特許第5739056号(P5739056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5739056犠牲リチウム電極を含むリチウムイオン電池前駆体、および正の織物変換電極
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5739056
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】犠牲リチウム電極を含むリチウムイオン電池前駆体、および正の織物変換電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20150604BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20150604BHJP
   H01M 4/74 20060101ALI20150604BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20150604BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20150604BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20150604BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20150604BHJP
   H01M 4/1397 20100101ALI20150604BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   H01M10/052
   H01M2/16 P
   H01M4/74 C
   H01M4/66 A
   H01M10/0585
   H01M10/0566
   H01M4/136
   H01M4/1397
   H01M2/26 A
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-503192(P2014-503192)
(86)(22)【出願日】2012年4月3日
(65)【公表番号】特表2014-510385(P2014-510385A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】FR2012050717
(87)【国際公開番号】WO2012136925
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2013年10月31日
(31)【優先権主張番号】1152972
(32)【優先日】2011年4月6日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504462489
【氏名又は名称】エレクトリシテ・ドゥ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ヴィダル,エロディ
(72)【発明者】
【氏名】ラスコー,ステファン
【審査官】 竹口 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−537963(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0231688(US,A1)
【文献】 国際公開第00/007255(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−1つ以上の電極モジュール(1)であって、
(a)織物金属構造(4)で構成され、表面(5)がフッ素またはフッ素酸化物によって処理され、元素の周期表の第4〜12グループに属する1つ以上の遷移金属を基にした少なくとも1つの織物正極前駆体(2)と、
(b)非プロトン性有機溶媒中のリチウム塩の溶液に含浸され、上記織物正極前駆体の表面全体を覆う高分子セパレータ(6)と、
(c)上記(a)および上記(b)によって形成される構造体が封入され、一様な組織を形成する負極前駆体(3)と、によって各々が形成されている1つ以上の電極モジュール(1)と、
−電気伝導体(10)によって支持されている金属リチウムストリップ(9)によって形成され、非プロトン性有機溶媒中のリチウム塩の溶液に含浸された高分子セパレータ(11)によって1つまたは複数の上記電極モジュールから分離されている少なくとも1つの犠牲金属リチウム電極と、を備え、
すべての上記織物正極前駆体の累積幾何学的表面積に対する上記リチウムストリップの幾何学的表面積の比率は、0.05〜0.33の範囲内であることを特徴とするリチウムイオン蓄電池前駆体。
【請求項2】
上記表面がフッ素またはフッ素酸化物によって処理された上記織物金属構造は、5μm〜50μmの間の等価直径を持つ短織物によって形成された不織布構造であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン蓄電池前駆体。
【請求項3】
