(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0069】
なお、以下の説明において、特に断りがない限り、太陽電池モジュール1の上下の位置関係は、
図1の姿勢を基準に説明する。また、図面は、理解を容易にするために全体的に実際の大きさ(長さ、幅、厚さ)に比べて誇張して描写していることがある。
本明細書においては、体積抵抗率が10
-2Ω・cm以下であれば導電性であると定義する。また、体積抵抗率が、10
2Ω・cm以上であれば、絶縁性であると定義する。以下の説明においては、太陽電池2全体の表裏を表す際には、原則として表面を第一主面、裏面を第二主面という。さらに、以下の説明において、内外を表すときは、特に断りがない限り、光電変換部30を基準とする。
【0070】
第1実施形態における太陽電池モジュール1は、実用に供するに際して、太陽電池2をモジュール化したものである。
【0071】
すなわち、太陽電池モジュール1は、
図2,
図3のように複数枚の太陽電池2(2a,2b)が配線部材3によって電気的に直列又は並列に接続されて形成されるものである。なお、本実施形態では、複数枚の太陽電池2が配線部材3によって電気的に直列接続されたものについて説明する。
【0072】
また、太陽電池モジュール1は、
図1,
図3のように表面部材5(透光性部材)と裏面部材6の間に複数の太陽電池2を介在しており、太陽電池2が埋没するように表面部材5と裏面部材6の間に充填材7が充填されて封止されている。
太陽電池モジュール1は、
図3に示すように、一方の太陽電池2の第一主面(受光面)に設けられた集電極8(正極)と、他方の太陽電池2の第二主面に設けられた裏面電極28(裏面電極層,負極)は、配線部材3により接続されている。そのため、隣接する太陽電池2間は互いに電気的に直列に接続されている。
【0073】
太陽電池2は、
図4のように、光電変換機能を備えた光電変換部30を有している。
すなわち、太陽電池2は、表面部材5を通過した入射光を光電変換部30で収集し、発電するものである。
この光電変換部30の表面(受光面側の面)上には、
図4に示されるように櫛形状の集電極8が設けられている。
【0074】
集電極8は、
図5のように光電変換部30側から順に、第一導電層21と第二導電層22とを有している。また、第一導電層21と第二導電層22との間には、絶縁層19が介在している。言い換えると、第二導電層22は、絶縁層19を挟んで第一導電層21と対向する側に設けられている。
【0075】
太陽電池2は、光電変換部30を平面視したときに、
図5,
図6から読み取れるように光電変換部30上に第一導電層21が被覆された第一導電層形成領域37と、それ以外の領域である第一導電層非形成領域38を有している。また、第一導電層形成領域37は、複数(多数)のフィンガー電極部31と、複数のバスバー電極部32を有している。
【0076】
フィンガー電極部31は、
図6のように長さ方向lに第一導電層21が延伸した部位であって、線状をした部位である。
各フィンガー電極部31は、光電変換部30の表面(受光面側の面)上に分布して配されている。すなわち、各フィンガー電極部31は、幅方向sに所定の間隔を空けて配されており、そのそれぞれが平行になるように等間隔に並設されている。
【0077】
図6の拡大図に示される各フィンガー電極部31の幅(幅方向の長さ)W1は、断線防止の観点から10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。
各フィンガー電極部31の幅W1は、光電変換部30へのより多くの光を導入する観点から150μm以下であることが好ましく、90μm以下であることがより好ましい。
【0078】
各フィンガー電極部31間の間隔(ピッチ)W2は、光電変換部30へのより多くの光を導入する観点から0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましい。
各フィンガー電極部31間の間隔W2は、光電変換部30の面内における電流の分布をより均一にする観点から、4mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましい。
【0079】
バスバー電極部32は、
図6のように幅方向s(長さ方向に対して直交する方向)に第一導電層21が延伸した部位であって、帯状の部位である。
各バスバー電極部32は、光電変換部30の表面(受光面側の面)上に分布して配されている。各バスバー電極部32は、長さ方向lに所定の間隔を空けて配されており、そのそれぞれが平行になるように並設されている。
バスバー電極部32の個数は、フィンガー電極部31の個数に比べて少ない。具体的には、バスバー電極部32の個数は、1個以上5個以下であることが好ましく、2個以上4個以下であることがより好ましい。
【0080】
各バスバー電極部32の幅(長さ方向の長さ)W3は、十分な導電経路を確保する観点から0.3mm以上であることが好ましく、断線等を確実に防止する観点から0.9mm以上であることがより好ましい。
各バスバー電極部32の幅W3は、より光を光電変換部30に入射させる観点から3mm以下であることが好ましく、2.1mm以下であることがより好ましい。
【0081】
ここで、フィンガー電極部31と、バスバー電極部32の位置関係について簡潔に説明する。フィンガー電極部31及びバスバー電極部32は、櫛形状に広がっている。すなわち、バスバー電極部32は、
図6のように幅方向sに延びており、フィンガー電極部31は、バスバー電極部32の中間部位から面方向において交差する方向に張り出している。
本実施形態では、2つのバスバー電極部32が互いに平行に延びており、多数のフィンガー電極部31が、2つのバスバー電極部32を跨がって延びている。すなわち、一つのバスバー電極部32に対して複数のフィンガー電極部31が直交方向に張り出すように延びている。
【0082】
絶縁層19は、絶縁性を有した層である。絶縁層19は、
図5のように部材厚方向に貫通した孔23(開口部)が形成されている。
第一導電層21と第二導電層22は、絶縁層19の孔23の開口を経由して物理的に接続されている。すなわち、第二導電層22の一部は、絶縁層19の孔23の開口を介して、第一導電層21に導通されている。
ここで「一部が導通されている」とは、一部が電気的に接続された状態であり、静電気による導電も含む。典型的には絶縁層19に開口が形成され、その開口に第二導電層22の材料が充填されていることによって、導通されている状態である。
【0083】
絶縁層19は、
図5のように少なくともフィンガー電極部31に位置しており、絶縁層19は、第一導電層非形成領域38に跨がって形成されていることが好ましく、ほぼ全面に形成されていることが特に好ましい。
ここでいう「ほぼ全面」とは、基準面の90パーセント以上の部分を表す。すなわち、絶縁層19は、積層対象(本実施形態では、光電変換部30等)の片面の90パーセント以上の部分に積層されている。絶縁層19は、積層対象(本実施形態では、光電変換部30等)の全面に積層されていることが特に好ましい。
以下、「ほぼ全面」は、基準面の90パーセント以上の部分と定義する。
【0084】
絶縁層19は、上記したように第一導電層非形成領域38にも形成されている。そのため、絶縁層19は、めっき法により第二導電層22が形成される場合に、光電変換部30をめっき液から化学的及び電気的に保護することが可能である。
すなわち、本実施形態の太陽電池2のように、光電変換部30の表面(光入射面側の面)に後述する透明電極層18(
図7参照)が形成されている場合は、めっき液に透明電極層18が晒されて透明電極層18が浸食されるおそれがある。
【0085】
そこで、本実施形態の太陽電池2では、透明電極層18(表面電極層)の表面上に絶縁層19が形成されることで、透明電極層18がめっき液に直接接触することを抑止されている。そのため、絶縁層19により、透明電極層18上への金属層(第二導電層22)の析出を防ぐことができる。また、絶縁層19により、めっき液による透明電極層18の浸食も防止できる。
生産性の観点からも、光電変換部30の第一主面側の面上において、全体に絶縁層19が形成されることがより好ましい。
本実施形態では、絶縁層19は、光電変換部30の第一主面側の面のほぼ全面を覆うように形成されている。
【0086】
配線部材3は、
図4のように長尺状の部材であり、導電性を有した箔状又は板状の部材である。配線部材3としては、例えば、銅等の金属からなる薄板などに金属めっき加工を施したものが採用できる。すなわち、配線部材3には、金属単体だけではなく、めっき加工等の表面加工を施されたものを含む。
本実施形態の配線部材3は、
図9の拡大図に示されるように、配線本体60と、配線本体60の表面に被覆されたコーティング層61から形成されている。
【0087】
配線本体60は、配線部材3の基体となる部位であり、導電体によって形成されている。
コーティング層61は、配線本体60を外傷等から守る部位である。第一導電層21よりも軟らかい層で形成されている。
具体的には、本実施形態の配線部材3は、銅箔の表面にはんだめっき加工を施したものを採用している。すなわち、配線本体60は、銅箔で形成されており、コーティング層61は、はんだなどによって形成されている。
【0088】
配線部材3は、
図5(b)のように太陽電池2の第一導電層21と接着材33を介して物理的及び電気的に接続されている。
【0089】
配線部材3の幅及び厚みは、配線部材3の太陽電池2への接続本数などを勘案して決定されるが、幅は0.5mm以上2.5mm以下であることが好ましく、厚みは50μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0090】
配線部材3の長さは、特に限定されないが、太陽電池2の一辺の長さより長くすることが望ましい。また、配線部材3の長さは、
図2のように光電変換部30の横方向(幅方向)の長さよりも長くして、配線部材3が太陽電池2の外部まで引き伸ばされていることがより好ましい。
本実施形態では、配線部材3の長さは、
図3のように、太陽電池2aの幅を超えて、さらに隣接する太陽電池2bまで至っている。
【0091】
表面部材5(透光性部材)は、
