特許第5739231号(P5739231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5739231
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】医療用吸入ガスの供給装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/16 20060101AFI20150604BHJP
   A61M 16/10 20060101ALI20150604BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20150604BHJP
   F24F 6/02 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   A61M16/16 Z
   A61M16/10 B
   C01B13/02 A
   F24F6/02 Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-116599(P2011-116599)
(22)【出願日】2011年5月25日
(65)【公開番号】特開2012-245030(P2012-245030A)
(43)【公開日】2012年12月13日
【審査請求日】2013年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】土屋 寛明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 晶子
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−233821(JP,A)
【文献】 特開平09−070437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/16
A61M 16/10
C01B 13/02
F24F 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加湿用の水が貯留された容器と、上記容器を密閉する蓋部材とを有し、加湿対象である吸入ガスを容器内の上部空間に導入する導入口と、加湿された吸入ガスを上部空間から導出する導出口とが設けられた加湿器を備え、
上記加湿器は、上記導入口の開口面積を絞ることにより、開口を絞られた流路から吹き出す吸入ガスを、細い急速な気流として水面に当て、気流が水面をえぐるように水面を変位させるとともに、水面を掃引して水を蒸発させるように構成されていることを特徴とする医療用吸入ガスの供給装置。
【請求項2】
上記導入口の開口面積が、直径1.0mmの円の面積以上、直径2.5mmの円の面積以下である請求項1記載の医療用吸入ガスの供給装置。
【請求項3】
上記導入口にオリフィスが取り付けられて導入口の開口面積が絞られている請求項1または2記載の医療用吸入ガスの供給装置。
【請求項4】
上記導入口に取り付けるオリフィスの口径が1.0mm以上2.5mm以下である請求項3記載の医療用吸入ガスの供給装置。
【請求項5】
上記吸入ガスは、空気を原料として吸着剤を使用することにより酸素を濃縮した酸素濃縮ガスである請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療用吸入ガスの供給装置。
【請求項6】
導入口の開口面積を絞った導入路に供給する吸入ガスの供給流量を、マスフローコントローラーによって制御する請求項1〜5のいずれか一項に記載の医療用吸入ガスの供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾病治療等の目的で患者に使用される医療用吸入ガスの供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の疾患を治療するため、患者に対してガスを吸入させる吸入療法が施されることがある。例えば、肺ガン、肺気腫、慢性気管支炎、肺炎などにより呼吸器系の機能が低下した患者に対しては、酸素の吸入が行われる。このような酸素吸入療法における酸素ガスの供給源としては酸素ガスボンベ、液体酸素貯槽、圧力変動吸着式(PSA)酸素濃縮装置などが使用される。特に近年では、在宅酸素療法に使われる酸素ガスの供給源としては、圧力変動吸着式の酸素濃縮装置が主流になっている。
