特許第5739425号(P5739425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5739425融解されたアルミナ−ジルコニアグリット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5739425
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】融解されたアルミナ−ジルコニアグリット
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20150604BHJP
   C01G 25/00 20060101ALI20150604BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   C09K3/14 550D
   C09K3/14 550H
   C01G25/00
   B24D3/00 330G
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-523418(P2012-523418)
(86)(22)【出願日】2010年8月4日
(65)【公表番号】特表2013-501121(P2013-501121A)
(43)【公表日】2013年1月10日
(86)【国際出願番号】IB2010053528
(87)【国際公開番号】WO2011015995
(87)【国際公開日】20110210
【審査請求日】2013年6月21日
(31)【優先権主張番号】0955513
(32)【優先日】2009年8月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511104875
【氏名又は名称】サン−ゴバン サントル ド レシェルシュ エ デテュド ユーロペアン
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】マーリン,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ランゴール,ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ペティグニー,シルヴァン
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−227726(JP,A)
【文献】 米国特許第04457767(US,A)
【文献】 特開2005−075659(JP,A)
【文献】 特開昭58−032066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00− 3/32
B24D 3/00− 3/34
C01G 25/00− 25/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量百分率で以下の化学組成:
ZrO+HfO:38.0〜46.0%
Al:全体を100%にする量
SiO:0.60%以下
:0.45〜0.70%
TiO:1.00〜2.00%
を有し、かつ、下記の条件を満たす
ZrO、HfO、Al、SiO、YおよびTiO以外の他の酸化物:<1.00%、Y/SiOの比は0.80〜2.00であり、かつ
ジルコニア中の正方晶系の相はジルコニアの質量の60〜90%であり、ジルコニアの残りは単斜晶系の形である、融解グリットであって
溶融された物質を冷却して固化させることにより得られる固体の融解グリット
【請求項2】
/SiOの質量比が、1.00超かつ1.80未満である、請求項1に記載のグリット。
【請求項3】
ZrO含有量が40.0%超である、請求項1又は2に記載のグリット。
【請求項4】
SiO含有量が0.35%超である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のグリット。
【請求項5】
/SiOの比が、1.10超かつ1.30未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のグリット。
【請求項6】
酸化チタンTiOの質量含有量が、1.30%超かつ1.70%未満である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のグリット。
【請求項7】
正方晶系ジルコニアが、ジルコニアの質量の70%超であるが、85%未満である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のグリット。
【請求項8】
上記他の酸化物が、0.50%未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のグリット。
【請求項9】
MgO:<0.30%、及び/又は
CaO:<0.30%、及び/又は
NaO:<0.10%
である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のグリット。
【請求項10】
MgO:<0.10%、及び/又は
CaO:<0.20%、及び/又は
NaO:<0.05%
