(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記コンクリート本体部の上記基筒部の端面に設けられ、上記各軸方向筋の基筒部側の端部に設けられた頭状端部を定着する複数の定着孔が周方向に所定ピッチで形成されたリング状の基筒側端面金具を具備し、
上記拡径側端面金具は、上記基筒側端面金具より大径の外径および内径を有する
ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート製品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、
図18に示されるように、比較的小径の基筒部3では、コンクリート本体部1の表面に近い断面箇所に軸方向筋2が配筋され、基筒部3に対して拡径された拡径部4では、コンクリート本体部1の表面から遠い断面箇所に軸方向筋2が配筋されているため、拡径部4では軸方向筋2の有効高が小さく、杭の壁厚に対し、より有効な破壊強度が得られない。
【0007】
また、上記のような拡径タイプおよび拡径節タイプの拡径部4において、
図11乃至
図14に示されるように、軸方向筋2をコンクリート本体部1の表面側へテーパ状に拡径させて所定の形状に配筋作業することは容易でないとともに、端面金具5,6に軸方向筋2の一端部および他端部を定着させる際、特に拡径側の端面金具6に軸方向筋2のテーパ状に拡径された端部を位置合わせして定着させる作業が容易でなく、さらに、端面金具5,6によって軸方向筋2を緊張する際に軸方向筋2をテーパ状に保持することが難しく、これらにより、配筋作業上の手間および時間がかかり、コストがかかるという課題がある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、基筒部とこの基筒部より外周側面を大径に成形した拡径部とが一体成形されたコンクリート本体部における拡径部でより有効な破壊強度が得られるように配筋されたコンクリート製品と、そのようなコンクリート製品を製造する際に用いることで配筋作業上の課題を解決できるコンクリート製品配筋用の組立治具とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載された発明は、筒状に成形された基筒部の少なくとも一端部に上記基筒部より外周側面を大径に成形した拡径部が一体成形されたコンクリート本体部と、上記コンクリート本体部内の周方向に所定ピッチで配置され、上記基筒部内にストレート状に配筋されるストレート状配筋部を有するとともに上記拡径部内に上記ストレート状配筋部から曲げ上げられて拡開状に配筋されたテーパ状配筋部を有する複数の軸方向筋と、上記各軸方向筋における上記ストレート状配筋部と上記テーパ状配筋部との境界位置の外周側に配筋されたリング筋と
、上記コンクリート本体部の上記拡径部の端面に設けられ、上記各軸方向筋の拡径部側の端部に設けられた頭状端部を定着する複数の定着孔が周方向に所定ピッチで形成されたリング状の拡径側端面金具とを具備し、上記拡径側端面金具の定着孔は、上記軸方向筋の頭状端部が挿通可能の大きさに形成された挿通孔と、上記挿通孔より径方向へ連続的に切り込み形成され上記軸方向筋の軸部が上記挿通孔から径方向への移動により嵌入可能であるとともに上記軸方向筋の頭状端部より小径に形成された係止孔とを具備したコンクリート製品である。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のコンクリート製品において、上記コンクリート本体部の上記基筒部の端面に設けられ、上記各軸方向筋の基筒部側の端部に設けられた頭状端部を定着する複数の定着孔が周方向に所定ピッチで形成されたリング状の基筒側端面金具
を具備し、上記拡径側端面金具は、上記基筒側端面金具より大径の外径および内径を有す
るコンクリート製品である
。
【0011】
請求項
3に記載された発明は、請求項
1または2記載のコンクリート製品における上記拡径側端面金具が、上記係止孔の外面側に形成され、上記挿通孔から径方向に移動した上記軸方向筋の頭状端部が嵌合されるザグリ溝を具備したコンクリート製品である。
【0012】
請求項4に記載された発明は、請求項
1乃至3のいずれか記載のコンクリート製品に
