特許第5739501号(P5739501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5739501
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20150604BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   B23Q17/00 A
   B23Q3/155 F
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-213735(P2013-213735)
(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公開番号】特開2015-74074(P2015-74074A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2014年10月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】五十部 学
【審査官】 齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−343379(JP,A)
【文献】 特開平05−138502(JP,A)
【文献】 特開2002−205236(JP,A)
【文献】 特開平11−188557(JP,A)
【文献】 特開平02−139149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00
B23Q 17/10
B23Q 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具の着脱が可能な主軸頭と、該主軸頭を駆動する主軸頭駆動用モータを備えた工作機械において、
前記主軸頭駆動用モータに加わる負荷トルクを検出する負荷トルク検出手段と、
主軸頭に装着した物の重量と、所定の駆動条件の下で主軸頭駆動用モータにかかる負荷トルクとの関係を、重量の異なる複数の物に対してあらかじめ求めて装着物重量と負荷トルクとの関係データとして格納されたデータ格納手段と、
前記工具が主軸頭に装着されている際に、前記所定の駆動条件の下で前記負荷トルク検出手段で主軸頭駆動用モータの負荷トルクを検出し、該検出した負荷トルクと前記データ格納手段に格納された前記装着物重量と負荷トルクの関係データから前記主軸頭に装着されている工具の重量を推定する工具重量推定手段と
を備えたことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
工具の着脱が可能な主軸頭と、該主軸頭を駆動する主軸頭駆動用モータを備えた工作機械において、
前記主軸頭駆動用モータに加わる負荷トルクを検出する負荷トルク検出手段と、
所定の駆動条件の下での前記主軸頭に装着されている工具重量と主軸頭駆動用モータにかかる負荷トルクとの間の関係式を用い、前記所定の駆動条件の下で前記負荷トルク検出手段で検出された負荷トルクより主軸頭に装着されている工具の重量を算出して推定する工具重量推定手段と
を備えた工作機械。
【請求項3】
前記負荷トルク検出手段の代わりに、主軸頭駆動用モータの駆動電流値を検出する駆動電流検出手段を設け、前記負荷トルクの代わりに主軸頭駆動用モータの駆動電流が求められ、装着物重量と負荷トルクとの関係データの代わりに、予め装着物重量と駆動電流値との関係データが求められて前記データ格納手段に格納され、前記工具重量推定手段は、装着物重量と駆動電流値との関係データと駆動電流検出手段で検出された駆動電流値より前記主軸頭に装着されている工具の重量を推定する請求項1に記載の工作機械。
【請求項4】
前記負荷トルク検出手段の代わりに、主軸頭駆動用モータの駆動電流値を検出する駆動電流検出手段を設け、工具重量推定手段は、工具重量と負荷トルクとの間の関係式の代わりに工具重量と駆動電流値の間の関係式を用い、該関係式と前記駆動電流検出手段で検出した駆動電流値によって前記主軸頭に装着されている工具の重量を推定する請求項2に記載の工作機械。
【請求項5】
鉛直方向に駆動される主軸頭と、
前記主軸頭を駆動する手段としてボールネジ/ナット機構を有する工作機械において、
前記工具重量推定手段は以下の関係式
m=2πηT /gLZ-M
T:主軸頭停止時の主軸頭駆動モータの負荷トルク
M:主軸頭の重量
Z:主軸頭駆動モータとボールネジとの間の減速機構の減速比
L:ボールネジのリード
η:ボールネジの効率
g:重力加速度
により、主軸頭停止時の主軸頭駆動用モータの負荷トルクから工具重量mを算出して推定することを特徴とする請求項2に記載の工作機械。
【請求項6】
前記工作機械は、前記主軸頭に対して着脱される複数の工具を保持し工具番号で管理する工具マガジンを備え、
前記工具重量推定手段により推定した工具重量を、前記工具が工具マガジンに収納されたとき工具番号と対応させて工具重量データ格納手段に記憶させる工具重量入力手段を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項7】
あらかじめ重量の分かっている工具を装着し、前記所定の駆動条件の下で主軸頭駆動用モータにかかる負荷トルクを前記負荷トルク検出手段で検出し、工具重量と検出した負荷トルクとによって、工具重量負荷トルクとの間の関係式を補正する補正手段を有する、請求項2又は請求項5に記載の工作機械。