である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のグリット。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のグリットの混合物を含む研磨用ツールにおいて、該グリットが、バインダーにより結合されている又は可撓性である支持体の上に層として付着されかつバインダーにより保持されている、上記研磨用ツール。
【請求項12】
砥石車又は研磨用ベルトの形である、請求項11に記載の研磨用ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融解されたセラミックのグリット、特に研磨グリットとして使用のためのもの、に関する。本発明は、該グリットの混合物及び本発明に従うグリット混合物を含む研磨用ツールにもまた関する。
【背景技術】
【0002】
研磨用ツールは、一般的に、その構成成分であるセラミックのグリットを形成する方法に従って分類される:遊離の研磨剤(噴霧により又は懸濁物において使用される、支持体(backing)なし)、被覆された研磨剤(布又は紙の支持体あり、ここでグリットは複数の層に亘って配置されている)、及び結合された研磨剤(砥石車、棒等の形状のもの)。後者の場合、研磨グリットは有機又はガラス状のバインダーで圧縮されている(この場合、バインダーは、酸化物、特にシリケートのバインダーからなる)。これらのグリットはそれ自身が良好な機械的研磨性(特に強さ(toughness))を有しており、かつバインダーとの良好な機械的結合力(cohesion)(界面の強さ(strength))を有していなければならない。現在、広い範囲の用途及び取り扱われる性能を可能にする研磨グリットの種々のファミリーがある:溶融することにより合成された酸化物のグリットは特に良好な品質/製造コストの妥協を提供する。
【0003】
砥石車又は研磨用ベルトの製造において慣用的に使用されているアルミナをベースとする研磨グリットは、用途のタイプ及び遭遇する研磨の方式に依存する3つの主要なカテゴリー、即ちアルミナをベースとする融解グリット;アルミナ−ジルコニアをベースとする融解グリット;及びゾル−ゲル工程により得られるアルミナをベースとするグリットを組み合わせる。
【0004】
融解グリットの範囲内において、アルミナ及びジルコニアをベースとする物質が米国特許第3181939号から公知である。これらのグリットは、一般的に10〜60%のジルコニア、0〜10%の添加剤から一般的になり、残部はアルミナである。公知の添加剤は、米国特許第4457767号に従って2%まで添加された酸化イットリウム又はドイツ国特許第4306966号に従って10%まで添加された酸化チタンを包含する。これらの添加剤はアルミナ―ジルコニアグリットの研磨性の粉末を改良する。米国特許第5525135もまたアルミナ−ジルコニウム−酸化チタンをベースとする融解グリットを開示する。
【0005】
最後に特開昭59−227726号は、アルミナ−ジルコニア−酸化チタン−酸化イットリウムの融解グリットであって、イットリウムがアルミナ、ジルコニア及びチタンの合計に基づいておそらく0.05%〜7%、好ましくは1%〜5%の量で添加されているグリットを開示している。
【0006】
硬鋼を機械加工する(machining)場合、アルミナをベースとする融解グリットは、低い強さ(toughness)を有し、該強さはグリットの過剰な小片をもたらす。アルミナ−ジルコニアをベースとする融解グリットはより低い硬さと組み合わされた非常に高い強さ(toughness)を有する。それらは硬鋼を効率的に機械加工することを可能にするが、平らになる傾向がある。一般的に、これは研磨された部分に適用される力の増加をもたらし、そして操作条件に依存して、この部分は常に熱的に損傷され得る。ゾル−ゲル工程により得られるアルミナをベースとするグリットは、良好な妥協を構成する。これは、該グリットが、高い硬さ、それらにその刃先を再生することを可能にする中間の強さ、及び硬鋼上で長い寿命を保証するグリットの微小破壊をもたらす微小な微細構造を有しているからである。
【0007】
低い硬さを有する延性のある鋼鉄、例えばステンレス鋼、を機械加工するためには、アルミナ−ジルコニアをベースとする融解グリットが、効果的である。これは、該鋼鉄の高い強さがその破壊を制限するからである。ゾルゲル法により得られたアルミナをベースとするグリットは、そのより低い強さ故に、一般的に、アルミナ−ジルコニアをベースとする融解グリットより低位に効果的である。アルミナをベースとする融解グリットは、最も低位に効果的である、なぜならそれらは過剰の小片化をもたらすより低位の強さを有するからである。
【0008】