おいて、上記各軸方向筋における上記テーパ状配筋部の内周側に配筋された内側リング筋と、この内側リング筋を介して上記テーパ状配筋部と連続的にかつ上記ストレート状配筋部より大径のストレート状に配筋された大径ストレート状配筋部とを具備したコンクリート製品である。
【0013】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至4のいずれか記載のコンクリート製品を成形する際に用いるコンクリート製品配筋用の組立治具であって、請求項1乃至4のいずれか記載の上記複数の軸方向筋の内外周のうち軸方向筋の径方向曲げ反力が作用する箇所であって径方向曲げ反力と対抗する側に着脱自在に取り付けられるリング状の治具本体と、上記治具本体に上記各軸方向筋の配筋間隔で設けられて上記各軸方向筋を位置決めする複数のガイド部とを具備したコンクリート製品配筋用の組立治具である。
【0014】
請求項6に記載された発明は、請求項5記載のコンクリート製品配筋用の組立治具における上記治具本体が、円状に連結可能な複数の円弧状部材と、上記複数の円弧状部材を径変化可能または分解可能に円状に連結する連結部材とを具備した組立治具である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された発明によれば、コンクリート本体部の基筒部内に、複数の軸方向筋のうちのストレート状配筋部を配筋し、基筒部より外周側面を大径に成形したコンクリート本体部の拡径部内に上記ストレート状配筋部からリング筋を介して曲げ上げられたテーパ状配筋部を拡開状に配筋したので、コンクリート本体部の基筒部と同様に、拡径部でも表面に近い断面箇所に軸方向筋を配筋でき、基筒部とこの基筒部より大径の拡径部とが一体成形されたコンクリート本体部における拡径部でより有効な破壊強度が得られるように配筋されたコンクリート杭などのコンクリート製品を提供できる。
拡径側端面金具の定着孔は、軸方向筋の頭状端部が挿通可能の大きさに形成された挿通孔より、軸方向筋の頭状端部より小径の係止孔が径方向へ連続的に切り込み形成され、軸方向筋の軸部が径方向への移動により係止孔へ嵌入可能であるので、軸方向筋の頭状端部を拡径側端面金具の所定位置に定着する作業が容易になり、この作業に費やす時間を大幅に短縮でき、コスト削減を図れる。
【0016】
請求項2に記載された発明によれば、コンクリート本体部の拡径部内に複数のテーパ状配筋部が拡開状に配筋され、拡径側端面金具は、反対側の基筒側端面金具より大径の外径および内径を有するので、その外径と内径との差に当たる拡径側端面金具の板幅を、基筒側端面金具の板幅と同様に小さくすることができ、コスト削減を図れる。さらに、基筒側端面金具とこの基筒側端面金具より大径の拡径側端面金具とにより各軸方向筋を軸方向に緊張する際に、これらの端面金具と各軸方向筋の外周側に配筋されたリング筋とにより、各軸方向筋のテーパ状配筋部を拡開状に保持できる
。
【0017】
請求項
3に記載された発明によれば、挿通孔から径方向に移動した軸方向筋の頭状端部が、拡径側端面金具の係止孔の外面側に形成されたザグリ溝に嵌合されるようにしたので、ザグリ溝に嵌合された軸方向筋の頭状端部が挿通孔に戻って拡径側端面金具から外れるおそれを確実に防止できる。
【0018】
請求項4に記載された発明によれば、
請求項1と同様にコンクリート本体部における拡径部でより有効な破壊強度が得られる。
【0019】
請求項5に記載された発明によれば、複数の軸方向筋の内外周のうち軸方向筋の径方向曲げ反力が作用する箇所であって径方向曲げ反力と対抗する側に着脱自在に取り付けられるリング状の治具本体と、その各軸方向筋の配筋間隔で設けられて各軸方向筋を位置決めする複数のガイド部とを具備したコンクリート製品配筋用の組立治具を用いることにより、コンクリート本体部の表面側へ拡径された各軸方向筋を所定の配筋位置に保持でき、所定の形状に配筋作業することが容易にできるとともに、拡径側端面金具の定着孔に軸方向筋を位置合わせして定着させる作業を容易にでき、要するに組立治具を用いることにより拡径側端面金具の取付時間を大幅に短縮でき、コンクリート製品を製造する際の配筋作業上の手間および時間を節約できるとともにコスト削減を図れる。
【0020】