【0003】
このような医療用に使われる高純度の酸素ガスは、ボンベや液体酸素から供給されるものについては、露点マイナス55℃以下、即ち水分20.7ppm以下とすることがJISによって定められている。また、圧力変動吸着式(PSA)の医療用酸素濃縮装置から供給される場合、吸着剤であるゼオライトは、水分を強く吸着するので、製造される酸素ガスの湿度は実質的にゼロ%になる。
【0004】
したがって、ボンベ等から供給する酸素ガスを使用する場合でも、ゼオライトを用いた酸素濃縮装置による酸素ガスを使用する場合でも、そのまま吸入させたのでは、吸入者の鼻腔や咽喉が乾燥して強い不快感を与えてしまう。そこで、吸入者の鼻腔や咽喉に不快感を与えず、長期にわたって快適に吸入させるためには、何らかの手段で酸素ガスを加湿することが必要となる。
【0005】
このような酸素ガスの加湿は、医療用酸素濃縮器において一般に、酸素ガスを容器内の精製水に浸漬した多孔体(スパージャー)から噴出し、精製水内に気泡を発生させて加湿する方法(いわゆるバブリング式)が採用されている。
【0006】
ところが、上述したバブリング式の加湿方法には、次にあげるような欠点がある。
(1)気泡の発生と消滅に伴う泡音が耳障りで、特に静かな夜間などには患者に対して相当のストレスを与えてしまう。
(2)水道水ではスパージャーに閉塞が生じるため精製水を使用しなければならず、精製水の入手に手間と費用がかかる。また、精製水を無菌的に管理するのに手間がかかる。
(3)スパージャーのバブルから発生する飛沫が、下流のチューブ配管に凝縮し、流路抵抗や汚染の原因になる。
このように、静謐な環境や夜間において泡音は重大な問題である。また、精製水を使用しなければならないことも、費用と手間の両面からコンプライアンスの足枷になっている。
【0007】
このようなバブリング式加湿器の問題を改善する目的の先行技術文献として、下記の特許文献1〜5が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2637246号公報
【特許文献2】特開平10−15070号公報
【特許文献3】特開平10−201847号公報
【特許文献4】特開2005−34306号公報
【特許文献5】特開平6−233821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1(特許第2637246号公報)は、バブリング式の加湿器を酸素濃縮器とは別の筐体中に配置したものである。バブリング式の加湿器を用いる点において根本的な解決になっておらず、わざわざ別の筐体を準備しなければならないのでコスト的にも極めて不利である。また、騒音値の低い加湿器を用いることになっているものの、それがどのようなものかについて一切言及されていない。
【0010】
上記特許文献2(特開平10−15070号公報)は、水は通さず湿気のみを透過する3層構造の膜を用いて加湿するものである。この方法では、まず3層構造の膜を製作するのが複雑で、それだけでもコスト的に不利である。また、その膜を加湿器に洩れないように装着したり、水を補給したりするのも困難で、構造的に複雑なものが必要であり、コスト面、使い勝手ともに極めて不利である。
【0011】
上記特許文献3(特開平10−201847号公報)は、バブリング式の加湿器内に発生した気泡を、細いパイプを束ねた部材で分割して気泡の破裂音を抑制しようとするものである。これも、破裂音の抑制部材を製作するのが大変であり、気泡の破裂そのものも、完全になくなるわけではない。
【0012】
上記特許文献4(特開2005−34306号公報)は、非バブリング式の加湿器であり、加湿器から供給口までの経路を短くし、容易に洗浄可能にしたものである。このものは、加湿器の構造が非常に複雑で、泡音を抑制するという目的に対してコスト的に見合うものにはならない。
【0013】
