(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記表面架橋工程の前および/または表面架橋工程の後に行われる分級工程において、当該分級工程で使用される金属篩網の全数に対して、その80%以上の金属篩網で張り張力(テンション)を制御する、請求項1に記載の製造方法。
上記金属篩網の材質がSUS304もしくはSUS316であり、かつ、金属篩網内面の表面粗さ(Rz)が800nm以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
上記分級助剤粒子が吸水性樹脂粉末に対して比重の大きい無機微粒子または有機微粒子であり、かつ、吸水性樹脂の微粉とともに除去される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
上記分級工程で用いる金属篩網の下部にエアージェットクリーナーまたはエアージェットブラシクリーナーが使用される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る吸水性樹脂の製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更、実施し得る。具体的には、本発明は下記の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0018】
〔1〕用語の定義
(1−1)吸水性樹脂
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を意味する。なお、「水膨潤性」とは、ERT441.2−02で規定するCRC(無加圧下吸水倍率)が必須に5[g/g]以上、好ましくは10〜100[g/g]、更に好ましくは20〜80[g/g]であることをいい、また、「水不溶性」とは、ERT470.2−02で規定するExt(水可溶分)が必須に0〜50重量%、好ましくは0〜30重量%、更に好ましくは0〜20重量%、特に好ましくは0〜10重量%であることをいう。
【0019】
上記吸水性樹脂は、その用途に応じて適宜設計可能であり、特に限定されるものではないが、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた、親水性架橋重合体であることが好ましい。また、全量(100重量%)が重合体である形態に限定されず、上記性能を維持する範囲内において、添加剤等を含んでいてもよい。すなわち、吸水性樹脂組成物であっても、本発明では吸水性樹脂と総称する。ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の含有量は、好ましくは全体に対して70〜99.9重量%であり、より好ましくは80〜99.7重量%であり、さらに好ましくは90〜99.5重量%である。吸水性樹脂以外のその他の成分としては、吸水速度や粉末(粒子)の耐衝撃性の観点から水が好ましく、必要により後述の添加剤が含まれる。
【0020】
(1−2)ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂
本発明における「ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂」とは、繰り返し単位として、アクリル酸および/またはその塩(以下、アクリル酸(塩)と称する)を主成分とする吸水性樹脂を意味する。
【0021】
具体的には、重合に用いられる総単量体(架橋剤を除く)のうち、アクリル酸(塩)を必須に50〜100モル%を含む重合体をいい、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは実質100モル%を含む吸水性樹脂をいう。重合体としての塩は、必須に水溶性塩を含み、好ましくは一価塩、さらに好ましくはアクリル金属塩またはアンモニウム塩、特にアルカリ金属塩、さらにはナトリウム塩を含む。
【0022】
(1−3)EDANAおよびERT
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称であり、「ERT」は、欧州標準(ほぼ世界標準)である吸水性樹脂の測定方法(EDANA Recommended Test Method)の略称である。
【0023】
なお、本発明においては、特に断りのない限り、ERT原本(公知文献:2002年改定)に準拠して、吸水性樹脂等の物性を測定する。
【0024】
(a)「CRC」(ERT441.2−02)
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、無加圧下吸水倍率(以下、「吸水倍率」と称することもある)を意味する。具体的には、不織布袋中の0.200gの吸水性樹脂を、大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対して30分間自由膨潤させた後、さらに遠心分離機で水切りした後の吸水倍率(単位;[g/g])である。
【0025】
(b)「AAP」(ERT442.2−02)
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、加圧下吸水倍率を意味する。具体的には、0.900gの吸水性樹脂を、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対して1時間、2.06kPa(0.3psi、21[g/cm
2])での荷重下で膨潤させた後の吸水倍率(単位;[g/g])である。なお、本発明においては、荷重条件を2.06kPa(0.3psi、21[g/cm
2])、または、4.83kPa(0.7psi、50[g/cm
2])として測定した。
【0026】
(c)「Ext」(ERT470.2−02)
「Ext」は、Extractablesの略称であり、水可溶分(水可溶成分量)を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200gに対して、吸水性樹脂1gを16時間攪拌した後、溶解したポリマー量をpH滴定で測定した値(単位;重量%)である。
【0027】
(d)「FSC」(ERT440.2−02)
「FSC」は、Free Swell Capacityの略称であり、自由膨潤倍率を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液0.20gに吸水性樹脂0.20gを30分浸漬した後、遠心分離機で水切りを行わないで測定した吸水倍率(単位;[g/g])である。
【0028】
(e)「Residual Monomers」(ERT410.2−02)
「Residual Monomers」とは、吸水性樹脂中に残存しているモノマー量を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200mlに吸水性樹脂1.0gを投入し2時間攪拌した後、該水溶液に溶出したモノマー量を高速液体クロマトグラフィーで測定した値(単位;ppm)である。
【0029】
(f)「PSD」(ERT420.2−02)
「PSD」とは、Particle Size Distributionの略称であり、ふるい分級により測定される粒度分布を意味する。なお、重量平均粒子径(D50)および粒子径分布幅は欧州特許第0349240号明細書7頁25〜43行に記載された「(1) Average Particle Diameter and Distribution of Particle Diameter」と同様の方法で測定する。
【0030】
(g)その他、EDANAで規定される吸水性樹脂の物性
「pH」(ERT400.2−02) : 吸水性樹脂のpHを意味する。
【0031】
「Moisture Content」(ERT430.2−02) : 吸水性樹脂の含水率を意味する。
【0032】
「Flow Rate」(ERT450.2−02) : 吸水性樹脂の流下速度を意味する。
【0033】
「Density」(ERT460.2−02) : 吸水性樹脂の嵩比重を意味する。
【0034】
「Respirable Particles」(ERT480.2−02) : 吸水性樹脂の呼吸域粉塵を意味する。
【0035】
「Dust」(ERT490.2−02) : 吸水性樹脂中に含まれる粉塵を意味する。
【0036】
(1−4)通液性
荷重下または無荷重下における膨潤ゲルの粒子間を流れる液の流れを「通液性」という。この「通液性」の代表的な測定方法として、SFC(Saline Flow Conductivity)や、GBP(Gel Bed Permeability)がある。
【0037】
「SFC(生理食塩水流れ誘導性)」は、荷重0.3psiにおける吸水性樹脂0.9gに対する0.69重量%塩化ナトリウム水溶液の通液性をいう。米国特許第5669894号明細書に記載されたSFC試験方法に準じて測定される。
【0038】
「GBP」は、荷重下または自由膨張における吸水性樹脂に対する0.69重量%生理食塩水の通液性をいう。国際公開第2005/016393号パンフレットに記載されたGBP試験方法に準じて測定される。
【0039】
(1−5)その他
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、「X以上、Y以下」であることを意味する。また、重量の単位である「t(トン)」は、「Metric ton(メトリック トン)」であることを意味し、さらに、特に注釈のない限り、「ppm」は「重量ppm」または「質量ppm」を意味する。また、本願明細書において、「質量」と「重量」、「質量%」と「重量%」、および「質量部」と「重量部」は同義語であり、物性等の測定に関しては特に断りがない場合は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%で測定する。さらに、「〜酸(塩)」は「〜酸および/またはその塩」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。
【0040】
〔2〕吸水性樹脂の製造方法
(2−1)重合工程
本工程は、アクリル酸および/またはその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)を主成分として含む水溶液を重合して、含水ゲル状架橋重合体を得る工程である。
【0041】
(a)単量体(架橋剤を除く)
本発明で得られる吸水性樹脂は、その原料(単量体)として、アクリル酸(塩)を主成分として含む水溶液を使用し、通常、水溶液状態で重合される。該単量体水溶液中の単量体濃度(固形分濃度)は、通常10〜90重量%であり、好ましくは20〜80重量%である。また、高単量体濃度(35重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上、特に好ましくは45重量%以上であり、上限は飽和濃度、さらに好ましくは80重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である)での重合が最も好ましい一例として例示される。
【0042】
さらに、単量体を水溶液で重合するときには、必要に応じて、界面活性剤、ポリアクリル酸(塩)、澱粉、セルロース、ポリビニルアルコール等の高分子化合物、各種キレート剤、各種添加剤を、単量体に対して0〜30重量%、好ましくは0.001〜20重量%添加してもよい。
【0043】
また、該水溶液の重合により得られる含水ゲルは、吸水性能の観点から、重合体の酸基の少なくとも一部が中和されていることが好ましい。上記中和は、アクリル酸の重合前(単量体)、重合中または重合後(含水ゲル)に行うことができるが、吸水性樹脂の生産性、AAP(加圧下吸水倍率)やSFC(生理食塩水流れ誘導性)の向上等の観点から、アクリル酸の重合前に中和を行うことが好ましい。つまり、中和されたアクリル酸(すなわち、アクリル酸の部分中和塩)を単量体として使用することが好ましい。
【0044】
上記中和の中和率は、特に制限されないが、酸基に対して10〜100モル%が好ましく、30〜95モル%がより好ましく、50〜90モル%がさらに好ましく、60〜80モル%が特に好ましい。中和率が10モル%未満の場合、特に、CRC(無加圧下吸水倍率)が著しく低下することがあり好ましくない。
【0045】
また、本発明においてアクリル酸(塩)を主成分として使用する場合、アクリル酸(塩)以外の親水性または疎水性の不飽和単量体(以下、「他の単量体」と称することもある)を使用することもできる。このような他の単量体としては、特に限定されないが、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレートやそれらの塩等が挙げられる。これら他の単量体を使用する場合、その使用量は、得られる吸水性樹脂の吸水特性を損なわない程度であれば、特に限定されないが、全単量体の重量に対して、50重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。なお、上記他の単量体を必要に応じて使用する場合、その使用量の下限は、種類や目的、効果に応じて適宜決定され特に制限されないが、全単量体の重量に対して、約1重量%程度である。
【0046】
(b)中和の塩
上記単量体としてのアクリル酸または重合後の重合体(含水ゲル)の中和に用いられる塩基性物質としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物や炭酸(水素)ナトリウム、炭酸(水素)カリウム等の炭酸(水素)塩等の一価の塩基性物質が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。また、中和時の温度(中和温度)についても、特に制限されず、10〜100℃が好ましく、30〜90℃がより好ましい。なお、上記以外の中和処理条件等については、国際公開第2007/028751号や米国特許第6388000号に開示されている条件等が、本発明に好ましく適用される。
【0047】
(c)架橋剤(内部架橋剤)
