特許第5739188号(P5739188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5739188溶融ガラスを均質にする装置及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5739188
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】溶融ガラスを均質にする装置及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/187 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
   C03B5/187
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-37309(P2011-37309)
(22)【出願日】2011年2月23日
(65)【公開番号】特開2011-178656(P2011-178656A)
(43)【公開日】2011年9月15日
【審査請求日】2012年12月12日
(31)【優先権主張番号】10 2010 000 546.0
(32)【優先日】2010年2月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フランク−トーマス レンテス
(72)【発明者】
【氏名】カリン ナウマン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ベムホエザ
(72)【発明者】
【氏名】エルハルト ゼムシュ
(72)【発明者】
【氏名】フォルカ トリンクス
【審査官】 國方 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭27−005028(JP,B1)
【文献】 特表2010−513211(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/121684(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00−5/44
C03B 8/00−8/04
C03B 19/12−20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラス(3)を収容し、当該容器が流入口(4)と流出口(5)を有する混合容器(2)内に配置された撹拌装置(1)を少なくとも1つ有し、当該撹拌装置(1)は回転方向(U)に回転可能な撹拌軸(10)と当該撹拌軸(10)に沿って互いに間隔を開けて配置された複数の撹拌翼(11)とを有し、少なくとも前記複数の撹拌翼は櫂形状の要素(11)を有し、各翼は溶融ガラスを変位させる正面の翼領域(11A)と背面の翼領域(11B)を有し、かつ各翼毎に少なくとも1つの取付型要素(11E)が前記翼領域(11B)の一方に配置され、前記取付型要素は前記翼領域(11B)から前記撹拌軸(10)に伸張している、溶融ガラスを均質化する装置において、
少なくとも1つの前記取付型要素(11E)は、前記撹拌軸(10)から前記翼領域(11B)に沿って径方向(R)に伸張する縁部(11K)を有し、当該縁部の長さが前記径方向(R)に伸張する前記翼領域(11B)の長さ(L)より短く、
前記取付型要素(11E)の少なくとも1つは、三角形状であることを特徴とする溶融ガラスの均質化装置。
【請求項2】
前記撹拌装置(1)は、前記撹拌翼(11)の外側の翼の縁部と前記混合容器(2)の内壁との間において隙間(SP)を有し、当該隙間(SP)は、大きさが前記混合容器(2)の直径(D2)の4.5%から10.5%であることを特徴とする請求項1に記載の溶融ガラスの均質化装置。
【請求項3】
前記櫂形状をした撹拌翼(11)は、前記撹拌軸(10)に沿って軸方向(A)に複数の段(E1、E2、・・・、E5)になって配置され、2つの隣接する段の間に前記撹拌翼が存在しないように離された空き状態の中間空間(ZR)が維持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の溶融ガラスの均質化装置。
【請求項4】
前記段(E1、E2、・・・、E5)は、軸方向に互いに等距離で配置されていることを特徴とする請求項3記載の溶融ガラスの均質化装置。
【請求項5】
前記各中間空間によってカバーされる投影領域(Z)が、ある段における前記攪拌翼(11)と前記攪拌軸(10)の関連サブセクターによってカバーされる投影領域(F)の5%から90%に相当することを特徴とする請求項3または4記載の溶融ガラスの均質化装置。
【請求項6】
前記撹拌翼(11)は、少なくとも2つが各段(E1、E2、・・・、E5)において、放射対称に配置されていることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の溶融ガラスの均質化装置。
【請求項7】
前記段の中の1つ(E3)における撹拌翼について、隣接する段(E4)の前記撹拌翼(11)は、角度方向に変位して配置されていることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の溶融ガラスの均質化装置。
【請求項8】
減少攪拌翼(11’、11’’)が少なくとも最初又は最後の段(E1、E5)に配置され、前記翼は残りの段(E2−E4)に配置された攪拌翼(11)より表面積が小さいことを特徴とする請求項3から7のいずれか1項に記載の溶融ガラスの均質化装置。
【請求項9】
