特許第5739520号(P5739520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5739520バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5739520
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/22 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
   G01N33/22 D
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-508722(P2013-508722)
(86)(22)【出願日】2011年11月25日
(86)【国際出願番号】JP2011077238
(87)【国際公開番号】WO2012137387
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2013年10月1日
(31)【優先権主張番号】PI2011001507
(32)【優先日】2011年4月4日
(33)【優先権主張国】MY
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】大友 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】ケイ キアン ヘー
(72)【発明者】
【氏名】ビヴァリー カー ウェイニー
(72)【発明者】
【氏名】カマルディン クドゥンポー
(72)【発明者】
【氏名】シティ ノルバリア サリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョエリク サラン
【審査官】 加々美 一恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−148956(JP,A)
【文献】 中国実用新案第201034992(CN,Y)
【文献】 Applied Biochemistry and Biotechnology,2004年,Vol.114,p747-758
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/22
G01N 31/00−31/22
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及において、
該測定方法に用いる分析容器は、
筒状縦型の透明容器により構成し、
該分析容器の上部を大径容器部として、試薬投入部とし、
下部は小径容器部として、液面境界の読取目盛を付記し、
前記大径容器部の上端に蓋を設けたものであり、
バイオディーゼル燃料混合軽油とブレンド率測定用試薬とを、
または、ニートFAMEとエステル率測定用試薬とを
前記分析容器に投入して前記蓋をした後に振り、
一定時間静置後に、
前記小径容器部(1b)に付した読取目盛により、液面境界を読み取る
ことを特徴とするバイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法。
【請求項2】
請求項1記載のバイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及において、
前記分析容器内に、バイオディーゼル燃料の分析の為に投入する
前記ブレンド率測定用試薬及び前記エステル率測定試薬を、
エタノールとメタノールを主成分として構成した
ことを特徴とするバイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法。
【請求項3】
請求項1記載のバイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法において、
FAMEのエステル率を測定する為の液面境界が位置する前記小径容器部の先端を、先鋭容器部に構成して、エステル率の読取目盛の間隔を拡大可能とした前記分析容器を用いる
ことを特徴とするバイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法。
【請求項4】
バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定装置において、
測定に用いる分析容器は、
筒状縦型の透明容器により構成され、
該分析容器は上部に試薬投用の大径容器部を有し、
下部に小径容器部を有し、該小径容器部に液面境界の読取目盛を付記し、
前記大径容器部の上端に蓋を設けるものであり、
前記分析容器は、
バイオディーゼル燃料混合軽油とブレンド率測定用試薬とが、
または、ニートFAMEとエステル率測定用試薬とが
投入され、前記蓋をした後に該分析容器は振られ、一定時間静置された後に、
前記小径容器部に付した読取目盛により、液面境界が読み取られるものである
ことを特徴とするバイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定装置。
【請求項5】
請求項4記載のバイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定装置において、
前記分析容器内に、バイオディーゼル燃料の分析の為に投入する
前記ブレンド率測定用試薬及び前記エステル率測定試薬を、
エタノールとメタノールを主成分として構成した
ことを特徴とするバイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定装置。
【請求項6】
請求項4記載のバイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定装置において、
FAMEのエステル率を測定する為の液面境界が位置する前記小径容器部の先端を、先鋭容器部に構成して、
エステル率の読取目盛の間隔を拡大可能とした