本発明においては、得られる吸水性樹脂の吸水性能の観点から、架橋剤(以下、「内部架橋剤」と称することもある)を使用することが特に好ましい。使用できる内部架橋剤としては、重合性二重結合を1分子あたり2つ以上有する化合物や、カルボキシル基と反応して共有結合を形成することができる官能基を1分子あたり2つ以上有する多官能化合物が挙げられる。例えば、アクリル酸との重合性架橋剤や、カルボキシル基との反応性架橋剤、それらを併せ持った架橋剤の1種以上を例示することができる。具体的には、重合性架橋剤として、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリオキシエチレン)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アリロキシアルカン等、分子内に重合性二重結合を少なくとも2個有する化合物が例示できる。また、反応性架橋剤として、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル;プロパンジオール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール等の共有結合性架橋剤、アルミニウム塩等の多価金属化合物であるイオン結合性架橋剤が例示できる。これらの中でも、吸水性能の観点から、アクリル酸との重合性架橋剤が好ましく、特に、アクリレート系、アリル系、アクリルアミド系の重合性架橋剤が好適に使用される。これらの内部架橋剤は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記内部架橋剤の使用量は、物性面から、架橋剤を除く上記単量体に対して、0.001〜5モル%が好ましく、0.005〜2モル%がより好ましく、0.01〜1モル%がさらに好ましく、0.03〜0.5モル%が特に好ましい。
【0048】
(d)その他の微量成分
本発明では、色調安定性や残存モノマーの観点から、アクリル酸中のプロトアネモニンおよび/またはフルフラールの含有量は0〜10ppmが好ましく、0〜5ppmがより好ましく、0〜1ppmがさらに好ましい。さらに、フルフラール以外のアルデヒド分および/またはマレイン酸についても同様の理由により、アクリル酸中の含有量は0〜5ppmが好ましく、0〜3ppmがより好ましく、0〜1ppmがさらに好ましく、0ppm(検出限界以下)が特に好ましい。なお、フルフラール以外のアルデヒド分としては、ベンズアルデヒド、アクロレイン、アセトアルデヒド等が挙げられる。また、残存モノマーの低減のため、アクリル酸ダイマーの含有量は0〜500ppmが好ましく、0〜200ppmがより好ましく、0〜100ppmがさらに好ましい。
【0049】
本発明では、重合安定性の観点から、不飽和単量体にメトキシフェノール類が含まれることが好ましく、p−メトキシフェノールが含まれることがより好ましい。メトキシフェノール類の含有量は、単量体(アクリル酸)に対して、1〜250ppmが好ましく、5〜200ppmがより好ましく、10〜160ppmがさらに好ましく、20〜100ppmが特に好ましい。
【0050】
(e)単量体水溶液中のその他の成分
本発明で得られる吸水性樹脂の諸物性を改善するために、任意成分として、上記単量体水溶液に、以下の物質を添加することができる。すなわち、澱粉、ポリアクリル酸(塩)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン等の水溶性樹脂あるいは吸水性樹脂を、単量体に対して、例えば0〜50重量%、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜10重量%、さらに好ましくは0〜3重量%添加することができる。ここで、上記任意成分を添加する際の、任意成分の添加量の下限は、種類や目的、効果に応じて適宜決定され特に制限されないが、単量体に対して、0.001重量%程度であることが好ましい。さらに、各種の発泡剤(炭酸塩、アゾ化合物、気泡等)、界面活性剤、各種キレート剤、ヒドロキシカルボン酸や還元性無機塩等の添加剤を、単量体に対して、例えば0〜5重量%、好ましくは0〜1重量%添加することができる。ここで、上記添加剤を添加する際の、添加剤の添加量の下限は、種類や目的、効果に応じて適宜決定され特に制限されないが、単量体に対して、0.001重量%程度であることが好ましい。
【0051】
これらの中でも、吸水性樹脂の経時着色の抑制(高温高湿下で長期間保存した際の色調安定性の向上)や耐尿性(ゲル劣化防止)の向上を目的とする場合には、キレート剤、ヒドロキシカルボン酸、還元性無機塩が好ましく使用され、キレート剤が特に好ましく使用される。この場合の使用量は、吸水性樹脂に対して、10〜5000ppmが好ましく、10〜1000ppmがより好ましく、50〜1000ppmがさらに好ましく、100〜1000ppmが特に好ましい。なお、上記キレート剤、ヒドロキシカルボン酸、還元性無機塩については、国際公開第2009/005114号、欧州特許第2057228号、同第1848758号に開示される化合物が使用される。
【0052】
(f)重合開始剤
本発明において使用される重合開始剤は、重合形態によって適宜選択され、特に限定されない。例えば、熱分解型重合開始剤、光分解型重合開始剤、レドックス系重合開始剤等が挙げられる。具体的には、熱分解型重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド等のアゾ化合物等が挙げられる。また、光分解型重合開始剤としては、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物等が挙げられる。さらに、レドックス系重合開始剤としては、上記過硫酸塩や過酸化物に、L−アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム等の還元性化合物を組み合わせた系が挙げられる。上記熱分解型重合開始剤と光分解型重合開始剤とを併用することも、好ましい態様として挙げることができる。これらの重合開始剤の使用量は、上記単量体に対して、0.0001〜1モル%が好ましく、0.001〜0.5モル%がより好ましい。重合開始剤の使用量が1モル%を超える場合、吸水性樹脂の着色を引き起こすことがあるため好ましくない。また、重合開始剤の使用量が0.0001モル%を下回る場合、残存モノマーを増加させるおそれがあるため好ましくない。
【0053】
なお、上記重合開始剤を使用する代わりに、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより重合を行ってもよく、これらの活性エネルギー線と重合開始剤とを併用して重合してもよい。
【0054】
(g)重合方法(架橋重合工程)
本発明においては、上記単量体水溶液を重合するに際して、得られる吸水性樹脂の吸水性能や重合制御の容易性等の観点から、通常、水溶液重合または逆相懸濁重合が採用されるが、好ましくは水溶液重合、より好ましくは連続水溶液重合が採用される。中でも、吸水性樹脂の1ラインあたりの生産量が多い巨大スケールでの製造に好ましく適用される。該生産量としては、0.5[t/hr]以上であり、より好ましくは1[t/hr]以上、さらに好ましくは5[t/hr]以上、特に好ましくは10[t/hr]以上である。
【0055】
また、上記連続水溶液重合の好ましい形態として、連続ベルト重合(米国特許第4893999号、同第6241928号、米国特許出願公開第2005/215734号等)、連続ニーダー重合(米国特許第6987151号、同第670141号等)が挙げられる。
【0056】
上記連続水溶液重合においては、重合開始温度を30℃以上、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上、特に好ましくは60℃以上(上限は沸点)とする高温開始重合、あるいは、上述した高単量体濃度重合が、最も好ましい一例として例示できる。なお、上記重合開始温度は、単量体水溶液の重合機供給直前の液温で規定されるが、米国特許第6906159号および同第7091253号等に開示された条件等を、本発明に好ましく適用することができる。
【0057】
さらに、得られる吸水性樹脂の物性向上と乾燥効率との観点から、重合時に水分を蒸発させ、より高固形分濃度の吸水性樹脂を得ることが好ましい。単量体水溶液からの固形分上昇度(重合後の含水ゲルの固形分−重合前の単量体の固形分)は1重量%以上が好ましく、2〜40重量%がより好ましく、3〜30重量%がさらに好ましい。ただし、下記に開示した80重量%以下の固形分を有する含水ゲル状架橋重合体を得る範囲が好ましい。
【0058】
また、これらの重合は、空気雰囲気下でも実施可能であるが、着色防止の観点から窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下(例えば、酸素濃度1容積%以下)で実施することが好ましい。また、単量体または単量体を含む溶液中の溶存酸素を不活性ガスで置換(例えば、溶存酸素濃度;1mg/L未満)した後に、重合することが好ましい。また、減圧、常圧、加圧のいずれの圧力下でも実施することができる。
【0059】
(2−2)含水ゲル状架橋重合体の細粒化工程(ゲル解砕工程)
本工程は、上記重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を解砕し、粒子状の含水ゲル状架橋重合体(以下、「粒子状含水ゲル」と称する)を得る工程である。
【0060】
上記重合工程で得られた含水ゲルはそのまま乾燥を行ってもよいが、上記課題の解決のため、好ましくは重合時または重合後、必要により解砕機(ニーダー、ミートチョッパー、カッターミル等)を用いてゲル解砕され粒子状にされる。すなわち、連続ベルト重合または連続ニーダー重合による重合工程と乾燥工程との間に、含水ゲルの細粒化(以下、「ゲル解砕」とも称する)工程をさらに含んでもよい。なお、逆相懸濁重合等、重合時に溶媒中での分散よってゲルが細粒化されている場合も、本発明の細粒化(重合工程の細粒化)に含むものとするが、好適には解砕機を用いて解砕される。
【0061】
ゲル解砕時の含水ゲルの温度は、物性の面から、好ましくは40〜95℃、より好ましくは50〜80℃に保温または加熱される。ゲル解砕後の粒子状含水ゲルの重量平均粒子径(D50)は、0.5〜4mmが好ましく、0.5〜3mmがより好ましく、0.3〜2mmがさらに好ましい。上記粒子状含水ゲルの重量平均粒子径(D50)が、上記範囲内となることで、乾燥が効率的に行われるため好ましい。また、5mm以上の粒径を有する粒子状含水ゲルの割合は、粒子状含水ゲル全体の0〜10重量%が好ましく、0〜5重量%がより好ましい。ここで、粒子状含水ゲルの粒子径は、特開2000−63527号公報の段落〔0091〕に記載の、湿式の分級方法を用いて測定する。
【0062】
(2−3)乾燥工程
上記重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体、またはゲル解砕工程で得られた粒子状含水ゲルを、所望する樹脂固形分まで乾燥することができる。その方法については、特に制限されないが、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸による脱水乾燥、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等、種々の乾燥方法を採用することができる。これらの乾燥方法の中でも、熱風乾燥が好ましく、露点温度が0〜100℃の気体による熱風乾燥がより好ましく、露点温度が20〜90℃の気体による熱風乾燥がさらに好ましく、特に通気バンド乾燥が好ましい。また、乾燥温度(熱風温度と同等)についても特に制限されず、100〜300℃が好ましく、150〜250℃がより好ましい。ただし、得られる吸水性樹脂の高物性化と白色度を両立させるために、乾燥温度が165〜230℃で、乾燥時間が50分以内であることが好ましく、20〜40分がより好ましい。乾燥温度や乾燥時間が上記範囲を外れると、吸水性樹脂の無加圧下吸水倍率(CRC)の低下や可溶分の増加、白色度の低下を引き起こすおそれがあり、好ましくない。
【0063】
また、粒子状含水ゲルの乾燥減量(吸水性樹脂粉末あるいは粒子1gを180℃で3時間加熱した際の重量変化)から求められる樹脂固形分は、80重量%以上が好ましく、85〜99重量%がより好ましく、90〜98重量%がさらに好ましく、92〜97重量%が特に好ましい。本乾燥工程において、樹脂固形分が上記範囲内に調整された乾燥物が得られる。当該乾燥物の樹脂固形分は、表面架橋前の吸水性樹脂粉末の樹脂固形分に実質的に相当し、本発明では分級工程での樹脂固形分として好ましく適用される。
【0064】
本工程で得られる乾燥物の含水率が高い、すなわち樹脂固形分が低い場合、例えば、樹脂固形分が80重量%未満の場合、(樹脂固形分あたりの)吸水倍率の低下や、表面架橋工程等、後の工程において吸水性樹脂の凝集や物性低下、さらには搬送性の低下が見られることがある。一方、本工程で得られる乾燥物の含水率が低い、すなわち樹脂固形分が高い場合、例えば、樹脂固形分が99重量%を超える場合、乾燥時間を長時間としないと得られないだけでなく、吸水性樹脂の劣化や粉体特性の低下(帯電防止、耐衝撃安定性、輸送時の物性低下等)が見られることがある。
【0065】
吸水性樹脂中の水分(含水率)は、分級の阻害要因となるが、含水率が1重量%未満の絶対乾燥状態とするより、上記所定範囲の含水率を有する吸水性樹脂とすることが好ましい。かような吸水性樹脂は、分級工程でより効果を発揮することができるため、上記範囲の含水率を有する吸水性樹脂の分級工程を含む吸水性樹脂の製造方法に好ましく適用できる。
【0066】
さらに、得られる吸水性樹脂の残存モノマー低減や、ゲル劣化(耐尿性)の防止、黄変の防止を図るため、重合終了後から乾燥を開始するまでの時間を短時間とすることが好ましい。すなわち、上記ゲル解砕工程の有無に関わらず、重合終了時点から乾燥開始までの時間を1時間以内とすることが好ましく、0.5時間以内とすることがより好ましく、0.1時間以内とすることがさらに好ましい。また、この期間中、含水ゲル状架橋重合体の温度は、50〜80℃に制御されるのが好ましく、60〜70℃がさらに好ましい。この温度範囲に制御することで、残存モノマーの低減や低着色を達成することができる。
【0067】
(2−4)粉砕工程
本工程は、上記乾燥工程で得られた乾燥物を、粉砕する工程であり、本発明では任意の工程である。本工程で使用できる粉砕機は、特に限定されず、従来から知られている粉砕機を使用することができる。具体的には、ロールミル、ハンマーミル、ロールグラニュレーター、ジョークラッシャー、ジャイレクトリークラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、カッターミル等を挙げることができる。これらの中でも、粒度制御の観点から、多段のロールミルまたはロールグラニュレーターを使用することが好ましい。なお、粒子状含水ゲル状重合体を乾燥する(特に通気バンド型乾燥機を用いて乾燥する)場合、乾燥期間中に上記粒子状含水ゲルが凝集し、ブロック状の乾燥物(凝集物)となることもある。この場合は、凝集物を粗解砕(凝集をほぐす操作)すればよい。
【0068】
