(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5739318
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】トンネル用セグメントの止水構造及びトンネル用セグメントの施工方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/38 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
E21D11/38 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-280002(P2011-280002)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-129995(P2013-129995A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106726
【氏名又は名称】シーアイ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】神宮 啓介
(72)【発明者】
【氏名】北川 悟
(72)【発明者】
【氏名】宮野 真人
(72)【発明者】
【氏名】岸本 修
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−023541(JP,A)
【文献】
特開平06−158998(JP,A)
【文献】
特開2011−144569(JP,A)
【文献】
特開平08−232279(JP,A)
【文献】
米国特許第05390939(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01116766(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル用セグメントの接合面に平行に形成される深さの深い地山側凹溝及び深さの浅い坑道側凹溝と、
前記接合面に形成されて前記地山側凹溝と前記坑道側凹溝とを接続し前記坑道側凹溝と同じ深さの縦溝と、
前記地山側凹溝、前記坑道側凹溝に応じて設けられそれぞれの溝幅よりも小さい幅寸法で形成される主シール材、副シール材と、
前記副シール材と同じ高さで前記副シール材に接続して前記縦溝に設けられる縦シール材と、
前記地山側凹溝に設けられ前記縦シール材と前記主シール材を接続するとともに、該主シール材または前記縦シール材と同じ高さとされ、前記縦溝と前記地山側凹溝との段差空間部に充填される補助シール材と、
を具備することを特徴とするトンネル用セグメントの止水構造。
【請求項2】
請求項1記載のトンネル用セグメントの止水構造であって、
前記縦シール材と前記補助シール材とが一体に形成されていることを特徴とするトンネル用セグメントの止水構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載のトンネル用セグメントの止水構造であって、
前記副シール材と前記縦シール材とが同一の形状であることを特徴とするトンネル用セグメントの止水構造。
【請求項4】
トンネル用セグメントの接合面に形成された深さの異なる平行な地山側凹溝と坑道側凹溝とに応じ主シール材と副シール材とを貼着する工程と、
前記接合面に形成されて前記地山側凹溝と前記坑道側凹溝とを接続し前記坑道側凹溝と同じ深さの縦溝に前記副シール材と同じ高さの縦シール材を前記副シール材に接続して貼着する工程と、
前記縦溝と前記地山側凹溝との段差空間部に充填される充填形状部を有する補助シール材を前記地山側凹溝に貼着しながら前記縦シール材と前記主シール材とを接続する工程と、
を含むことを特徴とするトンネル用セグメントの施工方法。
【請求項5】
請求項4記載のトンネル用セグメントの施工方法であって、
前記縦シール材と一体に形成された前記補助シール材を前記縦シール材と同時に貼着することを特徴とするトンネル用セグメントの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルを構築する際に使用される土木工事用部材であるセグメントの接合間となる目地を止水処理するシール材を備えたトンネル用セグメントの止水構造及びトンネル用セグメントの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、市街地などの地下に掘削されるシールドトンネルや、大深度トンネルを構築するシールドトンネルの工事材料には、ユニット化された多数のセグメントが使用される。坑道の地山からの湧水が坑道内に漏水することを防止するために、セグメント同士の接合面の間にはシール材が設けられる。シール材には、水膨張性材料、例えば高吸収性樹脂と、合成ゴムとが混合成形加硫されてなる材料等が用いられる。シール材を用いたセグメントのシール構造では、それぞれの接合面において、シール材が、地山側と坑道内側とで互いに平行に貼着され、二重の止水構造とされる。
