(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光検出器は、前記多数の異なる光とそれぞれ対応する多数の変調された映像を所定の露出時間の間それぞれ累積させ、前記多数の異なる光にそれぞれ対応する多数の輝度画像を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の距離情報抽出方法。
前記多数の異なる光をそれぞれ測定した結果を、時間軸上で直交する関数として示す段階は、フーリエ級数のサイン項の係数並びにコサイン項の係数、またはチェビシェフ多項式の係数を決定することにより、前記多数の異なる光のそれぞれについて多項式を求める段階を含む請求項13に記載の距離情報抽出方法。
前記ゲインの波形を測定した結果を、時間軸上で直交する関数として示す段階は、フーリエ級数のサイン項の係数並びにコサイン項の係数、またはチェビシェフ多項式の係数を決定することにより、前記ゲインの波形に係る多項式を求める段階を含むことを特徴とする請求項13または14に記載の距離情報抽出方法。
前記多数の異なる光の波形と前記ゲインの波形とをそれぞれ測定した結果から、前記多数の異なる光の平均値と前記ゲインの平均値とを決定する段階をさらに含むことを特徴とする請求項13〜15のいずれか一項に記載の距離情報抽出方法。
前記多数の異なる光とゲインとの異なる組合せ別にそれぞれ異なるルックアップテーブルが生成されることを特徴とする請求項11〜20のいずれか一項に記載の距離情報抽出方法。
前記光検出器は、前記多数の異なるゲインにそれぞれ対応する多数の変調された映像を所定の露出時間の間それぞれ累積させ、前記多数の異なるゲインにそれぞれ対応する多数の輝度画像を形成することを特徴とする請求項22または23に記載の距離情報抽出方法。
前記ルックアップテーブルは、前記投射された光と前記多数の異なるゲインとの多様な組合せにそれぞれ対応する多数の異なるルックアップテーブルを含み、前記位相遅延を求める段階は、前記多数の異なるルックアップテーブルのうち、前記投射された光と前記多数の異なるゲインとの特定の組合せに対応するルックアップテーブルを参照することを含むことを特徴とする請求項22〜27のいずれか一項に記載の距離情報抽出方法。
前記光検出器は、二次元または一次元のアレイを有するCCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ、フォトダイオードアレイ、あるいは単一地点の距離測定のための1個のフォトダイオードを使用することを特徴とする請求項29〜31のいずれか一項に記載の光学装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、数学的に理想的な波形ではない実際の非線形的波形を利用し、光学装置と被写体との間の距離情報を抽出する方法を提供する。
【0009】
本発明はまた、前記方法を採用し、距離情報を抽出できる光学装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一類型による距離情報抽出方法は、被写体に多数の異なる光を投射する段階と、ゲインを有する光変調器で前記被写体から反射された反射光を変調し、変調された映像を得る段階と、前記変調された映像を光検出器で検出し、前記多数の異なる光にそれぞれ対応する多数の輝度画像を、前記変調された映像から得る段階と、前記多数の強度映像から反射光の位相遅延を求める段階と、前記位相遅延から被写体までの距離を計算する段階と、を含み、前記位相遅延を求める段階は、前記多数の異なる光の波形と前記光変調器のゲインの波形とを実測して得た情報を含むルックアップテーブルを参照することを含むことができる。
【0011】
前記多数の異なる光の波形と前記光変調器のゲインの波形は、同じ周期を有することができる。
【0012】
前記多数の異なる光は、波形が同一であって位相が互いに異なるか、あるいは波形が互いに異なりうる。
【0013】
前記多数の異なる光は、その平均値が互いに同じになるように制御されうる。
【0014】
前記光検出器は、前記多数の異なる光とそれぞれ対応する多数の変調された映像を所定の露出時間の間それぞれ累積させ、前記多数の異なる光にそれぞれ対応する多数の輝度画像を形成できる。
【0015】
前記方法は、前記位相遅延から被写体の反射率及び外光のサイズを求める段階をさらに含むことができる。
【0016】
前記位相遅延を求める段階は、前記多数の輝度画像を利用し、三次元空間内の輝度画像ベクトルを構成する段階と、前記輝度画像ベクトルが三次元空間内の基準ベクトルから傾いた角度を求める段階と、前記傾いた角度で前記ルックアップテーブルを参照し、反射光の位相遅延を求める段階と、を含むことができる。
【0017】
前記ルックアップテーブルは、前記傾いた角度と反射光の位相遅延との既定の関係を含むことができる。
【0018】
前記輝度画像ベクトルは、前記多数の輝度画像のサイズ間の差の組合せから構成されうる。
【0019】
前記ルックアップテーブルは、前記多数の異なる光と前記ゲインとの多様な組合せにそれぞれ対応する多数の異なるルックアップテーブルを含み、前記位相遅延を求める段階は、前記多数の異なるルックアップテーブルのうち、前記多数の異なる光とゲインとの特定の組合せに対応するルックアップテーブルを参照することを含むことができる。
【0020】
前記方法は、ルックアップテーブルを生成する段階をさらに含み、前記ルックアップテーブルを生成する段階は、前記多数の異なる光の波形と前記光変調器のゲインの波形とを測定し、前記多数の異なる光とゲインとを表す多項式をそれぞれ求める段階と、前記多数の異なる光の波形と前記光変調器のゲインの波形とに係る多項式を利用し、前記多数の輝度画像に係る多項式を求める段階と、前記多数の輝度画像に係る多項式をそれぞれ位相遅延に関する関数と位相遅延と関連しない定数項との和として整理する段階と、前記位相遅延に係る多数の関数間の差の組合せを利用し、三次元空間内で位相遅延に係るベクトル関数を定義し、特定のベクトルを基準ベクトルとして定義する段階と、前記多数の輝度画像に係る多項式間の差の組合せとして、三次元空間内で輝度画像ベクトルを定義する段階と、輝度画像ベクトルが基準ベクトルから傾いた角度と、前記角度に対応する位相遅延との関係を解析的に決定する段階と、前記解析的に決定された関係を示すルックアップテーブルを生成する段階と、を含むことができる。
【0021】
前記輝度画像に係る多項式を求める段階は、前記多数の異なる光が被写体から反射された後の反射光に係る一般的な多項式を、前記多数の異なる光に係る多項式から誘導する段階と、前記反射光に係る多項式と前記ゲインに係る多項式とを乗じ、光変調された光に係る多項式を求める段階と、前記光変調された光に係る多項式を、光検出器からの露出時間で積分し、前記多数の異なる光にそれぞれ対応する前記多数の輝度画像に係る多項式を求める段階と、を含むことができる。
【0022】
