特許第5739229号(P5739229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5739229
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】過熱蒸気発生器
(51)【国際特許分類】
   F22B 7/12 20060101AFI20150604BHJP
   F22G 1/02 20060101ALI20150604BHJP
   F22D 5/00 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   F22B7/12
   F22G1/02
   F22D5/00 B
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-112573(P2011-112573)
(22)【出願日】2011年5月19日
(65)【公開番号】特開2012-137274(P2012-137274A)
(43)【公開日】2012年7月19日
【審査請求日】2013年12月11日
(31)【優先権主張番号】特願2010-275961(P2010-275961)
(32)【優先日】2010年12月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128901
【弁理士】
【氏名又は名称】東 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】毛笠 明志
(72)【発明者】
【氏名】白神 洋輔
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0223315(US,A1)
【文献】 米国特許第01950756(US,A)
【文献】 特表2006−514253(JP,A)
【文献】 特公昭46−023282(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 7/12
F22D 5/00
F22G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナーの燃焼により発生した燃焼ガスにて水を加熱して飽和水蒸気を発生させ、前記水を加熱した後の燃焼ガスにて飽和水蒸気をさらに加熱して過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生器であって、
水を収容する円筒状の耐圧容器には、収容された水の水面下に配置されて燃焼ガスを前記耐圧容器の軸方向の一方側から前記耐圧容器の内部に導入して前記軸方向の他方側に向けて流通させる炉筒と、その炉筒を通過した燃焼ガスを前記軸方向の他方側から一方側に向けて流通させる第1煙管と、その第1煙管を通過した燃焼ガスを前記軸方向の一方側から他方側に向けて流通させる第2煙管と、前記炉筒を通過した燃焼ガスを前記第1煙管に案内流通させる第1ヘッダーと、前記第1煙管を通過した燃焼ガスを前記第2煙管に案内流通させる第2ヘッダーとが備えられ、
前記炉筒は、前記耐圧容器の一方側の内壁に連結支持され、
前記第1ヘッダーは、前記炉筒の他方側の端部近傍で炉筒から支持され、前記耐圧容器における前記軸方向の他方側の内壁と前記軸方向に間隔を隔てて非接触状態で配設され、
前記第2ヘッダーは、前記第1ヘッダーと前記第1煙管とを介して、前記炉筒の他方側の端部近傍で炉筒から支持されて前記炉筒を摺動自在に貫通させて設けられており、
前記耐圧容器において、前記第1煙管が前記第2煙管よりも上方に配置されて、
前記第2煙管が、前記第1ヘッダーに対して摺動自在に貫通して設けられている過熱蒸気発生器。
【請求項2】
前記炉筒が単一に構成され、
飽和水蒸気を加熱して過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生部を構成する前記第1煙管が、前記耐圧容器に収容された水の水面上に配置され、
水を加熱して飽和水蒸気を発生させる飽和水蒸気発生部を構成する前記第2煙管が、前記炉筒とともに前記耐圧容器に収容された水の水面下に配置されている請求項1に記載の過熱蒸気発生器。
【請求項3】
前記耐圧容器の内部において、前記飽和水蒸気発生部と前記過熱蒸気発生部とを区画する区画板を設け、前記区画板で形成された前記過熱蒸気発生部内を流通する飽和水蒸気の流れと前記第1煙管内を流通する燃焼ガスの流れとが対向流を構成する請求項に記載の過熱蒸気発生器。
【請求項4】
前記過熱蒸気発生部において、前記第1煙管に飽和水蒸気の流れを誘導する邪魔板が設けられている請求項またはに記載の過熱蒸気発生器。
【請求項5】
前記過熱蒸気発生部を構成する前記第1煙管の周囲を囲み、飽和水蒸気及び過熱蒸気を通流させる閉空間を形成する閉空間形成部材が備えられ、その閉空間形成部材は、前記耐圧容器の外表面と熱的に遮断されている請求項の何れか1項に記載の過熱蒸気発生器。
【請求項6】
前記耐圧容器に収容する水の水位を、前記飽和水蒸気発生部を構成する前記炉筒と前記第2煙管とに加え、前記過熱蒸気発生部を構成する前記第1煙管の少なくとも一部も水面下に水没させる初期水位とし、前記燃焼ガスにて前記耐圧容器に収容されている水を加熱して飽和水蒸気が発生し始めた場合に、前記耐圧容器に収容する水の水位を、前記初期水位から、前記飽和水蒸気発生部を構成する前記炉筒と前記第2煙管を水面下に水没させ且つ前記過熱蒸気発生部を構成する前記第1煙管を水面上に露出させる基準水位に低下させ、前記耐圧容器に収容する水の水位をその基準水位に維持する水位制御を行うように構成されている請求項に記載の過熱蒸気発生器。
【請求項7】
前記水位制御において、前記耐圧容器に収容する水の水位を前記初期水位から前記基準水位に低下させる場合に、前記燃焼ガスにて前記耐圧容器に収容されている水を加熱して飽和水蒸気の発生により、及び、前記耐圧容器に収容されている水を排水させる排水手段の作動のいずれか一方又は両者の併用にて前記初期水位から前記基準水位への水位低下を行う請求項に記載の過熱蒸気発生器。
【請求項8】
前記閉空間形成部材には、前記閉空間に飽和水蒸気を導入する飽和水蒸気導入口よりも小さく、且つ、前記閉空間とそれ以外の前記耐圧容器の内部空間との間で水の通流を許容する孔部が形成されている請求項の何れか1項に記載の過熱蒸気発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナーの燃焼により発生した燃焼ガスにて水を加熱して飽和水蒸気を発生させ、水を加熱した後の燃焼ガスにて飽和水蒸気をさらに加熱して過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の過熱蒸気発生器として、例えば、特許文献1には、バーナー燃焼により発生させた燃焼ガスによって水を加熱して飽和水蒸気を発生させる飽和水蒸気発生部と、その蒸気発生部を通過した燃焼ガスによって飽和水蒸気を加熱して過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生部とを筐体内に一体的に備えた過熱蒸気発生器が開示されている。この過熱蒸気発生器によれば飽和水蒸気発生部において、加熱配管を外側から燃焼ガス等で加熱して、加熱配管内に流れる水を加熱して飽和水蒸気が得られており、さらに過熱蒸気発生部において、同じく燃焼ガス等を用いて、その飽和水蒸気を加熱することで過熱蒸気が得られている。ここで、過熱蒸気発生器における飽和水蒸気の加熱は、水を加熱して飽和水蒸気を発生させた燃焼ガスを利用して行なわれるので、省エネルギー化を良好に図ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−32235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の過熱蒸気発生器では、加熱配管内に飽和水蒸気を発生させるための水が導入されるので、水処理が怠られると、加熱配管内にスケールが蓄積して、配管詰まりが発生するという問題があった。また、バーナー燃焼により発生した燃焼ガスは、飽和水蒸気を発生させるための加熱および過熱蒸気を発生させるための加熱に利用されているが、過熱蒸気を発生させた直後に、まだ高温の状態で排気されていた。従って、排気される燃焼ガスの余熱をさらに有効に使用することで、さらなる省エネルギー化を図れる余地があった。
