特許第5739419号(P5739419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5739419-モノクローナル抗体の精製方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5739419
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】モノクローナル抗体の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/14 20060101AFI20150604BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20150604BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20150604BHJP
   C40B 30/04 20060101ALI20150604BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20150604BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20150604BHJP
【FI】
   C07K1/14
   G01N33/53 U
   G01N33/543 501A
   C40B30/04
   !C12P21/08
   !C07K16/00
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-519690(P2012-519690)
(86)(22)【出願日】2010年7月7日
(65)【公表番号】特表2012-532876(P2012-532876A)
(43)【公表日】2012年12月20日
(86)【国際出願番号】US2010041146
(87)【国際公開番号】WO2011005818
(87)【国際公開日】20110113
【審査請求日】2013年2月21日
(31)【優先権主張番号】61/223,984
(32)【優先日】2009年7月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507190880
【氏名又は名称】バイオ−ラッド ラボラトリーズ インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130845
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ガオ チエン
【審査官】 一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−193485(JP,A)
【文献】 特表2008−506352(JP,A)
【文献】 特開平10−072500(JP,A)
【文献】 米国特許第05891647(US,A)
【文献】 Akhoundi, C., et al.,Journal of Immunological Methods,1994年,vol. 172,p. 189-196
【文献】 大海 忍, 等,細胞工学別冊 実験プロトコールシリーズ 新版 抗ペプチド抗体実験プロトコール,株式会社秀潤社発行,2004年 9月 6日,第2版,第81-83頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)異なるハイブリドーマ培養上清のアレイを、該上清中の抗体が抗体結合分子に結合することが可能な条件下で、固体支持体に連結された前記抗体結合分子のアレイに接触させる段階であって、ハイブリドーマ培養上清が非クローン性ハイブリドーマ培養物から生成される、段階;
(b)前記支持体から上清の非結合成分を分離する段階;
(c)前記固体支持体を取り囲む溶液の条件を変化させ、それにより抗体を抗体結合分子から溶出する段階;
(d)溶出された抗体を含む溶液から固体支持体を分離して、前記ハイブリドーマ由来の抗体を含む溶出液のアレイを作製する段階;および
(e)抗原に結合する第二の抗体の存在下で、溶出液のアレイ中の第一の抗体が前記抗原に結合する能力を決定し、それによりサンドイッチイムノアッセイにおいて使用されるモノクローナル抗体の対を同定する段階
をこの順序で含む、ハイブリドーマクローンの樹立の前に、サンドイッチイムノアッセイに使用されるモノクローナル抗体の対を同定する方法。
【請求項2】
段階(d)が、溶出された抗体および固体支持体を含む溶液を濾過することを含み、ここで、前記抗体がフィルターを通って流れ、前記支持体がフィルターによって遮断される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
段階(d)が、溶出された抗体を含む溶液からの、固体支持体の磁気分離を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
固体支持体がビーズである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ビーズがアガロースビーズ、ポリスチレンビーズ、磁気ビーズ、または常磁性ビーズである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
抗体結合分子が抗体、プロテインA、プロテインG、および抗原からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
段階(a)〜(d)がマルチウェルフォーマットで実施され、ここで、異なるウェルが異なるハイブリドーマ由来の異なる抗体を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
濾過が真空補助式濾過(vacuum assisted filtering)を含む、請求項2記載の方法。
【請求項9】
段階(d)の後に、抗体が固体支持体に連結されるかまたはビオチン化される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
段階(e)が、サンドイッチイムノアッセイを実施することを含み、ここで、該イムノアッセイにおいて、アレイ由来の抗体が異なる捕捉抗体として用いられ、かつ第二の抗体が一次検出抗体として用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