少なくとも最初の2つの前記段(E1、E2)において、前記撹拌翼(11)は前記撹拌軸(10)の回転軸(A)に対して第1の傾斜位置(+)に配置され、前記撹拌翼(11)は少なくとも最後の2つの段(E4,E5)において第1の傾斜位置とは逆の傾斜位置に配置されており、前記第1の傾斜位置(+)は混合容器(2)の流出口(5)に向かって溶融ガラス(3)の搬送による変位を生じさせることを特徴とする請求項3から8のいずれか1項に記載の溶融ガラスの均質化装置。
【請求項10】
各前記撹拌翼(11)上に配置された取付型要素(11E)の少なくとも1つは、背面の翼領域(11B)に配置されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の溶融ガラスの均質化装置。
【請求項11】
各前記撹拌翼(11)上に配置された取付型要素(11E)の少なくとも1つは、単一の板状の要素(11E**)または平行に配置された複数の棒状の要素(11E*)の集合に相当することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の溶融ガラスの均質化装置。
【請求項12】
前記正面の翼領域(11A)は、回転方向(U)に凸型の弓形形状をしていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の溶融ガラスの均質化装置。
【請求項13】
前記撹拌翼(11)の翼の縁部は面取りされた縁部の領域(11R)として構成されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の溶融ガラスの均質化装置。
【請求項14】
前記櫂形状の撹拌翼(11)は、縁部の領域を有する平坦な要素として構成され、縁部の領域(11S)は前記混合容器(2)の内壁に向かい、最大で5mmの厚さを有することを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の溶融ガラスの均質化装置。
【請求項15】
前記撹拌軸(10)の直径(D1)は、前記混合容器(2)の前記直径(D2)の25%から50%であることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の溶融ガラスの均質化装置。
【請求項16】
溶融ガラス(3)を収容する混合容器(2)内に配置可能な撹拌装置(1)であって、前記混合容器は流入口(4)と流出口(5)を有し、前記撹拌装置(1)は回転方向(U)に回転可能な撹拌軸(10)および前記撹拌軸(10)に沿って互いに間隔を開けて配置された複数の撹拌翼(11)を有し、少なくとも前記複数の撹拌翼は櫂形状をした要素(11)を有し、各櫂形状の要素は前記溶融ガラス(3)を変位させる正面の翼領域(11A)および背面の翼領域(11B)を有し、各翼毎に少なくとも取付型要素(11E)が前記翼領域(11B)上のうちの1つに配置され、前記取付型要素は前記翼領域(11B)から前記撹拌軸(10)に伸張する前記溶融ガラス(3)を均質化する装置のための撹拌装置(1)において、
少なくとも1つの前記取付型要素(11E)は、前記翼領域(11B)に沿って前記撹拌軸(10)から径方向(R)に伸張する縁部(11K)を有し、当該縁部の長さが前記径方向(R)に伸張する前記翼領域(11B)の長さ(L)より短く、 前記取付型要素(11E)の少なくとも1つは、三角形状であることを特徴とする溶融ガラスを均質化する装置のための撹拌装置。
【請求項17】
前記混合容器は流入口(4)と流出口(5)を有し、前記撹拌装置(1)は前記回転方向(U)に回転可能な撹拌軸(10)および前記撹拌軸(10)に沿って互いに間隔を開けて配置された複数の撹拌翼(11)を有し、少なくとも前記複数の撹拌翼は櫂形状をした要素(11)を有し、各々は前記溶融ガラス(3)を変位させる正面の翼領域(11A)および背面の翼領域(11B)を有し、各翼毎に少なくとも取付型要素(11E)が前記翼領域(11B)上のうちの1つに配置され、前記取付型要素が前記翼領域(11B)から前記撹拌軸(10)に伸張する前記溶融ガラス(3)を収容する前記混合容器(2)内に配置された前記撹拌装置(1)を少なくとも有する溶融ガラスを均質化する装置の使用において、
少なくとも1つの前記取付型要素(11E)は、前記翼領域(11B)に沿って前記撹拌軸(10)から径方向(R)に伸張する縁部(11K)を有し、当該縁部の長さが前記径方向(R)に伸張する前記翼領域(11B)の長さ(L)より短いことを特徴とする請求項1から請求項16のうちのいずれか1項に記載の溶融ガラスを均質化する装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融ガラスの均質化、例えばガラスのディスプレイやガラスチューブ等の特に含有物が低密度で欠陥が少ない、質の高いガラスやガラスセラミック製品の製造に使用される溶融ガラスの均質化に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融ガラスの均質化の目的は、製品の仕様に応じて溶融ガラスの化学的組成中における空間的、時間的変動を減少させることである。化学的に不均等な性質は屈折率における不均等性につながり、例えば光学像の質を損ねることとなり、粘性における不均等性は加熱成形工程における幾何学的変動が制御できなくなることにつながるおそれがある。この場合、少ない空間的勾配を有すると共に例えば2,3cm程度の比較的広範囲の規模での化学組成物の変動であるマクロな不均等性と、部分的に大規模な空間的勾配を有すると共に例えば0.1mmから0.2mm程度の比較的小さい空間的規模で化学的組成物に変動があるミクロな不均等性との間において区別がなされる。均質化工程の目的は、例えば均一な屈折率勾配が得られるように、可能な限りマクロな不均等性及びミクロな不均等性を取り除くことである。通常、使用される溶融ガラスは、(レイノルズ数1未満の)層流の溶融ガラスを生成する、約1から200Pa・s(10−2000ポアズ)の間の粘性を有する。拡散により得られる均質化が無視できるほどに小さいように、化学的拡散係数は通常10から12m/s未満である。こういった理由から溶融ガラスにおける均質化は、局所的な不均一性と脈理を強制的に伸張させ、再分布し、切除することによりのみ実質的に達成される。撹拌システムはこのために一時的に溶融ガラスを受け取り、少なくとも溶融ガラスを撹拌する撹拌装置のための混合容器または溶融容器を有して使用される。