ことを特徴とするバイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定装置。
【請求項7】
請求項4記載のバイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定装置において、
燃料混合軽油のブレンド率と、FAMEのエステル率を測定する前記分析容器を兼用の分析容器とし、
燃料混合軽油のブレンド率を読み取るブレンド率目盛と、FAMEのエステル率を読み取るエステル率目盛とを、
1つの前記分析容器に併記されていることを特徴とする
ことを特徴とするバイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定装置。
【請求項8】
請求項4記載のバイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定装置において、
前記分析容器の蓋をして振った後に数分間静置する為の、分析容器スタンドを、具備する
ことを特徴とするバイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定装置。
【請求項9】
請求項4記載のバイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定装置において、
前記分析容器スタンドに、液面境界を読み取る為の目盛りを設け、
また、該分析容器スタンドにより、前記分析容器の背景色を変更可能に構成した
ことを特徴とするバイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「バイオディーゼル燃料混合軽油」中におけるFAMEのブレンド率、及び、該FAME中におけるトリグリセライドの率であるエステル率を測定するための測定方法及び測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
「バイオディーゼル燃料」とは、バイオマス即ち生物由来の資源を原料として作られるディーゼルエンジン用の燃料のことである。ここでバイオマスとは植物油のことを示しており、植物油であれば、新油でも使い古しの廃食油でも使うことが出来るのである。
また狭義の「バイオディーゼル燃料」は、椰子油や菜種油や大豆油などの植物油、動物油脂、廃食油と、「アルコールとのエステル交換」によって得られる燃料の総称である。
【0003】
そして、「FAME」とは、上記の「バイオディーゼル」の中で、「エステル交換」の対称となる「アルコール」が「メタノール」である場合に得られる、「脂肪酸メチルエステル( FattyAcid MethylEster) 」の略称である。
上述した「アルコールとのエステル交換」において、交換の対象が、「メタノール」ではなく「エタノール」が用いられたならば、「脂肪酸エチルエステル」となり、「ブタノール」を用いれば「脂肪酸ブチルエステル」となるのである。
【0004】
しかし、現状では、「メタノール」が最も安価で、精製工程も簡単なため、現在流通している「バイオディーゼル燃料」のほとんどがこの「FAME」である。
このように、「バイオディーゼル燃料」とは、「アルコールとのエステル交換」によって得られるバイオマス燃料の総称であるが、その中で、主流を占める「FAME」とは、メタノールのエステル交換によって得られた「脂肪酸メチルエステル( FattyAcid MethylEster) 」を指すのである。
【0005】
「FAME」は、カーボンニュートラルな燃料であるため、化石燃料に代替することで炭酸ガス削減に効果がある。また成分中には硫黄分を殆ど含まないので、SOxの発生も少ない。また、含酸素燃料であるため、煤である黒煙の発生が少ないのである。
また、生分解性であるので、燃料漏れを起こしても、化石燃料に比べると、環境に与える影響が小さい。また、引火点が化石燃料より高いので、取扱い上安全である。また軽油に比べて潤滑性がある等の有利な点が存在するのである。
【0006】
しかし、逆にFAMEを使用して、実際にディーゼルエンジンを動かす場合に、次のような不具合な点があるのである。
即ち、FAMEは低温で固まり易い。即ち粘度が高い。引火点が高い。劣化しやすい。特定のゴムや樹脂や金属を腐食させる。洗浄作用がある。
故に、「バイオディーゼル燃料」である「FAME」、それのみでは、燃料とすることが出来ず、軽油とブレンドして「バイオディーゼル燃料混合軽油」とする必要があるのである。
【0007】
「バイオディーゼル燃料混合軽油」の「ブレンド率」とは、バイオディーゼル燃料(一般的にFAME)を軽油に混合した燃料が市場で流通しており、この混合比率が「バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率」である。
「バイオディーゼル燃料」のブレンド率5%は、「バイオディーゼル燃料」が5%混合された燃料を指す。米国ではブレンド率20%の混合燃料、欧州ではブレンド率5〜7%の混合燃料が流通されている。
「バイオディーゼル燃料混合軽油」としては、化石油である軽油が100%である方が、ディーゼルエンジン側にとっては、不具合が発生しないので良いのであり、「バイオディーゼル燃料」を混合するのは、炭酸ガスの発生を減少させる為に、化石油の使用量を減らす為である。
故に、軽油中の「バイオディーゼル燃料」の比率が少ない方が良いが、どの程度、混合されているかを、オンサイトで知ることが、ディーゼルエンジンの不具合の発生した場合において、責任を明確にする為に必要なのである。
【0008】
そして、本発明においては、「バイオディーゼル燃料」を「軽油」に混合した「バイオディーゼル燃料混合軽油」の中における、「バイオディーゼル燃料」即ち「FAME」の「ブレンド率」を確認するための測定方法と測定装置を提供する。
また、「バイオディーゼル燃料」の中の「FAME」の品質規格を定める規則として、欧州では「EN14214規格」が規定されており、米国では「ASTMD6751」が規定されている。
【0009】
