(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つのプロセッサ(80)は、それぞれ前記複数の電極(26)に対する複数の電流振幅を含む刺激パラメータセットを発生させ、かつ該電極(26)に対するそれぞれの前記電流振幅に従って前記重ね合わされた複数の電気パラメータ情報セットをスケーリングするように構成されることを特徴とする請求項10に記載のシステム(10)。
前記少なくとも1つのプロセッサ(80)は、前記少なくとも1つの電極(26)に対する刺激パラメータセットを発生させ、かつ該刺激パラメータセットに基づいて前記少なくとも1つのモデル化された電極(26)に関する活性化組織容積を推定するように構成されることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のシステム(10)。
前記ユーザ入力デバイス(72,74)と、前記メモリ(82)と、前記少なくとも1つのプロセッサ(80)とを収容する外部制御デバイス(18)を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項17のいずれか1項に記載のシステム(10)。
【背景技術】
【0002】
埋め込み可能神経刺激システムは、様々な疾病及び障害において治療効果を有することを明らかにしてきた。ペースメーカー及び「埋め込み可能心細動除去器(ICD)」は、いくつかの心臓状態(例えば、不整脈)の治療において非常に有効であることを明らかにしている。「脊髄刺激(SCS)」システムは、慢性疼痛症候群の治療のための治療方式として長い間受け入れられてきており、組織刺激の用途は、狭心症及び失禁のような更に別の用途に広がり始めている。更に、最近の研究では、「末梢神経刺激(PNS)」システムが、慢性疼痛症候群及び失禁の治療において有効性を示しており、いくつかの更に別の用途が現在研究されている。
【0003】
本明細書に説明する本発明に対するより強い関連では、「脳深部刺激(DBS)」が、神経障害の治療に10年を軽く超える間にわたって治療適用されている。DBS、及び患者の脳内への電気刺激リードの埋め込みを含む他の関連処置は、パーキンソン病、ジストニア、本態性振戦、発作性疾患、肥満、鬱病、運動制御の回復、及び他の衰弱性疾患のような障害を腹外側視床、淡蒼球内節、黒質網様部、視床下核(STN)、又は淡蒼球外節を含む1つ又はそれよりも多くのターゲット部位の電気刺激によって治療するのに益々使用されている。DBSは、病変に対する安全で可逆性の代替物であるので、多くの障害に対する卓越した治療選択肢となった。例えば、DBSは、進行性パーキンソン病の治療において最も多くの場合に実施される外科的障害である。DBS外科手術を受けた患者は、世界中で約30,000人いる。従って、DBS治療選択肢における進歩から恩典を得ることになる多数の患者が存在する。DBSを用いた疾患の治療を解説する更なる詳細は、米国特許第6,845,267号明細書及び第6,950,707号明細書に開示されている。
【0004】
DBS処置中には、下にある脳組織を損傷しないように患者の頭蓋骨を通して少なくとも1つの穿頭孔が開かれ、患者の頭蓋骨に大きい定位固定ターゲット装置が装着され、カニューレが、脳内のターゲット部位に向けて慎重に位置決めされる。経路が脳の望ましい部分を通過するか否か、及び通過する場合には、次に、電極アレイを担持する刺激リード(又は複数のリード)がカニューレを通じて穿頭孔を通ってこの経路に沿って脳の柔組織内に導入され、それによってリード上に設けられた電極が患者の脳内のターゲット部位に計画的に配置されるようになるか否かを判断するために、一般的にマイクロ電極の記録を作成することができる。リード位置を確認するには、一般的に磁気共鳴撮像装置(MRI)又はコンピュータ断層(CT)撮像装置のような撮像デバイスを使用することができる。リードが適正に位置決めされた状態で、リードのうちで穿頭孔を出る部分は、患者の頭皮の下で穿頭孔から離れた部位(例えば、患者の胸部領域)にある患者内に埋め込まれた神経刺激器に皮下配線される。神経刺激器は、神経刺激器内にプログラムされた刺激パラメータセットに従って電気刺激パルスを発生させる。
【0005】
特筆される点として、有効な治療を継続的に達成するためには、リード位置の適正な位置及び維持が提供されることが重要である。DBS用途では、電気刺激が意図される単一のターゲット部位(又は複数の部位)はほぼ豆粒サイズであり、患者の脳内に深く位置する。従って、1ミリメートルに満たないリード変位が、患者の治療に悪影響を有する可能性がある。最適な治療及び副作用最小化を提供するためには、刺激領域が正しい場所内になければならないので、一般的に刺激リードは多くの電極(例えば、4つ)を担持し、それによってこれらの電極のうちの少なくとも1つがターゲットの近くに存在し、刺激場をこの着目領域に配置する電極プログラミングを可能にするようにする。この目的のために、刺激リードが患者の脳内に埋め込まれ、ターゲット領域に対して正しい位置にあることが確認された後に、一般的に、患者に対して1つ又はそれよりも多くの有効な刺激パラメータセットを選択する適合処置が実施される。
【0006】
一般的に、神経刺激器内にプログラムされる刺激パラメータは、外部制御デバイス上の制御器を操作して神経刺激器システムによって患者に与えられる電気刺激を修正することによって調節することができる。この場合、外部制御デバイスによってプログラムされた刺激パラメータに従って電気パルスを神経刺激器から刺激電極に送出することができ、刺激パラメータセットに従ってある一定の容積の組織を刺激又は活性化して患者に望ましい有効な治療が施される。最適の刺激パラメータセットは、治療(例えば、運動障害の治療)の恩典をもたらすように刺激すべきである組織の容積に刺激エネルギを送出し、一方、副作用をもたらす可能性がある刺激を受ける非ターゲット組織の容積を最小にするものになる。一般的な刺激パラメータセットは、アノード又はカソードとして機能している電極、並びに刺激パルスの振幅、持続時間、及び繰返し数を含むことができる。
【0007】