【0003】
特許文献1では、溶融ガラスを収容し、流入口と流出口を有する混合容器内に配置された撹拌装置を少なくとも有する溶融ガラスを均質化する装置が記載されている。撹拌装置は流入口から流出口に向かって溶融ガラスにおける運搬装置としての効果を生じさせるために、回転方向に回転可能な撹拌軸と撹拌軸に沿って互いに間隔を開けて配置された複数の撹拌翼を有する。例えば溶融ガラスが螺旋状に撹拌軸に沿って流出口に向けて輸送されるように、撹拌翼は撹拌軸の回転方向にある角度が設けられる、若しくは配置された翼領域を有する板状の要素として構成されている。均一化の程度を変える一つの方法は、回転する撹拌軸の回転速度を変更することであるが、これは至る所に変化が及ぶこととなり、圧力降下をも生じさせてしまう。こういった状況を回避するために、撹拌翼の少なくとも2つを互いに対向に配置させ、その結果流入口から流出口への運搬装置の効果を著しく減少させるか又は当該範囲を極限に小さい範囲に減少させることが提案されている。
【0004】
溶融ガラスを撹拌する撹拌装置は日本の特許出願において周知である(特許文献2参照)。撹拌装置には、撹拌軸上に配置された螺旋形状のスクリュー刃(撹拌刃12)が備え付けられ、当該スクリュー刃は螺旋若しくはスクリューの形をして撹拌軸を長手方向に周囲している。前記文献に開示された実施形態には、撹拌軸から放射状に伸張する、櫂の形状をした要素(図2D中の要素14)として構成されたいくつかの撹拌翼が撹拌軸に備え付けられてもいる。櫂の形状をした撹拌翼が撹拌刃を数個の部分に分割するように、櫂形状の撹拌翼と一体化した螺旋状の撹拌刃が撹拌軸上に配置されている。
【0005】
溶融ガラスを撹拌するさらなる撹拌装置は米国特許明細書で周知である(特許文献3)。当該撹拌装置は、櫂形状をした要素(図3および5の”19”参照)として構成され、撹拌軸に沿って何段かに分かれて互いに間隔を開けて配置された数個の撹拌翼を有する。櫂形状をした撹拌翼は取付型の要素(リブやウェブ20)により強化され、当該要素は各翼毎に翼がある領域から撹拌軸へ伸張している。
【0006】
特許文献4には、複数の撹拌翼が回転可能な撹拌軸上に互いに間隔を開けて配置された撹拌装置を少なくとも有する、溶融ガラスを均質化する装置が提案されている。特に、当該装置は以下の問題、すなわち高い粘性と小さい化学的拡散係数で十分な均一性が全範囲で得られようにするためには、撹拌翼と混合容器若しくは溶融容器の内壁の間において、最小幅の隙間がなければならない、という問題を扱っている。しかし、それは撹拌装置が容器の壁に接触して損傷を与え、さらには撹拌装置の破壊をも引き起こす恐れがある。撹拌翼と溶融容器の壁との間には少なくとも高い剪断応力が発生し、撹拌システムの寿命を相当程度損ねてしまうおそれがある。また、周辺隙間が狭すぎてなくなってしまった場合に、溶融容器壁に付着する泡が剪断されるおそれもある。これらの問題を解決するために特許文献4では軸方向に運搬装置の効果を生じさせる溶融流れが直接流れる溶融ガラスに対して壁面領域と撹拌翼との間の隙間をシールするような装置の設計が提案されている。これは隙間が動的にシールされることとなり、その結果隙間はより大きな幅を有するおそれがある。動的シールを実現するために撹拌翼の設定角、幾何学的形状及び/又は螺旋状の構造物の配置は最適化される。
【0007】
溶融ガラスを均質化する周知の装置を使用してもなお、溶融ガラス内には泡が相当程度形成されることが明らかになった。さらに周知の構造は撹拌翼又は面積の大きい撹拌要素を有し、それにより比較的大量の被覆材が撹拌翼等を被覆するために必要になり、通常は特殊な貴金属の合金が必要になる。その結果周知の構造を実施するにはかなりコストを要することになる。したがって、周知の装置はさらに改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007035203号明細書
【特許文献2】特開2004−224637号公報
【特許文献3】米国特許第2891777号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102006060972号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的はコストを削減すると同時に均質化を高度に達成できる溶融ガラスの均質化装置を提供することである。さらに気体の泡の形成を効果的に抑制することをも目的とする。
【0010】
当該目的は請求項1の特徴を有する装置及び従属する請求項による使用を通じて達成される。
【0011】