【0005】
また、家庭用や小規模業務用の用途向けに、過熱蒸気発生器の小型化および起動迅速化を行なうことが望まれており、そのためには、熱交換の際の温度差を大きく取って、燃焼ガスを供給することが考えられる。その場合、高温の燃焼ガスに筐体や加熱配管等が晒されることとなり、例えば加熱配管の折返部または加熱配管と筐体との連結部などにおいて大きな熱応力が発生するものとなっていた。このため、加熱配管等にクラックや配管割れなどが発生して、過熱蒸気発生器の耐用年数が短くなるという問題が生じていた。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、配管詰まりが発生せず、燃焼ガスによる加熱により発生する熱応力を抑制できる配管構造で、燃焼ガスの余熱をさらに有効に活用できる過熱蒸気発生器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る過熱蒸気発生器は、
バーナーの燃焼により発生した燃焼ガスにて水を加熱して飽和水蒸気を発生させ、前記水を加熱した後の燃焼ガスにて飽和水蒸気をさらに加熱して過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生器であって、その特徴構成は、
水を収容する円筒状の耐圧容器には、収容された水の水面下に配置されて燃焼ガスを前記耐圧容器の軸方向の一方側から前記耐圧容器の内部に導入して前記軸方向の他方側に向けて流通させる炉筒と、その炉筒を通過した燃焼ガスを前記軸方向の他方側から一方側に向けて流通させる第1煙管と、その第1煙管を通過した燃焼ガスを前記軸方向の一方側から他方側に向けて流通させる第2煙管と、前記炉筒を通過した燃焼ガスを前記第1煙管に案内流通させる第1ヘッダーと、前記第1煙管を通過した燃焼ガスを前記第2煙管に案内流通させる第2ヘッダーとが備えられ、
前記炉筒は、前記耐圧容器の一方側の内壁に連結支持され、
前記第1ヘッダーは、前記炉筒の他方側の端部近傍で炉筒から支持され、前記耐圧容器における前記軸方向の他方側の内壁と前記軸方向に間隔を隔てて非接触状態で配設され、
前記第2ヘッダーは、前記第1ヘッダーと前記第1煙管とを介して、前記炉筒の他方側の端部近傍で炉筒から支持されて前記炉筒を摺動自在に貫通させて設けられており、
前記耐圧容器において、前記第1煙管が前記第2煙管よりも上方に配置されて、
前記第2煙管が、前記第1ヘッダーに対して摺動自在に貫通して設けられている点にある。
【0008】
即ち、この構成では、第1ヘッダーは、炉筒の他方側の端部近傍で炉筒から支持され、第2ヘッダーは、第1ヘッダーと第1煙管を介して、同じく炉筒の他方側の端部近傍で炉筒から支持される。従って、上記特徴構成によれば、水が収容された円筒状の耐圧容器内において、水面下に配置された炉筒の内部に燃焼ガスを導入し、炉筒の内部に燃焼ガスを流通させることによって炉筒の外部の水を加熱して水蒸気を発生させることができる。また、炉筒の内部においては燃焼ガスが流通し、炉筒の外部に水が流通するので、水に起因するスケールの発生により炉筒の内部が詰まることはない。同様に、第1煙管および第2煙管においても内部には燃焼ガスが流通されるので、水に起因するスケールの発生によって第1煙管、第2煙管の内部が詰まることはない。
【0009】
また、第1ヘッダーは、耐圧容器における軸方向の他方側の内壁と軸方向に間隔を隔てて配設されており、これによって、第1ヘッダーと耐圧容器の内壁との間に水が存在することとなるため、この水によって第1ヘッダーを冷却することになり、第1ヘッダーから耐圧容器の内壁への熱伝達を抑制することができ、耐圧容器の内壁の温度上昇を防止することができる。また、第1ヘッダーと耐圧容器の内壁との間に存在する水にて第1ヘッダーを冷却することで、結果的に水が加熱されており、効率よく水蒸気を発生させることができる。
ここで、第1ヘッダーには、高温の燃焼ガスが導入されるため熱膨張が発生する。これにより、第1ヘッダーと耐圧容器の内壁が接続されている場合は熱応力が発生することが考えられる。それに対して、本特徴構成のように、第1ヘッダーが耐圧容器の内壁と間隔を隔てて非接触状態で配設して、上述の第1ヘッダーの熱膨張を許容する構造として、第1ヘッダーと耐圧容器の内壁の間に発生する熱応力の発生をなくし、第1ヘッダー、第1ヘッダーと第1煙管との接合部、及び耐圧容器の内壁における歪み、亀裂、破損等の発生を防止することができる。
【0010】
さらに、炉筒には、高温の燃焼ガスが導入されるために熱膨張が発生する。同様に、第2ヘッダーにおいても燃焼ガスの導入により熱膨張が発生するが、炉筒の下流に位置する第2ヘッダーには比較的低温となった燃焼ガスが導入されるため、それらの熱膨張率は異なるものとなり、炉筒と第2ヘッダーが接続されている場合は熱応力が発生することが考えられる。それに対して、本特徴構成のように、第2ヘッダーは、炉筒を摺動自在に貫通させて設けられていることで、第2ヘッダーおよび炉筒の温度変化に基づく熱膨張を許容して、第2ヘッダーと炉筒との間における熱応力の発生をなくし、第2ヘッダー、第2ヘッダーと各煙管との接合部、及び炉筒における歪み、亀裂、破損等の発生を防止することができる。
【0012】
また、前記第1煙管が前記第2煙管よりも上方に配置されているため、耐圧容器内の燃焼ガスの流通路の構成を、炉筒を通過した燃焼ガスが第1ヘッダーを経由して第2煙管の上方に位置する第1煙管に導かれ、その後に第2ヘッダーを経て第1煙管の下方に位置する第2煙管に導かれる構成とすることができる。これにより、耐圧容器の内部の第2煙管よりも上方の位置で、炉筒を通過した燃焼ガスを第1煙管に流通させることができる。従って、第1煙管内を流通する炉筒を通過した直後の比較的高温の燃焼ガスによって、耐圧容器の内部の第2煙管よりも上方の位置を効率よく加熱することができる。
【0014】
さらに、第2煙管が、第1ヘッダーに対して摺動自在に貫通して設けられている。ここで、第1ヘッダーは、高温の燃焼ガスが導入されると熱膨張が発生する。同様に、第2煙管においても燃焼ガスが導入により熱膨張を発生するが、第1ヘッダーの下流に位置する第2煙管には比較的低温となった燃焼ガスが導入されるため、それらの熱膨張率は異なるものとなり、第1ヘッダーと第2煙管が接続されている場合は熱応力が発生する。それに対して、本特徴構成のように、第2煙管が第1ヘッダーに対して摺動自在に貫通されていることで、第1ヘッダーおよび第2煙管が加熱されることによる熱膨張を許容する構造とされる。これにより、第1ヘッダーと第2煙管との間における熱応力の発生をなくし、少なくとも第1ヘッダーや第2煙管における歪み、亀裂、破損等の発生を防止することができる。
【0015】
本発明に係る過熱蒸気発生器の更なる特徴構成は、前記炉筒が単一に構成され、
飽和水蒸気を加熱して過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生部を構成する前記第1煙管が、前記耐圧容器に収容された水の水面上に配置され、
水を加熱して飽和水蒸気を発生させる飽和水蒸気発生部を構成する前記第2煙管が、前記炉筒とともに前記耐圧容器に収容された水の水面下に配置されている点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、第1煙管は、耐圧容器に収容された水の水面上に配置されて、燃焼ガスにて飽和水蒸気を加熱して過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生部として構成されている。これにより、第1煙管によって飽和水蒸気を加熱して過熱蒸気を発生させることができる。ここで、第1煙管には炉筒を通過した直後の比較的高温の燃焼ガスが流通するため、加熱する飽和水蒸気との温度差が大きくなるため、熱伝達を大きくできて小さな伝熱面積でも所定の過熱蒸気を発生させることができる。