図2のように太陽電池2の第一主面側(光入射側の面)を覆う部材であり、透光性を有した板状又はシート状の部材である。表面部材5の材質としては、ガラス、透光性プラスチックなどが採用できる。
【0092】
裏面部材6は、
図2のように太陽電池2の第二主面側を覆う部材であり、板状又はフィルム状の部材である。裏面部材6としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの樹脂フィルムや鋼板、ガラス板などが採用できる。
【0093】
充填材7は、
図1,
図3のように表面部材5と裏面部材6の間を充填して太陽電池2を封止するものであり、透光性及び絶縁性を有した接着材である。具体的には、充填材7は、樹脂を含んだ樹脂接着剤である。
この絶縁性を有した樹脂接着剤としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂であるEVA(エチレンビニルアセテート)やポリビニルブチラールなどの熱硬化性樹脂が採用できる。
【0094】
続いて、太陽電池モジュール1の各部材の位置関係について説明する。なお、太陽電池モジュール1の各部材の詳細な構成については後述する。
【0095】
まず、第一導電層形成領域37のフィンガー電極部31について注目する。太陽電池2は、
図5(a)のように光電変換部30の表面上に第一導電層21が直接接触するように積層されている。
【0096】
第一導電層21上には、絶縁層19が被覆されており、その上に第二導電層22が積層されている。第二導電層22は、上記したように絶縁層19の孔23を介して第一導電層21と直接物理的に接続されている。
絶縁層19の孔23の内部は、第二導電層22が埋まっており、隣接する孔23,23間は、第二導電層22を介して繋がっている。そのため、第一導電層21よりも電気抵抗が小さな第二導電層22によって、第一導電層21と配線部材3間の電気伝導を補助されているので、第一導電層21と配線部材3での抵抗損失を抑制することができる。
【0097】
第一導電層形成領域37のバスバー電極部32について注目する。太陽電池2は、
図5(b)のように光電変換部30の表面上に第一導電層21が直接接触するように積層されている。第一導電層21上には接着材33(接着層)を介して配線部材3が接着されている。
【0098】
第一導電層21と配線部材3の非接着面には、絶縁層19が被覆されており、その上の一部又は全部に第二導電層22が積層されている。すなわち、第一導電層21と配線部材3の側面は、絶縁層19に覆われており、第一導電層21は、絶縁層19によっても、配線部材3と接合されている。
つまり、太陽電池2は、バスバー電極部32は、第一導電層21及び配線部材3に跨がって、絶縁層19が被覆されている。
【0099】
また、バスバー電極部32全体に配線部材3が接続されており、第一導電層21と配線部材3が接着材33を介して面状に接着されている。そのため、十分に導電面積を確保することができる。
【0100】
第一導電層非形成領域38について注目する。太陽電池2は、
図8から読み取れるように光電変換部30の表面上に絶縁層19が被覆している。つまり、第一導電層非形成領域38全体に絶縁層19が位置している。
【0101】
フィンガー電極部31とバスバー電極部32の交差する部位(すなわち、配線部材3とフィンガー電極部31又はその延長が交差する部位)に注目する。太陽電池2は、
図9のように光電変換部30の表面上に第一導電層21が直接接触するように積層されている。第一導電層21上には接着材33を介して配線部材3が接着されている。第一導電層21と配線部材3の非接着面には、絶縁層19が被覆している。
本実施形態では、第一導電層21と配線部材3は、絶縁層19によって被覆されている。
【0102】
太陽電池モジュール1全体をみると、配線部材3の一端は、
図3のように太陽電池2aの第一主面(表面)に設けられた第一導電層21と接続されている。配線部材3のもう一端は、公知の導電性接着材によって、他の太陽電池2bの光電変換部30の第二主面(裏面)に位置する裏面電極28と接続されている。すなわち、配線部材3は、太陽電池2aの第一主面側から、太陽電池2aと他の太陽電池2bの間を経由して、太陽電池2bの第二主面側に回っている。
【0103】
続いて、太陽電池モジュール1の各部材の詳細な構成について説明する。なお、上記の説明と重複する部分は説明を省略する。
【0104】
第一導電層21は、
図5のように低融点材料34及び高融点材料35の双方を有しており、低融点材料34及び高融点材料35はともに導電性を有していることが好ましい。
【0105】
低融点材料34(下地材料)は、アニール工程において熱流動を生じ、第一導電層21の表面形状に変化を生じさせるものである。
低融点材料34としては、低融点金属材料の単体もしくは合金、複数の低融点金属材料の混合物を好適に用いることができる。
この低融点金属材料としては、例えば、インジウムやビスマス、ガリウム等が挙げられる。
【0106】
また、低融点材料34の熱流動開始温度T1は、アニール温度Taよりも低温であることが好ましい。
ここでいう「熱流動開始温度」とは、加熱により材料が熱流動を生じ、低融点材料34を含む層の表面形状が変化する温度である。典型的には融点である。
高分子材料やガラスでは、融点よりも低温で材料が軟化して熱流動を生じる場合がある。このような材料では、熱流動開始温度=軟化点と定義できる。
軟化点とは、粘度が4.5×10
6Pa・sとなる温度である。すなわち、この場合の熱流動開始温度はガラスの軟化点の定義と同じである。
【0107】
また、本実施形態の第一導電層21は、後述するように太陽電池モジュール1の製造時に光電変換部30の耐熱温度よりも低温のアニール温度Taでアニール工程が行われる。したがって、低融点材料34の熱流動開始温度T1は、光電変換部30の損傷を防止する観点から光電変換部30の耐熱温度よりも低温であることが好ましい。
【0108】
ここでいう「光電変換部30の耐熱温度」とは、太陽電池2の特性が不可逆的に低下する温度である。
本実施形態の太陽電池2の場合、
図7に示される光電変換部30の骨格を構成する基板15は、500℃以上の高温に加熱された場合でも特性変化を生じ難い。
しかしながら、シリコン系薄膜16,17,25として非晶質シリコン系薄膜を用いた場合や、透明電極層18,27として透明導電酸化物を用いた場合は、250℃程度に加熱されると、熱劣化を生じたり、ドープ不純物の拡散を生じ、太陽電池特性の不可逆的な低下を生じたりする場合がある。
そのため、本実施形態の太陽電池2においては、第一導電層21は、熱流動開始温度T1が250℃以下の低融点材料34を含むことが好ましい。
【0109】
低融点材料34の熱流動開始温度T1の下限は特に限定されない。
後述するアニール工程における第一導電層21の表面形状の変化量を大きくして、絶縁層19に孔23を容易に形成する観点から、第一導電層21の形成工程において、低融点材料34は実質的に熱流動を生じないことが好ましい。
例えば、塗布や印刷により第一導電層21が形成される場合は、乾燥のために加熱が行われることがある。この場合は、低融点材料34の熱流動開始温度T1は、第一導電層21の乾燥のための加熱温度よりも高温であることが好ましい。この観点から、低融点材料34の熱流動開始温度T1は、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0110】
低融点材料34は、熱流動開始温度T1が上記範囲であれば、有機物であっても、無機物であってもよい。
低融点材料34は、電気的には導電性であっても、絶縁性でも良いが、光電変換部30と配線部材3間の導電経路の一部を構成させる観点から導電性を有する金属材料であることが望ましい。
低融点材料34が金属材料であれば、他材料を使用する場合に比べて、第一導電層21の抵抗値を小さくできる。そのため、電解めっきにより第二導電層22が形成される場合に、第二導電層22の膜厚の均一性を高めることができる。また、低融点材料34が金属材料であれば、光電変換部30と集電極8との間の接触抵抗を低下させることも可能となる。
【0111】
低融点材料34の材料として、金属粒子等の粒子状の低融点材料が用いられる場合、低融点材料34の粒径DLは、第一導電層21の膜厚dの1/20以上であることが好ましく、1/10以上であることがより好ましい。
この範囲にすることにより、アニール工程での絶縁層19への開口の形成を容易とすることができる。
低融点材料34の粒径DLは、0.25μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。
【0112】
第一導電層21の一部を構成する高融点材料35は、低融点材料34よりも相対的に高温の熱流動開始温度(融点)T2を有する。
高融点材料35としては、例えば、銀、アルミニウム、銅などの金属材料の単体もしくは複数の金属材料やそれらの合金を好ましく用いることができる。
【0113】
第一導電層21は、めっき法により第二導電層22が形成される際の導電性下地層として機能する層である。そのため、第一導電層21は電解めっきの下地層として機能し得る程度の導電性を有していればよい。すなわち、第一導電層21の体積抵抗率は10
-2Ω・cm以下であり、10
-4Ω・cm以下であることが好ましい。
【0114】
第一導電層21の平均膜厚は、コストを抑制する観点から20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
また、第一導電層21のライン抵抗を所望の範囲とする観点から、平均膜厚は0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。
【0115】
第一導電層21の形成方法は、特に限定されない。第一導電層21の形成方法は、インクジェット法、スクリーン印刷法、導線接着法、スプレー法、真空蒸着法、スパッタ法、電解めっき法、無電解めっき等の公知技術によって作製できる。
第一導電層21は、例えば、低融点材料34と高融点材料35を導電性ペーストとしてスクリーン印刷法により形成することができる。第一導電層21は、例えば、パターン形状に対応したマスクを用いて、蒸着法やスパッタ法により形成されてもよい。
【0116】