段階(e)が、サンドイッチイムノアッセイを実施することを含み、ここで、該イムノアッセイにおいて、アレイ由来の抗体が異なる一次検出抗体として用いられ、かつ第二の抗体が捕捉抗体として用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
段階(e)が、サンドイッチイムノアッセイを実施することを含み、ここで、該イムノアッセイにおいて、アレイ由来の抗体の第一のアリコットが捕捉抗体として用いられ、かつアレイ由来の抗体の第二の抗体アリコットが一次検出抗体として用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項13】
捕捉抗体が固体支持体に連結されている、請求項10〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
一次検出抗体がビオチン化されている、請求項13記載の方法。
【請求項15】
原に結合する第一の抗体または第二の抗体を産生すると決定されたハイブリドーマからハイブリドーマクローンを樹立する段階を更に含む、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照により本明細書に組み入れられる、2009年7月8日出願の米国特許仮出願第61/223,984号に対する優先権の恩典を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
モノクローナル抗体は、標的分子上の特異的部位との反応において、高度の特異性および感受性を有するタンパク質である。モノクローナル抗体は一般に、多発性骨髄腫由来細胞に融合された脾臓細胞の体細胞クローン(ハイブリドーマ)により産生される(Kohler and Milstein, Nature 256 (5517):495 (1975)(非特許文献1))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Kohler and Milstein, Nature 256 (5517):495 (1975)
【発明の概要】
【0004】
発明の簡単な概要
本発明は、ハイブリドーマクローンの樹立の前に、サンドイッチイムノアッセイに使用されるモノクローナル抗体の対を同定する方法を提供する。幾つかの態様において、本方法は、
(a)異なるハイブリドーマ培養上清のアレイを、該上清中の抗体が抗体結合分子に結合することが可能な条件下で、固体支持体に連結された前記抗体結合分子のアレイに接触させる段階;
(b)前記支持体から上清の非結合成分を分離する段階;
(c)前記固体支持体を取り囲む溶液の条件を変化させ、それにより抗体を抗体結合分子から溶出する段階;
(d)溶出された抗体を含む溶液から固体支持体を分離して、前記ハイブリドーマ由来の抗体を含む溶出液のアレイを作製する段階;および
(e)抗原に結合する第二の抗体の存在下で、溶出液のアレイ中の第一の抗体が前記抗原に結合する能力を決定し、それによりサンドイッチイムノアッセイにおいて使用されるモノクローナル抗体の対を同定する段階
を、この順序で含む。
【0005】
幾つかの態様において、段階(d)は、溶出された抗体および固体支持体を含む溶液を濾過することを含み、ここで、抗体はフィルターを通って流れ、前記支持体はフィルターによって遮断される。こうして、溶出液のアレイは「濾液」のアレイとなる。
【0006】
幾つかの態様において、段階(d)は、溶出された抗体を含む溶液からの、固体支持体の磁気分離を含む。
【0007】
幾つかの態様において、ハイブリドーマクローンは、非クローン性ハイブリドーマ培養物から生成される。
【0008】
幾つかの態様において、固体支持体はビーズである。幾つかの態様において、該ビーズは、アガロースビーズ、ポリスチレンビーズ、磁気ビーズ、または常磁性ビーズである。
【0009】
幾つかの態様において、抗体結合分子は、抗体、プロテインA、プロテインG、および抗原からなる群より選択される。
【0010】
幾つかの態様において、段階(a)〜(d)はマルチウェルフォーマットで実施され、ここで、異なるウェルが異なるハイブリドーマ由来の異なる抗体を含む。
【0011】
幾つかの態様において、濾過は、真空補助式濾過(vacuum assisted filtering)を含む。
【0012】
幾つかの態様において、抗体は、段階(d)の後に、固体支持体に連結されるかまたはビオチン化される。
【0013】
幾つかの態様において、段階(e)は、サンドイッチイムノアッセイを実施することを含み、該イムノアッセイにおいて、アレイ由来の抗体が異なる捕捉抗体として用いられ、かつ第二の抗体が一次検出抗体として用いられる。幾つかの態様において、捕捉抗体は、固体支持体に連結されている。幾つかの態様において、一次検出抗体は、ビオチン化されている。
【0014】
幾つかの態様において、段階(e)は、サンドイッチイムノアッセイを実施することを含み、該イムノアッセイにおいて、アレイ由来の抗体が異なる一次検出抗体として用いられ、かつ第二の抗体が捕捉抗体として用いられる。幾つかの態様において、捕捉抗体は、固体支持体に連結されている。幾つかの態様において、一次検出抗体は、ビオチン化されている。
【0015】
幾つかの態様において、段階(e)は、サンドイッチイムノアッセイを実施することを含み、該イムノアッセイにおいて、アレイ由来の抗体の第一のアリコットが捕捉抗体として用いられ、かつアレイ由来の抗体の第二の抗体アリコットが一次検出抗体として用いられる。幾つかの態様において、捕捉抗体は、固体支持体に連結されている。幾つかの態様において、一次検出抗体は、ビオチン化されている。
【0016】
幾つかの態様において、本方法は、原に結合する第一の抗体または第二の抗体を産生すると決定されたハイブリドーマからハイブリドーマクローンを樹立する段階を更に含む。
【0017】
更なる方法および組成物も本発明の一部であることは、本願の以下を検討することにより理解されよう。
【0018】
定義
