(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駆動ネジが前記投与量設定部材に移動可能に連結されて、前記投与量設定部材の回転によって前記駆動ネジが上方に移動することを特徴とする請求項1に記載の2室型薬物送達器材。
クラッチが前記投与量設定部材に連結され、前記クラッチは、前記薬剤投与量が設定されているときには、前記投与量設定部材を前記傘歯車から分離し、前記薬剤投与量が送達されているときには、前記投与量設定部材と前記傘歯車を係合させることを特徴とする請求項3に記載の2室型薬物送達器材。
前記駆動ネジに投与量追跡ナットが配置され、前記第一のチャンバ内の残りの薬剤が所定の量より少なくなったときに、それ以上、薬剤投与量の設定ができないようになっていることを特徴とする請求項2に記載の2室型薬物送達器材。
ラックがロッドに移動可能に連結され、前記薬剤投与量の注射中に前記ロッドが下方に移動すると、前記ラックが回転することを特徴とする請求項1に記載の2室型薬物送達器材。
前記ラックは、移動可能ラック部材とキャリッジを有し、前記移動可能ラック部材は第一の位置と第二の位置を有し、前記移動可能ラック部材は、前記移動可能ラック部材が前記第二の位置にあるときに、前記キャリッジを移動させることを特徴とする請求項9に記載の2室型薬物送達器材。
【背景技術】
【0003】
インシュリンおよびその他の注射可能な薬剤は一般的に、シリンジを使って皮膚の皮内層およびその他の緻密組織へと投与される。皮内薬剤注射によれば、薬剤の吸収がより速く、その結果、治療効果が改善される。このような注射には200psi以上と、従来の皮下注射より高い注射圧が必要となる。
【0004】
皮膚の皮内領域内への注射を行うための技術や器材が知られている。一般的にマントー方式と呼ばれる1つの方法は、「標準的な」針とシリンジ、すなわち、筋肉内または皮下注射に通常使用されるシリンジを用いる。注射を行う医療従事者が踏む具体的な手順では、注射を行う際に患者の皮膚に関してシリンジをある程度正確に方向付ける必要がある。医療従事者はまた、患者の皮膚への針の穿刺深さを正確に管理して、皮内領域を突き破らないようにしなければならない。このような方式は複雑で、行いにくく、経験豊富な医療専門家でなければ実施できないことも多い。
【0005】
従来のシリンジ101を
図1に示す。針103は、薬物を皮膚の皮下組織に送達するのに十分な長さである。しかしながら、前述のように、使用者が薬物を皮膚の皮内領域に送達することは容易ではないであろう。
【0006】
既存の薬物送達ペンには、インシュリンを皮下に送達するためのシリンジ式システムと比較して、いくつかの利点がある。再使用可能な薬物送達ペンには、20回分またはそれ以上の投与量が収容され、薬物カートリッジを再充填する必要がない。投与量の設定は、ダイヤルを使うだけで行われる。しかしながら、このような注射システムは、低圧皮下注射用に設計されている。インシュリンおよびその他の薬剤の皮内注射によれば、薬物の吸収がより速く、その結果、治療効果が改善される。既存の薬物送達ペンについては、皮内薬物送達に関していくつかの限界がある。第一に、ペンによって提供される機械的利点は非常に小さく、使用者は、十分な圧力を発生させるために、20ポンド以上の力を加える必要がある。第二に、この強い力によってペンの構成要素が損傷を受ける可能性があり、その結果、高圧がかかると漏れが生じ、精度が損なわれる。
【0007】
図2と
図3に示される、一例としての薬物送達ペン100のような薬物送達ペンは、皮内注射用に設計され、一般的には、投与量設定ノブ/ボタン24、外側スリーブ13、およびキャップ21からなる。投与量設定ノブ/ボタン24により、使用者は注射されるべき薬剤の投与量を設定できる。外側スリーブ13は、使用者が薬剤を注射する際に握る。キャップ21は、使用者が薬物送達ペン100をシャツのポケット、バッグまたはその他適当な場所に安全に保持するために使用され、また、不慮の針刺しによる怪我を防止するカバー/保護手段となる。