粉砕工程により、上記乾燥工程で得られた乾燥物が粉砕されて、粉砕された乾燥物(不定形破砕状の吸水性樹脂粉末)が得られる。該粉砕工程によって、吸水性樹脂粉末の物性が向上するため、粉砕工程が好ましく適用される。
【0069】
本工程で得られる吸水性樹脂の物性向上の観点から、以下の粒度となるように制御することが好ましい。すなわち、吸水性樹脂粉末(表面架橋前)の重量平均粒子径(D50)は、200〜600μmが好ましく、200〜550μmがより好ましく、250〜500μmがさらに好ましく、350〜450μmが特に好ましい。また、目開き150μmの篩(JIS標準篩)を通過する微細な粒子(粒子径としては150μm未満)の割合が、吸水性樹脂粉末全体に対して、0〜5重量%が好ましく、0〜3重量%がより好ましく、0〜1重量%がさらに好ましい。また、目開き850μmの篩(JIS標準篩)を通過しない巨大な粒子(粒子径としては850μm以上)の割合が、吸水性樹脂粉末全体に対して、0〜5重量%が好ましく、0〜3重量%がより好ましく、0〜1重量%がさらに好ましい。また、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、0.20〜0.40が好ましく、0.25〜0.39がより好ましく、0.27〜0.38がさらに好ましい。これらの物性値は、標準篩を用いて、例えば、国際公開第2004/069915号やEDANA−ERT420.2−02(「PSD」)に記載された方法で測定される。さらに本発明では、粒子径が150μm以上850μm未満である粒子の割合が、吸水性樹脂粉末全体に対して、95重量%以上が好ましく、98重量%以上がより好ましく、上限としては100重量%である。上記割合を有する吸水性樹脂粉末を表面架橋することが好ましい。また、表面架橋後の吸水性樹脂、さらには最終製品の粒度についても、上記表面架橋前の吸水性樹脂粉末と同様の粒度が適用される。
【0070】
(2−5)分級工程
本工程は、吸水性樹脂の物性向上のため、特定の粒度(重量平均粒子径(D50)、粒子径分布等)に調整する工程である。なお、粒度制御は、本分級工程に限らず、重合工程(特に逆相懸濁重合)、粉砕工程、微粉回収工程、造粒工程等で適宜調整することもできる。以下、粒度は標準篩(JIS Z8801−1(2000)またはその同等品)で規定される。
【0071】
本工程において、篩分級を行い、さらに、下記(i)〜(ii)の少なくとも1つを行うことによって、表面架橋された吸水性樹脂の物性(特に通液性)が向上する。また、長時間の連続生産においても、物性低下(特に通液性)を低減することができる。なお、後述の実施例で、連続生産における物性値の検証を行っているが、一般的に長時間の稼働では時間の経過とともに物性の低下傾向が見られるものの、本発明ではこのような傾向は見られず、このような効果は、高通液性を有する吸水性樹脂の工業的な連続生産、特にSFC(生理食塩水流れ誘導性)が10[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上の吸水性樹脂の工業的な連続生産(例えば、1[t/hr]で24時間以上の連続生産)時に、顕著に発揮される。
【0072】
上記粉砕工程で得られた吸水性樹脂粉末は、後述する表面架橋工程の前および/または後で分級され、好ましくは表面架橋工程の前および後で分級され、特に好ましくは篩分級される。該分級工程により、上記所望の粒度を有する分級物(吸水性樹脂粉末)が得られる。該分級工程を表面架橋工程の前で行うことで、最終製品を所望する粒度範囲に調整することができるため、好ましい。また、該分級工程を表面架橋工程の後で行うことで、表面架橋剤の混合時または加熱処理時に発生する所望外の粒度を有する凝集粒子や、これらの工程で物理的、機械的破壊により発生する所望外の粒度を有する微細な粒子を、分級除去し、さらに解砕することで、優れた性能を有する吸水性樹脂を製造することができるため、好ましい。
【0073】
(a)従来の分級方法
吸水性樹脂の篩分級の方法については、例えば、下記の特許文献24〜29に開示されている。これら特許文献24〜29は、下記構成(i)〜(v)はおろか、本発明の課題や効果をなんら示唆しない。また、上記特許文献1〜23においても、本発明の分級方法をなんら開示しない。
【0074】
また、本願の優先日以前に国際出願された、特許文献30(国際出願日;2009年9月11日)には、吸水性樹脂の分級工程において除電することを開示するが、本発明の下記構成(i)〜(v)についてはなんら開示も示唆もない。
【0075】
(特許文献24)米国特許第6164455号明細書
(特許文献25)国際公開第2006/074816号パンフレット
(特許文献26)国際公開第2008/037672号パンフレット
(特許文献27)国際公開第2008/037673号パンフレット
(特許文献28)国際公開第2008/037675号パンフレット
(特許文献29)国際公開第2008/123477号パンフレット
(特許文献30)国際公開第2010/032694号パンフレット
(b)本発明の製造方法、分級方法、通液性向上方法
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法は、アクリル酸(塩)水溶液を重合して含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程と、上記含水ゲル状架橋重合体を乾燥して吸水性樹脂粉末を得る乾燥工程と、上記吸水性樹脂粉末を分級する分級工程と、上記吸水性樹脂粉末を表面架橋する表面架橋工程と、を含む吸水性樹脂の製造方法であって、下記構成(i)または(ii)のいずれか1つ以上を満たすことが必要である。さらに、下記構成(i)および/または(ii)に加えて下記構成(iii)〜(v)を満たすことが好ましい。
【0076】
(i)分級工程で用いる金属篩網の張り張力(テンション)が35[N/cm]以上100[N/cm]以下であること。
【0077】
(ii)分級工程で用いる金属篩網の下部にエアーブラシを使用すること。
【0078】
(iii)分級工程で用いる金属篩網の下部にタッピング材が使用されること。
【0079】
(iv)分級助剤粒子を使用し、分級助剤粒子および吸水性樹脂の微粉(微粒子)を除去すること。
【0080】
(v)分級工程で使用される金属篩網の破損監視を行うこと(好ましくは、超音波や高周波の電気的検知、特にAE法)。
【0081】
また、金属篩はさらに加熱または保温されることが好ましく、金属篩は除電されることが好ましく、分級は減圧条件下で行われることが好ましい。
【0082】
以下上記(i)〜(v)について詳細に述べる。
【0083】
(i)張り張力(テンション)
本発明における「張り張力(テンション)」とは、分級工程で用いられる金属篩の網を張る際にかかる荷重をいう。本発明の分級網(金属網)のテンションは、好ましくは35[N/cm]以上であり、より好ましくは40[N/cm]以上、さらに好ましくは45[N/cm]以上、特に好ましくは50[N/cm]以上である。また、テンションの上限は、100[N/cm]以下が好ましく、80[N/cm]以下がより好ましく、60[N/cm]以下がさらに好ましい。上記テンションが35[N/cm]以上であれば、吸水性樹脂粉末の分級効率の低下が防止でき、得られる吸水性樹脂の通液性が向上する。また、上記テンションが100[N/cm]以下であれば、金属網の耐久性を確保できるため連続運転が可能となる。なお、上記テンションの測定は、金属網を分級篩に張る際に、篩の中心部に対してテンションメーターで行う。その測定原理は、「Mechanical measuring of the fabric’s sagging under a constant force」である。上記テンションメーターは各種市販され、例えば、TEKOMAT社等から販売されており、本発明ではそれら市販品を使用することができる。
【0084】
本発明に係る分級工程を含む吸水性樹脂の製造方法において、金属篩網の張り張力(テンション)が吸水性樹脂の物性、特に表面架橋後の吸水性樹脂の物性、中でも加圧下吸水倍率(例えばAAP)や通液性(例えばSFC)に影響することを見出した。かような張り張力(テンション)は、後述の(2−6)表面架橋工程に記載した有機表面架橋剤と無機表面架橋剤を併用する場合、さらには上記(2−4)粉砕工程を含む不定形破砕状の吸水性樹脂に影響することを見出し、本発明を完成させた。
【0085】
加圧下吸水倍率や通液性を向上させる技術は、上記特許文献1〜23等、数多く提案されているが、これらの先行文献には、分級工程、中でも金属篩網の張り張力(テンション)に着目した技術は開示されていない。なお、本発明の張り張力(テンション)の制御によって、上記物性(特に加圧下吸水倍率や通液性)の向上のみならず、さらに上記特定物性を有する吸水性樹脂での生産性の向上や運転トラブル(篩網の破れによる生産停止)の防止を図ることができるため、さらに好ましい。張り張力(テンション)を一定範囲に制御することで、連続運転途中における篩網の破損も少なく、長期間の連続運転が可能となる。従来、長期間の連続運転を行うと、急激な物性低下や粒度変化が確認されることがあったが、かかる原因を調査した結果、分級工程での篩の破損が原因であることを見いだし、分級工程でのテンション制御によって解決することができた。
【0086】
また、1の分級工程(分級装置)で1つまたは複数の分級網(金属篩網)を使用して分級する場合、および/または、2以上の複数の分級工程(例えば、表面架橋工程前後での分級工程1(前)、分級工程2(後)、分級工程3(後))で1つまたは複数の分級網(金属篩網)を使用して分級する場合、金属篩網の張り張力(テンション)の制御は、一部の金属篩網または全部の金属篩網に対して行う必要がある。すなわち、表面架橋工程の前および/または表面架橋工程の後に行われる分級工程において、当該分級工程で使用される金属篩網の全数に対して、その30%以上の金属篩網で張り張力(テンション)を制御することが好ましく、以下順に、50%以上、70%以上、80%以上、90%以上が好ましく、実質100%の金属篩網で張り張力(テンション)を制御することが最も好ましい。
【0087】
金属網の張り方としては、特に限定されないが、篩枠に金網を置き、金網の一端をジャッキ等で引っ張り平面としつつ、金網を篩枠にハンダやボルトで固定すればよい。本発明のテンションは、金属篩作成時のテンションで規定される。金属網は、後述の金属製、好ましくはステンレス(好ましくは、SUS304、SUS316)製またはマグネステン製の網が用いられる。
【0088】
上記、分級網のテンションは下記(ii)または(iii)と併用されてもよい。また、(iv)および/または(v)がさらに併用されてもよい。
【0089】
(ii)エアーブラシ(エアーナイフ)
吸水性樹脂粉末の分級効率や得られる吸水性樹脂の物性の観点から、上記金属篩網の下部にエアーブラシ(エアーナイフ)が使用される。本発明においてエアーブラシとは圧縮した空気などの気体(エアー)を噴射する器具をいい、エアーナイフとも称される。
【0090】
上記エアーブラシ(エアーナイフ)としては、エアージェットクリーナー、エアージェットブラシクリーナーなどが挙げられる。
【0091】
本発明に係る分級工程を含む吸水性樹脂の製造方法において、エアーブラシ(エアーナイフ)が吸水性樹脂の物性、特に表面架橋後の吸水性樹脂の物性、中でも加圧下吸水倍率(例えばAAP)や通液性(例えばSFC)に影響することを見出した。かようなエアーブラシ(エアーナイフ)は、後述の(2−6)表面架橋工程に記載した有機表面架橋剤と無機表面架橋剤を併用する場合、さらには上記(2−4)粉砕工程を含む不定形破砕状の吸水性樹脂に影響することを見出し、本発明を完成させた。
【0092】
加圧下吸水倍率や通液性を向上させる技術は、上記特許文献1〜23等、数多く提案されているが、これらの先行文献には、分級工程、中でもエアーブラシ(エアーナイフ)に着目した技術は開示されていない。なお、本発明のエアーブラシ(エアーナイフ)の制御によって、上記物性(特に加圧下吸水倍率や通液性)の向上のみならず、さらに上記特定物性を有する吸水性樹脂での生産性の向上できるため、さらに好ましい。
【0093】
また、1の分級工程(分級装置)で複数の分級網(金属篩網)を使用する場合、および/または、2以上の複数の分級工程(例えば、表面架橋工程前後での分級工程1(前)や分級工程2(後))で分級する場合、エアーブラシ(エアーナイフ)の使用は、一部の篩で行ってもよく、全部の篩に対して行ってもよいが、好ましくは少なくとも一部の篩(300μm以下の篩)で使用され、さらには全体の30%以上、以下順に、50%以上、70%以上、90%以上、100%の篩で、エアーブラシ(エアーナイフ)を使用することが好ましい。
【0094】
上記タッピング材を金属篩網の上部で使用したり、該タッピング材を使用しなかったりする場合、吸水性樹脂の物性(例えば、通液性)の低下、特に経時的な低下や、微粉や粉塵の増加といった問題が生じるため、好ましくないが、この場合、回転するノズルアームから噴射するエアーを、金属篩網の裏面(特に円形篩の裏面)から強力に吹き付けクリーニングすればよい。
【0095】
本発明のエアーブラシは、特に微粉の分級時に好ましく使用され、目開き200μm以下の篩、より好ましくは150μm以下の篩の下部に設置されることが好ましい。上記篩の目開きとして、下限は30μm以上が好ましく、45μm以上がより好ましく、75μn以上がさらに好ましい。エアーブラシは上記タッピング材の代替として、微粉の分級に好ましく使用され、得られる吸水性樹脂の通液性(SFCやGBP)を向上させることができる。
【0096】
本発明のエアーブラシは、吸水性樹脂粉末の優れた物性が安定に保持され、かつ、閉塞現象が抑制されうるという観点から、一次空気および二次空気として乾燥空気を用いることが好ましい。該乾燥空気の露点としては、0℃以下が好ましく、−30℃以下がより好ましく、−35℃以下がさらに好ましく、−40℃以下が特に好ましい。露点を制御する方法としては、メンブレンドライヤーを使用する方法、冷却吸着式ドライヤーを使用する方法、ダイヤフラムドライヤーを使用する方法やそれらを併用する方法が挙げられる。吸着式ドライヤーを使用する場合、加熱再生式でもよく、非加熱再生式でもよく、非再生式でもよい。
【0097】
また、乾燥空気以外に加熱空気を用いてもよい。加熱空気の加熱方法としては、特に限定されないが、熱源を用いて直接空気を加熱してもよいし、装置や配管が加熱されることによる間接的な加熱でもよい。本加熱空気の温度としては、30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましい。
【0098】
上記エアーブラシは、好ましくは上記(i)のテンションと併用される。また、好ましくは(iv)および/または(v)がさらに併用される。