前記多数の異なる光の波形と前記光変調器のゲインの波形とを測定し、前記多数の異なる光の波形と前記ゲインの波形とを示す多項式をそれぞれ求める段階は、前記多数の異なる光をそれぞれ測定する段階と、前記多数の異なる光をそれぞれ測定した結果を、時間軸上で直交する関数として示す段階と、前記光変調器のゲインの波形を測定する段階と、前記ゲインの波形を測定した結果を、時間軸上で直交する関数として示す段階と、を含むことができる。
【0023】
前記多数の異なる光をそれぞれ測定した結果を、時間軸上で直交する関数として示す段階は、フーリエ級数のサイン項の係数並びにコサイン項の係数、またはチェビシェフ多項式の係数を決定することにより、前記多数の異なる光のそれぞれに係る多項式を求める段階を含むことができる。
【0024】
前記ゲインの波形を測定した結果を、時間軸上で直交する関数として示す段階は、フーリエ級数のサイン項の係数並びにコサイン項の係数、またはチェビシェフ多項式の係数を決定することにより、前記ゲインの波形に係る多項式を求める段階を含むことができる。
【0025】
前記多数の異なる光の波形と前記ゲインの波形とをそれぞれ測定した結果から、前記多数の異なる光の平均値と前記ゲインの平均値とを決定する段階をさらに含むことができる。
【0026】
前記多数の輝度画像に係る多項式をそれぞれ位相遅延に関する関数と位相遅延と関連しない定数項との和として整理する段階は、前記多数の輝度画像に係る多項式に存在する直流項のみを考慮することを含むことができる。
【0027】
前記次元空間内の位相遅延に関するベクトル関数は、
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
前記三次元空間内の輝度画像ベクトルは、
【0031】
【表3】
【0032】
前記多数の異なる光とゲインとの異なる組合せ別にそれぞれ異なるルックアップテーブルが生成されうる。
【0033】
本発明の他の類型による距離情報抽出方法は、1つの周期的な波形を有する光を被写体に投射する段階と、被写体から反射された反射光を、多数の異なるゲインを有する光変調器で変調し、変調された映像を求める段階と、前記変調された映像を光検出器で検出し、前記多数の異なるゲインにそれぞれ対応する多数の輝度画像を、前記変調された映像から得る段階と、前記多数の輝度画像を利用して反射光の位相遅延を求める段階と、前記位相遅延から被写体までの距離を計算する段階と、を含み、前記位相遅延を求める段階は、前記投射された光の波形と前記多数の異なるゲインの波形とを実測して構成したルックアップテーブルを参照する段階を含むことができる。
【0034】
前記投射された光の波形と、前記光変調器の多数の異なるゲインの波形は、同じ周期を有することができる。
【0035】
前記光検出器は、前記多数の異なるゲインにそれぞれ対応する多数の変調された映像を所定の露出時間の間それぞれ累積させ、前記多数の異なるゲインにそれぞれ対応する多数の輝度画像を形成できる。
【0036】
前記位相遅延を求める段階は、前記多数の輝度画像を利用し、三次元空間内の輝度画像ベクトルを構成する段階と、前記輝度画像ベクトルが三次元空間内の基準ベクトルから傾いた角度を求める段階と、前記傾いた角度で前記ルックアップテーブルを参照し、反射光の位相遅延を求める段階と、を含むことができる。
【0037】
前記ルックアップテーブルは、前記傾いた角度と反射光の位相遅延との既定の関係を含むことができる。
【0038】
前記輝度画像ベクトルは、前記多数の輝度画像のサイズ間の差の組合せから構成されうる。
【0039】
前記ルックアップテーブルは、前記投射された光と前記多数の異なるゲインとの多様な組合せにそれぞれ対応する多数の異なるルックアップテーブルを含み、前記位相遅延を求める段階は、前記多数の異なるルックアップテーブルのうち、前記投射された光と前記多数の異なるゲインとの特定の組合せに対応するルックアップテーブルを参照することを含むことができる。
【0040】
本発明のさらに他の類型による光学装置は、周期的な波形を有する多数の異なる光を発生させて被写体に投射する光源と、周期的な波形を有するゲインで前記被写体から反射された光を変調するための光変調器と、前記光変調器によって変調された映像を検出し、前記多数の異なる光にそれぞれ対応する多数の輝度画像を、前記変調された映像から得る光検出器と、前記多数の輝度画像から反射光の位相遅延を求め、前記多数の異なる光の波形と前記光変調器のゲインの波形とを実測して得た情報を含むルックアップテーブルを参照し、被写体までの距離を計算する距離情報映像処理器と、を含むことができる。
【0041】
前記光学装置は、前記光源を駆動させ、前記多数の異なる光の波形を制御する光源駆動部と、前記光変調器を駆動させ、前記ゲインの波形を制御する光変調器駆動部と、前記光源駆動部、光変調器駆動部及び光検出器の動作を制御するための制御部と、をさらに含むことができる。
【0042】
また前記光学装置は、前記光変調器の光入射面で反射光を光変調器の領域内に集光する第1レンズと、前記第1レンズと光変調器との間で、所定の波長を有する光のみを透過させるフィルタと、前記光変調器と光検出器との間で、前記光変調された映像を光検出器の領域内に集光する第2レンズと、をさらに含むことができる。
【0043】
例えば、前記光検出器は、二次元または一次元のアレイを有するCCD(charge‐coupled diode)イメージセンサ、CMOS(complementary metal‐oxide semiconductor)イメージセンサ、フォトダイオードアレイを使用したり、あるいは単一地点の距離測定のための1個のフォトダイオードを使用できる。
【0044】
また、本発明のさらに他の類型によれば、前記光学装置を含む3Dカメラまたはレーザレーダが提供されうる。
【0045】
また、本発明のさらに他の類型による距離情報計算用ルックアップテーブルの生成方法は、被写体に投射される多数の異なる光の波形と光変調器のゲインの波形とを測定する段階と、前記測定された波形から、前記多数の異なる光と前記ゲインとを示す多項式をそれぞれ求める段階と、前記多数の異なる光と前記光変調器のゲインとに係る多項式を利用し、多数の輝度画像に係る多項式を求める段階と、前記多数の輝度画像に係る多項式を、それぞれ位相遅延に係る関数と位相遅延と関連しない定数項との和として整理する段階と、前記位相遅延に係る多数の関数間の差の組合せを利用し、三次元空間内で位相遅延に係るベクトル関数を定義し、特定のベクトルを基準ベクトルとして定義する段階と、前記多数の輝度画像に係る多項式間の差の組合せとして、三次元空間内で輝度画像ベクトルを定義する段階と、輝度画像ベクトルが基準ベクトルから傾いた角度と、前記角度に対応する位相遅延との関係を解析的に決定する段階と、前記解析的に決定された関係を表または関数の形態で示す段階と、を含むことができる。
【0046】