「FAMEのエステル率」も「バイオディーゼル燃料混合軽油」のディーゼルエンジンに対する性能を大きく左右する因子である。
上記の欧州の「EN14214」の中においては、「FAME」の中の「メチルエステル含有率」が96.5%以上を満たすことと、決められている。
一般的に「FAME」の中には「エステル交換」によって得られたメチルエステルの他に、「メタノール」との「エステル交換」の際において、未反応の状態として残った「トリグリセリド」が主成分の油脂や、水分などの不純物が混入しているのである。
この「トリグリセリド」は、動粘度が高く、かつ劣化して酸化生成物に変質するためエンジンに大きな悪影響を及ぼすことが知られている。この「トリグリセリド」が少ない方が良いので、FAMEのエステル率を測定するのである。
【0010】
故に、「FAME」が100%の状態として使用される場合の「ニートFAME」と総称されるが、該「ニートFAME」について、該「FAME」の品質規格を定めるために、該「トリグリセリド」の率を測定することが行われており、これが「ニートFAME」の「エステル率」である。
この「エステル率」は、「ニートFAME」の「メチルエステル含有率」と逆の「トリグリセリド」の含有率である。
【0011】
「バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率」でどんな品質が判断できるのかというと。 現在、わが国で使用を認めているブレンド混合率は、
(1)「バイオディーゼル燃料」が5%まで混合された「バイオディーゼル燃料混合軽油」であれば、ディーゼルエンジンの側には変更される箇所が無く、ディーゼルエンジンのメンテナンスに関するインターバルも軽油利用時と同じとされている。
(2)「バイオディーゼル燃料」が5%〜20%まで混合されている場合は、ディーゼルエンジンの燃料系のホースを、専用部品に交換し、かつ、メンテナンスのインターバルも軽油より短くするとされている。
【0012】
しかし、欧州では環境意識の高まりから、「バイオディーゼル燃料」混合率を、7%混合や10%混合の要求が高くなってきており、ディーゼルエンジンメーカとしてはどのように対応していくかの研究がなされている。
また、欧州の一部地域では、「バイオディーゼル混合軽油」の規格値を、最大7%までの混合を認めているので、実際の混合率がわからないのである。そのため、市場でバイオディーゼル起因の不具合が発生しても、その原因の断定が難しいという不具合があったのである。
【0013】
本発明は、オンサイトで、容易に「バイオディーゼル燃料混合軽油」のブレンド率が測定できるようにするものであり、「バイオディーゼル燃料混合軽油」が原因の不具合の、追究やその後のユーザーとの交渉を容易にするものである。
【0014】
同様に、「バイオディーゼル燃料混合軽油」の「ブレンド率」だけではなく、「バイオディーゼル燃料混合軽油」に含まれる「FAME」中の「トリグリセリド」の率である「エステル率」も、「バイオディーゼル燃料」起因の不具合の原因ともなるのである。
本発明においては、この「ニートFAME」の「エステル率」についても、オンサイトで検証することが出来るようにするものである。
【0015】
「バイオディーゼル燃料混合軽油」はどのような「ブレンド率」、「ニートFAME」の「エステル率」の燃料が、最もディーゼルエンジンに向いているのかいうと、欧州の「EN14214規格」や、米国では「ASTMD6751」規格の規格値を満たす「FAME」で作られた「バイオディーゼル燃料混合軽油」が、ディーゼルエンジンには適しているのである。
かつ、軽油に対する「バイオディーゼル燃料」の混合率は低ければ低いほど、ディーゼルエンジンに及ぼす影響は小さいのである。
【0016】
本発明においては、「バイオディーゼル燃料混合軽油」における「ブレンド率」と、該「バイオディーゼル燃料混合軽油」に混合されている「ニートFAME」の「エステル率」とを、オンサイトで簡単に測定することが出来る装置と方法を提示することが出来るのである。
該「バイオディーゼル燃料混合軽油」の「ブレンド率」と、「ニートFAME」の「エステル率」の測定は、同一のキットで測定しても良いし、「ブレンド率」と「エステル率」を別々のキットで測定可能としても良いものである。
【0017】
従来からの「バイオディーゼル燃料混合軽油」のブレンド率測定方法及び測定装置として、米国の場合は、米国規格(ASTM)などで決められており、ブレンド率を測定するのに「GC」即ち、「ガスクロマトグラフィ法」や、「FT−IR」を利用して測定していたのである。
また、その他の測定方法としては、「インピーダンス分光法」を利用した測定技術や、燃料に硫酸を添加して色の変化の違いを利用した測定技術等が知られている。
【0018】
また、「ニートFAME」即ち「Fatty Acid Methyl Ester(バイオディーゼル)100%燃料」のエステル率、即ち、トリグリセリド含有量を測定する方法としては、「ニートFAME」にメタノールを加えて、溶解特性から「エステル率」を判定する技術も知られている。
また、欧州規格(EN)やJISで規程されているのは、「GC」即ち「ガスクロマトグラフィ法」による分析が規定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
従来から公知とされている「バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率測定方法」としては、下記の特許文献1が公知とされている。
また、「ニートFAME」のエステル率測定方法としては、特許文献2のような技術が公知とされている。
【特許文献1】米国特許出願公開第US2009/0155922A1号
【特許文献2】特開2010−112752号公報
【特許文献3】特開2010−254796号公報
【特許文献4】特開2000−314704号公報
【発明の概要】
【0020】