【0099】
(iii)タッピング材
吸水性樹脂粉末の分級効率や得られる吸水性樹脂の物性の観点から、上記金属篩網の下部にタッピング材が使用される。タッピング材とは、ふるい装置の目詰まり防止のために使用される弾性材料をいい、タッピング材の形状は、球形、回転楕円体、多面体等転動する形状であればどのようなものでも利用できる。好ましくは、タッピングボール(球状)、タッピングブロック(球状)、タッピングブラシから選択される少なくとも1つが使用され、より好ましくは、タッピングボールまたはタッピングブロック、さらに好ましくは、タッピングボールが使用される。なお、該タッピング材を金属篩網の上で使用したり、該タッピング材を使用しなかったりする場合、吸水性樹脂の物性(例えば、通液性)の低下、特に経時的な低下や、微粉や粉塵の増加といった問題が生じるため、好ましくない。
【0100】
本発明では分級工程を含む吸水性樹脂の製造方法において、タッピング材(好ましくは加熱されたタッピング材)が吸水性樹脂の物性、特に表面架橋後の吸水性樹脂の物性、中でも加圧下吸水倍率(例えばAAP)や通液性(例えばSFC)に影響することを見出した。かようなタッピング材は、後述の(2−6)表面架橋工程に記載した有機表面架橋剤と無機表面架橋剤を併用する場合、さらには上記(2−4)粉砕工程を含む不定形破砕状の吸水性樹脂に影響することを見出し、本発明を完成させた。
【0101】
加圧下吸水倍率や通液性を向上させる技術は、上記特許文献1〜23等、数多く提案されているが、これらの先行文献には、分級工程、中でもタッピング材に着目した技術は開示されていない。なお、本発明のタッピング材の制御によって、上記物性(特に加圧下吸水倍率や通液性)の向上のみならず、さらに上記特定物性を有する吸水性樹脂での生産性の向上できるため、さらに好ましい。
【0102】
また、1の分級工程(分級装置)で複数の分級網(金属篩網)を使用する場合、および/または、2以上の複数の分級工程(例えば、表面架橋工程前後での分級工程1(前)や分級工程2(後))で分級する場合、タッピング材の使用は、一部の篩で行ってもよく、全部の篩に対して行ってもよいが、好ましくは少なくとも一部の篩(300μm以下の篩)で使用され、さらには全体の30%以上、以下順に、50%以上、70%以上、90%以上、100%の篩で、タッピング材を使用することが好ましい。
【0103】
本発明のタッピング材を金属篩網の下部で使用する方法としては、とくに制限されないが、例えば、該金属篩網の下部に該金属篩網の目開き以上の、目開きを有する金属篩網あるいは孔径を有するパンチングメタルをさらに設置して、これらの金属篩網あるいはパンチングメタル上にタッピング材(好ましくはタッピングボールまたはタッピングブロック)を充填する方法が挙げられる。分級効率の観点から、パンチングメタル上でタッピング材を使用することが好ましい。
【0104】
上記タッピング材としては、樹脂製であることが好ましく、例えば、天然ゴム、ウレタン、クロロプレンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、白色の吸水性樹脂への付着や混入等を考慮して、白色あるいは乳白色のタッピング材、特に、天然白色ゴム、白色ウレタン等を用いるのが好ましい。なお、これらの樹脂の圧縮弾性率(ヤング率)は0.05〜1.0GPaが好ましく、0.06〜0.5GPaがより好ましい。
【0105】
また、タッピング材の大きさや形状は、所望する吸水性樹脂の物性に応じて適宜決定されるが、好ましくはブロック状や球状であり、その径(直径)は5〜200mmが好ましく、10〜100mmがさらに好ましく、20〜60mmが特に好ましい。さらに上記範囲内であれば、異なる径のタッピングボールまたはタッピングブロックを併用してもよい。なお、タッピングブロックを使用する際は、その体積を球に換算して径とする。
【0106】
本発明では、複数個のタッピング材(タッピングボールまたはタッピングブロックなど)を使用することが好ましい。本発明のタッピング材の使用量は、金属篩網の面積に対してタッピングボールの断面積で規定し、その量は1%以上が好ましく、以下順に、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上が好ましく、上限はタッピングボール間の隙間を考慮して最密充填未満が好ましく、70%以下がより好ましい。これらの範囲内で適宜決定される。
【0107】
金属篩網の下部にタッピング材を用いて分級された吸水性樹脂粉末は、タッピング材を充填した(載せた)金属篩網あるいはパンチングメタル、好ましくはパンチングメタルを通過して、次工程に供給されればよい(
図2を参照)。
【0108】
図2に示す篩分級装置においては、目開きの異なる3つの金属篩網21〜23の下部に、それぞれ、パンチングメタル24が配置されており、このパンチングメタル24上にタッピングボール25が充填されている。3つの金属篩網21〜23の目開きは上部から下部にかけて段階的に小さくなっており、一例をあげると、3つの金属篩網21、22、23の目開きはそれぞれ、1000μm、850μm、100μmである。
【0109】
ここで、タッピング材を充填した(載せた)金属篩網あるいはパンチングメタルは、吸水性樹脂の分級に使用される金属篩網の下部に設置されることから、その形状は当該金属篩網と実質的に同じであることが好ましい。例えば、吸水性樹脂の分級に使用される金属篩が円形の場合には、タッピング材を充填した(載せた)金属篩網あるいはパンチングメタルも同様に円形であることが好ましい。
【0110】
上記パンチングメタルの孔径は、タッピング材より小さく、かつ、5mm以上であればよく、さらに10mm以上であることが好ましい。なお、パンチングメタルの孔径の上限は特に制限されないが、30mm以下であることが好ましい。また、分級効率の観点から、好ましくは、パンチングメタルは、金属篩網の目開きに対して5倍以上の孔径を有する。より好ましくは、パンチングメタルは、金属篩網の目開きに対して6倍以上20倍以下の孔径を有する。
【0111】
また、パンチングメタルの開孔率は、15〜50%が好ましく、20〜45%がより好ましく、25〜40%がさらに好ましい。なお、上記開孔率は、孔、ピッチ(P)等で決定されるが、一定領域に孔を有しない場合、例えば、パンチングメタルが縁を有する場合、その部分も含んだ面積で規定される。開孔率が上記範囲から外れる場合、吸水性樹脂の物性が低下し、さらに分級効率が低下する傾向にある。
【0112】
また、上部の篩と下部に設置される金網(パンチングメタル)との距離(間隔)は、適宜決定されるが、本発明の効果の面から、タッピング材の直径に対して通常1.1〜5倍が好ましく、1.2〜3倍がより好ましく、1.3〜2倍がさらに好ましい。上記間隔がこの範囲を外れる場合、得られる吸水性樹脂の物性が低下し、さらに分級効率が低下する傾向にあるため、好ましくない。
【0113】
また、本発明において、タッピング材は、金属篩網の下部に配置されたパンチングメタル上に設置されるが、平面方向でパンチングメタル全体あるいは複数の部屋に仕切られたパンチングメタル上に設置されることが好ましい(
図3を参照)。
【0114】
図3に示したように、複数の部屋に仕切られたパンチングメタル(segmented screens)を用いる場合、その仕切り方は適宜決定され特に限定されないが、例えば円形のパンチングメタルの場合、2分割、4分割、8分割としたり、中央部をさらに円形に仕切ったりすることができる。さらにこれらを併用して、2〜100分割、好ましくは4〜50分割、より好ましくは8〜40分割に仕切ることもできる。なお、各部屋の大きさや形状、さらには各部屋に設置するタッピング材は、すべて同じでも、違っていてもよい。
【0115】
上記タッピング材(ボール)は、好ましくは上記(i)のテンションと併用される。また、好ましくは(iv)および/または(v)がさらに併用される。
【0116】
本発明において、得られる吸水性樹脂の物性向上や生産性向上の観点から、分級時のタッピング材が加熱されていることが好ましい。加熱温度としては、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。加熱温度の上限は適宜設定されるものの、過度の加熱はタッピング材の効果を低減させ、さらにはタッピング材の寿命を短くすることが懸念されるため、通常、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましく、90℃以下が特に好ましく、80℃以下が最も好ましい。従って、タッピング材の温度としては、例えば40〜100℃、50〜100℃が、60〜100℃等が選択できるが、これらの範囲に限定はされず、上記加熱温度の上限値と下限値から選ばれる任意の範囲で規定される。
【0117】
本発明に係るタッピング材を上述した温度範囲に加熱するには、タッピング材を外部から加熱すればよく、その熱源として篩内部、篩表面、吸水性樹脂を所定温度に加熱し、タッピング材との接触時間や接触量(例えば、篩への熱風の流量、篩中での吸水性樹脂の流量や滞留量等)を制御すればよい。
【0118】
本発明において、タッピング材は使用時間の経過とともに磨耗するため、タッピング材の磨耗に応じて定期的にタッピング材の交換を行うことが好ましい。タッピング材の磨耗は、例えば球形の直径の減少量で把握することができ、当該直径の減少量が3%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上となった時点で交換すればよい。定期的にタッピング材を交換しない場合、吸水性樹脂の物性が稼働時間の経過とともに徐々に低下することがある。また、交換の時期(周期)は適宜決定されるが好ましくは30日〜2年、より好ましくは60日〜1年の実質的な連続運転をもって交換すればよい。なお、「実質的な連続運転」とは多少の休止や切り替えを含む場合であっても、その運転期間の80%以上、90%以上、95%以上の連続運転がされている状態を意味する。
【0119】
(iv)分級助剤粒子
本発明の分級工程において、吸水性樹脂以外の分級助剤粒子を使用してもよい。すなわち、表面架橋工程の前および/または表面架橋工程の後に行われる分級工程において、当該分級工程で使用される金属篩網に上記吸水性樹脂粉末および分級助剤粒子を投入してもよい。好ましくは、分級効率や吸水性樹脂の物性の観点から、当該分級工程で使用される金属篩網に上記吸水性樹脂粉末および上記吸水性樹脂粉末と比重の異なる分級助剤粒子を投入し、かつ、吸水性樹脂の微粉および分級助剤粒子を除去する。該分級助剤粒子としては、特に制限されないが、吸水性樹脂粉末に対して比重の大きい無機微粒子または有機微粒子が挙げられ、好ましくは無機微粒子、より好ましくは水不溶性の無機微粒子が使用される。吸水性樹脂粉末の分級時に分級助剤粒子が混合され、分級、特に篩分級された後、吸水性樹脂微粒子と分級助剤粒子が混合状態で除去される。分級された吸水性樹脂微粒子と分級助剤微粒子は、必要により分離した後、さらに再使用することもできる。
【0120】
本発明で使用される分級助剤粒子は、分級効率の観点から、吸水性樹脂粉末の比重(ポリアクリル酸ナトリウムの場合で約1.6[g/cm
3])より大きいことが好ましく、通常、2[g/cm
3]以上、より好ましくは2.0〜4.0[g/cm
3]、さらに好ましくは2.3〜3.5[g/cm
3]、特に好ましくは2.5〜3.0[g/cm
3]の分級助剤粒子が使用される。また、その見かけ比重(嵩比重)は、0.5[g/cm
3]以上が好ましい。
【0121】
用いられる無機微粒子、特に水不溶性微粒子としては、好ましくは、水不溶性多価金属塩または水酸化物や酸化物の粉末であり、より好ましくは水不溶性多価金属塩の粉末であり、カルシウム塩、アルミニム塩が例示され、炭酸カルシウム(2.711[g/cm
3](方解石)、2.93[g/cm
3])、硫酸カルシウム(2.96[g/cm
3](無水物)、2.32[g/cm
3](2水和物))、酸化カルシウム(3.35[g/cm
3])等が使用される。例えば、石灰石を粉砕して製造された炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウムと呼ばれ、その粒子の大きさによってグレードが分けられ、必要により表面処理されてなる。有機微粒子としては、特に制限されないが、フッ素樹脂などが挙げられる。
【0122】
上記分級助剤粒子の粒子径は、100μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。下限は、10nm以上が好ましく、50nm以上がさらに好ましい。これらの分級助剤粒子の表面が、脂肪酸、ロジン酸、リグニン酸、4級アンモニウム塩等の物質で被覆されていてもよく、これら物質の使用量は、分級助剤粒子に対して、0.01〜100重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましく、0.5〜5重量%がさらに好ましい。なお、耐ブロッキング(Anti−Caking)、通液性および拡散性向上のため、吸水性樹脂にシリカやカオリン等の無機微粒子を混合する方法(国際公開第92/18171号、欧州特許第629411号、米国特許第6124391号、日本国特開昭59−80459号等)が知られているが、本発明は、吸水性樹脂粉末の分級効率向上や得られる吸水性樹脂の通液性向上のため、分級助剤粒子を吸水性樹脂微粒子とともに除去(好ましくは、添加した分級助剤粒子の10重量%以上、以下順に、30重量%以上、50重量%以上、70重量%以上が好ましく、90重量%以上が特に好ましい。)する。なお、分級助剤粒子と吸水性樹脂微粒子の混合物における分級助剤の割合は、使用される分級助剤粒子に応じた測定方法を適宜採用することで測定される。
【0123】
本発明の分級助剤粒子は、好ましくは表面架橋の前および/または後、より好ましくは表面架橋の後の分級工程において、使用される。さらには上記(c)エアーブラシと同様、特に微粉の分級時に好ましく使用され、目開き200μm以下の篩、より好ましくは150μm以下の篩上部に添加されることが好ましい。上記篩の目開きとして、下限は30μm以上が好ましく、45μm以上がより好ましく、75μm以上がさらに好ましい。特定範囲の吸水性樹脂微粉末の分級に好ましく使用され、通液性(SFCやGBP)の向上を図ることができる。
【0124】
上記分級助剤粒子は、好ましくは上記(i)のテンションと併用され、また、(ii)篩下部のエアーブラシまたは(iii)篩下部のタッピング材のいずれかひとつと併用されうる。
【0125】
(v)分級網の破損監視