「抗体」は、免疫グロブリン、複合体、またはその断片形態を指す。該用語は、非限定的に、天然または遺伝子修飾形態を含むヒトまたは他の哺乳類細胞株由来のIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMクラスのポリクローナルまたはモノクローナル抗体、例えば、ヒト化抗体、ヒト抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組換え抗体、ハイブリッド抗体、変異抗体、グラフト化抗体、およびインビトロで生成された抗体を包含しうる。「抗体」はまた、非限定的に、免疫グロブリン部分を含有する融合タンパク質を含む、複合体形態も包含しうる。「抗体」はまた、抗体断片、例えばFab、F(ab')2、Fv、scFv、Fd、dAb、Fc、および他の構成物、特に抗原結合機能を保持するものも包含しうる。
【0019】
「特異的結合」という語句は、結合対の2つの構成要素(例えば、抗体の標的エピトープを含む抗体および分子)が、異種混合物(例えば、ハイブリドーマ培養上清または他のタンパク質混合物)の他の成分に対するそれらの構成要素の親和性の少なくとも100倍良好な親和性で互いに結合する結合反応を指す。
【0020】
「固体支持体」は、一つまたは複数の剛性または半剛性表面を有する物質または物質群を指す。幾つかの態様において、固体支持体は、非限定的にミクロスフェアを含む、薄膜または膜、ビーズ、ボトル、皿、繊維、繊維織物、成形ポリマー、粒子、および微粒子の形態をとる。固体支持体は、例えば、天然材料、例えばガラスおよびコラーゲン、または合成材料、例えばアクリルアミド、セルロース、ニトロセルロース、シリコーンゴム、ポリスチレン、ポリエチレンビニルアセタート、ポリプロピレン、ポリメタクリラート、ポリエチレン、ポリシリカート、ポリエチレンオキシド、ポリカーボナート、テフロン、フルオロカーボン、ナイロン、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリオルトエステル、ポリプロピルフマラート、グリコサミノグリカンおよびポリアミノ酸、の不活性支持体から形成させることができる。多くの場合、担体の表面に天然に存在する幾つかの官能基、例えばカルボン酸基(-COOH)、遊離アミン基(-NH2)、およびスルフヒドリル基(-SH)を、ペプチド結合に用いることができる。そのような官能基が天然から入手できない場合、所望の官能基、例えばカルボン酸基、または結合相互作用のパートナーであることが公知の部分(例えば、ビオチンと結合することが可能なアビジン)を、そのような固体支持体に付着させてもよい。幾つかの態様において、固体支持体は、カルボキシル化されたラテックスまたは磁性ミクロスフェアである。
[本発明1001]
(a)異なるハイブリドーマ培養上清のアレイを、該上清中の抗体が抗体結合分子に結合することが可能な条件下で、固体支持体に連結された前記抗体結合分子のアレイに接触させる段階であって、ハイブリドーマクローンが非クローン性ハイブリドーマ培養物から生成される、段階;
(b)前記支持体から上清の非結合成分を分離する段階;
(c)前記固体支持体を取り囲む溶液の条件を変化させ、それにより抗体を抗体結合分子から溶出する段階;
(d)溶出された抗体を含む溶液から固体支持体を分離して、前記ハイブリドーマ由来の抗体を含む溶出液のアレイを作製する段階;および
(e)抗原に結合する第二の抗体の存在下で、溶出液のアレイ中の第一の抗体が前記抗原に結合する能力を決定し、それによりサンドイッチイムノアッセイにおいて使用されるモノクローナル抗体の対を同定する段階
をこの順序で含む、ハイブリドーマクローンの樹立の前に、サンドイッチイムノアッセイに使用されるモノクローナル抗体の対を同定する方法。
[本発明1002]
段階(d)が、溶出された抗体および固体支持体を含む溶液を濾過することを含み、ここで、前記抗体がフィルターを通って流れ、前記支持体がフィルターによって遮断される、本発明1001の方法。
[本発明1003]
段階(d)が、溶出された抗体を含む溶液からの、固体支持体の磁気分離を含む、本発明1001の方法。
[本発明1004]
固体支持体がビーズである、本発明1001の方法。
[本発明1005]
ビーズがアガロースビーズ、ポリスチレンビーズ、磁気ビーズ、または常磁性ビーズである、本発明1001の方法。
[本発明1006]
抗体結合分子が抗体、プロテインA、プロテインG、および抗原からなる群より選択される、本発明1001の方法。
[本発明1007]
段階(a)〜(d)がマルチウェルフォーマットで実施され、ここで、異なるウェルが異なるハイブリドーマ由来の異なる抗体を含む、本発明1001の方法。
[本発明1008]
濾過が真空補助式濾過(vacuum assisted filtering)を含む、本発明1001の方法。
[本発明1009]
段階(d)の後に、抗体が固体支持体に連結されるかまたはビオチン化される、本発明1001の方法。
[本発明1010]
段階(e)が、サンドイッチイムノアッセイを実施することを含み、ここで、該イムノアッセイにおいて、アレイ由来の抗体が異なる捕捉抗体として用いられ、かつ第二の抗体が一次検出抗体として用いられる、本発明1001の方法。
[本発明1011]
段階(e)が、サンドイッチイムノアッセイを実施することを含み、ここで、該イムノアッセイにおいて、アレイ由来の抗体が異なる一次検出抗体として用いられ、かつ第二の抗体が捕捉抗体として用いられる、本発明1001の方法。
[本発明1012]
段階(e)が、サンドイッチイムノアッセイを実施することを含み、ここで、該イムノアッセイにおいて、アレイ由来の抗体の第一のアリコットが捕捉抗体として用いられ、かつアレイ由来の抗体の第二の抗体アリコットが一次検出抗体として用いられる、本発明1001の方法。
[本発明1013]
捕捉試薬が固体支持体に連結されている、本発明1010〜1012のいずれかの方法。
[本発明1014]
一次検出抗体がビオチン化されている、本発明1013の方法。
[本発明1015]
原に結合する第一の抗体または第二の抗体を産生すると決定されたハイブリドーマからハイブリドーマクローンを樹立する段階を更に含む、本発明1001の方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の態様の代表的な図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
I. 緒言
