベース部43から上向きに突設される筒壁44とを一体に備えており、ベース部43の周囲壁を前後ケース7a・7bで挟持することにより、第2ケース7に固定してある。ベース部43に装着した面状発熱体11は、中央の装着穴39が筒壁44の基端部に外嵌して径方向へ移動不能に支持されており、さらに、面状発熱体11の上面が加熱ヘッド2の受熱部31と小さな隙間Eを介して上下に対向している。具体的には、面状発熱体11の全厚寸法が0.5〜0.6mmであるとき、面状発熱体11の上面と受熱部31との間の隙間Eの寸法が0.12〜0.2mmになるようにした。なお、加熱ヘッド2は本体部1に対して回転不能に固定することができるが、その場合には、面状発熱体11を受熱部31に密着させることにより、熱伝導効率を向上することができる。
【0027】
上記のように、面状発熱体11と受熱部31とを小さな隙間Eを介して正対させると、面状発熱体11から受熱部31への熱移動を効果的に行ないながら、面状発熱体11の熱が周囲に放散されるのを皿状のベース部43で防止できる。また、加熱ヘッド2が本体部1の中心軸の周りに回転するとき、面状発熱体11が受熱部31と擦れ合うのを避けて、加熱ヘッド2の回転動作を円滑化でき、加えて、面状発熱体11が受熱部31で擦られて発熱機能が損なわれるのを避けることができる。さらに、面状発熱体11を加熱部ホルダー40に固定するので、面状発熱体11が加熱ヘッド2に設けてある場合に比べて、面状発熱体11の電気的な接点構造を簡素化できる。
【0028】
温度センサー41は、チップ状のNTCサーミスタからなり、加熱部ホルダー40の筒壁44の上端の上面、つまり中空部35の内奥に配置されて、加熱ヘッド2の伝熱部30の温度状態を検知する。温度センサー41のセンサーリード45は、筒壁44の内部空間を利用して制御区画20側へ導出されて回路基板19に接続してある。制御回路は温度センサー41の検知信号を受けて面状発熱体11の発熱状態を制御し、マッサージ面32および肌摺接面33の表面温度を43℃に保持する。センサーリード45は筒壁44で常に保護されているので、本体部1に大きな衝撃が作用するような場合でも、センサーリード45が断線することはない。なお、温度センサー41は、筒壁44の上端の上面から僅かに浮き離れた状態で支持してあってもよい。伝熱部30の表面温度を43℃に保持するのは、化粧料のパラフィン成分を確実に軟化できるようにしながら、加熱ヘッド2の熱で唇の肌面が低温やけどになるのを防止するためである。
【0029】
(イオンクレンジング装置の構造)
図1、
図3、および
図9〜
図13にイオンクレンジング装置の詳細構造を示している。
図3において、イオンクレンジング装置は、第1ケース6の上下に設けられる2個のグリップ電極51・52と、底蓋8の下面中央に設けられる独楽形状の肌用電極53と、これらの電極51〜53にパルス電流を供給する電流調整回路などで構成してある。電流調整回路は回路基板19に設けた制御回路の一部を構成している。肌用電極53に美容用液が含浸された綿棒(美容液含浸体)54を装着すると、肌用電極53と綿棒54とが導通した状態になるので、綿棒54の綿球部55を肌面に接触させて払拭することにより、イオン導出作用あるいはイオン導入作用によって肌面を整えることができる。
図3において符号56は綿棒54の軸部である。
【0030】
第1ケース6の上下端には、それぞれ四角枠状の上エンドキャップ58および下エンドキャップ59が係合装着してあり、これらのエンドキャップ58・59の表面全体に金属めっきを施すことによりグリップ電極51・52が形成してある。上エンドキャップ58は、基本的に上下面が開口する四角枠状に形成するが、その前壁はレンズユニット25を組むために切欠いてある(
図6参照)。そのため上側のグリップ電極51は、本体部1の外面の周方向に連続する、横断面がC字状の周回電極51aで構成されることになる。上エンドキャップ58は第2ケース7の電池ホルダー21の上側部分に係合装着してある。
【0031】