【0008】
図3は、
図2の薬物送達ペン100の分解図である。投与量設定ノブ/ボタン24には2つの目的があり、これは、注射されるべき薬剤の投与量を設定するため、および下側ハウジング17内を通るよう薬物送達ペンに取り付けられた薬剤カートリッジ12内を通る、送りネジ7とストッパ15を介して、投与量が設定された薬剤を注射するための両方に用いられる。標準的な薬物送達ペンの場合、投与量設定および送達機構はすべて、外スリーブ13の中にあり、これらは当業者によって理解されているため、本明細書では詳細に説明しない。薬剤カートリッジ12の中でプランジャまたはストッパ15を遠位方向に移動させることによって、薬剤がハブ20の針11の中に送り込まれる。薬剤カートリッジ12は隔壁16によって密閉され、隔壁16は、ハブ20の中に位置付けられた隔壁穿刺針カニューレ18によって穿刺される。ハブ20は、好ましくは、下側ハウジング17と螺合されるが、その他の取付手段、たとえばカートリッジに取り付ける方法を用いることもできる。使用者または、ペン型注射器100を取り扱うすべての人を保護するために、ハブ20に取り付けられる外カバー69によってハブが覆われる。中シールド59によって、外カバー69の中の患者用針11が覆われる。中シールド59は、あらゆる好適な手段、たとえば締り嵌めまたはスナップ嵌合によってハブ20に固定され、患者針を覆うようにすることができる。外カバー69と中シールド59は、使用前に取り外される。キャップ21は外スリーブ13にぴったりと嵌り、これによって使用者は薬物送達ペン100を安全に持ち運ぶことができる。
【0009】
薬剤カートリッジ12は通常、一端が隔壁16によって密閉され、反対の端がストッパ15によって密閉されるガラス管である。隔壁16は、ハブ20の中の隔壁穿刺カニューレ18によって穿刺可能であるが、薬剤カートリッジ12に対して移動しない。ストッパ15は、液密状態を保持しながら、薬剤カートリッジ12の中で軸方向に移動可能なものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面全体を通して、同様の参照番号は、同様の部品、構成要素および構造を指すものとする。
【0021】
本発明の例示としての実施形態による薬物送達器材によれば、使用者は、一次(当初の)薬剤容器の第一のチャンバとその断面領域を注射構造部から切り離すことによって、より小さな入力で高圧の、分量薬剤の注射を行うことができる。
【0022】
より大きな容量ではなく、たとえば10μL等の少量単位でないしパルス的に、連続的に薬剤投与量を注射すれば、皮内注射に必要な圧力の量を低減させることができる。圧力を下げると、組織の損傷と患者への苦痛が軽減される。圧力の低下により、使用者が薬剤を皮内注射するのに必要な力も少なくてすむ。加えて、少ない投与量または量で分量薬剤を注射することによって、既存の薬物送達ペンと比較して、特に少量の投与量範囲において、投与量の精度を改善できる。
【0023】
本願で開示する薬物送達器材は、皮内注射に伴う高い圧力を、当初の薬物容器、特に主要カートリッジのストッパから逸らせることによって、既存の薬物送達ペンと比較して、投与量の精度と薬剤の漏れの点で有利である。圧力が高いと、一次薬物容器のストッパが変形することがあり、その結果、送達量が変化し、投与量が不正確となる可能性がある。加えて、針が皮下空間から抜かれ、背圧が解放された後にストッパが平衡状態となり、その当初の容量に戻ると、好ましくない薬物の排出が起こることがある。
【0024】
図4から
図6に示される本発明の例としての実施形態において、薬物送達器材201は、インシュリン等の薬剤を高圧で注射する。針ハブ203は、ハウジング202に螺合接続される。針205は、針ハブ203の中に剛体的に固定され、第二のチャンバ221と連通する。好ましくは、針205は皮内針である。あるいは、針は皮下針であってもよい。好ましくは、針は、たとえば34ゲージ針等の小ゲージ針である。本発明の例としての実施形態による薬物送達器材は、インシュリン、高粘度の薬剤またはその他の薬剤を高圧で注射する。