本実施形態の第一導電層21は、櫛形等の所定形状にパターン化されている。そのため、パターン化された第一導電層21の形成には、生産性の観点からスクリーン印刷法が適している。このスクリーン印刷法を用いることによって、第一導電層21の厚みを薄くすることも可能であり、第一導電層21の使用量を低減でき、低コスト化も可能となる。
【0117】
第二導電層22は、無電解めっき法、電解めっき法のいずれのめっき法でも形成され得るが、生産性の観点から、電解めっき法を用いることが好適である。電解めっき法では、電流等を変化させることで金属の析出速度を大きくできるので、第二導電層22を短時間で形成することができる。
なお、本実施形態では、第二導電層22は、第一導電層21の表面を被めっき面として、電解めっき法により形成されている。
電解めっき法では、めっき電源40から被めっき面への給電が必要となるが、
図12のようにめっき電源40からの給電点41は配線部材3上に設けることが望ましい。
【0118】
配線部材3と太陽電池基板46を接着する際に、配線部材3が太陽電池基板46(第二導電層22が積層される前の太陽電池2)と接着しない部分(非接着部)を設け、後述するめっき工程において、当該太陽電池基板46と接着しない部分に給電点41を設けることがより望ましい。
こうすることにより、給電点41での接点治具と太陽電池基板46との接触による太陽電池基板46の破損をより防ぐことが可能となる。また、太陽電池基板46の被めっき面と給電点41との間の導通の一部を、電気抵抗が小さい配線部材3に担わせることができるので、第一導電層21として電気抵抗が大きいものも適用可能になる。そのため、第一導電層21の材料の選択の幅を広げることも可能となる。
【0119】
また、太陽電池基板46をめっき浴に浸漬して、配線部材3に電流を流すことで、配線部材3の第一導電層21及び絶縁層19との接着面以外の表面に第二導電層22を形成することができる。このことにより、配線部材3の電気抵抗をより下げることができる。
【0120】
一方、配線部材3の表面(第一導電層21側と反対側の面)を絶縁体で被覆することが好ましい。
配線部材3の表面を絶縁体で被覆することで、配線部材3の表面付近でのめっき液内の金属イオンの浪費を抑えることができる。
【0121】
太陽電池の外観(意匠性)の観点から、第二導電層22と配線部材3の反射率は低いことが好ましい。また、第二導電層22と配線部材3の反射率は略等しいことがより好ましい。
ここでいう「反射率が略等しい」とは、反射率の差が反射率の3パーセント以内であることをいう。
【0122】
太陽電池の外観(意匠性)の観点から、第二導電層22と配線部材3の表面が同一の低反射率材料で覆われていることが好ましい。
この低反射率材料としては、ニッケルやクロムなどが挙げられる。
また、生産性の観点から、第二導電層22上の低反射率材料と配線部材3上の低反射率材料は同時に形成されることが好ましい。
本発明においては、例えば、第二導電層22とは別に第二のめっき層を形成し、この第二のめっき層(第二導電層22の外側のめっき層)として、配線部材3の表面を形成するコーティング層61と同一の低反射率材料を形成することにより実現できる。
【0123】
第二導電層22の表面粗さは、配線部材3の表面粗さより大きい。第二導電層22は、めっき法によって形成されているので、微小な凹凸を有している。
【0124】
図8に示される、光電変換部30上を被覆する絶縁層19に目を向けると、絶縁層19は、電気的に絶縁性を有した層である。
絶縁層19は、第二導電層22を形成する際に使用されるめっき液に対する化学的安定性を有する材料によって形成されている。すなわち、絶縁層19にめっき液に対する化学的安定性が高い材料を用いているので、第二導電層22の形成時のめっき工程中に、絶縁層19がめっき液に溶解しにくい。
【0125】
また、絶縁層19としては、光電変換部30との付着強度が大きいものを採用することが好ましい。すなわち、本実施形態の太陽電池2の絶縁層19は、
図7のように光電変換部30の表面に位置する光入射側の透明電極層18との付着強度が大きいことが好ましい。
透明電極層18と絶縁層19との付着強度が大きい場合、めっき工程中に、絶縁層19が剥離しにくくなり、透明電極層18上への金属の析出を防ぐことができる。
【0126】
また、絶縁層19は、光吸収が少ない材料によって形成されていることが好ましい。
上記したように、絶縁層19は、光電変換部30の光入射面側に形成される。そのため、絶縁層19による光吸収が小さければ、より多くの光を光電変換部30へ取り込むことが可能である。
具体的には、絶縁層19は、透過率90パーセント以上であることが好ましい。このような十分な透明性を有する場合、絶縁層19での光吸収による光学的な損失が小さい。そのため、第二導電層22の形成後に絶縁層19を除去することなく、そのまま太陽電池2として使用することができる。また、太陽電池2の製造工程を単純化でき、生産性をより向上させることができる。
【0127】
絶縁層19を除去せずにそのまま太陽電池2として使用される場合、絶縁層19は、透明性に加えて、十分な耐候性、熱・湿度に対する安定性、並びに、金属イオンや水蒸気等の不純物に対する高いバリア性を有する材料を用いることがより望ましい。
【0128】
絶縁層19の材料は、無機絶縁性材料と有機絶縁性材料のいずれの材料でも採用できる。
【0129】
有機絶縁性材料としては、例えば、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等の材料を用いることができる。
【0130】
無機絶縁性材料としては、めっき液耐性や透明性の観点からは、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、サイアロン(SiAlON)、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、酸化サマリウム、タンタル酸バリウム、酸化タンタル、フッ化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛等が好ましく用いられる。
【0131】
無機絶縁性材料の中でも、電気的特性や透明電極層との密着性等の観点からは、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、サイアロン(SiAlON)、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、酸化サマリウム、タンタル酸バリウム、酸化タンタル、フッ化マグネシウム等が好ましく、屈折率を適宜に調整し得る観点からは、酸化シリコンや窒化シリコン等が特に好ましく用いられる。
なお、これらの無機材料は、化学量論的(stoichiometric)組成を有するものに限定されず、酸素欠損等を含むものであってもよい。
【0132】
絶縁層19の膜厚は、絶縁層19の材料や形成方法に応じて適宜設定される。
絶縁層19の膜厚は、本実施形態においては、後述するアニール工程における第一導電層21の表面形状の変化に伴って生じる界面の応力等によって、絶縁層19に孔23(開口部)が形成される程度に薄いことが好ましい。
かかる観点から、本実施形態の絶縁層19の膜厚は、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。
【0133】
また、第一導電層21を形成しない部位における絶縁層19の光学特性や膜厚を適宜設定することで、光反射特性を改善し、太陽電池2の内部へ導入される光量を増加させ、変換効率をより向上させることが可能となる。
このような効果を得るためには、絶縁層19の屈折率が、光電変換部30の表面の屈折率よりも低いことが好ましい。また、絶縁層19に好適な反射防止特性を付与する観点から、膜厚は30nm〜250nmの範囲内で設定されることが好ましく、50nm〜250nmの範囲内で設定されることがより好ましい。
【0134】
なお、第一導電層形成領域37(
図6参照)の絶縁層19の膜厚と第一導電層非形成領域38(
図6参照)の絶縁層19の膜厚は、異なっていてもよい。
例えば、第一導電層形成領域37では、アニール工程での孔23(開口部)の形成を容易とする観点で絶縁層19の膜厚が設定され、第一導電層非形成領域38では、適宜の反射防止特性を有する光学膜厚となるように絶縁層19の膜厚が設定されていてもよい。
【0135】
本実施形態の太陽電池2では、
図7のように光電変換部30の表面(光入射側)に透明電極層18(一般的な屈折率:1.9〜2.1程度)を有する。絶縁層19の屈折率は、界面での光反射防止効果を高めて太陽電池2内部へ導入される光量を増加させるために、空気(屈折率=1.0)と透明電極層18との中間的な値であることが好ましい。
【0136】
また、本実施形態の太陽電池モジュール1のように太陽電池2が封止されてモジュール化される場合、絶縁層19の屈折率は、充填材7と透明電極層18の中間的な値であることが好ましい。
かかる観点から、絶縁層19の屈折率は、1.4〜1.9が好ましく、1.5〜1.8がより好ましく、1.55〜1.75がさらに好ましい。
なお、本明細書における屈折率は、特に断りがない限り、波長550nmの光に対する屈折率であり、分光エリプソメトリーにより測定される値である。また、絶縁層19の屈折率に応じて、反射防止特性が向上するように絶縁層19の光学膜厚(屈折率×膜厚)が設定されることが好ましい。
【0137】
絶縁層19は、公知の方法を用いて形成できる。例えば、酸化シリコンや窒化シリコン等の無機絶縁性材料の場合は、プラズマCVD法、スパッタ法等の乾式法が好ましく用いられる。また、有機絶縁性材料の場合は、スピンコート法、スクリーン印刷法等の湿式法が好ましく用いられる。これらの方法によれば、ピンホール等の欠陥が少なく、緻密な構造の膜を形成することが可能となる。
【0138】
中でも、より緻密な構造の膜を形成する観点から、絶縁層19はプラズマCVD法で形成されることが好ましい。
この方法により、200nm程度の比較的厚いものだけでなく、30〜100nm程度の比較的薄い膜厚の絶縁層19を形成した場合も、緻密性の高い構造の膜を形成することができる。
【0139】
図7に示される本実施形態の太陽電池2のように、光電変換部30の表面にテクスチャ構造(凹凸構造)を有する場合、テクスチャの凹部や凸部にも精度よく膜形成できる観点からも、絶縁層19はプラズマCVD法により形成されることが好ましい。