本発明の「バイオディーゼル燃料混合燃料のブレンド率」及び「ニートFAMEのエステル率」の測定方法及び測定装置において、前提条件として、各種アルコール系溶剤に対する、FAME、トリグリセライド、軽油の溶解性、の違いを利用するものである。
また、「バイオディーゼル燃料混合軽油」のブレンド率測定方法及び測定装置の分析キットとして、図4図5に示す如き、特殊な分析容器を用いるものである。
【0021】
また、該分析用の容器を、分析の際において立てる為の、図6に示すような「分析容器スタンド」を用いるものである。
また、試薬としては、「試薬(A)(ブレンド率測定用)」と、「試薬(B)(エステル率測定用)」と、「試薬(C)(容器洗浄剤)」を用いるものである。
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
前述した「バイオディーゼル燃料混合燃料のブレンド率」と「ニートFAMEのエステル率」の測定方法及び測定装置における従来技術の問題点としては、「ガスクロマトグラフィ法」や、「FT−IR」による分析方法及び分析装置は、専門知識と高度な技術を必要とし、オンサイト分析ができないという不具合があったのである。
また、上記の「ガスクロマトグラフィ法」や、「FT−IR」法により分析装置、及び分析コストは、共に高額となるという不具合があったのである。
【0023】
更に、前述した「インピーダンス分光法」を利用した技術は、バイオディーゼル燃料の原料種類の違いによる誤差が大きく現れ、「インピーダンス分光法」による分析装置も高額であるという不具合があったのである。
また、その他の「バイオディーゼル燃料のブレンド率測定方法及び測定装置」として、「硫酸」を利用する方法が知られているが、該「硫酸」を使用した分析方法と装置も、取り扱いが難しく、色の変化を測定するのに専用分析装置が必要となるという不具合があったのである。
【0024】
また、「ニートFAME」のエステル率測定については、「ニートFAME」にメタノールを溶解させ、エステル率を判定するキットがあるが、この従来技術のキットでは、定量分析ができないという不具合があったのである。
また、該キットによる分析を行う場合には、多量のメタノールを必要とするという不具合があったのである。
【0025】
また、「ニートFAME」の分析方法として、「JIS」や「EN規格(欧州)」で規定されている分析方法は、特別な装置と専門技術を必要とするという不具合があったのである。
更に加えて、この「JIS」や「EN規格(欧州)」で規定されている分析方法は、分析時間が長く、分析費用も高額となるという不具合があったのである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本願発明においては、バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置において、該分析容器(1)は、筒状縦型の透明容器により構成し、該分析容器(1)の上部を大径容器部(1a)として、「試薬投入部」とし、下部は小径容器部(1b)として、「液面境界」の読取目盛を付記し、該大径容器部(1a)の上端に蓋(3)を設け、「バイオディーゼル燃料混合軽油」と試薬(A)、または「ニートFAME」と試薬(B)を投入して蓋(3)をした後に振って、一定時間静置後に、前記小径容器部(1b)に付した読取目盛により、「液面境界」を読み取るものである。
【0027】
また、バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置において、該分析容器(1)内に、バイオディーゼル燃料の分析の為に投入する試薬(A)及び試薬(B)を、エタノールとメタノールを主成分として構成したものである。
【0028】
また、バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置において、FAMEのエステル率を測定する為の「液面境界」が位置する小径容器部(1b)の先端を、先鋭容器部(1c)に構成して、エステル率の読取目盛を拡大可能としたものである。
【0029】
また、バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置において、燃料混合軽油のブレンド率と、FAMEのエステル率を測定する容器を兼用の分析容器(1)とし、燃料混合軽油のブレンド率を読み取るブレンド率目盛(2)と、FAMEのエステル率を読み取るエステル率目盛(4)とを、1つの分析容器(1)に併記したものである。
【0030】
また、バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置において、前記分析容器(1)と、該分析容器(1)の蓋をして振った後に数分間静置する為の、分析容器スタンド(5)を具備したものである。
【0031】
本願発明においては、バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置において、前記分析容器スタンド(A)に、液面境界を読み取る為の目盛りを設け、また、該分析容器スタンド(A)により、前記分析容器の背景色を変更可能に構成したものである。
【発明の効果】
【0032】
本願発明は、筒状縦型の透明容器により構成し、該分析容器(1)の上部を大径容器部(1a)として、「試薬投入部」とし、下部は小径容器部(1b)として、「液面境界」の読取目盛を付記し、該大径容器部(1a)の上端に蓋(3)を設け、「バイオディーゼル燃料混合軽油」と試薬(A)、または「ニートFAME」と試薬(B)を投入して蓋(3)をした後に振って、一定時間静置後に、前記小径容器部(1b)に付した読取目盛により、「液面境界」を読み取るので、「バイオディーゼル燃料混合軽油」のサンプル量に対して、試薬(A)や試薬(B)の量が多くなるので、分析容器(1)を上下ともに同じ径のまっすぐな透明筒とすると、全体の長さが長すぎて、サンプルと試薬とのシェイプ混合がやりにくくなるのであるが、本発明の如く、試薬の投入部を、大径容器部(1a)に構成することにより、分析容器(1)の全長を短くすることができる。