【0025】
薬物送達器材201は、使用者が決定するボーラス投与量の薬剤を一次コンテナ(すなわちカートリッジ212)の第一のチャンバ211から第二のチャンバ221へ輸送し、このとき、流路231と、カートリッジストッパに力を加えて、第一のチャンバ211と第二のチャンバ221の間に正圧差を生じさせる圧縮バネ213とが用いられる。この正圧により、第二のチャンバ221が確実に充填され、その結果、ポンピングシステムが適正に動作できる。ポンピング動作中、第二のチャンバ221には真空が不要で、好ましいことに真空とならないため、分量薬剤において気泡の発生が防止される。ボーラス投与量は、使用者がダイヤル241を使って所望の投与量を選択することによって設定される。ダイヤル241は送りネジを前進させ、送りネジを手で押すことによって注射が作動されると、送りネジがポンピングシステムを作動させる。ポンピングシステムは、約10μL(インシュリン1単位)の小さな所定量ずつ流体を第二のチャンバ221に移動させ、その後、その流体(分量薬剤)が患者に注射される。これは、ネジ、ナット、歯車およびカムのセットを使って実現される。ポンピング動作は、設定されたボーラス投与量の全量が注射されるまで、一定単位の量で間隔をあけて繰り返される。第二のチャンバ221は、カートリッジの第一のチャンバ211より小さな断面積を利用して、同じ力を加えたときの注射圧を上昇させている。
【0026】
図4から
図6に示されるように、流体を、ポンピングカムシステムを介して第二のチャンバ221へと移動させることによって、注射圧がカートリッジ212の第一のチャンバ211から切り離される。第二のチャンバ221は、カートリッジ212の第一のチャンバ211より断面積が小さく、それによって、使用者が同じ力を加えたときの圧力がより高くなる。圧力と力と面積の関係、P=F/Aによれば、チャンバの断面積が半分になると、同じ入力での注射圧は2倍になる。
【0027】
薬剤投与量は、投与量設定部材である
図4の投与量設定ホイール241を回転させることによって設定され、投与量設定ホイール241は駆動ネジ251に連結されている。薬剤投与量の設定のために投与量設定ホイール241を回転させると、駆動ネジ251はハウジング202から上方に向けて、第一の位置(
図5)から第二の位置へと移動する。投与量追跡ナット269が駆動ネジ251に設置され、投与量設定中に駆動ネジがハウジング202から上方に向けて移動しているときも、駆動ネジ上で静止したままである。薬剤投与量が設定されている間、駆動ネジ251は投与量追跡ハウジング267の中でスライドし、投与量追跡ナットは駆動ネジの上で上方に移動する。投与量追跡ナット269が投与量追跡ハウジング267の上端265と接触すると、駆動ネジ251は、投与量追跡ハウジング267の上端265によって、ハウジング202から上方に向けて移動できず、その結果、それ以上、薬剤投与量は設定できない。
【0028】
傘歯車261が投与量設定ホイール241と回転可能に係合する。クラッチ271によって、投与量設定中に傘歯車261から投与量設定ホイール241が分離される。傘歯車261は、ピストン281に連結されたカムシャフト263を有する。傘歯車261の回転によって、ピストン281は、カムシャフト263の回転に伴って上下に往復運動する。ピストン281が上方に移動すると、薬剤投与量の少量の一部分ないし分割量が第一のチャンバ211から第二のチャンバ221へと引き込まれる。ピストン281が下方に移動すると、第二のチャンバ221の中の薬剤投与量の分割量が、針205から押し出される。
【0029】