本発明は、ハイブリドーマまたは他の抗体溶液(非限定的に、ポリクローナル抗体溶液を含む)から抗体を精製し、続いて同じ抗原に結合する抗体の対を同定するための効率的方法を提供し、それは例えば、サンドイッチイムノアッセイにおいて有用である。サンドイッチイムノアッセイには多数の異なるフォーマットが存在するが、共通のテーマは、同じ抗原に2種類の異なる抗体(「抗体の対」)が結合することである。抗体の対は一般に、異なるエピトープに結合し、それ故、抗原への結合に関して互いに著しく競合しない。本発明は、サンドイッチイムノアッセイにおいて、大容量もしく多量の抗体または多くの精製段階を必要とせずに、抗体の対として良好に機能するモノクローナル抗体を選択する効率的方法を提供する。
【0023】
本発明は、抗体溶液(非限定的に、ハイブリドーマ培養上清を含む)の中の抗体を固体支持体に可逆的に結合させる段階、該上清の他の成分から、結合した抗体および固体支持体を分離する段階、および続いて溶出条件下で固体支持体から抗体を分離して、異なる精製抗体を含む溶液のアレイを製造する段階を含む方法を提供する。後者の分離段階は、非限定的に、固体支持体(例えば、ビーズ)の濾過、または磁気分離を包含してもよい。とりわけ本発明の抗体精製法は、ハイブリドーマ形成の非常に早期に(例えば、ハイブリドーマクローンの樹立より前に)適用することができ、それによりハイブリドーマをクローニングする段階が必要となる前に抗体をスクリーニングして、関心対象のハイブリドーマを同定することができる。それ故、この方法は、スクリーニング前に大量のハイブリドーマをクローニングすることに典型的に伴う作業を大きく低減する。
【0024】
精製抗体の溶液は、複数の部分に分割することができ、ある部分の中にある抗体は第一の修飾により修飾され、第二の部分の中にある抗体は第二の修飾により修飾される。その後、抗体の対の一方が第一の修飾を有し、対の他方の抗体が第二の修飾を有するような異なる抗体の間で、サンドイッチイムノアッセイを用いて対比較を行うことができる。任意で、本発明の方法により、10、100、1000、またはそれ以上の対比較を行うことができる。それにより、この方法は、アレイ内の異なる抗体の対比較を行い、抗体の対およびサンドイッチイムノアッセイに有用となる抗体を提供する対応するハイブリドーマを同定することを可能にする。
【0025】
II. 抗体の精製
本発明の方法は、迅速かつ効率的な工程で抗体を精製して、コンジュゲーションに、および任意で次の対比較に直接的に用いることができる精製抗体の生成を可能にする。幾つかの態様において、該抗体は、ポリクローナル抗体または他の抗体供給源から精製される。とりわけ本発明は、小容量の供給源から多数の異なる抗体を並行して精製する際に特に有用となる。こうして幾つかの態様において、本発明は、ハイブリドーマ由来の抗体を精製して、その結合性をスクリーニングするのに特に有用である。
【0026】
ハイブリドーマまたは他の抗体産生細胞を生成する様々な方法が公知であり、利用可能である。例えば、Harlow, ANTIBODIES, Cold Spring Harbor Press, N.Y. (1989)を参照されたい。幾つかの態様において、抗原に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成するために、免疫化マウスから脾臓細胞およびリンパ節細胞を単離して、適切な不死化細胞株、例えばマウス骨髄腫細胞株に融合することができる。得られたハイブリドーマは、その後、抗原特異的抗体の産生に関してスクリーニングすることができる。例えば、免疫化マウス由来の脾臓リンパ球の単細胞懸濁液を、50% PEG(w/v)を用いてSP2/0-Ag14骨髄腫細胞(ATCC, CRC 1581)に融合することができる。細胞を、約1×105個/ウェルで平底マイクロタイタープレートに播種し、続いて通常の試薬の他に10%ウシクローン血清、5 Origen Hybridoma Cloning Factor(IGEN)および1×HAT(Sigma)を含有する選択培地中で2週間インキュベートすることができる。約2週間後に、HATをHT(Sigma)に置換した培地で、細胞を培養することができる。
【0027】
任意で、本発明の方法で用いられるハイブリドーマは、所望の標的に対する抗体を産生するように予め選択されている。したがって、幾つかの態様において、本発明におけるハイブリドーマの全てまたは大部分は、特定の抗原に結合することが公知である。あるいは、ハイブリドーマにより産生される抗体の親和性または標的は、公知ではない。後者の場合、一般に、ハイブリドーマが関心対象の抗原に結合する抗体を産生することが公知である場合よりも、有意に多数の追加的ハイブリドーマがスクリーニングされる。必要に応じて、抗原に結合する抗体を産生するハイブリドーマを最初に同定するスクリーニング方法を用いることができる。先に考察した通り、本発明の方法の利点は、反応性に関して抗体をスクリーニングするまで、ハイブリドーマクローン(即ち、クローン細胞集団)を生成する必要がないことである。これにより、クローン株が形成される前にスクリーニングを行うことができるため、大量のクローン性ハイブリドーマ株を生成およびスクリーニングする段階が省かれる。特定のハイブリドーマ上清が、関心対象の抗体を含有することが決定されれば(例えば、本明細書に記載されたスクリーニング方法を用いることによる)、その後、陽性の上清を生成したそれらのハイブリドーマから、ハイブリドーマクローンを生成させることができる。
【0028】
理想的には、複数のハイブリドーマ培養上清(または他の抗体溶液)を、本発明の方法により並行してスクリーニングすることができる。したがって、幾つかの態様において、ハイブリドーマは、マルチウェル容器で培養されるか、さもなければ並行して増殖させることで、複数の混合物を並行して操作することが容易になる。最初に、抗体を含有するハイブリドーマ上清(または他の抗体溶液)のアリコットを、抗体への親和性を有し(即ち、特異的に結合し)固体支持体に連結されている第一の試薬に接触させる。固体支持体は、非限定的に、上記の通り溶液に懸濁させることができるが、下記のように、フィルターを通過しないビーズもしくは微粒子、または他の固体支持体を包含してもよい。そのような試薬は、例えば、ハイブリドーマをそこから得た生物種に特異的な他の抗体(例えば、マウス以外の動物で生成される抗マウス抗体)を包含することができる。あるいは、幾つかの態様において、抗体への親和性を有する第一の試薬は、プロテインA、プロテインG、および抗原または他のエピトープ含有分子からなる群より選択される。後者の場合、抗原は、最終的にサンドイッチイムノアッセイの対象となる抗原であってもよい。