上記織物金属構造は、非合金または低合金のスチールによって形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン蓄電池前駆体。
【請求項4】
複数の平面型電極モジュールは、互いに等しい大きさを有し、互いに平行に重ね合わせられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン蓄電池前駆体。
【請求項5】
上記犠牲金属リチウム電極の上記リチウムストリップの平面は、1つまたは複数の上記モジュールの平面と平行であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン蓄電池前駆体。
【請求項6】
各上記電極モジュールの上記負極前駆体(c)と接触している電子コレクタ(8)であって、1つまたは複数の上記電極モジュールの平面に平行に配置され、複数の電極モジュールの間に挿入された1つ以上の銅格子によって形成されている電子コレクタ(8)をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン蓄電池前駆体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムイオン蓄電池前駆体によってリチウムイオン蓄電池を製造する方法であって、
(i)上記犠牲金属リチウム電極によって、1つまたは複数の正極前駆体を電気化学的に還元する工程であって、上記正極前駆体の上記フッ化物またはフッ化酸化物の層が部分的または完全にナノ構造変換層に変換されるまで上記正極および上記犠牲金属リチウム電極の間に電位または電流を印加することによって、上記犠牲金属リチウム電極の部分的または完全な消費をもたらすことを含む工程と、
(ii)上記蓄電池前駆体の上記犠牲金属リチウム電極によって、上記負極の前駆体を電気化学的に還元する工程であって、上記犠牲金属リチウム電極に相対して測定された上記負極の電位が1.5V未満となるまで、上記犠牲金属リチウム電極から上記負極へと電流を通すことを含む工程と、を含み、
上記の2つの工程を上記の順または逆の順に行うことが可能であることを特徴とする方法。
【請求項8】
上記工程(i)および上記工程(ii)は、上記犠牲金属リチウム電極が完全に消失するまで続けられることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記工程(i)および上記工程(ii)は、上記犠牲金属リチウム電極が完全に消失する前に停止させられることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
1つまたは複数の上記正極前駆体の還元中に、徐々に低い電位が印加されることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、犠牲リチウム電極を備えるリチウムイオン蓄電池の前駆体、ならびに当該前駆体からリチウムイオン蓄電池を製造する方法に関する。
【0002】
「リチウムイオン」(Li−イオン)という用語は、負極および正極それぞれがリチウムと電気化学的および可逆的に反応する材料を備え、電解質がリチウムイオンを含む技術を一般的に意味する。リチウムと電気化学的および可逆的に反応する材料は、例えばリチウム含有あるいはリチウム非含有の挿入材料、炭素、または変換材料である。電解質は、非プロトン性有機溶媒中の溶液に含まれるリチウムのフッ素化塩を一般的に含む。
【0003】
仏国特許出願公開第2870639号は、電子コレクタの表面に、電子コレクタを構成するナノ粒子であって、1つまたは複数の金属の化合物(例えば、ハロゲン化合物)からなるナノ粒子を含む「ナノ構造」の電気化学的活物質の層が存在していることを特徴とするリチウムイオン蓄電池のための電極を出願人に代わって開示している。電気化学的活物質の特有な構造は、電力および単位質量あたりのエネルギー密度の観点で性能を向上させる。
【0004】
仏国特許出願公開第2901641号は、上記のナノ構造電極の織物構造および当該電極によって製造された半蓄電池(電極+セパレータ)に、最初から存在する上記のナノ構造電極の向上について、出願人に代わって開示している。
【0005】
F. Badwayら(F. Badway, N. Pereira, F. Cosandey, C.G. Amatucci, J. Electrochem. Soc., 150. A1209 (2003))は、リチウムと、イオンフッ化物またはビスマスフッ化物との反応について研究している。当該反応は、金属フッ化物を金属およびリチウムフッ化物のナノ構造層へ変換させる。特に鉄フッ化物は、数々の利点をもたらす。まず、鉄フッ化物とリチウムイオンとの反応は、LiCoO2(274mAh/g)等の従来の正極材料の理論上生産能力と比較して、高い理論上生産能力(FeF2:571mAh/g、FeF3:712mAh/g)をもたらす。特にこの変換反応の電位は、リチウムイオン電池において正極として使用する場合に適合する。さらに、鉄フッ化物は、極めて高価というわけではなく、環境に対して低い毒性を有する。実際には、FeF3ナノ複合物(FeF385%/C15%)を基にした正極と、金属リチウムで形成された負極とからなる蓄電池に関して、Badwayらは、複合物で600mAh/gの可逆能力を得ている。これは、LiCoO2を基にした従来の正極において、平均電圧2.2V下で400%増加したことに相当し、70℃で循環した場合に最終エネルギーが200%増加したことに相当する。