薬剤投与量が設定されると、使用者は駆動ネジ251の一端にあるボタン253を押し下げて、分量薬剤を注射する。駆動ネジ251がハウジングの中で下方に移動されると、クラッチ271によって投与量設定ホイール241は傘歯車261と係合し、それによって傘歯車が回転する。傘歯車261が回転すると、カムシャフト263はピストン281を上下に往復運動させ、それによって、薬剤投与量はいくつかのより少量の分割量の連続的な分量薬剤注射によって注射される。駆動ネジ251の移動距離は、注射されるべき連続分割量の所定の数に対応する。注射される連続薬剤投与量分割量の総数は、設定された薬剤投与量に対応し、これは、駆動ネジ251が第二の位置から第一の位置まで1回移動することによって実現される。
【0030】
予備的な動物実験では、注射ボーラス投与量の大きさは、皮内空間に注射されるとき、発生する注射背圧に影響を与えることがわかっている。投与量が少ないと、ボーラス投与量が多い場合と比較して、皮内注射中の背圧が低下する。1単位(10μL)のパルスを用いて薬剤を注射するとき、皮内注射のピーク背圧(ひいては加えなければならないピーク注射圧)は、どの場合でも、注射中に表皮によって押し戻される量を低減することによって、下げてることができる。
【0031】
皮内注射に伴う高い注射圧をカートリッジ212の第一のチャンバ211から切り離すことによって、高圧下でのカートリッジストッパの効果に関する投与量の精度も改善され、また「ドルーリング」の問題も軽減される。
【0032】
注射の前に注射液を第二のチャンバ221へと移動させることによって、第一のチャンバ211の中がより低い圧力に維持される。これによって、カートリッジ212の第一のチャンバ211の中を高圧にすることなく、高圧注射を行うことができる。ほとんどの既存の薬物送達ペンにおいて、分量薬剤の送達は、ダイヤルによって設定されるボーラス投与量に応じた、ある長さだけ移動する、駆動ネジ7(
図3)の線形移動によって行われる。ダイヤルにより設定されるボーラス投与量により、注射の行程の長さが決まる。使用者は、注射ボタンに力を加え、注射の行程全長を移動させるようにする。注射の運動の力と行程は、トルクに変換される。トルクはその後、駆動ネジ7(
図3)を線形に前進させるために使用される。このようなタイプのシステムでは、当初の行程と最終的な駆動ネジの運動との間の関係として、投与量範囲の下限において、薬剤投与量が不正確になることがある。
【0033】
代わりの形態として、
図7から
図9に示されるように、本発明の例としての第二の実施形態による薬物送達器材301は、フルラック351を利用してカムホイール331を駆動する。フルラック351は、連続する、エンドレスのラックである。第二の実施形態の例による薬物送達器材301の基本的な機能および根本的な技術的原理は、第一の実施形態の例による薬物送達器材201と略同様である。
【0034】
カートリッジ311は、薬剤を貯蔵するための第一のチャンバを有する。カートリッジ311をハウジング307の中に挿入した最初では、カートリッジ311は、
図7に示される第一の位置に位置付けられる。針ハブ305がハウジング307に連結され、それによって針ハブ305に剛体的に固定された針303は第二のチャンバ321と連通する。
【0035】
第一の位置では、カートリッジ311は隔壁穿刺針314から分離されている。プライミングボタン315は、カートリッジ311が第一の位置にあるとき、ハウジング307から外側に延びている。使用者がプライミングボタン315を内側に押すと、それによってバネハウジング316が障害物から横にずれて、圧縮バネ312が解放される。圧縮バネ312が伸び、カートリッジ311の中に配置されたストッパと係合する。圧縮バネ312によってカートリッジ311に加わる力によって、カートリッジは第二の位置に移動し、この位置で、隔壁穿刺針314がカートリッジ311の隔壁を穿刺する。カートリッジ311を第二の位置に移動させることによって、カートリッジ311は加圧される。
【0036】
投与量設定ホイール322を回転させて薬剤投薬量を設定する。投与量設定ホイール322を回転させると、注射ロッド323が、設定された薬剤投与量に対応する距離だけ上方に移動する。注射中、使用者はロッド323を押し続け、それによってクラッチが係合し、カムホイール331が回転する。カムホイール331の回転によって、ピストン341は往復(ポンピング)運動するように駆動され、下方行程で流体が押し出され、上方行程で第二のチャンバ321は加圧されたカートリッジ311の第一のチャンバ313から充填される。