本発明では、分級網(金属篩網)の破損の有無を定常的に監視しつつ分級することが好ましい。すなわち、本発明では、上記表面架橋工程の前および表面架橋工程の後に行われる分級工程において、当該分級工程で使用される金属篩網の破損の有無を監視することが好ましい。篩網の破損を定常的に監視することにより、物性低下の確認を即座に行い、巨大スケールの生産でもスペックアウト品を最小限に抑えることができる。分級網の破損の確認方法は、特に制限されないが、分級スクリーンの破れを検知する手段として、超音波や高周波を利用し、電気的に検知する方法(例えば、国際公開第2004/045198号パンフレット、特開平11−290781号公報等)や、静電容量の変化を検知する方法(例えば、特開平04−281882号公報)が挙げられる。また、好適な網破れ検知システムの一例として、マイクロ波を用いて分級網の破損(破れ)を自動的に感知するセントリスキャンTM(西村機会製作所)を、加熱あるいは保温された円形型篩機に取り付ける方法もある。
【0126】
上記超音波を使用する好適な方法として、非破壊検査法が挙げられるが、具体的には、AE(アコースティックエミッション)法の他、超音波探傷法がある。超音波探傷法は、送信した超音波が欠陥により反射された信号を解析する方法である。
【0127】
なお、従来は、吸水性樹脂の粒度変化によって篩網の破損を検知していたが、巨大スケール(特に1[t/hr]以上の連続生産)では粒度分布の顕著な変化が検知されてしまい、篩網の破損を認識できず、大量のスペックアウト品を産出することもあった。上記従来法としては、例えば、国際公開第2008/037674号に開示されている、電磁波を少なくとも0.1[m/s]で流動している搬送物質量流量に入射する方法による検知方法が挙げられる。
【0128】
この従来の検知方法に対して、本発明では超音波や高周波、特にアコースティックエミッション(AE)法で篩網の破損を直接検査することで、瞬時に篩網の破損が判別でき、その結果、安定的な連続生産が可能となる。破損監視は好ましくは上記(i)のテンションと併用され、さらに(ii)篩下部のエアーブラシまたは(iii)篩下部のタッピング材のいずれかひとつと併用されうる。
【0129】
(AE法;アコースティックエミッション法)
AE法は、割れ発生の初期微候の検出が可能であり、運転中の割れ発生、あるいは割れ進行状態の監視用としても使用される。AE(アコースティックエミッション)波は、伝播媒体に直接取り付けたAEセンサを用いて検出される。センサ内には圧電素子が固着されており、到着したAE波を電気信号に変換する。この信号は、S/N(信号/雑音)比を良くするために内蔵のアンプで40dB(100倍)程度増幅され、さらに必要に応じて外付けアンプで20dB(10倍)程度増幅した後、AE計測装置に入力して解析が行われる。
【0130】
AE(アコースティックエミッション)は、「材料が変形したり亀裂が発生したりする際に材料が内部に蓄えていた歪みエネルギーを弾性波として放出する現象」と定義されている。この弾性波を材料の表面に設置した変換子すなわちAEセンサで検出し、信号処理を行うことにより材料の破壊過程を評価する手法がAE法である。検出されるAE信号は、通常、数kHz〜数MHzに周波数帯域を持つ。例えば、金属材料では発生するAEは主として100〜1000kHzの周波数領域に成分をもつ信号が多く放出される。
【0131】
信号を検出する為に使用するAEセンサは、一般的にPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)等の圧電素子を内蔵し、接着剤やシリコングリース等の音響カップラを介し材料表面に密着させてAE信号を検出する。アコースティックエミッション(AE)信号の分類としては、突発型波形、観察されるAE信号は性質を異にする2種類に分類できる。一つは立ち上がりが鋭く減哀する突発型と呼ばれるAE波形で、もう一つは比較的周波数の高い連続したAE波形である。突発型AE波形は、主に固体内で生ずる亀裂進展や変態に伴い放出されるため、破壊の進展に対応して検出される。
【0132】
(c)分級工程の場所
本発明の分級工程は、表面架橋工程の前および/または後に設置され、好ましくは、表面架橋工程前および後に行われる。また、分級工程は表面架橋工程の後の少なくとも2ヶ所に設置されることが好ましく、さらに好ましくは、表面架橋工程の後に2ヶ所以上設置されかつ表面架橋工程の前にも1か所以上設置され、特に好ましくは表面架橋工程の後に2ヶ所以上および表面架橋前にも2ヶ所以上設置される。表面架橋後に2ヶ所以上、特に2ヶ所に分級工程が設置される場合、まず表面架橋後に分級を行い、次いで最終工程として微粉(特に200μm以下の粒子径の微粉であり、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは80〜120μmの粒子)分級を行った直後に、製品ホッパー(最終ホッパー)に貯蔵する。すなわち、当該好ましい形態においては、分級工程が製品ホッパーに貯蔵される直前の最終工程で行われる。この操作により、微粉や粉塵も低減され、さらに通液性(GBPやSFC)も向上するため、好ましい。
【0133】
また、分級工程後の次工程までの輸送(例えば、空気輸送)距離が長い場合、輸送時にダメージを受けることにより微粉や粉塵が再度発生するため、好ましくない。したがって、最終の分級工程、特に微粉分級から製品ホッパーまでの距離は0〜100m以下とすることが好ましく、以下順に、50m以下、25m以下、10m以下、5m以下が好ましい。
【0134】
(d)除電分級
本発明は、上記(i)〜(v)の少なくとも1種以上の分級工程(好ましくは、篩分級工程)において、除電を行うことが好ましい。分級工程で除電を行うことによって、表面架橋された吸水性樹脂の物性、特に通液性(例えばSFC)が向上する。このような効果は、実験室レベルの小スケールよりも、高通液性の吸水性樹脂の製造や工業的な連続生産、特にSFCが10[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上の吸水性樹脂や、1[t/hr]以上の連続生産を24時間以上続ける際に、顕著に発揮される。除電分級は、上記特許文献30(国際公開第2010/032694号パンフレット)に記載されている。
【0135】
(除電方法)
本発明において、除電は、「分級装置」、「吸水性樹脂粉末」、「篩」の少なくとも1つに対して行えばよいが、これらの3つは、分級工程で互いに接するため、いずれかを除電すればよく、分級装置および/または篩自体を除電することが好ましい。
【0136】
除電方法としては、例えば、下記(A)〜(C)の方法が適用できるが、本発明は、これらに限定されない。
【0137】
(A)除電ブラシ:静電気が発生した篩面から除電
(B)イオン化気流(イオン発生ブラシ):高電圧を印加することでイオンを発生させ除電
(C)接地(アース):回転物、回転軸、回転体、装置に発生した静電気を除電
上記(A)の除電ブラシを使用する場合、除電ブラシと帯電物との間に少し隙間を作る自己放電法を採用してもよく、あるいは接地(アース)した除電ブラシを帯電物に接触させ、溜った静電気を漏洩電流として取り出し、除電する接地漏洩法を採用してもよい。このような除電ブラシの具体例としては、ステンレス繊維、カーボン繊維、アモルファス繊維、化学繊維、植物繊維、獣毛等で製造されたものが好ましく、その線径は、通常1〜100μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。また、その線長は、通常1〜100mmが好ましく、ステンレス極細加工がより好ましい。
【0138】
上記(B)のイオン化気流(イオン発生ブラシ)を使用する場合、使用しうるイオン発生ブラシとしては、例えば、除電器(イオナイザー)が挙げられる。かかる除電法では、空気あるいは他のガス中でイオンを生成し、このイオンによって帯電電荷を中和する。そのため、除電装置はイオナイザーとも呼ばれる。具体的には、除電器(イオナイザー)を用いて、分級装置または吸水性樹脂の帯電量、帯電電荷を測定し、+帯電または−帯電に対してその反対の電荷を付与し、電気的に中和状態とすればよい。この際、対象物の帯電状況に応じた最適な除電とイオンバランス制御を両立させればよい。対象物の帯電量はイオン電流をコントローラに内蔵されたイオン電流検出回路により測定すればよい。このように、逆極性の電荷で中和し、静電気を全く無力化してしまう方法(B)は、吸水性樹脂に好ましい方法である。
【0139】
上記(C)の接地を使用する場合、分級装置が設置された建屋または架台を、下記の接地抵抗値を示す接地に電気的に接続し、装置に帯電物に接触させて、溜った静電気を漏洩電流として取り出し、除電する方法である。この方法は簡易であり、分級装置全体が除電装置として働くため効果が高く、吸水性樹脂に好ましい方法の1つである。
【0140】
かかる除電の際に取り出された漏洩電流は、好ましくは下記接地抵抗値を示す接地(アース)を通じて大地に流される。すなわち、本発明の分級工程では、下記の接地抵抗値を示す接地を用いて除電されることが好ましい。
【0141】
(接地抵抗)
接地抵抗とは、接地のために土壌に埋設したアース電極から大地に流れる電流に対する抵抗値のことを示す。測定方法としては、市販されている接地抵抗計を用いて測定すればよい。接地抵抗値の好ましい範囲としては、分級工程の観点から、好ましくは100Ω以下、より好ましくは10Ω以下、さらに好ましくは5Ω以下である。接地抵抗値の下限は特に制限されず、小さいほど好ましいが、通常1Ω以上である。
【0142】
(e)分級装置
本発明は、上記(i)〜(v)の少なくとも1種以上の分級工程(好ましくは、篩分級工程)において、好ましくはさらに下記分級装置が使用されてなる。
【0143】
(分級網)
本発明では分級網を使用して吸水性樹脂粉末を分級する。分級網は、例えば、JIS、ASTM、TYLER等の各種標準篩が例示できる。これら篩は板篩でもよく、網篩でもよい。網篩の形状はJIS Z8801−1(2000)等を参照して適宜選択される。標準篩の目開きは好ましくは10μm〜100mm、さらに好ましくは20μm〜10mmの範囲で、1種または2種以上の篩、特に金属篩が使用されることが好ましい。
【0144】
また、篩網の面積(篩網面の面積)は、分級効率の観点から、1〜10m
2/枚であることが好ましく、1.5〜7m
2/枚であることがより好ましい。
【0145】
篩分級は上部のみを分級しても、または下部のみを分級してもよいが、好ましくは、上下限を同時に分級することが好ましい。すなわち、複数の篩が同時に使用されることが好ましく、さらに好ましくは、物性向上の点から少なくとも3種類の目開きの篩を用いる。かかる手法として、上位・下位の所定の篩以外に中間篩または上位篩を用いる好ましい。好適な篩としては、例えば、上限として、850〜1000μm、710〜850μm、600〜710μmの篩であり、下限として150〜225μmの篩である。さらに好ましくは、適宜、その中間ないし上部に篩を追加すればよい。
【0146】
(分級装置)
本発明に用いられる分級装置は、ふるい網面を有するものであれば特に限定されず、例えば、バイブレーティングスクリーンやシフタに分類されるものが挙げられる。バイブレーティングスクリーンには、傾斜形、ローヘッド(Low−head)形、ハムマー(Hum−mer)、レーブン(Rhewum)、タイロック(Ty−Rock)、ジャイレックス(Gyrex)、および楕円振動(Eliptex)等があり、シフタにはレシプロ(Reciprocating)形、Exolon−grader、Traversator−sieb、Sauer−meyer、ジャイレトリーシフタ(Gyratory)、ジャイロシフタ、およびローテックススクリーン(Ro−tex)等がある。これらは、網面の運動形状(円、楕円、直線、円弧、擬似楕円、スパイラル、螺旋状)、振動方式(自由振動、強制振動)、駆動方法(偏心軸、不平衡重錘、電磁石、インパクト)、網面の傾斜(水平式、傾斜式)、設置方法(床置式、吊り下げ式)等によって細分類されている。中でも、金属篩網がエキセントリック傾斜、ラジアル傾斜(中央から周辺に材料を分散させるふるい網の傾斜)、またはタンジェンシャル傾斜(網上の排出スピードをコントロールするふるい網の傾斜)からなる3次元運動軌跡を描くものであることが好ましい。
【0147】
特に、本発明の効果の面から、揺動式(タンブラシフタ、Tumbler−Screening machines)のように、ラジアル傾斜やタンジェンシャル傾斜の組み合わせにより、ふるい網面を螺旋状に動かす分級装置が好ましい。
【0148】
(分級振動)
本発明による分級方法に適した篩分け装置は、何ら制限されることはないが、好ましくは、平面分級方法を使用するものが好ましく、特に好ましくはタンブル形篩分け装置である。この篩分け装置は、分級をサポートするために典型的には振動させる。振動は、好ましくは、分級すべき製品が篩い上にスパイラル状(螺旋状)に導かれる程度におこなう。これらの強制的なバイブレーションは、典型的には0.7〜40mm、好ましくは1.5〜25mmの振れ幅で、かつ60〜6000rpm、好ましくは100〜600rpmの振動数を有する。
【0149】
(ガイド)
本発明では分級装置の篩が吸水性樹脂粉末のガイドを有することも好ましい。かかるガイドの設置でより効率的な分級が可能となる。かかるガイド装置は吸水性樹脂粉末を篩中心部に誘導するなどの働きをしており、その長さは直径の5〜40%程度に決定される。
【0150】
(材質および表面粗さ)
篩装置の材質は特に制限されず、樹脂製、金属製など適宜選択される。ただし、特開平11−156299号に例示の樹脂コートされた篩に比べて、好ましくは、吸水性樹脂との接触面を含めて金属性篩であり、特に好ましくはステンレス製篩である。この場合、より本発明の効果を発揮する。ステンレス鋼が鏡面仕上げされることにより、物性が更に高まる。ステンレス鋼としては、SUS304、SUS316、SUS316L等が挙げられる。マゲネステンも好適に使用される。
【0151】
物性の向上や吸水性樹脂微粒子の篩装置内面への付着等の観点から、本発明において分級工程で用いられる篩装置(金属篩網)内面は、JIS B 0601−2001で規定される表面粗さ(Rz)が800nm以下に制御されることが好ましい。すなわち、好ましくは、金属篩網の材質がSUS304もしくはSUS316であり、かつ、金属篩網内面の表面粗さ(Rz)が800nm以下である。表面粗さ(Rz)は好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下に平滑化される。なお、表面粗さ(Rz)は、表面凹凸の最大高さ(μm)の最大値を意味する。表面粗さ(Rz)の下限は0nmであるが、10nm程度でも大きな差はなく、10nm、さらには20nm程度でも十分である。その他の表面粗さ(Ra)もJIS B 0601−2001で規定される。Raは、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、特に好ましくは5nm以下である。表面粗さ(Ra)の下限は、0nmであるが、1nm程度でも大きな差はない。このような表面粗さは、触針式表面粗さ測定器によりJIS B 0651−2001に準拠して測定することができる。また、このような表面粗さは、光波干渉式表面粗さ測定器により、JIS B 0652−2002に準拠して測定することができる。