また、本発明のさらに他の類型による距離情報計算用ルックアップテーブルの生成方法は、被写体に投射される光の波形と、光変調器の多数の異なるゲインの波形とを測定する段階と、前記測定された光と多数の異なるゲインとから、前記光及び多数の異なるゲインを示す多項式をそれぞれ求める段階と、前記光及び前記光変調器の多数の異なるゲインに係る多項式を利用し、多数の輝度画像に係る多項式を求める段階と、前記多数の輝度画像に係る多項式を、それぞれ位相遅延に係る関数と位相遅延と関連しない定数項との和として整理する段階と、前記位相遅延に係る多数の関数間の差の組合せを利用し、三次元空間内で位相遅延に係るベクトル関数を定義し、特定のベクトルを基準ベクトルとして定義する段階と、前記多数の輝度画像に係る多項式間の差の組合せとして、三次元空間内で輝度画像ベクトルを定義する段階と、輝度画像ベクトルが基準ベクトルから傾いた角度と、前記角度に対応する位相遅延との関係を解析的に決定する段階と、前記解析的に決定された関係を表または関数の形態で示す段階と、を含むことができる。
【0047】
また、本発明の一類型によれば、前述の方法は、生成されたルックアップテーブルを保存している記録媒体が提供されうる。
【0048】
また、本発明の一類型による被写体と光学装置との間の距離を計算する方法は、波形を有する光を被写体に投射する段階と、ゲインを有する光変調器で前記被写体から反射された光を変調し、変調された映像を求める段階と、前記被写体に投射された光に対応する輝度画像を、前記変調された映像から求める段階と、前記被写体から反射された光の位相遅延を前記輝度画像から求める段階と、前記位相遅延、前記被写体に投射された光の波形及び前記光変調器のゲインを利用し、被写体までの距離を計算する段階と、を含むことができる。
【0049】
前記計算する段階は、前記位相遅延、前記被写体に投射された光の波形及び前記光変調器のゲインを互いに関連させるルックアップテーブルを参照して距離を計算することを含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、添付された図面を参照しつつ、距離情報抽出方法及び該方法を採用した光学装置について詳細に説明する。以下の図面で同じ参照符号は、同じ構成要素を指し、図面上で各構成要素の大きさは、説明の明瞭性と便宜性とのために誇張されていることがある。
【0052】
1.光学装置の構造及び動作
まず
図1は、光飛行時間(TOF:time‐of‐flight)法を利用して、距離情報を抽出できる光学装置100の例示的な構造を概略的に示している。
図1を参照すれば、光学装置100は、所定の波長を有する光を発生させる光源101;光源101を駆動させるための光源駆動部102;被写体200から反射された光を光変調するための光変調器103;光変調器103を駆動させるための光変調器駆動部104;光変調器103によって光変調された映像を検出するための光検出器105;光源駆動部102、光変調器駆動部104及び光検出器105の動作を制御するための制御部106;光検出器105の出力を基に距離情報を計算するための距離情報映像処理器(depth image processor)107を含むことができる。また、光変調器103の光入射面には、被写体200から反射された光を光変調器103の領域内に集光するための第1レンズ108と、所定の波長を有する光のみを透過させるフィルタ109が配されうる。光変調器103と光検出器105との間には、光変調された映像を光検出器105の領域内に集光するための第2レンズ110がさらに配されうる。
【0053】
光源101は、例えば、安全のために肉眼には見えない、およそ850nmの近赤外線(NIR:near infrared)波長を有する光を放出させることができる発光ダイオード(LED)またはレーザダイオード(LD)であるが、波長の帯域と光源の種類に制限はない。光源駆動部102は、制御部106から受信された制御信号により、光源101を、例えば振幅変調(amplitude modulation)方式により駆動できる。これにより、光源101から被写体200に投射される投射光は、所定の周期(Te)を有する周期的な連続関数の形態を有することができる。例えば、投射光は、サイン波、ランプ波、四角波などのように、特殊に定義された波形を有することができるが、定義されていない一般的な形態の波形を有することもできる。
【0054】
前述のように、従来提案された距離情報抽出方法の場合、光源が理想的な形態のサイン波、ランプ波、四角波などを投射光として出力すると仮定した。しかし、実際の光源は、光源自体の動作非線形性及び信号歪曲などにより、理想的な波形を駆動信号として入力する場合にも、理想的な波形をそのまま出力しない。これは、距離情報を抽出する場合において、誤差要因として作用する。
図2は、光源から実際に出力された出力光と、理想的なサイン波出力光とを例示している。
図2において、点線で表示されている線は、理想的なサイン波出力光を示し、実線で表示されている線は、実際の出力光を示している。
図2に図示された実際の出力光を見れば、理想的なサイン波に比べ、実際の出力光は、歪曲とDC(direct current)オフセットとを有するということが分かる。このため、測定精密度を高めるために、理想的な波形を発生させることができる高価な波形発生器や、高価な光源が要求されうる。
【0055】
図1に示された光学装置100の場合、後述するように、実際の出力波形を測定し、その測定結果を距離情報計算に適用する。従って、光学装置100は、歪曲とDCオフセットとがある出力光をそのまま利用できるので、高価な波形発生器や、高価な光源を使用しなくても済む。また、光学装置100の光源101は、単一な波形ではないサイン波、ランプ波、四角波などを組合せた一般的な波形を有する光を投射光として出力することもできる。
【0056】
一方、光変調器103は、被写体200から反射された光を光変調器駆動部104の制御によって、光変調する。光変調器駆動部104は、制御部106から受信された制御信号によって、光変調器103を駆動させる。例えば、光変調器103は、光変調器駆動部104によって提供された所定の波形を有する光変調信号によってゲイン(gain)を変化させ、反射光の大きさを変調させることができる。このため、光変調器103は、可変ゲインを有する透過フィルタの役割を担いうる。光変調器103は、距離による光の位相差、または移動時間を識別するために、数十〜数百MHzの高い光変調速度で動作することができる。これに符合する光変調器103として、例えばMCP(multi‐channel plate)を具備した映像増倍管(image intensifier)、GaAs系の固体変調器素子、電光(electro‐optic)物質を利用した薄型の変調器素子などが使われうる。
図1には、光変調器103が透過型として示されているが、反射型光変調器を使用することも可能である。
【0057】
図3は、光変調器103の周期的なゲイン変化、すなわち、透過率の時間軸波形を例示している。ここで、光変調器103の動作周波数は、光源101の動作周波数(fe)と同じになるように構成される。