そして、第1煙管の下流に位置する第2煙管は、耐圧容器に収容された水の水面下に配置されて、前記燃焼ガスにて水を加熱して水蒸気を発生させる水蒸気発生部として構成されている。これによって、第2煙管によって水を加熱して飽和水蒸気を発生させることができる。第1煙管における飽和水蒸気の加熱によって温度が低下した燃焼ガスが第2煙管に導入されるものの、その温度は水を加熱して飽和水蒸気を発生させるには十分であるため、その燃焼ガスの保有熱を有効に利用して、効率よく飽和水蒸気を発生させることができる。従って、上述のように第1煙管および第2煙管を構成することで、高い熱効率によって過熱蒸気を発生させることができる。
【0017】
本発明に係る過熱蒸気発生器の更なる特徴構成は、前記耐圧容器の内部において、前記飽和水蒸気発生部と前記過熱蒸気発生部とを区画する区画板を設け、前記区画板で形成された前記過熱蒸気発生部内を流通する飽和水蒸気の流れと前記第1煙管内を流通する燃焼ガスの流れとが対向流を構成する点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、過熱蒸気発生部において、飽和水蒸気の流れと第1煙管内の燃焼ガスの流れとが対向流を構成するので、飽和水蒸気を加熱するために熱交換される燃焼ガスと飽和水蒸気との平均的な温度差が大きくなり、より効果的に燃焼ガスによって飽和水蒸気を加熱できる結果、蒸気を高温とすることができる。
【0019】
本発明に係る過熱蒸気発生器の更なる特徴構成は、前記過熱蒸気発生部において、前記第1煙管に飽和水蒸気の流れを誘導する邪魔板が設けられている点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、第1煙管を貫通させるとともに飽和水蒸気の流れを誘導する邪魔板が過熱蒸気発生部に設けられている。これにより、燃焼ガスの熱が第1煙管を介して邪魔板に伝わる結果、邪魔板の表面からも飽和水蒸気を加熱することができる。つまり、飽和水蒸気への伝熱面積を拡大して、効果的に飽和水蒸気を加熱することができる。さらに、邪魔板により飽和水蒸気の流れを誘導して、その流れを第1煙管と交差させることができ、第1煙管表面での熱交換が促進されて飽和水蒸気に対してより多くの熱が伝えられる結果、高い熱効率を得ることができる。
【0023】
本発明に係る過熱蒸気発生器の更なる特徴構成は、前記過熱蒸気発生部を構成する前記第1煙管の周囲を囲み、飽和水蒸気及び過熱蒸気を通流させる閉空間を形成する閉空間形成部材が備えられ、その閉空間形成部材は、前記耐圧容器の外表面と熱的に遮断されている点にある。
【0024】
第1煙管にて過熱蒸気発生部を構成する場合には、第1煙管の周囲が高温の過熱蒸気(例えば、350℃)となるので、耐圧容器の外表面に直接通じると外気(例えば、25℃)との温度差が大きくなり、それだけ放熱量が大きくなる。その結果、熱損失が大きくなるとともに、蒸気温度の上昇が困難となる。この対策として、例えば、耐圧容器の保温厚みを増す等により保温性能を向上することが考えられるが、耐圧容器の外形寸法が大きくなり大型化を招くとともに、コストアップにも繋がる。そこで、本特徴構成によれば、耐圧容器の外表面と熱的に遮断されている閉空間形成部材を配設するとともに、その閉空間形成部材によって第1煙管の周囲を囲み、飽和水蒸気及び過熱蒸気を通流させる閉空間を形成している。これにより、閉空間内を通流する過熱蒸気が、耐圧容器の外表面に直接通じることを防止することができる。そして、閉空間と耐圧容器の外表面との間には、例えば、飽和水蒸気(例えば125℃)等、過熱蒸気よりも低温の流体を通流させる空間を存在させることができるので、その低温の流体と外気との温度差を小さくできる。したがって、耐圧容器の大型化及びコストアップを招くことなく、放熱量の増大を防止することができ、熱損失を極力小さくできるとともに、蒸気温度の上昇も好適に行うことができる。しかも、第1煙管の周囲は閉空間形成部材にて覆われているので、例えば、耐圧容器の上壁部等から凝縮水が落下する場合でも、その凝縮水が第1煙管や第1煙管の周囲に落下するのを防止でき、凝縮水の落下により蒸気温度が低下するという問題の発生を的確に防止することができる。
【0026】
本発明に係る過熱蒸気発生器の更なる特徴構成は、前記耐圧容器に収容する水の水位を、前記飽和水蒸気発生部を構成する前記炉筒と前記第2煙管とに加え、前記過熱蒸気発生部を構成する前記第1煙管の少なくとも一部も水面下に水没させる初期水位とし、前記燃焼ガスにて前記耐圧容器に収容されている水を加熱して飽和水蒸気が発生し始めた場合に、前記耐圧容器に収容する水の水位を、前記初期水位から、前記飽和水蒸気発生部を構成する前記炉筒と前記第2煙管とを水面下に水没させ且つ前記過熱蒸気発生部を構成する前記第1煙管を水面上に露出させる基準水位に低下させ、前記耐圧容器に収容する水の水位をその基準水位に維持する水位制御を行うように構成されている点にある。
【0027】
この過熱蒸気発生器では、耐圧容器に収容されている水が沸騰して飽和水蒸気を発生し始めるまでに数分程度の時間がかかることから、この間は、過熱蒸気発生部を構成する第1煙管の周囲には飽和水蒸気が通流していない状態となる。よって、いわゆる空焚き状態となってしまい、過熱蒸気発生器の耐久性に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、過熱蒸気発生部を構成する第1煙管内に通流させる燃焼ガスの温度を低下させるために、バーナーの燃焼量を絞る、或いは、バーナーの空気過剰率を上げてバーナーを燃焼させることも考えられるが、過熱蒸気発生部を構成する第1煙管の過熱防止には十分ではなかった。
【0028】
そこで、本特徴構成によれば、まず、耐圧容器に収容する水の水位を初期水位とし、その後、耐圧容器に収容する水の水位を初期水位から基準水位に低下させ、耐圧容器に収容する水の水位を基準水位に維持する水位制御を行うようにしている。初期水位では、過熱蒸気発生部を構成する第1煙管の少なくとも一部も水面下に水没させるので、過熱蒸気発生部を構成する第1煙管内を通流する燃焼ガスにて耐圧容器に収容されている水が加熱されることになり、空焚き状態となるのを防止して、過熱蒸気発生部を構成する第1煙管の過熱防止を適切に行うことができる。
【0029】
ここで、耐圧容器に収容する水を満水状態とし、その満水状態を維持するために耐圧容器に通水しながら燃焼ガスにて水を加熱することで、過熱蒸気発生部を構成する第1煙管の過熱防止を行うことができると考えられる。しかしながら、耐圧容器に通水しながら燃焼ガスにて水を加熱するので、燃焼ガスにて耐圧容器に収容されている水を加熱して飽和水蒸気が発生し始めるまでに時間がかかり、過熱蒸気発生器の運転を開始してから過熱蒸気を発生できるようになるまでの時間が長くなる。しかも、耐圧容器に通水しながら燃焼ガスにて水を加熱する場合には、過熱蒸気を取り出す過熱蒸気取出口等から熱水が噴き出す可能性があり、例えば、過熱蒸気を食品加熱等の用途に用いると、その食品等の被加熱物を損なうことになる。それに対して、本特徴構成によれば、耐圧容器に収容する水の水位を初期水位とするだけで、耐圧容器への通水を行うことなく、燃焼ガスにて耐圧容器に収容されている水を加熱することができるので、過熱蒸気発生器の運転を開始してから過熱蒸気を発生できるようになるまでの時間を短くできるとともに、過熱蒸気を取り出す過熱蒸気取出口等から熱水が噴き出すことも防止できる。
【0030】
このようにして、燃焼ガスにて耐圧容器に収容されている水を加熱して飽和水蒸気が発生し始めた場合に、耐圧容器に収容する水の水位を初期水位から基準水位に低下させ、その基準水位に維持することで、飽和水蒸気発生部にて水を加熱して飽和水蒸気を発生させ、過熱蒸気発生部にて飽和水蒸気を加熱して過熱蒸気を発生させることができる。
【0031】
本発明に係る過熱蒸気発生器の更なる特徴構成は、前記水位制御において、前記耐圧容器に収容する水の水位を前記初期水位から前記基準水位に低下させる場合に、前記燃焼ガスにて前記耐圧容器に収容されている水を加熱して飽和水蒸気の発生により、及び、その前記耐圧容器に収容されている水を排水させる排水手段の作動のいずれか一方又は両者の併用にて、前記初期水位から前記基準水位への水位低下を行う点にある。