上記特許文献5(特開平6−233821号公報)は、加湿容器内の水面に平面状部材を浮かべて蒸発面を狭め、吸入ガスの流量が少ないときにガスが過度に加湿されることを防ぐものである。しかしながら、吸入ガスの流量が多いときには逆に加湿が不十分になるため、加湿器を何らかの手段で温めるなど、蒸発を促進する手段を講じなければならない。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、耳障りな加湿器の泡音を解消するとともに、精製水を使用する必要のない医療用吸引ガスの供給装置を提供することを目的とする。
【0015】
本発明者らは、長年の課題であった加湿器の泡音の改善について鋭意研究した結果、酸素ガスをスパージャーで直接水中に吹き込まなくても、水面に酸素ガスの流れを吹き付けるだけで十分な加湿効果が得られることを見出し、泡音を完全に消し去ることに成功した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の医療用吸引ガスの供給装置は、加湿用の水が貯留された容器と、上記容器を密閉する蓋部材とを有し、加湿対象である吸入ガスを容器内の上部空間に導入する導入口と、加湿された吸入ガスを上部空間から導出する導出口とが設けられた加湿器を備え、
上記加湿器は、上記導入口の開口面積を絞ることにより、開口を絞られた流路から吹き出す吸入ガスを、細い急速な気流として水面に当て、気流が水面をえぐるように水面を変位させるとともに、水面を掃引して水を蒸発させるように構成されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の医療用吸引ガスの供給装置は、上記加湿器は、上記導入口の開口面積を絞ることにより、開口を絞られた流路から吹き出す吸入ガスを、細い急速な気流として水面に当て、気流が水面をえぐるように水面を変位させるとともに、水面を掃引して水を蒸発させるように構成されている。
このため、開口を絞られた流路から吹き出す吸入ガスは、細い急速な流れとなって水面に当たる。この気流は水面をえぐるように変位させるとともに、水面を掃引して効果的に水を蒸発させ、吸入ガスを十分に加湿することができる。水面にできた「えぐれ」のような凹部による変位は、ガスの流れを目視で確認できるという長所も兼ね備える。
【0018】
このように、本発明によれば、泡が全く発生しないので、泡音がしないのは言うまでもない。また、発泡にともなう気液同伴がないので加湿器の2次側に存在するチューブ類の流路に水滴が貯留することもない。したがって、万一加湿器内の水が汚れたり菌などが存在したとしても下流側チューブに移動することがないので、衛生上極めて好ましい。使用する水に関しては、スパージャーを使用しないので無機分の析出による閉塞の問題がなく、精製水を使用する必要もなくなる。
【0019】
本発明において、上記導入口の開口面積が、直径1.0mmの円の面積以上、直径2.5mmの円の面積以下である場合には、吸入ガスを確実に水面に当てて変位させることができ、吸入ガスを確実に加湿するとともに、精製水の使用をなくし、耳障りな加湿器の泡音を解消することができる。
すなわち、吸入ガス導入口の開口面積を絞る簡単な方法は、封止されたパイプの先端に小さな孔、例えば口径1.0mm〜2.5mm程度の円形の孔を穿つことである。孔の形状は円に限らず、四角でも星型でもかまわないが、円形が最も簡単である。このような部材は、プラスチックの射出成形などで簡単に製作することができる。あるいは、市販されている流体工学の言葉でいうところの「オリフィス」を吸入ガス導入口に装着することによっても実現できる。本明細書では、わかりやすくするため、狭められた流路のことを代表して「オリフィス」と表現して説明するが、もちろん市販の部材に限定されるものではなく、先端が狭く絞られた流路口の構造であれば、断面が円形でも方形でも星型でも均等に適用することが可能である。
【0020】
本発明において、上記導入口にオリフィスが取り付けられて導入口の開口面積が絞られている場合には、
市場で容易に入手できるオリフィスを利用して本発明を実現でき、精製水の使用をなくし、耳障りな加湿器の泡音を解消することができる。
【0021】
本発明において、上記導入口に取り付けるオリフィスの口径が1.0mm以上2.5mm以下である場合には、
市場に一般に流通している加湿器において、オリフィスから吹き出す吸入ガスを確実に水面に当てて変位させることができる。このため、吸入ガスを確実に加湿するとともに、精製水の使用をなくし、耳障りな加湿器の泡音を解消することができる。