【0037】
カムホイール331は、ラック351と係合するカム軸歯車343を有する。注射ロッド323が下方に移動すると、
図7から
図9に示されるように、ラック351は時計回り方向に移動する。ラック351が時計回り方向に回転すると、カム軸歯車343は時計回り方向に回転し、これによってカムホイール331が時計回り方向に回転する。カムホイール331の上に配置されたカムカーブ(cam curve)345はピストンと係合し、それによってピストン341が往復運動する。
【0038】
ピストンの下方行程の力により、注射中、第一の弁、V
1、391(第二のチャンバ321への流体入口に配置されている)が閉じ、これは、弁の肩部を変形させる力が、ストッパの摩擦より小さいからであり、その後、第二のチャンバ321を充填させるための上方行程中に、第一の弁、V
1、391は開く。適当であればどのような弁を用いてもよい。弁システムの概略図を
図9Aと
図9Bに示す。
【0039】
第二の弁、V
2、393(第二のチャンバ321の流体出口に配置されている)は、注射中のみ、第二のチャンバ321の中の圧力が第二の弁393を圧縮するのに十分なときだけ開き、これによって、密閉部が開き、流体が針303へと移動する。
【0040】
図4から
図9に示される第一と第二の例としての実施形態による薬物送達器材は、一体型の投与量追跡システムを有し、このシステムによって、薬剤量が限られると、投与量設定ができなくなる。
図7から
図9に示されるように、フルラックの実施形態は、その3回目の回転中に機械的にトリガされて、投薬量を有効に追跡し、カートリッジ311の第一のチャンバ313が空になると、投与量設定ができなくなるようにする、再使用可能なラック351を特徴とする。
【0041】
第二のチャンバ321は、断面積がカートリッジ311より小さく、その結果、使用者による入力が同じ場合に、より高い圧力が供給される。標準的な3.0mLのインシュリンカートリッジは直径が約9.7mmであるため、断面積はA=πr
2=4.85
2*3.14159=73.9mm
2となる。好ましい実施形態において、薬物送達器材301の第二のチャンバ321は直径が3.5mmであるため、断面積は1.75
2*3.14159=9.62mm
2となる。ある圧力、P、について、力増幅は次の関係を使って行われる。P=F
1/A
1、P=F
2/A
2。したがって、F
1/A
1=F
2/A
2となる。力乗数M
f,F
1/F
2は、効率、η、を100%として、面積比、A
1/A
2,M
f=73.9/9.62=7.7となる。
【0042】
したがって、システムの摩擦を考慮しないと(η=100%)、薬物送達器材のこの好ましい実施形態では、一次インシュリンコンテナ(カートリッジ)に直接力を加える器材と同じ注射圧を得るための力が約7分の1でよい。
【0043】
しかしながら、摩擦を考慮すると、力乗数は若干小さくなる。第一の例としての実施形態による薬物送達器材(
図4から
図6の、ナット/ネジ駆動方式を用いるもの)は、効率が約50−60%であることを特徴とし、これにより、好ましい実施形態の場合の注射圧は約100−120psi(M
f=3−3.5)となる。第二の例としての実施形態による薬物送達器材(
図7から
図9の、フルラックを備えるもの)は、第一の例としての実施形態より効率がよく、好ましい実施形態の場合の注射圧は約150−180Psi(M
f=5−6)となる。このような効率の改善は、ラック(
図7から
図9)の摩擦がナット/ネジ駆動方式(
図4から
図6)より小さいことによる。
【0044】
本発明の第三の例としての実施形態による2室型薬物送達器材401を
図10から
図36に示す。薬物送達器材401は、
図7から