【0003】
上記のシール構造では、セグメントの成形不良部分や、シール材の貼付不良、シール材の成形不良部分、シール材の欠損などがある場合、施工直後には発見されずに、その後に微少な浸水が起きてしまうことがある。通常、地山側シール材に、このような浸水があっても、坑道内側シール材により、坑道内への浸水は防がれ、両シール材間で伝わり、トンネル側方の排水部に導かれる。ところが、両シール材間を、トンネルの長手方向に徐々に伝わる浸水は、いずれかの位置で坑道内側シール材に上記と同様の不具合があると、坑道内側へ漏水してしまう。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に開示されるように、
図5に示すセグメント501の接合面503に主シール材505を2本以上平行に貼付する。この平行に貼付した主シール材505に加えて、さらにこれらを交差して連結する縦シール材507を貼付した工事用セグメント509が提案されている。主シール材505は、接合面503に形成されたシール材用溝511に貼着される。この工事用セグメント509によれば、セグメント501の接合面503よりの漏水を極めて少なくできる。また万一漏水が生じた場合もその特定が容易となり、補修箇所が少なくてすむ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−158998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、地山側からの坑道内への浸水を防ぎ、止水性を向上させるために、2本の主シール材505のうち、特に地山側のシール材のボリュームを大きいもの、すなわち断面形状を大きくすることが行われている。従って、地山側の主シール材505を収容するシール材用溝511は、坑道内側のシール材用溝511よりも大きく深くなる。すると、縦シール材507を用いる場合、縦シール材507の貼着面と、地山側のシール材用溝511との間には、段差が生じる。この段差は、中空部となって残り、縦シール材507の止水性能を低下させる。これに対し、全ての段差を現場施工によるシーリング材の充填や塗布によって解消することは極めて煩雑であり、耐久性や施工性を低下させる。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、異なる厚みのシール材を使用し、それらシール材を収容する凹溝同士間に段差が生じるシール構造であっても、止水性が向上し、施工が良好なトンネル用セグメントの止水構造及びトンネル用セグメントの施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のトンネル用セグメントの止水構造は、トンネル用セグメントの接合面15に平行に形成される深さの深い地山側凹溝29及び深さの浅い坑道側凹溝31と、
前記接合面15に形成されて前記地山側凹溝29と前記坑道側凹溝31とを接続し前記坑道側凹溝31と同じ深さの縦溝33と、
前記地山側凹溝29、前記坑道側凹溝31に応じて設けられそれぞれの溝幅よりも小さい幅寸法で形成される主シール材37、副シール材39と、
前記副シール材39と同じ高さで前記副シール材39に接続して前記縦溝33に設けられる縦シール材23と、
前記地山側凹溝29に設けられ前記縦シール材23と前記主シール材37を接続するとともに、該主シール材37または前記縦シール材23と同じ高さとされ、前記縦溝33と前記地山側凹溝29との段差空間部41に充填される補助シール材25と、
を具備することを特徴とする。
【0009】
このトンネル用セグメントの止水構造では、地山側凹溝29に主シール材37が貼着され、縦溝33に縦シール材23が貼着される。縦溝33と地山側凹溝29とには段差53があることから、縦溝33から縦シール材23を突出させて主シール材37に当接すれば、地山側凹溝29には主シール材37と縦シール材23とによって囲まれる段差空間部41が形成される。本止水構造では、この段差空間部41に充填される充填形状部43を具備した補助シール材25を縦シール材23と主シール材37との間に介装させる。これにより、補助シール材25によって縦シール材23と主シール材37とが接続されると同時に、段差空間部41が塞がれることになる。なお、補助シール材25は、主シール材37と同じ高さ、または縦シール材23と同じ高さとされて形成される。
【0010】
本発明の請求項2記載のトンネル用セグメントの止水構造は、請求項1記載のトンネル用セグメントの止水構造であって、
前記縦シール材23と前記補助シール材25とが一体に形成されていることを特徴とする。
【0011】
このトンネル用セグメントの止水構造では、部品点数が少なくなり、部品管理が簡単になるとともに、補助シール材25の紛失も防止される。
【0012】
本発明の請求項3記載のトンネル用セグメントの止水構造は、請求項1又は2記載のトンネル用セグメントの止水構造であって、
前記副シール材39と前記縦シール材23とが同一の形状であることを特徴とする。
【0013】