【0032】
本特徴構成によれば、燃焼ガスにて耐圧容器に収容されている水を加熱して飽和水蒸気を発生させることにより、耐圧容器に収容する水の水位を低下させることができる。したがって、新たな構成を加えることなく、その飽和水蒸気の発生により初期水位から前記基準水位への水位低下を行うことができる。また、耐圧容器に収容されている水を排水させる排水手段を備える場合には、飽和水蒸気の発生に加えて、その排水手段を作動させることで、初期水位から基準水位への水位低下をいち早く行うことができる。したがって、過熱蒸気発生器の運転を開始してから過熱蒸気を発生できるようになるまでの時間を極力短くすることができる。
【0033】
本発明に係る過熱蒸気発生器の更なる特徴構成は、前記閉空間形成部材には、前記閉空間に飽和水蒸気を導入する飽和水蒸気導入口よりも小さく、且つ、前記閉空間とそれ以外の前記耐圧容器の内部空間との間で水の通流を許容する孔部が形成されている点にある。
【0034】
本特徴構成によれば、閉空間形成部材に孔部を形成するので、例えば、水滴等が閉空間に流入しても、その孔部を通して閉空間からそれ以外の耐圧容器の内部空間に排出することができる。しかも、上述の特徴構成で述べた如く、耐圧容器に収容する水の水位を初期水位とする場合や、耐圧容器に収容する水の水位を初期水位から基準水位に低下させる場合に、閉空間形成部材に形成された孔部を通して、閉空間とそれ以外の耐圧容器の内部空間との間で水を通流させることで、その孔部を活用して水位の調整を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】第1実施形態に係る過熱蒸気発生器の縦断面図
図2図1の過熱蒸気発生器のII−II矢視図
図3】第1実施形態に係る過熱蒸気発生部の外周壁側邪魔板(a)および区画板側邪魔板(b)
図4】第2実施形態に係る過熱蒸気発生器の横断面図
図5参考例に係る過熱蒸気発生器の縦断面図
図6図5の過熱蒸気発生器のVI−VI矢視図
図7】第実施形態に係る過熱蒸気発生器の縦断面図
図8】第実施形態に係る過熱蒸気発生器の縦断面図
図9図8の過熱蒸気発生器のIX−IX矢視図
【発明を実施するための形態】
【0036】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る過熱蒸気発生器の実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は過熱蒸気発生器Dの側面からの縦断面図であり、図2は過熱蒸気発生器Dの横断面図(図1の過熱蒸気発生器のII−II矢視図)である。図1に示すように、過熱蒸気発生器Dは内部に水Wが収容される横置きの円筒状の耐圧容器1と、耐圧容器1内に配設され、燃焼ガスGを流通させる燃焼ガス流路2と、燃焼ガス流路2に供給する燃焼ガスGを発生するバーナーBとで構成されている。
【0037】
燃焼ガス流路2は、炉筒2cと第1ヘッダー2fと第1煙管2dと第2ヘッダー2gと第2煙管2eとを接続して構成されている。図1にて実線矢印にて示すように、炉筒2cは、燃焼ガスGを耐圧容器1の軸方向(図1中左右方向)の一方側(図1中右側、以下「導入口側」と呼ぶ)から耐圧容器1の内部に導入して軸方向の他方側(図1中左側、以下「排出口側」と呼ぶ)に向けて流通させている。第1ヘッダー2fは、炉筒2cを通過した燃焼ガスGをその流動方向を折り返して第1煙管2dに案内流通させている。第1煙管2dは、炉筒2cを通過した燃焼ガスGを排出口側から導入口側に向けて流通させている。第2ヘッダー2gは、第1煙管2dを通過した燃焼ガスGをその流動方向を折り返して第2煙管2eに案内流通させている。第2煙管2eは、第1煙管2dを通過した燃焼ガスGを導入口側から排出口側に向けて流動させている。耐圧容器1の軸方向で排出口側の外部には、排気ヘッダー3が設けられており、第2煙管2eを通過した燃焼ガスGが排気ヘッダー3に供給されて耐圧容器1の外部に排出されている。
このように、燃焼ガス流路2は、耐圧容器1の軸方向で導入口側と排出口側との間で燃焼ガスGを3回流動させる3パス構造に構成されている。
【0038】
耐圧容器1の内部空間を上方側空間と下方側空間とに区画する区画板4が備えられている。その下方側空間が、水Wを加熱して飽和水蒸気Vを発生させる飽和水蒸気発生部VFとして構成され、その上方側空間が飽和水蒸気Vを加熱して過熱蒸気Sを発生させる過熱蒸気発生部SFとして構成されている。区画板4は、上方側空間と下方側空間とを密閉状態で区画するものではなく、耐圧容器1の軸方向の導入口側に下方側空間と上方側空間とを連通する部位Cを備えている。下方側空間である飽和水蒸気発生部VFにて発生した飽和水蒸気Vは、その連通する部位Cを通して上方側空間である過熱蒸気発生部SFに供給自在となっている。
【0039】
飽和水蒸気発生部VFには、基準水位Tの水位まで水Wが貯留され、その基準水位Tよりも下方側に炉筒2cと第2煙管2eとが配設されており、炉筒2cと第2煙管2eの周囲が、水W及び飽和水蒸気Vが通流自在な流路となっている。図2に示すように、炉筒2cは、1つ設けられ、その1つの炉筒2cの周囲を囲むように、複数の第2煙管2eが炉筒2cの周方向に間隔を隔てて設けられている。
過熱蒸気発生部SFには、複数の第1煙管2dが間隔を隔てて設けられており、複数の第1煙管2dの周囲が、飽和水蒸気V及び過熱蒸気Sが通流自在な流路となっている。
このように、区画板4は、耐圧容器1の内部を飽和水蒸気発生部VFと過熱蒸気発生部SFとに区画すると共に、水滴が過熱蒸気発生部SFに侵入するのを防止している。
【0040】
耐圧容器1は、図1に示すように、横置きの円筒状の形状とされ、円筒状の外周壁1aと、その円筒状の外周壁1aの両側面を塞ぐ一対の向かい合う外側壁1b、1cとで構成されている。そして、外周壁1a上方には、耐圧容器1内で発生した過熱蒸気Sを取り出すための過熱蒸気取出口13を備えられ、その他、飽和水蒸気Vを取り出すための飽和水蒸気取出口14、圧力計(図示せず)が取り付けられる圧力計取付口15、温度計(図示せず)が取り付けられる温度計取付口16が設けられている。一方、図2に示すように、外周壁1aの下方には、耐圧容器1内で飽和水蒸気Vを発生させるための水Wを供給する水供給口11および耐圧容器1内の水位を検知、表示する水位計(図示せず)が接続される水位計接続口12が備えられる。水位計は耐圧容器1内において過熱蒸気取出口13との間付近に設けられ、基準水位Tの検出を可能に構成される。また、過熱蒸気取出口13および飽和水蒸気取出口14には図示しない開閉弁が取り付けられている。
また、一対の外側壁1b、1cは、バーナーBでの燃焼により発生させた燃焼ガスGを燃焼ガス流路2に導入する燃焼ガス導入口2aが設けられた導入口側外側壁1bと、燃焼ガス流路2から燃焼ガスGを排出する燃焼ガス排出口2bが設けられた排出口側外側壁1cとで構成される。そして、耐圧容器1は、耐圧容器保持部10の上に搭載されている。その他、耐圧容器1には図示しない過圧逃がし弁および燃焼ガスGを発生させるバーナーBの取付機構などが設けられている。
【0041】
耐圧容器1の導入口側外側壁1bにはバーナーBが設けられており、バーナーBの燃焼により燃焼ガスGが発生し、その燃焼ガスGを燃焼ガス流路2に導入させるように構成されている。なお、バーナーBは着火装置により自動で着火が可能であり、着火後は火力調整装置により火力調整が可能なように構成されている。
【0042】
また、図1に示すように耐圧容器1の内部に設けられた燃焼ガス流路2は、炉筒2c、第1ヘッダー2f、第1煙管2d、第2ヘッダー2gおよび第2煙管2eの順に連通状態で接続されて構成されている。炉筒2cは、耐圧容器1の軸方向の導入口側に位置する導入口側外側壁1bに連結支持されるとともに、その連結支持部において燃焼ガスGの導入口である燃焼ガス導入口2aを形成する。また、第2煙管2eは、耐圧容器1の軸方向の排出口側にある排出口側外側壁1cに連結支持されるとともに、その連結支持において第2煙管2eからの燃焼ガスGの排出口である燃焼ガス排出口2bを形成する。これにより、耐圧容器1の導入口側外側壁1bに設けられた燃焼ガス導入口2aから導入された燃焼ガスGは燃焼ガス流路2内を通流して燃焼ガス排出口2bに導かれて排出される。