図9に示されている第二の例としての実施形態による薬物送達器材301と略同様に動作する。薬物送達器材401により、カートリッジのプライミングと加圧、薬剤投与量の設定、分量薬剤の送達および投与量の追跡を行うことができる。針ハブ407は、器材のハウジング403に連結される。針408は針ハブ407に剛体的に固定され、第二のチャンバ421と連通して、分量薬物を送達する。
【0045】
図11から
図14は、カートリッジのプライミングと加圧の動作を示す。薬物送達器材401の出荷時には、圧縮バネハウジングは、
図11と
図12に示されるように、器材ハウジング403の突起414の上に乗っている。圧縮バネ413の一端は圧縮バネハウジングと係合する。圧縮バネ413の反対の端は、器材ハウジング403の内面と係合して、圧縮バネ413は圧縮された状態にある。プライミングボタン415を内側に押すと、
図13と
図14に示されるように、バネハウジングが突起部414から外れる。圧縮バネ413が伸びて、圧縮バネハウジングがカートリッジ411内の中のストッパ404と係合する。圧縮バネ413がカートリッジストッパ404にかける力によって、カートリッジ411は、
図11と
図12に示されるような、カートリッジ隔壁419が隔壁穿刺針417から離れている第一の位置から、
図13と
図14に示されるような、隔壁穿刺針417がカートリッジ隔壁419を穿刺する第二の位置へと移動する。
【0046】
圧縮バネ413がカートリッジストッパ404と係合し、隔壁穿刺針417がカートリッジ隔壁419を穿刺しているとき、カートリッジ411のプライミングと加圧が行われる。カートリッジ411の第一のチャンバ406の中に貯蔵されている薬剤は、この状態になると、流体コンジット431に入ることができる。カートリッジ411が空になり、ハウジング403から取り出されると、交換用カートリッジ411を挿入することによって、プライミングボタン415は、
図11と
図12に示されるようにハウジングの外側に延びる位置に戻る。
【0047】
図15から
図20は、薬物送達器材401による薬剤投与量の設定を示している。投与量設定ホイール441は、
図15と
図16に示されるように、ハウジング403の歯404と係合する歯車442を有する。投与量設定ホイールで設定投与量を増やすと(
図15に示すように、投与量設定ホイールを時計回り方向に回転させると)、
図17と
図18に示されるように、ラチェット歯443とおよび444がラック歯445にカチカチと噛み合い、それによって投与量設定ホイール441がハウジングの溝440とラックの溝439の中で上方に移動する。投与量設定ホイール441が上方に移動すると、ラチェット453が
図15に示される第一の位置から上方へ、
図21に示される第二の位置まで移動し、使用者はハウジング403の外で、ラチェットの一端のボタン451を操作できるようになる。
【0048】
薬剤投与量を修正するには、投与量設定ホイール441を、
図15において反時計回り方向に回転させる。投与量修正によって、ラチェット歯443および444は外側に曲がり、ラチェット歯443および444がラック歯445から外れ、それによって、投与量設定ホイール441とラチェット453は、
図19と
図20に示されるように、下方に移動し、その際、ラック446は移動しない。ラチェット453は投与量設定ホイール441に固定されており、ラチェット453と投与量設定ホイール441は一緒に移動する。
【0049】
図21から
図25は、分量薬剤を送達する動作を示す。注射ボタン451はラチェット453に連結されており、ラチェット453のラチェット歯443および444はラック歯445と係合し、注射ボタン451が下方に移動すると、ラック446が下方に移動するようになっている。ラック446が下方に移動すると(
図21において、ラック446は時計回り方向に回転する)、カム軸歯車447が回転し、これがポンプカム461を回転させる。カム軸歯車447はカムホイール461に固定され、カムホイールは、