【0022】
本発明において、上記吸入ガスは、空気を原料として吸着剤を使用することにより酸素を濃縮した酸素濃縮ガスである場合には、
吸着剤で乾燥状態となった酸素濃縮ガスに対して確実に加湿するとともに、精製水の使用をなくし、耳障りな加湿器の泡音を解消することができる。
【0023】
本発明において、導入口の開口面積を絞った導入路に供給する吸入ガスの供給流量を、マスフローコントローラーによって制御する場合には、
導入路の導入口の開口面積が絞られて、加湿器上流の圧力が上昇したとしても、マスフローコントローラーは設定された流量のガスを安定して供給することができるので、治療効果を低下させるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の医療用吸引ガスの供給装置が適用された酸素濃縮装置の一例を示す構成図である。
図2】本発明に使用する加湿器を示す断面図である。
図3】加湿の形式と湿度の経過を示す図である。
図4】流量毎の湿度傾向を示す図である。
図5】オリフィス式加湿器の湿度、温度依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0026】
図1は本発明の一実施形態の医療用吸引ガスの供給装置を適用した医療用酸素濃縮装置のフローシートである。この例では、在宅酸素療法において用いられる2筒式圧力変動吸着法による酸素濃縮装置を示している。
【0027】
すなわち、この実施形態では、治療用等の吸引ガスが、2筒式圧力変動吸着法による酸素濃縮装置で製造された酸素濃縮ガスである例を説明する。すなわち、この例では、上記吸入ガスは、空気を原料として吸着剤を使用することにより酸素を濃縮した酸素濃縮ガスである。
【0028】
この酸素濃縮装置は、原料空気を供給するための圧縮機としてのコンプレッサー3と、上記圧縮機から供給された原料空気中の窒素を吸着して酸素を濃縮するための吸着部としてそれぞれ機能する2本の吸着筒12,13とを備えている。また、上記コンプレッサー3から原料空気を供給する吸着筒12,13を切り替える電磁弁8,9を備えている。そして、吸着筒12,13に原料空気を送り込んで窒素を吸着し、酸素が濃縮された酸素濃縮ガスを酸素取出口25に接続された供給チューブおよびカニューラ26を用いて使用者に供給するようになっている。
【0029】
この酸素濃縮装置では、原料空気は、筐体28に取り付けられた防塵フィルター1と、空気流路の入口部分に設けられた吸気フィルター2によって異物が除去され、コンプレッサー3により加圧されて吸着筒12,13に導入される。コンプレッサー3は、モータ電力や空気の断熱圧縮熱などにより発熱するので、ブロワー4の送風により冷却する。コンプレッサー3で発生した異物はインラインフィルター5で除去する。
【0030】
吸着筒12,13には窒素との親和性が強い吸着剤(ゼオライト)が充填されており、例えば吸着筒12の原料口に原料空気が送り込まれると、吸着筒12の製品口からはゼオライトとの親和性が弱い酸素が先に出てくる。これを酸素濃縮ガスとして酸素バッファータンク19に蓄える。この工程を「酸素濃縮工程(加圧工程)」という。
【0031】
酸素濃縮工程の終盤になり、吸着筒12の製品口から窒素ガスが出てくる前に、原料空気の行先を一方の吸着筒12から他方の吸着筒13に切り替える。各吸着筒12,13には、それぞれに対応するよう電磁弁8,9が設けられている。
【0032】
吸着筒12へ原料空気を送るときは、吸着筒12に対応した電磁弁8が「開」、吸着筒13に対応した電磁弁9が「閉」となるよう切り換え制御する。吸着筒13へ原料空気を送るときは、吸着筒13に対応した電磁弁9が「開」、吸着筒12に対応した電磁弁8が「閉」となるよう切り換え制御する。
【0033】
一方の吸着筒(この説明では12とする)で酸素濃縮工程(加圧工程)を行っている間、前の酸素濃縮工程(加圧工程)が終わった他方の吸着筒(この説明では13とする)では、ゼオライトに窒素が吸着されている。そこで、吸着筒13の圧力を開放して窒素を大気に排出する。続いて、酸素濃縮工程(加圧工程)を行っている吸着筒12で生成された酸素濃縮ガスの一部をパージ弁14を通じて吸着筒13の製品口から導入し、吸着筒13内を酸素で置換する。この一連の工程を「窒素脱着工程(パージ工程)」という。