請求項6に記載された発明によれば、組立治具の治具本体は、複数の円弧状部材を連結部材により径変化可能または分解可能に円状に連結したので、軸方向筋の頭状端部を拡径側端面金具に定着した状態で、組立治具の治具本体を径変化させまたは分解して容易に取り外すことができ、コンクリート本体部の拡径部に組立用鉄筋を用いる場合と比較して、脱着可能な組立治具の繰り返し使用が可能となり、コスト削減を図れる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を、
図1乃至
図6に示された一実施の形態、
図7乃至
図10に示されたコンクリート製品配筋用の組立治具の種々の具体例、
図11乃至
図14に示されたコンクリート製品の種々の変形例を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1乃至
図3は、プレストレスト・コンクリート杭などのコンクリート製品11の一実施の形態を示し、そのコンクリート本体部12は、筒状に成形された基筒部13上に節部14が一体に成形され、基筒部13の一端部にこの基筒部13より外周側面を大径に成形した拡径部15が一体成形されている。
【0024】
上記コンクリート本体部12内には複数の軸方向筋16が周方向に所定ピッチで配置され、上記コンクリート本体部12の上記基筒部13内には、各軸方向筋16のうちのストレート状配筋部17がストレート状に配筋され、また、上記コンクリート本体部12の上記拡径部15内には、上記各ストレート状配筋部17から曲げ上げられたテーパ状配筋部18が拡開状に配筋されている。
【0025】
上記各軸方向筋16における上記ストレート状配筋部17と上記テーパ状配筋部18との境界位置の外周側には、リング筋19が配筋され結束されている。
【0026】
上記各軸方向筋16の上記ストレート状配筋部17の外周部には、所要の用心鉄筋または螺旋筋などの周方向筋20が配筋され結束されている。同様に、上記各軸方向筋16の上記テーパ状配筋部18の外周部にも、所要の用心鉄筋または螺旋筋などの周方向筋20aが配筋され結束されている。
【0027】
上記軸方向筋16、上記リング筋19および上記周方向筋20,20aは、いずれも鉄筋にすることが一般的であるが、強度が確保される他の金属または非金属材料を用いてもよい。
【0028】
上記コンクリート本体部12の上記基筒部13の端面には、
図2に示されるリング状の基筒側端面金具21が設けられている。
【0029】
この基筒側端面金具21は、リング板状の金具本体部21aの周縁に周側板部21bが溶接されたものであり、この基筒側端面金具21の金具本体部21aには、上記各軸方向筋16の基筒部側の端部に設けられた頭状端部22を定着する周方向に瓢箪形に形成された複数の定着孔23が、周方向に所定ピッチで形成されている。
【0030】
上記コンクリート本体部12の上記拡径部15の端面には、
図3に示されるように上記基筒側端面金具21より大径の外径および内径を有するリング状の拡径側端面金具24が設けられている。
【0031】
この拡径側端面金具24は、上記基筒側端面金具21の金具本体部21aより大径の外径および内径を有するとともに金具本体部21aと等幅に形成されたリング板状の金具本体部24aの周縁に周側板部24bが溶接されたものであり、この拡径側端面金具24の金具本体部24aには、上記各軸方向筋16の拡径部側の端部に設けられた頭状端部25を定着する径方向に瓢箪形に形成された複数の定着孔26が、周方向に所定ピッチで形成されている。
【0032】
図4および
図5に示されるように、上記拡径側端面金具24の定着孔26は、上記軸方向筋16のテーパ状配筋部18の頭状端部25が挿通可能の大きさに形成された挿通孔27と、上記テーパ状配筋部18の頭状端部25より小径に形成された係止孔28とを具備している。係止孔28は、上記挿通孔27より径方向内側(中心寄り)へ連続的に切り込み形成され、上記軸方向筋16のテーパ状配筋部18の軸部が上記挿通孔27から径方向内側への移動によりこの係止孔28に嵌入可能である。
【0033】
上記拡径側端面金具24の上記係止孔28の外面側にはザグリ溝29が形成され、上記挿通孔27から径方向内側に移動した上記テーパ状配筋部18の頭状端部25がこのザグリ溝29内に嵌合されるように設けられている。