緻密性が高い絶縁層19を用いることにより、めっき処理時の表面側(光入射側)に位置する透明電極層18へのダメージを低減できる。さらに、緻密性が高い絶縁層19を用いることにより、これに加えて、透明電極層18上への金属の析出を防止することができる。
また、緻密性が高い絶縁層19を用いることにより、光電変換部30の内部の他の層に対しても、水や酸素などのバリア層として機能し得る。そのため、太陽電池2の長期信頼性の向上の効果も期待できる。
【0140】
なお、第一導電層21と第二導電層22との間にある絶縁層19、すなわち第一導電層形成領域37(
図6参照)上の絶縁層19の形状は、必ずしも連続した層状でなくてもよく、島状であっても良い。
ここでいう「島状」とは、基準面の一部に層が形成されていない領域を有する状態を意味する。本実施形態の場合には、第一導電層21の表面の一部に、絶縁層19が形成されていない領域を有する状態を意味する。
【0141】
絶縁層19は、第一導電層21と第二導電層22との付着力の向上にも寄与する機能を有する。
例えば、第一導電層21の材料が銀であり、第二導電層22の材料が銅である場合、第一導電層21(下地電極層)上にめっき法により第二導電層22が形成されると、第一導電層21と第二導電層22との付着力は小さくなる。
そこで、酸化シリコン等の絶縁層19上に第二導電層22を形成することにより、第二導電層22の付着力が高められ、太陽電池2の信頼性を向上することが期待される。
【0142】
図7に示される第二主面側の裏面電極28は、光電変換部30の裏面側の面のほぼ全面に形成してもよいし、受光面側(第一主面側)の集電極8のように櫛型電極としてもよい。
【0143】
図5(b)に示されるバスバー電極部32において、第一導電層21と配線部材3を接着する接着材33に注目する。接着材33は、例えば導電性を有した接着材であり、例えば、はんだ材料などの導電性接着剤、導電性フィルムなどの導電性接着材が採用できる。
【0144】
はんだ材料としては、例えば、共晶はんだやSnAgCu系はんだ、錫ビスマス(SnBi)系はんだ等が好適に使用できる。
導電性フィルムとしては、例えば、導電性フィルム(CF)やタブ等のインターコネクタなどが好適に使用できる。導電性フィルムの中でも、異方性導電接着フィルム(ACF)を用いるのが望ましい。
【0145】
続いて、本実施形態の太陽電池モジュール1の製造方法について説明する。特に、集電極8について詳細に説明する。なお、
図10及び
図11はフィンガー電極部31近傍及びバスバー電極部32近傍の製造工程の説明図である。
【0146】
まず、
図10(a)のように光電変換部30を形成する(光電変換部準備工程)。
すなわち、
図7に示されるように、基板15上に、シリコン系薄膜16,17,25,26及び透明電極層18,27等を形成し、光電変換部30を形成する。
【0147】
その後、
図10(b)のように印刷法によって光電変換部30の表面上に、低融点材料34を含む第一導電層21を形成する(第一導電層形成工程)。
このとき、第一導電層21は所定の形状にパターニングされている。
【0148】
第一導電層形成工程の後、
図10(c)のように配線部材3をバスバー電極部32内の第一導電層21上に載置し、接着材33によって接着する(配線部材接着工程)。
【0149】
このとき、配線部材3と第一導電層21は、接着材33によって面状に広がりをもって接着されており、互いに密着している。
なお、このとき、太陽電池2に第一主面側と第二主面側との短絡部があれば、短絡部を除去してから、配線部材3を接着してもよい。
【0150】
その後、
図11(d)のように第一導電層21及び/又は配線部材3上に、絶縁層19を形成する(絶縁層形成工程)。
【0151】
このとき、
図5,
図11(d)から読み取れるように、フィンガー電極部31近傍において、絶縁層19は、第一導電層形成領域37の第一導電層21上にのみ形成されていてもよいし、第一導電層非形成領域38の光電変換部30上にも形成されていてもよい。
また、バスバー電極部32近傍においても、絶縁層19は、配線部材3上にのみ形成されていてもよいし、第一導電層非形成領域38上にも形成されていてもよい。
【0152】
本実施形態では、太陽電池2がヘテロ接合太陽電池であって、光電変換部30の表面(光入射側の面)に透明電極層18が形成されており、第一導電層非形成領域38上にも絶縁層19が形成されている。すなわち、本実施形態では、光電変換部30の一主面側(第一主面側)の全面に絶縁層19が設けられている。
【0153】
絶縁層19が形成された後、
図11(e)のように、アニール温度Taで加熱してアニールする(アニール工程)。
このとき、低融点材料34の変形に伴って、絶縁層19が変形し、フィンガー電極部31において孔23が形成される。
【0154】
ここで、アニール温度Taは、T1+1℃≦Ta≦T1+100℃を満たすことがより好ましく、T1+5℃≦Ta≦T1+60℃を満たすことがさらに好ましい。アニール温度は、第一導電層21の材料の組成や含有量等に応じて適宜設定され得る。
なお、上記したように、T1は、第一導電層21の低融点材料34の熱流動開始温度である。
【0155】
また、上記したように、アニール温度Taは、光電変換部30の耐熱温度よりも低温である。この光電変換部30の耐熱温度は、光電変換部30の構成により異なる。
例えば、本実施形態の太陽電池2のように、ヘテロ接合太陽電池やシリコン系薄膜太陽電池といった透明電極層や非結晶質シリコン系薄膜を有する場合の耐熱温度は、一般的に250℃程度である。
そのため、光電変換部30が非晶質シリコン系薄膜を備えるヘテロ接合太陽電池や、シリコン系薄膜太陽電池の場合、非晶質シリコン系薄膜及びその界面での熱ダメージ抑制の観点から、アニール温度Taは250℃以下に設定されることが好ましい。
より高性能の太陽電池2を実現するためにはアニール温度Taは200℃以下にすることがより好ましく、180℃以下にすることがさらに好ましい。
これに伴って、第一導電層21の低融点材料34の熱流動開始温度T1は、250℃未満であることが好ましく、200℃未満がより好ましく、180℃未満がさらに好ましい。
【0156】
一方、基板15の片面(一主面)上に逆導電型の拡散層を有する結晶シリコン太陽電池は、非晶質シリコン薄膜や透明電極層を有していないので、耐熱温度は800℃〜900℃程度である。そのため、250℃よりも高温のアニール温度Taでアニール工程が行われてもよい。
【0157】
アニール工程後に、
図11(f)のように、めっき法により、第一導電層形成領域37の絶縁層19上に、第二導電層22を形成する(めっき工程)。
【0158】
アニール後のフィンガー電極部31において、第一導電層21の表面は、絶縁層19により被覆されており、絶縁層19に孔23が形成された部分では、第一導電層21が露出した状態となっている。そのため、当該めっき工程においては、第一導電層21の露出部位は孔23を通過してめっき液に曝されることとなり、この孔23を起点として第二導電層22が析出される。
また、アニール後のバスバー電極部32において、配線部材3の表面は、絶縁層19により被覆されており、その一部に第二導電層22が析出される。
このような本実施形態の方法によれば、集電極8の形状に対応する開口部を有するレジスト材料層を設けずとも、集電極8の形状に対応する第二導電層22をめっき法により形成することができる。
【0159】
また、このとき、第二導電層22として析出させる金属は、めっき法で形成できる材料であれば特に限定されず、例えば、銅、ニッケル、錫、アルミニウム、クロム、銀、金、亜鉛、鉛、パラジウム等、あるいはこれらの混合物を用いることができる。
なお、めっき電源40との給電点は、
図12,
図13のように配線部材3上に設けることが好ましい。こうすることによって、配線部材3の電気抵抗は低く、めっき用に電流を印加しても配線部材3上の電位はほぼ一定に保たれることから、太陽電池2の表面の電位分布の発生が抑制できる。その結果、析出量の分布(膜厚や線幅の分布)を抑制することができる。
【0160】
本実施形態では、配線部材3上に設けるめっき電源40との給電点41の位置は、
図13(a)に示すように、太陽電池2と接着していない領域(非接着領域)の配線部材3上に設けており、めっき電源40の電極接点が太陽電池2と直接接触しない。この電極接点を含む電極接点治具42の形状は任意に設計できる。
【0161】
ここで、電極接点治具42の一例について説明する。
図13(b)のようにばね式の部材の先端に電極接点を設ければ、この点で配線部材3と接触させることができると同時に、配線部材3を保持することができる。すなわち、電極接点治具42は、2つの腕があり、当該腕によって配線部材3を挟持することが可能となっている。
そのため、この電極接点治具42によれば、めっき工程中に太陽電池2を所定の位置に固定させることが可能となる。
【0162】
また、電極接点治具42の接点以外の表面は、表面への金属の析出を防ぐ観点から、絶縁体としておくことが好ましい。配線部材3の給電点41と電極接点治具42の電極接点とは、
図13(b)で示すように腕の一部で、点接触させてもよいし、線状に接触させてもよい。
電極接点の個数もまた、適宜選択することができる。電極接点は、
図13(a)に示すように、太陽電池2の一辺方向のみに設けてもよい。すなわち、太陽電池2の一辺側のみに設けてもよい。
【0163】
また電極接点は、
図13(c)に示すように、太陽電池2の二辺方向に設けてもよい。すなわち、太陽電池2の一辺側及びその対辺側に設けてもよい。このように電極接点を二辺方向に設けた場合、めっき槽内での動きを制限することができるので、工程中の破損、配線部材3の剥がれをより防ぐことができる。
【0164】
ここで、上記しためっき工程について、酸性銅めっきを例として、電解めっき法による第二導電層22の形成方法を説明する。
図12は、上記したように第二導電層22の形成に用いられるめっき装置45の概念図である。
太陽電池基板46と、陽極47とが、めっき槽48中のめっき液49に浸されている。
なお、太陽電池基板46は、光電変換部30上に第一導電層21及び絶縁層19が形成され、上記工程によってアニール処理が施されたものである。
【0165】
太陽電池基板46上の第一導電層21は、基板ホルダ50を介してめっき電源40と電気的に接続されている。