【請求項8】
あらかじめ重量の分かっている工具を装着し、前記所定の駆動条件の下で主軸頭駆動用モータの駆動電流値を前記駆動電流検出手段で検出し、工具重量と検出した駆動電流値によって、工具重量と駆動電流値との間の関係式を補正する補正手段を有する請求項4に記載の工作機械。
【請求項9】
あらかじめ重量の分かっている工具を装着した際に、前記工具重量推定手段を用いて前記工具重量を推定し、実際の工具重量との差を求めて比較する重量比較手段と、
前記重量の差が一定値以上の場合に、メッセージを表示する表示機能あるいは警告を発生するアラーム手段を有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項10】
工具マガジンから取り出し主軸頭に装着して、前記工具重量推定手段を用いて推定した工具重量の値と、前記工具重量データ格納手段に格納されている当該工具の重量の差を求めて比較する重量比較手段と、
前記重量の差が一定値以上の場合にメッセージを表示するメッセージ表示機能あるいは警告を発生するアラーム機能を有する請求項6に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関し、特に工具の着脱が可能な主軸頭を備え、該主軸頭をモータによって移動させて加工を行う工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の工具を交換把持して移動する部材においては、工具の重量によって慣性が異なり動作制御に影響を与えることから、工具の重量に応じて工具交換装置や主軸の動作速度を変更する機能を有する工作機械が知られている。こうした機能により、最適な速度で機械を動作させることによって、機械への衝撃やモータの発熱を抑えつつ、十分な速度で工作機械を稼動することを可能としている。しかし従来、工具重量のデータは作業者が直接打ち込んだり、あらかじめ用意されたデータを転送したりするなどして工作機械の制御装置に入力することが主であった。
【0003】
しかし、作業者が直接工具重量を入力することは、入力ミスという問題が生じることから、入力ミス防止等のために、工具重量を入力することなく、工作機械側で重量等を検出する技術が知られている。
特許文献1には、交換アーム方式の工具交換装置において、交換アームで把持した工具の重量によってイナーシャが変わることから、工具を把持した交換アームを回転させるのに必要な駆動トルクを検出し、該駆動トルクから工具の重量を推定して、それに基づいて交換アームの動作速度を自動設定することで、工具交換時間の短縮を図った技術が記載されている。
また、特許文献2では、予め設定されている工具の慣性モーメントに対す主軸の許容回転数を定めておき、工具交換後、主軸の駆動モータに一定電力を供給し、電力の供給を開始した時点から主軸の回転速度が設定値に上昇するまでの立上り時間を求め、該求めた時間に基づいて工具装着時の主軸の慣性モーメントを算出し、この慣性モーメントに対する許容回転数とプログラムで指定された回転速度とを比較し、指定された回転速度の可否を判断するようにした発明が記載されている。
【0004】
さらに、特許文献3では、磁気軸受を用いた主軸ヘッドにおいて、磁気軸受に供給される電流値をもとに主軸に装着された工具の重量を推定し、この推定工具重量より主軸の限界回転数を決定するようにした発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−188557号公報
【特許文献2】特許第3187485号公報
【特許文献3】特開2000−343379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
工具を交換可能にした主軸では、把持した工具の重量によって、主軸の回転速度や主軸頭の移動速度等に制限を受ける。そのため、主軸が把持する工具の重量を入力し、最適な移動速度で制御できるようにすることが望ましい。また、この工具重量の入力ミスを防止するために工具重量を自動的に判別できるようにすることが望ましい。
先行技術文献の特許文献1に記載の技術では、アーム式の工具交換装置において、工具を把持した交換アームを回転させるのに必要な駆動トルクを検出し、該駆動トルクから工具の重量を推定しているが、この特許文献1に記載された技術では、アーム式の工具交換装置を有する工作機械にしか採用できない。
【0007】
また、先行技術文献の特許文献2に記載の技術は、工具の慣性モーメントを推定することにより、重い工具が主軸に取り付けられている際に、主軸の能力を超えた高速回転を防止することに効果を有する。しかし、この技術は主軸の慣性モーメントしか推定できないため、工具交換動作や主軸頭の移動動作を工具重量に応じて最適化することには利用できないという問題があった。
さらに、先行技術文献の特許文献3に記載された技術は、主軸に装着された工具の重量を推定しているが、磁気軸受に供給される電流値をもとに主軸に装着された工具の重量を推定するものであることから、磁気軸受を使用した主軸頭を有する工作機械のみに適用されるもので、磁気軸受を使用しない工作機械には適用できないものである。
【0008】