【0033】
また、ブレンド率目盛(2)やエステル率目盛(4)の部分は、小径容器部(1b)の部分に配置することにより、「液面境界」の位置する幅を広くして、読取易い目盛りとすることが可能となったのである。
また、本発明の「バイオディーゼル燃料のブレンド率測定方法及び測定装置」は、「バイオディーゼル燃料のブレンド率測定方法」、及び、「ニートFAMEのエステル率測定」は、2種類の分析用途に適用でき、かつ定量分析が可能となるという効果を奏するものである。
【0034】
本願発明は、バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置において、該分析容器(1)内に、バイオディーゼル燃料の分析の為に投入する試薬(A)及び試薬(B)を、エタノールとメタノールを主成分として構成したので、溶解力の強いエタノールを、メタノールに混合した事で、試薬使用量を低減出来るという効果を奏するものである。
【0035】
本願発明は、バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置において、FAMEのエステル率を測定する為の「液面境界」が位置する小径容器部(1b)の先端を、先鋭容器部(1c)に構成して、エステル率の読取目盛を拡大可能としたので、FAMEのエステル率においては、1〜10%と、小径容器部(1b)の先端の僅かな部分に「液面境界」が位置するので、目盛りの読取が困難となるという不具合があるが、小径容器部(1b)の先端に先鋭容器部(1c)を構成して、「液面境界」の部分のエステル率目盛(4)を拡大することが出来るので、正確なFAMEのエステル率の読取が可能となったものである。
【0036】
本願発明は、バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置において、燃料混合軽油のブレンド率と、FAMEのエステル率を測定する容器を兼用の分析容器(1)とし、燃料混合軽油のブレンド率を読み取るブレンド率目盛(2)と、FAMEのエステル率を読み取るエステル率目盛(4)とを、1つの分析容器(1)に併記したので、分析容器(1)を燃料混合軽油のブレンド率とFAMEのエステル率で兼用して使用するので、2種類を容易する必要がなく、試薬(C)により洗浄して、どちらの測定においても使用することが可能となったものである。これにより、バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置のコストの低減を図ることが出来るのである。
また、分析容器も再利用できるという効果を奏するものである。
【0037】
本願発明は、バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置において、前記分析容器(1)と、該分析容器(1)の蓋をして振った後に数分間静置する為の、分析容器スタンド(5)を具備したので、分析容器スタンドを利用する事で水平状態を保てるという効果を奏するものである。
【0038】
本願発明は、バイオディーゼル燃料混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置において、前記分析容器スタンド(A)に、液面境界を読み取る為の目盛りを設け、また、該分析容器スタンド(A)により分析容器の背景色を変更可能に構成したので、分析容器の背面色を変更することで、液面境界を見やすくできるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の、「バイオディーゼル混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置」の他の測定方法との関係を示す図面。
図2】本発明の「バイオディーゼル燃料混合軽油」の「ブレンド率」の測定方法の基本的な考え方を示す図面。
図3】本発明の「ニートFAME」の「エステル率」の測定方法の基本的な考え方を示す図面。
図4】本発明の『バイオディーゼル混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置』の分析容器を示す側面図。
図5】同じく「分析容器スタンド」を示す側面図。
図6】同じく「分析容器」を「分析容器スタンド」にセットした状態を示す側面図。
図7】本発明の『バイオディーゼル燃料のブレンド率測定方法』により測定する前の状態と、測定後の状態を示す図面。
図8】本発明の『ニートFAMEのエステル率の測定方法』により測定する前の状態と、測定後の状態を示す図面。
図9】本発明の「分析容器」の具体的な形状を示す側面図。
図10図10は、「ニートFAME」の「エステル率」において、「エステル率」が相違する場合に、「エタノール」と「メタノール」の比率をシーケンス的に変更して、測定する場合の考え方を示す図面。
図11】「分析容器」の他の実施例を示す図面。
図12図11の他の実施例の「分析容器」を、容器と蓋の部分とに分離した状態の図面である。
【発明を実施する為の形態】
【0040】
図1において、本発明の『バイオディーゼル混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置』の、他の測定方法との間で、測定に要する費用と測定に要する時間と、測定の精度と関連位置について説明する。
即ち、「バイオディーゼル混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置」については、大まかに分けて4種類の方法が存在する。
即ち、第1番目が「研究室レベル分析」であり、この分析方法が最も費用が掛かり、時間も要するが、測定精度が高いのである。
【0041】
第2番目は、「熟練技術者によるオンサイト分析」である。この「熟練技術者によるオンサイト分析」は、測定用のポータブルキットを使用して、当該技術者の面前で測定するのであるが、熟練技術者を必要とし、費用が掛かり、またある程度の時間が係るが、精度は得られるのである。