機械加工された鋼鉄の質量/該機械加工の間に消費された研磨グリットの質量(以下、比Sと呼ばれる)に関して種々のグリットの研磨性能を測定かつ比較することが一般的である。この比はグリットの研磨性能の大きさのオーダーを与えるが、しかし、機械加工の間に含まれるすべてのメカニズムを考慮に入れているわけではない。例えば、急速に消費されるグリットは、物質の実質的な除去を有する急速な摩損のため、高い比Sをもたらし得る。しかし、このグリットは、多数の部品を機械加工することに十分に耐え得ないかもしれない。該急速に消費されるグリットは、過剰な発達された切断力から生じる部品のブルーイング(bluing)により起こされる、機械加工された部品の過剰な熱的な損傷をもまたもたらし得るが、この力は切断体制(cutting regime)を維持するためには必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、長い寿命又は耐久性を有しながら、低く発達された力を有する機械加工のために高い比Sを有する融解されたアルミナ−ジルコニア研磨グリットの混合物に対する需要がある。本発明の目的は、この重要を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従うと、この目的は、
重量百分率で以下の化学組成:
ZrO+HfO:38.0〜46.0%
Al:全体を100%にする量
SiO:0.60%以下
:0.45〜0.70%
TiO:1.00〜2.00%
を有し、かつ、下記の条件を満たす
ZrO、HfO、Al、SiO、YおよびTiO以外の他の酸化物:<1.00%、Y/SiOの比は0.80〜2.00であり、かつ
ジルコニア中の正方晶系の相はジルコニアの質量の60〜90%であり、ジルコニアの残りは単斜晶系の形である、融解グリットであって
溶融された物質を冷却して固化させることにより得られる固体の融解グリットにより達成される。
【0011】
本明細書の残りにおいてより詳細に見られるように、発明者らは、上記の化学組成で、特に酸化イットリウム含有量の非常に狭い範囲で、正方晶系の制限された割合が有利であることを発見した。さらに、この教示は、機械加工の効率を増すために正方晶系のジルコニアの最大の割合を示唆又は奨励さえする米国特許第5525135号又は特開昭59−227726号の教示と反対である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に従うグリットは、以下の任意的な特徴の1以上をもまた有している。
− 好ましくは、Y/SiOの質量比は、1.00超、好ましくは1.10超、及び/又は1.80未満、好ましくは1.50未満、好ましくは1.40未満、より好ましくは1.30未満であり、
− 好ましくは、正方晶系のジルコニアは、ジルコニアの質量の70%超、及び/又は85%未満であり、
− 好ましくは、ZrOの含有は、40%超であり、
− 好ましくは、シリカの含有量は、0.3%超、好ましくは0.35%であり、
− 酸化チタンTiOの質量含有量は1.30%超であり及び/又は1.70%未満であり、
− 好ましくは、酸化物の形で表わされたその他の元素は、0.50%未満であり、特に
MgO:<0.30%,好ましくは<0.10%,好ましくは<0.05%であり、及び/又は
CaO:<0.30%,好ましくは<0.20%,好ましくは<0.10%,及び/又は
NaO:<0.10%,好ましくは<0.05%であり、そして
− 酸化物の形で表わされたその他の元素は不純物である。
【0013】
本発明は、重量百分率で、80%超、好ましくは90%超、好ましくは95%超、好ましくは99%超、及び好ましくは実質的に100%の本発明に従う研磨グリットを含むグリット混合物にもまた関する。好ましくは、本発明に従うグリット混合物は、以下の標準:FEPA標準42−GB−1984,R1993及びFEPA標準43−GB−1984及びR1993に従って測定された混合物又はグリットの粒子サイズ分布に従う粒子サイズの分布を満足する。
【0014】
本発明は、バインダーにより結合された研磨グリット混合物、又は支持体、特に可撓性である支持体の上に層として付着されかつバインダーにより保持された研磨グリット混合物を含む研磨用ツール、特に砥石車又は研磨ベルトの形の研磨用ツールであって、このツールは、グリットが本発明に従うことを特徴とするツールに関する。
【0015】
一般的に、本発明は、研磨のために本発明に従うグリットを使用する方法に関する。
【0016】
− 本発明に従うグリットの酸化物の含有量は、産業の通常の慣用に従って、最も安定な酸化物の形で表された、対応する化学元素のそれぞれの総含有量に関する。従って、含まれるものは、亜酸化物及び任意的に窒化物、酸化窒化物、カーバイド、オキシカーバイド、カーボナイトライド、又は上記の金属種さえが含まれる。
【0017】
− 用語「不純物」は、出発原料と一緒に不可避的に導入される避けがたい成分を意味することと理解されたい。特に、酸化物、窒化物、酸化窒化物、カーバイド、オキシカーバイド、カーボナイトライド、及びナトリウム及びその他のアルカリ金属、鉄、バナジウム、及びクロムの金属種の群の一部を構成する化合物は不純物である。例を与えると、CaO,MgO又はNaOが挙げられ得る。残余の炭素は、本発明に従う製品の組成物の不純物の一部を形成する。しかし、酸化ハフニウムは不純物とみなされない。
【0018】
− 用語、酸化物の「前駆体」は、本発明に従うグリット又はグリット混合物の製造の間に酸化物を与えることのできる成分を意味すると理解されたい。
【0019】