図25に示されるように、カム溝463を有する。カムシャフト471の第一の端はカム溝463と係合し、カムシャフト471の第二の端はピストンに連結されている。カムシャフト471がカム溝463に沿って移動すると、ピストンは上下に往復移動する。カムホイール461が回転すると、
図24および
図25に示されるように、カムシャフト471が往復運動し、それによって第二のチャンバ421の中の分量薬剤が送達される。カムシャフト471の上方行程中、分量薬剤の一部分または分割量が第一のチャンバ406から第二のチャンバ421に引き込まれる。カムシャフトの下方行程中に、分量薬剤の分割量は、第二のチャンバ421から針408を通って注射部位の皮膚へと送達される。ラチェット453が
図10に示されるように再びハウジング403の中に完全に挿入されたときに、分量薬剤は、カムシャフト471の下方行程1回ごとに分量薬剤の分割量が注射されることの連続を通じて、全量が注射されたことになる。
【0050】
図26から
図34は、薬物送達器材401の投与量追跡動作を示している。移動式ラック446には、キャリッジ448が設置されている。ラック446が移動すると、キャリッジ448は移動して、
図26に示されるように、ラチェット歯443および444に近づく。好ましくは、ラック446は略楕円形の形状を有する。カートリッジ411の第一のチャンバ406が空になると、ラチェット歯443および444がキャリッジ448を妨害する。キャリッジ448がラチェット歯443および444と接触すると、それ以上、薬剤投与量の設定を行うことはできない。たとえば、ラックを約2.5回転させると(カートリッジの容量)、キャリッジ448によって、薬剤投与量の設定はそれ以上できない。
【0051】
図27と
図28に示されるように、薬剤投与を行うことができる状態にある(ラチェット453がハウジング403の外へと移動されている)。キャリッジ448がこの位置にあると、第一のチャンバ406は薬剤で満たされている。移動可能ラック部材481は当初、
図27と
図28に示されるような第一の位置にあり、この位置は、下側位置で、ラック446の残りの部材と同じ位置である。ラック446が1回目に完全に回転すると、移動可能ラック部材481は、
図29と
図30に示されるように、ハウジング403の上の傾斜449を上昇する。すると、移動可能ラック部材481は第二の、上側位置にあり、これはラック446の残りの部材より上にある。ラック446が2回目に完全に回転すると、移動可能ラック部材481は、
図31と
図32に示されるように、キャリッジ448と係合する。すると、移動可能ラック部材481はキャリッジ448をラック446とともに押し、ラック446がさらに移動する。さらに約半回転すると、キャリッジ448は、
図33と
図34に示されるように、ラチェット歯443と444と係合し、それによって、それ以上、投与量設定ができなくなる。
【0052】
あるいは、本発明の例としての実施形態による薬物送達器材は、再溶解型薬物送達システムとして使用することができる。第一のチャンバには希釈剤が収容される。取り外し可能/交換可能な第二のチャンバには、固形薬物が収容される。したがって、この薬物送達器材により、再溶解または再懸濁システムが実現される。第一のチャンバには、多くの回数の注射を行うのに十分な希釈剤を貯蔵することができ、第二のチャンバは、それより少ない回数の注射、たとえば1回または2回分の固形薬物を貯蔵することができる。したがって、本発明の例としての実施形態による薬物送達器材は、高圧注射用再溶解システムを含めた再溶解システムとして使用することができる。
【0053】
上記の実施形態と利点は単に例にすぎず、本発明の範囲を限定するものとは解釈されないものとする。本発明の実施例の説明は、例示のためであり、本発明の範囲を限定しない。当業者にとっては、各種の改変、変更および変形が明らかであり、これらは、付属の特許請求の範囲およびそれらと同等のものにおいて定義される発明の範囲に含まれるものとする。