このトンネル用セグメントの止水構造では、交差する副シール材39と縦シール材23との現場接続が不要となり、止水信頼性が向上する。
【0014】
本発明の請求項4記載のトンネル用セグメントの施工方法は、トンネル用セグメントの接合面15に形成された深さの異なる平行な地山側凹溝29と坑道側凹溝31とに応じ主シール材37と副シール材39とを貼着する工程と、
前記接合面15に形成されて前記地山側凹溝29と前記坑道側凹溝31とを接続し前記坑道側凹溝31と同じ深さの縦溝33に前記副シール材39と同じ高さの縦シール材23を前記副シール材39に接続して貼着する工程と、
前記縦溝33と前記地山側凹溝29との段差空間部41に充填される充填形状部43を有する補助シール材25を前記地山側凹溝29に貼着しながら前記縦シール材23と前記主シール材37とを接続する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0015】
このトンネル用セグメントの施工方法では、深さの異なる地山側凹溝29と坑道側凹溝31とに主シール材37と副シール材39とが貼着される。坑道側凹溝31と同じ深さの縦溝33に、縦シール材23が副シール材39と接続して貼着される。縦シール材23と主シール材37との間に補助シール材25が貼着されると、縦シール材23と主シール材37とが接続されると同時に、深さの異なる縦溝33と地山側凹溝29とによって生じている段差空間部41が補助シール材25の充填形状部43によって塞がれる。
【0016】
本発明の請求項5記載のトンネル用セグメントの施工方法は、請求項4記載のトンネル用セグメントの施工方法であって、
前記縦シール材23と一体に形成された前記補助シール材25を前記縦シール材23と同時に貼着することを特徴とする。
【0017】
このトンネル用セグメントの施工方法では、一回の貼着作業で、縦溝33と段差空間部41とに縦シール材23と補助シール材25とが貼着される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る請求項1記載のトンネル用セグメントの止水構造によれば、異なる厚みとなる断面形状の異なるシール材を使用し、それらシール材を収容する凹溝同士間に段差が生じるシール構造であっても、止水性が向上し、また、施工性が良好となる。
【0019】
本発明に係る請求項2記載のトンネル用セグメントの止水構造によれば、縦シール材と補助シール材とが一体となることで、部品点数を少なくできるとともに、縦シール材と補助シール材との間の浸水を確実に防止できる。
【0020】
本発明に係る請求項3記載のトンネル用セグメントの止水構造によれば、副シール材、縦シール材及び補助シール材が一体となる。これにより、さらに部品点数を少なくできるともに、副シール材と縦シール材との間、及び縦シール材と補助シール材との間の浸水を確実に防止できる。
【0021】
本発明に係る請求項4記載のトンネル用セグメントの施工方法によれば、異なる厚みのシール材を使用し、それらシール材を収容する凹溝同士間に段差が生じるシール構造において、止水性を向上させ、容易に施工できる。
【0022】
本発明に係る請求項5記載のトンネル用セグメントの施工方法によれば、縦シール材を貼着すると同時に補助シール材を位置決め固定でき、施工がさらに容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る止水構造を有するトンネル用セグメントの斜視図である。
【
図2】(a)は
図1に示した縦溝近傍の要部拡大平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。
【
図3】
図2(a)に示した要部の分解斜視図である。
【
図4】(a)は
図2(b)の縦シール材及び補助シール材の貼着前の拡大図、(b)は他の例の補助シール材の貼着前の拡大図である。
【
図5】(a)は従来の止水構造を有するトンネル用セグメントの斜視図、(b)は(a)の縦シール材近傍の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る止水構造を有するトンネル用セグメントの斜視図である。
トンネル用セグメント(以下、単に「セグメント11」と称す。)は、湾曲した略矩形板状に形成され、内面の周囲近傍に取付凹部13が凹設され、この取付凹部13と接合面15とを貫通する固定穴17を備える。接合面15は、周壁回りに沿った前後のリング面19と、長さ方向に沿った上下のピース面21とでなる。
【0025】
図2(a)は
図1に示した縦溝近傍の要部拡大平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図、
図3は
図2(a)に示した要部の分解斜視図、
図4は
図2(b)の縦シール材23及び補助シール材25の貼着前の拡大図である。
セグメント11の接合面15におけるコーナー部27を挟み隣接するリング面19とピース面21には、
図3に示すように、深さの深い地山側凹溝29及び深さの浅い坑道側凹溝31とが平行に形成されている。