下エンドキャップ59は上下面が開口する四角枠状に形成され、その後面の左右中央に上向きの電極片60が突設してある。そのため、下側のグリップ電極52は、本体部1の外面の周方向に連続する横断面が八角形状の周回電極52aと、周回電極52aに連続して本体部1の長手方向に延びる電極片60に形成される軸方向電極52bとで構成される。軸方向電極52bは、周回電極52aと、周回電極52aから離れた本体部1の長手方向の中途部との間に形成してある。詳しくは、軸方向電極52bの上端が、第1ケース6の上下方向の中央部より下側に位置させてある。このように、軸方向電極52bを上側のグリップ電極51へ向かって延出すると、
図16に示すように、第1ケース6を片手で鉛筆を握るようにして確りと保持した状態において、人指し指を軸方向電極52bに接触させて、グリップ電極52を人体に導通できる。下エンドキャップ59は内ケース15の下部に凹凸係合構造61を介して係合装着してある(
図9参照)。
【0032】
下エンドキャップ59の下面中央には、ねじボス62が設けてあり、ねじボス62と、その下面に接合した底蓋8とをビス63で締結することにより、底蓋8が下エンドキャップ59に固定してある。
図9に示すように、下エンドキャップ59を内ケース15の下部に係合装着した状態においては、底蓋8に設けた係合腕91が、電池ホルダー21の下部の係合片92と係合している。
【0033】
肌用電極53は、第1ホルダー64と、第1ホルダー64を内面側から支持する第2ホルダー65とで構成してあり、両ホルダー64・65に綿棒54を保持する綿棒保持部66が設けてある。第1ホルダー64の全体は導電性のゴムを素材にして形成してあり、第2ホルダー65に外嵌するキャップ壁67を有し、その中央に綿棒54を差込むための装着穴68と、すり鉢状の受座69とが形成してある。装着穴68と受座69の周囲を囲む挟持壁70で、綿棒54の綿球部55と軸部56の周面を弾性的に挟持固定することができる。綿棒保持部66は、装着穴68と、受座69と、挟持壁70および、第2ホルダー65に設けた保持穴75で構成される。
【0034】
第2ホルダー65は、保持軸部73とフランジ部74とを一体に備えたステンレス製の旋削品からなり、保持軸部73の中央に綿棒54の軸部56を受入れる保持穴75が有底穴状に形成してある。第2ホルダー65の保持軸部73に外嵌した第1ホルダー64の装着状態を保持するために、キャップ壁67の内面に係合リブ71を形成し、これを保持軸部73の周面に形成した係合溝72に係合させている。第2ホルダー65は、底蓋8と、底蓋8の下面に固定した蓋体(蓋壁)76とで挟持固定してある。
【0035】
第2ホルダー65に設けた保持穴75は、有底穴として形成してある。そのため、綿棒54から軸部56を伝って流れ落ちる美容用液の全てを保持穴75で受止めて穴内に貯留できる。従って、余分な美容用液が本体部1の内部に入込んで、内部回路がショートするのを確実に防止できる。
図9に示すように、保持穴75の直径D1は、装着穴68の直径D2より大きく設定してある。また、装着穴68の直径D2は綿棒54の軸部56の直径より小さく設定してある。
図1に示すように、綿棒54を綿棒保持部66に差込み装着した状態では、綿棒54の軸部56が保持穴75に収容され、綿棒54の綿球部55と軸部56の周面を挟持壁70で弾性的に挟持固定して、綿球部55の大半の部分が第1ホルダー64の外面に露出する状態となる。このように、綿棒54を綿棒保持部66に差込み装着する際には、軸部56が装着穴68に対して圧入されて挟持壁70を弾性変形させる。
【0036】
上下のグリップ電極51・52、および肌用電極53のそれぞれにパルス電流を供給する給電構造を
図11に示している。給電構造は、上側のグリップ電極51の内面のめっき層に接触する第1接続端子79と、電池ホルダー21の外面の左右に配置される第2接続端子(接続端子)80、および第3接続端子(接続端子)81を備えている。さらに給電構造は、下エンドキャップ59のねじボス62にビス63で共締め固定される第4接続端子(接続端子)82と、底蓋8で上下スライド自在に案内されるピン状の第5接続端子(接続端子)83と、同端子83を押上げ付勢する金属製のばね84などで構成してある。ばね84の下端は第2ホルダー65で受止められている。
【0037】
図6に示すように、第1接続端子79は後ケース7bに装着されて、回路基板19に対してリード線を介して接続してある。また、第2接続端子80と第3接続端子81は、