それにより、溶融ガラスを均質化する装置は、撹拌装置を少なくとも有し、当該撹拌装置内には複数の撹拌翼が撹拌軸上に互いに間隔を開けて配置され、少なくとも撹拌翼は櫂形状をした要素を有し、各々は溶融ガラスを変位させる正面の翼領域と背面の翼領域を有し、少なくとも取付型要素が翼領域上のうちの1つに配置され、上記要素は翼領域から撹拌軸に伸張している。提案された構造は、少なくとも取付型要素が、撹拌軸から翼領域に沿って径方向に当該長さが径方向に伸張する翼領域の長さより短い縁部を有し、取付型要素の少なくとも1つは三角形状であることで区別される。その結果、取付型の要素は外側の縁部または撹拌翼の縁部に達することがなく、特定の距離が所定の位置に残存することになる。したがって構成部品は撹拌翼により回転方向に完全に隠れることになる。これにより再沸騰するという傾向はさらに減少する。
【0012】
本発明は、取付型の要素が櫂形状の撹拌翼上に配置され、各撹拌翼が各翼領域から撹拌軸に伸張し、各撹拌翼を支持・安定化させた場合、櫂形状の撹拌翼は極めて細い構造を有することで材料を節約することができるという発見に基づくものである。当該配置において、取付型要素は外側の刃または撹拌翼の縁部に達することはなく、特定の隙間が所定の位置に残存する。さらに当該構造を使用しての実際の試験の間、取付型の要素が撹拌軸の回転方向に実質的に平行に伸張した場合、取付型要素はとりわけ著しく泡の生成を減少させることが立証されている。すなわち、本来は撹拌軸を支持するのに供給される取付型要素が気体の泡の生成という上述の問題を効果的に解決することができることについても認められている。取付型要素は撹拌翼の後方に配置されるのが望ましく、すなわち各取付型要素は翼領域の背面に配置される。言い換えれば取付型の要素は流れにさらされない翼の領域、すなわち背面か流れの風下側に備え付けられる。結果として、泡の生成に特に関連する撹拌翼の背面で生成された加圧は抑えられ、圧力分布における高い勾配の発生は回避される。
【0013】
所定の間隔、すなわち取付型要素の長さと翼の長さとの間の差により、取付型要素は翼により全体的に覆われ、翼の外側の縁部は取付型要素による影響を受けない。撹拌翼の効果は減少しない。実際には少なくとも取付型要素のひとつが再沸騰の発生や泡の発生を実質的に減少させることが観察されている。同一の内容は均質化の効果の改善についても適用できる。翼の外側の縁部と取付型要素との距離は翼と混合容器の内壁の間の隙間の大きさに依存して規定され、その距離が隙間の大きさの0.5から2倍(50%から200%)になる場合、有利であることが発見された。従って本発明による取付型要素または構成部品は、回転方向から離れた側面上(背面の翼領域に)に配置されるのが好ましく、特に再沸騰の発生による泡の生成の危険性を著しく減少させる効果を有する。さらに取付型の要素は撹拌翼の安定化に対しても寄与する。
【0014】
泡による欠陥の発生は平均で約20%と著しく減少できることが判明した。さらに撹拌装置の操作時にいわゆる節の数は、(約50から60rpmで始まり)最適になる状態である80から100rpmのより高い回転数において著しく減少することが発見された。節は、はるかに粘性が高くかつ均質化がとりわけ困難である(異なる種類の化学成分を有する脈理に類似する)溶融ガラス内の局所的な領域である。
【0015】
櫂形状の翼はたわむことができ、特に背面の翼領域は固有の高い安定性を維持するために凸形状であってもよい。このために1又は2以上の取付型要素が各撹拌翼に備え付けられ、当該要素は付加的に安定効果及び支持効果を有すると同時に泡の生成を減少させる効果をも有する。例えば板状の要素をした単一の取付型要素のみが各撹拌翼に備え付けられていてもよい。さらに平行(例えば棒状に)配置されたいくつかの要素の集合を撹拌翼に備え付けることもできる。さらに少なくとも取付型要素の1つは実質的に三角形状であってもよい。構成部品は従って1つの翼につき1または2以上のボディからなり、例えば板や円筒や棒として構成される。それらは泡の生成を破壊し、特に再沸騰、つまりキャビテーションによる2次的または1次的な新たな泡の生成を破壊するだけでなく、翼上に働く角度調節のモーメントに転換するための機械的支持としての両方を果たす。
【0016】
櫂形状の撹拌翼は、撹拌軸に沿って何段かに分かれて配置されるのが望ましく、各段では少なくとも2つの撹拌翼、好ましくは3つの撹拌翼を有し、各段の間には中間空間が設けられている。このように多段の撹拌装置が実現され、撹拌装置には互いに交互に配置されるか若しくは重なる撹拌翼を有さないが、溶融ガラスが撹拌翼により捕えられない十分な中間の空間が与えられている。このように撹拌装置の全容積に及び、言い換えれば溶融ガラスの全質量が実際上円筒状の複合材料の質量(ガラスビレット)として回転し、撹拌され、所望の撹拌による効果を相当減少させていた撹拌翼のコンパクトな配置もしくは交互配置が回避される。中間空間によってカバーされる投影領域あるにおける撹拌翼と攪拌軸の関連サブセクターにより生成される投影領域の少なくとも5%から最大で90%であるように、寸法を有することが好ましい。このように均質化の結果としてさらなる改善がなされる。全体として、これにより固有の撹拌翼を極めて狭小に設計でき、中間空間により極めてはっきりと分割された撹拌翼の配置が得られる。各ケースにおいて1段には3つの撹拌翼が配置されるのが望ましく、撹拌翼はある段から隣の段にかけて異なる設定角を有することができる。さらに撹拌翼の分布(120度の星形)はある段から隣の段にかけて(60度の方位角の変化により)変位させることができる。当該大きさによっても撹拌装置の均質化の効果は著しく増大する。
【0017】
下位クレームは上記とさらなる有利な実施の形態に関するものである。
【0018】