【0034】
以下、
図6を参照しながら、拡径型既製コンクリート杭の製造方法(鉄筋編組方法)の一例を説明する。
【0035】
図6(a)に示されるように、拡幅していない鉄筋籠を、軸方向筋16と周方向筋(用心鉄筋)20とにより組み立てる。その際、テーパ状配筋部18となる予定の軸方向筋部分には、周方向筋20を配筋しない。
【0036】
図6(b)に示されるように、拡径側でないストレート状配筋部17の端部に、従来方式と同様に基筒側端面金具21を取り付ける。
【0037】
また、拡径側となる各軸方向筋16の外周部であって、テーパ状に軸方向筋16を曲げ上げる軸方向位置にリング筋19を配置する。このリング筋19は、丸鋼、異形棒鋼、フラットバー等でリング状に加工したものを用いる。リング筋19は、軸方向筋16の外周側に配置し、結束線、クリップ等を用いて所定位置に固定する。
【0038】
図6(c)に示されるように、各軸方向筋16をリング筋19を支点に曲げ上げるようにして拡開状に広げつつ、各軸方向筋16の内側にコンクリート製品配筋用の組立治具31をセットし、テーパ状配筋部18を形成する。組立治具31は、丸鋼、異形棒鋼、フラットバー等でリング状に加工したものを用いても良いが、軸方向筋16の位置決めができるとともに、鉄筋龍組立て後に取り外せる構造とするのが望ましい。
【0039】
すなわち、
図7乃至
図10に示されるように、コンクリート製品配筋用の組立治具31a,31b,31c,31dは、複数のテーパ状配筋部18の内周側に着脱自在に取り付けられるリング状の治具本体32の外周部に、各テーパ状配筋部18を位置決めする複数のガイド部33が、各テーパ状配筋部18の配筋間隔で設けられている。上記治具本体32は、円状に連結可能な複数の円弧状部材34と、これらの円弧状部材34を縮径可能または分解可能に円状に連結する連結部材35とを具備している。
【0040】
図6に戻って、
図6(c)から
図6(d)に示されるように、各テーパ状配筋部18を拡径側端面金具24に定着させる。その際の拡径側端面金具24には、径方向に瓢箪形に形成された定着孔26が、拡径側端面金具24の全周にわたって所定のピッチで加工されている。
【0041】
これらの定着孔26は、
図4および
図5に示されるように、各テーパ状配筋部18の頭部が挿通される挿通孔27と、この挿通孔27より小径に形成された係止孔28とが連続的に設けられている。
【0042】
各定着孔26の係止孔28には、挿通孔27から径方向内側(中心寄り)に移動したテーパ状配筋部18の軸部が挿入され、テーパ状配筋部18の頭状端部25が係合される。この係止孔28の外面側には、テーパ状配筋部18の頭状端部25を納めるザグリ溝29が、係止孔28より2〜4mm程度大きく形成されている。これらの係止孔28およびザグリ溝29は、軸方向筋16の曲げ上げ反力が径方向内側に向かって作用することから、挿通孔27より径方向内側に配置する。
【0043】
すなわち、拡径側端面金具24に各テーパ状配筋部18を定着させる際に、拡径側端面金具24に設けられた定着孔26の係止孔28が、
図5に示されるように挿通孔27より径方向内側(中心寄り)に加工されているので、テーパ状配筋部18の曲げ上げ反力によって、テーパ状配筋部18の軸部が拡径側端面金具24の中心方向に移動して係止孔28に嵌入するとともに、テーパ状配筋部18の頭状端部25がザグリ溝29内に納まる。
【0044】
一方、各定着孔26の挿通孔27には、ねじ溝27aを設けておき、このねじ溝27aにねじ(図示せず)を螺合して挿通孔27を塞ぐようにすると、テーパ状配筋部18の軸部が挿通孔27に戻ることを防止でき、各定着孔26からの各テーパ状配筋部18の抜け出しを確実に防止できる。
【0045】
図6に戻って、
図6(d)に示されるように、拡径側端面金具24に各テーパ状配筋部18を定着させた後、組立治具31を縮径させるか分解して外部に取り外し、各テーパ状配筋部18の外周部に周方向筋(用心鉄筋)20aを配筋する。
【0046】
その後の、図示されない遠心成形機によって回転される型枠内での基筒側端面金具21と拡径側端面金具24とによる軸方向筋16の緊張、コンクリート打設、遠心成形機による遠心成形、養生、脱型は、従来と同様に行なう。