また、第1ヘッダー2fは、炉筒2cの排出口側の端部近傍で炉筒2cから支持され、第2ヘッダー2gは、炉筒2cの導入口側の端部近傍で第2煙管2eによって支持されている。そして、第1ヘッダー2fと第2ヘッダー2gの間に第1煙管2dが連結支持されて燃焼ガス流路2が構成されている。
【0043】
炉筒2cは、単一の円管で構成され、耐圧容器1の軸方向に沿って炉筒2cの中心軸を設けつつ、耐圧容器1の中心軸から下方に炉筒2cの中心軸が位置するように配設されている。炉筒2cは、耐圧容器1の導入口側の端部において、導入口側外側壁1bに連結支持されるとともに、燃焼ガス導入口2aを形成する。また、炉筒2cは、導入口側に設けられた第2ヘッダー2gを摺動自在に貫通しつつ排出口側へ延びて、第1ヘッダー2fに接続されている。これにより、燃焼ガス導入口2aから導入された燃焼ガスGは、耐圧容器1の導入口側から排出口側に向けて流通し、燃焼ガス導入口2aから導入された燃焼ガスGを、第1ヘッダー2fまで流通させることができる。
【0044】
第1ヘッダー2fは、耐圧容器1内部の排出口側に設けられ、耐圧容器1の外周壁1aの内面に沿う円筒状外周部である第1ヘッダー外周部2faと、その第1ヘッダー外周部2faの一方端である導入口側外側壁1b側の端部に設けられた第1ヘッダー導入口側面2fbと、他方端である排出口側外側壁1c側の端部に設けられた第1ヘッダー排出口側面2fcとで中空円柱状に形成されている。
そして、第1ヘッダー導入口側面2fbの下方部位には炉筒2cが連通状態で接続されている。一方で、第1ヘッダー導入口側面2fbの上方部位には、耐圧容器1の外周壁1aの内面に沿った6本の第1煙管2dが連通状態で接続されている。このように、第1ヘッダー2fは、炉筒2cから流入した燃焼ガスGを、6本の第1煙管2dに分岐して導入させる案内流通が可能となるように構成される。
【0045】
また、第1ヘッダー2fの第1ヘッダー排出口側面2fcは、耐圧容器1の排出口側外側壁1cの内壁との間に、耐圧容器1の軸方向に間隔を隔てて非接触状態で配設されている。このように、第1ヘッダー排出口側面2fcと排出口側外側壁1cとの間に間隙を設け、その間隙に存在する水Wによって第1ヘッダー排出口側面2fcを冷却することで、第1ヘッダー排出口側面2fcから排出口側外側壁1cへの熱伝達を抑制することができ、排出口側外側壁1cの温度上昇を抑制することができる。そして、結果的に耐圧容器1内の水Wが加熱されることになり、より効果的に飽和水蒸気Vを発生させることができる。また、第1ヘッダー2fと排出口側外側壁1cとの間における熱応力の発生をなくして、排出口側外側壁1cや第1ヘッダー2fに歪み、亀裂、破損等が発生することを防止できる。
さらに、第1ヘッダー2fには、炉筒2cの接続部の周囲に12本の第2煙管2eが摺動自在に貫通される12個の第2煙管用貫通孔2fdが設けられる。これにより、第1ヘッダー2fを貫通する第2煙管2eにおいて発生する熱膨張を許容する構成として、第1ヘッダー2fと第2煙管2eとの間における熱応力の発生をなくして、第1ヘッダー2fや第2煙管2eにおいて歪み、亀裂、破損等が発生することを防止できる。
【0046】
図2に示すように、炉筒2cの上方において、耐圧容器1の外周壁1aの上方内面に沿って6本の第1煙管2dが設けられている。そして、図1に戻って、これらの6本の第1煙管2dによって、第1煙管2dが第1ヘッダー導入口側面2fbと第2ヘッダー排出口側面2gcとが連通状態で接続される。これにより、第1ヘッダー2fから第1煙管2dに導入された燃焼ガスGは、耐圧容器1の排出口側から導入口側に向けて流通し、第2ヘッダー2gに流入する。
【0047】
第2ヘッダー2gは、耐圧容器1の内部の導入口側に設けられ、耐圧容器1の外周壁1aの内面に沿う円筒状外周部である第2ヘッダー外周部2gaと、その第2ヘッダー外周部2gaの一方端である導入口側外側壁1b側の端部に設けられた第2ヘッダー導入口側面2gbと、他方端である排出口側外側壁1c側の端部に設けられた第2ヘッダー排出口側面2gcとで中空円柱状に形成されている。そして、第2ヘッダー排出口側面2gcの上方部位には6本の第1煙管2dが連通状態で接続されている。一方で、第2ヘッダー排出口側面2gcの下方部位には、炉筒2cの外周壁に沿うように設けられた12本の第2煙管2eが連通状態で接続されている。このように、第2ヘッダー2gは、6本の第1煙管2dから流入する燃焼ガスGを合流して、再び12本の第2煙管2eに分岐して流出させる案内流通が可能となるように構成される。
【0048】
また、第2ヘッダー2gの下方部位には、炉筒2cが摺動自在に貫通する炉筒用貫通孔2gdが設けられる。これによって、第2ヘッダー2gを貫通する炉筒2cの温度変化に基づく膨張・収縮を許容して、第2ヘッダー2gと炉筒2cとの間おける熱応力の発生をなくして、第2ヘッダー2gや炉筒2cにおいて歪み、亀裂、破損等が発生することを防止できる。
【0049】
さらに、第2ヘッダー導入口側面2gbは、耐圧容器1の導入口側外側壁1bの内壁との間に、耐圧容器1の軸方向に間隔を隔てて配設されている。これにより、第1ヘッダー2fを貫通する第2煙管2eにおいて発生する熱膨張を許容する構成として、第2ヘッダー2gと導入口側外側壁1bとの間に発生する熱応力の発生をなくして、第2ヘッダー2gや導入口側外側壁1bにおいて歪み、亀裂、破損等が発生することを防止できる。
【0050】
図2に示すように、第2煙管2eが、炉筒2cの外周面に沿って等間隔に12本の円筒管が設けられる。これによって、第2ヘッダー2gと耐圧容器1の排出口側外側壁1cに形成された燃焼ガス排出口2bとが連通状態で接続されている。
第2煙管2eの耐圧容器1の導入口側の端部は、第2ヘッダー排出口側面2gcの上方部位に連通状態で接続されている。第2ヘッダー排出口側面2gcから耐圧容器1の排出口側へ延び、第1ヘッダー2fの第2煙管用貫通孔2fdを貫通して、耐圧容器1の排出口側外側壁1cに接続されて燃焼ガス排出口2bが形成されている。これにより、第2ヘッダー2gから第2煙管2eに導入された燃焼ガスGは、耐圧容器1の導入口側から排出口側に向けて、燃焼ガス排出口2bにまで流通する。
【0051】
12本の第2煙管2eのそれぞれの燃焼ガス排出口2bから排出された燃焼ガスGは、耐圧容器1の排出口側外側壁1cの外面に設けられた排気ヘッダー3により合流し、排気ヘッダー3の上部に設置される排気口3aから排気される。
【0052】
図1および図2に示すように、第1煙管2dは、耐圧容器1に収容された水Wの水面上に配置されて、燃焼ガスGにて飽和水蒸気Vを加熱して過熱蒸気Sを発生させる過熱蒸気発生部SFを構成し、炉筒2cおよび第2煙管2eが、耐圧容器1に収容された水Wの水面下に配置されて、燃焼ガスGにて水Wを加熱して飽和水蒸気Vを発生させる飽和水蒸気発生部VFを構成する。
また、飽和水蒸気Vの発生によって水Wが消費されて耐圧容器1内の水位が下降するが、その水位が水位計(図示せず)により検知されており、水位が基準水位Tより低下すると、加圧ポンプ(図示せず)で加圧された水Wが耐圧容器1内に外周壁1aの下方に設けられた水供給口11から供給されるように構成されている。なお、供給される水Wは軟水器(図示せず)により軟水化処理がされていてもよい。これによって、耐圧容器1内にスケール成分が析出するのを防止することができる。
【0053】
上述の如く、区画板4は、耐圧容器1の内部を飽和水蒸気発生部VFと過熱蒸気発生部SFとを区画するものであり、耐圧容器1の軸方向で排出口側の端部が排出口側外側壁1cに連結支持されており、導入口側の端部が第2ヘッダー排出口側面2gcに連結支持されている。そして、過熱蒸気発生部SFでは、第1煙管2d内の燃焼ガスGにて飽和水蒸気Vを加熱することで過熱蒸気Sを発生させており、図1中実線矢印にて示すように、第1煙管2d内の燃焼ガスGの流れ方向が耐圧容器1の軸方向で排出口側から導入口側となっており、図1中点線矢印にて示すように、飽和水蒸気Vの通流方向が耐圧容器1の軸方向で導入口側から排出口側となっている。これによって、過熱蒸気発生部SFにおいて飽和水蒸気Vの流れと第1煙管2d内の燃焼ガスGの流れとを対向流として熱交換を行うことで過熱蒸気Sを発生させることを可能にしている。