図12に示すように電池ホルダー21の左右壁に固定されて、回路基板19に対してリード線を介して接続してある。同様に、電池12用の正極端子85と負極端子86は、電池ホルダー21の定位置に固定されて、リード線を介して回路基板19に接続してある。
【0038】
下エンドキャップ59を内ケース15に係合し、さらに第2ケース7を内ケース15に差込み係合すると、
図1に示すように、グリップ電極52と導通する第4接続端子82が第2接続端子80に密着し、さらに第2ホルダー65を介して肌用電極53と導通する第5接続端子83が、第3接続端子81に密着する。従って、回路基板19に実装した制御回路から供給されるパルス電流を、上下のグリップ電極51・52、および肌用電極53にそれぞれ供給することができる。上記のように、第1ケース6側の第4、第5の両接続端子82・83と、第2ケース7側の第2、第3の両接続端子80・81とを、第1ケース6と第2ケース7の対向端壁のそれぞれに互いに対向する状態で設けると、第2ケース7を内ケース15に単に差込み係合するだけで、対応する接続端子80〜83どうしを確実に密着させて導通できる。
【0039】
後述するように、イオンクレンジング作業を行うときには、綿棒54に美容用液を含浸させた状態で肌面や唇のケアを行う。そのため、美容用液の含浸量が多いと、綿球部55から滴り落ちた美容用液が肌用電極53の表面を伝って蓋体76へと流動する。このように、過剰な美容用液が蓋体76と保持軸部73の隣接隙間から本体部1の内部に入り込むのを防ぐために、肌用電極53の本体部1側の端部周面、つまり蓋体76との隣接端に溝部88を形成し、さらに溝部88に臨む蓋体76の表面に液受凹部89を周回状に形成している(
図9参照)。溝部88は、肌用電極53を第2ホルダー65から取外すときの、指先を引っ掛けるための指掛部としても機能している。
【0040】
(綿棒の切断構造)
図1に示すように、綿棒54はその軸部56を所定の長さに切断した状態で使用するが、軸部56の切断をユーザー自身で簡便に行えるようにするために、第2キャップ5に綿棒を切断するための構造を設けている。
図14および
図15において、綿棒の切断構造は、第2キャップ5の底壁の隅部寄りに設けた綿棒装填穴95と、この装填穴95に臨んで第2キャップ5の周囲壁から連出した1対の棒受壁96とで構成する。綿棒装填穴95は、綿球部55を差込むための不完全円状の丸穴97と、丸穴97に連続して隅部へ延びる角穴98とで鍵穴形に形成してある。棒受壁96は角穴98の対向縁に沿って形成してあり、その上端から綿棒装填穴95の下開口までの長さが、肌用電極53の受座69から保持穴75の内奥端までの長さに一致させてある。また、1対の棒受壁96の対向間隔が、受座69と装填穴68との隣接部分の直径寸法と一致させてある。
【0041】
綿棒54を切断する場合には、
図15(a)に示すように、綿球部55を第2キャップ5の下面側から綿棒装填穴95の丸穴97に差込み、綿棒54の全体を角穴98側へ移動させて綿球部55を第2キャップ5の隅壁に接当させる。この状態で、綿棒54から指先を離すと、
図15(b)に示すように、綿球部55の基端部が棒受壁96で受止められて綿棒54が宙吊り状態となる。次に、
図15(a)に示すように、綿球部55を第2キャップ5の隅部に押えつけて固定したのち、
図15(b)に示すように、軸部56を棒受壁96の厚み方向へ折り曲げて余分な軸部56を切断することにより、適正な長さに切断された綿棒54を得ることができる。従って、ユーザーは、衛生的な状態で保管しておいた綿棒54を、イオンクレンジング作業を行う直前に切断して、清潔な状態で使用することができる。
【0042】
イオンクレンジング作業を行ったのちの綿棒54は、肌用電極53から取外して廃棄する。しかし、綿棒54を肌用電極53に装着した状態のままで、第2キャップ5が底蓋8に装着されてしまうと、雑菌が繁殖し、あるいは綿球部55に付着した皮脂が腐敗するなど、非衛生的な状態になってしまう。こうした事態を確実に防止し、肌用電極53を常に衛生的な状態に保持するために、