【0047】
次に、
図7乃至
図10を参照しながら、コンクリート製品配筋用の組立治具31a,31b,31c,31dの具体例を説明する。
【0048】
図7に示される組立治具31aは、複数の軸方向筋16の内外周のうち軸方向筋16の径方向曲げ反力が作用する箇所であって径方向曲げ反力と対抗する側すなわち各テーパ状配筋部18の内周側に着脱自在に取り付けられるフラットバー製リング状の治具本体32の外周部に、各軸方向筋16のテーパ状配筋部18を位置決めするU字溝状の複数のガイド部33が、各テーパ状配筋部18の配筋間隔で設けられている。上記治具本体32は、円状に連結可能な2つの円弧状部材34と、これらの円弧状部材34を
図7(a)に示されるように円状に連結するとともに
図7(b)に示されるように片方を取り外して径変化可能すなわち縮径可能とするかまたは両方を取り外して分解可能とするピン状の連結部材35とを具備している。
【0049】
図8に示される組立治具31bは、複数の軸方向筋16の内外周のうち軸方向筋16の径方向曲げ反力が作用する箇所であって径方向曲げ反力と対抗する側すなわち各テーパ状配筋部18の内周側に着脱自在に取り付けられるフラットバー製リング状の治具本体32の外周部に、各軸方向筋16のテーパ状配筋部18を位置決めする複数対の鋼材を溶接して形成した複数のガイド部33が、各テーパ状配筋部18の配筋間隔で設けられている。上記治具本体32は、円状に連結可能な2つの円弧状部材34と、これらの円弧状部材34を
図8(a)に示されるように円状に連結するとともに
図8(b)に示されるように片方を取り外して径変化可能すなわち縮径可能とするかまたは両方を取り外して分解可能とするピン状の連結部材35とを具備している。
【0050】
図9に示される組立治具31cは、複数の軸方向筋16の内外周のうち軸方向筋16の径方向曲げ反力が作用する箇所であって径方向曲げ反力と対抗する側すなわち各テーパ状配筋部18の内周側に着脱自在に取り付けられる丸鋼製リング状の治具本体32の外周部に、各軸方向筋16のテーパ状配筋部18を位置決めする複数対の鋼材を溶接して形成した複数のガイド部33が、各テーパ状配筋部18の配筋間隔で設けられている。上記治具本体32は、円状に連結可能な2つの円弧状部材34と、これらの円弧状部材34を
図9(a)に示されるように円状に連結するとともに
図9(b)に示されるように両方を取り外して分解可能とするかまたは片方を取り外して径変化可能すなわち縮径可能とする連結部材としてのブラケット35aおよびピン35bとを具備している。
【0051】
図10に示される組立治具31dは、複数の軸方向筋16の内外周のうち軸方向筋16の径方向曲げ反力が作用する箇所であって径方向曲げ反力と対抗する側すなわち各テーパ状配筋部18の内周側に着脱自在に取り付けられる丸鋼製リング状の治具本体32の外周部に、各軸方向筋16のテーパ状配筋部18を位置決めする複数対の鋼材を溶接して形成した複数のガイド部33が、各テーパ状配筋部18の配筋間隔で設けられている。上記治具本体32は、円状に連結可能な3つの円弧状部材34と、これらの円弧状部材34を
図10(a)に示されるように円状に連結するとともに
図10(b)に示されるように一部を取り外して径変化可能すなわち縮径可能とするかまたは全部を取り外して分解可能とする連結部材としてのブラケット35aおよびピン35bとを具備している。
【0052】
次に、上記実施の形態によって得られる効果は以下の通りである。
【0053】
コンクリート本体部12の基筒部13内に、複数の軸方向筋16のうちのストレート状配筋部17を配筋し、基筒部13より外周側面を大径に成形したコンクリート本体部12の拡径部15内に上記ストレート状配筋部17からリング筋19を介して曲げ上げられたテーパ状配筋部18を拡開状に配筋し、これらのストレート状配筋部17およびテーパ状配筋部18の外周部にそれぞれ周方向筋20,20aを配筋したので、コンクリート本体部12の基筒部13と同様に、拡径部15でも表面に近い断面箇所に軸方向筋16および周方向筋20aを配筋でき、基筒部13とこの基筒部13より大径の拡径部15とが一体成形されたコンクリート本体部12における拡径部15でより有効な破壊強度が得られるように配筋されたコンクリート杭などのコンクリート製品11を提供できる。