【0006】
出願人は、ナノ構造電極を含むリチウムイオン蓄電池を完全にする目的でなされた自身の研究のコンテクストにおいて、鉄を基にした基板に対する電気化学的処理によって、鉄フッ化物または鉄フッ化酸化物を基にした変換層を形成することは当業者であれば可能であることを示している。上記の処理は、例えば含水エチレングリコール中の溶液が0.05mol/l〜0.1mol/lの間の濃度でフッ化アンモニウムNH4Fを含む場合の10〜60V/ENH(標準水素電極)の間の電位における正極分極である。この処理の後には、メタノール等の溶液中ですすぐ工程が行われ、120℃の温度のオーブンで1時間乾燥される。得られる電極は、鉄フッ化物を含む変換層を有している。
【0007】
しかしながら、鉄フッ化物(あるいは、他の金属フッ化物またはフッ化酸化物)を利用するリチウムイオン蓄電池は、従来のリチウムイオン蓄電池と比較して複雑である。
【0008】
その理由は、リチウムイオン電池を製造するために、ナノ構造の正極と、グラファイトを基にした負極とが用いられている場合、このように構成された蓄電池はリチウム源に欠けるという問題に直面する。
【0009】
本発明の基礎をなす考案は、リチウムイオン源として犠牲電極を用いることである。
【0010】
犠牲リチウム電極を蓄電池の製造において用いることは既に周知である。
【0011】
例えば、米国特許第5871863号には、質量および体積に関して、リチウム化酸化マンガン(LiMn24)を基にした正極の容量を増大させる目的で犠牲リチウム電極を用いることが開示されている。LiMn24材料は、参考材料として提供されたLiCoO2材料の体積容量よりも10%〜20%低い体積容量を有している。犠牲リチウムまたはリチウム合金は、リチウム化酸化マンガンによって構成された正極と直接的または間接的に接触している。一実施形態では、電解質溶液の存在下におけるリチウムストリップと正極との間の自己放電反応の発熱性を制限するために、電子伝導体は両者の間に介在している。この自己放電反応は、正極材料へのさらなる量のリチウムイオンの注入をもたらす。電極および蓄電池がシート構造を有していることから、リチウムイオンの均一な分布を保証するために正極の表面全体にストリップを供給する必要がある。換言すれば、リチウムストリップの幾何学的表面積と、正極の累積幾何学的表面積との間の比率は、低すぎであってはならず、理想的には1に近づくべきである(正極の表面全体がリチウムストリップによって覆われている場合)。米国特許第5871863号の例で用いられているストリップの厚さは、30μmである。
【0012】
出願人は、仏国特許出願公開第2901641号に開示されたナノ構造電極を含むリチウムイオン蓄電池を完全にする目的でなされた自身の研究のコンテクストにおいて、正極の織物構造の効力および蓄電池の種々の構成部材の特有な構成の効力により、上述の米国特許第5871863号の方法よりも簡単な方法でリチウム源として金属リチウムを用いることが可能であることを発見している。
【0013】
この理由は、後ほど詳述する本発明に係る蓄電池前駆体においては、複数の正極が互いに重なってしまったり、互いに絡み合ったりした場合でも、リチウムイオンをあらゆる方向(特に織物電極の平面に対して垂直な方向)に通過させることを可能にするためである。その結果、蓄電池および/または蓄電池前駆体におけるリチウムイオンの均一な拡散がもたらされる。
【0014】
したがって、本発明においては、(米国特許第5871863号のように)各リチウム受取電極に対してリチウムストリップを供給する必要がない。その代わり、リチウムイオンを受け取るすべての正極に対して、所望の量のリチウムを均一な方法で供給するためには比較的厚さが大きい単一のリチウムストリップまたは少数のストリップで十分である。
【0015】
すなわち、本発明は、1つ以上の重畳ナノ構造織物電極だけでなく、少なくとも1つの犠牲リチウム電極(換言すれば、蓄電池前駆体から最終的な蓄電池を製造するまでの間に部分的または完全に消費されるリチウムまたはリチウム合金によって形成された電極)を備えるリチウムイオン蓄電池前駆体を提供する。
【0016】
本発明に係る蓄電池前駆体は、
−1つ以上の電極モジュールであって、
(a)織物金属構造で構成され、表面がフッ素またはフッ素酸化物によって処理され、元素の周期表の第4〜12グループに属する1つ以上の遷移金属を基にした少なくとも1つの織物正極前駆体と、
(b)非プロトン性有機溶媒中のリチウム塩の溶液に含浸され、上記織物正極前駆体(a)の表面全体を覆う高分子セパレータと、
(c)上記(a)および上記(b)によって形成される構造体が封入され、一様な組織、好ましくは連続的な組織を形成する負極前駆体と、によって各々が形成されている1つ以上の電極モジュールと、−電気伝導体によって支持されている金属リチウムストリップによって形成され、非プロトン性有機溶媒中のリチウム塩の溶液に含浸された高分子セパレータによって1つまたは複数の上記電気モジュールから分離されている少なくとも1つの金属リチウム電極と、を備え、