図13に示すように、第2キャップ5の内法上下寸法を、下エンドキャップ59の下端面から肌用電極53の下端面までの上下寸法より僅かに大きくなるように設定している。換言すると、第2キャップ5を下エンドキャップ59に装着した状態において、第2キャップ5で覆われるキャップ内空間を想定するとき、第1ホルダー64に装着した状態における綿棒54の外郭線が、先のキャップ内空間の外に突出するように、第2キャップ5の大きさを設定している。こうした第2キャップ5によれば、肌用電極53の綿棒54を差込んだ状態のままでは、綿棒54が邪魔になって第2キャップ5を底蓋8に係合することができなくなる。従って、ユーザーの注意を喚起して、使用後の綿棒54は廃棄する必要があることを物理的に明確に知らせて?美容器具の適正な使用を促すことができる。
【0043】
(美容器具の使用法)
使用時には、
図16に示すように、綿棒54の軸部56を肌用電極53の装着穴68に圧入して保持し、綿球部55を受座69で受止めた状態で綿棒54の全体を支持する。この装着状態において、美容用液が含浸された綿球部55は受座69に密着して肌用電極53と電気的に導通している。綿棒54が傾いた状態で装着穴68に差込み装着された場合でも、軸部56の下端を保持穴75の内周面で支持することができるので、綿棒54が大きく傾いた状態で装着されるのを防いで、綿棒54を安定した状態で支持できる。使用途中に軸部56が折れた場合でも、折れた軸部分は直径が大きな保持穴75内に保持されるだけであるため、第1ホルダー64を第2ホルダー65から取外すだけで、折れた軸部部分を簡単に排出することができる。
【0044】
綿棒54を肌用電極53に装着した後、綿球部55に化粧水などの美容用液を含浸させ、スイッチボタン13をオン操作して、美容器具をイオンクレンジングを行うための第1モードに切換える。この状態で、
図16に示すように本体部1を手で握って、人指し指を下側のグリップ電極52の軸方向電極52bに接触させた状態で、鏡を見ながら綿球部55を小鼻の周辺部や唇の肌面などに接触させて上下、あるいは左右に滑らせて肌面を整える。
【0045】
このとき、綿球部55が装着された肌用電極53はプラスの極性に、グリップ電極51・52はマイナスの極性になっており、人体を介して両電極間に導通する微弱な電流によってイオン導出作用を発揮できる。このとき、唇の肌面には綿棒54を介して電流が供給されるので、肌面に作用する電流を弱めることができ、従って角質層が薄い唇の負担を軽減できる。以上のようにしてクレンジングを行うことにより、肌面の皺や襞部などに入込んでいた汚れを綿球部55に吸着させて、肌面を清潔な状態に保持できる。また、唇の肌面に化粧水をしみ込ませて、肌面を湿潤で弾力のある状態に保持できる。充分に払拭しきれていない口紅が残っていた場合でも、残留する口紅を確実に除去して、口紅による色素の沈着を防止できる。綿棒54を使用してクレンジングを行うので、唇の縦皺や肌面のめくれなどの肌荒れが激しい部分に対して集中的にマッサージ刺激を与え、あるいは綿棒54に含浸させた美容用液を縦皺に対してピンポイント状にしみ込ませるなど、微妙な操作を行なって、肌面の微細な汚れを落とし、あるいは肌面の状態を整えて美容効果を高めることができる。
【0046】
加熱ヘッド2は、例えば唇などの面積が小さな肌面の手入を行う場合に使用する。加熱ヘッド2を使用する場合には、イオンクレンジングを終了した後に、スイッチボタン13ボタンを再度オン操作して、マッサージと化粧料の展伸に適した第2モードに切換えて、加熱ヘッド2が適温になるまでの時間(約30秒)を利用して、唇にリップクリームをたっぷりと塗布する。次に、加熱ヘッド2が唇と正対するように本体部1を持った状態で、加熱ヘッド2の肌摺接面33を唇の表面に接触させて、唇の中央から側端へ向かって加熱ヘッド2を繰返し転動させてリップクリームを塗伸ばす。このとき、加熱ヘッド2から伝動される熱によって、リップクリームに含まれるパラフィン油脂類やワックス類が軟化して液状化するため、
図17に示すように、唇に縦皺が形成されていたとしても、皺の内部にまでリップクリームを染込ませることができる。また、加熱ヘッド2を転動させながらリップクリームを肌摺接面33で塗伸ばすので、常に新規な肌摺接面33で唇の肌面を加熱でき、従ってリップクリームを効果的に展伸することができる。このとき、肌摺接面33に接触する唇に、摺擦作用による動的な刺激と温熱を与えられるため、血行の促進効果を発揮することができる。