図3で点線で表示されている線は、光変調器103の理想的なゲイン変化を示し、実線で表示されているのは、光変調器103の実際のゲイン変化を示す。光源101と同様に、光変調器103もやはり、素子構造によって非線形性とDCオフセットとを有する。従って、
図3に示されているように、光変調器103の実際のゲイン変化には、理想的な光変調器のゲイン変化とは異なり、歪曲が存在することになる。従来提案された距離情報抽出方法の場合、光変調器のゲイン変化が理想的であると仮定したので、かような光変調器103の非線形性並びにDCオフセットも、やはり誤差の原因になる。
図1に示された光学装置100の場合、後述するように、光変調器103の実際のゲイン変化を測定し、その測定結果を距離情報計算に反映する。従って、光学装置100は、歪曲が存在する一般的な光変調器をそのまま利用できる。また、光変調器103のゲイン波形は、サイン波形態だけではなく、多様な形態の波形を有することもできる。
【0058】
光検出器105は、光変調器103によって光変調された映像を、制御部106の制御によって検出する。被写体200のいずれか1つの点までの距離だけを測定しようとする場合、光検出器105は、例えば、フォトダイオードや積分器のような1つの単一な光センサを使用することもできる。しかし、被写体200上の多数の点までの距離を同時に測定しようとする場合には、光検出器105は、多数のフォトダイオードの二次元または一次元のアレイ、または他の一次元や二次元の光検出アレイを有することもできる。例えば、光検出器105は、二次元または一次元のアレイを有するCCD(charge‐coupled diode)イメージセンサ、またはCMOS(complementary metal‐oxide semiconductor)イメージセンサでもよい。特に、CCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサのような光検出アレイを使用する場合、光学装置100は、デプス(depth)情報を有する3D(three‐dimensional)映像を撮影できる3Dカメラに適用されうる。
【0059】
距離情報映像処理器107は、光検出器105の出力を基に、後述する距離情報抽出アルゴリズムによって、距離情報を計算する役割を担う。距離情報映像処理器107は、例えば、専用の集積回路(IC)として具現され、またはパソコン(PC)のような一般的なコンピュータ装置としても具現されうる。
【0060】
以下、前述の構造を有する光学装置100の動作について概略的に説明する。
【0061】
まず、光源101は、制御部106及び光源駆動部102の制御によって、所定の周期(Te)、及び所定の波形を有する三種以上の異なる投射光を、互いに異なる時間間隔で、順に発生させる。このように発生した三種以上の投射光は、被写体200に順に投射される。例えば、3種の異なる投射光を使用する場合、時間T1の間、第1投射光を発生させて被写体200に投射させ、次の時間T2の間、第2投射光を発生させて被写体200に投射させ、次に、時間T3の間、第3投射光を発生させて被写体200に投射させることができる。三種以上の異なる投射光は、多様な方式で具現されうる。例えば、三種以上の投射光は、同じ波形を有しつつ、単に位相のみ異なるようにできる。しかし、さらに正確な距離測定のために、波形自体が異なった三種以上の投射光を発生させることもできる。波形の形態、周期及び位相の大きさには、特別な制限はないが、全ての投射光が、同じ周期の波形を有しうる。
【0062】
図4は、光源101で発生しうる3つの投射光の形態を例示している。
図4を参照すれば、第1投射光と第3投射光は、非線形的に変形された三角波の波形に近く、その位相が異なる。また、第2投射光は、歪曲された四角波の波形に近い。比較のために、
図4には、理想的な形態の三角波が点線で共に表示されている。それ以外にも、例えば、サイン波、三角波、四角波及びそれらの組合せ波と共に、歪曲が存在する波形がいずれも使用可能である。かような異なる波形の使用は、後述する距離情報抽出アルゴリズムで説明するように、実際の出力波形を測定し、その測定結果を距離情報計算に適用できる。
【0063】
光源101から放出された第1投射光ないし第3投射光は、被写体200の表面から反射され、第1レンズ108に入射する。一般的に、実際の被写体200は、光学装置100から撮影される表面までの距離、すなわち、デプスが互いに異なる多数の表面が、二次元アレイを形成する。例えば、
図1には、光学装置100までの距離が互いに異なる5つの表面P1〜P5を有する被写体200が例示されている。投射光がそれぞれの表面P1〜P5から反射され、互いに異なって時間遅延された(すなわち、位相の異なる)5つの反射光が発生する。例えば、第1投射光が被写体200の5つの表面P1〜P5からそれぞれ反射され、位相の異なる5つの第1反射光が発生する。また、第2投射光が同じ被写体200の5個の表面P1〜P5からそれぞれ反射され、位相の異なる5個の第2反射光が発生する。同様に第3投射光も、被写体200の5つの表面P1〜P5からそれぞれ反射され、位相の異なる5つの第3反射光が発生する。光学装置100と表面P1〜P5との間の距離が異なるために、例えば、光学装置100からの距離が最も遠い表面P1から反射された反射光は、TOF1の時間遅延後、第1レンズ108に達し、光学装置100からの距離が最も近い表面P5から反射された反射光は、TOF1より小さいTOF5の時間遅延後、第1レンズ108に達する。
【0064】
第1レンズ108は、反射光を光変調器103の領域内にフォーカシングする。第1レンズ108と光変調器103との間には、使用波長以外の背景光や雑光(noisy light)を除去するために、所定の波長を有する光のみを透過させるフィルタ109が配されうる。例えば、光源101がおよそ850nmの近赤外線(NIR)波長を有する光を放出する場合、フィルタ109は、およそ850nmの近赤外線波長帯域を通過させる近赤外線帯域通過フィルタ(IR band pass filter)でありうる。従って、光変調器103に入射する光は、光源101から放出され、被写体200から反射された光が支配的となるようにできる。
図1には、第1レンズ108と光変調器103との間に、フィルタ109が配されるように示されているが、第1レンズ108とフィルタ109との位置は、互いに入れ替わることもある。例えば、フィルタ109をまず通過した近赤外線光が、第1レンズ108によって、光変調器103にフォーカシングするようにしてもよい。
【0065】
光変調器103は、所定の波形を有する光変調信号に反射光の強度を変調する。例えば、反射光は、
図3で例示したゲインを乗じた量に応じて、光変調器103によって強度が変調されうる。ここで、ゲイン波形の周期は、投射光の周期(Te)と同じである。
図1に示された例では、光変調器103は、被写体200の5つの表面P1〜P5からそれぞれ反射された5つの第1反射光を光変調して光検出器105に提供し、次に、5種の第2反射光と5つの第3反射光とを順に光変調し、光検出器105に提供できる。
【0066】