− 融解により得られた製品において、HfOは、ZrOから化学的に分離されることができない。従って、そのような製品の化学組成において、ZrO+HfOは、これらの2つの酸化物の合計含有量を意味する。しかし本発明に従うと、HfO2は原料に意図的に添加されるわけではない。従って、HfOは、痕跡量の酸化ハフニウムを意味するにすぎず、この酸化物は一般的に2%未満の含有量でジルコニア源に常に天然に存在する。従って、明確性のために、ジルコニア及び痕跡量の酸化ハフニウムの含有量を、ZrO+HfOで、又はZrOにより、又はさもなければ「ジルコニア含有量」により表現することの間に差はない。
【0020】
− 用語「融解されたグリット」又はより一般的には「融解された製品」は、溶融された物質を冷却して固化させることにより得られる固体のグリット(又は製品)を意味すると理解されたい。
【0021】
− 「溶融された物質(molten material)」は、いくつかの固体粒子を含んでいてもよいが、該粒子が該液体に構造を与えることができるには不十分な量において含む液体である。その形を保つためには、溶融された物質は容器に収容されなければならない。
【0022】
− 本明細書において、他に明記されなければ、グリットの全ての成分はグリットの酸化物の合計質量に基づく重量百分率で与えられる。
【0023】
本発明に従う融解されたグリットは、アルミナ−ジルコニアグリットを製造するための任意の慣用の方法により製造され得る。一つの慣用の方法は、慣用的に以下の段階を含む:原料を混合する段階;電気アーク炉において融解させる段階;溶融された液体を停止することによる固化の段階;粉砕し、かつ所望される粒子サイズに従って任意的に分類する段階。
【0024】
融解されたアルミナ−ジルコニアグリットの混合物の性質は溶融された液体の熱履歴に依存し、該熱履歴自身はプロセスパラメーターに依存するが、炉の形状及びその環境(煙道ガスの回収(collection)、物質等)にもまた強く依存する。従って、プロセスパラメーターは、使用される炉、使用される原料等に従って決定され、これらの段階の終わりに本発明に従うグリット混合物を得る。パラメーターは例えば下記の実施例において使用される方法の値を取り得る。
【実施例】
【0025】
以下の非制限的な実施例は本発明を説明する目的のために与えられる。
【0026】
実施例として与えられ得る製品は、以下の原料から製造された:
− 0.4%未満のソーダ含有量を有する、Alcanにより名前AR75で販売されているアルミナ粉末。
− 85%超のジルコニア+ハフニウムの平均含有量を有し、平均で5%のシリカ、10%未満のアルミナ含有量、及び0.7%未満の他の元素の含有量を含むジルコニア粉末。
− 99.99%超のY含有量を有し、3〜6ミクロンの間のメジアン直径を有する、Altichemにより名前「酸化イットリウム99.99 LY」で販売されている酸化イットリウムの粉末。
− 95%超のTiO含有量を有し、約125ミクロンのメジアン直径を有する、Europe Mineralsにより販売されている「ルチル砂」チタン粉末、及び
− 1〜4mmのサイズを有する、Solutia Incorporatedにより販売されている石油コーク。
【0027】
グリットは、当業者に周知の以下の慣用の方法を使用して製造された:
a')炉の状態に依存して、少なくとも0.5%(3%まで)の石油コークの添加と共に、原料が混合される。
b')0.8mの直径の炉のタンク、105〜150Vの電圧、1500〜2500Aの電流、及び2.1〜2.8kWh/kgの供給される特定電気エネルギーの充電で、黒鉛電極を有するHeroultタイプの単相の電気アーク炉において、原料が溶融される。
c')次に、溶融された物質は、薄い金属の板の間にそれを注ぐためのデバイス、例えば米国特許第3993119号に示されているデバイスにより突然、冷却されて、固体の物質を構成する、完全に固体のスラブを得る。
d')段階c')において冷却された該固体の物質は粉砕されて、グリットの混合物を得る、及び
e')該グリットは500〜600μmになるようにスクリーニングにより選択される。
【0028】
グリット混合物の性能及び寿命を評価するために、各実施例のグリット、1グラムを含む直径12.7cmの砥石車が製造された。
【0029】
次に、304ステンレススチールでできている、大きさが20.3cm×7.6cm×5.1cmである板の表面が、12.7μmの一定の切断深さ及び3600rpmの砥石車の回転速度を保ちながら、これらの砥石車を使用して一定の速度における往復運動する動きで、機械加工された。機械加工の間に該砥石車により引かれる最大の力(power)Pmaxが記録された。
【0030】
砥石車が完全に磨滅した後に、機械加工されたスチールの質量(即ち、研磨操作により除去されたスチールの質量)「Ma」及び消費された砥石車の質量「Mm」が測定された。比Sは比Ma/Mmである。
【0031】
切断の効率は、機械試験の間の砥石車により引かれる最大の力Pmax,砥石車の寿命tmaxを測定することにより測定された。砥石車の寿命は砥石車の全てのグリットが消費されたときに到達されると考えられる。
【0032】
表1は、試験された種々のグリット混合物の化学組成及び正方晶系のジルコニアの割合を与える。表2は、これらの混合物で得られた結果を与える。
【0033】
比Sにおける百分率の改良は、以下の式により計算される:100×(関連する実施例の製品の比S−参照例の製品の比S)/(参照例の製品の比S)、ここで参照例は比較例1*又は比較例2*である。比Sの百分率の改良の高い正の値が所望される。