すなわち、取付型要素の長さが翼の長さより所定の距離だけ短く、当該所定の距離は翼の長さの10%から50%、特に20%から30%の間である場合、有利である。
【0019】
さらに各翼の端部と混合容器の隣接壁との間に隙間が残存し、当該隙間が好ましくは撹拌装置の直径の4.5%から10.5%の長さを有している場合、有利である。当該隙間に関しては、所定の距離が前記隙間の大きさの0.5倍から2倍の大きさを有するように選択されるのが望ましい。
【0020】
さらに撹拌翼を回転させることでできる円の直径が撹拌軸の直径の少なくとも1.5倍であり最高で5倍となるように、撹拌翼は寸法を有する。
【0021】
特に板状の取付型要素は、翼領域に沿って撹拌軸から径方向に伸張する、当該長さが径方向に伸張する翼領域の長さより特定の距離だけ少ない縁部を有していてもよい。撹拌翼が特に正面の翼領域に凸形状、特に回転方向に凸状の弓形形状を有する場合、有利である。撹拌翼の後方に設置された構成要素は、その場合(凹状の)翼領域の背面上に存在し、例えば凹状の翼領域によってできる弦に垂直に指向されている。しかし、別の位置や場所に構成要素を取り付けることも可能である。
【0022】
装置はいくつかの段を有するように設計されるのが望ましい、すなわち撹拌翼は撹拌軸に沿って軸方向にいくつかの段を有して配置され、少なくとも最初又は最後の段には縮小した撹拌翼が配置され、当該翼は他の段に配置された撹拌翼より小さな表面積を有する。
したがって、撹拌翼の有効な面積はどの場所でも同一というわけではなく、撹拌軸の先頭(上方の領域)及び/又は端部(下方の領域)において実質的に減少されている。これは例えば翼の高さ及び/又は翼の幅を短くすることにより達成される。例えば溶融ガラスの流入領域における翼を短くすることにより均質化はさらに改善される。
【0023】
撹拌翼の配置および傾きは異なっていてもよい。撹拌翼は少なくとも最初の2段(上方の領域)において第1の(正の)傾きに配置されるのが好ましく、それにより溶融ガラスは流出口に向けて搬送される。対照的に、少なくとも最後の2段(下方の領域の)において撹拌翼は逆の(負の)傾斜角に配置されている。撹拌装置は複数またはN数、すなわち1段につきN個の翼が設けられていてもよい。撹拌装置は3個として構成されるのが好ましい。
【0024】
上述したように、本発明による装置は、撹拌装置が撹拌翼の外側の翼の端部、特に翼の縁部と混合容器の内壁との間に所定の幅の隙間を有するように構成されるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による第1の実施形態である撹拌装置の概略図である。
図2】本発明による装置の撹拌装置の組み付け状況について示す図である。
図3A】撹拌装置に配置された撹拌軸と撹拌翼を有する撹拌装置の部分的な図である。
図3B図3Aにおいて撹拌翼によりカバーされる投影面積及び中間空間による撹拌翼が及ぶことがない投影面積の図である。
図3C図3Aに示す撹拌翼の角度方向の分布を示す図である。
図4A】撹拌翼の取付型要素の配置の拡大詳細図である。
図4B図4Aの取付型要素の配置及び寸法について示す断面図である。
図5】取付型要素の代替的な実施の形態について示す図である。
図6】取付型要素のさらに別の代替的な実施の形態について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を達成するためのさらなる特徴、効果及び目的は、付随する図面や例の中で示される以下の実施の形態の詳細な記述から明らかになるであろう。
【0027】
図面の数字は符号の説明における数字と同一又は実質的に同様の効果を生じさせる要素や集合を示している。
【0028】
図1には本発明による撹拌装置の構成について示し、以下に溶融ガラスを均質化する装置の取り付けにおいて、通称として”stirrer”とも呼んでいる。撹拌装置は、当該要素が回転方向に回転できるようにするために、その上方の端部が不図示のモータにより駆動する撹拌軸10を有する。例えば撹拌装置の通常の回転速度は10rpmから100rpmである。撹拌装置の下方の端部には、櫂形状をした撹拌翼(以下に翼、とも呼ぶ)がいくつかの段に亘り分散して配置されている。翼は極めて細い形状であってもよく、材料を節約できる、また翼は大きさが異なっていてもよい。混合容器の流出口を設けることができるように(図2参照)、最上位の段はその表面積をわずかに減少させた撹拌翼11’を有し、最下位の段は表面積を減少させ、当該要素の下方の刃が面取りされた撹拌翼11’’を有する。中段には表面積が減少せず、所定の隙間を残すために混合容器の内側の縁部にまでのみ伸張する撹拌翼11が存在する。翼等の形状、配置及び設定角の構成を通じて、上記隙間が溶融ガラスの直接的流れに対して動的にシールできるように、溶融流れは影響を受けてもよい。
【0029】
図1から既にわかるように、櫂形状の撹拌翼は弓形となっていて、撹拌翼の表面のうちの1つに取付型要素を有する。当該翼は撹拌装置の胴部または軸10上に溶接される。代替的にまたは付随的に、翼は胴部のさやに固定されたり、胴部に挿入されたり、及び/又は内部の固定物に固定されてもよい。この配置において胴部のさやは胴部又は撹拌軸10上に圧縮され、および/又はピンやカスタムフィットにより固定されていてもよい。
【0030】
図2には例えば円筒形状の混合容器2を有する装置1内の撹拌装置の組立状態が示されている。溶融ガラス3は混合容器2に収容されている。溶融ガラス3は混合容器2を通じて流入口4から流出口5へ連続的又は非連続的に流すことができる。混合容器2は、流入口4が撹拌装置の上方の領域に位置するように、重力に従って配置されるのが望ましい。上流、下流となる流れの方向から見た際に、上流側の正面の撹拌翼11’は流入口4の領域に位置し、流入口4の断面の(0から50%の)部分をカバーしている。ここに示す例では、流入口は、120mmの直径を有し、77.5mmの長さでカバーされている。