光変調器103によって強度が変調された光は、第2レンズ110を通過しつつ、倍率調整及び再フォーカシングされた後、光検出器105に達する。従って、変調された光は、第2レンズ110によって、光検出器105の領域内に集光される。光検出器105は、変調された光を所定の露出時間の間に受光し、輝度画像(intensity image)を生成する。例えば、光検出器105は、
図5(A)に示されているように、被写体200の5つの表面P1〜P5からそれぞれ反射された5つの第1反射光に対して変調された光を所定の露出時間の間に受光し、第1輝度画像IIM1を生成する。また、
図5(B)に示されているように、光検出器105は、被写体200の5つの表面P1〜P5からそれぞれ反射された5つの第2反射光に対して変調された光を所定の露出時間の間に受光し、第2輝度画像IIM2を生成する。また、
図5(C)に示されているように、光検出器105は、被写体200の5つの表面P1〜P5からそれぞれ反射された5つの第3反射光に対して変調された光を所定の露出時間の間に受光し、第3輝度画像IIM3を生成する。かような方法で、
図5(D)に示されているように、3つの異なる輝度画像IIM1,IIM2,IIM3を得ることができる。ここで、それぞれの輝度画像IIM1,IIM2,IIM3は、被写体200の5つの表面P1〜P5からそれぞれ反射された5つの反射光について輝度情報I1〜I5を含んでいる。
【0067】
距離情報を有する1フレームの映像を得るためには、前述の3つ以上の輝度画像が必要である。
図1及び
図5では、3つの投射光を利用して3つの輝度画像IIM1,IIM2,IIM3を得る例が示されている。しかし、4つまたはそれ以上の投射光を利用して、4つまたはそれ以上の輝度画像を得ることも可能である。それぞれの輝度画像IIM1,IIM2,IIM3は、距離情報を有する1フレームの映像を得るためのサブフレーム(sub‐frame)でありうる。もし1フレームの周期をTdとするならば、3つの輝度画像IIM1,IIM2,IIM3それぞれを得るための光検出器105の露出時間Tは、概ね1/3*Tdでありうる。しかし、輝度画像IIM1,IIM2,IIM3を得るための露出時間がいずれも同一である必要はなく、設計によって任意に選択されうる。例えば、3つの輝度画像IIM1,IIM2,IIM3に対して、互いに異なる露出時間T1,T2及びT3がそれぞれ割り当てられ、ただしT1+T2+T3≦Tdを満足しさえすればよい。
【0068】
また、
図5の(A)を参照すれば、光源101から放出された第1投射光が、被写体200の5つの表面P1〜P5からそれぞれ反射され、5つの第1反射光が生成される。5つの第1反射光は、光変調器103によって変調された後、光検出器105に達する。
図5には、説明を簡略化するために、光検出器105が5つの表面P1〜P5にそれぞれ対応する5個の画素を有するものとして示されている。5つの第1反射光は、対応する5個の画素にそれぞれ入射しうる。
図5の(A)に示されているように、表面P1〜P5からそれぞれ反射された5つの第1反射光は、光学装置100からの距離による異なる位相遅延Φ
P1〜Φ
P5をそれぞれ有する。例えば、最も遠い表面P1からの反射光が最も大きい位相遅延Φ
P1を有することになる。最初のサブフレームで、光検出器105は、例えばT1の露出時間の間、変調された第1反射光を撮影し、T1の時間の間に累積された第1輝度画像IIM1を生成できる。
【0069】
2番目のサブフレームは、最初のサブフレームの撮影後、T2の時間の間撮影されうる。
図5の(B)を参照すれば、第2投射光が被写体200から反射されて生成された第2反射光が、光変調器103によって変調された後、光検出器105に達する。5つの表面P1〜P5からそれぞれ反射された5つの第2反射光は、前述の5つの第1反射光と同じ位相遅延ΦP
1〜ΦP
5をそれぞれ有する。光検出器105は、例えばT2の露出時間の間、変調された第2反射光を撮影し、T2の時間の間に累積された第2強度映像IIM2を生成できる。
【0070】
3番目のサブフレームは、2番目のサブフレームの撮影後、T3の時間の間に撮影されうる。
図5の(C)を参照すれば、第3投射光が被写体200から反射されて生成された第3反射光が、光変調器103によって変調された後、光検出器105に達する。5つの表面P1〜P5からそれぞれ反射された5つの第3反射光は、前述の5つの第1反射光と同じ位相遅延Φ
P1〜Φ
P5をそれぞれ有する。光検出器105は、例えばT3の露出時間の間に、変調された第3反射光を撮影し、T3の時間の間に累積された第3輝度画像IIM3を生成できる。
【0071】
前述の方法で順次に得た3つの輝度画像IIM1,IIM2,IIM3は、距離情報映像処理器107に伝えられる。距離情報映像処理器107は、3つの輝度画像IIM1,IIM2,IIM3を基に、後述するアルゴリズムによって、距離情報を有する映像を生成できる。
図6は、3つの輝度画像IIM1,IIM2,IIM3から距離情報を有する映像を生成する過程(Depth Processing)を概略的に示している。例えば、最初のフレームについては、前述の方法で生成された3つの輝度画像IIM1,IIM2,IIM3から、第1距離情報映像(depth image)IMG1を得ることができる。次に、2番目フレームについても、同じ方法で生成された3つの輝度画像IIM1,IIM2,IIM3から、第2距離情報映像IMG2を得ることができ、3番目のフレームについても同じ方法で、第3距離情報映像IMG3を得ることができる。かような動作を反復することにより、所定のフレーム速度(fd=1/Td)で、被写体200の多数の表面までの動作をリアルタイムで観察できる。
【0072】
以上、3つ以上の輝度画像IIM1,IIM2,IIM3を得るために、3つ以上の異なる投射光を使用する場合について説明した。しかし、3つ以上のサブフレームの間、光源101は同じ1つの波形の投射光を出力し、光変調器103が3つ以上の異なるゲイン波形に反射光を変調することも可能である。
図7は、1つの同じ投射光と3つの異なる変調とで、3つの異なる輝度画像IIM1,IIM2,IIM3を生成する過程を図示している。
図7を参照すれば、第1反射光ないし第3反射光は、いずれも同じ波形と位相とを有し、ただ反射された被写体200の表面P1〜P5によって、異なる位相遅延Φ
P1〜Φ
P5が存在する。また、
図7の(A)〜(C)にそれぞれ示されているように、最初のサブフレームで光変調器103は、第1光変調信号に反射光を変調し、2番目のサブフレームで光変調器103は、第1光変調信号と異なる第2光変調信号に反射光を変調し、3番目のサブフレームで光変調器103は、第1光変調信号及び第2光変調信号と異なる第3光変調信号に反射光を変調する。これにより、
図7の(D)にそれぞれ図示されているように、互いに異なる3つの輝度画像IIM1,IIM2,IIM3を得ることができる。ここで、3つの光変調信号は、位相だけ互いに異なることもあり、または波形自体が互いに異なることもある。その後、距離情報映像を生成する方法は、