【0026】
リング面19とピース面21とにおける地山側凹溝29と坑道側凹溝31との間には、これらに直交する方向を長手方向とする縦溝33が形成される。縦溝33は、地山側凹溝29と坑道側凹溝31とを接続し、坑道側凹溝31と同じ深さに形成される。地山側凹溝29、坑道側凹溝31、及び縦溝33は、溝開口方向に向かって溝幅が徐々に広くなる溝対向内壁面35(
図4参照)が逆ハ字状に傾斜して形成される。
【0027】
セグメント11の接合面15には、弾性を有する帯状シール材が、連続した環状になるよう貼着される。帯状シール材は、主シール材37と副シール材39とで対となって構成される。主シール材37は、地山側凹溝29に、副シール材39は坑道側凹溝31にそれぞれ貼着される。主シール材37と副シール材39とは、
図2(b)に示すように、接合面15からの高さが略等しくなるようにして地山側凹溝29、坑道側凹溝31に応じて設けられ、
図2(c)に示すように、それぞれの溝幅M1、溝幅M2よりも小さい幅寸法W1、幅寸法W2で形成される。この寸法差によって生じる隙間は、圧縮変形や、吸水により膨張した主シール材37、副シール材39自体によって塞がれる。つまり、この隙間はシール材潰れ代、或いは圧縮変形代の収容スペースとなっている。
【0028】
これら主シール材37及び副シール材39は、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴムや天然ゴム等のゴム成分に、アクリル酸系、ウレタン系、イソブチレン−無水マイレン酸系などの水膨張性樹脂と無機充填材や加硫剤を配合した水膨張性組成物を、所定断面形状例えば略台形状に押出成形したものとされる。また、主シール材37及び副シール材39は、底面が接着面とされ、底面の中央部に非水膨張部38,40が形成されている。
【0029】
地山側凹溝29には、副シール材39と同じ高さで、副シール材39に接続する縦シール材23が設けられる。縦シール材23は、本実施の形態では、副シール材39と同一形状のものが使用される。
【0030】
縦シール材23と主シール材37との間には補助シール材25が貼着される。補助シール材25は、主シール材37または縦シール材23と同じ高さとなるようにして地山側凹溝29に設けられ、縦シール材23と主シール材37を接続するとともに、縦溝33と地山側凹溝29との段差空間部41に充填される充填形状部43を有する。段差空間部41は、
図4に示すように、断面台形状の主シール材37の一側面45と、地山側凹溝29の底面及び一内壁面47と、縦溝33の底面延長面49と、によって囲まれる逆台形状の間隙である。充填形状部43は、この間隙に一致する形状で形成される。本実施の形態では、補助シール材25は、主シール材37と同じ高さとなるよう形成され、好ましくは主シール材37を素材とし、これを短尺に形成して得られ、主シール材37の一側面45と同等の傾斜面を有し、且つ充填形状部43を垂設した形状となっている。縦シール材23は、補助シール材25が接続される面を垂直に形成する場合、対向する補助シール材25の面も垂直に形成される。なお、縦シール材23の外形状から補助シール材26を形成することとしてもよく、この場合、補助シール材26は、短尺に形成した縦シール材片51の下面に、充填形状部43を垂設して形成することができる(
図4(b)参照)。
【0031】
補助シール材25は、水膨張性素材からなることが好ましい。段差空間部41に浸水が生じると、水に接した補助シール材25が膨張し、充填形状部43が段差空間部41に充満して浸水を生じさせる空間が排除される。これにより、縦シール材23を通過しようとする浸水をより確実に防止できる。
【0032】
なお、縦シール材23と補助シール材25とは、一体に形成されていてもよい。縦シール材23と補助シール材25とを一体に形成することで、部品点数が少なくなり、部品管理が簡単になるとともに、補助シール材25の紛失も防止される。これに加え、縦シール材23と補助シール材25との間の浸水を確実に防止できる。
【0033】
また、副シール材39と縦シール材23とは、一体に形成されていてもよい。副シール材39と、補助シール材25の設けられた縦シール材23とを一体に形成することで、さらに部品点数を少なくできる。副シール材39、縦シール材23、及び補助シール材25を一体に形成することで、副シール材39と縦シール材23との間、及び縦シール材23と補助シール材25との間の浸水を確実に防止できる。交差する副シール材39と縦シール材23との現場接続が不要となり、止水信頼性がさらに向上する。
【0034】
次に、上記した止水構造の作用を説明する。