そこで、本願発明の目的は、工具の着脱が可能な主軸頭をモータによって移動させて加工を行う工作機械において、工具重量データの直接入力を必要とせず、主軸に装着された工具重量を工作機械側で推定できる工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に係る発明は、工具の着脱が可能な主軸頭と、該主軸頭を駆動する主軸頭駆動用モータを備えた工作機械において、前記主軸頭駆動用モータに加わる負荷トルクを検出する負荷トルク検出手段と、主軸頭に装着した物の重量と、所定の駆動条件の下で主軸頭駆動用モータにかかる負荷トルクとの関係を、重量の異なる複数の物に対してあらかじめ求めて装着物重量と負荷トルクとの関係データとして格納されたデータ格納手段と、前記工具が主軸頭に装着されている際に、前記所定の駆動条件の下で前記負荷トルク検出手段で主軸頭駆動用モータの負荷トルクを検出し、該検出した負荷トルクと前記データ格納手段に格納された装着物重量と負荷トルクの関係データから前記主軸頭に装着されている工具の重量を推定する工具重量推定手段とを備えることによって、主軸頭に装着された工具の重量を工作機械自体で推定できるようにした。
【0010】
請求項2に係る発明は、工具の着脱が可能な主軸頭と、該主軸頭を駆動する主軸頭駆動用モータを備えた工作機械において、前記主軸頭駆動用モータに加わる負荷トルクを検出する負荷トルク検出手段と、
所定の駆動条件の下での前記主軸頭に装着されている工具重量と主軸頭駆動用モータにかかる負荷トルクとの間の関係式を用い、前記所定の駆動条件の下で前記負荷トルク検出手段で検出された負荷トルクより主軸頭に装着されている工具の重量を算出して推定する工具重量推定手段とを備えることによって、主軸頭に装着された工具の重量を工作機械自体で推定できるようにした。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、負荷トルクの代わりに駆動電流を用いるもので、前記負荷トルク検出手段の代わりに、主軸頭駆動用モータの駆動電流値を検出する駆動電流検出手段を設け、前記負荷トルクの代わりに主軸頭駆動用モータの駆動電流を求め、装着物重量と負荷トルクとの関係データの代わりに、装着物重量と駆動電流値との関係データを前記データ格納手段に格納し、前記工具重量推定手段は、装着物重量と駆動電流値との関係データと駆動電流検出手段で検出された駆動電流値より前記主軸頭に装着されている工具の重量を推定するようにしたものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項2係る発明において、負荷トルクの代わりに駆動電流を用いるもので、
前記負荷トルク検出手段の代わりに、主軸頭駆動用モータの駆動電流値を検出する駆動電流検出手段を設け、工具重量推定手段は、工具重量と負荷トルクとの間の関係式の代わりに工具重量と駆動電流値の間の関係式を用い、該関係式と前記駆動電流検出手段で検出した駆動電流値によって前記主軸頭に装着されている工具の重量を推定するようにした。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項2に係る発明を、鉛直方向に駆動される主軸頭と、該主軸頭を駆動する手段としてボールネジ/ナット機構を有する工作機械に適用した発明で、前記工具重量推定手段は以下の関係式
m=2πηT / g L Z -M
(ただし、T:主軸頭停止時の主軸頭駆動モータの負荷トルク、M:主軸頭の重量、Z:主軸頭駆動モータとボールネジとの間の減速機構の減速比、L:ボールネジのリード、η:ボールネジの効率、g:重力加速度)
により、主軸頭停止時の主軸頭駆動用モータの負荷トルクから工具重量mを算出して推定するようにした工作機械である。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5記載の発明を、主軸頭に対して着脱される複数の工具を保持し工具番号で管理する工具マガジンを備えた工作機械に適用したもので、さらに、前記工具重量推定手段により推定した工具重量を、前記工具が工具マガジンに収納されたとき工具番号と対応させて記憶させる工具記憶手段を設けることによって、工具番号ごとの工具重量データを直接入力することなく作成可能とした。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項2、請求項5に係る発明に、さらに、あらかじめ重量の分かっている工具を装着し、前記所定の駆動条件の下で主軸頭駆動用モータにかかる負荷トルクを前記負荷トルク検出手段で検出し、装着した工具重量と検出した負荷トルクとによって、工具重量負荷トルクとの間の関係式を補正する補正手段を備えるものとし、工作機械の経年変化で主軸頭駆動機構が劣化して関係式にずれが生じる場合にもこの関係式を補正することができるようにした。
【0016】
請求項8に係る発明は、請求項4に係る発明に、さらに、あらかじめ重量の分かっている工具を装着し、前記所定の駆動条件の下で主軸頭駆動用モータの駆動電流値を前記駆動電流検出手段で検出し、工具重量と検出した駆動電流値によって、工具重量と駆動電流値との間の関係式を補正する補正手段を設けることによって、工作機械の主軸頭駆動機構の劣化による関係式の定数のずれを補正することができるようにした。
【0017】