利用可能電極の数の多さは、様々な複雑な刺激パルスを発生させる機能と共に臨床医又は患者に刺激パラメータセットの膨大な選択肢を与える。そのような選択を容易にするために、一般的に、臨床医は、コンピュータ処理プログラミングシステムを通じて外部制御デバイス、及び適用可能な場合は神経刺激器をプログラムする。このプログラミングシステムは、自己内蔵ハードウエア/ソフトウエアシステムとすることができ、又は主に標準のパーソナルコンピュータ(PC)上で作動するソフトウエアによって定義することができる。PC又は特別仕様ハードウエアは、患者のフィードバックに基づいて最適な刺激パラメータを判断し、次に、最適な刺激パラメータを用いて外部制御デバイスをプログラムすることを可能にするために、神経刺激器によって発生させた電気刺激の特性を能動的に制御することができる。
【0008】
神経刺激器をより効率的にプログラムするのにコンピュータ処理プログラミングシステムを使用することができるにも関わらず、医師及び臨床医は、神経刺激器内にプログラミングされる1つ又は複数の刺激パラメータセットを判断するのに多大な試行錯誤工程を依然として達成する必要がある。この問題に対処するのに、電極にある一定の刺激パラメータ(電極組合せ、パルス振幅、パルス持続時間、及びパルス周波数を含む)のセットが与えられた場合に刺激によって影響を受ける組織の容積のサイズ及び場所を予想して表示することは有利である。例えば、米国特許第7,346,382号明細書は、所定の電極形態の候補(電極のサイズ、形状を含む)と周囲の組織との有限要素モデル(FEM)を電位の第二階差(Δ
2V
e)に対して解き、次に、様々な刺激パラメータ(パルス振幅、パルス持続時間、及びパルス周波数)のセットによって影響を受ける可能性が高い組織の容積(活性化容積(VOA))を予想する技術を説明している。
【0009】
米国特許第7,346,382号明細書に説明されているVOA予想技術は有利であるが、刺激リードをモデル化することに関連付けられたある一定の内在的な欠点が存在する。例えば、各新しいリード設計に対してFEMモデルを開発するのに相当な量の時間と労力とを費やさなければならず、それによってリード開発に障害がもたらされる。例えば、各FEMリードモデルは、電極のサイズ及び形状の変動性だけではなく、例えば、リード電極間の間隔、異なるリード構成(例えば、密間隔の横並び構成、密間隔の上下構成、幅広間隔の上下構成、又は幅広間隔の横並び構成)、リードのねじれ等に起因する電極位置の変動性をも考慮に入れるべきである。更に、各コンピュータ処理プログラミングシステム内にインストールされるソフトウエアパッケージの実施は、市販の全ての刺激リードに対応することが非常に望ましいので、以前にその分野に投入されたコンピュータ処理プログラミングシステムは、新しい刺激リードが設計される度に新しいFEMリードモデルでアップグレードする必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に続く説明は、脳深部刺激(DBS)システムに関する。しかし、本発明は、DBSにおける用途に十分に適するが、その最も広義の態様では、そのように限定することができないことは理解されるものとする。より正確には、本発明は、組織を刺激するのに使用されるあらゆる種類の埋め込み可能電気回路と併用することができる。例えば、本発明は、脊髄刺激器、ペースメーカー、細動除去器、蝸牛刺激器、網膜刺激器、連係した体肢運動をもたらすように構成された刺激器、皮質刺激器、末梢神経刺激器、微小刺激器の一部として、又は尿失禁、睡眠時無呼吸、肩関節亜脱臼、頭痛などを治療するように構成されたあらゆる他の神経刺激器に対して使用することができる。
【0026】
最初に
図1を参照すると、一般的に、例示的DBS神経刺激システム10は、少なくとも1つの埋め込み可能刺激リード12(この事例では2つ)、埋め込み可能パルス発生器(IPG)14の形態にある神経刺激器、外部遠隔コントローラRC16、臨床医のプログラム作成器(CP)18、外部試験刺激器(ETS)20、及び外部充電器22を含む。
【0027】
IPG14は、アレイで配置された複数の電極26を担持する刺激リード12に1つ又はそれよりも多くの経皮延長リード24を通じて物理的に接続される。図示の実施形態では、刺激リード12は、経皮リードであり、この目的のために、電極26は、刺激リード12に沿って直列に配置することができる。別の実施形態では、電極26は、単一のパドルリード上に2次元パターンで配置することができる。より詳細に以下に説明するが、IPG14は、刺激パラメータセットに従って電気刺激エネルギをパルス電気波形(すなわち、電気パルスの時系列)の形態で電極アレイ26に送出するパルス発生回路を含む。
【0028】
刺激リード12には、延長経皮リード28及び外部ケーブル30を通じてETS20を物理的に接続することができる。IPG14と類似のパルス発生回路を有するETS20もまた、刺激パラメータセットに従って電気刺激エネルギをパルス電気波形の形態で電極アレイ26に送出する。ETS20とIPG14の主な相違点は、ETS20は、供給される刺激の応答性を試すために刺激リード12が埋め込まれた後でかつIPG14の埋め込みの前に試行ベースに使用される埋め込み不能デバイスである点である。
【0029】
RC16は、双方向RF通信リンク32を通じてETS20を遠隔測定的に制御するのに使用することができる。IPG14及び刺激リード12が埋め込まれた状態で、IPG14を双方向RF通信リンク34を通じて遠隔測定的に制御するためにRC16を使用することができる。そのような制御は、IPG14を起動又は停止させ、異なる刺激パラメータセットを用いてプログラムすることを可能にする。IPG14は、プログラミング済みの刺激パラメータを修正し、かつIPG14によって出力される電気刺激エネルギの特性を能動的に制御するように作動させることができる。より詳細に以下に説明するが、CP18は、手術室及び予後の診察においてIPG14及びETS20をプログラムするための詳細な刺激パラメータを臨床医に供給する。
【0030】