【0029】
固体支持体に連結された第一の試薬は、上清中の抗体を第一の試薬に結合させるのに十分な時間および条件下で、ハイブリドーマ上清(または他の抗体溶液)に接触させる。その後、第一の試薬に結合していない溶液成分から固体支持体を分離しうる方法を活用することにより、上清の他の非抗体成分を第一の試薬に結合した抗体から分離することができる。任意で、真空濾過を利用して、上清の非抗体成分から固体支持体(および第一の試薬およびそれに結合している抗体)を分離する。例えば、フィルタープレートは、当技術分野で公知の通り、そのような分離に有用でありうる。
【0030】
溶液成分を分離する幾つかの方法が公知である。物理的分離法は、例えば、固体支持体(例えば、ビーズ)を遠心分離してペレット化させ、その後、上清を除去することを含むことができ、そして任意で、抗体の第一の試薬への結合を維持する条件下で、1回または複数回の洗浄段階を利用することができる。幾つかの態様において、固体支持体は、磁石材料または磁気材料を含む。これらの任意の態様において、磁力を用いて固体支持体を容器に固定して、固体支持体を除去することなく、上清および任意の洗浄液を簡便に除去することができる。磁性固体支持体は、例えば、米国特許出願公開第2005/0266462号に記載されているが、他の磁気形態も可能であることは当業者に理解されよう。
【0031】
必要に応じて、抗体を第一の試薬から実質的に溶出させることなく、残留するハイブリドーマ上清を除去させる溶液中で、抗体/第一の試薬/固体支持体を、任意で1回または複数回洗浄することができる。
【0032】
任意の洗浄段階の後、固体支持体に連結された第一の試薬に結合した抗体を、第一の試薬から抗体を溶出させることが可能な条件に供する。そのような条件は、第一の試薬およびそれと標的抗体との相互作用に応じて変更することができる。幾つかの態様において、溶出条件は、高温(先の洗浄条件と比べて)および/またはpH変動(例えば、低下)を含み、それにより抗体と第一の試薬との結合を減弱させる。pHが低下して抗体が溶出され、任意で、中和溶液を続いて添加して、抗体が酸に長期間暴露されることから保護することができる。
【0033】
抗体を第一の試薬から溶出させた後、抗体および第一の試薬を含有する溶液を固体支持体から分離する。幾つかの態様において、溶出された抗体および固体支持体を含む溶液を濾過する、即ち、該溶液を濾過して、固体支持体に連結された第一の試薬を除去することができる。固体支持体の通過を遮断し、溶出された抗体の通過を可能にするフィルターを選択することにより、抗体を第一の試薬から分離し、それによりハイブリドーマ由来の抗体を精製することができる。当技術分野で公知の通り、様々な濾過装置を用いることができる。幾つかの態様において、マルチウェルフィルタープレートを用いて、複数の異なる抗体を別個に並行して濾過する。様々なフィルタープレートが公知であり、例えば、Pall Corp.、Millipore、Quality Scientific Plasticsなどから市販されている。
【0034】
任意で、他の方法を用いて、溶出された抗体を含む溶液を固体支持体から分離することができる。例えば、磁気分離法を用いることができる。
【0035】
幾つかの態様において、フィルタープレートは、溶出された抗体をコレクションリザーバまたはコレクションチューブ方向へ通過させながら、固体支持体を捕捉するのに用いられる。例えば幾つかの態様において、フィルタープレートは、底に取り付けられたガラス繊維または他のタイプのフィルター膜を備えたマルチウェル(例えば、96ウェル)プレートである。任意で、抗体が未だ溶出されていない場合に第一の試薬から抗体を溶出することが可能な条件下で、第一の試薬(および固体支持体)および抗体(連結または溶出された)を含む混合物をフィルタープレートに適用すると、固体支持体が膜上または膜内に捕らえられる。任意で、真空濾過を適用して、溶出された抗体を含む溶液をフィルターを通して吸引することができる。その後、第一の試薬および固体支持体を実質的に含まない、溶出された抗体を回収する。任意で、異なるハイブリドーマ由来の異なる抗体を、別個の抗体の組織化が可能なマルチウェルマイクロタイターディッシュまたは他のコレクションリザーバに回収して、特異的抗体が所望の反応性を有することが見いだされたハイブリドーマが同定および使用される。
【0036】
III. 抗体結合を決定する方法
上述の通り、ハイブリドーマ由来の精製抗体の回収に続いて、回収された抗体の対を、サンドイッチイムノアッセイで共に用いるための適合性に関して比較することができる。任意で、更なる介入段階を含まずに、上述のように精製された抗体のアリコットを採取して、イムノアッセイで用いるために調製する、例えば、抗体を固体支持体またはビオチンなどの検出可能な標識に連結させることができる。
【0037】
サンドイッチイムノアッセイは、捕捉抗体を固体表面に連結させ、標的分子を含有すると考えられる混合物を第一の抗体に接触させ、洗浄し、その後、1種類またはそれ以上の更なる検出試薬と接触させて、捕捉抗体に結合した標的の存在または量を検出する、標的分子に関するアッセイを指す。本発明の方法において、一次検出試薬、即ち、捕捉された標的分子に結合する試薬もまた、抗体、例えば、任意で、上述のようにハイブリドーマから精製された抗体である。このように、本発明は、標的分子に関するサンドイッチイムノアッセイに適合可能な抗体の対の選択を可能にし、ここで対の一つの構成要素は捕捉抗体であり、対の第二の構成要素は一次検出抗体である。
【0038】
本発明は、上述の抗体精製法を活用し、このように精製された抗体を使用して、イムノアッセイに適合可能な抗体の対を決定することができる。幾つかの態様において、一つの捕捉抗体が用いられ、それが、イムノアッセイにおいて、上述のようにハイブリドーマから精製され、一次検出抗体として機能する、複数の異なる抗体と対を作る。あるいは幾つかの態様において、上述のように異なるハイブリドーマから精製された複数の異なる捕捉抗体が、サンドイッチイムノアッセイにおいて、一つの一次検出抗体と対を作る。任意で、上述のように精製された複数の抗体を、捕捉抗体および一次検出抗体として用いて、最適な結合対を同定することができる。