すべての上記織物正極前駆体の累積幾何学的表面積に対する1つまたは複数の上記リチウムストリップの累積幾何学的表面積の比率は、0.05〜0.33、好ましくは0.1〜0.25の範囲内であることを特徴としている。
【0017】
このように、本発明の蓄電池前駆体は、織物正極前駆体または2つ以上の織物正極前駆体を積層したものが封入される組織(好ましくは連続的な組織)を形成する負極前駆体によって各々が構成された1つ以上の「電極モジュール」と、正極前駆体の織物をコーティングする液体電解質に含浸されることにより、負極前駆体から完全に絶縁された高分子セパレータと、を備える。
【0018】
負極前駆体は、リチウムイオン蓄電池において一般的に用いられているリチウムイオン注入材料を備えている。この種の材料は、当業者に既知である。このような材料の例には、グラファイト、炭素、または酸化チタンが含まれる。負極前駆体は、高分子バインダ(好ましくは、ポリ(ビニリデンフッ化物)(PVDF)またはビニリデンフッ化物とヘキサフルオロプロピレン(PVDF−HFP)との共重合体)をさらに備えていることが好適である。
【0019】
各正極前駆体は、−元素の周期表の第4〜12グループに属す1つ以上の遷移金属を含む電子コレクタと、−電子コレクタの表面上に、当該電子コレクタを化学処理または電気化学処理することによって形成されたフッ化物またはフッ化酸化物の層と、を備えている。
【0020】
本発明の蓄電池前駆体から蓄電池への製造中において、電子コレクタの表面上の少なくとも1つの遷移金属のフッ化物またはフッ化酸化物の層は、犠牲リチウム電極からのリチウムイオンと反応することにより、ナノ構造変換層を形成する。このナノ構造変換層は、仏国特許出願公開第2870639号および仏国特許出願公開第2901641号に詳細に説明されているが、リチウムイオン蓄電池の正極の電気化学的活物質を構成する。これは、1〜1000nm(好ましくは、10〜300nm)の範囲内の平均粒径を有するナノ粒子、またはこのようなナノ粒子の凝集体を含んでいる。
【0021】
電子コレクタの1つまたは複数の遷移金属は、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、クロム、および鉄からなる群から選択されることが好ましく、鉄であることが特に好ましい。
【0022】
1つの特に好適な実施形態では、織物正極前駆体は、フッ素またはフッ素酸化物によって表面が処理された非合金または低合金のスチールによって形成されている。
【0023】
正極前駆体および正極は、織物構造(換言すれば、規則的または不規則的に並列におよび/または混合して並べられた多数の織物によって構成されている構造)を有している。当該構造は、特に織布の織物構造または不織布の織物構造であってもよい。
【0024】
正極前駆体を形成するために用いられている織物構造は、非常に微細な複数の繊維であって、互いの間隔が極めて小さい複数の繊維によって構成されていることが好ましい。この理由は、繊維がより微細であり、かつ単位表面積当たりの繊維の数がより大きいほど、比表面積(BETまたは電気化学インピーダンス分光法によって判定)がより大きくなるためである。しかしながら、ワイヤの繊細さは、引き伸ばされていた金属または金属合金のための容量によって制限され得る。銅、アルミニウム、青銅、黄銅、およびクロムとニッケルとによって合金された一部のスチール等の一部の金属および合金は、引き伸ばしに好適に寄与するため、非常に微細なワイヤの形態で得られ得る。これに対して一般的なスチール等の他の金属または合金は、引き伸ばすことが難しく、不織布等の短織物を持つ構造により好適である。
【0025】
一般的に、正極前駆体を構成する金属ワイヤまたは金属織物の断面における等価直径は、5μm〜1mm、好ましくは10μm〜100μm、より好ましくは15μm〜50μmの間である。「等価直径」とは、ワイヤまたは織物の断面の表面積と同じ表面積を持つ円の直径を意味する。
【0026】
正極においては、変換層(電気化学的活物質)が、電子コレクタの表面全体を覆うことが好ましく、好ましくは30nm〜15000nm、より好ましくは20nm〜12000nmの間の厚さを有している。
【0027】
織物正極の前駆体は、好ましくは1cm〜50cm、より好ましくは2cm〜20cmの間の平均長を持ち、好ましくは5μm〜50μmの間の等価直径を持つ短織物によって形成された不織布構造を有していることが好ましい。
【0028】
出願人は、市販のスチールウールフェルトを好んで用いている。これらのフェルトは、密度が0.05〜5g/cm3の間であることが好ましく、1〜3g/cm3の間であることがより好ましい。これらの値は、フェルトに対して1barの圧力を印加することによって判定されたものである。
【0029】