CP18は、IR通信リンク36を通じてRC16を通してIPG14又はETS20と間接的に通信することによって上述の機能を実行することができる。代替的に、CP18は、RF通信リンク(図示せず)を通じてIPG14又はETS20と直接通信することができる。CP18によって供給される臨床医詳細刺激パラメータは、その後にRC16の独立型モードでの(すなわち、CP18の支援なしの)作動によって刺激パラメータを修正することができるようにRC16をプログラムするのにも使用される。
【0031】
外部充電器22は、誘導リンク38を通じてIPG14を経皮的に充電するのに使用される携帯デバイスである。簡潔化の目的で、外部充電器22の詳細内容に対しては、本明細書では説明しない。外部充電器の例示的な実施形態の詳細内容は、米国特許第6,895,280号明細書に開示されている。IPG14をプログラムし終わり、その電源を外部充電器22によって充電又はそうでなければ補充し終わった状態で、IPG14は、RC16又はCP18がなくても、プログラムされた通りに機能することができる。
【0032】
図2を参照すると、IPG14は、電子構成要素及び他の構成要素(以下により詳細に説明する)を収容するための外側ケース40と、電極26を外側ケース40内の内部電子機器(以下により詳細に説明する)に電気的に結合する方式で刺激リード12の近位端が嵌合するコネクタ42とを含む。外側ケース40は、チタンのような導電性の生体適合性材料で構成され、内部電子機器が体組織及び体液から保護される気密密封区画を形成する。一部の場合には、外側ケース40は、電極として機能することができる。
【0033】
刺激リード12の各々は、細長い円筒形リード本体43を含み、電極26は、リード本体43の周囲に装着されたリング電極の形態を取る。刺激リード12の一方は、8つの電極26(E1〜E8とラベル付けしている)を有し、他方の刺激リード12は、8つの電極26(E9〜E16とラベル付けしている)を有する。リード及び電極の実際の個数及び形状は、当然ながら目標とする用途に従って変化することになる。経皮刺激リードを製造する構成及び方法を説明する更なる詳細内容は、米国特許公開第2007/0168007号明細書及び第2007/0168004号明細書に開示されている。
【0034】
図3に例示している別の実施形態では、経皮リード12の代わりに外科のためのパドルリード13を使用することができる(例えば、脳皮質刺激が意図される場合)。パドルリード13は、細長い円筒形リード本体44と、円盤形電極27(この事例では電極E1〜E8)を担持する片面を有して遠位側に設けられたパドル45とを含む。電極27は、刺激リード13の軸に沿った2つの列に2次元アレイで配置される。電極の実際の個数及び配列は、当然ながら目標とする用途に従って変化することになる。外科のためのパドルリードの製造の構成及び方法に関する更なる詳細内容は、米国特許公開第2007/0150036号明細書に開示されている。
【0035】
以下に更に詳細内容に説明するが、IPG14は、バッテリと、IPG14内にプログラムされた刺激パラメータセットに従って電気刺激エネルギをパルス電気波形の形態で電極アレイ26に送出するパルス発生回路とを含む。そのような刺激パラメータは、アノード(正)、カソード(負)、及び停止(ゼロ)として作動される電極を定義する電極組合せと、各電極に割り当てられる刺激エネルギの百分率(分割電極構成)と、パルス振幅(IPG14が電極アレイ26に定電流又は定電圧のいずれを供給するかに依存してミリアンペア又はボルトで測定される)、パルス持続時間(マイクロ秒で測定される)、パルス繰返し数(パルス毎秒で測定される)、及びバースト率(刺激有効持続時間X及び刺激停止持続時間Yとして測定される)を定義する電気パルスパラメータとを含むことができる。
【0036】
電気刺激は、1つをIPGケースとすることができる2つ(又はそれよりも多く)の作動電極の間で発生することになる。刺激エネルギは、単極方式又は多重極(例えば、二重極、三重極等)方式で組織に伝達することができる。単極刺激は、リード電極26のうちで選択された1つがIPG14のケースと共に作動され、それによって刺激エネルギが、この選択電極26とケースの間で伝達されるような場合に発生する。二重極刺激は、リード電極26のうちの2つがアノード及びカソードとして作動され、それによって刺激エネルギがこれらの選択電極26の間で伝達されるような場合に発生する。例えば、第1のリード12(1)上の電極E3をアノードとして作動させ、同時に第2のリード12(1)上の電極E11をカソードとして作動させることができる。三重極刺激は、リード電極26のうちの3つが、2つをアノードとして、残りの1つをカソードとして、又は2つをカソードとして、残りの1つをアノードとして作動された場合に発生する。例えば、第1のリード12上の電極E4及びE5をアノードとして作動させ、第2のリード12上の電極E12をカソードとして作動させることができる。
【0037】
図示の実施形態では、IPG14は、電極の各々を通じて流れる電流のマグニチュードを個々に制御することができる。この場合、電流発生器を有することが好ましく、各電極において独立した電流源からの個々の電流調整振幅を選択的に発生させることができる。このシステムは、本発明を利用するのに最適であるが、本発明と共に使用することができる他の刺激器は、電圧調整出力を有する刺激器を含む。精密な制御を提供するためには個々にプログラミング可能な電極振幅が最適であるが、電極間で切り換えられる単一の出力源を使用することができ、しかし、プログラミングにおいて制御はそれ程精密ではない。電流と電圧との混合調整デバイスを本発明と共に使用することができる。IPGの詳細な構造及び機能を解説する更なる詳細内容は、米国特許第6,516,227号明細書及び第6,993,384号明細書により完全に説明されている。
【0038】