【0031】
流出口5は撹拌装置の下方の領域、従って混合容器2の下方端部に設置され、円錐状に細くなる断面2Aを有して構成されている。撹拌装置10の全体の運搬装置の効果は単に重力によってではなく、撹拌装置の回転速度及び特に撹拌軸に固定された撹拌翼の配置や構成によって実質的に決定される。記述を簡単にするために、ここでは言及を全ての撹拌翼の一例として中段の撹拌翼11に対して行う。
【0032】
図2に示す撹拌翼11は凸形状をしており、すなわちそれらは回転する撹拌装置10の回転方向Uに示す方向に正面に膨らみまたは反りを有する。当該配置において翼即ち翼11は傾斜して配置されている。翼11は、所望の隙間SP(縁部との隙間又は距離)が外側の翼の縁部と混合容器2の内壁との間に残存するところにまでのみ径方向に伸張している。隙間の大きさや撹拌翼11の幾何学的形状、翼の設定角または翼の傾斜角により混合容器2内の流れの状況を正確に調節することができる。翼の構成は、たとえ撹拌装置の回転速度が10rpmから100rpmの間で変化したとしても、混合容器2を通じる流量や全体の溶融流れが混合容器2を通過する全体流量及び全体の溶融流れの例えば最大±5%まで、好ましくは最大±1%までといった小さな範囲でのみ変化するように、最適化される。
【0033】
撹拌翼11には、例えば板形状として構成され、実質的に回転方向Uに平行に伸張する取付型要素11Eが設けられている。取付型要素11Eは回転軸に垂直に向けてもよく、ゆえにそれ自身では溶融ガラスの運搬効果に影響を与える程ではない。取付型要素11Eの方向は最大で±45°まで修正が許容されると示されている。ここに示す例では各取付型要素11Eは翼即ち翼11の背面または後方の領域、すなわち回転方向Uで示されるものではなく流れと対向しない側面上に設置されている。取付型要素11は例えば当該側面の領域が撹拌軸10の軸線に直角な方向の三角形状の板として構成されている。各取付型要素11Eは翼11の背面の領域上で径方向に伸張するが、距離Xが残存するように翼11の外側の縁部には達しないようになっている(図3A参照)。
【0034】
図3Aでは、撹拌軸上に配置された撹拌翼または翼を有する撹拌装置10の下方の領域が示され、当該翼は互いにいくつかの段、本実施例ではE1からE5までの5段に分かれて配置されている。第1または最上段E1の翼11’および最後尾E5の翼11’’は他の翼と比較すると大きさが減少している。さらに下方の翼11’’は混合容器の円錐形状に適合させるために、翼の下方の縁部には切り込み11Cを有する(図2参照)。上方の段E1、E2及びE3の翼は、撹拌装置10が回転しているときに、溶融ガラスが当該翼から流出口に向かって下向きに搬送されるように、第1の角度位置に設置されている。2つの下方の段E4、E5の翼は、撹拌装置10が回転した際に、溶融ガラスが当該翼から上向きに搬送され、下向きに指向された溶融流れにブレーキがかかるように、第2の逆の角度位置に設置されている。
【0035】
自由空間、つまり翼のない中間空間ZRは各段の間に設けられ、当該機能は図3Bを使用して以下に詳細に記載する。
【0036】
撹拌装置10の下方端部には、端部の片、例えば当該半径が胴部の半径の2倍より大きいのが好ましく、本実施例では例えば胴部の半径の3倍から5倍となるキャップが設けられている。撹拌翼または翼自体は、端部または縁部の全面に対して厚さ方向に垂直に面取りされているのが好ましい。撹拌装置はガラスの流入(図2中の’’IN’’参照)が側面に存在し、ガラスの流出(図2中の’’OUT’’参照)が下方の翼の段の下の中心または偏心した下方の領域に存在するように設計されてもよい。混合部分または混合容器自体は多角形または円筒状であってもよく、下方領域が円錐形状であってもよい。
【0037】
図3Bでは、撹拌翼によりカバーされる投影領域Fおよび、FとFとの間に位置する中間空間Z(図3AのZRも参照)で表された自由空間を多く備えた撹拌装置の構成が図示されている。したがって領域Fは、撹拌翼と攪拌軸の関連サブセクターによってカバーされる投影領域を示す(図3AのE2〜E4参照)。すなわち、領域Fは、回転中に溶融ガラスに影響を与える、実質的に効果のある段毎の撹拌領域を表す。領域F’またはF’’は段E1またはE5での投影に相当する。中間空間は各段の間で自由状態が維持され(図3aのZR参照)、当該空間では撹拌翼による溶融ガラスに運搬装置の効果(変位や流れ)は生じない。領域Zは、溶融ガラスが撹拌翼または回転方向に移動する他の要素によって直接的に移動したり変位することがない自由空間や当該空間の投影に適宜該当する。この外見上分散した構造の様式により、混合容器内に設置された溶融ガラスは撹拌翼と共に全体としての回転が防止され、これにより溶融ガラスの緩やかな流れが妨げられるのが防止される。従って溶融ガラスの極めて完璧な混合と均質化をなすことができる。Z対Fの比は、おおよそ有効な撹拌領域に対する自由な撹拌領域の比で与えられる。高い均質化効果を成すために、Zは少なくとも5%以上かつ最大90%でなければならないことが示されている。
【0038】