【0054】
また、コンクリート本体部12の拡径部15内に複数のテーパ状配筋部18が拡開状に配筋され、拡径側端面金具24は、反対側の基筒側端面金具21より大径の外径および内径を有するので、その外径と内径との差に当たる拡径側端面金具24の板幅を、基筒側端面金具21の板幅と同様に小さくすることができ、コスト削減を図れる。
【0055】
さらに、基筒側端面金具21とこの基筒側端面金具21より大径の拡径側端面金具24とにより各軸方向筋16を軸方向に緊張する際に、これらの端面金具21,24と各軸方向筋16の外周側に配筋され結束されたリング筋19とにより、各軸方向筋16のテーパ状配筋部18を拡開状に保持できる。
【0056】
拡径側端面金具24の定着孔26は、テーパ状配筋部18の頭状端部25が挿通可能の大きさに形成された挿通孔27より、テーパ状配筋部18の頭状端部25より小径の係止孔28が径方向内側へ連続的に切り込み形成され、テーパ状配筋部18の軸部が径方向内側への移動により係止孔28へ嵌入可能であるので、テーパ状配筋部18の頭状端部25を拡径側端面金具24の所定位置(ザグリ溝29位置)に定着する作業が容易になり、この作業に費やす時間を大幅に短縮でき、コスト削減を図れる。
【0057】
挿通孔27から径方向内側に移動したテーパ状配筋部18の頭状端部25が、拡径側端面金具24の係止孔28の外面側に形成されたザグリ溝29に嵌合されるようにしたので、ザグリ溝29に嵌合されたテーパ状配筋部18の頭状端部25が挿通孔27に戻って拡径側端面金具24から外れるおそれを確実に防止できる。
【0058】
複数の軸方向筋16の内外周のうち軸方向筋16の径方向曲げ反力が作用する箇所であって径方向曲げ反力と対抗する側すなわちテーパ状配筋部18の内周側に着脱自在に取り付けられるリング状の治具本体32と、その外周部に各軸方向筋16のテーパ状配筋部18の配筋間隔で設けられた各テーパ状配筋部位置決め用の複数のガイド部33とを具備したコンクリート製品配筋用の組立治具31,31a,31b,31c,31dを用いることにより、コンクリート本体部12の表面側へテーパ状に拡径された各軸方向筋16のテーパ状配筋部18のテーパ角度および配筋間隔を所定の配筋位置に保持でき、所定の形状に配筋作業することが容易にできるとともに、拡径側端面金具24の定着孔26に軸方向筋16のテーパ状配筋部18を位置合わせして定着させる作業を容易にでき、要するに組立治具31,31a,31b,31c,31dを用いることにより拡径側端面金具24の取付時間を大幅に短縮でき、コンクリート製品11を製造する際の配筋作業上の手間および時間を節約できるとともにコスト削減を図れる。
【0059】
組立治具31,31a,31b,31c,31dの治具本体32は、複数の円弧状部材34を連結部材35により縮径可能または分解可能に円状に連結したので、テーパ状配筋部18の頭状端部25を拡径側端面金具24に定着した状態で、組立治具31,31a,31b,31c,31dの治具本体32をリング状の拡径側端面金具24の中空部よりコンパクトに縮径変化させまたは分解して外部へ容易に取り外すことができ、コンクリート本体部12の拡径部15に一定リング形状の組立用鉄筋を用いる場合と比較して、縮径または分解により脱着可能な組立治具31,31a,31b,31c,31dの繰り返し使用が可能となり、コスト削減を図れる。
【0060】
次に、
図11乃至
図14を参照しながら、本発明に係るコンクリート製品11の種々の変形例のコンクリート製品11a,11b,11c,11dを説明する。
【0061】
図11は変形例その1のコンクリート製品11aを示し、コンクリート本体部12の基筒部13に節部14を形成しない点で、
図1に示されたコンクリート製品11と異なるが、その他の構造は、
図1に示されたコンクリート製品11と同様である。
【0062】
図12は変形例その2のコンクリート製品11bを示し、コンクリート本体部12の拡径部15がテーパ状に形成され、その拡径部15の表面とテーパ状配筋部18とが均一の肉厚に形成されている点で、
図11に示されたコンクリート製品11aと異なるが、その他の構造は、
図11に示されたコンクリート製品11aと同様である。
【0063】