図4に示しているように、2つの経皮刺激リード12が、患者44の頭蓋骨48内に形成された1つの穿頭孔46(又は代替的に、2つのそれぞれの穿頭孔)を通じて導入され、更に電極26がターゲット組織領域(例えば、腹外側視床、淡蒼球内節、黒質網様部、視床下核、又は淡蒼球外節)に近くてその刺激が機能障害を治療するように、患者44の脳49の柔組織内に従来方式で導入される。すなわち、機能障害の関連を変更するために、刺激エネルギを電極26からターゲット組織領域に伝達させることができる。刺激リード12(1)が穿頭孔46を出る場所の近くの空間の欠如に起因して、一般的に、IPG14は、胸部内又は腹部内のいずれかに手術によって作成されたポケット内に埋め込まれる。当然ながら、IPG14は、患者の身体の他の場所内に埋め込むことができる。延長リード24は、IPG14を刺激リード12(1)の出口点から離れて設置することを容易にする。
【0039】
次に、
図5を参照して、RC16の一例示的実施形態をここで以下に説明する。上述のように、RC16は、IPG14、CP18、又はETS20と通信を行うことができる。RC16は、内部構成要素(プリント回路基板(PCB)を含む)を収容するケーシング50と、ケーシング50の外部によって担持される照明表示画面52及びボタンパッド54とを含む。図示の実施形態では、表示画面52は、照明フラットパネル表示画面であり、ボタンパッド54は、屈曲回路の上に位置決めされた金属ドームを有する膜スイッチと、PCBに直接に接続されたキーパッドとを含む。任意的な実施形態では、表示画面52は、タッチスクリーン機能を有する。ボタンパッド54は、IPG14を起動及び停止することを可能にし、IPG14内の刺激パラメータの調節又は設定を可能にし、かつ画面の間の選択を可能にする複数のボタン56、58、60、及び62を含む。
【0040】
図示の実施形態では、ボタン56は、IPG14を起動及び停止するように作動させることができるオン/オフボタンとして機能する。ボタン58は、RC16が、画面表示及び/又はパラメータの間で切り換わることを可能にする選択ボタンとして機能する。ボタン60及び62は、パルス振幅、パルス幅、及びパルス繰返し数を含むIPG14によって発生するパルスの刺激パラメータのうちのいずれかを増分又は減分させるように作動させることができる上/下ボタンとして機能する。例えば、選択ボタン58は、RC16を上/下ボタン60、62によってパルス振幅を調節することができる「パルス振幅調節モード」、上/下ボタン60、62によってパルス幅を調節することができる「パルス幅調節モード」、上/下ボタン60、62によってパルス繰返し数を調節することができる「パルス繰返し数調節モード」に入れるように作動させることができる。代替的に、各刺激パラメータに特化した上/下ボタンを設けることができる。刺激パラメータを増分又は減分させるのに、上/下ボタンを使用する代わりに、ダイヤル、スライダーバー、又はキーパッドのようないずれかの他の種類のアクチュエータを使用することができる。RC16の機能及び内部構成要素の更なる詳細内容は、米国特許第6,895,280号明細書に開示されている。
【0041】
次に、
図6を参照して、例示的なRC16の内部構成要素を以下に説明する。一般的に、RC16は、プロセッサ64(例えば、マイクロコントローラ)と、プロセッサ64による実行のための作動プログラム、並びにルックアップテーブル(以下に説明する)内の刺激パラメータセットを格納するメモリ66と、入力/出力回路、特に刺激パラメータをIPG14に出力し、IPG14からステータス情報を受け取るための遠隔測定回路68と、ボタンパッド54から刺激制御信号を受け取り、表示画面52(
図5に示している)にステータス情報を伝達するための入力/出力回路70とを含む。簡潔化の目的で本明細書には説明しないRC16の他の機能を制御するのに加えて、プロセッサ64は、ボタンパッド54のユーザ操作に応答して新しい刺激パラメータセットを発生させる。次に、これらの新しい刺激パラメータセットは、遠隔測定回路68を通じてIPG14(又はETS20)に伝達されることになる。RC16の機能及び内部構成要素の更なる詳細内容は、米国特許第6,895,280号明細書に開示されている。
【0042】
上記に簡単に解説したように、CP18は、複数の電極組合せのプログラミングを大幅に簡素化し、医師又は臨床医が、IPG14、並びにRC16内にプログラミングされる望ましい刺激パラメータを即座に判断することを可能にする。すなわち、IPG14のプログラミング可能なメモリ内の刺激パラメータの修正は、IPG14と直接通信を行うことができ又はRC16を通じてIPG14と間接的に通信を行うことができるCP18を用いて、埋め込み後に臨床医により実施される。すなわち、医師又は臨床医は、脳内の電極アレイ26の作動パラメータを修正するのにCP18を使用することができる。
【0043】
CP18の全体の外観は、ラップトップパーソナルコンピュータ(PC)のものであり、実際に、指向プログラミングデバイスを含むように適切に構成されて本明細書に説明する機能を実施するようにプログラムされたPCを用いて実施することができる。この場合、プログラミング技術は、CP18内に含まれるソフトウエア命令を実行することによって実施することができる。代替的に、そのようなプログラミング技術は、ファームウエア又はハードウエアを用いて実施することができる。いずれの場合にも、CP18は、IPG14(又はETS20)によって発生する電気刺激の特性を能動的に制御することができ、患者の応答及びフィードバックに基づいて最適な刺激パラメータを判断し、その後にこの最適な刺激パラメータを用いてIPG14(又はETS20)をプログラムすることを可能にする。
【0044】
臨床医がこれらの機能を実行することを可能にするために、CP18は、マウス72、キーボード74、及びケース78に収容されたプログラミング表示画面76を含む。マウス72に加えて又はその代替として、ジョイスティック、又はキーボード74に付随するキーの一部として含まれる方向キーのような他の指向プログラミングデバイスを使用することができることは理解されるものとする。