【0034】
各吸着筒12,13には、それぞれに対応するよう開放弁10,11が設けられ、窒素脱着工程(パージ工程)を制御する。すなわち、吸着筒12で酸素濃縮工程(加圧工程)を行っている間は、開放弁10を「閉」として吸着筒12内の加圧状態を維持する。吸着筒12で窒素脱着工程(パージ工程)を行うときには、開放弁10を「開」とし、吸着された窒素を大気に放出する。同様に、吸着筒13で酸素濃縮工程(加圧工程)を行っている間は、開放弁11を「閉」として吸着筒13内の加圧状態を維持する。吸着筒13で窒素脱着工程(パージ工程)を行うときには、開放弁11を「開」として、吸着された窒素を大気に放出する。吸着筒12,13を大気開放する際の騒音は、排気出口に設けたサイレンサー27で消音する。
【0035】
パージ工程に用いられる酸素濃縮ガスは、酸素濃縮工程(加圧工程)を行っている一方の吸着筒12(または13)の製品口から、窒素脱着工程(パージ工程)を行っている他方の吸着筒13(または12)の製品口へ、パージラインを通じて供給される。パージラインには、直動式のパージ弁14とオリフィス15,16が設けられている。パージ弁14は、パージの時間を正確に制御するために設置され、オリフィス15,16は通過する酸素濃縮ガスの流量を制御するために設置される。
【0036】
製造された酸素濃縮ガスは、酸素バッファータンク19に蓄えられ、減圧弁20で供給圧力が調整され、マスフローコントローラー22で流量を制御し、酸素濃度計23で酸素濃度を計測する。なお、マスフローコントローラー22と酸素濃度計23を異物から保護するためにバクテリアフィルター21が設けられている。
【0037】
また、騒音を発する機器や部品は金属製の防音ボックスの中に収容される。特に大きな騒音を発するのはコンプレッサー3と排気開放部である。ブロワー4の運転音とコンプレッサー3への吸気音がそれについで大きい。ブロワー4は、外気をコンプレッサー3に当てて冷却するものなので、コンプレッサー3と同居させることはできない。吸気フィルター2も酸素の少ない排気開放部と同居させることができない。従って、防音ボックスを2部屋に区分し、第1防音ボックス29にはコンプレッサー3と排気開放部を収容し、第2防音ボックス30にはブロワー4と吸気フィルター2を収容する。電磁弁8,9は、この例では、温度とスペースの関係から第2防音ボックス30に収容している。装置全体は木材とプラスチックから構築される筐体28に収納される。
【0038】
製造された酸素濃縮ガスは絶乾燥状態であるため、加湿器24で湿度を与え、カニューラ26を通じて使用に供される。上記加湿器24は、酸素濃度計23で酸素濃度が計測された酸素濃縮ガスを導入して加湿する。
【0039】
図2は、上記加湿器24を示す断面図である。
【0040】
この加湿器24は、加湿用の水31が貯留された容器32が蓋部材33で密閉され、加湿対象の吸入ガスである酸素濃縮ガスを容器32内の上部空間34に導入する導入路35と、加湿された酸素濃縮ガスを上部空間34から導出する導出路36とが設けられている。この例では、上記導入路35および導出路36は、蓋部材33に設けられている。
【0041】
上記加湿器24は、上記導入路35の導入口の開口面積を絞ることにより、導入される吸入ガスの流速をあげて、容器32内の水面37にガス流による変位を生じさせるように構成されている。
【0042】
より詳しく説明すると、この例では、上記導入路35の先端部に、オリフィス38が取り付けられて導入口の開口面積が絞られている。
【0043】
上記オリフィス38を取り付けた導入路35は、酸素濃縮ガスのガス流が水面37に当たるように設置する。水面37にガス流が斜めに当たるようにしても良いが、垂直に当たる方が構造上も簡単で効果的である。これにより、容器32内の水面37にガス流によって変位(この例では凹部37a)を生じさせる。
【0044】
上記導入路35に取り付けるオリフィス38の口径は、1.0mm以上2.5mm以下とするのが好ましい。2.5mmを超えると、一般に市場に流通しているスパージャー式加湿器の容器サイズにおいて、酸素濃縮ガスのガス流が水面37に当たる強さが弱くなる場合があり、十分な加湿効果を得られなくなるおそれがあるからである。また、1.0mm未満では、治療に必要なだけの酸素濃縮ガスの流量を確保するために、高圧を要することとなってしまい、設備的に現実的でなくなるからである。