【0039】
幾つかの態様において、捕捉抗体は、固体支持体に連結されている。本発明の幾つかの態様において、ハイブリドーマ由来の精製抗体のアリコットを採取して固体支持体に連結させ、固体支持体に結合された様々な抗体のアレイを形成させる。非限定的に、ビーズ、任意で磁気ビーズ、または上述の他の固体支持体を含む様々な異なる固体支持体を用いることができる。幾つかの態様において、固体支持体はポリスチレンを含む。任意で、異なる固体支持体、例えば、そのような支持体に連結された標識のサイズに基づいてフローサイトメトリーで判別可能な固体支持体に、異なる抗体が連結されている。例えば、米国特許第7,271,009号;同第6,872,578号;および国際公開公報第02/075311号を参照されたい。
【0040】
抗体を固体表面に連結させるための数多くの方法が公知である。一例として、連結剤(非限定的に、任意で1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)を加えた、N-ヒドロキシスルホスクシンイミド(NHSS)を含む)を用いて、抗体を固体支持体に連結させることができる。
【0041】
幾つかの態様において、ハイブリドーマ由来の精製抗体の第二のアリコットを採取して、イムノアッセイにおいて一次検出抗体として用いる。幾つかの態様において、このアリコットからの抗体を、直接的または間接的に検出可能な標識に連結させて、一次検出抗体を形成させる。直接的に検出可能な標識は、シグナルを直接的に生成する試薬である。例えば、蛍光タグは、直接的に検出可能である。任意で、抗体を、間接的に検出可能な標識、例えば親和性作用物質に連結させる。親和性作用物質としては、非限定的に、ビオチン、アビジンまたはストレプトアビジンが挙げられる。
【0042】
サンドイッチイムノアッセイにおいて機能する2種類の異なる抗体の適合性は、例えば、サンドイッチイムノアッセイにおける捕捉抗体(例えば、上記の通りのもの)の一つまたはアレイを、任意でハイブリドーマ由来の一次検出抗体の一つまたはアレイと組み合わせて使用することにより、決定することができる。該アッセイは、例えば、標的を捕捉抗体に結合させることが可能な条件下で、既知量の標的抗原を捕捉抗体(固体支持体に連結されている)に接触させること、任意で過剰な標的を固体支持体から洗浄すること、およびその後、結合した標的に一次検出抗体を接触させること、を含むことができる。一次検出抗体の有無または量が、捕捉抗体および一次検出抗体の適合性を示す。例えば、2種類の抗体が、同じエピトープへの結合に関して競合する場合、または捕捉抗体による結合により、一次検出抗体の標的エピトープが利用できない場合に、問題が生じる可能性がある。このため、サンドイッチイムノアッセイにおける一つまたは複数の候補捕捉抗体を、一つまたは複数の候補一次検出抗体と比較することにより、どの抗体の対が適合性があるか、そして任意で、どの対が「最良」であるか、即ち、標的の最適な検出または正確な定量を提供するかを、迅速かつ効率的に同定することができる。
【0043】
幾つかのサンドイッチイムノアッセイが公知であり、2種類の抗体の適合性を決定するのに用いることができる。例示的なマイクロタイタープレート・サンドイッチイムノアッセイでは、モノクローナル捕捉抗体を、プラスチック製マイクロタイタープレート上に吸着させる。検査試料をプレートに添加すると、プレート上の抗体が試料由来の標的抗原に結合して、それをプレートに保持する。ポリクローナル抗体を次の段階で添加すると、それも標的抗原(既に、プレート上のモノクローナル抗体に結合されている)に結合し、それにより、2種類の異なる抗体の間に抗原の「サンドイッチ」を形成する。その後、この結合反応は、当技術分野で公知の任意の方法により測定することができる。
【0044】
免疫学的およびイムノアッセイ的手順の検討に関しては、Basic and Clincal Immunology (Stites & Terr eds., 7th ed. 1991)を参照されたい。更に、本発明のイムノアッセイは、複数の構成のうちの任意のもので実施することができ、それらはEnzyme Immunoassay (Maggio, ed., 1980);および前記のHarlow & Laneで広範に検討されている。
【0045】
幾つかの態様において、イムノアッセイの固体支持体は、1種類またはそれ以上のビーズであり、任意でフローサイトメトリーにより検出される。複数の捕捉抗体を用いる場合、幾つかの態様において、フローサイトメトリーにより判別可能な異なるビーズまたは他の微粒子を、異なる捕捉抗体に連結させる。そのような技術は、例えば米国特許第7,271,009号;同第6,872,578号;および国際公開公報第02/075311号に記載されており、Bio-Rad(Hercules, CA)からBio-Plex(商標)システムとして市販されている。フローサイトメトリーにより判別可能な局面としては、非限定的に、粒子の寸法および質量、または粒子上の標識の蛍光波長が挙げられる。
【0046】
イムノアッセイは、多くの場合、抗原と抗体とで形成される複合体に特異的に結合してそれを標識する標識物質も用いる。標識物質は、それ自体、抗体/抗原複合体を含む部分の一つであってもよい。このため標識物質は、関心対象のタンパク質に結合する標識されたポリペプチドまたは標識された(例えば、ビオチン化された)抗体であってもよい。あるいは標識物質は、抗体/抗原複合体に特異的に結合する第三の部分、例えば、二次抗体であってもよい(二次抗体は、典型的には、第一の抗体を得た生物種の抗体に特異的である)。免疫グロブリン定常領域に特異的に結合することが可能な他のタンパク質、例えば、プロテインAまたはプロテインGを、標識物質として用いてもよい。これらのタンパク質は、様々な生物種由来の免疫グロブリン定常領域と強い非免疫反応性を示す(例えば、Kronval et al., J. Immunol. 111:1401-1406 (1973); Akerstrom et al., J. Immunol. 135:2589-2542 (1985)参照)。標識物質は、例えばアビジンまたはストレプトアビジンなどの他の分子が特異的に結合しうる検出可能な部分、例えばビオチンで修飾させることができる。様々な検出可能な部分が、当業者に周知である。