【0054】
また、過熱蒸気発生部SFにおいて、第1煙管2dを貫通させるとともに飽和水蒸気Vの流れに対して略直角に装備される邪魔板5が設けられている。邪魔板5は耐圧容器1の外周壁1aの内側と接合されることで区画板4側に飽和水蒸気Vの流通路V2を有する外周壁側邪魔板5a(図3(a))と、区画板4と接合されることで耐圧容器1の外周壁1a側に流通路V3を有する区画板側邪魔板5b(図3(b))とで構成される。そして、外周壁側邪魔板5aと区画板側邪魔板5bが第1煙管2dの軸方向に沿って交互に設けられている。
また、外周壁側邪魔板5aは第1煙管2dと耐圧容器1の外周壁1aの内側に固定して設けられているが、邪魔板5の厚みは非常に薄く構成され、また、スポット溶接などにより部分的に接続されている。従って、第1煙管2dの熱膨張によって、第1煙管2dとの間において熱応力を発生させるものとはならない。
【0055】
次に、バーナーBの燃焼により発生した燃焼ガスGが燃焼ガス導入口2aにおいて導入されて、排気口3aから排気されるまでの燃焼ガスGの温度変化について説明する。バーナーBの燃焼により発生した高温の燃焼ガスG(例えば1800℃)は、まず燃焼ガス導入口2aから炉筒2cに導入されて、炉筒2cの外周壁を介して耐圧容器1内の水Wと熱交換を行なう。その後、第1ヘッダー2fを経て6本の第1煙管2dに比較的高温(例えば、1000℃)で分流されて導入され、第1煙管2dの外周壁を介して飽和水蒸気Vと熱交換して過熱蒸気S(例えば、350℃)が生成される。その後、燃焼ガスGは第2ヘッダー2gに導入されて合流し、第2ヘッダー2gから流出の際に、再度分流されて水Wの水面下に設けられた12本の第2煙管2eに比較的低温(例えば、760℃)で導入される。そして、第2煙管2eの外周壁を介して水Wと熱交換した後に低温の燃焼ガスG(例えば、220℃)が12箇所の燃焼ガス排出口2bより排出され、排気ヘッダー3において合流して排気口3aより排出される。
【0056】
また、水Wが水供給口11から耐圧容器1内に供給されて、過熱蒸気取出口13から過熱蒸気Sが取り出されるまでの流れについて説明する。まず、水Wは軟水化処理された後、図示しない加圧ポンプで加圧されて耐圧容器1の下部に設けられた水供給口11から基準水位Tとなるように耐圧容器1内に充填される。そして、炉筒2cと第2煙管2eによって加熱されて蒸発して飽和水蒸気Vとなって耐圧容器1の上部に上昇し、水滴が分離された後に、飽和水蒸気導入口V1から過熱蒸気発生部SFに導入される。そして、過熱蒸気発生部SFにおいて、過熱蒸気発生部SFの内部を流れる飽和水蒸気Vと第1煙管2d内の燃焼ガスGとの流れを対向流とした状態での熱交換が行なわれ、飽和水蒸気Vが加熱され、過熱蒸気Sとなって過熱蒸気取出口13から取り出される。
【0057】
過熱蒸気発生部SFでは、第2煙管2eの軸方向に対して略直角方向に配設された複数枚の邪魔板5が第1煙管2dに貫通させて設けられている。複数の邪魔板5を第1煙管2dの外周壁に取り付けることで、過熱蒸気発生部SFを流れる飽和水蒸気Vへの伝熱面積を拡大できるだけでなく、飽和水蒸気Vの流れを誘導する際にその流れに乱流を発生させつつ第1煙管2dと交差させることにより、飽和水蒸気Vと燃焼ガスGとの熱交換が促進されて、効果的に飽和水蒸気Vを加熱することができる。さらに、過熱蒸気発生部SFを流れる飽和水蒸気Vの流れと第1煙管2d内の燃焼ガスGの流れとを対向流とすることで、熱交換される燃焼ガスGの温度と飽和水蒸気Vの温度との平均的な温度差が大きくなる。これによって熱伝達率が向上する結果、より高い熱効率を得ることができる。ちなみに本実施形態における過熱蒸気発生器Dにおいては、高位発熱量(HHV)基準で約80%の熱効率を得ることができる。
【0058】
〔第2実施形態〕
図4は本発明の第2実施形態に係る過熱蒸気発生器Dの横断面図である。本第2実施形態における第1実施形態との相違点は、炉筒2cの上方における2本の第2煙管2eを移動させた点である。その他の構成については、第1実施形態と略同様である。第1実施形態では、炉筒2cの外周壁の周囲に等間隔に12本の第2煙管2eを設けているところ、本第2実施形態では、図4に示すように、炉筒2cの外周上部を除く外周に沿って等間隔に10本の第2煙管2eが配設され、断面視で炉筒2cの外周上部を除く外周に沿って設けられた第2煙管2eの最も上方に位置する左右2本の第2煙管2eの配設位置を変更している。つまり、この左右2本の第2煙管2eの配設位置を、他の10本の第2煙管2eうち一番上方側に位置するものと上下方向の高さが同じになるようにしている。これにより、12本全ての第2煙管2eを基準水位Tよりも下方側に適切に配置することができる。
【0059】
これによって、特に過熱蒸気発生器Dを小型化した場合などにおいて、基準水位Tを下降させることが必要となったときに、第2煙管2eの数を減らすことなく高い熱効率を維持したまま、基準水位Tを下降させることができる。
【0060】
参考例
図5は、参考例における過熱蒸気発生器Dの縦断面図である。図6は、参考例における過熱蒸気発生器Dの横断面図(図5の過熱蒸気発生器DのVI−VI矢視図)である。本参考例における第1実施形態との相違点は、燃焼ガス流路2の第1煙管2dおよび第2煙管2eが耐圧容器1内の基準水位Tとの関係において配設されている位置が異なる点である。つまり、第1実施形態では、第1煙管2dは耐圧容器1内の基準水位Tより上方に配置され、第2煙管2eは基準水位Tより下方に配置されて構成されているが、本参考例では、第1煙管2dは基準水位Tより下方に配置され、第2煙管2eは基準水位Tより上方に配置されて構成されている。
【0061】
従って、本参考例においては、基準水位Tより下方に配置される第1煙管2dおよび炉筒2cが飽和水蒸気発生部VFを構成し、基準水位Tより上方に配置される第2煙管2eが過熱蒸気発生部SFを構成する。
飽和水蒸気発生部VFには、基準水位Tの水位まで水Wが貯留され、その基準水位Tよりも下方側に炉筒2cと第1煙管2dとが配設されており、炉筒2cと第1煙管2dの周囲が、水W及び飽和水蒸気Vが通流自在な流路となっている。図6に示すように、炉筒2cは、1つ設けられ、その1つの炉筒2cの周囲を囲むように、複数の第1煙管2dが炉筒2cの周方向に間隔を隔てて設けられている。
飽和水蒸気発生部VFには、複数の第2煙管2eが間隔を隔てて設けられており、複数の第2煙管2eの周囲が、飽和水蒸気V及び過熱蒸気Sが通流自在な流路となっている。これにより、耐圧容器1内の水Wは、飽和水蒸気発生部VFにおいて、炉筒2cと第1煙管2dによって加熱されて蒸発して飽和水蒸気Vとなって耐圧容器1の上部に上昇し、水滴が分離された後に、飽和水蒸気導入口V1から過熱蒸気発生部SFに導入される。そして、過熱蒸気発生部SFにおいて、飽和水蒸気Vと第2煙管2e内の燃焼ガスGとの流れを対向流とした状態での熱交換が行なわれ、飽和水蒸気Vが加熱され、過熱蒸気Sとなって過熱蒸気取出口13から取り出される。
【0062】
〔第実施形態〕
図7及び図8は、本発明の第実施形態における過熱蒸気発生器Dの縦断面図である。図9は、第実施形態における過熱蒸気発生器Dの横断面図(図8の過熱蒸気発生器DのIX−IX矢視図)である。本第実施形態では、上記第1実施形態において、過熱蒸気発生部SFを構成する第1煙管2dの周囲を囲む閉空間Kを形成する構成を追加するとともに、耐圧容器1内に収容する水の水位を調整する構成を追加している。図7では、耐圧容器1内に収容する水の水位を初期水位T1に調整した場合を示しており、図8では、耐圧容器1内に収容する水の水位を基準水位Tに調整した場合を示している。
【0063】