【0047】
上記のように、リップクリームを唇の肌面に沿って均等に塗伸ばした後に、マッサージ面32を唇の表面にあてがって円を描くようにして、温熱を加えながら唇全体のマッサージを行う。さらに、唇の輪郭線に沿って円を描くようにマッサージ面32を動かして、唇の輪郭部分のマッサージを行う。最後に、唇の周辺、あるいは唇の肌面に付着したリップクリームを軽くティッシュオフして唇のケアを終了する。唇のケアを行ったのちに口紅を塗布することにより、口紅の塗布状態を滑らかで潤いに富んだ状態に仕上げることができる。なお、ユーザーによっては、リップクリームを塗伸ばすためにマッサージ面32を使用することが想定され、従ってマッサージ面32と肌摺接面33の機能の使い分けはユーザーの好みに委ねることとなる。
【0048】
以上のように、本実施例に係る加熱ヘッド2によれば、リップクリームを唇の肌面に沿って塗伸ばした後に、加熱ヘッド2を唇の表面にあてがって、温熱を加えながら唇全体のマッサージを行うことにより、唇の状態を良好な状態に整えることができる。具体的には、唇の肌面がマッサージによって動的に刺激される効果と、温熱が加えられることによる皮膚細胞の活性化を促す効果とが得られるので、動的な刺激効果と活性効果との相乗効果で唇の血行を促進できる。これに伴い、唇の肌面の色合いを自然な状態に回復し、唇の表面状態を艶やかでふっくらとした状態に整えることができる。さらに、唇のケアを行ったのちに口紅を塗布することにより、口紅の塗布状態を滑らかで潤いに富んだ状態に仕上げることができる。短時間で唇のケアを行えるので、昼食後や退社前などの化粧直しなどの際にでも手軽に唇のケア行うことができる。
【0049】
第1モードと第2モードを行うのには、少なからず時間を要するので、入浴後にスキンケアを行う場合など、時間的に余裕がある状態で行うとよい。食後や退社前などの化粧直しなどの際には、口紅をティシュペーパーで拭取った後、リップクリームを塗伸ばし、あるいは唇のマッサージを行った後、口紅を塗布すればよい。このように、上記構成の美容器具によれば、一連のメイク作業を短時間で行なうことができ、従って唇の肌面のケアをどこでも手軽に行える。さらに、出勤前のメイク時には、就寝前に塗布したリップクリームを軽くティッシュオフした後、再度リップクリームを塗布して第2モードでリップクリームを塗伸ばし、あるいは唇のマッサージを行って口紅を塗布すればよい。小鼻の回りの肌面を手入する場合にも、同様にして肌面を整えることができる。
【0050】
図18から
図21は、それぞれ肌用電極53の別の実施例を示している。
図18に示す肌用電極53は、第2ホルダー65の保持軸部73の周囲に雄ねじ101を形成し、第1ホルダー64の内面に雌ねじ102を形成して、第1ホルダー64を第2ホルダー65に対してねじ込み装着できるようにした。この場合の第1ホルダー64および第2ホルダー65は、それぞれ剛体で形成するのが好ましく、例えば導電性樹脂あるいは金属を素材にして各ホルダー64・65を形成するとよい。両ホルダー64・65の形成素材の組み合わせてしては、導電性樹脂と金属、導電性樹脂と導電性樹脂、および金属と金属のいずれであってもよい。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同じとする。
【0051】
図19に示す肌用電極53では、第1ホルダー64を半円筒状の一対の分割体64a・64aで構成した。両分割体64aの内面には係合リブ71が形成してあり、これらの係合リブ71を第2ホルダー65の係合溝72に係合した状態で、第1ホルダー64の周面に断面がC字状の保持リング104を装着することにより、第1ホルダー64を第2ホルダー65に固定できるようにした。この実施例における第1ホルダー64は、保持リング104を取外して、一対の分割体64a・64aを分離した状態で綿棒54の着脱を行なうことができる。そのため、軸部56の強度が小さい場合であっても、綿棒54を適正な装着姿勢で第1ホルダー64に取付けることができる。
【0052】