請求項9に係る発明は、請求項1〜8に係る発明に、さらに、あらかじめ重量の分かっている工具を装着した際に、前記工具重量推定手段を用いて前記工具重量を推定し、実際の工具重量との差を求めて比較する重量比較手段と、前記重量の差が一定値以上の場合に、メッセージを表示する表示機能あるいは警告を発生するアラーム手段を備えるものとして、主軸頭の駆動系の異常を検出できるようにした。
【0018】
請求項10に係る発明は、請求項6に係る発明に、さらに、工具マガジンから取り出し主軸頭に装着して、前記工具重量推定手段を用いて推定した工具重量の値と、前記工具重量データ格納手段に格納されている当該工具の重量の差を求めて比較する重量比較手段と、前記重量の差が一定値以上の場合にメッセージを表示するメッセージ表示機能あるいは警告を発生するアラーム機能を備えるものとし、工具の新しいものへの交換を知らせることができるようにした。
【発明の効果】
【0019】
請求項1乃至5に係る発明及び請求項10に係る発明は、主軸頭駆動用モータの負荷トルク、もしくは駆動電流から工具重量を推定することができるので、工具重量を直接入力する必要がなく入力ミスがなくなり、工具重量に応じて主軸頭の動作を適切に設定できる。
また請求項6に係る発明は、さらに、工具番号ごとの工具重量データを直接入力することなく作成が可能となり、工具の配置と工具重量に応じて工具交換装置の動作を適切に設定できる。
請求項7、請求項10に係る発明は、工具重量と主軸頭駆動用モータの負荷トルクまたは駆動電流との間の関係式を補正することができ、主軸頭駆動機構が劣化して関係式にずれが生じる場合にも正確な工具重量の算出ができる。請求項8に係る発明は、主軸頭に装着された装着物重量と負荷トルクとの関係データ又は関係式と工具重量推定手段で推定した工具重量により、駆動系の異常を検出して警告を出すことができ、加工不良などの問題が起こる前に駆動系の問題を発見することができる。請求項9に係る発明は、工具の劣化を検出することができ、工具の交換の有無の確認をユーザに対して行って、もし工具の交換がない場合には工具の折損や駆動系の異常の恐れがあることをユーザに知らせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1、第2の実施形態である工作機械の主軸頭および主軸頭駆動機構の概略図である。
図2】本発明の各実施形態における工作機械を駆動制御する制御部のブロック図である。
図3】第1の実施形態における工具重量推定処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
図4】本発明の第3、第4の実施形態における工作機械の主軸頭および主軸頭駆動機構の概略図である。
図5】第3の実施形態における工具重量推定処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、簡単な構成の工作機械において、所定の駆動条件の下での主軸頭駆動用モータの負荷トルク又は駆動電流に基づいて、主軸に取り付けられている工具の重量を推定するものである。特に、特別な高価な部品等を使用することなく、工具重量を推定するものである。さらには、この推定した工具重量を工具マガジンにおける工具番号と対応させて記憶させておくことにより、工具交換装置や主軸頭の動作を工具重量に応じて適切に変更することができるようにしたものである。
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
【0022】
〈実施形態1〉
図1は本発明の第1の実施形態である工作機械の主軸頭および主軸頭駆動機構の概略図である。この実施形態では、主軸頭1が主軸頭駆動用モータ(Z軸送り軸サーボモータ)A3によって鉛直方向(Z軸方向)に移動する。主軸頭1は工具把持部2を備えており、工具3の着脱が可能である。主軸頭1はボールネジ/ナット機構4によって上下に移動が可能となっている。ボールネジ/ナット機構4のボールネジは主軸頭駆動用モータA3に直接もしくは減速機構を間に介して連結されており、主軸頭駆動用モータA3の回転によって主軸頭1が上下に移動することが可能となっている。なお、符号SMは主軸(及び工具)を回転駆動する主軸モータである。
【0023】
この工作機械において、この第1の実施形態は、主軸頭1の移動を停止状態に保持する主軸頭駆動用モータA3の駆動条件の下で工具重量を推定する。主軸頭単体の重量をM、工具重量をmとすると、主軸頭停止時には、ボールネジ/ナット機構4はこれらにかかる重力(M+m)gを支えている。この時、ボールネジ/ナット機構4の回転を抑えるために主軸頭駆動用モータA3には負荷トルクTがかかる。このため、工具重量mが変化すると、主軸頭駆動用モータA3の負荷トルクTも変化する。このことを利用して工具重量を推定する。
【0024】
あらかじめ、工具重量が異なる何種類かの工具を主軸頭に装着し、そのときの工具重量m1〜mnと負荷トルクT1〜Tnとの関係データを記録しておく。なお、主軸頭に装着するものは工具ではなく重量の異なる複数のダミーを装着してこの関係データを採取してよいものである。以下この関係データを装着物重量と負荷トルクとの関係データという。工具重量を推定する際には、まず、実際の負荷トルクTを検出する。次に装着物重量と負荷トルクとの関係データを参照し、それらのデータの中から実際の負荷トルクTに最も近い負荷トルクTを選び出して、それに対応する(工具)重量mを工具重量の推定値mとする。また、装着物重量と負荷トルクとの関係データにある検出した負荷トルクTの上下の負荷トルクから補間して工具重量を求めてもよい。