図8及び図9に示すように、耐圧容器1内に収容する水の水位を基準水位Tに調整した状態において、第1実施形態と同様に、第1煙管2dは、耐圧容器1に収容された水Wの水面上に配置されて、燃焼ガスGにて飽和水蒸気Vを加熱して過熱蒸気Sを発生させる過熱蒸気発生部SFを構成し、炉筒2cおよび第2煙管2eが、耐圧容器1に収容された水Wの水面下に配置されて、燃焼ガスGにて水Wを加熱して飽和水蒸気Vを発生させる飽和水蒸気発生部VFを構成している。
第1煙管2dの周囲は、高温の過熱蒸気(例えば、350℃)が通流するので、その過熱蒸気が耐圧容器1の外表面に直接通じると、外気との温度差が大きくなり、それだけ放熱量が大きくなる。その結果、熱損失が大きくなり、蒸気温度の上昇が困難となる。そこで、本第実施形態では、耐圧容器1の外表面と熱的に遮断されている閉空間形成部材17によって、第1煙管2dの周囲を囲む閉空間Kを形成し、その閉空間K内に飽和水蒸気V及び過熱蒸気Sを通流させている。
【0064】
本第実施形態では、第1実施形態における区画板4に代えて、過熱蒸気発生部SFを構成する第1煙管2dの周囲を囲み、飽和水蒸気V及び過熱蒸気Sを通流させる閉空間Kを形成する閉空間形成部材17を備えている。閉空間形成部材17は、第1煙管2dの周囲を全周に亘って囲む筒状部材17aと、その筒状部材17aの内部空間において耐圧容器1の軸方向の排出口側を閉塞する第1ヘッダー2fと、その筒状部材17aの内部空間において耐圧容器1の軸方向の導入口側を閉塞する第2ヘッダー2gとから構成されている。筒状部材17aが耐圧容器1の外表面と接触しない非接触状態で配設され、その筒状
部材17aの耐圧容器1の軸方向の両端部を、耐圧容器1の外表面と接触しない非接触状態で配設された第1ヘッダー2f及び第2ヘッダー2gに接続することで、閉空間形成部材17を耐圧容器1の外表面と熱的に遮断している。第1煙管2dは、耐圧容器1の上下方向及び横幅方向に並ぶ形態で複数(例えば、図9に示すように、13本)備えており、筒状部材17aはそれら複数の第1煙管2dの全ての周囲を囲むように設けられている。そして、筒状部材17aの排出口側が第1ヘッダー2fに接続されて閉塞され、筒状部材17aの導入口側が第2ヘッダー2gに接続されて閉塞されている。これにより、筒状部材17aと第1ヘッダー2fと第2ヘッダー2gとから構成される閉空間形成部材17によって、複数の第1煙管2dの全ての周囲を囲む閉空間Kが形成されている。ちなみに、耐圧容器1の軸方向の導入口側には、第1実施形態と同様に、炉筒2cや第2煙管2eが位置する下方側空間と第1煙管2dが位置する上方側空間とを連通する部位Cが備えられている。
【0065】
筒状部材17aの上方側には、閉空間Kに飽和水蒸気Vを導入する飽和水蒸気導入口V1が形成されており、飽和水蒸気発生部VFにて発生された飽和水蒸気Vを、この飽和水蒸気導入口V1を通して閉空間K内に供給させるように構成されている。このように、閉空間Kへの飽和水蒸気Vの導入口を筒状部材17aの上方側とすることで、汽水分離の効果が促進されることになる。閉空間Kには、飽和水蒸気Vが通流されており、その飽和水蒸気Vが第1煙管2d内の燃焼ガスGにて加熱されて過熱蒸気Sを発生し、その発生された過熱蒸気Sが閉空間K内を通流している。そして、過熱蒸気取出口13は、閉空間K内に連通接続されており、閉空間K内の過熱蒸気Sが、過熱蒸気取出口13を通して取り出すように構成されている。
【0066】
このようにして、閉空間K内を通流する過熱蒸気Sが、耐圧容器1の外表面に直接通じることを防止することができ、閉空間Kと耐圧容器1の外表面との間には、過熱蒸気Sよりも低温の飽和水蒸気V(例えば、135℃)を通流させる空間を存在させることができるので、その低温の飽和水蒸気V流体と外気との温度差を小さくできる(例えば、過熱蒸気と外気との温度差に比べて、100℃程度小さくできる)。したがって、放熱量の増大を防止することができ、熱損失を極力小さくできるとともに、蒸気温度の上昇も好適に行うことができる。しかも、第1煙管2dの周囲は閉空間形成部材17にて覆われているので、例えば、耐圧容器1の上壁部等から凝縮水が落下する場合でも、その凝縮水が第1煙管2dや第1煙管2dの周囲に落下するのを防止でき、凝縮水の落下により蒸気温度が低下するという問題の発生を的確に防止することができる。
【0067】
筒状部材17aの下方側には、飽和水蒸気導入口V1よりも小さく、且つ、閉空間Kとそれ以外の耐圧容器1の内部空間との間で水の通流を許容する孔部18が形成されている。この孔部18は、筒状部材17aにおいて、耐圧容器1の軸方向の排出口側の1箇所と耐圧容器1の軸方向の導入口側の1箇所との合計2箇所に形成されている。そして、孔部18は、例えば、飽和水蒸気導入口V1の開口面積の1/10程度となっており、直径2mmの円形状に形成されている。
【0068】
本第実施形態では、耐圧容器1に収容する水Wの水位を調整する水位制御部Hが備えられている。水位制御部Hは、まず、図7に示すように、耐圧容器1に収容する水Wの水位を初期水位T1とし、燃焼ガスGにて耐圧容器1に収容されている水Wを加熱して飽和水蒸気Vが発生し始めた場合に、図7から図8に移行させるべく、耐圧容器1に収容する水Wの水位を、初期水位T1から基準水位Tに低下させ、耐圧容器1に収容する水の水位をその基準水位Tに維持する水位制御を行うように構成されている。
【0069】
初期水位T1は、図7に示すように、飽和水蒸気発生部VFを構成する炉筒2cと第2煙管2eとに加え、過熱蒸気発生部SFを構成する第1煙管2dの少なくとも一部も水面下に水没させる水位に設定されている。つまり、第1煙管2dの全部を水面下に位置させるように、第1煙管2dよりも上方側の位置に設定されている。
基準水位Tは、図8に示すように、飽和水蒸気発生部VFを構成する炉筒2cと第2煙管2eとを水面下に水没させ且つ過熱蒸気発生部SFを構成する第1煙管2dを水面上に露出させる水位に設定されている。つまり、第1実施形態でも述べた如く、炉筒2cと第2煙管2eとを水面下に位置させ且つ第1煙管2dを水面上に位置させるように、第1煙管2dと第2煙管2eとの間の位置に設定されている。
【0070】
耐圧容器1内には、耐圧容器1に収容する水Wの水位が初期水位T1であることを検出する第1水位センサ19と、耐圧容器1に収容する水Wの水位が基準水位Tであることを検出する第2水位センサ20とが備えられており、この第1及び第2水位センサ19、20の検出情報が水位制御部Hに入力されている。本第実施形態における過熱蒸気発生器Dでは、耐圧容器1に水Wを給水する給水ポンプPが備えられているとともに、耐圧容器1に収容されている水Wを排水させる排水弁21(排水手段に相当する)も備えられている。水位制御部Hは、第1及び第2水位センサ19、20の検出情報に基づいて、給水ポンプPの作動、及び、排水弁21の開閉を制御することで、水位制御を行うように構成されている。
【0071】
水位制御部Hは、給水ポンプPを作動させることで、水供給口11を通して耐圧容器1内に水Wを供給して、耐圧容器1に収容する水Wの水位を上昇自在に構成されている。また、水位制御部Hは、排水弁21を開弁させることで、耐圧容器1内に収容されている水Wを排水して、耐圧容器1に収容する水Wの水位を低下自在に構成されている。そして、耐圧容器1に収容する水Wの水位の低下については、耐圧容器1に収容されている水Wを燃焼ガス流路2内の燃焼ガスGにて加熱して飽和水蒸気Vを発生させることでも、耐圧容器1に収容する水Wの水位を低下させることができる。
【0072】
上述の如く、筒状部材17aの下方側には、2つの孔部18が形成されていることから、この孔部18により、閉空間Kとそれ以外の耐圧容器1の内部空間との間で水Wの通流が許容されている。これにより、初期水位T1では、図7に示すように、耐圧容器1に収容する水Wの水位の上昇に伴って、孔部18を通して閉空間K内に水Wが通流されて、閉空間Kも水面下に位置する状態となる。逆に、基準水位Tでは、図8に示すように、耐圧容器1に収容する水Wの水位の低下に伴って、孔部18を通して閉空間Kから水Wが排出されて、閉空間Kが水面上に露出する状態となる。
【0073】
本第4実施形態における過熱蒸気発生器Dを運転させるときの動作について説明する。