【0152】
(f)分級条件
本発明は、上記(i)〜(v)の少なくとも1種以上の分級工程(好ましくは、篩分級工程)において、好ましくはさらに下記条件、特に篩は所定温度に加熱ないし保温されてなる。また、分級条件は減圧であり、気流が通気されてなる。
【0153】
(加熱温度)
本発明は除電に加えて、好ましくは、分級装置を加熱した状態および/または保温した状態で用いる。また、好ましくは、吸水性樹脂も所定温度に加熱された状態で用いる。
【0154】
本発明における加熱とは、積極的に熱を与えることを指す。したがって、加熱した状態には、初期状態において分級装置に熱を与えて一定温度まで昇温し、その後は熱を与えない場合や、初期状態だけでなく恒常的に分級装置に熱を与える場合等が含まれる。一方、保温とは、熱は与えないで熱を逃しにくくすること、すなわち温度を下がりにくくすることを指す。
【0155】
分級装置を加熱した状態および/または保温した状態とするには、分級装置の置かれている雰囲気温度を上げる等すればよい。好ましい分級装置は加熱手段および/または保温手段を備える乾式分級装置である。
【0156】
かかる分級装置(使用する篩の温度)は40℃以上、さらには40〜80℃の温度範囲で用いるのが好ましい。より好ましくは45〜60℃の温度範囲である。温度が40℃以上であれば、物性の低下が防止され、一方、100℃さらには80℃未満の温度であれば、高温にすることによる経済的不利益を防止でき、分級効率への悪影響を防止できる。
【0157】
分級装置は吸水性樹脂粉末の温度に対し20℃よりも低くない温度で用いることが好ましい。より好ましくは10℃よりも低くない温度である。
【0158】
また、吸水性樹脂粉末を取り扱う際に、分級工程に導入される吸水性樹脂粉末を室温以上の温度、好ましくは40℃以上とする。例えば40〜100℃、より好ましくは50〜80℃に加温することが好ましく、かかる温度の吸水性樹脂を得るには適宜加熱したり、乾燥工程や表面架橋工程の加熱後の吸水性樹脂を保温したりするなどして利用してもよい。
【0159】
(減圧)
表面架橋後の物性を向上させるため、分級工程は減圧状態で行うことが好ましい。「減圧状態」とは、大気圧よりも気圧が低い状態を意味し、大気圧との圧力差を正(プラス)の値として表現する。例えば、大気圧が標準大気圧(101.3kPa)の場合、「減圧度が10kPa」とは、気圧が91.3kPaであることを意味する。
【0160】
本発明においては分級効率の観点から、減圧度の下限は0kPaを超えることが好ましく、0.01kPa以上がより好ましく、0.05kPa以上がさらに好ましい。また、系内での粉の吊り上りの抑制および排気装置に対するコスト抑制の観点から、減圧度の上限は10kPa以下が好ましく、8kPa以下がより好ましく、5kPa以下がさらに好ましく、2kPa以下が特に好ましい。減圧度の好ましい数値範囲は、上記下限値と上記上限値との間で任意に選択できる。
【0161】
(気流)
分級工程では、気流が通過することが好ましく、好ましくは吸水性樹脂粉末上に、気流(ガス流)、特に好ましくは空気を通過させる。好ましくは、篩網(金属篩網)の上下に向流の気流(ガス流)が通気される。このガス量は、篩い面積1m
2当たり、典型的には0.1〜10[m
3/hr]、好ましくは0.5〜5[m
3/hr]、特に好ましくは1〜3[m
3/hr]であり、その際、ガス体積は、標準的な条件下(例えば、25℃および1barの条件下)で測定する。特に好ましくは、ガス流を、篩分け装置に装入する前に、典型的には40℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは65℃以上、特に好ましくは70℃以上に加熱する。ガス流の温度は、通常は120℃以下、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下、特に好ましくは80℃以下である。
【0162】
気流(ガス流)の露点は好ましくは15℃以下、より好ましくは10℃以下である。露点の下限値は特に制限されないが、コストパフォーマンスを考え、好ましくは−10℃以上、より好ましくは−5℃程度である。
【0163】
(雰囲気露点)
分級工程を行う雰囲気(空気)露点は好ましくは15℃以下、より好ましくは10℃以下、さらに好ましくは5℃以下、特に好ましくは0℃以下である。露点の下限値は特に制限されないが、コストパフォーマンスを考え、好ましくは−10℃以上、より好ましくは−5℃以上である。さらに、気体の温度は好ましくは10〜40℃であり、より好ましくは15〜35℃である。
【0164】
露点を制御する方法としては、気体、好ましくは空気を適宜乾燥すればよく、メンブレンドライヤーを使用する方法、冷却吸着式ドライヤーを使用する方法、ダイヤフラムドライヤーを使用する方法、これらを併用する方法が挙げられる。吸着式ドライヤーを使用する場合、加熱再生式でもよく、非加熱再生式でもよく、非再生式でもよい。
【0165】
(装置の数)
本発明の製造方法では、吸水性樹脂の物性向上および安定化の観点から、上記重合工程が連続ベルト重合または連続ニーダー重合で行われ、かつ、該重合工程一系列に対して、複数の分級工程が並列で行われることが好ましい。
【0166】
ここで、本発明における「一系列」とは、原料(単量体)から含水ゲル状架橋重合体、吸水性樹脂粉末、吸水性樹脂へと、最終製品が得られるまでに、工程を経るごとに進んでいく一つの系を意味する。その系が二つに分岐する場合を「二系列」という。したがって、「二系列以上」とは、同一工程内において、二基以上の装置が並列に配置され、それらが同時にあるいは交互に、稼動させる形態を指す。また、分級工程のみに限らず、乾燥工程以降の粉砕工程や表面架橋工程等も二系列とすることが好ましい。すなわち、上記重合工程一系列に対して、分級工程が二系列であることが好ましく、粉砕工程、表面架橋工程等すべてが二系列以上であることが最も好ましい。
【0167】
(2−6)表面架橋工程
本工程は、上記粉砕工程、分級工程で得られた吸水性樹脂粉末の表面近傍を、吸水性能向上のために、表面架橋剤を用いて架橋(表面架橋反応)する工程であり、該表面架橋によって、着色が少なく、より白色度の高い吸水性樹脂が得られる。
【0168】
本発明で用いることができる表面架橋剤としては、特に限定されないが、種々の有機または無機表面架橋剤(イオン結合性表面架橋剤)を挙げることができる。中でも有機表面架橋剤が好ましく、有機表面架橋剤とイオン結合性表面架橋剤(イオン架橋剤)との併用がより好ましい。
【0169】
具体的には、有機表面架橋剤としては、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物またはそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、(モノ、ジ、またはポリ)オキサゾリジノン化合物、アルキレンカーボネート化合物であり、特に高温での反応が必要な、多価アルコール化合物、アルキレンカーボネート化合物、オキサゾリジノン化合物からなる脱水エステル反応性架橋剤が使用できる。さらにより具体的には、米国特許第6228930号、同第6071976号、同第6254990号等に例示されている化合物を挙げることが出来る。例えば、モノ,ジ,トリ,テトラまたはプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ソルビトール等多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルやグリシドール等のエポキシ化合物;エチレンカボネート等のアルキレンカーボネート化合物;オキセタン化合物;2−イミダゾリジノンのような環状尿素化合物等が挙げられる。上記有機表面架橋剤の使用量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部の範囲内で適宜決定される。
【0170】
また、吸水性樹脂と表面架橋剤との混合の際、溶媒として水を用いることが好ましい。上記水の使用量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部の範囲内で適宜決定される。さらに、上記水以外に、必要に応じて、親水性有機溶媒を併用してもよく、その使用量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0〜10重量部、より好ましくは0〜5重量部の範囲内で適宜決定される。
【0171】
さらに、表面架橋剤溶液の混合に際し、水不溶性の微粒子粉体(水不溶性粒子)や界面活性剤を本発明の効果を妨げない程度に共存させてもよい。該微粒子粉体や界面活性剤の種類や使用量等については、米国特許第7473739号等に例示されているが、該使用量としては、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0〜10重量部、より好ましくは0〜5重量部、さらに好ましくは0〜1重量部の範囲内で適宜決定される。
【0172】
本工程において、吸水性樹脂粉末と表面架橋剤とを混合した後、好ましくは加熱処理され、その後必要により冷却処理される。上記加熱処理時の加熱温度は、70〜300℃が好ましく、120〜250℃がより好ましく、150〜250℃がさらに好ましい。上記処理温度が70℃未満の場合、加熱処理時間が延び生産性の低下を招来する上に、均一な表面架橋層を形成することができないため好ましくない。また、上記処理温度が300℃を超える場合、吸水性樹脂粉末が劣化するため好ましくない。また、上記加熱処理時の加熱時間は、1分〜2時間の範囲が好ましい。上記加熱処理は、通常の乾燥機または加熱炉で行うことができる。なお、欧州特許第0349240号、同第0605150号、同第0450923号、同第0812873号、同第0450924号、同第0668080号、日本国特開平7−242709号、同平7−224304号、米国特許第5409771号、同第5597873号、同第5385983号、同第5610220号、同第5633316号、同第5674633号、同第5462972号、国際公開第99/42494号、同第99/43720号、同第99/42496号等に開示された表面架橋方法についても、本発明に好ましく適用することができる。
【0173】
(無機表面架橋剤)
本発明においては、通液性等の物性向上を目的に、上記有機表面架橋剤以外に無機表面架橋剤(イオン結合性表面架橋剤)を使用することができる。使用される無機表面架橋剤としては、特に限定されないが、2価以上、好ましくは3価または4価の多価金属塩(有機塩または無機塩)若しくは水酸化物を例示することができる。具体的には、多価金属としてはアルミニウム、ジルコニウム等が挙げられ、乳酸アルミニウム、硫酸アルミニウムが好ましく使用される。多価金属塩はハンドリング性及び吸水性樹脂粉末との混合性の観点から、溶液状態で使用されることが好ましく、より好ましくは、水溶液の形態である。無機表面架橋剤の添加量は、吸水性樹脂の種類や粒度によってその最適量は異なるが、通常、吸水性樹脂粉末の固形分100重量部に対して、0を超えて10重量部以下、好ましくは0.001〜5重量部、さらに好ましくは0.002〜3重量部の範囲である。
【0174】
これらの無機表面架橋剤は、有機表面架橋剤と同時または別途に使用される。好ましくは、吸水性能(特に高い通液性)の観点から、有機表面架橋剤による表面架橋後(例えば、冷却処理時)に吸水性樹脂粉末に無機表面架橋剤を添加することが好ましい。
【0175】
なお、多価金属による表面架橋については、同第2008/09843号、米国特許第7157141号、同第6605673号、同第6620889号、米国特許出願公開第2005/0288182号、同第2005/0070671号、同第2007/0106013号、同第2006/0073969号等に示されている。
【0176】
(冷却処理)
冷却処理は表面架橋反応の停止や制御などを目的として、表面架橋工程で加熱され表面近傍が架橋されて得られる吸水性樹脂粉末が、続く工程(例えば、分級工程(整粒工程))に投入される前に、必要により行われる。この冷却処理で用いられる冷却装置としては、特に制限はないが、例えば、パドルドライヤーや、内壁その他の伝熱面の内部に冷却水が通水されている2軸撹拌乾燥機や、溝型攪拌式乾燥機等を用いることができる。冷却処理後の吸水性樹脂粉末の温度が加熱温度未満、即ち25℃以上80℃未満とされ、好ましくは30℃以上60℃以下とされうる。ただし、冷却処理後に分級工程(清流工程)を行う場合、(f)分級条件において上述した条件を満たすように吸水性樹脂粉末の冷却処理を行うことが好ましい。
【0177】
なお、上記表面架橋工程において、吸水性樹脂粉末の表面架橋が室温で実施される場合がある。この場合、表面架橋により得られる吸水性樹脂粉末は加熱されないので、この冷却処理は実施されなくてもよい。
【0178】
さらに、通液性等の物性向上を目的に、上記有機表面架橋剤および無機表面架橋剤以外にポリアミンポリマーを同時にまたは別途に使用してもよい。該ポリアミンポリマーは、重量平均分子量が5000〜100万程度を有するものが特に好ましく、例えば、米国特許第7098284号、国際公開第2006/082188号、同第2006/082189号、同第2006/082197号、同第2006/111402号、同第2006/111403号、同第2006/111404号等に例示されている。
【0179】
上記有機表面架橋剤、無機表面架橋剤、添加剤により表面処理されることにより、得られる吸水性樹脂はその表面に、水不溶性粒子、ポリアミンポリマーまたは多価金属の少なくとも1種を有してなることが好ましい。かような形態は吸水性樹脂の物性(特に通液性)が優れる。
【0180】
(2−7)微粉リサイクル工程(微粉回収工程、造粒工程)
本発明における微粉リサイクル工程とは、乾燥および必要により粉砕・分級で得られた微粉(特に150μm未満を主成分、特に70重量%以上含む微粉)を分離後、そのまま、あるいは水和して、重合工程や乾燥工程にリサイクルする工程であり、例えば、米国特許出願公開第2006/247351号、米国特許第6228930号等に記載の方法が適用できる。本発明では、分級工程後に微粉リサイクル工程をさらに含むことが好ましい。