正極前駆体は、織物構造を有していることに起因してイオン(より具体的には犠牲電極からのリチウムイオン)の透過性を有している。この織物構造が非常に緻密である場合は、透過性または「多孔性」を上げるために、織物構造に孔または開口を設けることが望まれ得る。この孔または開口は、織物構造の表面全体に渡って均一に分布されていることが好ましい。これらの孔は、織物構造に最初から存在しているものと合わせられる。本特許出願において、織物正極の前駆体内の「孔」または「開口」と言及した場合、この文言は織物構造に内在する開口、および織物構造を貫通する等して製造された開口を常に包含するものである。
【0030】
正極前駆体の表面は、セパレータの機能を提供する高分子コーティングによって表面全体が覆われている。本発明の蓄電池前駆体においては、この高分子コーティングは、少なくとも1つのリチウム塩を含む非プロトン性液体電解質に含浸されて膨張している。本発明では、液体電解質によって膨張したセパレータコーティングは、正極前駆体の織物構造が常に明らかとなるように十分に薄いことが好ましい。換言すれば、セパレータを用いても、織物構造が織物または非織物であるかにかかわらず、当該織物構造の開口、孔、または網目を完全に遮蔽しないことが好ましい。
【0031】
しかしながら、セパレータによってこれらの孔を遮蔽しないことは、本発明において必要不可欠な技術的特徴ではなく、高分子セパレータが織物電極の開口を完全に遮蔽する場合でも本発明は機能する。この理由は、リチウム塩の溶液に含浸されたセパレータが犠牲電極からのリチウムイオンに対して透過性を示すことにより、これらのイオンが最初のサイクリング中に当該セパレータを通過することができるためである。
【0032】
セパレータによって覆われた正極前駆体における任意の空隙は、負極前駆体の材料によって、正極前駆体によって形成されたアセンブリ、液体電解質によって含浸されたセパレータ、および電極モジュールを形成する負極前駆体が実質的に埋められる。したがって、セパレータによって覆われた正極前駆体の空隙の度合いを判定することが可能であり、当該度合いは、各電極モジュールの全体積に対する当該電極モジュールの負極前駆体の体積と等しい。この空隙の比率は、好ましくは20%〜90%、より好ましくは25%〜75%、さらにより好ましくは50%〜70%の間である。
【0033】
各電極モジュールの厚みは、重ね合わせられている織物電極の数に応じて幅広く変動し得る。この厚みは、一般的に100μm〜5cmの間であり、150μm〜1cmの間であることが好ましく、200μm〜0.5cmの間であることがより好ましい。
【0034】
織物正極前駆体への薄いコーティングのセパレータの形成は、浸水法、噴霧法、または化学蒸着法等の種々の適当な方法で行われ得るが、当該コーティングは、電気化学的に形成されることが好ましく、電気泳動法という名で知られる技術によって形成されることがより好ましい。この技術では、コーティングが行われる金属構造が、形成されるコーティングの基本となる物質を含む非プロトン性溶液に負極として導入される。この技術では、極めて複雑な構造であっても、当該構造の全表面を覆う非常に精細で均一な連続的なコーティングを可能とする。負極(すなわち、織物構造)に向かって移動することを可能にするために、供給される物質は正電荷を帯びている必要がある。例えば、カチオン単量体を用いることが知られている。当該カチオン単量体は、後の負極への供給および重合化により不溶性の高分子コーティングを形成する。
【0035】
本発明の蓄電池前駆体に関する1つの好適な実施形態では、セパレータは、カチオン単量体(好ましくは、第4級アンモニウムの作用を含むカチオン単量体)を含む非プロトン性溶液の電気泳動によって形成されたセパレータである。したがって、セパレータは、第4級アンモニウムの作用を含む高分子によって形成された高分子コーティングであることが好ましい。
【0036】
液体電解質に含入されているリチウム塩は、リチウムイオン蓄電池において用いることができ、当業者にとって周知である。これらは一般的にフッ素で処理されたリチウム塩である。これらの例は、LiCF3SO3、LiClO4、LiN(C25SO22、LiN(CF3SO22、LiAsF6、LiSbF6、LiPF6、およびLiBF4を含む。上記の塩は、LiCF3SO3、LiClO4、LiPF6、およびLiBF4からなる群から選択されることが好ましい。
【0037】
一般的に、上記の塩は、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、およびエチレンカーボネートを種々の割合で混合した物によって一般的に構成された無水非プロトン性有機溶媒に溶解している。したがって、当業者に周知のように、電解質は一般的に少なくとも1つの環式または非環式のカーボネート(好ましくは、環式カーボネート)を含んでいる。例えば、上記電解質は、Merck社製の市販の化合物であるLP30(エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、およびLiPF6を含む)である。当該LP30の溶液は1モル/リットルの塩と、同量の2つの溶媒とを含む。
【0038】