【0047】
イムノアッセイは、非競合アッセイおよび競合アッセイを包含する。競合アッセイでは、試料中に存在する未知のポリペプチドによって、結合する抗体から置換された(競合して除外された(competed away))、公知の添加された(外因性の)関心対象のポリペプチドの量を測定することにより、試料中に存在するポリペプチドの量が間接的に測定される。
【0048】
アッセイに用いられる特定の標識または検出可能な基は、アッセイに用いられる抗体の特異的結合を著しく妨害しない限りは、本発明の決定的な局面ではない。検出可能な基は、検出可能な物理的または化学的性質を有する任意の材料であってもよい。そのような検出可能な標識は、イムノアッセイの分野で十分に開発されており、一般に、そのような方法に有用となるほとんどの標識を、本発明に適用することができる。このため標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段により検出可能な任意の組成物である。本発明において有用な標識としては、磁気ビーズ、蛍光着色剤(例えば、フルオレセインイソチオシアナート、Texas Red、ローダミンなど)、放射線標識、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびELISAで一般に用いられる他のもの)、および比色標識、例えば、金コロイドまたは色ガラスまたはプラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)が挙げられる。
【0049】
標識は、当技術分野で周知の方法により、アッセイの所望の成分(例えば、一次検出抗体)に直接的または間接的にカップリングさせてもよい。先に示された通り、非常に様々な標識を用いてもよく、標識の選択は、必要とされる感受性、化合物とのコンジュゲーションの容易さ、安定性の要件、入手可能な機器、および廃棄処理規定に依存する。
【0050】
非放射性標識は、多くの場合、間接的手段により付着されている。一般にリガンド分子(例えば、ビオチン)が、前記分子に共有結合している。その後、リガンドは、別の分子(例えば、ストレプトアビジン)に結合するが、その分子は、本来、検出可能であるか、またはシグナル系、例えば、検出可能な酵素、蛍光化合物、または化学発光化合物に共有結合している。リガンドおよびその標的は、関心対象のポリペプチドを認識する抗体、または該ポリペプチドに結合する抗体を認識する二次抗体との任意の適切な組合わせで用いることができる。
【0051】
前記分子は、例えば酵素またはフルオロフォアとのコンジュゲーションにより、シグナル生成化合物に直接的にコンジュゲートすることもできる。標識として関心対象となる酵素は、主としてヒドロラーゼ、特にフォスファターゼ、エステラーゼおよびグリコシダーゼ、またはオキシダーゼ、特にペルオキシダーゼである。蛍光化合物としては、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなどが挙げられる。化学発光化合物としては、ルシフェリン、および2,3-ジヒドロフタラジンジオン、例えばルミノールが挙げられる。用いられ得る様々な標識またはシグナル発生系の検討に関しては、米国特許第4,391,904号を参照されたい。
【0052】
標識を検出する方法は、当業者に周知である。このため、例えば標識が放射性標識である場合、検出する手段は、シンチレーションカウンタ、またはオートラジオグラフィーのような写真用フィルムを含む。標識が蛍光標識である場合、蛍光色素を適切な光波長で励起して得られた蛍光を検出することにより、標識を検出してもよい。写真用フィルムの手段により、電子検出器、例えば電荷結合素子(CCD)または光電子倍増管などの使用により、蛍光を視覚的に検出してもよい。同様に、酵素の適切な基質を提供し、得られた反応生成物を検出することにより、酵素標識を検出してもよい。最後に、標識に関連する色を単に観察することにより、簡単な比色標識を検出してもよい。このため、様々なディップスティック式アッセイでは、コンジュゲートされた金は、多くの場合ピンクに見えるが、コンジュゲートされた様々なビーズは、そのビーズの色に見える。
【0053】
幾つかのアッセイフォーマットでは、標識された成分の使用を必要としない。例えば、凝集アッセイを用いて、標的抗体の存在を検出することができる。この場合、抗原でコートされた粒子が、標的抗体を含む試料により凝集される。このフォーマットでは、いずれの成分も標識する必要がなく、標的抗体の存在は、簡単な視覚的検査により検出される。
【実施例】
【0054】
以下の実施例は、例示のために提供されており、本願の発明を限定するものではない。
【0055】
A. 試薬および材料
1. 抗マウスIgGアガロース:Sigma A6531
2. 洗浄緩衝液:0.1M PB(pH7.4)、0.5M NaCl
3. 溶出緩衝液:0.5M酢酸(pH2.4)
4. 中和緩衝液:0.2M PB、0.5N NaOH(pH13)
5. 一塩基性リン酸ナトリウム溶液(100mM NaH2PO4、pH6.0)
6. 0.1M MES緩衝液(pH6.0)
7. Tris 1貯蔵緩衝液(200mM Trisma Base、0.1% BSA、0.3M NaCl、0.1% Proclin、0.02% Tween 20、0.1% NaN3、pH7.4)
8. Dynal MPC-S磁気ビーズセパレータ(Dynal Biotech、カタログ番号:120-20D)
9. ビーズカップリングのための滅菌o-リングキャップ付き2mLスクリューキャップ式マイクロ遠心チューブ(VWR、カタログ番号89004-298)
10. Microtiter Shaker(IKA Works、Model MTS2/4デジタル、カタログ番号:3208001)
11. ラック付きコレクションチューブ(QSP Quality Scientific Plastics、カタログ番号:84501XNBZQ、1.2mLマイクロタイターチューブ付きラック;VWR 82006-700)