図7に示しているように、一般的に、CP18は、プロセッサ80(例えば、中央演算処理装置(CPU))と、臨床医がIPG14及びRC16をプログラムすることを可能にするためにプロセッサ80によって実行することができる刺激プログラミングパッケージ84を格納するメモリ82とを含む。更に、CP18は、RC16の遠隔測定回路68を通じて刺激パラメータをIPG14及びRC16にダウンロードし、RC16のメモリ66内に既に格納されている刺激パラメータをアップロードし、更に、IPG14からステータス及び測定情報を取得するための出力回路86(例えば、RC16の遠隔測定回路を通じた)を含む。ナビゲーション又はプログラミング手法を実施するのに刺激プログラミングパッケージ84の実行がCP18において実行されるように説明したが、プログラミングパッケージ84は、RC16において実行することができることを認めるべきである(RC16の処理パワーは、CP18のもの程には大きくない可能性があるが)。
【0045】
重要な点として、従来の刺激プログラミング機能を提供するのに加えて、CP18の刺激プログラミングパッケージ84は、刺激パラメータ(電極組合せ、パルス振幅、パルス持続時間、及びパルス周波数を含む)のセットが与えられた場合に、埋め込まれたリード12を取り囲む組織に対する活性化の容積(VOA)を予想するように実行することができる。VOAは、一般的に電気刺激に応答して活性化されることが予想される神経領域を表す。それとは逆に、VOAの外側の組織は、一般的に電気刺激に応答して活性化されずに留まることが予想される。ある一定の関連では、CP18は、米国特許第7,346,382号明細書に説明されているものと殆ど同じ方式で組織VOAを予想するが、CP18は、CP18内に入力される任意の電極形態(すなわち、サイズ、形状、及び電極間隔)を動的にモデル化することができる。
【0046】
CP18は、このモデル化を最初に基準(基本)電極モデルから電極形態のモデルを構成することによって達成する。すなわち、この基準電極モデルが、全体の電極形態に対する基礎構成ブロックとして使用される。図示の実施形態では、基本電極モデルは、
図8及び
図9に例示しているように、均一な導電率(例えば、0.3S/mの均一な導電率)の組織媒体によって囲まれた基準刺激リードのリング電極の3次元有限要素モデル(FEM)である。リング電極は、絶縁性リードの外側にあるので、基本電極モデルでは、リード本体の絶縁体は、リング電極を覆うはずがない。しかし、FEMは、基準刺激リードを取り囲む封入組織の鞘(例えば、0.2mmの厚み及び0.15S/mの導電率を有する)を仮定することができる。FEMモデルの境界は、モデル化される電極の最大範囲の少なくとも2倍大きい適切にサイズが判断された長さを有する3次元矩形によって定義することができる。矩形の長さは比較的大きいが、幅及び高さ(図示の実施形態では等しい)は、単一電極の刺激効果の範囲と同じ大きさであるだけでよい。3次元矩形を示しているが、円筒形のようないずれかの適切な3次元形状を使用することができる。FEMを実施するのに、ANSYS9.0(米国ペンシルベニア州カノンズバーグ)のような市販のソフトウエアパッケージを使用することができる。別の実施形態では、FEMの代わりに、基本電極モデルは、境界要素モデル(BEM)、又は最も単純な形態では均一な導電性を有する組織媒体自体内に設けられたか又はリードと同じ直径又は他の寸法を有する電気絶縁性の円筒形上に設けられた点源の解析モデルとすることができる。
【0047】
次に、この基本電極モデルは、刺激リードを取り囲む活性化組織の容積を最終的に判断するのに使用することができる関連の電気パラメータに対して解かれる。より詳細に以下に説明する目的に対して、この電気パラメータは、好ましくは、空間的に線形である。例えば、電気パラメータは、電圧、活性化関数、電界、電流密度等とすることができる。更に、電気パラメータは、スカラー値の形態(例えば、電圧の場合)又は方向値セットを有するベクトルの形態(例えば、電界の場合)を取ることができる。以下に詳細に説明するが、基本電極モデルは、好ましくは、電界に対して解かれる。
【0048】
次に、基本電極モデルの境界内のいくつかの繊維軌跡が判断される(
図9にページ面に垂直に前後に延びるように示している)。例えば、繊維軌跡は、モデル化されるリードの目標とする向き又は望ましい向きに対して判断することができる。そのような特定は、特定の用途に基づいて又は最終的に刺激が発生することになる患者の領域に基づいて行うことができる。例えば、ある一定の用途においてリードに対する大体の向きの軸索が予想される場合には、この向きの軌跡に沿ったデータをモデルを用いて推定されるものとして選択することができる。代替的に、単純に、基本電極モデルの境界内で3次元点格子を定義することができる。
【0049】
次に、複数の基本空間点(例えば、繊維軌跡に沿って選択された点(又は代替的に、格子点))における基準電極モデルの関連電気パラメータ情報が判断される。いずれかの所定の基本空間点に関する電気パラメータ情報を取得することができるように、この関連電気パラメータ情報及びそれに対応する基本空間点を基準点源における単位電流振幅に関するルックアップテーブル(LUT)に格納することができる。このルックアップテーブルは、CP18のメモリ内へのインストールの前にプログラミングパッケージ84内に組み込むことができる。すなわち、CP18は、後に幾つもの任意の電極形態の解をモデル化するのに使用することができる基本電極モデルに関する少なくとも1つの解を格納することができる。
【0050】
電界での作動中に、1つ又はそれよりも多くの電極形態をCP18内に入力することができる。例えば、CP18は、新しいリード設計に対して電極の個数、サイズ、及び形状を入力するようにユーザに促すことができる。次に、CP18は、電極の各々の上の単位電流を提供する選択された電極形態に対して累積的なモデルを構成するのに事前格納された基本電極モデルを使用することができる。
【0051】
特に、選択された電極形態の各電極をモデル化するために、CP18は、基本電極モデル解を取得し(すなわち、基本空間点の各々に対してLUTから電気パラメータ情報を呼び出し)、次に、
図10に示しているように、選択された解像度で基本電極モデルをモデル化電極の各々に基本電極モデルの中心とそれぞれのモデル化電極の中心の間の距離だけ平行移動する。
【0052】