図6を参照して説明した通りである。
【0073】
2.距離情報抽出アルゴリズム
以下、前述の3つ以上の輝度画像IIM1,IIM2,IIM3を利用して、距離情報映像処理器107が距離情報を抽出するアルゴリズムについて説明する。
【0074】
以下で説明する距離情報抽出アルゴリズムの概要は、光源101から放出された投射光の実際波形と、光変調器103の実際のゲイン波形とを測定し、フーリエ級数などで数学的モデルを立てた後、これを基に、距離と輝度画像との理論的な関係を決定してルックアップテーブルを構成し、実際に撮影して得た輝度画像をルックアップテーブルと比較し、距離情報をリアルタイムで抽出する。
【0075】
以下の理論的説明においては、
図5に示されているように、三種の投射光を使用して、光変調器103が一つのゲイン波形を使用する方法を中心に記述する。また、光検出器105の出力が二次元アレイ映像である場合でも、それぞれの画素に適用される距離情報抽出方法は同一であるので、1つの画素に適用される方法だけを説明する。ただし、二次元アレイ映像で、多数の画素から距離情報を同時に抽出する場合には、データ管理及びメモリ割当てなどを効率的に処理し、重複処理される部分を省略することによって、計算量を減らすことができる。
【0076】
2−1.投射光と反射光との波形、光変調器のゲイン波形に係るモデリング
まず、周期(Te)を有する一般的な投射光の波形は、時間軸上で直交する関数として示すことができる。例えば、下の数式1のように、フーリエ級数のサイン項とコサイン項とで示すことができ、またはチェビシェフ多項式(Chebyshev polynomial)のような一般的な多項式で示すこともできる。以下では、投射光の波形をフーリエ級数で示す場合を中心に説明する。
【0078】
ここで、sは、投射光の波形の種類を区分する識別子である。例えば、3つの投射光を使用する場合に、s=1,2,3である。ωは、投射光の波形の駆動角周波数であって、ω=2πfe(feは、投射光の波形の駆動周波数、fe=1/Te)の関係を有する。また、a
k(s)は、投射光(s)で、k次サイン項の係数であり、b
k(s)は、投射光(s)で、k次コサイン項の係数である。係数a
k(s)とb
k(s)は、光源101の光出力を直接計測して得ることができる。例えば、光源101から放出された投射光の波形を測定し、測定された波形に係る高速フーリエ変換(FFT)のようなフーリエ変換を介して周波数成分を把握し、係数を求めることができる。このとき、次数mは、光源101から出力された投射光の波形計測値を適切に表現できるように十分に大きく捉える。一方、出力された投射光の出力の平均値は、下の数式2のように定義される。
【0080】
ここで、Tは、3つの投射光のうちいずれか一つに対応する1つの輝度画像を得るための光検出器105の露出時間、すなわち、サブフレームの周期である。3つの投射光について露出時間が、互いに異なるように設定される場合、例えばs=1に対して、TをT1として、s=2に対して、TをT2として、s=3に対して、TをT3とすることができる。以下では、3つの投射光に対して、同じ露出時間Tが設定されていると仮定する。
【0081】
3つの投射光の波形を具現する場合に、制御部106は、それぞれの投射光に係る平均出力が同じ値になるように、制御信号を適切に調節する。
図2と
図4は、数式1により表現された第1投射光ないし第3投射光を例示しており、例えばTe=25ns、m=5次項を使用した場合であり、投射光の平均出力値は、0.5(W)である。投射光の波形としては、数式1で表現可能なあらゆる形態の波形が制限なく使用されうる。例えば、サイン波、三角形波、四角波またはそれらの組合せ、そして歪曲が存在する場合等、いずれの場合も使用可能である。
【0082】
数式1で表現された投射光が被写体200から反射され、光学装置100にさらに入射するとき、その反射光は、下の数式3のような多項式で示すことができる。
【0084】
距離による反射光の位相遅延Φ
TOFは、次の数式4のように、時間遅延T
TOF及び投射光の駆動波形の周期(Te)により示すことができる。
【0086】
一方、光変調器103の一般的なゲイン波形も、下の数式5のように、フーリエ級数のような一般的な多項式で示すことができる。
【0088】
ここで、サイン項とコサイン項との各次数の係数c
k,d
kは、光変調器103のゲイン波形を直接計測し、計測されたゲイン波形に係る高速フーリエ変換(FFT)のようなフーリエ変換を介して実験的に求めた値を使用できる。このとき、次数nは、計測値を適切に表現できるように十分に大きく捉える。また、光変調器103のゲイン波形の平均値は、下の数式6のように定義されうる。
【0090】
ここで、Tは、前述のように、1サブフレームの周期である。
図3は、数式5で表現された光変調器103の一般的なゲイン波形を例示するものであり、例えばTe=25ns,n=5次項を使用した場合であり、ゲイン波形の平均値は0.4(W)である。
【0091】
2−2.光変調器による光変調及び光検出器からの輝度画像生成
数式3で表現された反射光は、数式5で表現された光変調器103のゲイン波形と乗算され、光検出器105に達する。光変調器103を透過した後の変調された光の光量I
(s)T(s=1,2,3)は、下の数式7のような多項式で示すことができる。
【0093】
光変調器103を透過した光映像は、光検出器105で所定の露出時間Tの間に累積され、そこから輝度画像が形成される。3つの輝度画像を利用して、距離情報を抽出する場合、露出時間Tは、距離情報映像の出力周期の1/3とすることができる。例えば、秒当たり30フレームの距離情報映像を出力する場合(すなわち、fd=30、fdは、距離情報映像のフレーム速度)、露出時間Tは、およそ0.011秒となる。光検出器105の感度により、光検出器105に達する光量と輝度画像のサイズとの間に、所定の変換比率が存在しうるが、便宜上、これを単純化して、輝度画像のサイズを下の数式8のように定義できる。
【0095】
数式8において、輝度画像を定義するとき、光検出器105への入力光強度と、光検出器105からの出力強度とのスケール係数(scale factor)を1と仮定した。従って、実際の計算時には、光検出器105に対する補正(calibration)を組み込んでスケール係数を決定し、数式8に適用する必要がある。
【0096】
一般的に、投射光の周期(Te)(例えば、25ns)は、光検出器105の露出時間T(例えば、0.011s)に比べて非常に小さい。従って、数式8の積分時、数式7に存在する直流項(DC term)が主要要素として寄与し、交流項(AC term)は、互いに負数/正数により相殺され、その積分結果に加味される量が非常に少ない。従って、数式7を数式8に代入し、その直流項のみを考慮すれば、以下のような輝度画像についての数式9を得ることができる。これに関する詳細な誘導過程は省略する。
【0103】
数式10で、次数lは、次数mと次数nとのうち小さい値である。F
(s)(Φ