陽極47と太陽電池基板46の配線部材3との間に電圧を印加することにより、フィンガー電極部31において絶縁層19で覆われていない第一導電層21(非接続部)の上に選択的に第二導電層22(銅)を析出させることができる。
すなわち、陽極47と太陽電池基板46の配線部材3との間に電圧を印加することにより、
図5に示されるアニール処理により絶縁層19に生じた孔23(開口部)を起点として、選択的に銅を析出させることができる。
以上がめっき工程の説明である。
【0166】
製造方法の説明に戻ると、めっき工程の後には、めっき液除去工程を設けて、太陽電池基板46の表面に残留しためっき液49を除去する。
【0167】
その後、必要に応じて太陽電池2に対して外部回路への電力を取り出すための引き出し線等を接続し、表面部材5、裏面部材6及び充填材7で太陽電池2を封止して太陽電池モジュール1が製造される。
【0168】
続いて、太陽電池2の詳細な構造について説明する。
【0169】
本実施形態の太陽電池2は、ヘテロ接合結晶シリコン太陽電池(以下、ヘテロ接合太陽電池ともいう)を採用している。
具体的には、太陽電池2は、
図7のように、基板15の一方の面(光入射側の面,表面)上に、真性シリコン系薄膜16、導電型シリコン系薄膜17、及び透明電極層18がこの順に積層されている。また、太陽電池2は、さらに、透明電極層18の上に、絶縁層19及び集電極8が設けられている。
一方、基板15の他方の面(光反射側の面,裏面)上に真性シリコン系薄膜25、導電型シリコン系薄膜26及び透明電極層27がこの順に積層されている。また、太陽電池2は、さらに、透明電極層27上に、裏面電極28が積層されている。
【0170】
すなわち、太陽電池2の光電変換部30は、裏面側(第二主面側)から表面側(第一主面側)に向けて、透明電極層27、導電型シリコン系薄膜26、真性シリコン系薄膜25、基板15、真性シリコン系薄膜16、導電型シリコン系薄膜17、及び透明電極層18の順に積層して形成されている。また、基板15と導電型シリコン系薄膜17,26とのそれぞれの間には、真性シリコン系薄膜16,25が介在している。
【0171】
基板15は、一導電型単結晶シリコン基板によって形成されている。
ここで、一般的に単結晶シリコン基板には、シリコン原子に電子を導入するための原子(例えばリン)を含有させたn型と、シリコン原子に正孔を導入する原子(例えばホウ素)を含有させたp型がある。
ここでいう「一導電型」とは、n型又はp型のどちらか一方であることをいう。
つまり、基板15は、n型又はp型のどちらか一方の単結晶シリコン基板である。
本実施形態の基板15は、n型単結晶シリコン基板であることが好ましい。
【0172】
基板15は、表面及び裏面にテクスチャ構造を有している。すなわち、基板15を基体として形成される光電変換部30もテクスチャ構造を備える。そのため、太陽電池2は、入射した光を光電変換部30に閉じ込めることができ、発電効率が高い。
【0173】
シリコン系薄膜16,17,25,26の成膜方法としては、プラズマCVD法が好ましい。
【0174】
導電型シリコン系薄膜17,26は、一導電型又は逆導電型のシリコン系薄膜である。
ここでいう「逆導電型」とは、「一導電型」と異なる導電型であることをいう。
例えば、「一導電型」がn型である場合には、「逆導電型」はp型である。
本実施形態では、導電型シリコン系薄膜17は、逆導電型シリコン系薄膜であり、導電型シリコン系薄膜26は、一導電型シリコン系薄膜である。
【0175】
シリコン系薄膜は、シリコン系薄膜であれば特に限定されないが、非晶質シリコン系薄膜を用いることが好ましい。
本実施形態では、導電型シリコン系薄膜17は、p型非晶質シリコン系薄膜であり、導電型シリコン系薄膜26は、n型非晶質シリコン系薄膜を採用している。
【0176】
真性シリコン系薄膜16,25としては、シリコンと水素で構成されるi型水素化非晶質シリコンが好ましい。
【0177】
太陽電池2の光電変換部30は、
図7のように導電型シリコン系薄膜17,26上の外側に、透明電極層18,27を備えている。
透明電極層18,27は、導電性酸化物を主成分としていることが好ましい。導電性酸化物の中でも酸化インジウム錫(ITO)を主成分とするものがより好ましい。
ここで「主成分とする」とは、含有量が50重量パーセントより多いことを意味し、70重量パーセント以上が好ましく、90重量パーセント以上がより好ましい。
【0178】
透明電極層18,27は、単層でもよく、複数の層からなる積層構造でもよい。
透明電極層18,27には、ドーピング剤を添加することもできる。
【0179】
光入射側の透明電極層18の膜厚は、透明性、導電性、及び光反射低減の観点から、10nm以上140nm以下であることが好ましい。
透明電極層18の役割は、集電極8へのキャリアの輸送であるから、膜厚を10nm以上にすることによって、必要な導電性を備えることができる。
膜厚を140nm以下にすることにより、透明電極層18での吸収ロスが小さく、透過率の低下に伴う光電変換効率の低下を抑制することができる。
また、透明電極層18の膜厚が上記範囲内であれば、透明電極層18内のキャリア濃度上昇も防ぐことができる。そのため、赤外域の透過率低下に伴う光電変換効率の低下も抑制される。
【0180】
透明電極層18,27の成膜方法は、特に限定されないが、例えばスパッタ法などにより形成することができる。
【0181】
光電変換部30を基準として、第二主面側の透明電極層27のさらに外側に位置する裏面電極28に注目する。裏面電極28としては、近赤外から赤外域の反射率が高く、かつ導電性や化学的安定性が高い材料を用いることが望ましい。
このような特性を満たす材料としては、銀やアルミニウム等の金属が挙げられる。裏面電極28の成膜方法は、特に限定されない。
【0182】
本実施形態の太陽電池2のように、ヘテロ接合太陽電池であって結晶シリコン基板を用いた場合、発電する電流量が大きい。そのため、透明電極層18/集電極8間の接触抵抗の損失による発電ロスが顕著となる傾向がある。
これに対して、本実施形態の太陽電池モジュール1によると、第一導電層21と第二導電層22を有する集電極8は、透明電極層18との接触抵抗が低い。そのため、接触抵抗に起因する発電ロスを低減することが可能となる。
【0183】
本実施形態の太陽電池モジュール1は、配線部材3よりも表面粗さが大きい第二導電層22が最も表面部材5側に位置している。また、第二導電層22のさらに外側に表面部材5を有している。そのため、太陽電池モジュール1は、従来に比べて光電変換率の高い太陽電池モジュールとなる。
【0184】
この点について
図14を用いて詳説する。
本実施形態のバスバー電極部32では、
図14(a)に示されるように表面部材5を透過して入射した光(入射光)は、第二導電層22の外側面で反射されて、表面部材5の内側面に向かう。表面部材5の内側面に向かって反射された光は、空気と表面部材5との屈折率の差により、反射されて光電変換部30に向かう。
【0185】
一方、従来のようにバスバー電極部32において、第二導電層22を形成しない場合には、
図14(b)に示されるように、表面部材5を透過した入射光は、絶縁層19又は配線部材3の表面で全反射して表面部材5を透過して外部に逃げる。
このように、従来であれば、表面部材5から入射し、配線部材3によって遮られていた光も、本実施形態の太陽電池モジュール1では、表面部材5からの入射光の大部分を光電変換部30で収集できる。
【0186】
上記した第1実施形態では、絶縁層形成工程を配線部材接着工程の後に行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、絶縁層形成工程を配線部材接着工程前に行ってもよい。
その一例について、第2実施形態の太陽電池モジュール80として説明する。なお、第1実施形態と同様のものは同じ符番を付して説明を省略する。
【0187】
第2実施形態の太陽電池モジュール80に内蔵する太陽電池81は、第1実施形態の太陽電池2と、バスバー電極部82における積層構造が異なる。
すなわち、太陽電池81のバスバー電極部82は、
図15から読み取れるように、光電変換部30上に第一導電層21が積層し、第一導電層21の表面を覆うように絶縁層19が形成されている。また、光電変換部30を基準として絶縁層19の外側に配線部材3が位置している。そして、第一導電層21と配線部材3の間には導電性を有した接着材33が介在している。
【0188】
絶縁層19には、第1実施形態の孔23に加えて貫通孔83が形成されている。
貫通孔83は、絶縁層19の厚み方向に貫通した孔であり、第一導電層21と配線部材3が電気的に接続するための孔である。
貫通孔83には、接着材33が充填されており、第一導電層21は、絶縁層19の貫通孔83を経由して配線部材3と電気的に接続されている。
【0189】
続いて、本実施形態の太陽電池モジュール80の製造方法について説明する。特に、集電極8について詳細に説明する。
なお、第1実施形態の太陽電池モジュール1の製造方法と同一の工程については、簡潔に説明する。また、バスバー電極部82の近傍に注目して説明する。
図16及び
図17はフィンガー電極部31近傍及びバスバー電極部82近傍の製造工程の説明図である。
【0190】
まず、
図16(a)に示されるように光電変換部準備工程にて光電変換部30を形成する。
その後、第一導電層形成工程にて、
図16(b)に示されるようにスクリーン印刷法によって光電変換部30の外側に第一導電層21を形成する。
【0191】
続いて、
図16(c)に示されるように第一導電層21上に、絶縁層19を形成する(絶縁層形成工程)。すなわち、第2実施形態の太陽電池モジュール80の製造方法では、配線部材接着工程よりも先に絶縁層19を形成する。
【0192】
このとき、バスバー電極部82近傍において、絶縁層19は、第一導電層形成領域37の第一導電層21上にのみ形成してもよいし、第一導電層非形成領域38の光電変換部30上にも形成されていてもよい。
本第2実施形態では、光電変換部30の一主面側(第一主面側)の全面に絶縁層19が形成されている。
【0193】
絶縁層形成工程の後、
図17(d)に示されるように配線部材3をバスバー電極部82内の第一導電層21上に載置し、接着材33によって熱圧着する(配線部材接着工程)。