第3番目は、「センサー分析」である。この方法は、「モニターオイル」 との比較を、センサーで検知して、「ブレンド率」や「エステル率」を測定する方法であり、短時間で低コストで、そこそこの精度を得ることができるのである。しかし、精度はある程度しか要求できないのである。
【0042】
本発明の「バイオディーゼル混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置」は、それよりも、低コストで、非熟練者により、面前でオンサイト状態で、そこそこの精度で測定を可能とするものである。
【0043】
本発明の、「バイオディーゼル混合軽油のブレンド率の測定方法及び測定装置」について、図2図7の図面を用いて、説明する。
本発明における「バイオディーゼル燃料混合軽油」とは、「軽油」に「バイオディーゼル燃料」を、混合したものである。そして、該「バイオディーゼル燃料」をより多く「軽油」に混合すれば、天然原油資源の利用を少なくして、再生可能な植物性の「バイオディーゼル燃料」により、ディーゼルエンジンを駆動することが可能となるのである。
しかし、「バイオディーゼル燃料」を20%以上混合した「バイオディーゼル燃料混合軽油」は、ディーゼルエンジンの各部に不具合を発生させるのである。
故に、「バイオディーゼル燃料混合軽油」がどの程度の「バイオディーゼル燃料」を混合している「バイオディーゼル燃料混合軽油」であるかを、オンサイトで確認する必要が発生するのである。
【0044】
図2に示す如く、「バイオディーゼル燃料混合軽油」は、「軽油」に「バイオディーゼル燃料」を混合したものであり、その「バイオディーゼル燃料」の比率である「ブレンド率」を測定するためには、「バイオディーゼル燃料混合軽油」の中の、「バイオディーゼル燃料」である「FAME」を分離することにより、知ることができるのである。
「軽油」と「FAME」との分離をする為に、「FAME」は「アルコール」に溶解するという性質が存在するので、測定しようとする「バイオディーゼル燃料混合軽油」に、「アルコール」を添加して、「分析容器」の中で、「バイオディーゼル燃料混合軽油」と「アルコール」の混合物を「シェイク」即ち「振る」のである。
【0045】
上記の如く、「バイオディーゼル燃料混合軽油」に「アルコール」を混合して、「分析容器」を振ることにより、該「アルコール」の方に、「FAME」が溶解して、溶解した状態の「アルコール」と「FAME」の溶解液と、残された「軽油」との間に、「液面境界」が発生するのである。
この「液面境界」の位置を、図7に示すように、「分析容器(1)」に記載した「ブレンド率目盛(2)」を読み取ることにより、「ブレンド率」が判断できるのである。
【0046】
次に、「FAMEのエステル率の測定方法及び測定装置」について図2図8に基づいて説明する。
この場合には、「バイオディーゼル燃料混合軽油」自体から、「エステル率」を測定するのではなくて、「バイオディーゼル燃料混合軽油」から「FAME」を取り出すか、または、「バイオディーゼル燃料混合軽油」に混合する前の「FAME」を使用して、「FAME」の「エステル率」を測定するのである。
【0047】
本発明の実施例においては、分析容器(1)を「バイオディーゼル燃料混合軽油」の「ブレンド率」の測定用と、「FAME」の「エステル率」の測定用に兼用することが可能な実施例を図示しているが、別に、該分析容器(1)は、「バイオディーゼル燃料混合軽油」の「ブレンド率」測定用と、「FAME」の「エステル率」の測定用の2つの分析容器(1)としても良いものである。
【0048】
即ち、「FAME」が100%の「ニートFAME」においては、「メタノールとのエステル化」の操作の際において、完全にエステル化しないで、未反応の状態として残った「トリグリセリド」が主成分の油脂や、水分などの不純物が混入しているのである。
「FAMEのエステル率の測定方法及び測定装置」においては、この「FAME」以外の「トリグリセリド」の成分の%を簡易的に測定するものである。
【0049】
即ち、一定量の「ニートFAME」を、分析容器(1)に入れて、該分析容器(1)内に、「アルコール」を所定の量だけ入れるのである。
前記の如く、「FAME」は「アルコール」に溶解するので、該「アルコール」と「FAME」の一体的となった液と、「アルコール」に溶けなかった「トリグリセリド」との間に、「液面境界」が発生するのである。
上記の「液面境界」を、分析容器(1)に設けた「エステル率目盛(4)」により読み取って、「エステル率」を知ることができるのである。
【0050】
該「ブレンド率」の測定おいて添加する「アルコール」の試薬(A)と、「エステル率」の測定において添加する「アルコール」の試薬(A)とは、その成分が相違するのである。
「FAME」が「アルコール」に溶けるという性質は、次の、各種アルコールに対する「FAME」と「トリグリセリド」と「軽油」の溶解特性を示す「表1」において、「エタノール」、「メタノール」、「プロパノール」、「イソプロパノール」、「ブタノール」、「デカノール」、「アセトン」、「トルエン」について示している。

【表1】
【0051】
「エタノール」と「メタノール」だけが、「FAME」に溶解するが、「トリグリセリド」と「軽油」には溶解しないという性質を具備しているので、本発明のバイオディーゼル混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置において、その添加試薬(A)と試薬(B)として使用できるのである。
その他の「プロパノール」、「イソプロパノール」、「ブタノール」、「デカノール」、「アセトン」、「トルエン」は、「FAME」も「トリグリセリド」も「軽油」も溶解してしまうので、「ブレンド率」と「エステル率」の試薬(A)と試薬(B)としては、使用が出来ないのである。
【0052】
そして、「ブレンド率」の試薬(A)と、「エステル率」の試薬(B)は、どちらも、「エタノール」と「メタノール」との混合した液であるが、その比率は、分析容器(1)におけるブレンド率目盛(2)と、エステル率目盛(4)を、分析容器(1)のどのあたりに記載するかにより、変更する必要がある。