【0025】
なお、この第1の実施形態においては、主軸頭が鉛直方向に駆動される場合を例としたが、本発明の範囲はこれに限らない。主軸頭の移動方向が水平方向以外で傾いていても適用できるもので、水平方向以外であれば、主軸頭停止時には、装着された工具の重量に応じて、主軸頭を停止保持するために主軸頭駆動用モータA3には負荷がかかるため、主軸に装着した各種工具(又はダミー)の重量m1〜mnとそのとき主軸頭駆動用モータA3にかかる負荷トルクT1〜Tnの関係データ(装着物重量と負荷トルクとの関係データ)を記録しておき、この記憶したデータと検出した負荷トルクTによって工具重量が推定できる。
【0026】
図2は、この第1の実施形態の工作機械を駆動制御する制御部のブロック図である。
符号10は工作機械を制御する制御装置としての数値制御装置であり、CPU20は数値制御装置10を全体的に制御するプロセッサであり、バス29を介してメモリ21、インタフェース22、23、各軸制御回路24、PMC(プログラマブル・マシン・コントローラ)26、主軸制御回路27に接続されている。
【0027】
CPU20はメモリ21内のROMに格納されたシステムプログラムを、バス29を介して読み出し、該システムプログラムにしたがって数値制御装置10全体を制御する。メモリ21は、ROM、RAM、不揮発性メモリ等で構成され、ROMにはシステムプログラム等が記憶され、RAMには一時的計算データや表示データ、表示装置/手動入力ユニット9を介して入力された各種データが格納される。また、不揮発性メモリはバッテリでバックアップされたSRAMで構成され、本発明に関係して、工具重量を推定するソフトウエアが格納されている。また、前述したように予め測定された負荷トルクT1〜Tnと工具重量m1〜mnの関係データ(装着物重量と負荷トルクとの関係データ)が格納されている。
【0028】
インタフェース23は外部機器との接続を可能とするものであり、PMC26は数値制御装置10に内蔵されたシーケンスプログラムで工作機械の工具交換装置等の補助装置に接続されている。
【0029】
また、インタフェース22は、液晶やCRTで構成される表示装置とキーボート等で構成される手動入力ユニットからなる表示装置/手動入力ユニット9が接続されている。X軸、Y軸、Z軸等の送り軸を制御する各軸の軸制御回路24〜24は、CPU20からの各送り軸の移動指令量を受けて、各送り軸の指令をそれぞれのサーボアンプ25〜25に出力し各送り軸のサーボモータA〜Aをそれぞれ駆動する。なお、本第1の実施形態ではZ軸の送り軸のサーボモータA3が主軸頭駆動用モータを構成している。
【0030】
各軸制御回路24〜24は、サーボモータA〜Aに内蔵する位置・速度検出器、及び電流検出器からの位置、速度、電流のフィードバック信号を受け位置、速度、電流のフィードバック制御を行う位置ループ、速度ループ、電流ループの制御部を備え、位置、速度、電流(駆動トルク)を制御するようになっている。
主軸制御回路27はCPU20から主軸回転速度指令を受けて、主軸アンプ28に主軸速度信号を出力し、主軸アンプ28は主軸速度信号を受けて、主軸モータSMを指令された回転速度(回転数)で回転させ、図示しないポジションコーダからの回転に同期してフィードバックされる帰還パルスを受け、主軸回転速度指令と一致した速度になるように速度のフィードバック制御を行う。
【0031】
この数値制御装置の構成は、工具重量を推定する機能のソフトウエアとあらかじめ測定された装着物重量(m1〜mn)と負荷トルク(T1〜Tn )との関係データがメモリ21に格納されている以外は、従来の工作機械を制御する数値制御装置の構成と同じである。
【0032】
図3は、この第1の実施形態における工具重量を推定する機能のソフトウエアである工具重量推定処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
工具把持部2に工具3を装着し、主軸頭の移動が停止している状態で、工具重量推定指令が表示装置/手動入力ユニット9から入力されると、CPU20は、図3に示す処理を開始する。主軸頭駆動用モータ(Z軸モータ)A3軸制御回路24にフィードバックされている電流検出器からの主軸頭駆動用モータ(Z軸モータ)A3の駆動電流を読み取る(ステップa1)。この読み取った駆動電流より負荷トルクTを求める(ステップa2)。この第1の実施形態では、ステップa1、ステップa2の主軸頭駆動用モータ(Z軸モータ)A3の駆動電流を読み取り、この駆動電流より負荷トルクTを求める処理によって、負荷トルク検出手段を構成している。
【0033】
次に、予め記憶されている負荷トルクT1〜Tnと工具重量m1〜mnの負荷トルクと装着物重量との関係データの中から、求めた負荷トルクTにもっとも近い負荷トルクTを選び出し、該負荷トルクTに対応する工具重量mを工具重量の推定値mとして求める(ステップa3)。この第1の実施形態では、このステップa3の処理によって工具重量推定手段を構成する。次に、求めた推定値mを工具重量としてメモリ21内に記憶し(ステップa4)、工具重量推定処理を終了する。
【0034】