【0181】
リサイクルした微粉を含むことで、粒度が制御できるとともに、吸水性樹脂粉末の添加によって本発明で必須の高固形分が容易に達成され、さらに微粉の添加で乾燥ベルトからの乾燥後の吸水性樹脂の剥離が容易になるので好ましい。
【0182】
(2−8)除鉄工程
本発明では、上記除電ブラシを使用する場合など、金属線が混入する場合あり、分級工程後に、好ましくは除鉄工程、より好ましくは磁石を用いた除鉄工程を含む。除鉄工程を行うことにより、吸水性樹脂粉末中に存在する金属成分を除去することができる。除鉄には永久磁石を用いればよく、連続的に流れる吸水性樹脂粉末を磁石間に通過させて、篩やブラシなどに由来する金属を除去すればよい。
【0183】
(2−9)輸送工程
分級工程の前後、特に好ましくは分級工程と表面架橋工程との間における吸水性樹脂の輸送方法は、各種使用できるが、好ましくは空気輸送が使用される。該空気輸送は、吸水性樹脂の優れた物性が、安定的に保持されるという観点から、乾燥空気を用いるのが好ましい。該乾燥空気の露点の上限は、通常20℃以下であり、好ましくは−5℃以下であり、より好ましくは−10℃以下であり、さらに好ましくは−12℃以下であり、特に好ましくは−15℃以下である。また、露点の下限は、通常−100℃以上であり、好ましくは−70℃以上であり、−50℃程度で十分である。さらに、該乾燥気体の温度は、10〜40℃が好ましく、15〜35℃がより好ましい。上記空気輸送配管の内面の表面粗さ(Rz)は、上記篩装置の内面の表面粗さ(Rz)と同様の範囲を有する。
【0184】
乾燥気体(空気)以外に、加熱気体(空気)を用いてもよい。この場合、加熱方法としは、特に制限されないが、気体(空気)が熱源を用いて直接加熱されても良いし、上記輸送配管や装置が加熱されることにより、通される気体(空気)が間接的に加熱されても良い。この加熱気体(空気)の温度の下限は、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましい。また、加熱気体(空気)の温度の上限は、70℃未満が好ましく、50℃未満がより好ましい。
【0185】
露点を制御する方法としては、気体(好ましくは空気)を適宜乾燥すればよい。具体的には、メンブレンドライヤーを使用する方法、冷却吸着式ドライヤーを使用する方法、ダイヤフラムドライヤーを使用する方法やそれらを併用する方法が挙げられる。吸着式ドライヤーを使用する場合、加熱再生式でもよく、非加熱再生式でもよい。
【0186】
(2−10)その他の工程
上記各連続工程以外に、必要により、上記微粉のリサイクル工程、造粒工程、微粉除去工程等を設けてもよい。さらに、経時色安定性効果やゲル劣化防止等のために、上記各工程の一部または全部に上記添加剤を、必要により使用してもよい。さらに、本発明の製造方法においては、好ましくは微粉リサイクル工程を含む。また、好ましくは、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、その他の添加剤(微粒子、消臭剤、抗菌剤等)の添加工程等の1種または2種以上の工程をさらに含む。
【0187】
〔3〕吸水性樹脂の物性
本発明の吸水性樹脂は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とし、衛生用品、特に紙オムツへの使用を目的とする場合、上述した重合方法や表面架橋方法等によって得られる。さらに表面架橋工程後に得られる吸水性樹脂は、下記(3−1)〜(3−7)に挙げられた各物性のうち、少なくとも1以上の物性を制御することが好ましく、さらにはAAPを含めた2以上、特に3以上の物性を制御することが好ましい。本発明において、「表面架橋工程後の吸水性樹脂」とは、最終製品としての吸水性樹脂を意味する。このため、表面架橋工程後に分級工程を行う場合には、分級工程後の最終生成物としての吸水性樹脂を意味する。吸水性樹脂が下記の各物性を満たす場合には、吸水性樹脂濃度が40重量%以上の高濃度オムツにおいても十分な性能を発揮することができる。
【0188】
(3−1)CRC(無加圧下吸水倍率)
本発明で得られる吸水性樹脂のCRC(無加圧下吸水倍率)は、10[g/g]以上が好ましく、20[g/g]以上がより好ましく、25[g/g]以上がさらに好ましく、27[g/g]以上が特に好ましい。CRCの上限値は、特に限定されないが、50[g/g]以下が好ましく、45[g/g]以下がより好ましく、40[g/g]以下がさらに好ましい。上記CRCが10[g/g]未満の場合、吸水性樹脂の吸水量が低く、紙オムツ等、衛生用品中の吸収体への使用に適さないおそれがある。また、上記CRCが50[g/g]を超える場合、かような吸水性樹脂を吸収体に使用すると、液の取り込み速度に優れる衛生用品を得ることができないおそれがあるため、好ましくない。なお、CRCは、上述した内部架橋剤や表面架橋剤等で適宜制御することができる。
【0189】
(3−2)AAP(加圧下吸水倍率)
本発明で得られる吸水性樹脂のAAP(加圧下吸水倍率)は、紙オムツでのモレを防止するため、上記乾燥を達成手段として、4.83kPa(0.7psi)の加圧下におけるAAPとして、20[g/g]以上が好ましく、22[g/g]以上がより好ましく、24[g/g]以上がさらに好ましい。AAPの上限値は、特に限定されないが、他の物性とのバランスから40[g/g]以下が好ましい。上記AAPが20[g/g]未満の場合、かような吸水性樹脂を吸収体に使用すると、吸収体に圧力が加わった際の液の戻り(通常、「リウェット(Re−Wet)」とも称される)が少ない衛生用品を得ることができないおそれがあるため、好ましくない。なお、AAPは、上述した表面架橋剤や粒度等で適宜制御することができる。
【0190】
(3−3)SFC(生理食塩水流れ誘導性)
本発明で得られる吸水性樹脂のSFC(生理食塩水流れ誘導性)は、紙オムツでのモレを防止するため、上記乾燥を達成手段として、加圧下での液の通液特性であるSFCとして、1[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上が好ましく、10[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上がより好ましく、30[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上がさらに好ましく、70[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上が特に好ましく、110[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以上が最も好ましい。SFCの上限値は、特に限定されないが、他の物性とのバランスから3000[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以下が好ましく、2000[×10
−7・cm
3・s・g
−1]以下がより好ましい。上記SFCが3000[×10
−7・cm
3・s・g
−1]を超える場合、かような吸水性樹脂を吸水体に使用すると、吸水体で液漏れが発生するおそれがあるため、好ましくない。なお、SFCは、上述した乾燥方法等で適宜制御することができる。
【0191】
(3−4)Ext(水可溶分)
本発明で得られる吸水性樹脂のExt(水可溶分)は、35重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、15重量%以下がさらに好ましく、10重量%以下が特に好ましい。上記Extが35重量%を超える場合、得られる吸水性樹脂のゲル強度が弱く、液透過性に劣ったものとなるおそれがある。また、かような吸水性樹脂を吸水体に使用すると、吸水体に圧力が加わった際の液の戻り(リウェット)が少ない吸水性樹脂を得ることができないおそれがあるため、好ましくない。なお、Extは、上述した内部架橋剤等で適宜制御することができる。
【0192】
(3−5)Residual Monomers(残存モノマー)
本発明で得られる吸水性樹脂のResidual Monomers(残存モノマー)は、安全性の観点から、好ましくは0〜500ppm、より好ましくは0〜400ppm、さらに好ましくは0〜300ppm、特に好ましくは0〜200ppmに制御される。なお、Residual Monomersは、上述した重合方法等で適宜制御することができる。
【0193】
(3−6)初期色調
本発明で得られる吸水性樹脂は、初期色調に優れている。すなわち、本発明で得られる、製造直後の吸水性樹脂の色調(初期色調)が、以下の数値を示す。なお、初期色調は、製造直後の色調をいうが、一般的には工場出荷前に測定される色調とされる。また、例えば、30℃以下、相対湿度50%RHの雰囲気下での保存であれば製造後1年以内に測定される値である。具体的には、ハンターLab表色系において、L値(Lightness)が好ましくは85以上、より好ましくは87以上、さらに好ましくは89以上である。また、b値は−5〜10が好ましく、−5〜9がより好ましく、−4〜8がさらに好ましく、−1〜7が特に好ましい。さらに、a値は−2〜2であり、少なくとも−1〜1、好ましくは−0.5〜1、特に好ましくは0〜1である。また、別の色度として、YI(Yellow Index)値は、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下が特に好ましい。さらに、別の色度として、WB(White Balance)値は、70以上が好ましく、75以上がより好ましく、77以上が特に好ましい。さらに、本発明で得られる吸水性樹脂は経時着色にも優れ、高温多湿下で行う促進試験においても十分な白色度を示す。なお、国際公開第2009/005114号パンフレットに開示する測定方法により、本発明の吸水性樹脂の初期色調および経時着色を測定することができる。
【0194】
(3−7)含水率
本発明で得られる吸水性樹脂の含水率は粉体特性(帯電防止、耐衝撃安定性、輸送時の物性低下)の観点から、好ましくは0〜15重量%、より好ましくは0〜10重量%、さらに好ましくは0〜3重量%である。なお、含水率の下限値としては、0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、1重量%以上がさらに好ましく、1.4重量%以上が特に好ましい。当該含水率の調整は、表面架橋工程時の熱処理条件や必要により水の添加量を適宜調整すればよい。
【0195】
なお、吸水性樹脂中の水分は分級時の阻害要因ではあるが、本発明では含水率0.1重量%未満の絶対乾燥状態よりも、上記所定の含水率を有する吸水性樹脂の方が、分級工程でより効果を発揮できる。従って、本発明は上述した含水率の吸水性樹脂の分級工程を含む、吸水性樹脂の製造方法に好ましく適用することができる。
【0196】
〔4〕吸水性樹脂の用途
本発明にかかる製造方法により得られる吸水性樹脂の用途は、特に限定されず、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パット等の衛生用品、農園芸用保水剤、廃液固化剤や、工業用止水材等、吸収性物品に使用することができる。
【0197】
〔実施例〕
以下、実施例および比較例に従って本発明を説明するが、本発明はこれらに限定され解釈されるものではない。また、便宜上、「リットル」を「L」、「重量%」を「wt%」と記すことがある。なお、本発明で得られる吸水性樹脂の、特許請求の範囲や実施例に記載した諸物性は、特に記載のない限り、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、EDANA法および以下の測定例に従って求めた。
【0198】
1.樹脂固形分(固形分)
底面の直径が約50mmのアルミカップに、吸水性樹脂1.00gを量り取り、試料(吸水性樹脂およびアルミカップ)の総重量W1[g]を正確に秤量した。
【0199】
次に、雰囲気温度180℃のオーブン中に上記試料を静置し、吸水性樹脂を乾燥させた。3時間経過後オーブンから該試料をアルミカップごと取り出し、デシケーター中で室温まで冷却した。その後、乾燥後の試料(吸水性樹脂およびアルミカップ)の総重量W2[g]を秤量し、次式にしたがって固形分(単位;[重量%])を算出した。
【0201】
なお、粒子状含水ゲル状架橋重合体(粒子状含水ゲル)の樹脂固形分を測定する際には、粒子状含水ゲルの採取量を2〜4g、乾燥時間を24時間に変更して行った。
【0202】
2.SFC(生理食塩水流れ誘導性)
本発明で得られる吸水性樹脂のSFC(生理食塩水流れ誘導性)は、米国特許第5669894号明細書の記載に従って測定した。
【0203】
3.その他の物性
本発明で得られる吸水性樹脂のCRC(無加圧下吸水倍率)、粒度分布(上記「PSD」の項参照:ERT420.2−02に記載の方法)、pH可溶分(水可溶分;上記「Ext」の項参照:ERT470.2−02に記載の方法)、残存アクリル酸量(上記「Residual Monomers」の項参照:ERT410.2−02に記載の方法)等の物性については、上述したEDANAのERT、または米国特許出願公開第2006/204755号明細書に準じて測定した。
【0204】
[
参考例1]
特許文献30(国際公開第2010/032694号パンフレット)の実施例1に準じて以下の運転を行った。
【0205】
すなわち、
図1に示されるように、重合工程(ベルト上での静置重合)、ゲル細粒化(解砕)工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程(分級工程1)、表面架橋工程(表面架橋剤の混合工程、加熱工程、冷却工程)、整粒工程(分級工程2)、分級工程3および各工程間を連結する輸送工程からなる吸水性樹脂の連続製造装置(生産能力1500[kg/hr])を用いて連続製造した。なお、上記分級工程1、表面架橋工程、分級工程2、分級工程3との間は、空気輸送(露点10℃の乾燥空気、または、60℃の加熱空気)で連結されていた。
【0206】
具体的には、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数(平均重合度)9)を0.06モル%(対単量体)含む75モル%が中和されたアクリル酸部分ナトリウム塩水溶液(単量体濃度37重量%)を、単量体水溶液(1)として、得られた単量体水溶液(1)を定量ポンプで連続フィードを行い、輸送管の途中で窒素ガスを連続的に吹き込み、酸素濃度を0.5[mg/L]以下にした。
【0207】
次に、単量体水溶液(1)に、さらに過硫酸ナトリウム/L−アスコルビン酸をそれぞれ0.14g/0.005g(単量体1molに対して)を別々にラインミキシングで連続混合して、両端に堰を有する平面スチールベルトに厚み約30mmで供給して、95℃で連続的に30分間静置水溶液重合(連続ベルト重合)を行った(重合工程)。