12. Luminex磁気ビーズ(Luminex MagPlex(商標) Microsphere、カタログ番号:1ml MC10xxx-01(xxxはビーズのリージョン番号))
13. N-ヒドロキシスルホスクシンイミド(NHSS、Pierce、カタログ番号:24510)
14. 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC、Pierce、カタログ番号:22980)
15. スルホ-NHS-ビオチン(Pierce、カタログ番号21217)
16. Bio-Plex Pro(商標) Cytokine Reagent Kit 10×96ウェル(Bio-Rad、カタログ番号:171-304071)
【0056】
B. 抗体精製
必要な抗マウスIgGアガロースの容量を、以下の通り計算する:抗マウスIgGアガロースの容量(μL)=試料の数×10。
【0057】
洗浄緩衝液の容量は、洗浄緩衝液の容量(μL)=試料の数×40として計算する。
【0058】
洗浄緩衝液および抗マウスIgGアガロースの計算量を、清潔なチューブで混合する。フィルタープレートのウェルを洗浄緩衝液100μLであらかじめ湿潤させ、続いて真空を適用して緩衝液を除去する。抗マウスIgGアガロースを十分にボルテックス処理して、50μLをフィルタープレートの各ウェルに添加する。真空を適用して緩衝液を除去する。
【0059】
洗浄緩衝液250μLを各ウェルに添加し、真空を適用して緩衝液を除去する。ハイブリドーマ上清250μLを、各ウェルに添加する。得られた混合物を、速度900で45分間振とうする。
【0060】
真空を適用して上清を除去する。250μLの更なる上清を添加して、再度、45分間振とうし、再度、真空を適用して上清を除去する。
【0061】
続いて、洗浄緩衝液250μLを各ウェルに添加し、真空を適用して緩衝液を除去する。この段階を2回反復する。
【0062】
中和緩衝液60μLを各コレクションチューブに添加する。溶出緩衝液60μLを各ウェルに添加して、プレートを1100に設定された速度で1分間振とうする。
【0063】
1.2mLマイクロタイターチューブを備えた96ウェルQSP(Quality Scientific Plastics、カタログ番号:84501XNBZQ)ラックを、Bio-Rad真空マニホールド(カタログ番号:732-6470)に置く。フィルタープレートをQSPチューブの最上部に置き、それに応じてウェルの底をチューブに確実に適合させる。
【0064】
真空を適用して抗体をコレクションチューブに回収し、直ちに900の速度で1分間振とうして、pHを中和する。水20μLを各チューブに添加して、十分に混合する。
【0065】
各精製からの精製抗体20μLを、引き続きビーズコンジュゲーションに適用することができ、残り(約120μL)をビオチン化に用いることができる。
【0066】
C. ポリスチレンビーズにコンジュゲートされた精製抗体
必要なビーズ容量は、以下の通り計算する:必要なビーズ容量(μL)=試料の数×2.2(この計算は、1つの試料から得られた22回の検査に基づいており、理論的にはBio-Plexの実施1回ごとにビーズ1250個/ウェルとなる)。
【0067】
ビーズを十分にボルテックス処理して、磁気ビーズを2mLチューブにピペット注入する。脱イオン水150μLをチューブに添加して、十分に混合する。マグネットセパレータを30秒間適用し、続いて、理想的にはビーズに触れずに、溶液を除去する。チューブをマグネットセパレータから外して、100mM 一塩基性リン酸ナトリウム溶液80μLを添加して、ビーズを再懸濁させる。
【0068】
新しいNHSSおよびEDC溶液を調製する。NHSS 1mgを、100mM 一塩基性リン酸ナトリウム溶液20μLに溶解する。EDC 1mgを、100mM 一塩基性リン酸ナトリウム溶液20μLに溶解する。
【0069】
NHSS 10μLをビーズ溶液に添加して、十分に混合する。続いて、EDC 10μLをビーズ溶液に添加して、十分に混合する。その後、ビーズを暗室中、900で20分間振とうする。
【0070】
マグネットセパレータを30秒間適用して、溶液をチューブから除去する。その後、ビーズを0.1M MES緩衝液(pH6.0)150μLに再懸濁させる。再度、マグネットセパレータを30秒間適用して、溶液をチューブから除去する。その後、MES緩衝液での洗浄および溶液の除去を反復して、ビーズをより完全に洗浄する。
【0071】
その後、ビーズを以下の通り0.1M MES緩衝液(pH6.0)に再懸濁させる:必要な0.1M MESの容量(μL)=試料の数×15。
【0072】
ビーズを十分に混合して、ビーズ懸濁液15μLを精製抗体(上述のように精製)20μLと共に各チューブに添加する。チューブをパラフィルムで覆い、暗室中、900で1.5時間振とうする。Tris貯蔵緩衝液185μL/チューブを添加して、ビーズを4℃の暗室に貯蔵する。続いてこのビーズを、サンドイッチイムノアッセイまたは他のイムノアッセイにおいて、例えば捕捉試薬として用いることができる。
【0073】
D. 精製抗体のビオチン化
スルホ-NHS-ビオチン 10mMを調製する。スルホ-NHS-ビオチン 1mgを、脱イオン水227μLに溶解する。スルホ-NHS-ビオチン(10mM)2.4μLを、精製抗体140μLに添加する。ビオチンの最終濃度は、0.2mMである。チューブをパラフィルムで覆い、それらを900で1.5時間振とうする。PBS中の1%BSA 100μLを、0.02%NaN3と共に各チューブに添加して、チューブを4℃で貯蔵する。
【0074】
続いて、このビオチン化抗体を、サンドイッチイムノアッセイまたは他のイムノアッセイにおいて、例えば一次検出抗体および/または捕捉抗体として用いることができる。幾つかの態様において、サンドイッチイムノアッセイは、米国特許第7,271,009号に実質的に記載された通り実施する。
【0075】
本明細書に記載された実施例および態様が、例示を目的とするに過ぎないこと、およびそれらに照らした様々な改良または変更が、当業者に示唆され、そして本願および添付の特許請求の範囲の精神および範囲に含まれることを、理解されたい。本明細書に引用された全ての発行物、特許、および特許出願は、全ての目的で、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
図1