【0034】
試験の間に砥石車により引かれる最大の力Pmaxの百分率の減少は、以下の式により計算される:
100×(参照例の製品でのPmax−関連する実施例の製品でのPmax)/(参照例の製品のPmax)、ここで参照例は比較例1又は比較例2である。試験の間に砥石車に引かれる最大の力Pmaxの百分率の減少の高い正の値が所望される。
【0035】
砥石車の寿命tmaxにおける百分率の改良は以下の式により計算される。
100×(関連する実施例の製品のtmax−参照例の製品のtmax)/(参照例の製品のtmax)、ここで参照例は比較例1又は比較例2である。砥石車のtmaxの改良の百分率の高い正の値が所望される。
【0036】
ジルコニア中の百分率の正方晶系のジルコニアの質量含有量は、以下の方法で測定される:
試験されるグリットがペレットを構成するように樹脂で被覆される。600超のグリットを含むペレットの磨かれた部分について、銅の対陰極を有するブルッカーD5000回折計を使用して、X−線回折パターンが獲得される。該獲得は、25°〜37°の範囲の2θ角に亘って0.02°の段階でそして1段階ごとに4秒の時間で実行される。0.6mmの受光スリット(receiving slit)が使用され、試料は、好ましい方向の影響を制限するように、それ自身で回転される。獲得時間(acquisition time)は、よりよい統計学上の計数のために5の因子ずつ増加される。
【0037】
百分率の単斜晶系ジルコニア質量含有量は、TOPAS Pソフトウェアを使用する解析プロセッシング後に(解析機能は疑似−Voigt機能である)、以下の式に従って、安定化されたジルコニアの(111)ピーク面積に対する単斜晶系ジルコニアの
及び(111)のピーク面積の比から測定される。
ρモノは、単斜晶系ジルコニアの密度であり5.8g/cmに等しく、
ρ安定化は、安定化されたジルコニアの密度であり、6.1g/cmに等しい。
【0038】
安定化されたジルコニアの質量含有量の百分率は、以下の式により与えられる。
【0039】
本発明に従う、試験されたグリットにおいて、安定化されたジルコニアは完全に正方晶系の形であり、残りは、単斜晶系の形におけるジルコニアである。
【0040】
正方晶系のジルコニアの百分率含有量は、総結晶化ジルコニアに対して表わされる。
【0041】
下記の表1及び2は得られた結果をまとめる。
【0042】
比較例1は、特開昭59−22772号の実施例5の組成に近い組成を有するグリットであり、かつ比較例2は米国特許第4457767号に従うグリットである。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
− 比Sが、参照物質の製品と比較して少なくとも10%だけ改良され、
− 最大の引かれる力Pmaxが参照例の製品と比較して少なくとも5%減少され、
− 砥石車の寿命tmaxが参照例の製品と比較して少なくとも6%改良されるとき、
発明者らは、比S、機械加工試験の間に砥石車により引かれる最大の力Pmax及び砥石車の寿命tmaxの間に良好な妥協があると考える。
【0046】
好ましくは、比Sは少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%又は少なくとも30%さえ改良され、及び/又は最大の引かれる力Pmaxは少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、又は少なくとも20%さえ減少され、及び/又は砥石車の寿命は、少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、又は少なくとも20%さえ改良される。
【0047】
実施例10は、ジルコニアの質量の91%の正方晶系のジルコニアの含有量は、所望されるべき妥協が達成されないことを示す。
【0048】
実施例12及び14は、ジルコニアの質量のそれぞれ57%及び55%の正方晶系のジルコニア含有量が、所望される妥協を達成するためには不十分であることを示す。
【0049】
実施例11は、ジルコニアの質量の64%の正方晶系ジルコニアの含有量が、上記の妥協が達成されることを許すことを示す。
【0050】
実施例9は、0.66%のシリカ含有量は高すぎであり、上記の妥協が達成されることを可能にしないことを示す。実施例10は、0.20%未満のシリカ含有量は、上記の妥協が達成されることを可能にしないことを示す。
【0051】
実施例13は、適切な正方晶系ジルコニア及びシリカ含有にもかかわらず、酸化イットリウムの含有量が0.45%未満であり、かつTiO含有量が2%超であるならば、上記の妥協が達成されないことを示す。
【0052】
実施例10、12及び14は、0.80未満及び2.00超のY/SiO比は該妥協が達成されることを可能にしないことを示す。
【0053】
全ての実施例の中で、実施例17が好ましい。
【0054】
今、明らかに見えるように、本発明は例外的な研磨の性能、例外的な耐久性、及び例外的な切断効率を有する、融解されたアルミナ−ジルコニア研磨グリットの混合物を提供する。
【0055】
しかし、もちろん、本発明は、記載され、そして示された実施態様に制限されず、これらは非制限的な、説明的な例として与えられている。