なお、この第1の実施形態では、図1に示されるように主軸頭が鉛直方向(Z軸方向)に移動する例であったが、主軸頭の移動方向が傾いている(主軸頭の移動方向が水平方向以外の)傾斜軸の工作機械にも適用できるもので、予めこの傾斜軸の工作機械において主軸頭停止時に装着物重量と負荷トルクとの関係データを求めておきこのデータをメモリ21に格納しておけばよいもので、この格納された関係データによってステップa3で工具重量の推定値mを求めるようにすればよいものである。
【0035】
〈実施形態2〉
第1の実施形態では、工具重量m1〜mnと負荷トルクT1〜Tnの装着物重量と負荷トルクとの関係データをメモリ21に記憶しておき、この装着物重量と負荷トルクとの関係データから主軸に装着された工具の重量mを推定したが、負荷トルクTと工具重量mとの関係式から工具重量を推定することもできる。図1に示されるような、主軸頭が鉛直方向に駆動される工作機械において、主軸頭停止時という条件下では、主軸頭駆動用モータA3の負荷トルクTと工具重量mとの間に、以下の関係式が成り立つ。
【0036】
T=(M+m)gLZ / 2π …(1)
ここで、
M;主軸頭の重量
Z;主軸頭駆動用モータとボールネジとの間の減速機構の減速比
L;ボールネジのリード
η;ボールネジの効率
g;重力加速度
(1)式を変形すると、
m =(2πηT /gL Z)−M …(2)
M、L、Zは一定であり、ボールネジの効率ηは長期間使用すると変化するが、ほぼ固定と仮定すると、(2πη / g L Z )=Kと固定値となり、(2)式は
m=K・T−M …(3)
となる。
よって、工具を主軸に装着した後、主軸頭停止時の負荷トルクTを検出して工具重量mを算出することができる。
この第2の実施形態の場合、図3に示される工具重量推定処理において、ステップa3の処理を前記(2)、又は(3)の演算処理に代えるだけでよいものである。
【0037】
なお、この第2の実施形態の例においては、主軸頭が鉛直方向に駆動される場合を例としたが、本発明の範囲はこれに限らない。主軸の駆動方向が鉛直方向に対して傾いている場合にも、主軸頭及び工具に働く重力の、主軸頭駆動軸方向の成分を用いることで、この方法で工具重量の算出が可能である。
【0038】
〈実施形態3〉
上述した第1、第2の実施形態は、主軸頭及び工具に働く重力の主軸頭駆動軸方向の成分があることから、主軸頭の移動停止時に主軸頭駆動用モータの負荷トルクを検出して、工具重量を求めるものであったが、主軸頭駆動方向が水平方向である場合には、主軸頭停止時に主軸頭および工具の重力をボールネジが支える必要がないため、上述した主軸頭停止時の工具重量推定方法を用いることが出来ない。そこで、この第3の実施形態は、主軸頭駆動方向が水平方向である場合にも工具重量を推定できるようにしたものであり、この第3の実施形態では、主軸頭駆動時に工具重量を推定するものである。
図4はこの第3の実施形態における工作機械の主軸頭および主軸頭駆動機構の概略図である。この例では、主軸頭1が主軸頭駆動用モータ(この例ではY軸の送り軸要サーボモータ)A2によって水平方向に移動する。主軸頭1は工具把持部2を備えており、工具3の着脱が可能である。主軸頭1はボールネジ/ナット機構4によって左右(Y軸方向、水平方向)に移動が可能となっている。ボールネジ/ナット機構4のボールネジは主軸頭駆動用モータA2に連結されており、主軸頭駆動用モータA2の回転によって主軸頭1の移動が可能となっている。なお、符号SMは主軸モータである。
この第3の実施形態における工作機械の制御装置は第1、第2の実施形態と同様で、図2に示す概要図と同じである。第1、第2の実施形態と相違する点は、主軸頭が水平方向に移動することから、主軸駆動用モータが水平方向への移動軸であるX軸又はY軸の送り軸駆動用のサーボモータで構成される点であり、図4に示す例ではY軸の送り軸用サーボモータA2が主軸頭駆動用モータを構成している例を示している。
【0039】
図4の工作機械において、主軸頭単体の重量をM、工具重量をmとし、主軸頭駆動時のモータの角速度をω、角加速度をαとする。この時、主軸頭駆動用モータA2に加わる負荷トルクTは、その他の動作条件が同じであれば、M,m, ω, αによって定まる。M, ω, αが一定である場合(ω=α=0の場合を除く)に工具重量mのみが変化すると、主軸頭駆動用モータの負荷トルクTも変化する。
【0040】
この第3の実施形態は、このことを利用するもので、あらかじめ、ある角速度ω、角加速度αで主軸頭駆動用モータA2が駆動される条件下において、重量がm1〜mnと異なる何種類かの工具をそれぞれ主軸に装着したときに、主軸頭駆動用モータA2にかかる負荷トルクT1〜Tnを求め、この重量がm1〜mnと負荷トルクT1〜Tnの関係係データをメモリ21に記録しておく。なお、この実施形態においても、工具の代わりに重量がm1〜mnと異なる何種類かの工具ダミーをそれぞれ主軸に装着したときに、主軸頭駆動用モータA2にかかる負荷トルクT1〜Tnを求めてもよい。以下この関係データを第1の実施形態と同様に装着物重量と負荷トルクとの関係データという。
【0041】
工具重量推定指令が表示装置/手動入力ユニット9から入力されると、CPU20は、図5に示す処理を開始する。