図示の実施形態では、CP18は、この段階を基本電極モデルの電気パラメータ情報から電気パラメータ情報セットを導出することによって実施され、この導出は、基本電極モデルの電気パラメータ情報を複製することによって達成される。次に、導出された電気パラメータ情報セットをそれぞれのモデル化電極に関連付けるために、導出された電気パラメータ情報セットを互いに対して空間的に置き換えることができる(平行移動により)。
【0053】
次に、CP18は、置き換えられた電気パラメータ情報セットを互いに重ねる。図示の実施形態では、CP18は、この段階を選択された電極形態を取り囲む共通点セット(例えば、m個の繊維軌跡に沿った点又は3つの点格子)に重ね合わせた電気パラメータセットを当て嵌めることによって実施する。
【0054】
一実施形態では、平行移動された各セット内の電気パラメータ情報が、共通空間点セットと位置合わされることを保証するために、基本空間点の解像度は、共通空間点の解像度に等しく、基本電極モデルの空間平行移動の解像度は、共通空間点の解像度に等しい。この場合、平行移動された電気パラメータ情報の共通点セットへの当て嵌めは、より高い計算効率のものとすることができる。代替的に、基本空間点の解像度は、共通空間点の解像度に等しくなくてもよく、及び/又は各基本電極モデルを基本電極モデルの中心とそれぞれのモデル化電極との間の実際の距離だけ平行移動することができ(すなわち、平行移動の解像度はゼロである)、従って、置き換えられた各セットの対応する電気パラメータ情報を共通空間点セットと空間的に位置合わせしなくてもよい。この場合、電気パラメータ情報は、計算効率の目的で線形とすることができる線形内挿によって共通空間点セットに当て嵌めることができる。
【0055】
以下により詳細に解説するが、上述の技術を用いて各電極がモデル化された後に、モデル化電極に対して重ね合わされた電気パラメータ情報(本質的に、選択された電極形態の累積モデルである)を例えば特定の共通空間点を定義する第1の次元と、特定のモデル化電極を定義する第2の次元とを有する行列に格納することができる。上述のように、各共通空間点における電気パラメータ情報は、スカラー値又はベクトル(方向値セット)のいずれかとして格納することができる。
【0056】
基本電極モデルが、モデル化される各電極に対して一度だけ使用される(すなわち、LUTから得られる電気パラメータ情報は、モデル化電極に対して一度しか平行移動されない)ものとして説明したが、基本電極モデルは、各モデル化電極に対して複数回使用することができ(すなわち、LUTから得られる電気パラメータ情報は、モデル化電極に対して複数回平行移動又はその他の方法で移動される)、それによって任意の電極形態をモデル化することに対して高い柔軟性を与える上で一般的な基本モデルの使用を可能にする。この場合、CP18は、完全リング電極をモデル化する代わりに、
図11に例示しているように、FEMが基準刺激リードの面上に設けられた点源に対して発生することを除き、
図8及び
図9に関して上記に解説したものと同じ方式で基本電極モデルを発生させる。この場合、刺激リードの絶縁性の本体をモデル内に物理的に含めることができる。
【0057】
特に、モデル化される選択された電極形態の各電極に対して、CP18は、基本電極モデル解を取得し(すなわち、基本空間点の各々に関するLUTから電気パラメータ情報を呼び出し)、次に、
図12に示しているように、基本電極モデルをモデル化電極に空間的に平行移動すること及び基本電極モデルをモデル化電極の回りに何回か回転させることの両方を行う(すなわち、基本電極モデルに関連する電気パラメータ情報から導出された(例えば、複製により)電気パラメータセットを平行移動及び回転させることにより)。例えば、基本電極モデルは、各電極の回りに8回回転させることができる(45度分離して)(電極の前面に塗り潰しに示している4つと電極の背面に点描に示している4つ)平行移動及び回転された電気パラメータ情報セットは、次に、これらのセットを選択された電極形態を取り囲む共通点セット(例えば、m個の繊維軌跡に沿った点又は3つの点格子)に
図10に関して上記に解説したものと同じ方式で当て嵌めることによって重ねることができる。
【0058】
次に、CP18は、電極に対して重ね合わされた電気パラメータ情報セットを各電極における基本電極モデルの回転数に反比例して電気パラメータ情報セットをスケーリングすることによって組み合わせることができる(例えば、基本電極モデルが8回回転された場合には、電気パラメータ情報セットは1/8だけ縮小されることになる)。例えば、電気パラメータ情報がスカラー値を含む場合には、電極に関する電気パラメータ値を各空間点において加え合わせることができる。電気パラメータ情報がベクトルを含む場合には、電極に関する電気パラメータベクトルを各空間点において加え合わせることができる。
【0059】
図10及び
図12に例示している電極形態は、リング電極を含むが、他の電極形状を有する電極形態は、基本電極モデルを用いてモデル化することができることを認めるべきである。例えば、
図13は、領域分割電極を有する(すなわち、複数の弓形電極が、リードに沿って同じ軸線方向距離の位置に設けられる)刺激リードを示している。この場合、基本電極モデルLUT(この場合、点源に基づくが、他の実施形態では、
図8に関して上述したものと類似の方式で領域分割電極の全体をモデル化することによって発生させることができる)から電気パラメータ情報を取得した後に、CP18は、
図13に示しているように、基本電極モデルを領域分割電極の各々に平行移動及び回転させ(すなわち、基本電極モデルに関連する電気パラメータ情報から導出された(例えば、複製により)電気パラメータセットを平行移動及び回転させることにより)、次に、置き換えられた電気パラメータセットを
図10に関して上記に解説したものと同じ方式で重ねる。取りわけ、基本電極モデルは、モデル化電極形態の精度を高めるために、
図12に関して上述した方式で各モデル化電極に対して複数回平行移動及び/又は回転させることができる。
【0060】
モデル化電極形態を経皮リード(
図2に例示している刺激リード12のような)に関して説明したが、外科のためのパドルリード(
図3に例示している外科のためのパドルリード13のような)に関する電極形態をモデル化することができる。この場合、CP18は、