図13は変形例その3のコンクリート製品11cを示し、コンクリート本体部12の拡径部15がテーパ状に形成され、その拡径部15の表面とテーパ状配筋部18とが均一の肉厚に形成されている点で、
図12に示されたコンクリート製品11bと同様であるが、拡径部15の拡径側端面金具24に隣接する内径部分38を大径に形成している点で、
図12に示されたコンクリート製品11bと異なる。上記内径部分38は、遠心成形時に円環状の堰板を型内に挿入することで実現する。
【0064】
図14は変形例その4のコンクリート製品11dを示し、コンクリート本体部12の基筒部13の一端部および他端部の両方に拡径部15a,15bを一体成形した点で、
図11に示されたコンクリート製品11aと異なるが、その他の構造は、
図11に示されたコンクリート製品11aと同様であり、基筒部13の一端部の拡径部15aに適用された配筋構造およびコンクリート製品配筋用の組立治具31を、基筒部13の他端部の拡径部15bにも適用する。
【0065】
次に、
図15乃至
図17は、本発明に係るコンクリート製品、その配筋の編組方法および組立治具の他の実施の形態を示す。
【0066】
図15に示されるコンクリート製品11eは、筒状に成形された基筒部13の少なくとも一端部に上記基筒部13より外周側面を大径に成形した拡径部15が一体成形されたコンクリート本体部12と、上記コンクリート本体部12内の周方向に所定ピッチで配置され、上記基筒部13内にストレート状に配筋されるストレート状配筋部17を有するとともに上記拡径部15内に上記ストレート状配筋部17から曲げ上げられて拡開状に配筋されたテーパ状配筋部18を有する複数の軸方向筋16と、上記各軸方向筋16における上記ストレート状配筋部17と上記テーパ状配筋部18との境界位置の外周側に配筋されたリング筋19とを具備している。
【0067】
さらに、上記各軸方向筋16における上記テーパ状配筋部18の内周側に配筋された内側リング筋41と、この内側リング筋41を介して上記テーパ状配筋部18と連続的にかつ上記ストレート状配筋部17より大径のストレート状に配筋された大径ストレート状配筋部42とを具備している。
【0068】
また、上記コンクリート本体部12の上記基筒部13の端面に設けられ、上記各軸方向筋16の基筒部13側の端部に設けられた頭状端部22を定着する複数の定着孔23が周方向に所定ピッチで形成されたリング状の基筒側端面金具21と、上記コンクリート本体部12の上記拡径部15の端面に設けられ、上記各軸方向筋16の拡径部15側の端部に設けられた頭状端部25を定着する複数の定着孔26が周方向に所定ピッチで形成された、上記基筒側端面金具21より大径の外径および内径を有するリング状の拡径側端面金具24とを具備している。
【0069】
これらの基筒側端面金具21および拡径側端面金具24の詳細は、
図2乃至
図5に示されたものと同様であるので、その詳細説明は省略する。
【0070】
ただし、拡径側端面金具24の定着孔26は、挿通孔27と係止孔28の半径方向位置関係を、
図3乃至
図5に示されたものと逆にするとよい。すなわち、各軸方向筋16の径方向内側に内側リング筋41を取り付けて、各大径ストレート状配筋部42を径方向内側に折り込んだため、各大径ストレート状配筋部42の折り込み反力が径方向外側に向かって作用するため、挿通孔27の径方向外側に係止孔28およびザグリ溝29を配置するとよい。
【0071】
図16に示されるように、
図15に示されたコンクリート製品11eの編組方法は、
図16(a)に示されるように軸方向筋16と周方向筋20とを組み立て、
図16(b)に示されるように基筒側端面金具21を取り付けるとともに、各軸方向筋16の外周側にリング筋19を取り付け、
図16(c)に示されるように、リング筋19を支点に各軸方向筋16を外側へ曲げ上げ、その各軸方向筋16の内側に内側リング筋41を取り付け、
図16(d)に示されるように内側リング筋41を支点に各軸方向筋16を内側へ曲げ戻してそれぞれの大径ストレート状配筋部42を形成し、これらの各大径ストレート状配筋部42の外周側にコンクリート製品配筋用の組立治具31eを着脱可能に取り付け、
図16(e)に示されるよう各軸方向筋16に拡径側端面金具24を取り付けた後、組立治具31eを拡開するかまたは分解して取り外す。