セグメント11の止水構造では、地山側凹溝29に主シール材37が貼着され、縦溝33に縦シール材23が貼着される。縦溝33と地山側凹溝29とには段差53があることから、縦溝33から縦シール材23を突出させて主シール材37に当接すれば、地山側凹溝29には主シール材37と縦シール材23とによって囲まれる段差空間部41が形成される。本止水構造では、この段差空間部41に充填される充填形状部43を主シール材37と同じ高さに形成される短尺の縦シール材片51に設けて補助シール材25を形成している。この補助シール材25が縦シール材23と主シール材37との間に介装されることで、補助シール材25とによって縦シール材23と主シール材37とが接続されると同時に、段差空間部41が塞がれることになる。このため、シーリング材の充填や塗布による現場施工によって段差空間部41を解消する必要がなくなる。
【0035】
次に、セグメント11の施工方法を説明する。
セグメント11の施工方法では、セグメント11の接合面15に形成された深さの異なる平行な地山側凹溝29と坑道側凹溝31とに応じ、主シール材37と副シール材39とを貼着する。次いで、坑道側凹溝31と同じ深さの縦溝33に、副シール材39と同じ高さの縦シール材23を副シール材39に接続して貼着する。次いで、段差空間部41に充填される充填形状部43を有する補助シール材25を、地山側凹溝29に貼着しながら縦シール材23と主シール材37とを接続する。
【0036】
縦シール材23と主シール材37との間に補助シール材25が貼着されると、縦シール材23と主シール材37とが接続されると同時に、深さの異なる縦溝33と地山側凹溝29とによって生じている段差空間部41が補助シール材25の充填形状部43によって塞がれる。
【0037】
なお、セグメント11の施工方法では、副シール材39に接着固定された縦シール材23を、副シール材39と同時に貼着してもよい。一回の貼着作業で、坑道側凹溝31と縦溝33とに副シール材39と縦シール材23とが貼着される。これにより、副シール材39を貼着すると同時に縦シール材23を位置決め固定でき、施工がさらに容易となる。
【0038】
また、縦シール材23と一体に形成された補助シール材25を縦シール材23と同時に貼着してもよい。一回の貼着作業で、縦溝33と段差空間部41とに縦シール材23と補助シール材25とが貼着される。これより、縦シール材23を貼着すると同時に補助シール材25を位置決め固定でき、施工がさらに容易となる。
【0039】
上記の止水構造を有したセグメント11は、トンネル施工の際、それぞれの接合面15が対向面となり、セグメント同士がつなぎ合い結合される。すなわち互いに隣接するリング面同士、ピース面同士を、固定穴17に貫通される結合ボルト(図示せず)で締着して結合する。セグメント11は、坑道の周壁回りa(
図1参照)と坑道の長さ方向bとの両方向に沿い密につなぎ合わせ結合される。この状態において、主シール材37、副シール材39は圧縮変形し、縦シール材23、補助シール材25が、これら主シール材37と副シール材39との間で挟持されるようになる。
【0040】
この止水構造では、地山側からの湧水があった場合には、それぞれのセグメント同士の目地部分における主シール材37、副シール材39にて浸水が防止される。主シール材37、副シール材39は、吸水膨張し、目地部分において隙間が発生することがないようになる。
【0041】
ここで、主シール材37が、欠損や接着不良などで浸水となった場合には、この主シール材37と副シール材39との間に湧水が浸入し、この間隙部分を伝って各セグメント間に流れてしまう。本止水構造では、セグメント11の接合面15に、主シール材37と副シール材39の長手方向に対して交わる方向の縦シール材23、補助シール材25が設けられている。この縦シール材23、補助シール材25の位置にて、主シール材37と副シール材39との間を流れる浸入水が阻止される。縦シール材23及び補助シール材25は、浸入水により縦溝33、段差空間部41で吸水膨張し、セグメント間における間隙を埋める。その結果、主シール材37、副シール材39の長手方向に沿う方向の止水が可能となる。
【0042】
本止水構造では、接合面15における隣り合うリング面19とピース面21とに縦シール材23、補助シール材25を設け、これらがそれぞれのセグメント11に設けられる。浸水の起きた箇所からの浸入水は、主シール材37および副シール材39と、対向する一対の縦シール材23及び補助シール材25と、によって四方が囲まれる。これにより、浸入水が、対となる主シール材37、副シール材39に沿って伝い拡散してしまうことがない。
【0043】
従って、本実施形態に係るトンネル用セグメントの止水構造によれば、異なる厚みのシール材を使用し、それらシール材を収容する凹溝同士間に段差53が生じるシール構造であっても、止水性が向上し、施工が良好となる。
【0044】
また、本実施形態に係るトンネル用セグメントの施工方法によれば、異なる厚みのシール材を使用し、それらシール材を収容する凹溝同士間に段差53が生じるシール構造において、止水性を向上させ、容易に施工できる。
【符号の説明】
【0045】
11…トンネル用セグメント(セグメント)
15…接合面
23…縦シール材
25…補助シール材
29…地山側凹溝
31…坑道側凹溝
33…縦溝
37…主シール材
39…副シール材
41…段差空間部
43…充填形状部
53…段差
M1,M2…溝幅
W1,W2…幅寸法