【0208】
上記重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体(1)(固形分濃度:45重量%)を60℃の雰囲気下で孔径7mmのミートチョッパーで約1mmに細分化し(ゲル細粒化(解砕)工程)、次いで、連続通気バンド乾燥機(熱風の露点:30℃)の移動する多孔板上に厚みが50mmとなるように広げて載せ、185℃で30分間乾燥した後、外気にさらして冷却を行い、乾燥重合体(1)(固形分:96重量%、温度:60℃)を得た(乾燥工程)。
【0209】
得られた乾燥重合体(1)全量を3段ロールミル(ロールギャップが上から1.0mm/0.70mm/0.50mm)に連続供給することで粉砕した後(粉砕工程)、目開き1000μm、850μmおよび150μmの金属篩網(材質:SUS304製、篩内面の表面粗さRz:50nm、表面粗さRa:4.8nm、張り張力50[N/cm]、篩網の面積2[m
2/枚])を有する篩口径1600mmからなる揺動式円形篩い分け装置(振動数:230rpm、ラジアル傾斜(勾配):11mm、タンジェンシャル傾斜(勾配):11mm、偏心量:35mm、装置の温度:60℃、装置内の雰囲気露点:13℃)で分級し、850μmおよび150μmの金属篩網間の粒分を採取して、粒径850〜150μmが約98重量%の吸水性樹脂粉末(1)(CRC:36[g/g]、固形分:96重量%、重量平均粒子径(D50):450μm、σζ:0.35)を得た。なお、当該篩い分け装置に供給される粉砕工程後の吸水性樹脂粉末の温度は60℃に保温されていた。また、この篩い分け装置が据え付けられている架台は、接地抵抗値が5Ω(除電)の接地がなされていた。さらに、バグフィルターが設置された排気装置によって、該篩い分け装置内の減圧度が0.11kPaとされ、露点10℃、温度60℃の空気を2[m
3/hr]で該篩分け装置内を通気させた(分級工程1)。
【0210】
上記で得られた吸水性樹脂粉末(1)を、1500[kg/hr]で高速連続混合機(タービュライザー、1000rpm)に定量連続供給して、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.5重量部、純水2.7重量部の混合液からなる表面処理剤溶液をスプレーで噴霧し混合した。次いで、得られた混合物をパドルドライヤーにより連続的に198℃にて40分間加熱処理した(表面架橋工程)。その後、同様のパドルドライヤーを用いて60℃まで強制冷却した(冷却工程)。
【0211】
さらに、上記分級工程1で使用したものと同一の篩口径1600mmからなる揺動式円形篩い分け装置(装置の温度:60℃/目開き:850μm/網の張り張力:50[N/cm]/材質:SUS316/装置内の雰囲気露点:12℃)を使用して850μm通過物を分級し、目開き850μmの篩網の上に残留する物は再度粉砕した後、上記850μm通過物と混合することで、全量が850μm通過物である整粒された吸水性樹脂(1)(含水率:1.5重量%、水可溶分:8.7重量%、重量平均粒子径(D50):445μm、σζ:0.39)を得た(整粒工程(分級工程2))。なお、当該篩い分け装置に供給される粉砕工程後の吸水性樹脂粉末の温度は60℃に保温されていた。また、この篩い分け装置が据え付けられている架台は、接地抵抗値が5Ωの接地(除電)がなされていた。さらに、バグフィルターが設置された排気装置によって、該篩い分け装置内の減圧度が0.11kPaとされ、露点10℃、温度60℃の空気を2[m
3/hr]で該篩分け装置内を通気させた。
【0212】
次いで、上記分級工程2で得られた850μm通過物について、上記分級工程1で使用したものと同一の篩口径1600mmからなる揺動式円形篩い分け装置(装置の温度:60℃/目開き:120μm/網の張り張力:50[N/cm]/材質:SUS316)を使用して、粒子径120μm未満の微粉を除去し、吸水性樹脂(1)を得た(分級工程3)。なお、当該篩い分け装置に供給される粉砕工程後の吸水性樹脂粉末の温度は60℃に保温されていた。また、この篩い分け装置が据え付けられている架台は、接地抵抗値が5Ωの接地(除電)がなされていた。さらに、バグフィルターが設置された排気装置によって、該篩い分け装置内の減圧度が0.11kPaとされ、露点10℃、温度60℃の空気を2[m
3/hr]で該篩分け装置内を通気させた。
【0213】
得られた吸水性樹脂(1)を連続生産しながら1トン毎にサンプリングを行い、20トン分の吸水性樹脂の性能測定を行った。得られたサンプル数は20点であり、平均のCRC、AAP、SFCはそれぞれ30.3[g/g](CRC)、24.7[g/g](AAP)、42[×10
−7・cm
3・s・g
−1](SFC)であった。得られた吸水性樹脂(1)の性能の詳細を表1に記す。なお、365日(12ヶ月間)経過後でも、物性低下および粒度変化は見られず、安定的に稼働した。
【0214】
[
参考例2]
上記
参考例1において、分級工程3の金属篩網の張り張力(テンション)を40[N/cm]に変更した以外は
参考例1と同様の運転を行い、吸水性樹脂(2)を得た。
【0215】
得られた吸水性樹脂(2)を連続生産しながら1トン毎にサンプリングを行い、20トン分の吸水性樹脂の性能測定を行った。得られたサンプル数は20点であり、平均のCRC、AAP、SFCはそれぞれ30.2[g/g](CRC)、24.6[g/g](AAP)、38[×10
−7・cm
3・s・g
−1](SFC)であった。SFCの若干の低下が見られたが問題のないレベルでありその後安定した。得られた吸水性樹脂(2)の性能の詳細を表1に記す。なお、365日(12ヶ月間)経過後でも、物性低下および粒度変化は見られず、安定的に稼働した。
【0216】
[
参考例3]
上記
参考例1において、分級工程3の金属篩網の張り張力(テンション)を45[N/cm]に変更した以外は
参考例1と同様の運転を行い、吸水性樹脂(3)を得た。
【0217】
得られた吸水性樹脂(3)を連続生産しながら1トン毎にサンプリングを行い、20トン分の吸水性樹脂の性能測定を行った。得られたサンプル数は20点であり、平均のCRC、AAP、SFCはそれぞれ30.3[g/g](CRC)、24.7[g/g](AAP)、40[×10
−7・cm
3・s・g
−1](SFC)であった。SFCの若干の低下が見られたが問題のないレベルでありその後安定した。得られた吸水性樹脂(3)の性能の詳細を表1に記す。なお、365日(12ヶ月間)経過後でも、物性低下および粒度変化は見られず、安定的に稼働した。
【0218】
[
参考例4]
上記
参考例1において、分級工程3の金属篩網の張り張力(テンション)を85[N/cm]に変更した以外は
参考例1と同様の運転を行い、吸水性樹脂(4)を得た。
【0219】
得られた吸水性樹脂(4)を連続生産しながら1トン毎にサンプリングを行い、20トン分の吸水性樹脂の性能測定を行った。得られたサンプル数は20点であり、平均のCRC、AAP、SFCはそれぞれ30.3[g/g](CRC)、24.7[g/g](AAP)、42[×10
−7・cm
3・s・g
−1](SFC)であった。得られた吸水性樹脂(3)の性能の詳細を表1に記す。なお、180日(6ヶ月間)の安定稼働後、物性低下および粒度変化が確認されたため、その原因を調査したところ、分級工程3の金属篩網の一部に破れが発見されたため、金属篩網の交換を行った。
【0220】
[
参考例5]
上記
参考例1において、分級工程3の金属篩の温度を30℃、張り張力(テンション)を50[N/cm])とした以外は
参考例1と同様の運転を行い、吸水性樹脂(5)を得た。
【0221】
得られた吸水性樹脂(5)を連続生産しながら1トン毎にサンプリングを行い、20トン分の吸水性樹脂の性能測定を行った。得られたサンプル数は20点であり、平均のCRC、AAP、SFCはそれぞれ30.2[g/g](CRC)、24.6[g/g](AAP)、38[×10
−7・cm
3・s・g
−1](SFC)であった。得られた吸水性樹脂(5)の性能の詳細を表1に記す。なお、金属篩上に存在する吸水性樹脂の一部に凝集物が見られたが、365日(12ヶ月間)経過後でも、物性低下および粒度変化は見られず、安定的に稼働した。
【0222】
[比較例1]
上記
参考例1において、分級工程1〜3での金属篩網の張り張力(テンション)をすべて30[N/cm]に変更した以外は
参考例1と同様の運転を行い、比較吸水性樹脂(1)を得た。
【0223】
得られた比較吸水性樹脂(1)を連続生産しながら1トン毎にサンプリングを行い、20トン分の吸水性樹脂の性能測定を行った。得られたサンプル数は20点であり、平均のCRC、AAP、SFCはそれぞれ29.8[g/g](CRC)、23.9[g/g](AAP)、34[×10
−7・cm
3・s・g
−1](SFC)であった。得られた比較吸水性樹脂(1)の性能の詳細を表1に記す。なお、60日(2ヶ月間)の安定稼働後、物性低下および粒度変化が確認されたため、その原因を調査したところ、各分級工程の金属篩網の一部に破れが発見されたため、金属篩網の交換を行った。
【0224】
[比較例2]
上記
参考例1において、分級工程3の金属篩網の張り張力(テンション)を30[N/cm]に変更した以外は
参考例1と同様の運転を行い、比較吸水性樹脂(2)を得た。
【0225】
得られた比較吸水性樹脂(2)を連続生産しながら1トン毎にサンプリングを行い、20トン分の吸水性樹脂の性能測定を行った。得られたサンプル数は20点であり、平均のCRC、AAP、SFCはそれぞれ29.8[g/g](CRC)、24.7[g/g](AAP)、34[×10
−7・cm
3・s・g
−1](SFC)であった。得られた比較吸水性樹脂(2)の性能の詳細を表1に記す。なお、90日(3ヶ月間)の安定稼働後、物性低下および粒度変化が確認されたため、その原因を調査したところ、分級工程3の金属篩網の一部に破れが発見されたため、金属篩網の交換を行った。
【0226】
[比較例3]
上記
参考例1において、分級工程3の金属篩網の張り張力(テンション)を150[N/cm]に変更した以外は
参考例1と同様の運転を行い、比較吸水性樹脂(3)を得た。
【0227】
得られた比較吸水性樹脂(3)を連続生産しながら1トン毎にサンプリングを行い、20トン分の吸水性樹脂の性能測定を行った。得られたサンプル数は20点であり、平均のCRC、AAP、SFCはそれぞれ30.3[g/g](CRC)、24.7[g/g](AAP)、42[×10
−7・cm
3・s・g
−1](SFC)であった。得られた比較吸水性樹脂(3)の性能の詳細を表1に記す。なお、60日(2ヶ月間)の安定稼働後、物性低下および粒度変化が確認されたため、その原因を調査したところ、分級工程3の金属篩網の一部に破れが発見されたため、金属篩網の交換を行った。
【0228】
[比較例4]
上記
参考例1において、分級工程1の金属篩網の張り張力(テンション)を120[N/cm]に変更した以外は
参考例1と同様の運転を行い、比較吸水性樹脂(4)を得た。
【0229】
得られた比較吸水性樹脂(4)を連続生産しながら1トン毎にサンプリングを行い、20トン分の吸水性樹脂の性能測定を行った。得られたサンプル数は20点であり、平均のCRC、AAP、SFCはそれぞれ30.1[g/g](CRC)、24.5[g/g](AAP)、41[×10
−7・cm
3・s・g
−1](SFC)であった。得られた比較吸水性樹脂(4)の性能の詳細を表1に記す。なお、60日(2ヶ月間)の安定稼働後、物性低下および粒度変化が確認されたため、その原因を調査したところ、分級工程1の金属篩網の一部に破れが発見されたため、金属篩網の交換を行った。
【0230】
[
参考例6]
上記参考例1の分級工程3において、金属篩の下部にエアーブラシを設置し、露点−30℃の空気を用いて分級した以外は参考例1と同様の運転を行い、吸水性樹脂(6)を得た。
【0231】
得られた吸水性樹脂(6)を連続生産しながら1トン毎にサンプリングを行い、20トン分の吸水性樹脂の性能測定を行った。得られたサンプル数は20点であり、平均のCRC、AAP、SFCはそれぞれ30.3[g/g](CRC)、24.7[g/g](AAP)、46[×10
−7・cm
3・s・g
−1](SFC)であった。得られた吸水性樹脂(6)の性能の詳細を表1に記す。
【0232】
[
参考例7]
上記参考例1の分級工程3において、金属篩の下部に直径30mmの白色(乳白色)のタッピングボールおよび孔径20mmのステンレス(材質:SUS304)製のパンチングメタルを設置して分級した以外は参考例1と同様の運転を行い、吸水性樹脂(7)を得た。
【0233】
得られた吸水性樹脂(7)を連続生産しながら1トン毎にサンプリングを行い、20トン分の吸水性樹脂の性能測定を行った。得られたサンプル数は20点であり、平均のCRC、AAP、SFCはそれぞれ30.4[g/g](CRC)、24.7[g/g](AAP)、44[×10
−7・cm
3・s・g
−1](SFC)であった。得られた吸水性樹脂(7)の性能の詳細を表1に記す。
【0234】
[実施例8]
上記
参考例1の分級工程3において、金属篩に、分級助剤粒子として炭酸カルシウムを1重量%添加した分級し、吸水性樹脂微粉および炭酸カルシウムを一緒に除去した以外は
参考例1と同様の運転を行い、吸水性樹脂(8)を得た。
【0235】
得られた吸水性樹脂(8)を連続生産しながら1トン毎にサンプリングを行い、20トン分の吸水性樹脂の性能測定を行った。得られたサンプル数は20点であり、平均のCRC、AAP、SFCはそれぞれ30.4[g/g](CRC)、24.1[g/g](AAP)、45[×10
−7・cm
3・s・g
−1](SFC)であった。得られた吸水性樹脂(8)の性能の詳細を表1に記す。
【0237】
(まとめ)
表1に示したように、金属篩網のテンション(張り張力)を35〜100[N/cm]に制御することで、および/または、タッピング材、エアーブラシ、分級助剤の使用によって、得られる吸水性樹脂の諸物性(SFC等)が向上する。また、全ての分級工程で金属篩網の張り張力(テンション)を35〜100[N/cm]に制御することで連続運転、すなわち金属篩網の交換期間が延びる。さらに、金属篩網の張り張力(テンション)が、吸水性樹脂の物性、特に表面架橋後の物性(特に通液性)に影響することが分かるが、金属篩網の張り張力(テンション)を35〜100[N/cm]に制御することで、長期間安定的に稼働し、連続運転時でも物性の安定化に寄与することがわかる。また、篩温度を高くすることで凝集物の発生や混入を低減することができる。上記特許文献1〜30には、本発明の開示も示唆もない。