【0072】
図17は、
図16(d)で用いられた組立治具31eを示し、この組立治具31eは、拡径側端面金具24を取り付けるに当たって複数の軸方向筋16の内外周のうち軸方向筋16の径方向曲げ反力が作用する箇所であって径方向曲げ反力と対抗する側すなわち各大径ストレート状配筋部42の外周側に着脱自在に取り付けられる丸鋼製リング状の治具本体32の内周部に、各軸方向筋16の大径ストレート状配筋部42を位置決めする複数対の鋼材を溶接して形成した複数のガイド部33が、各大径ストレート状配筋部42の配筋間隔で設けられている。
【0073】
上記治具本体32は、円状に連結可能な2つの円弧状部材34と、各円弧状部材34の一端部および他端部に設けられて、これらの円弧状部材34を
図17(a)に示されるように円状に連結するとともに
図17(b)に示されるように分解可能または径変化可能すなわち拡開可能とする連結部材としてのブラケット35aおよびピン35bとを具備している。
【0074】
そして、この組立治具31eを各大径ストレート状配筋部42の外周側から取り外すときは、少なくとも一方のブラケット35aからピン35bを外して、他方のピン35bを中心に拡開するか、または両方のブラケット35aからピン35bを外して分解することで、取り外すことができる。組立治具31eは、各大径ストレート状配筋部42の先端寄りに取り付けることが望ましいが、周側板部24bの内側に位置すると取外が困難になるので、周側板部24bの外側に位置するように各大径ストレート状配筋部42に取り付ける。
【0075】
このように、複数の軸方向筋16の内外周のうち軸方向筋16の径方向曲げ反力が作用する箇所であって径方向曲げ反力と対抗する側すなわち大径ストレート状配筋部42の外周側に着脱自在に取り付けられるリング状の治具本体32と、その内周部に各軸方向筋16の大径ストレート状配筋部42の配筋間隔で設けられた各軸方向筋位置決め用の複数のガイド部33とを具備したコンクリート製品配筋用の組立治具31eを用いることにより、コンクリート本体部12の表面側へ拡径された各軸方向筋16の大径ストレート状配筋部42をそれらの外周側から所定の配筋位置に保持でき、所定の形状に配筋作業することが容易にできるとともに、拡径側端面金具24の定着孔26に軸方向筋16の各大径ストレート状配筋部42を位置合わせして定着させる作業を容易にでき、要するに組立治具31eを用いることにより拡径側端面金具24の取付時間を大幅に短縮でき、コンクリート製品11を製造する際の配筋作業上の手間および時間を節約できるとともにコスト削減を図れる。
【0076】
また、組立治具31eの治具本体32は、複数の円弧状部材34をブラケット35aおよびピン35bにより拡開可能または分解可能に円状に連結したので、大径ストレート状配筋部42の頭状端部25を拡径側端面金具24に定着した状態で、組立治具31eの治具本体32を拡径変化させまたは分解して大径ストレート状配筋部42の外周側より容易に取り外すことができ、コンクリート本体部12の拡径部15に一定リング形状の組立用鉄筋を用いる場合と比較して、拡開または分解により脱着可能な組立治具31eの繰り返し使用が可能となり、コスト削減を図れる。
【0077】
なお、この
図15に示された実施の形態についても、
図11に示されるような節部を形成しない変形例や、または
図14に示されるようなコンクリート本体部12の一端部および他端部の両方に拡径部を一体成形した変形例が成り立つ。
【0078】
次に、本発明は、図示された既製コンクリート杭だけでなく、図示されない電柱などのコンクリートポールにも適用される。そのコンクリートポールにおいては、養生、脱型後のプレストレスト・コンクリート製品から、基筒側端面金具21および拡径側端面金具24の少なくとも一方をコンクリート本体部12の一部および軸方向筋16の一部とともに切り落として最終製品とする場合がある。
【0079】
要するに、本発明のコンクリート製品11には、基筒側端面金具21および拡径側端面金具24の両方を備えていないものも含まれ、基筒側端面金具21や拡径側端面金具24を切り落としても拡径部15において、より有効な破壊強度が得られるように配筋されたコンクリートポールなどのコンクリート製品11を提供できる。