【0045】
この実施形態の医療用吸入ガスの供給装置では、導入口の開口面積を絞った導入路35に供給する吸入ガスの供給流量を、マスフローコントローラー22によって制御するようになっている。一方、口径の異なる複数個のオリフィスを用いる流量制御装置も広く使用されている。このオリフィス式流量制御装置が正しく作動するための前提は、オリフィスの前後の差圧が一定でなければならないということである。差圧一定であれば、ガスの流量はオリフィスの開口面積に比例する。本発明の加湿器は、ガスの導入流路を絞るので当然ながら加湿器上流の圧力が上昇する。加湿器上流は上述したオリフィス式流量制御装置の下流に相当するので、必然的にオリフィス式流量制御装置のオリフィス前後の差圧が小さくなってしまい、吸入ガスの流量も低下する。吸入ガスの流量をマスフローコントローラー22で制御するようにすれば、上記のような流量低下の心配がなくなる。
【0046】
このように、導入口の開口面積をオリフィス38で絞って、水面37にガス流を直接当てると、単なるフローに較べて湿度は約20%上昇し、例えば5L/minの酸素ガス流量のときには、吸入に最も適した湿度(48%)に加湿される。オリフィス38としては、具体的には、例えば孔径1.5mmの株式会社PISCO製のオリフィスPC6−01を使うことができるが、もちろんこれに限定するものではない。
【0047】
なお、オリフィス式の加湿器24は、上述したように、市販のオリフィスを加湿器24の導入口に装着することで作製することができるし、望む口径の細孔を持つ部品をプラスチックの成形で作製することもできる。
【実施例】
【0048】
つぎに、実施例について説明する。
【0049】
試験には株式会社PISCO製のオリフィスPC6−01を使用した。加湿器24の容器32には、内径70mmのプラスチック成型容器を用い、上のレベルラインまで水を入れたときの水位の高さは58mm、水31の保持量は約220gである。
【0050】
1.加湿器の音
比較例としてスパージャー式とフロー式、実施例としてオリフィス式を使用し、酸素濃縮装置からの酸素ガスを加湿する際の加湿器の発する音を測定した。
◆スパージャー式:多孔体ヘッドの寸法 外径14mm、有効長15mm、多孔体平均細孔径50μm
◆フロー式: パイプ内径:9mm
※フロー式とはスパージャーもオリフィスも具備せず加湿器蓋の酸素ガス導入部(直径9mm)から直接加湿器内に酸素ガスを導入する方法である。
◆オリフィス式:オリフィス内径:1.5mm
【0051】
〔試験条件〕
酸素ガス流量:5L/min, 3L/min
測定条件:簡易防音室において、距離40cm、高さ60cmの地点で騒音測定
騒音計:RION NA−29 Laeq A特性Fast 26秒間の平均値
【0052】
結果を下記の表1に示す。スパージャー式と較べてオリフィス式加湿器の運転音は断然小さい。フロー式は5L/minの流量でも、直径9mmの孔から流速13cm/secという緩やかな流れなので、事実上音はしない。防音室の暗騒音と同じレベルである。フロー式と較べてもオリフィス式の騒音値は遜色なく、静かである。
【0053】
【表1】
【0054】
2.オリフィス式の加湿能力
音が静かでも、加湿能力が十分でなければ何の意味もない。そこで、5L/minの条件においてスパージャー式、オリフィス式、フロー式の3種の加湿能力を比較した。
【0055】
〔稼働条件〕
環境:恒温室 21℃
流量:酸素ガス 5L/min
加湿器は水がなくなるまで稼働した。
【0056】
結果を図3および表2に示す。
オリフィス式加湿法では40%以上の湿度を72時間(3日)維持した。容器に水が残っている間の湿度はほとんど一定で、その間の平均湿度は48%であった。
【0057】
スパージャー式加湿法は加湿能力が高く、平均湿度60%を54時間維持した。しかし、泡立ちは終始激しく、特に初期においては飛沫同伴の恐れも窺われた。また、開始35時間辺りから湿度が下がり始める傾向があった。これは水面が下がり、気泡が水と接触する時間が少なくなった為であろうと考えられる。
【0058】