図3Cでは図3A及び3Bにおける回転軸に垂直な代表的な断面図が示され、撹拌翼の角度配置および分布、そして撹拌軸および/又は混合容器の直径に関連したそれらの寸法が図示されている。本実施形態での撹拌装置は、例えば3つの翼つまり翼11が各段で3つの列を有して星形の形状に対称に配置されて構成されている(図3AのE1〜E5についても参照)。これにより2つの隣接する翼の間には120度の方位角が生成される。当該翼の配置は、ある段から次の段に、各翼が60°回転されるか変位した状態で変化する。さらに翼の設置(回転方向に関する角)は、段から段に移ることで変わってもよい。上方の翼または翼は、段E1からE3にてプラスの設置角、すなわち溶融ガラスを流出口に向かって下方に変位させる方向の角度を有するのが好ましい。対照的に段E4およびE5での下方の翼または翼は、溶融ガラスを上方に搬送させ、それにより下方への搬送にブレーキをかけるマイナスの角度位置を有する。全体としては溶融ガラスが流出口の下方に極めて緩やかにのみ(事実上重力の影響下でのみ)移動するように、当該配置により撹拌装置内には動作中にほぼ中立な質量流れが設定される。その結果、搬送の中立性ができるかぎり及ぶように撹拌装置は最適化される。
【0039】
図3Cでは撹拌装置の寸法が図示されている。当該寸法は混合容器2の直径D2に関連して、撹拌軸10の直径D1が以下の寸法の規則に従うのが好ましい。D1はD2の約25%から50%でなければならない。さらにD1はD3(撹拌翼の段の標準の直径)の0.25〜0.6倍とならなければならない(図3Aの例えばE3参照)。したがって翼の端部と混合容器2の内壁の間の縁部の隙間SPは直径D2の約4.5から10.5%でなければならない。
【0040】
図4A及び4Bは櫂形状をした撹拌翼11および撹拌翼11に配置された取付型要素11Eの実施形態を詳細に示している。翼11は弓形の形状をしており、回転する撹拌装置の回転方向Uに向かっている凸状の第1領域11A(翼の正面)および反対の方向に向かっている凹状の第2領域11B(翼の背面)を有する。このように、撹拌装置が回転する際に、溶融ガラスは領域11Aに向かって流れる(図2参照)。取付型要素11Eは、流れに向き合っていない第2領域11B上に設けられ、前記要素は実質的に三角形状の小板であって、当該小板の側面の領域が弓形の形状をした翼の弦Sに垂直に指向されるようになって並んでいる。したがって取付型要素11Eの方向は翼11の方向に適合されている。さらに全ての取付型要素(図6参照)は翼によって全体的に覆われ、その結果翼による効果が減少しないこととなる。取付型要素は、撹拌装置10の回転軸から垂直に伸張して離間する、すなわち当該要素は径方向Rに伸張し、小板は撹拌装置10の回転方向に中立の状態のままとなる。取付型要素11E又は小板は、背面の領域11Bに沿って径方向Rに伸張する縁部11Kを有し、実際には縁部11Kは縁部の領域11Cには突出せず、最小の距離Xを維持している。距離Xは隙間SPの約0.5から2倍の大きさを有する(図3C参照)。さらに当該距離は小板の長さLの約10%から50%でなければならず、20%から30%が好ましい(図4B参照)。上記寸法であれば流体条件を弱め、泡を効果的に減少させることができる。
【0041】
特に図4Bに示すように、翼つまり翼11は極めて平坦に構成され、数ミリの厚さを有する。さらに翼11の縁部の領域は面取りされたエッジ11Rを有する。同一のことが翼や取付型要素の全てのエッジに適用できる。したがって泡の生成につながる慣性によるキャビテーションの箇所が現れるのを回避することができる。特に混合容器の内壁に対向する縁部の領域11Sは、当該領域が溶融ガラス中で発生する潜在的な電流密度のための極めて小さな領域のみを提供するように、可能な中で最も小さい寸法を有する。これは混合容器に対して電流の供給により熱せられる撹拌装置には有利で、ここでは溶融ガラスや対面する領域11Sを通って流れたり、出ていったりする漏れ電流が発生する。こういった現象は特に低周波数、例えば50から数kヘルツ程度の交流電流により熱と共に漏れ電流が発生し、気体の泡の生成につながる、といったものに見られている。当該現象は正面11Sをできるだけ小さい領域とすることにより効果的に抑制される。
【0042】
上述したように、本発明は、撹拌翼の大部分、すなわち50%を超える撹拌翼が櫂形状の要素または翼11として構成される溶融ガラスを均質化する装置を提案するものである。各翼は、溶融ガラスを変位させる正面の翼領域11Aおよび背面の翼領域11Bを有し、少なくとも当該翼領域のうちの1つ、好ましくは背面の翼領域11B上には、当該翼領域11Bから撹拌軸10に向かって伸張する取付型要素11Eが少なくとも配置されている(例えば図3A参照)。
【0043】
櫂形状をした撹拌翼11は、複数の段E1、E2、・・・E5において、中間の空間ZRが2つの隣接する段の間で自由な状態が維持されて、当該空間内には撹拌翼11のいずれも突出しない状態で、撹拌軸10に沿って軸方向Aに配置されるのが好ましい(図3A、3B参照)。段E1、E2・・・E5は、軸方向に互いに等距離に配置されるのが好ましい。中間空間ZRは、中間空間ZRによってカバーされる投影領域Zが、ある段における前記攪拌翼11と攪拌軸10の関連サブセクターによってカバーされる投影領域Fの少なくとも5%かつ最大で90%となるように、寸法が決定される(図3B参照)。
【0044】
本装置は、E1からE5の各段において撹拌翼11が3つ配置されるのが好ましく、径方向に対称に配置されるように構成されるのが好ましい。このために、当該配置は、ある段(例えばE3)における撹拌翼11が撹拌翼の隣接する段(例えばE4)に関連して角度方向に変位されて、特に放射対称かつ角度方向に変位されて配置されるように構成してもよい(図3C参照)。
【0045】
この撹拌装置は、撹拌翼外端部、即ち撹拌翼の縁部11Sと混合容器の内壁との間に隙間SPを有している。当該隙間または縁部の隙間SPは、例えば混合容器2の直径D2の4.5%から10.5%となる(図3C参照)。