図20においては、第1ホルダー64と、第2ホルダー65と、第2ホルダー65の突端に装着される第3ホルダー105との三者で肌用電極53を構成するようにした。第1ホルダー64は第2ホルダー65に着脱でき、第1ホルダー64を第2ホルダー65から取り外した状態において、第3ホルダー105を第2ホルダー65に着脱できる。第3ホルダー105は導電性のゴムを素材にして形成してあり、第2ホルダー65に外嵌するキャップ壁106を有し、その中央に保持穴75に連続する通口107が形成してある。また、第3ホルダー105の内面と、第2ホルダー65の保持軸部73の突端周面には、それぞれ係合リブ108と係合溝109が形成してあり、これら両者108・109が係合することで第3ホルダー105の装着状態を維持できる。この実施例における綿棒保持部66は、装着穴68と、受座69と、挟持壁70と、保持穴75、および第3ホルダー105の通口107で構成される。
【0053】
第3ホルダー105を第2ホルダー65に装着した状態では、
図1で説明した肌用電極53と同様に綿棒54を綿棒保持部66できる。しかし、第3ホルダー105を取外した状態で綿棒54を綿棒保持部66に装着すると、第1ホルダー64の内面に空間があるため、第1ホルダー64が径方向へ弾性変形して、綿棒54が傾動しやすくなる。そのため、第3ホルダー105を着脱することで、綿棒54による肌面の押付け刺激を硬い状態と軟らかい状態とに異ならせることができる。通常の使用状態においては、第3ホルダー105を組込んだ硬い状態で使用する。このとき、綿棒54の軸部56の軸端寄りが短く折れたとしても、第1ホルダー64と第3ホルダー105を取外すことにより保持穴75を開放して、折れた軸部56を簡単に取出すことができる。なお、第2ホルダー65の保持穴75および第3ホルダー105の通口107の直径D1は、第1ホルダー64の装着穴68の直径D2(
図9参照)より大きく設定してある。
【0054】
図21においては、導電性を備えた第1ホルダー64と、導電性を備えていない第2ホルダー65とで肌用電極53を構成し、底蓋8にボス111を一体に設けて、第1ホルダー64を底蓋8(本体部1)に対して着脱できるようにした。そのために、ボス111の周面に係合溝72を形成した。また、ボス111の基端部の周囲に液受凹部89を形成した。第2ホルダー65は、例えばプラスチック成形品で形成してあって、その突端面で第1ホルダー64のキャップ壁67の内面を支持している。この実施例では、電池12の電流をスイッチ22を介して第1ホルダー64、およびグリップ電極52に供給するようにした。この場合の電流調整回路は、電池(直流電源)12と、電池12に直列に接続したスイッチ22などで構成される。
【0055】
上記の実施例では、加熱部ホルダー40と中空部35の内周面とが、小さな隙間を介して内外に対向するようにしたが、加熱部ホルダー40の筒壁44の上端を中空部35の内周面に密着させて、加熱ヘッド2を加熱部ホルダー40で内側から支持することができる。その場合には、加熱ヘッド2に傾動モーメントが作用する際に、加熱ヘッド2を加熱部ホルダー40で受け止めて、加熱ヘッド2の基部を支持するケース部分が傾動モーメントを受けて破損し、あるいは、加熱ヘッド2の受熱部31と対向する熱源11が、受熱部31で圧潰されるのを良く防止できる。
【0056】
上記の実施例以外に、熱源11は第2ケース7の内面に張出した支持壁で固定支持することができる。また筒壁44は、前ケース7aあるいは後ケース7bと一体に形成することができる。電源部12は電池である必要はなく、商用電源を電源部12とし、あるいは2次電池を電源部12とすることができる。スイッチ操作具13は、押しボタン構造である必要はなく、スライドノブ構造であってもよい。
【0057】
上記の実施例では、本体部1の一端に加熱ヘッド2を設け、他端にイオンクレンジング装置を設けたが、本発明の美容器具は、少なくとも本体部1の一部にイオンクレンジング装置が設けてあれば足りる。加熱ヘッド2は、ステンレス、銅合金を素材にして形成することができる。また、使用時における加熱ヘッド2の加熱温度が充分に低いので、必要があればプラスチック成形品、あるいはガラス成形品などで加熱ヘッド2を構成することができる。肌用電極53は、必要があれば金属、あるいは金属めっきで被覆されたプラスチック材で形成することができる。