【0194】
このとき、配線部材3と第一導電層21との間には、絶縁層19が介在しているが、熱圧着することによって、絶縁層19の一部が剥がれて、貫通孔83が形成される。そして、貫通孔83に接着材33が充填され、配線部材3と第一導電層21が接着材33を介して電気的に接続される。
【0195】
配線部材接着工程後、
図17(e)に示されるようにアニール工程を行い、配線部材3が設置された基板をアニール温度Taで加熱してアニールする。
【0196】
このとき、フィンガー電極部31において、絶縁層19に孔23が形成される。
【0197】
アニール工程後に、
図17(f)に示されるように、めっき法により、第一導電層形成領域37の絶縁層19上に、第二導電層22を形成する(めっき工程)。
【0198】
このとき、配線部材3の表面に第二導電層22が堆積する。そのため、配線部材3の外側の面は、表面が粗くなっている。また、バスバー電極部82の配線部材3の一部は、第二導電層22に埋没する。
【0199】
その後、必要に応じてめっき液除去工程を行い、外部回路への電力を取り出すための引き出し線等を接続した後、表面部材5と裏面部材6と充填材7によって封止する。
このようにして、太陽電池モジュール80が製造される。
【0200】
上記した実施形態では、電解めっき法にて、表面側電極たる集電極8のみを設けたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、太陽電池の第一主面と第二主面の両面に金属電極を形成する場合は、表面側電極(例えば、第二導電層22)と裏面側電極(例えば、裏面電極28)とを電解めっき法にて形成することもできる。
製造工程を簡略化する観点から、表面側電極と裏面側電極を同時に形成することが好ましい。
【0201】
具体的には、
図13(c)に示すように、二辺方向に電極接点(給電点41)を設けて、太陽電池基板46の表面と裏面に電気が流れるように電極接点(給電点41)を設ける。また、
図18に示すように、太陽電池2の表面(第一主面)と裏面(第二主面)の両面にそれぞれ対向するように陽極47を設置する。そして、これらに電圧を印加することにより、太陽電池基板46の表面と裏面との両方に対して同時にめっきすることが可能となる。
この際には、配線を単純化することができるので、太陽電池基板46の表面と裏面との電位が共通となるように実施することが好ましい。
【0202】
また、太陽電池基板46の両面にめっきする方法としては、太陽電池基板46の表面、裏面の両面に配線部材3を接着して設ける。そして、配線部材3を介して、太陽電池基板46の被めっき面に給電を行うことが好ましい。
めっき工程前に隣接する太陽電池2同士を配線部材3で接続した後、めっき装置に導入する。そして、被めっき面(例えば、フィンガー電極部31の第一導電層21)へめっき電源40から給電することにより、複数の太陽電池2の第二導電層22を同時に形成することができる。
【0203】
このとき、第二導電層22の線幅及び膜厚の均一性を向上させる観点から、
図13(c)に示されるように、配線部材3ごとにめっき電源40の電極接点との給電点41を設けることが好ましい。
【0204】
また、太陽電池モジュール1の製造には、
図19に模式的に示すような治具も用いることができる。すなわち、太陽電池モジュール1の製造には、座ぐり等の凹凸構造や当て板等の位置調整用機構を有する治具を用いることができる。
この治具を用いることによって、太陽電池2,2間にある配線部材3上の給電点41と、治具に設置された電極接点とが精度よく位置あわせできる。また、この治具を用いることによって、配線部材3と治具との接続点において、確実に電気的接続が実現できる。
また、この治具を用いると、治具に設置させた状態で太陽電池2を搬送することができるため、搬送時の破損を防ぐことも可能となる。
【0205】
第二導電層22を形成するめっき工程において、治具により太陽電池基板46の被製膜面側(第二導電層22の形成面側の面)が覆われると、当該治具により覆われた部分には、第二導電層22が形成されにくくなる。
このような現象を防ぐためには、
図19に示されるように、治具の隣接した太陽電池2,2間に位置する間隔の幅を、太陽電池2,2間の間隔と同程度か、太陽電池2,2間の間隔よりも小さくすることが好ましい。
【0206】
特に四隅の形状が円弧状の太陽電池基板46を用いる場合には、配線部材3の給電点41の位置を太陽電池基板46の一辺近傍に設けることによっても防ぐことができる。
この場合は、
図20に示すように電極接点の位置あわせ精度や治具の機械的強度に余裕ができる場合がある。
【0207】
なお、太陽電池基板46の外周部で表面の電極層(例えば、裏面電極28)と裏面の電極層(例えば、第一導電層21)とが電気的に短絡している場合は、配線部材3を接着する前に、絶縁処理を行うことが好ましい。
【0208】
また、めっき工程後には、配線部材3と治具との接点にも第二導電層22の材料が析出する場合がある。この析出した第二導電層22の材料により、配線部材3の前記接点での接触抵抗が上昇する場合がある。これらのことから、上記したように、めっき工程後に洗浄を行い、配線部材3の前記接点に析出した金属材料を除去することが好ましい。
【0209】
特に、上記した場合のように、複数枚の太陽電池2を同一のめっき槽を用いてめっき処理を実施する場合においては、配線部材3と治具との接点での接触抵抗の相違が、第二導電層22の膜厚や線幅の変動要因となる場合がある。このことから、めっき工程後の接点の洗浄を実施することがより好ましい。
【0210】
上記した実施形態では、一の太陽電池2aから隣接する太陽電池2bに配線部材3を介して接続するにあたって、太陽電池2aと、それに隣接する太陽電池2bとが同一方向を向いていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、
図24のように太陽電池2aと、それに隣接する太陽電池2bの姿勢が天地逆転していてもよい。
すなわち、太陽電池2a,2b間で表裏が逆転していてもよい。この場合、太陽電池2a,2b間を直列接続するにあたって、配線部材3を太陽電池2の第一主面側から第二主面側に回す必要がないので、容易に接続できる。
【0211】
上記した実施形態では、配線部材3の被接着面の全面と第一導電層21が接着していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、配線部材3の被接着面の全面と第一導電層21が接着していなくてもよい。
すなわち、第一導電層21がバスバー電極部32を有さない構造であってもよいし、第一導電層21が、開口部、切り欠き部、間隙部を含む形状であってもよい。
【0212】
また上記した実施形態では、複数のフィンガー電極部31と、複数のバスバー電極部32とを有した第一導電層21を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、第一導電層21の構成は特に限定されない。
【0213】
例えば、第一導電層は、複数のフィンガー電極部31のみにより構成され、バスバー電極部32を有さない所謂バスバーレスの電極であってもよい。
また、第一導電層21は、光電変換部30の受光面と接するように設けられた透光性導電膜上に形成しても良い。この場合、この透光性導電膜は、酸化インジウム錫(ITO)や酸化亜鉛(ZnO)等の透光性導電酸化物により構成することができる。
【0214】
上記した実施形態では、太陽電池2をモジュール化するにあたって、一の太陽電池2の裏面電極28を、タブ等の配線部材3を介して、他の太陽電池2のバスバー電極部32と接続する。こうすることによって、複数の太陽電池2を直列又は並列に接続する。そして、接続された太陽電池2,2を、表面部材5、裏面部材6、及び充填材7により封止することによってモジュール化を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上記したように太陽電池2単独であってもよい。この場合も、本明細書では、上記したように太陽電池モジュールと呼ぶ。
【0215】
上記した実施形態では、第一導電層21の材料として、低融点材料34と高融点材料35との組み合わせることによって孔23(開口部)を形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。
すなわち、孔23の形成方法は、特に限定されるものではなく、マスク、レーザー照射、機械的な孔開け、化学エッチング等の方法により、孔23(開口部)を形成してもよい。その場合、高融点材料35のみでも使用可能である。
【0216】
上記した実施形態では、アニール温度における第一導電層21の性状の変化を利用して、絶縁層19の孔23を形成し、第二導電層22を形成することで集電極8を形成していたが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、絶縁層形成工程において、
図26(a)のようにフォトレジスト等のレジスト層100によってあらかじめ孔101(開口部)を形成し、
図26(b)のようにめっき工程で第二導電層22を形成する。そして、
図26(c)のように、レジスト層100を剥がすことによって、集電極8を形成してもよい。
【0217】
また、第一導電層21の材料として、粒径が1μm以下の金属微粒子を使用してもよい。すなわち、ナノオーダーの金属微粒子は、融点よりも低温にすることで、焼結ネッキング(微粒子の融着)を生じうるので、焼結ネッキング開始温度T1’以上融点T1以下の温度で加熱することで、微粒子の外周部付近に変形が生じさせる。こうすることにより、第一導電層21の表面形状を変化させ、絶縁層19に孔23を形成することができる。
例えば、材料の大きさ(例えば、粒径)等を調整することにより、アニール工程での加熱による第一導電層21の断線を抑制し、変換効率を向上させることも可能である。
具体的には、銀、銅、金等の高い融点を有する材料も、粒径が1μm以下の微粒子であれば、融点よりも低温の200℃程度あるいはそれ以下の温度T1’で焼結ネッキング(微粒子の融着)を生じうる。そのため、銀、銅、金等の高い融点を有する材料も、低融点材料34として用いることができる。