以上で説明したように、本発明の蓄電池前駆体は、少なくとも1つの「犠牲」金属リチウム電極をさらに備えている。この電極が「犠牲」と呼ばれる理由は、本発明の蓄電池前駆体がリチウムイオン蓄電池に変換される最初の形成サイクリングの間、当該電極は部分的または完全に消耗されるためである。この犠牲電極は、電気伝導体によって支持された金属リチウムのストリップによって形成されていることが好ましい。この電気伝導体は、例えば銅板であり、リチウム電極からの電子コレクタとして働く。
【0039】
本発明の蓄電池前駆体は、50μm〜150μmの標準的な厚さを持つ市販のストリップを用いて作動可能であるという利点を持つ。織物正極前駆体を通るリチウムイオンの自由拡散により、十分な厚みを持つ単一のストリップ、または1つ以上の電極モジュールを挟む2つのストリップがすべての正極前駆体に十分な量のリチウムイオンが供給されることを可能にする。
【0040】
1つまたは複数のリチウムストリップの累積幾何学的表面積と、すべての織物正極前駆体の累積幾何学的表面積との比率は、0.05〜0.33の間であり、好ましくは0.1〜0.25の間である。換言すれば、1つのリチウムストリップに関して、幾何学的表面積がリチウムストリップの幾何学的表面積と等しい3〜20の織物正極(好ましくは、4〜10の正極)を用いる選択肢が与えられる。
【0041】
損傷した電極モジュールの場合、犠牲リチウム電極は損傷した構造を囲み得、かつ/または当該構造の中心部に配置され得る。
【0042】
以下には、リチウムを適当量供給するために求められる犠牲電極の大きさの計算例を示
2.5Ahの電極モジュールの積層体からなる10Ahの蓄電池前駆体の場合、各電極モジュールは以下の通りに構成される:(a)5つの正極前駆体;(b)織物正極前駆体の全表面を覆う高分子セパレータ;(c)グラファイトを基にした負極であって、可逆容量340mAh/gを持ち、バインダ高分子および炭素を有し、単位体積当たりの容量(電解質に含浸された後)が405mAh/cm3である、密度1.7g/cm3を持つ一様な組織を形成し、5つの正極前駆体のセパレータ(a)+(b)と共に当該5つの正極前駆体内の空隙を埋める負極。
【0043】
各正極前駆体は、見かけの密度2.3g/cm3、空隙率64%、および厚さ142μmを有している。当該正極前駆体は、幾何学的表面積当たりの重さが5mg/cm2である鉄フッ化物FeF3から構成された変換層を有している。当該正極前駆体のサイクリング中の単位質量当たりの容量は鉄フッ化物の500mAh/gであり、ナノ構造変換層を形成するために求められる容量は712mAh/gである。各正極前駆体は、厚さ5μmであり、電解質で膨張したセパレータ層によって覆われている。したがって、セパレータ(a)+(b)を持つ正極前駆体のアセンブリは、142+2*5=152μmの厚さを持ち、41%の空隙率を持つ。
【0044】
サイクリング中、5つの織物正極を持つ各モジュールは、5*5mg/cm2*500mAh/g=12.5mAh/cm2の容量を持つことになる。セパレータを持つ織物正極のモジュールの厚みは、5×152=760μmである。1つのモジュール、すなわちセパレータを持つ5つの織物正極前駆体によって占められる体積は、
【0045】
【数1】
である。
【0046】
セパレータ(a)+(b)を持つ正極前駆体のアセンブリにおける空隙率は41%であるため、セパレータを持つ織物正極内の空隙は30.4*0.41=12.5cm3となる。12.5cm3の体積を占める負極前駆体の容量は、12.5cm3×405mAh/cm3=5Ahとなる。この容量は、織物正極のモジュールの容量と同じであり、蓄電池の協和的な機能のために当該織物正極のモジュールの容量と併合される。
【0047】
織物正極の最初の電気化学的還元中には、変換層の712mAh/g、すなわち712mAh/g*5mg/cm2=3.56mAh/cm2に相当する量のリチウムイオンを供給する必要がある。
【0048】
さらに、負極の電位を正極の電位よりも低くさせ、負極内に捕捉されて残留しているリチウムイオンを蓄電池の最初の充電/放電時に供給するために、犠牲電極を用いて負極が持つ約10%の容量と等しい容量である1.25mAh/cm2を提供すること、すなわち各モジュールの12.5mAh/cm2のうち1.25mAh/cm2を供給することが好適である。
【0049】
したがって、モジュール内の5つの正極各々に3.56mAh/cm2の容量を供給し、セパレータを持つ正極の空隙を占有する負極に1.23mAh/cm2の容量を供給して、計19.05mAh/cm2の容量を供給することが好適である。犠牲金属リチウム電極は、リチウムイオンを形成するための金属リチウムの電気化学的酸化反応によってこの容量を供給することができる。当該電気化学的酸化反応において生成されるリチウムイオンは、最小でも
【0050】
【数2】
の厚さを有している必要がある。
【0051】
よって、2つの電極モジュールによって構成された蓄電池前駆体においては、最小で91μmの厚さを持つ2つのリチウムストリップ、または最小で2*91=182μmの厚さを持つ単一のリチウムストリップを使用することが求められる。
【0052】