まず、CPU20は角加速度αで角速度ωの指令を主軸頭駆動用モータ(Y軸の送り軸サーボモータ)A2の軸制御回路24に出力する。軸制御回路24は角加速度αで角速度ωになるように、速度ループ制御を行い、サーボアンプ25を介して主軸頭駆動用モータ(Y軸の送り軸サーボモータ)A2を駆動する(ステップb1)。次に、速度検出器からフィードバックされる主軸頭駆動用モータA2の角速度がωに達したときの電流検出器からフィードバックされてくる主軸頭駆動用モータA2の駆動電流を読み取る(ステップb2)。読み取った駆動電流より負荷トルクTを求める(ステップb3)。この第3の実施形態では、ステップb2、ステップb3の処理によって、負荷トルク検出手段を構成している。そして、重量がm1〜mnと負荷トルクT1〜Tnの装着物重量と負荷トルクとの関係データの中から、求めた負荷トルクTにもっとも近い負荷トルクTを選び出し、該負荷トルクTiに対応する重量miを工具重量の推定値mとして求める(ステップb4)。また、第1の実施形態と同様に、装着物重量と負荷トルクとの関係データにある検出した負荷トルクTの上下の負荷トルクから補間して工具重量を求めてもよい。この第3の実施形態では、このステップb4の処理によって工具重量推定手段を構成する。次に、求めた推定値mを工具重量としてメモリ21内に記憶し(ステップb5)、工具重量推定処理を終了する。
【0042】
なお、この第3の実施形態においては、主軸頭が水平方向に駆動される場合を例としたが、本発明の範囲はこれに限らない。主軸頭の駆動方向が水平方向に対して傾いている場合にも、また、図2のように鉛直方向であってもこの第3の実施形態で用いる主軸頭駆動時での工具重量推定方法は適用できるものである。
【0043】
〈実施形態4〉
第2の実施形態と同様に、(工具)重量m〜mnと負荷トルクT1〜Tnの装着物重量と負荷トルクとの関係データを用いることなく、工具重量mと負荷トルクTとの関係式から工具重量を推定することもできる。図4に示されるような、主軸頭が水平方向に駆動される工作機械において、主軸頭駆動時において、主軸頭駆動用モータA2の負荷トルクTと工具重量mとの間に、以下の関係式が成り立つ。
【0044】
T= ( (M+m)gL / 2πη + Tp ) Z + (J1 + Z2(J2 + (M+m) (L / 2π)2 ) ) α …(4)
ここで、
M;主軸頭の重量
Z;主軸頭駆動モータとボールネジとの間の減速機構の減速比
L;ボールネジのリード
η;ボールネジの効率
;摩擦トルク
J1;モータ側の慣性モーメント
J2;ボールネジ側の慣性モーメント
α;モータ軸の角加速度
を表す。
【0045】
この(4)式を変形すると、以下のようになる。
m = ( T−TpZ −J1α−Z2J2α) /( gLZ / 2πη+ Z2( L / 2π)2α) - M …(5)
この関係式を用いることで、実際の主軸頭駆動時の負荷トルクTを検出して、工具重量mを算出することが出来る。また、ボールネジの効率ηに変化がないとすれば、Z、L、TP、J1、J2は一定であり、αは一定な値とするものであるから、( gLZ / 2πη+ Z2( L / 2π)2α)=K1、(TpZ+J1α+Z2J2α)=K2として固定値とすれば、(5)式は、次の(6)式となる。
【0046】
m=[(T−K2)/K1]−M …(6)
この(5)式又は(6)式を用いて、検出した負荷トルクTから工具重量mを算出し推定することができる。この場合、工具重量推定処理としては、図5に示す処理においてステップb4の処理が、(5)式又は(6)式の演算で工具重量を算出し推定する処理に代わるだけである。
【0047】
なお、この第4の実施形態においては、主軸頭が水平方向に駆動される場合を例としたが、本発明の範囲はこれに限らない。主軸頭の駆動方向が水平方向に対して傾いている場合にも、主軸頭にかかる重力の項を関係式に加えてやることにより、工具重量の推定が可能である。
【0048】
上述した第1〜第4の実施形態では、負荷トルクTを検出し、該負荷トルクTから工具重量mを推定するようにしたが、負荷トルクTは駆動電流Iに定数のトルク定数を乗じて得られるものであり、負荷トルクと駆動電流Iは比例関係にある。そのため、(工具)重量m1〜mnと負荷トルクT1〜Tnの装着物重量と負荷トルクとの関係データを記憶させるのではなく、(工具)重量m〜mnと駆動電流I1〜Inの関係データを記憶させておき、駆動電流Iを読み取ってこの(工具)重量m1〜mnと駆動電流I1〜Inの関係データより工具重量mを推定するようにしてもよい。この場合、図3図5に示す処理において、ステップa2、ステップb3の処理は必要なく、ステップa3、ステップb4で、ステップa1又はステップb2で読み取った駆動電流Iと工具重量m1〜mnと駆動電流I1〜Inの関係データによって、工具重量の推定値mを求めるようにしてもよいものである。
【0049】
また、(2)式、(3)式、又は、(5)式、(6)式の関係式で工具重量を演算して推定する場合においても、負荷トルクTの代わりに検出した駆動電流Iにトルク定数を乗じたものを用いることによって、工具重量を推定することができる。また、主軸頭駆動用モータを含む各軸のサーボモータを制御する軸制御回路24〜24においては、速度ループ制御から電流ループ回路にトルク指令が出力される、このトルク指令を負荷トルクとして検出するようにしてもよい。
【0050】