図14に示しているように、絶縁性の本体が平坦で電極の片面上に存在することになることを除き、
図8及び
図9に関して上記に解説したものと同じ方式で基本電極モデルを発生させる。次に、CP18は、
図15に示しているように、基本電極モデルを電極の各々に平行移動し(すなわち、基本電極モデルに関連する電気パラメータ情報から導出された(例えば、複製により)電気パラメータセットを平行移動することにより)、置き換えられた電気パラメータセットを
図10に関して上記に解説したものと同じ方式で重ねる。
【0061】
取りわけ、基本電極モデルを発生させる上で点源が使用される場合には、導電性組織媒体内のこの点源に関する近接場FEM解は、導電性組織媒体内の3次元電極に関する実際の近接場解とは異なる可能性があるが、導電性組織媒体内の点源に関する非近接場FEM解と導電性組織媒体内の3次元電極に関する非近接場FEM解との間の差は実質的なものではない。重要な点として、活性化容積(VOA)の周囲は、時に非近接場になり、最終的に非近接場におけるFEM解の精度がモデル化技術の精度を左右することになる。従って、点源に関する近接場FEM解が、3次元電極に関する近接場FEM解と異なる可能性があるということは重要ではなくなる。上述のことにも関わらず、点源以外の他の種類の発生源を基準FEMとして使用することができる。例えば、点源の代わりに、
図16に示しているように、リング電極分割領域のような有限面積を有する要素を使用することができ、次に、
図17に示しているように、選択された電極形態の累積モデルを発生させるために、モデル化電極の各々に対して空間的に平行移動することができる。
【0062】
以上により、新しいリードの種類が発売又はそうでなければ設計される度に、このリード種類をCP18内に入力するだけでよく、後はCP18が、基本電極モデルを用いてこのリード種類のモデルを自動的に発生させることができることを認めることができる。すなわち、CP18のデータベースのみが、新しいリード仕様の追加によって変更されることになり、従って、CP18内のプログラミングパッケージ84を修正及び再コンパイルする必要はない。従って、リードモデルを構成するための基本電極モデルの使用は一般化可能であり、計算効率が高いものである。1つの基本電極モデルだけを発生させて格納するように説明したが、複数の基本電極を発生させて格納することができ、次に、特定の電極形態のモデル化に向けてCP18によって選択することができることも認めるべきである。例えば、単一電極形態が2つのリング電極及び6つの小さい領域分割電極を含む場合には、リング電極と領域分割電極とに対して2つの基本電極モデルを発生させ、この電極形態をモデル化するのに両方を使用することができる。
【0063】
選択された電極形態がモデル化された状態で(例えば、
図9〜
図17に関して上述した方式のいずれかで)、次に、CP18は、自動的又はユーザ入力(例えば、電極及び電流値の手動ユーザ選択によるか又は電流ステアリング手順による)に応答してのいずれかで従来方式で選択することができる関係する電流値を有する活性電極組合せをモデル化するために、モデル化された電極形態を使用することができる。特に、CP18は、モデル化電極に対して選択された電流値に従って各モデル化電極に関連する電気パラメータ情報をスケーリングし、及び/又はその極性を変更する。CP18は、各モデル化電極に対してスケーリングされた電気パラメータ情報を互いに組み合わせる。例えば、電気パラメータ情報がスカラー値である場合には、それぞれの活性電極に関する電気パラメータ値を各空間点において加え合わせることができる。電気パラメータ情報がベクトルである場合には、それぞれの活性電極に関する電気パラメータベクトルを各空間点において加え合わせることができる。
【0064】
CP18は、モデル化電極に対して選択された電流値に従って各モデル化電極に関連する電気パラメータ情報をスケーリングし、及び/又はその極性を変更することができ、各モデル化電極に対してスケーリングされた電気パラメータ情報を電極モデル化行列にスケーリングベクトルを乗算することによって互いに組み合わせることができる。
【0065】
一例として、mが、関連電気情報が測定される空間点の個数であり、nが、電極形態にある電極の個数である場合に、
図18に例示しているm×nの電極モデル化行列Aを考えられたい。基準点源がアノード単位電流でモデル化され、電極E4及びE5を通じてそれぞれ0.2mA及び0.8mAのアノード電流が流れ、電極E2及びE7を通じてそれぞれ0.4mA及び0.6mAのカソード電流が流れ、全ての他の電極は不活性であると仮定する。空間点において推定される電気パラメータ値を含むm×1のベクトルを取得するために、電極モデル化行列Aに、
図19に例示しているn×1のスケーリングベクトルを乗算することができる。
【0066】
関係する電流値を有する活性電極の組合せがモデル化された状態で、組織VOAを判断するために累積電気パラメータ情報(すなわち、各空間点において重ね合わされた電気パラメータ情報)が閾値化される。1つの有利な実施形態では、電気パラメータは、電界ベクトルである。重要な点として、あらゆる特定の神経細胞の活性化は、刺激の振幅だけではなく、刺激の方向にも依存する。電界は、ベクトル(振幅と方向の両方)によって特徴付けることができるので、電界ベクトルは、神経組織の活性化を定量するための好ましい手段を与える。他の電気パラメータ情報は、活性化関数、電圧、純合計駆動関数などを含むことができる。
【0067】
特に、神経繊維が活性化されることになるか否かを判断するのに、特定の神経繊維に沿った各空間点における電界の振幅と共に「カソード性」及び「アノード性」を分析することができる。
図20を参照すると、刺激リードの例示的な向きを表すベクトル:
及び任意の点pにおける電界の向きを表す例示的なベクトル:
が示されている。ベクトル:
及び
は、2次元座標系(x,y)内で次式として表すことができる。
ここでa、b、c、及びdは定数であり、
は、x軸に沿った方向成分であり、
は、y軸に沿った方向成分である。ベクトル:
及び