特に、「ブレンド率」は、分離した「軽油」の上部において、その「液面境界」が現れるので、分析容器(1)の上方の位置となるが、「エステル率」の方は、分離した「トリグリセリド」が、比重の関係で「FAME」の下方に位置することとなるので、分析容器(1)の下端の一部に現れることとなり、また、「エステル率」の率が、1%から10%程度であるので、非常にエステル率目盛(4)が見難い位置となるのである。
【0053】
このような、ブレンド率目盛(2)とエステル率目盛(4)の「液面境界」との関係位置を読み取り易くする為に、本発明の分析容器(1)には、発明がなされているのである。
即ち、分析容器(1)は、上部の大径容器部(1a)と、下部の小径容器部(1b)と下端の、「先鋭容器部1c」の3種類の部分を構成している。
即ち、残った「軽油」と、試薬(A)と「FAME」との混合物との間の「液面境界」が、大径容器部(1a)の部分ではなくて、小径容器部(1b)の部分の上端部分において、現れるように試薬(A)を選定するのである。
また、同様に、出来るだけ「エステル率」が明瞭に読み取れるように、先鋭容器部1cを構成して、「トリグリセリド」と「FAME」と試薬(B)の混合液の液面境界が、該先鋭容器部1cに位置するように試薬(B)を決定するのである。
【0054】
図9においては、分析容器(1)の一実施例について図示している。
該実施例においては、「ブレンド率」用のブレンド率目盛(2)と、「エステル率」用のエステル率目盛(4)とをどちらも、分析容器(1)に記載しており、「ブレンド率」と「エステル率」との測定を分析容器(1)で行う為に、2つの測定の間で、分析容器(1)を洗浄する必要があり、洗浄液である試薬(C)を用意している。
該試薬(C)も「アルコール」から構成されている。
【0055】
また、図10により、「エステル率」の測定において、試薬(B)の「エタノール」と「メタノール」の比率を、順番に変更する測定方法である、「シーケンス測定方法」について説明する。
「エステル率」の測定の場合には、「エステル率」が3%と、4%と、5%と、10%とで、試薬(B)の「エタノール」と「メタノール」の成分比率に対して、液面境界の発生する状態が大きく相違するのである。
故に、特に「エステル率」が低い程、その液面境界の現れる位置が、分析容器(1)の底の先鋭容器部1cの先端部分にしか表れないのである。それも「エタノール」の比率が0に近く、「メタノール」の比率が高い試薬(B)において、やっと液面境界が表れるのである。
故に、このように、「エステル率」の低い3%の場合の試薬(B)の比率から、「エステル率」が10%の場合の試薬(B)の比率を、相違する試薬(B)を用意して、順番に測定して行くことにより、より、本発明の「エステル率」の測定の精度を向上することが可能なのである。
【0056】
シーケンス制御による「エステル率」の測定とは、「エステル率」が10%以上の粗悪燃料の測定において採用するのである。
即ち、図10において、「エタノール/メタノール率」が0%の場合には、何とか測定できるが、「エステル率」が10%を超える粗悪燃料の場合には、「エタノール/メタノール率」が0%では、測定が不可能なのである。
故に、この場合には、「エタノール/メタノール率」を0.05%から0.25%と、「エタノール」を徐々に添加して増量させ、「エタノール/メタノール率」を高めて、測定できる「最適率」を下降させて行くのである。このように、「エタノール/メタノール率」を高める為に、「エタノール」を徐々に増量添加させて、粗悪な「エステル率」の高い「ニートFAME」の測定範囲を下げて、測定を行うのである。
【0057】
次に、「バイオディーゼル混合燃料のブレンド率測定」について説明する。
図4に示す分析容器(1)のラインL1が示す規定量まで、「ブレンドバイオディーゼル燃料」を入れる。
次に、上述の分析容器(1)に試薬(B)をラインL2が示す規定量まで入れる。
次に、該「分析容器(1)」の容器に蓋(3)をしてから軽く振り、分析容器(1)を分析容器スタンド(5)に、図5に図示する如くセットする。
次に、該分析容器(1)を分析容器スタンド(5)に立てた状態で、その後、数分間は待つ。
図7のブレンド率目盛(2)部の液面境界から「ブレンド率」を読み取る。
液面境界が確認しにくい場合は、分析容器スタンド(5)の背面色(6)を適切な色に変更することができる。背面色(6)は分析容器スタンド(5)に装着されるものであり、分析容器(1)に沿って配置されることにより、分析容器(1)の背景色を変更可能とする。
次に、分析容器(1)の洗浄を行う為に、分析容器(1)に洗浄剤である試薬(C)を入れて軽く振り、容器を洗浄する。
再度、図5の状態にセットして数分間静置する。
【0058】
次に、「ニートFAME」の「エステル率」測定について説明する。
まず、試薬(C)により洗浄後の図8の分析容器(1)に規定量であるラインL1まで「ニートFAME」を入れる。
次に、上述の容器において、ラインL2の規定量まで、「エステル率」用の試薬(B)を入れる。
「分析容器(1)」の蓋(3)をしてから軽く振り、該分析容器(1)を図6に示す如く、分析容器スタンド(5)にセットして数分間静置する。
図8に示す如く、エステル率目盛(4)の液面境界からトリグリセライド率を読み取る。これにより、「ニートFAME」のエステル率を求めることが出来るのである。
エステル率%=100 %−トリグリセライド率%である。
【0059】
そして液面境界が確認しにくい場合は、分析容器スタンド(A)において、分析容器(1)の背面色(6)を適切な色に変更することにより、液面境界を確認しやすくなるのである。該背面色(6)は種々の色に変更することが可能である。
終了後は、該分析容器(1)に試薬(C)である洗浄剤を入れて軽く振り、容器を洗浄する。
【0060】