以上の方法で推定した主軸頭に装着されている工具の重量を、その工具が収納される工具マガジンの工具番号に対応させてデータとして記憶する工具重量記憶手段を設ける。これにより、工具マガジン内のどの位置にどの重量の工具が収納されるのかを制御装置に記憶させておくことが可能となる。例えば、工具重量推定処理の図3で示されるステップa4、又は、図5のステップb5の処理において工具重量の推定値mを工具マガジンの工具番号に対応させて記憶させるようにする。これによって、工具マガジンにおける工具の配置と重量のデータを用いることにより、工具交換装置の動作を適切に設定することが可能となる。また、工具番号ごとの工具重量データを直接入力することなく作成が可能となり、工具の配置と工具重量に応じて工具交換装置の動作を適切に設定できるという効用がある。
【0051】
また、第2、第4の実施形態のように工具重量mを負荷トルクT(又は駆動電流I)と工具重量の関係式((2)式、(3)式、(5)式、(6)式)によって算出し推定する場合、この関係式に使用する定数が変化する場合がある。主軸頭駆動機構は長期間の使用により劣化し、効率や摩擦トルクが変化していく。これにより、モータの負荷トルクと工具重量との関係式の定数も一部変化し、正確な工具重量の算出ができなくなる。そこで、あらかじめ重量の分かっている工具を主軸頭に装着し、第2、第4の実施形態と同様な方法で軸頭駆動用モータの負荷トルクを検出し、工具重量mと検出した負荷トルクTの間で(1)式、〜(3)式、又は、(4)式〜(6)式の関係が成立するようにこの関係式の定数を補正するようにする。
【0052】
たとえば、図1の工作機械における、主軸頭停止時のモータ負荷トルクと工具重量との間の関係式の(2)式、(3)式において、ボールネジの効率ηの変化について考える。既知の工具重量mと、検出された負荷トルクTとでは、次の(2)式、又は、(3)式がなりたたねばならない。
【0053】
m=(2πηT / g LZ)−M …(2)
m=K・T−M …(3)
そこで、この関係式が成立するように、(2)式であればηを変更することにより、(3)式であればKを変更して(2)式、(3)式が成立するようにする。こうして、(2)式又は(3)式の関係式の定数補正を行うことができ、機械の経年変化にも耐えうるものである。
【0054】
また第4の実施形態のように、主軸頭駆動時に負荷トルクを求めて(5)式、又は(6)式で工具重量を算出し推定する場合においても、重量mが既知の工具を主軸頭に装着し角加速度α、角速度ωで駆動したときの負荷トルクTを検出し、工具重量mと検出した負荷トルクTの間に(5)式、又は(6)式が成立するようにこれらの式の定数を変更し補正すればよい。
【0055】
さらに、この工具重量推定方法によって、主軸頭駆動機構や工具の異常等を検出することもできる。
【0056】
あらかじめ重量の分かっている工具に対して、上述した方法で工具重量の推定を行い、推定値と実際の工具重量との差が一定値以上である場合に警告を出すことにより、主軸頭駆動機構の異常を発見することができる。この場合、図3の処理においてはステップa4での処理、図5の処理においてはステップb5の処理を、推定した工具重量mと重量が既知の実際工具の重量との差が一定値以上か判別し、一定値以上の場合には、表示装置/手動入力ユニット9に警告を表示するような処理に代えればよいものである。
【0057】
例えば、ボールネジへの異物の付着などにより、実際の工具重量に対してモータにかかる負荷が異常に大きい場合には、工具重量が実際よりもかなり大きい値として推定される。こうした異常を検知し警告を出すことにより、機械に重大な問題が発生する前に不具合の発見が可能となる。
【0058】
さらに、推定した工具重量と、工具マガジンの工具番号に対応させて工具重量データを記憶する工具重量記憶手段に格納されているその工具の重量とを比較して、差が一定以上の場合にユーザに対して新しい工具への交換の有無を確認するメッセージや警報等のアラームを発生するようにしてもよい。もし工具交換が行われていなかった場合には、工具の折損や駆動系の異常が起こっている恐れがある。この機能によりそれらの早期発見が可能となる。この場合、図3のステップa4での処理、図5のステップb5の処理を、推定した工具重量と使用する工具に対して工具重量記憶手段に記憶されている工具重量との差を求めその差が一定値以上か判別し一定値以上の場合には新しい工具への交換のメッセージや警報等のアラーム表示の処理に替え、この替えられたステップa4、ステップb5で構成された図3又は図5の処理を、工具交換毎に実行するようにすれば、工具の異常、さらには主軸頭駆動機構の異常を検出すことができる。
【0059】
上述した各実施形態では、ボールネジ/ナット機構と回転モータによる主軸頭駆動機構を備えた工作機械であったが、本発明はこの範囲に限らない。例えば、リニアモータを主軸頭の駆動に使用するような工作機械においても、主軸頭駆動用モータの負荷からの工具重量の推定、それに基づいたモータ負荷と工具重量との関係式の補正および駆動系や工具の異常検出が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 主軸頭
2 工具把持部
3 工具
4 ボールネジ/ナット機構
A2 主軸頭駆動用モータ(Y軸の送り軸サーボモータ)
A3 主軸頭駆動用モータ(Z軸の送り軸サーボモータ)
SM 主軸モータ
10 工作機械の制御装置(数値制御装置)
図2
図3
図5
図1
図4