過熱蒸気発生器Dの運転を開始させる場合に、水位制御部Hは、まず、図7に示すように、第1水位センサ19にて初期水位T1であることを検出するように給水ポンプPを作動させて、耐圧容器1に収容する水Wの水位を初期水位T1に調整する。そして、バーナーBの燃焼を開始して、バーナーBの燃焼により発生した燃焼ガスGを燃焼ガス流路2に通流させる。初期水位T1では、図7に示すように、燃焼ガス流路2における炉筒2c、第1煙管2d、及び、第2煙管2eが水面下に位置しているので、炉筒2c、第1煙管2d、及び、第2煙管2e内を通流する燃焼ガスGが耐圧容器1に収容されている水Wを加熱して飽和水蒸気Vを発生させる。
【0074】
このように、耐圧容器1に収容されている水Wが沸騰して飽和水蒸気Vが発生し始めると、その飽和水蒸気Vの発生により、耐圧容器1に収容する水Wの水位が低下するので、第1水位センサ19にて初期水位T1からの水位低下を検出する。これにより、水位制御部Hは、第1水位センサ19の検出情報から、耐圧容器1に収容する水Wの水位を初期水位T1として耐圧容器1に収容されている水Wを燃焼ガスGにて加熱して飽和水蒸気Vが発生し始めたことを判別できる。水位制御部Hは、飽和水蒸気Vが発生し始めたことを判別した場合に、その飽和水蒸気Vの発生による水位低下に加えて、排水弁21を開弁させて、図7から図8に移行させるべく、耐圧容器1に収容する水Wの水位を初期水位T1から基準水位Tに低下させて、耐圧容器1に収容する水Wの水位を基準水位Tに維持するようにしている。耐圧容器1に収容する水Wの水位が基準水位Tであることについては、第2水位センサ20にて検出することができるので、水位制御部Hは、第2水位センサ20にて基準水位Tを検出するまで、排水弁21を開弁状態に維持しており、第2水位センサ20にて基準水位Tを検出すると、排水弁21を閉弁させている。
【0075】
ここで、耐圧容器1に収容する水Wの水位を初期水位T1として飽和水蒸気Vが発生し始めたことの判別については、例えば、耐圧容器1の圧力を検出する圧力センサを備え、その圧力センサにて耐圧容器1の圧力が上昇したことを検出すると、飽和水蒸気Vが発生し始めたと判別することもできる。また、耐圧容器1の温度を検出する温度センサを備え、その温度センサの検出温度が沸点に達したことを検出すると、飽和水蒸気Vが発生し始めたと判別することもできる。
上述の如く、耐圧容器1に収容する水Wの水位を初期水位T1から基準水位Tに低下させるに当たり、飽和水蒸気Vの発生による水位低下と排水弁21を開弁させることによる水位低下とによって、初期水位T1から基準水位Tに水位低下させているが、例えば、飽和水蒸気Vの発生による水位低下のみ又は排水弁21を開弁させることによる水位低下のみによって、初期水位T1から基準水位Tに水位低下させることもできる。
【0076】
耐圧容器1に収容する水Wの水位を初期水位T1から基準水位Tに低下させた場合には、図8に示すように、燃焼ガス流路2における炉筒2c及び第2煙管2eが水面下に位置しているので、炉筒2c及び第2煙管2e内を通流する燃焼ガスGが耐圧容器1に収容されている水Wを加熱して飽和水蒸気Vを発生させるようにしている。この飽和水蒸気Vの発生により耐圧容器1に収容する水Wの水位が低下することから、水位制御部Hは、第2水位センサ20にて基準水位Tを検出するように給水ポンプPを作動させて、耐圧容器1に収容する水Wの水位を基準水位Tに維持するようにしている。発生した飽和水蒸気Vは、耐圧容器1の軸方向の導入口側にて下方側空間と上方側空間とを連通する部位Cを通して下方側空間から上方側空間に通流し、筒状部材17aの上方側に形成された飽和水蒸気導入口V1を通して閉空間K内に通流されている。そして、閉空間K内において、第1煙管2d内を通流する燃焼ガスGが飽和水蒸気Vを加熱して過熱蒸気Sを発生させ、発生した過熱蒸気Sを過熱蒸気取出口13から取り出している。
【0077】
このようにして、過熱蒸気発生器Dの運転を開始させる場合には、まず、耐圧容器1に収容する水Wの水位を初期水位T1とし、その後、耐圧容器1に収容する水Wの水位を初期水位T1から基準水位Tに低下させ、耐圧容器1に収容する水Wの水位を基準水位Tに維持する水位制御を行うことで、第1煙管2dが空焚き状態となるのを防止して、第1煙管2dの過熱防止を適切に行うことができる。しかも、耐圧容器1に収容する水Wの水位を初期水位T1とするだけで、耐圧容器1への通水を行うことなく、燃焼ガスGにて耐圧容器1に収容されている水Wを加熱することができるので、過熱蒸気発生器Dの運転を開始してから過熱蒸気Sを発生できるようになるまでの時間を短くできるとともに、過熱蒸気Sを取り出す過熱蒸気取出口13等から熱水が噴き出すことも防止できる。
【0078】
〔別実施形態〕
(A)上記実施形態においては、耐圧容器1の両端部に平板状の導入口側外側壁1bおよび排出口側外側壁1cを取り付けて耐圧容器1を構成したが、これに限らず、耐圧容器1内の圧力が高圧となる場合は半球状(いわゆる鏡板状)に成形された導入口側外側壁1bおよび排出口側外側壁1cを取り付けて耐圧容器1を構成してもよい。
【0079】
(B)上記実施形態においては、耐圧容器1の導入口側外側壁1bに燃焼ガスGを発生させるためのバーナーBを設ける構造としたが、これに限らず、炉筒2cの内部にバーナーが設置されていてもよい。
【0080】
(C)上記実施形態においては、耐圧容器1の外周壁1a、導入口側外側壁1bおよび排出口側外側壁1cは断熱材により断熱処理がなされていないが、これに限らず、耐圧容器1に断熱材が取付けられてもよい。
【0081】
(D)上記実施形態においては、過熱蒸気発生部SFを流れる飽和水蒸気Vの流れと燃焼ガスGの流れとを対向流としたが、これに限らず、過熱蒸気発生部SFにおいて飽和水蒸気Vの流れとの燃焼ガスGの流れを同じ方向とする並行流としてもよい。
【0082】
(E)上記実施形態においては、耐圧容器1の導入口側外側壁1bにはバーナーBが設けられ、バーナーBの燃焼により発生した燃焼ガスGを燃焼ガス導入口2aに導入したが、これに限らず、燃焼ガスGの発生装置を別体で設けて、燃焼ガス導入口2aに燃焼ガスGを導入するように構成されていてもよい。
【0083】
(F)上記第実施形態では、図1及び図2を用いて説明した第1実施形態と同様に、第1煙管2dにて過熱蒸気発生部SFを構成するとともに、炉筒2c及び第2煙管2eにて飽和水蒸気発生部VFを構成した過熱蒸気発生器Dにおいて、閉空間形成部材17にて閉空間Kを形成するともに、耐圧容器1に収容する水Wの水位を調整する構成を追加した例を示している。これに代えて、図5及び図6を用いて説明した参考例と同様に、第2煙管2eにて過熱蒸気発生部SFを構成するとともに、炉筒2c及び第1煙管2dにて飽和水蒸気発生部VFを構成した過熱蒸気発生器Dにおいて、閉空間形成部材17にて閉空間Kを形成するともに、耐圧容器1に収容する水Wの水位を調整する構成を追加して実施することもできる。
【0084】
(G)上記第実施形態では、水位制御部Hが、給水ポンプPの作動を制御することで、耐圧容器1に収容する水Wの水位を初期水位T1としているが、例えば、作業者の手動動作によって給水ポンプPを作動させて、耐圧容器1に収容する水Wの水位を初期水位T1とすることもできる。

【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、配管詰まりが発生せず、燃焼ガスによる加熱により発生する熱応力を抑制できる配管構造で、燃焼ガスの余熱をさらに有効に活用できる過熱蒸気発生器を提供することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 耐圧容器
2c 炉筒
2d 第1煙管
2e 第2煙管
2f 第1ヘッダー
2g 第2ヘッダー
4 区画板
5 邪魔板
17 閉空間形成部材
18 孔部
21 排水弁(排水手段)
B バーナー
D 過熱蒸気発生器
G 燃焼ガス
K 閉空間
S 過熱蒸気
SF 過熱蒸気発生部
T 基準水位
T1 初期水位
V 飽和水蒸気
VF 飽和水蒸気発生部
W 水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9