このような焼結ネッキングを生じる材料は、焼結ネッキング開始温度T1’以上に加熱されると、微粒子の外周部付近に変形が生じる。そのため、第一導電層21の表面形状を変化させ、絶縁層19に孔23を形成することができる。
また、微粒子が焼結ネッキング開始温度以上に加熱された場合であっても、融点T2’未満の温度であれば微粒子は固相状態を維持する。そのため、材料の粗大化による断線が生じ難い。すなわち、金属微粒子等の焼結ネッキングを生じる材料は、低融点材料34でありながら、高融点材料35としての側面も有しているといえる。
【0218】
このような焼結ネッキングを生じる材料では、焼結ネッキング開始温度T1’=熱流動開始温度T1と定義できる。
なお、焼結ネッキング開始温度を厳密に測定することが困難な場合は、微粒子を含有する第一導電層21を形成し、その上に絶縁層19を形成して、加熱により絶縁層19に孔23(き裂)が生じる温度を焼結ネッキング開始温度とみなすことができる。
また、絶縁層19を形成する際に加熱が行われる場合は、絶縁層19を形成する際の基板の加熱により孔23(き裂)が生じる温度を、焼成ネッキング開始温度とみなすことができる。
【0219】
上記した実施形態では、太陽電池2に配線部材3を取り付ける工程について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、複数の太陽電池2を含む太陽電池モジュール1を製造する場合においては、
図19に示されるように一の太陽電池基板46に接着した配線部材3を、他の太陽電池基板46に接着してから、第二導電層22を形成してもよい。このような方法によれば、生産性を高めることができる。
【0220】
上記した実施形態では、第二導電層22は、単一の層から形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の層から構成させても良い。
例えば、第二導電層22として、銅(Cu)等の導電率の高い材料からなる第一のめっき層を、絶縁層19を介して第一導電層21上に形成した後、化学的安定性に優れる第二のめっき層を第一のめっき層の表面に形成する。
こうすることにより、第一のめっき層上に第二のめっき層が積層された多層構造となり、低抵抗で化学的安定性に優れた集電極8を形成することができる。
【0221】
上記した実施形態では、太陽電池モジュール1は、絶縁層19をそのまま被覆した状態で用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、集電極形成後(めっき工程後)に絶縁層除去工程が行われてもよい。
特に、絶縁層19として光吸収の大きい材料が用いられる場合は、絶縁層19の光吸収による太陽電池の光電特性の低下を抑制するために、絶縁層除去工程が行われることが好ましい。
この際、光取り込み効果をより向上させる観点から、第一導電層非形成領域38上の絶縁層19が全て除去されることがより好ましい。
【0222】
上記した実施形態では、太陽電池2として、ヘテロ接合太陽電池を用い、光入射側(第一主面側)に集電極8が設けられるものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、裏面側(光入射側に対して反対側)にも同様の集電極が形成されてもよい。
【0223】
上記した実施形態では、太陽電池2として、ヘテロ接合太陽電池であって、結晶シリコン系太陽電池を用いたが、本発明はこれに限定されるものでなく、他の種類の太陽電池であってもよい。例えば、単結晶シリコンウェハや多結晶シリコンウェハ等の結晶系半導体ウェハから形成される太陽電池でもよい。
このとき、用いられる結晶系半導体ウェハは、略正方形状であることが好ましい。また、結晶系半導体ウェハは、平均厚みが0.05mm以上0.15mmであることが好ましく、0.1mm以上0.2mm以下であることがより好ましい。
結晶系半導体ウェハをこのような範囲に設定することにより、基板としての機能を十分な強度を保持しつつ、薄い太陽電池が形成できる。
また、結晶系半導体ウェハをこのような範囲に設定することにより、比較的平均厚みが薄くなるので、押圧等により、割れやすくなるものの、上記した実施形態のような製造方法を使用することで、破損なく製膜することができる。
【0224】
この太陽電池2は、
図21のように積層方向において、n型半導体領域10とp型半導体領域11とがあり、n型半導体領域10とp型半導体領域11との界面部分で半導体接合部12が形成されている。
n型半導体領域10とp型半導体領域11は、結晶系半導体から構成しても良いし、非晶質半導体から構成しても良い。
このようなウェハを薄膜化した太陽電池であっても、上記した実施形態のように、めっき工程において、めっき電源40との給電点を配線部材3上に設けることで、めっき電源40の接続端子からの押圧による破損を防止することができる。
【0225】
また、この太陽電池の他に単結晶シリコン基板と非晶質シリコン層との間に実質的に真性な非晶質シリコン層を挟み、その界面での欠陥を低減し、ヘテロ結合界面の特性を改善した構造を有する太陽電池であってもよい。
【0226】
また、本発明の太陽電池には、ヘテロ接合太陽電池以外の結晶シリコン太陽電池や、GaAs等のシリコン以外の半導体基板が用いられる太陽電池、非晶質シリコン系薄膜や結晶質シリコン系薄膜のpin接合あるいはpn接合上に透明電極層が形成されたシリコン系薄膜太陽電池や、CIS,CIGS等の化合物半導体太陽電池、色素増感太陽電池や有機薄膜(導電性ポリマー)等の有機薄膜太陽電池のような各種の太陽電池でも適用可能である。
【0227】
上記した実施形態では、接着材33を第一導電層21に設けた後に配線部材3を接続したが、本発明はこれに限定されるものではなく、接着材33をあらかじめ配線部材3の表面に形成しておいてもよい。
例えば、はんだ材料があらかじめ形成された配線部材を使用し、当該配線部材を使用して太陽電池2の表面に接着してもよい。
【0228】
上記した第1,2実施形態では、バスバー電極部32において、第二導電層22は、配線部材3上に絶縁層19を一部又は全部で挟んで積層していたが、本発明はこれに限定されるものではない。
図23のように配線部材3と第二導電層22の間に絶縁層19を挟まなくてもよい。この場合、配線部材3の表面に絶縁層19を設けずに、めっき工程を行うことが好ましい。
【0229】
上記した実施形態では、配線部材接着工程において、第一導電層21上に配線部材3を接着する際に、配線部材3と別体の接着材33を用いて接着したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0230】
あらかじめ配線部材3の表面に接着材33がコーティングされているものを用いる場合には、配線部材接着工程において、再度、接着材33を塗布しなくてもよい。すなわち、配線部材3のコーティング層61が接着材33で形成されている場合には、配線部材3と第一導電層21との間に改めて接着材33を介在させなくてもよい。言い換えると、配線部材接着工程において、あらかじめ配線部材3の表面に接着材33をコーティングにして接着してもよい。
【0231】
上記した実施形態では、バスバー電極部32において第一導電層21と配線部材3との間に接着材33を介在させたが、本発明はこれに限定されるものではなく、第一導電層21上に配線部材3を直接接着してもよい。
【0232】
この場合、コーティング層61を第一導電層21よりも軟らかいものを採用し、第一導電層21の表面に凹凸を形成して、第一導電層21と配線部材3を圧着させることが好ましい。すなわち、
図25に示されるように、第一導電層21の凸部を配線部材3のコーティング層61に食い込ませることが好ましい。こうすることによって、第一導電層21に対して配線部材3がずれにくくできる。
この凹凸の形成方法として、例えば、エッチング等により、表面を加工して形成したり、めっき法等によって直接形成したりすることができる。めっき法によって形成する場合の一例には、めっき液の成分を調整して、めっき表面が針状に粗化するようにめっきを行うことが挙げられる。
【0233】
上記した実施形態では、第二導電層22として第一導電層21よりも電気抵抗が小さなものを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、第二導電層22は、第一導電層21の電気抵抗以下の抵抗を有していればよい。
【0234】
上記した実施形態では、基板15と導電型シリコン系薄膜17,26のそれぞれの間に真性シリコン系薄膜16,25を設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、真性シリコン系薄膜16,25を設けなくてもよい。
【0235】
以下に、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0236】
本発明の具体的な実施例及び実施例に対する比較例の太陽電池及び太陽電池モジュールの作製手順と、これらの評価結果を説明する。
【0237】
(実施例1)
実施例1のヘテロ接合太陽電池を、以下のようにして製造した。
基板15たる一導電型単結晶シリコン基板として、入射面の面方位が(100)で、厚みが200μm、6インチ(156mm)角の略正方形のn型単結晶シリコンウェハを用いた。このシリコンウェハを2重量%のフッ化水素酸(HF)水溶液に3分間浸漬し、表面の酸化シリコン膜を除去した後、超純水によるリンスを2回行った。このシリコン基板を、70℃に保持された5/15重量%の水酸化カリウム(KOH)/イソプロピルアルコール水溶液に15分間浸漬し、ウェハの表面をエッチングすることでテクスチャ構造を形成した。その後に超純水によるリンスを2回行った。
原子間力顕微鏡(AFM パシフィックナノテクノロジー社製)により、ウェハの表面観察を行ったところ、ウェハの表面はエッチングが最も進行しており、(111)面が露出したピラミッド型のテクスチャが形成されていた。
【0238】
エッチング後のウェハをCVD装置へ導入し、そのウェハの光入射側に、真性シリコン系薄膜16としてi型非晶質シリコンを5nmの膜厚となるように成膜した。i型非晶質シリコンの成膜条件は、基板温度:150℃、圧力:120Pa、SiH
4/H
2流量比:3/10、投入パワー密度:0.011W/cm
2であった。なお、本実施例における薄膜の膜厚は、ガラス基板上に同条件にて成膜された薄膜の膜厚を、分光エリプソメトリー(商品名M2000、ジェー・エー・ウーラム社製)にて測定することにより求められた成膜速度から算出された値である。