TOF)は、未知数である位相遅延Φ
TOFの関数であり、数式10のように、数学的な表現が可能な項である。従って、数式9ないし数式11から分かるように、輝度画像のサイズは、未知数である位相遅延Φ
TOFについての関数F
(s)(Φ
TOF)と、位相遅延に関連しない定数項との和として整理できる。
【0104】
2−3.距離情報抽出のための問題の定義及び抽出方法
【0106】
このように問題を解くためには、3つ以上の方程式が必要である。3つの方程式は、数式9で表現された輝度画像についての関係式から得ることができる。すなわち、3つの投射光に対応する3つの輝度画像を、光検出器105により順次に検出し、数式9を利用すれば、次のような連立方程式を構成できる。
【0111】
ところで、数式12ないし数式14によって構成された連立方程式は、未知数に対して非線形関数であるから、数値解析により直接未知数を抽出するには、多くの計算時間を要する。リアルタイムで距離情報映像を抽出するためには、比較的短い計算時間で正確な結果を導き出すことができる他の方法が必要である。従って、数式13ないし数式15の連立方程式を解くには、ベクトル空間の解決法を活用し、ルックアップテーブルを構成する方法を提案する。
【0112】
このために、まず下記数式15及び数式16のような三次元空間内のベクトルを定義し、これを基にルックアップテーブルを構成できる。
【0118】
数式15及び数式17から分かるように、輝度画像に関する三次元空間内のベクトルは、3つの投射光にそれぞれ関連した輝度画像のサイズ間の差の組合せから構成されうる。同様に、数式16及び数式18から分かるように、位相遅延にに関する三次元空間内のベクトル関数は、3つの投射光とそれぞれ関連した位相遅延に関する関数の差の組合せから構成されうる。差の組合せの代わりに、差の比率の組合せを使用することも可能である。
【0120】
従って、角度αと、それに対応する位相遅延Φ
TOFとを数値的にあらかじめ計算すれば、その関係を表(table)または下記の数式19のようなルックアップテーブル関数LUT(α)の形態に整理できる。これが、本実施形態において活用されるルックアップテーブルである。
【0124】
数式20は、前述した数式15と数式16とで定義された2ベクトルが、下記の数式21のように、三次元空間内で平行であるための条件である。
【0132】
数式22により計算された角度αと、あらかじめ計算されたルックアップテーブルとを利用して、位相遅延Φ
TOFを求める。例えば、
図9のグラフで、α=250°である場合に該当する位相遅延は、Φ
TOF=270°である。このように求めた位相遅延を利用し、光検出器105の当該画素にについての光学装置100と被写体200との間の距離(すなわち、depth)dを、下記の数式25によって求めることができる。
【0135】
また、反射率rは、数式20から、下記のように求めることができる。
【0137】
また、外光サイズは、数式11及び数式12を利用して、下記のように求めることができる。
【0142】
次に、段階(S12)で、3つの投射光が被写体200からの反射光に係る一般的な多項式を、数式3のように求める。それにより、数式3から、反射光が光変調器103で変調された後の光量I
(s)T(s=1,2,3)を、数式7のように求めることができる。すなわち、数式7は、反射光に係る数式3と、ゲイン波形に関する数式5とを乗じて得られる。その後、変調された光に係る数式7を、数式8のように、光検出器105での露出時間Tで積分すれば、光変調器103で変調された反射光を、光検出器105で所定の露出時間Tの間に累積させて得た輝度画像(または、輝度画像のサイズ)に係る多項式を誘導できる。ここで、3つの投射光のそれぞれに対して輝度画像が得られるので、3つの輝度画像について多項式がそれぞれ存在することになる。
【0146】
このように構成されたルックアップテーブルは、3つの特定投射光と、1つの特定ゲイン波形との組合せについてあらかじめ測定された結果として得たものである。もし3つの投射光と1つのゲイン波形とのうちいずれか1つの位相または波形の種類が変わるならば、それに対応する新たなルックアップテーブルを構成しておくことができる。例えば、光学装置100で使用できる投射光とゲイン波形との多様な組合せ別に、それぞれ別途のルックアップテーブルを構成できる。それにより、光学装置100の動作時、使われた投射光とゲイン波形との特定の組合せによって、それに該当するルックアップテーブルを参照することが可能である。かような投射光とゲイン波形との多様な組合せは、3つの投射光と1つのゲイン波形との組合せだけではなく、4つ以上の投射光と1つのゲイン波形との組合せ、1つの投射光と3つ以上のゲイン波形との組合せも含むことができる。いかなる場合でも、前述のルックアップテーブルの構成方法は、同一に適用されうる。かようなルックアップテーブルは、例えば、マイクロ・プロセッサ、CPU(central processor unit)などを含む
図1に図示された距離情報映像処理器107内に共に統合されており、またはRAM(random‐access memory)やROM(read‐only memory)のような別途の記録媒体(図示せず)に保存されている。
【0147】
図11は、前述の方式で得たルックアップテーブルを利用して、実際に距離情報を抽出する過程を要約して説明するフローチャートを示している。他の方式の投射光とゲイン波形との組合せも可能であるが、ここでも便宜上、3つの異なる投射光と1つのゲイン波形とを使用する場合について例示的に説明する。
【0148】
まず、段階(S20)で、光源101が3つの異なる投射光を経時的に順に発生させて被写体200に投射する。前述のように、3つの投射光は、同じ周期を有し、ただし位相だけ互いに異なり、または波形自体が互いに異なる場合もある。投射光は、例えば、およそ850nmの波長を有する近赤外線である。
【0149】
その後、3つの投射光は、被写体200から反射され、順に光学装置100に戻る。このとき、フィルタ109を利用し、反射光のうち、例えばおよそ850nmの近赤外線光のみを透過させる。それにより、段階(S21)で、光変調器103は、被写体200から反射された3つの反射光を所定のゲイン波形に光変調し、変調された光を光検出器105に提供する。光変調器103のゲイン波形は、いかなるものでも使われうるが、その周期は、投射光の周期と同一である。
【0150】
段階(S22)で、光検出器105は、光変調器103で変調された反射光を所定の露出時間Tの間に累積させて出力する。それにより、3つの投射光にそれぞれ対応する3つの強度映像を得ることができる。このようにして得た3つの強度映像は、距離情報映像処理器107に提供されうる。段階(S23)で、距離情報映像処理器107は、3つの強度映像のサイズを利用し、数式15及び数式17について説明されているように、三次元空間内の輝度画像ベクトルを構成する。
【0151】