【0046】
図4Aおよび4Bに示すように、例えば正面の縁部11Sのような、撹拌翼11の外側の翼の端部若しくは翼の縁部は、面取りされた縁部の領域11Rとして構成されている。櫂形状をした撹拌翼11は、平坦な要素として構成され、縁部の領域はわずかな厚さを有する。特に、縁部の領域11S(正面)は最大で5mmの厚さを有する。弓形及び/または取付型要素により、狭小の翼11または翼は、ほとんど材料を必要としない、特に(翼の被覆のための)貴金属をほとんど必要としない安定的な構造を取ることができる。さらに、狭小の翼は、邪魔な漏れ電流が電気的に熱せられた撹拌装置内で発生し、当該電流が溶融ガラスを通じて内壁から翼の端部に流れ、その後撹拌軸を通じてバイパスに流れ出るのを防止する。上記電流は、数キロヘルツ未満、例えば50Hzの比較的低周波数の交流電流により熱が発生している場合、泡の生成を引き起こす原因となっていた。
【0047】
撹拌軸の寸法に関して、撹拌軸は直径D1が混合容器2の直径D2の25%から50%となる(図3C参照)。撹拌軸は中空構造を有し、任意で気体が充填されていることも可能である。さらに、撹拌軸は翼より異なる材料または異なる合金から製造することもできる。
【0048】
ここに記載した撹拌装置は、取り除いた後に実質的に一定の外径と一定の壁厚さを有するガラスパイプとなる、閉じられた溶融ガラスの外皮を形成するために、例えば当該装置の外から表面に出てくる溶融ガラスが回転するダナーブローパイプの外周上に現れるガラス供給装置(不図示)の上流に直接設置してもよい。ガラス供給装置は、撹拌装置の流出口5の後方に直接配置され(図2参照)、緩衝用の中間容器は介在しないことになる。これは、撹拌軸10の周方向における撹拌翼11の設定角、幾何学的形状および/又は角度配置により達成される、本発明による混合容器2からの極めて一定の流速が必要となる。溶融ガラスは、流出口5に溶融ガラスを押し出すために、外部の水圧が混合容器2全体に作用するように、例えば上方に垂直に伸張する接続側面部を通過して流入口4に進入する。当業者であれば自明なように、溶融ガラスを均質化する本発明の根拠となる原理は、ディスプレイ用のガラスの製造、特にLCDやOLEDまたはプラズマディスプレイ用のガラスシートの製造、ガラスセラミック、ホウケイ酸塩のガラス製品、光学ガラスまたはガラスチューブから製造されるガラス製品の製造に使用してもよい。
【0049】
図5には取付型要素の代替的な実施の形態、すなわち数個の取付型要素が撹拌翼11上に配置され、本実施の形態では例えば1つの撹拌翼11上に3つの板状の取付型要素11E’が配置されている。図6はさらに別の取付型要素の実施の形態、すなわち直角型で、平面の取付型要素11E’’が各撹拌翼11上に配置されている。
【0050】
本発明による取付型要素は、特に再沸騰の発生及び関連する泡の形成を著しく減少させる(およそ20%泡の発生を減少)。さらに取付型要素は、撹拌翼の機構の安定化にも寄与する。異なる撹拌翼の段は、操作中の流速が実質的に中立になるように、上方または下方に搬送する。
【0051】
上述した図を参照して要約すれば、溶融ガラスの均質化のための装置と同装置の使用が提案されている。このために、少なくとも回転方向Uに回転可能な撹拌軸10と複数の撹拌翼11、11’、11’’を有する撹拌装置が提供されている。撹拌翼は、流出口に向けて溶融ガラスに実質的に軸方向に調整された運搬装置の効果を生じさせるために、撹拌軸に沿って互いに間隔を開けて配置されている。均質化を改善すると同時に貴金属を節約するために、撹拌翼11、11’、11’’は櫂形状として構成され、取付型要素11Eが設けられている。各取付型要素11Eは、撹拌軸10から翼領域11Bに沿って径方向Rに伸張する、当該長さが径方向Rに伸張する翼領域11Bの長さLより特定の距離Xだけ短い縁部11Kを有する。撹拌翼は泡の生成を著しく減少させ、また撹拌翼は各翼毎に流れに対向しない翼領域11Bの背面に配置されるのが好ましい。さらに、撹拌翼または翼11はいくつかの段E1からE5上に配置され、その間には翼が通過しない空間ZRが設けられている。
【符号の説明】
【0052】
1… 溶融ガラスの均質化装置、
2… 混合容器(溶融容器)、
2A… 円錐状のテーパ領域(混合容器の下方の領域)、
3… 溶融ガラス、
4… 流入口(IN)、
5… 流出口(OUT)、
10… 撹拌軸、
11… 撹拌翼、櫂形状の翼、
11’、11’’… 大きさの減少した撹拌翼、
11A… 撹拌翼の正面領域(流れと対向する)、
11B… 撹拌翼の背面領域(流れと対向しない)、
11C… 下方の撹拌翼の縮小化した縁の部分、
11E… 撹拌翼上の取付型要素、
11E’、11E’’…取付型要素の代替的実施の形態(棒または板)、
11K… 取付型要素の縁部の長さ(撹拌翼の接続領域)、
11R… 面取りされた縁部の領域、
11S… 撹拌翼の外側の縁部の領域、
A… 回転する軸の方向若しくは軸、
D1… 撹拌軸の直径、
D2… 混合容器の直径(内側)、
D3、D3’… 各撹拌翼の段の直径、
E1―E5… 配置された撹拌翼の段、
F、F’、F’’… 撹拌翼の段E1―E5の投影領域、
R… 径方向、
SP… 縁部の隙間(内壁の領域における)、
U… 撹拌軸の回転方向、
X… 撹拌翼の縁部の領域までの距離、
Z… 翼が通過しない中間空間の投影領域、
ZR… 中間空間、
+/−… +が撹拌翼の正の搬送方向、−が負の搬送方向。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6