【0239】
i型非晶質シリコン層上に、導電型シリコン系薄膜17たる逆導電型シリコン系薄膜としてp型非晶質シリコンを7nmの膜厚となるように成膜した。p型非晶質シリコン層の成膜条件は、基板温度が150℃、圧力60Pa、SiH
4/B
2H
6流量比が1/3、投入パワー密度が0.01W/cm
2であった。なお、上記でいうB
2H
6ガス流量は、H
2によりB
2H
6濃度が5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
【0240】
次にウェハの裏面側に、真性シリコン系薄膜25としてi型非晶質シリコン層を6nmの膜厚で成膜した。i型非晶質シリコン層の成膜条件は、上記のi型非晶質シリコン層の成膜条件と同様であった。i型非晶質シリコン層上に、導電型シリコン系薄膜26としてn型非晶質シリコン層を4nmの膜厚となるように成膜した。n型非晶質シリコン層の成膜条件は、基板温度:150℃、圧力:60Pa、SiH
4/PH
3流量比:1/2、投入パワー密度:0.01W/cm
2であった。なお、上記でいうPH
3ガス流量は、H
2によりPH
3濃度が5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
【0241】
この上に光入射側の透明電極層18及び裏面側の透明電極層27として、各々酸化インジウム錫(ITO、屈折率:1.9)を100nmの膜厚となるように成膜した。ターゲットとして酸化インジウムを用い、基板温度:室温、圧力:0.2Paのアルゴン雰囲気中で、0.5W/cm
2のパワー密度を印加して透明電極層18,27の成膜を行った。
【0242】
透明電極層27上には、裏面電極28として銀をスパッタ法により、500nmの膜厚となるように形成した。透明電極層18上には、第一導電層21及び第二導電層22を有する集電極8が以下のように形成された。
【0243】
第一導電層21の形成には、低融点材料34としての錫ビスマス(SnBi)金属粉末(粒径D
L=25〜35μm、融点T1=141℃)と、高融点材料35としての銀粉末(粒径D
H=12〜3μm、融点T2=971℃)とを、20:80の重量比で含み、さらにバインダー樹脂としてエポキシ系樹脂を含む印刷ペーストを用いた。この印刷ペーストを、集電極パターンに対応する開口幅(L=80μm)を有する#230メッシュ(開口幅:l=85μm)のスクリーン版を用いて、スクリーン印刷し、90℃で乾燥した。
【0244】
第一導電層21の形成領域は、バスバー電極部32と、フィンガー電極部31とからなり、バスバー電極部32の幅は1.5mm、フィンガー電極部31の線幅は105μm、フィンガー電極部31の間隔は2mmであった。
【0245】
第一導電層21が形成されたウェハを、CVD装置に投入し、絶縁層19として酸化シリコン層(屈折率:1.5)を、プラズマCVD法により80nmの厚みとなるように光入射面側に形成した。
【0246】
絶縁層19の成膜条件は、基板温度:135℃、圧力133Pa、SiH
4/CO
2流量比:1/20、投入パワー密度:0.05W/cm
2(周波数13.56MHz)であった。
この条件で光入射面側に形成された絶縁層19の屈折率(n)及び消衰係数(k)は
図22に示す通りであった。
【0247】
その後、絶縁層19を形成した後のウェハを熱風循環型オーブンに導入し、大気雰囲気において、180℃で20分間、アニール処理を実施した。
【0248】
その後、レーザー加工機によりセル外周部のシリコンウェハを0.5mmの幅で除去し、表面(第一主面側)と裏面(第二主面側)との間の電気的短絡部を除去した。
【0249】
幅1.5mm、厚さ0.2mm、長さ155mmの銅箔からなる配線部材3を、バスバー電極部32の第一導電層21上に、幅1.2mm、長さ152mmの導電性フィルムを用いて接着した。すなわち、第一導電層21上に配線部材3を載置し、熱圧着させることによって接着した。
【0250】
このとき、配線部材3の一端がシリコン基板端部から1.5mmの位置に配置されるようにして配線部材3の接着を行った。配線部材3の接着には、導電性フィルムを用いた。また、めっき電極側給電点との接点は、配線部材3のもう一端から1.5mmの位置に設けた。
【0251】
以上のように配線部材3が接着された太陽電池基板46を、
図12に示すように、めっき槽48に投入した。めっき電源40との接点は、太陽電池基板46(シリコン基板)と接着していない領域の配線部材3上に設けた。すなわち、太陽電池基板46と配線部材3の接続部位以外の位置にめっき電源40との接点をとった。
【0252】
めっき液49には、硫酸銅五水和物、硫酸、及び塩化ナトリウムが、それぞれ120g/l、150g/l、及び70mg/lの濃度となるように調製された溶液に、添加剤(上村工業製:品番ESY−2B、ESY−H、ESY−1A)が添加されたものが用いられた。
このめっき液を用いて、温度40℃、電流3A/dm
2の条件でめっきを行った。第一導電層21上の絶縁層19上に、第二導電層22として銅が10μm程度の厚みで均一に析出した。第一導電層21が形成されていない領域への銅の析出は、原則としてほとんど見られなかった。
【0253】
その後、第二導電層22が形成された基板等に対して水洗を行い、表面に付着しためっき液49を取り除いた。このとき、バスバー電極部32のライン抵抗率の測定を行ったところ、1Ω/cmであった。
【0254】
(実施例2)
錫ビスマス(SnBi)金属粉末と銀粉末との比率を60:40として、バスバー電極部32のライン抵抗率が10Ω/cmとなった点を除き、実施例1と同様にして太陽電池を作製した。
【0255】
(実施例3)
集電極8にバスバー電極部32の第一導電層21を設けない、所謂バスバーレス構造の集電極とした点を除き、実施例1と同様にして太陽電池を作製した。
【0256】
(実施例4)
第一導電層21を形成した太陽電池2の仕掛品を、実施例1に記載した方法により4枚準備し、p型非晶質シリコン面が上側になるように4枚の太陽電池2を一直線上に並べた。その後、4枚の太陽電池2が電気的に直列接続となるように、それぞれ隣接する太陽電池2の表面側と裏面側とを配線部材3により接続した。
【0257】
また、並列方向両端部の太陽電池2、すなわち、いずれか一方にしか隣接する太陽電池2を有さない太陽電池2に対しては、隣接する太陽電池2への配線部材3の非接着面側に外部回路への電力を取り出すための引き出し線を接着した。このとき、配線部材3の長さを310mm、隣接する太陽電池2間の間隔(隣接する太陽電池2,2間の距離)を2mmとした。
【0258】
その後、配線部材3のうち太陽電池基板46,46の間に位置する部位、すなわち、
図19に示すように太陽電池基板46と接着していない部分を給電点41として、電解めっきを実施した。
【0259】
このとき、配線部材3により接続した一連の太陽電池基板46を硫酸銅めっき液の入っためっき槽に浸漬させた。この浸漬させた状態で、給電点41においてめっき電源40から通電を行い、第一導電層21上と裏面電極28上に銅を析出させた。その後、水洗を行い、表面に付着しためっき液を取り除いた。
めっき後の一連の太陽電池2、両端の太陽電池2に外部回路への引き出し線を接続した。その後、これらの太陽電池をガラス基板(表面部材5)及び裏面シート(裏面部材6)で挟み込み、封止剤(充填材7)を充填させて封止した。その後、引き出し線を配線ボックスに取り付けて太陽電池モジュール1を作製した。
【0260】
(比較例1)
めっき電源との給電点を、各バスバー電極部32の第一導電層21の端部に設けて第二導電層22を形成し、その後、配線部材3を第二導電層22上に接着した点を除いて、実施例1と同様にして太陽電池2を作製した。
【0261】
(比較例2)
第一導電層21の材料として、実施例2で用いた材料を用いた点を除き、比較例1と同様にして太陽電池を作製した。
【0262】
(比較例3)
比較例1と同様にして作製した太陽電池2を4個準備し、これらを実施例4と同様に配線部材3により電気的に直列接続になるように連結させて、太陽電池モジュール1を作製した。
【0263】
上記した実施例1〜4及び比較例1〜3の太陽電池に対し、第一導電層21を形成した段階でバスバー電極部32の第一導電層21のライン抵抗測定を実施した。また、上記した実施例1〜4及び比較例1〜3の太陽電池に対し、太陽電池特性をソーラーシミュレータにより測定を行った。この太陽電池特性測定後、配線部材3の付着強度を評価するために、引き剥がし試験を行い、試験後の外観を観察した。
【0264】
なお、実施例3においては、バスバー電極部32を有さないことから、バスバー電極部32を構成する第一導電層21のライン抵抗の測定は実施しなかった。また、モジュール化された実施例4及び比較例3に対しては、配線部材3の付着強度テストを実施しなかった。
【0265】
上記各実施例1〜4及び比較例1〜3のヘテロ接合太陽電池の作製条件、配線部材3の付着強度テスト結果、及び太陽電池特性(曲線因子(FF))の測定結果(実施例1の結果を1として規格化して表記)を表1に示す。
【0266】
なお、太陽電池特性のうち、実施例1〜3と比較例1、2においては、開放端電圧(Voc)と短絡電流(Jsc)には、優位差は認められなかったので、表1への記載を省略する。
【0267】
【表1】
【0268】
各比較例1,2での配線部材3の付着強度の測定結果から、剥離は第一導電層21と第二導電層22との間で生じていることか明らかとなった。このことは、第一導電層21と第二導電層22との付着強度がその他の界面よりも弱いことを示しており、第一導電層21と第二導電層22との間での剥離が生じやすいことが示唆される。
【0269】
一方、本発明の太陽電池2においては、表1から読み取れるように配線部材3が十分強い強度で太陽電池2と付着していることが分かった。
また、バスバー電極部32における第一導電層21のライン抵抗に関して、10Ω/cmとした比較例2において、FFの低下が確認された。一方、本実施例においては、いずれもFFの低下は生じなかった。
【0270】
以上、実施例を用いて説明したように、本発明によれば、信頼が高い太陽電池を単純な工程により低コストで提供することが可能となることがわかった。