本発明において、燃料混合軽油のブレンド率を測定する為の試薬(A)のサンプルとメタノールと、エタノールの比率は、「バイオディーゼル燃料混合軽油」のブレンド率によって混合率を変える必要もある。
サンプル:メタノール:エタノール = 1:X:Y
とすると、
0<X<30 , 0<Y<2
と規定できる。
【0061】
本発明において、FAMEのエステル率を測定する為の試薬(B)のサンプルとメタノールと、エタノールの比率は、「トリグリセリド」の含有率や油脂の種類によって混合割合を変更する必要がある。
サンプル:メタノール:エタノール = 1:α:β
とすると、
10<α<20 , 0<β<10
と規定できる。
【0062】
また、燃料混合軽油のブレンド率や、FAMEのエステル率の測定をより正確なものとする為に、「エタノール」と「メタノール」の比率を、測定しながら、徐々にシーケンス的に変更して、測定する場合の考え方を示す図面10に示す如く、比率を変えながら測定することも考えられるのである。
また、攪拌時の気泡の発生を低減する目的でシリコンなどのオイルを添加することも出来る。
【0063】
また、分析容器(1)の洗浄剤である試薬(C)の構成成分は、基本的に「バイオディーゼル燃料」や「ニートFAME」の溶解性の高い「アルコール」であれば、何でも良いのである。
測定容器は、「バイオディーゼル混合燃料のブレンド率」と「ニートFAMEのエステル率」の両方の測定部が、上下2段に構成されているが、これは、必須の条件ではない。
別に一体的に、「ブレンド率」と「エステル率」が測定できなくても良いものであり、別々の測定容器または測定キットでも良いのである。
【0064】
該分析容器(1)の構造は、本「バイオディーゼル混合軽油のブレンド率、及びFAMEのエステル率の測定方法及び測定装置」においては、「アルコール」と「トリグリセリド」と「FAME」の比重の違いによって、上方と下方に検出部が設けられるのでこのような構造としたものである。
【0065】
図面において、測定容器の内部の直径がφ30・12・7と記載されているが、この寸法は、これ以外にあり得ない寸法であるのか、それとも比率が一定であれば良い。測定容器の断面は円形の筒状で無くてもよく、角筒状でも良い。
寸法についてはこれに限定されるものではなく、あまり径が小さくなると表面張力の影響が大きくなるため適しない。
【0066】
「ニートFAMEのエステル率」の測定部分である測定容器の最下部は、先端が先鋭に尖っているが、これに限定されるものではない。
先端が先鋭になると検出部の分解能が上がるため精度が向上する。しかし、先鋭形状の容器作成が難しく、円弧にしたものでも良い。
【0067】
「分析容器」を載置する為の「スタンド」は必須の要件ではないが、測定容器を振った後で、一定の時間、液分岐面が明瞭に出てくるまでは、静かに立てた状態で放置する時間が必要であり、倒れたり、不安定な姿勢とならないように、スタンドを設けるのが良い。 該「スタンド」に当落区分の目盛りを記載して、メモリの読み取りが正確にできるように構成しているのである。
【0068】
また、該測定容器やスタンドに記載した目盛りは、地域によって混合率やエステル率の規格が異なるため、それぞれが別の目盛りとなる可能性が高いのである。
【0069】
試薬として、「エタノール」と「メタノール」をしようしているが、表1に記載したその他の「アルコール」である「プロパノール」や「ブタノール」等は、溶解力が強いためこの用途には適しておらず、使用していない。
また、試薬の成分としては、「エタノール」と「メタノール」が使用されているが、添加剤としてシリコンオイルなど消泡作用のある液体を添加している。
【0070】
図11図12に図示した実施例は、「分析容器(9)」の他の実施例を図示している。該実施例においては、分析容器(9)を「大径容器部(7)」と「小径容器部(8)」を分離可能な構成としている。
そして、「バイオディーゼル燃料」や、試薬(A)を入れる前の状態では、図12の如く、「大径容器部(7)」を下に、「小径容器部(8)」を上に配置した状態としている。「大径容器部(7)」内に試薬(A)を入れて、これらを混ぜる。そして、「小径容器部(8)」の螺子部(8a)を、「大径容器部(7)」の螺子部(7a)に螺装して、密閉状態として、「大径容器部(7)」に「小径容器部(8)」を取り付け、逆さにして、該「小径容器部(8)」内に測定対象である「バイオディーゼル燃料」を入れる。
【0071】
該「大径容器部(7)」と「小径容器部(8)」を螺子部で密閉状態とした後に、図11の如く、分析容器(9)の正常な姿勢に戻して、「小径容器部(8)」内において、液面境界を発生させて、該境界の位置を同様に「小径容器部(8)」の部分に記載された、ブレンド率目盛(2)や、エステル率目盛(4)の部分により、読み取るのである。
【0072】
このように、分析容器(9)を、「大径容器部(7)」と「小径容器部(8)」により、上下に分離した構成とすることにより、「大径容器部(7)」はビンにより構成するが、複雑な形状となる「小径容器部(8)」は、合成樹脂の成形により簡単に構成するということが可能となるのである。
また、「大径容器部(7)」内に、試薬(A)や試薬(B)を封入して「小径容器部(8)」により蓋をしたキットとして、測定する時の該試薬(A)や試薬(B)をそのまま使用するということも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、「バイオディーゼル燃料混合軽油」中におけるFAMEのブレンド率、及び、該FAME中におけるトリグリセライドの率であるエステル率を測定するための測定方法及び測定装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1・9 分析容器
1a・7 大径容器部
1b・8 小径容器部
1c 先鋭容器部
2 ブレンド率目盛
3 蓋
4 エステル率目盛
5 分析容器スタンド
6 背面色
7a・8a 螺子部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12