さらに、冒頭で既に述べたように、蓄電池前駆体の変換工程中に完全に犠牲リチウム電極を消費しないことにより、当該犠牲リチウム電極を特大にさせることも興味深い。この理由は、蓄電池の負極および正極中に含入されていたリチウムを金属リチウムの形態で再生させるために、残りのリチウム電極を蓄電池の末期に好適に使用することができ、結果、蓄電池の再利用に貢献することができるためである。リチウムの再生方法にはいくつかの工程が含まれる:
(1)犠牲電極上の負極を完全に放電する(すなわち、リチウムイオンを完全に抽出する)工程;
(2)犠牲電極上の正極を完全に放電する(すなわち、リチウムイオンを完全に抽出する)工程;
(3)電解質を開放して移動させる工程;および
(4)金属リチウムを、機械的移動または180℃を超える温度によるリチウムの溶融、および重力フローのいずれかによって再生する工程。
【0053】
本発明の蓄電池前駆体は、平面形態である大きさが等しい複数の電極モジュールを互い平行に重ね合わせて備えていることが好ましい。
【0054】
2つの電極モジュールは、双方の間に挿入された電子コレクタであって、負極前駆体(c)と電気的に接触している電子コレクタによって分離されていることが好ましい。すべての電極モジュールにおいて、犠牲リチウム電極からのリチウムイオンの自由拡散を妨げないために、電子コレクタは自身の表面全体に分布(好ましくは均一に分布)した一定の数の開口を備えている。負極前駆体の電子コレクタは、例えば金属格子または金属織物構造である。負極前駆体の電子コレクタは、銅によって構成されていることが好ましい。1つの好適な実施形態では、1つまたは複数の電極モジュールの平面に平行に配置され、複数の電極モジュールの間に挿入された1つ以上の銅格子によって形成されている。
【0055】
負極前駆体(c)の電子コレクタ内の空隙または開口は、負極前駆体の材料によって埋められていることから、隣接した2つの電極モジュール間のイオン伝導の連続性を確立することができる。
【0056】
犠牲電極を形成する金属リチウムストリップは、電極モジュールの積層体に対向して配置して、当該ストリップの平面と1つまたは複数の電極モジュールの平面とが平行となるようにすることにより、織物正極前駆体の平面と平行となるようにすることが好ましい。既に上述したように、リチウムストリップは負極前駆体と電気的に接触していない。その代わりに、両者の間にはイオン伝導セパレータが挿入されている。
【0057】
1つの好適な実施形態では、電子コレクタによって支持されているリチウムストリップは、電極モジュールの積層体のいずれかの端部に設けられている。1つまたは複数のリチウムストリップは、積層体の1つまたは両方の主面を完全に覆っていることが好ましい。
【0058】
本発明のリチウムイオン蓄電池前駆体は、以下の2つの工程からな方法によって蓄電池に変換される:(i)犠牲電極によって、1つまたは複数の正極前駆体を電気化学的に還元する1つ目の工程。この工程の進行中において、金属リチウムストリップは部分的に消費され、リチウムイオンは犠牲電極のセパレータ、負極前駆体の材料、および正極のセパレータを通って、正極前駆体のフッ化物またはフッ化酸化物の層へと移動する。当該層は、最終的な正極の活物質を構成するナノ構造変換層を形成するように反応する。
【0059】
(ii)犠牲電極によって、負極前駆体を電気化学的に還元する2つ目の工程。この工程の進行中において、金属リチウムストリップは完全または部分的に消費され、リチウムイオンは犠牲電極のセパレータを通って移動して負極の材料に挿入される。この工程は、犠牲金属リチウム電極と相対して測定された負極の電位が1.5V未満となるまで続けられる。
【0060】
したがって、本発明は、上述したリチウムイオン蓄電池前駆体からリチウムイオン蓄電池を製造する方法であって、以下の2つの工程を含む:
(i)犠牲電極によって、1つまたは複数の正極前駆体を電気化学的に還元する工程。この工程は、正極および犠牲金属リチウム電極の間に電位または電流を印加すること、および犠牲金属リチウム電極の部分的または完全な消費をもたらすことを含む。この工程の進行中において、犠牲金属リチウム電極は、自身の各コネクタ(電子コレクタ)を介して正極前駆体に接触している。また、犠牲金属リチウム電極の電気化学的酸化、正極前駆体のフッ化物またはフッ化酸化物の層の電気化学的還元、および犠牲金属リチウム電極からのリチウムイオンの正極前駆体のフッ化物またはフッ化酸化物の層への緩慢な拡散を誘発させるために、電位(概ね3.5〜1.5Vの間の電位)が印加される。
【0061】
(ii)犠牲金属リチウム電極によって、負極前駆体を電気化学的に還元する2つ目の工程。この工程の進行中において、犠牲金属リチウム電極と相対して測定された負極の電位が1.5V未満になるまで、犠牲金属リチウム電極および負極前駆体の間に電流が印加される。これにより、犠牲金属リチウム電極の電気化学的酸化および負極の電気化学的還元が誘発される。
【0062】
これら2つの工程は、この順に行われてもよいし、逆の順に行われてもよい。すなわち、犠牲金属リチウム電極によって負極の前駆体を還元する工程を、犠牲リチウム電極によって正極前駆体を還元する工程の先に行ってもよい。
【0063】
1つの実施形態では、方法の最後の工程は、リチウム電極が完全に消失するまで続けられる。
【0064】