次の段階(S24)で、距離情報映像処理器107は、数式22を利用し、輝度画像ベクトルが三次元空間内の基準ベクトルから傾いた角度αを求める。前述のように、基準ベクトルは、数式23及び数式24によりあらかじめ定義されている。角度αを求めた後、距離情報映像処理器107は、あらかじめ保存されているルックアップテーブルを参照し、角度αに対応する位相遅延を求めることができる。ここで、ルックアップテーブルは、使用可能な投射光とゲイン波形の多様な組合せ別に多様に設けられている。従って、距離情報映像処理器107は、光源101と光変調器103とで使われた投射光とゲイン波形との特定の組合せによって、それに該当するルックアップテーブルを参照できる。
【0152】
最後に、段階(S25)で、距離情報映像処理器107は、前述の方法で求めた位相遅延を利用し、被写体からの距離、被写体の反射率及び外光のサイズを計算できる。例えば、数式25ないし数式27の方程式に位相遅延を代入することにより、被写体からの距離、被写体の反射率及び外光のサイズを計算することが可能である。
【0153】
以上、光検出器105のいずれか1つの画素について距離情報を抽出する方法について説明したが、光検出器105内の多数の画素それぞれについて同じ方法が適用されうる。また、CCDのように、二次元アレイに配列された多数の画素を有する光検出器105だけではなく、一次元アレイに配列された多数の画素を有する光検出器、または単に1つのフォトダイオードだけで構成された光検出器についての、以上で説明した方法がそのまま適用されうる。
【0154】
図10及び
図11に示された作業を行うために必要な演算量について述べれば、被写体までの距離情報を抽出するのに必要な計算のほとんどは、
図10のルックアップテーブル構成過程からなる。ルックアップテーブルは、例えば、光学装置100の製造時、製造メーカーがあらかじめ計算して設けておいたものでありうる。従って、距離情報を抽出するにおいて必要なリアルタイム演算は、
図11に図示された輝度画像ベクトルを構成するための計算、ルックアップテーブルを参照して位相遅延を求めるための計算、及び位相遅延から被写体からの距離および被写体の反射率並びに外光のサイズ情報を抽出するための計算である。かような点で、光学装置100が直接遂行する演算量が比較的少ないために、光学装置100を利用し、リアルタイムで距離情報を抽出することが可能である。従って、多数の画素を有する画像情報と共に、画像内の各画素別距離情報を同時に獲得できる3Dカメラの実現が可能である。
【0155】
4.実験結果
図11の距離情報抽出方法を確認するために、シミュレーションを行った。投射光としては、
図2に図示された25nsの周期を有する三種の波型(実線)を使用し、ゲイン波形としては、
図3に図示された25nsの周期を有する波形(実線)を使用した。0.5〜3.5mの距離にある被写体に対して、前述の方法により距離を測定し、光検出器(例えば、CCD)のノイズを考慮するために、輝度画像にその大きさの0.1%ほどのランダム・ノイズ(random noise)を意図的に印加した。
【0156】
図12は、シミュレーションを介して距離情報を抽出した(extracted)結果を真値(実際の値)と比較したグラフであり、
図13は、
図12の距離情報抽出結果と真値との誤差(error)を示したグラフである。
図12及び
図13を参照すれば、およそ3m距離内で2cmほどの誤差を示すということが分かる。これは、光検出器に意図的に印加したノイズに起因する。距離が遠いほど反射光の大きさが小さくなり、信号対ノイズ比が小さくなるために、距離が遠いほど誤差が大きくなりうる。3m内でおよそ2cm以内の誤差は、常用の距離情報カメラとして使用可能なレベルであると見ることができる。
【0157】
また、前述のアルゴリズムを遂行するためのハードウェアを製作して実験を行った。この実験で、レーザダイオード(LD)と光変調器とをおよそ20MHzで駆動し、20cm間隔で20cm〜180cmの距離を測定した。
図14は、レーザダイオードの光出力を測定した結果であり、
図15は、レーザダイオードの光出力スペクトルを高速フーリエ変換で分析した結果である。
図15を見れば、レーザダイオードの光出力で、20MHzの基本周波数以外に、高次項が存在することが分かる。かような高次項を、前述の距離情報抽出アルゴリズムに反映させた。また、
図16は、光変調器の変調ゲイン波形を測定した結果であり、DCオフセット及び相当量の波形歪曲を観察できる。
図17は、ゲイン波形スペクトルを高速フーリエ変換を介して分析した結果である。
図17を見れば、光変調器の変調ゲイン波形は、20MHzの基本周波数以外に、高次項がかなり存在するということが分かる。かような高次項を、前述の距離情報抽出アルゴリズムに反映させた。
【0158】
図18は、前述のアルゴリズムによって、実際に距離情報を抽出した結果である。
図18には、前述のアルゴリズムによって波形の歪曲を実測して考慮した結果と、理想的な波形だけを考慮した結果とが比較されている。
図18で太い線は実測された波形歪曲を考慮した場合を示し、細い線は波形歪曲を考慮しない場合を示す。
図18の結果について述べれば、波形歪曲を実測して考慮した場合に、全体的におよそ0.7cmの平均的な誤差があったが、波形歪曲を考慮しない場合には、全体的におよそ2.1cmの平均的な誤差が発生した。
【0159】
前述のように、開示されたアルゴリズムは、数学的に理想的な波形ではない実際の実測された非線形的波形を考慮して距離情報を抽出するために、使用波形の制約を受けることなく正確な距離情報を抽出できる。従って、歪曲及び非線形性がほとんどない高価の光源や光変調素子を使用する必要がなく、複雑な誤差補償手段が要求されない。また、既存の光源、光変調素子及び光学装置をそのまま利用でき、追加費用がかからない。さらに、あらかじめ計算された距離情報が保存されているルックアップテーブルを使用するために、距離情報を抽出する際において演算量が非常に少ないので、リアルタイム距離情報映像の撮影が可能である。従って、前述のアルゴリズムが採用された光学装置100は、例えば3Dカメラやレーザレーダ(LADAR)のような分野で有用に使われうる。
【0160】
例示的な実施例は、コンピュータプログラムで作成され、コンピュータで読取り可能な記録媒体を使用し、プログラムを実行する一般的なデジタルコンピュータ内のプロセッサによって具現されうる。記録媒体の例として、磁気記録媒体(ROM、フロッピーディスク、ハードディスクなど)、光録媒体(CD−ROM、DVDなど)などを含む。
【0161】
以上、本発明の理解を助けるために、距離情報抽出方法及び該方法を採用した光学装置に係る例示的な実施例について説明し、添付された図面に示した。しかし、かような実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、それを制限するものではないということを理解せねばならない。そして、本発明は、図示されて説明された形態に限定されるものではないということを理解せねばならない。これは、多様な他の変形が本技術分野での当業者に可能であるためである。