一方、オリフィス式では水面が下がってもガス流が水面を掃引する構図に変わりはないので湿度は下がらない。むしろ、理由はよくわからないが水量が50%を切る辺りに湿度の極大があるように見える。
【0059】
フロー式では湿度が低く、平均28%にしかならなかった。これは乾燥注意報のレベルなので加湿能力不十分と判断される。湿度がだんだん下がっていくのは、水面の低下と共にガス流が水面まで届きにくくなっていることを表している。
【0060】
【表2】
【0061】
3.オリフィス式の加湿能力、流量との関係
次に、酸素ガスの流量とオリフィス式の加湿能力を調べた。
〔試験条件〕
環境:恒温室 20℃
流量:酸素ガス 5L/min, 3L/min, 1L/min
加湿器は水がなくなるまで稼働した。
【0062】
結果を図4に示す。
5L/minでの加湿性能は前述の通り(平均48%)である。
3L/minでは102時間まで湿度50%以上を維持し、その間の平均湿度は54%であった。加湿能力としては十分と言える。
1L/minの場合には湿度は非常に高く10日間、240時間の間68%以上を維持できる。10日間の平均湿度は75%であった。
どのような酸素流量でもオリフィス式は十分に加湿できることが確認された。
【0063】
4.オリフィス式加湿器の温度特性
加湿器の湿度は温度に依存する。経験的に温度が上がると湿度は下がり、温度が下がると湿度が上がることがわかっている。そこで、温度と湿度の関係を調べた。
試験は10℃から5℃刻みで35℃まで湿度を測定した。測定においては環境温度が設定温度に到達した後、5時間後の湿度を測定した。
【0064】
〔試験条件〕
環境温度:10、15、20、25、30、35℃
加湿形式:オリフィス式、オリフィス径 1.5mm
流量:3L/min
【0065】
結果を図5に示す。
加湿器の湿度は環境温度の上昇とともに低下する。
その理由は次のように考えられる。すなわち、水の蒸発速度は温度の上昇と共に増加するため、水面を一定速度で流れる気体に含まれる水蒸気の量は温度の上昇と共に増加する。一方、飽和水蒸気量、即ち単位体積に含まれる最大の水蒸気量も温度の上昇と共に増加する。両者を較べると、水の蒸発速度の増加率は飽和水蒸気量の増加率よりも小さい。相対湿度は実際の水蒸気量を飽和水蒸気量で割り算したものであるから、実際の水蒸気量が増加しているにもかかわらず、見かけの相対湿度が温度の上昇と共に低下するのである。
【0066】
5.オリフィス式の加湿能力、オリフィスの口径との関係
オリフィスの口径を変えて加湿器の湿度を調べた。
〔試験条件〕
環境温度: 20℃
酸素ガス流量: 3L/min
加湿器の水位: 60%(上下のレベルラインの下から60%)
【0067】
結果を表3に示す。
オリフィスの口径1.0mmから2.5mmまで総て適切な湿度に制御された。オリフィスの口径が小さい方が湿度は高い。
【0068】
【表3】
【0069】
以上のように、本実施形態の医療用吸入ガスの供給装置では、下記の効果を奏する。
1.泡音がしない。
2.適切な湿度に加湿できる。
3.精製水を使用する必要がない。水道水を使うことができる。
4.スパージャーの飛沫同伴や過剰加湿に起因する2次側チューブ管への水滴の貯留や汚染がない。
5.水面がえぐれるのでガスの流れが目視で確認できる。
6.現実的に簡単に実施できる。先願発明と較べて断然シンプルでコストがかからない。
7.スパージャーの閉塞問題が解消する。
8.フローほど低くなく、スパージャーほど高くなく、吸入に最も適した湿度になる。
【符号の説明】
【0070】
1 防塵フィルター
2 吸気フィルター
3 コンプレッサー
4 ブロワー
5 インラインフィルター
8 電磁弁
9 電磁弁
10 開放弁
11 開放弁
12 吸着筒
13 吸着筒
14 パージ弁
15 オリフィス
16 オリフィス
19 酸素バッファータンク
20 減圧弁
21 バクテリアフィルター
22 マスフローコントローラー
23 酸素濃度計
24 加湿器
25 酸素取出口
26 カニューラ
27 サイレンサー
28 筐体
29 第1防音ボックス
30 第2防音ボックス
31 水
32 容器
33 蓋部材
34 上部空間
35 導入路
36 導出路
37 水面
37a 凹部
38 オリフィス
図1
図2
図3
図4
図5