他の実施形態では、上記の工程は、リチウム電極が完全に消失する前に停止することにより、残りのリチウム電極を保存することができる。当該残りのリチウム電極は、蓄電池の末期においてリチウムを再利用するために有用である。
【0065】
工程(i)の進行中において、最初に比較的高い電位を印加した後、徐々に低い電位を印加する選択肢が与えられる。印加される電位を段階的に低減することが好ましい。すなわち、電位の値は、電流密度が低すぎになるまで所定の時間維持され、その後電流の値は下げられ、この新たな値に再び維持される前に、当該電流の値は、電流密度が再び低い値になるまで下げられる。
【0066】
この低電流値の達成は、蓄電池におけるリチウムイオンの濃度が十分に均一な状態(換言すれば、蓄電池におけるリチウムイオン(電流の通過のために必要)の濃度勾配が低い状態)の達成に相当する。これは、種々の正極前駆体が犠牲リチウム電極と相対して同じ電位レベルに達したことを意味する。このように、電位を連続的な低減段階を含む方法は、リチウムイオンに蓄電池前駆体の内部に拡散させる時間を与え、それ故、当該蓄電池前駆体を構成する異なる正極前駆体の内部に拡散させ、電位を印加する各段階時にこのようにことを行うことを可能にする。
【0067】
同様にして、工程(ii)の進行中において、最初に比較的高い電位を印加した後、所望の電位が維持されるまで徐々に低い電位を印加する選択肢が与えられる。
【0068】
犠牲金属リチウム電極が完全に消費されたか、または自身のフッ化物またはフッ化酸化物の層がナノ構造変換層に変換するために所望の量のリチウムイオンが正極前駆体に供給された場合、および犠牲金属リチウム電極に相対して1.5V未満の電位を維持するために必要な量のリチウムイオンが負極前駆体に供給された場合、1つまたは複数の織物正極は電流原または電位源を介して負極の電流コレクタに接続されることにより、蓄電池の充電の終了電位に達するまで当該電流コレクタを通じて電流を通すことで蓄電池に対して最初の充電が行われる。
【0069】
本発明について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の蓄電池前駆体の一実施形態を示す図であり、図2および3は、本発明の蓄電池を製造する方法の1つ目および2つ目の工程それぞれの間における同じ蓄電池を示す図である。
【0070】
図1に示された蓄電池前駆体は、互いに重なり合った3つの正極前駆体2を各々が有する3つの電極モジュール1を備える。この正極前駆体は、横断面図に示された横ワイヤと、縦断面図に示された縦ワイヤとを持つ織布の織物構造を有している。正極前駆体の各ワイヤは、金属フッ化物またはフッ化酸化物の層5によって囲まれた中央金属部4を備えており、当該金属フッ化物またはフッ化酸化物の層は、薄いセパレータ層6によって順に覆われている。
【0071】
正極のワイヤ2は、負極前駆体3を形成する一様な連続した組織内に封入されている。正極前駆体2は、電気コネクタ7に接合されており、負極前駆体3は、電気コネクタ8と電気的に接触している。負極前駆体の電気コネクタ8は、電極モジュール1と交互に配置されている銅格子である。負極前駆体3の材料は、正極前駆体2のワイヤを完全に囲むだけでなく、負極前駆体3の電気コネクタ8内の空隙を埋めることにより、蓄電池の体積全体に渡って拡張する、負極前駆体の連続的ネットワークを提供する。ここに示す蓄電池前駆体は、金属コネクタ10に供給された金属リチウムのストリップ9から各々が形成される2つの犠牲電極を備えている。金属リチウムのストリップは、セパレータ11の薄層によって負極前駆体3と分離されている。
【0072】
図2は、蓄電池前駆体から蓄電池への変換の1つ目の工程の間における電気化学的処理を示す。正極前駆体2のコネクタ7と犠牲電極9のコネクタ10との間に電位を印加することにより、犠牲電極9からのリチウムイオンの、負極を介した正極前駆体2の金属フッ化物またはフッ化酸化物の層5への移動が引き起こされる。この工程の最後には、フッ化物またはフッ化酸化物の層は、ナノ構造の変換層に変換されている。
【0073】
図3は、本発明の方法の2つ目の工程の間における電気化学的処理を示す。電位の印加、または負極前駆体3のコネクタ8と犠牲電極9のコネクタ10との間の電流の印加は、犠牲電極9から負極前駆体2へのリチウムイオンの移動を引き起こす。この工程の最後(換言すれば、犠牲電極の金属リチウム負極と相対して測定された負極の電位が、工程(i)の最後に犠牲電極の金属リチウムと相対して測定された正極の電位よりも低い値に到達した場合)には、犠牲電極9はほとんど完全に消失している。その後、蓄電池の最初の充電を行うために、正極前駆体2のコネクタ7は、電圧源または電流原を介して負極3のコネクタ8に接合され得る。その後、正極のリチウムイオンは、負極へと移動する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】本発明の蓄電池前駆体の一実施形態を示す図である。
図2】本発明の蓄電池を製造する方法の1つ目の工程の間における蓄電池を示す図である。
図3】本発明の蓄電池を製造する方法の2つ目の工程の間における蓄電池を示す図である。
図1
図2
図3