を2次元座標系内に示しているが、ベクトル:
及び
は、3次元座標内で特徴付けることができ、この場合、これらのベクトルは、第3の方向成分を有することになることに注意すべきである。
【0068】
点pにおける電界の「カソード性」及び「アノード性」は、次式として定量化することができるベクトル:
及び
の間の角度θによって表すことができる。
リードの向きが座標系のy軸に沿って定められ、従って、a=0、b=1であると仮定した場合は次式が成り立つ。
図20から、角度θが90度に近づく時に(電界ベクトルがリードの右側に位置すると仮定してリードから離れて)、電界は、リードに対してよりアノード性のものになり、角度θが−90度に近づく時に(電界ベクトルがリードの左側に位置すると仮定してリードに向けて)、電界は、リードに対してよりカソード性のものになることが分る。しかし、上述の式に対する解は常に正になるので、角度θの符号は失われることになる(すなわち、例えば、c及びdの絶対値が与えられた場合には、角度θが90度又は−90度のいずれであるかは把握されないことになる)。従って、絶対値c及びdからは、電界の「カソード性」及び「アノード性」ではなくアノード/カソードらしさの程度を判断することができる。
【0069】
しかし、電界がよりカソードらしいか又はよりアノードらしいかを判断するために、方向値cの符号明細書及びx軸に沿ったベクトルの原点(すなわち、電界が推定される点)の位置(値xで表す)の符号を調べることができ、値c及びdのマグニチュードは、電界がカソード又はカソードとして作用する程度を左右する。例えば、値xの符号が正である(すなわち、ベクトルの原点がリードの右側に位置する)場合に、点pにおける電界は、値cが正ならばよりアノードらしく作用し、値cの符号が負ならばよりカソードらしく作用する。それとは対照的に、値xの符号が負である(すなわち、ベクトルの原点は、リードの左側に位置する)場合に、点pにおける電界は、値cの符号が正ならばよりカソードらしく作用し、値cの符号が負ならばよりアノードらしく作用する。
【0070】
すなわち、関連組織の活性化容積(VOA)を判断するために、各点における角度θ(電界のカソード性又はアノード性の程度)の閾値化関数、並びに電界のi
^方向成分及びx位置成分の符号を発生させることができる。
【0071】
例えば、
図21を参照すると、例示的な閾値化関数のプロット図が示されており、プロット図のy軸は、任意の点pにおける電界の振幅を表し、プロット図のx軸は、角度θの余弦を表す。関数曲線の上の区域は活性化され、それに対して関数曲線の下の区域は活性化されない。関数曲線の形状及び向きは、最終的にリードに対する神経繊維の方向に依存することになる。
図21に示しているように、点pにおける神経組織を活性化するのに、アノード電界(プロット図の左側)は、カソード電界(プロット図の右側)よりも高い振幅を必要とし、これは、神経繊維の向きが、リードの軸に沿って定められることからもたらされることになる。繊維方向の向きは、リードが使用されている特定の用途から推定することができる。例えば、脊髄刺激(SCS)用途における神経繊維の向きは、脳深部刺激(DBS)用途における神経繊維の向きとは異なる可能性がある。y軸に沿った関数曲線のオフセットは、電界の振幅だけでなく、電界を発生させるのに使用されるパルスの幾何学構成(形状と持続時間の両方)にも依存することになる。例えば、パルス持続時間が長い程、任意の点pにおける神経組織を活性化するのに電界において低い振幅しか必要とされない。閾値曲線は、モデル化の解析又は経験的データを用いて電界入力(振幅と方向の両方)の関数として判断することができる。
【0072】
従って、刺激において異なるパルス幾何学構成及び示度を提供する様々な関数曲線(例えば、一群の関数、単一面又は多次元関数)をCP18内に予め格納することができる。この場合、CP18は、電界ベクトルとリードの間の角度、並びに電界ベクトルの方向成分及びx位置成分が与えられた場合にリードに対するあらゆる所定の点pにおける神経組織が活性化されるか否かを判断することができることになる。次に、組織内のどの点pを活性化することが予想されるかに基づいて、VOAの表現を発生させ、CP18上に表示することができる。VOAのグラフィック表現は、選択された電極形態のグラフィック表現の上に重ねることができ、又はそうでなければそれと共に表示することができる。代替的に、VOAのグラフィック表現は、解剖学的着目領域の画像の上に重ねることができる。
【0073】
VOAのグラフィック表現を吟味することにより、ユーザは、VOA表現が、刺激されるターゲットの解剖学的領域と適正に一致しているか否かを判断することができる。VOA表現が解剖学的着目領域と適正に一致しなかった場合には(例えば、解剖学的領域のうちで刺激されるいずれかの部分がVOA表現の外側にくるか、又は解剖学的領域のうちで刺激すべきではないいずれかの部分がVOA表現の内側にくる)、刺激パラメータは、ユーザによる手動又はCP18による自動のいずれかで変更することができる。一実施形態では、CP18は、VOA表現が解剖学的着目領域と一致する程度を示す評点を発生させて表示することができる。
【0074】
電極形態のモデル化、活性電極組合せのモデル化、及びVOAの計算に関して上記に開示した処理機能をCP18又は代替的にRC16において実施されるものとして説明したが、これらの処理機能、特に活性電極のモデル化及びVOA計算のような実時間処理機能は、IPG14において実施することができることを認めるべきである。この場合、表示するか又はそうでなければユーザに情報を伝達する必要があるいずれのデータも、IPG14からCP18又はRC16に遠隔測定することができる。
【0075】
本発明の特定的な実施形態を図示して説明したが、本発明をこれらの好ましい実施形態に限定するように意図しておらず、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変形及び修正を加えることができることを理解するであろう。従って、本発明は、特許請求によって定義される本発明の精神及び範囲に含めることができる代替物、修正、及び均等物を網羅するように意図している。