特許第5739535号(P5739535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5739535トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5739535
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20150604BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20150604BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20150604BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20150604BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   C08L9/06
   C08K3/04
   C08K3/36
   C08L71/02
   B60C1/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-525605(P2013-525605)
(86)(22)【出願日】2012年5月18日
(86)【国際出願番号】JP2012062767
(87)【国際公開番号】WO2013014999
(87)【国際公開日】20130131
【審査請求日】2014年1月20日
(31)【優先権主張番号】特願2011-161180(P2011-161180)
(32)【優先日】2011年7月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 俊一
【審査官】 上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−121936(JP,A)
【文献】 特開平09−003245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物で変性された変性溶液重合スチレンブタジエンゴム、非変性の溶液重合スチレンブタジエンゴム、カーボンブラック、シリカ及びポリエチレングリコールを含み、
ゴム成分100質量%中の溶液重合スチレンブタジエンゴムの含有量が60質量%以上であり、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記カーボンブラックの含有量が10質量部以下、前記シリカの含有量が50質量部以上、前記ポリエチレングリコールの含有量が0.1〜3.5質量部であるトレッド用ゴム組成物。
【化1】
(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基を表す。nは整数を表す。)
【請求項2】
ブタジエンゴムを含む請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりから、自動車に対して低燃費化の要求が強くなっており、自動車のタイヤのトレッドに用いるゴム組成物に対しても低燃費化が強く求められている。また、トレッドに用いるゴム組成物には、耐摩耗性などの性能も求められている。
【0003】
低燃費性を改善する方法として、カーボンブラックを減量し、シリカを配合する方法、所定の溶液重合スチレンブタジエンゴムを使用する方法などが知られている。しかし、シリカや多量の溶液重合スチレンブタジエンゴムを含むゴム組成物を加硫する場合、加硫速度が遅くなるという問題があり、加硫速度を早めるために加硫促進剤を増量すると、ブルームによりゴムが白化し、外観不良が発生する。特に、カーボンブラック使用量が少ない配合では白化が目立ち、商品価値が大きく低下してしまう。
【0004】
例えば、特許文献1に、分子鎖に水酸基を有するスチレンブタジエンゴム、ポリエチレングリコール、特定のカーボンブラックを用い、転がり抵抗、耐摩耗性などを改善したトレッド用ゴム組成物が開示されている。しかし、良好な加硫速度により製造可能で、ブルームによる外観不良も防止でき、かつ低燃費性及び耐摩耗性をバランスよく改善することも可能な空気入りタイヤを提供するという点については、未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−248021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、良好な外観及び加硫速度を得ながら、低燃費性及び耐摩耗性をバランスよく改善できるトレッド用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、溶液重合スチレンブタジエンゴム、カーボンブラック、シリカ及びポリエチレングリコールを含み、ゴム成分100質量%中の前記溶液重合スチレンブタジエンゴムの含有量が60質量%以上であり、前記ゴム成分100質量部に対して、前記カーボンブラックの含有量が10質量部以下、前記シリカの含有量が50質量部以上、前記ポリエチレングリコールの含有量が0.1〜3.5質量部であるトレッド用ゴム組成物に関する。
前記ゴム組成物は、ブタジエンゴムを含むことが好ましい。
【0008】
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、溶液重合スチレンブタジエンゴム、カーボンブラック、シリカ及びポリエチレングリコールをそれぞれ所定量含むゴム組成物であるので、トレッドに適用することで、低燃費性及び耐摩耗性をバランスよく改善した空気入りタイヤを提供できる。また、タイヤの製造時の加硫速度も良好で、かつ製造したタイヤの外観も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、溶液重合スチレンブタジエンゴム及びシリカを比較的多量に含むとともに、カーボンブラック及びポリエチレングリコール(PEG)を比較的少量含む。
【0011】
多量の溶液重合スチレンブタジエンゴムとシリカ、少量のカーボンブラックを含む低燃費配合に対し、ポリエチレングリコール(PEG)を添加することで、加硫促進剤量が少なくてもスコーチタイムを短縮できるだけでなく、トレッドゴムの耐摩耗性も改善できる。従って、空気入りタイヤの製造時における加硫速度を高められ、同時に多量の加硫促進剤によるブルームも抑制できるので、これに起因する外観不良も防止できる。更に、低燃費性及び耐摩耗性もバランスよく改善できるので、前述の効果が充分に発揮される。
【0012】
溶液重合スチレンブタジエンゴム(溶液重合SBR)としては特に限定されず、変性SBR(溶液重合で得られたSBRの活性末端(重合末端)に変性剤を反応させて調製されたもの)、非変性のSBRなどが挙げられる。良好な加硫速度、低燃費性、耐摩耗性が得られるという点から、変性SBR及び非変性のSBRを併用することが好ましい。
【0013】
変性SBRとしては、例えば、特開2010−111753号公報に記載されている下記式(1)で表される化合物で変性されたものを好適に使用できる。
【0014】
【化1】
(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6、更に好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又はアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)を表す。nは整数(好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、更に好ましくは3)を表す。)
【0015】
、R及びRとしては、アルコキシ基が望ましく、R及びRとしては、水素原子が望ましい。これにより、低燃費性、耐摩耗性をバランスよく改善できる。
【0016】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
上記式(1)で表される化合物(変性剤)によるスチレンブタジエンゴムの変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報、特表2003−514078号公報などに記載されている方法など、従来公知の手法を使用できる。例えば、スチレンブタジエンゴムと変性剤とを接触させることで変性でき、具体的には、アニオン重合によるスチレンブタジエンゴムの調製後、該ゴム溶液中に変性剤を所定量添加し、スチレンブタジエンゴムの重合末端(活性末端)と変性剤とを反応させる方法などが挙げられる。
【0018】
変性SBRの結合スチレン量は、良好な耐摩耗性が得られるという点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
なお、本発明において、SBRのスチレン量は、H−NMR測定により算出される。
【0019】
ゴム成分100質量%中の変性SBRの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。該含有量が上記範囲内であると、良好な加硫速度、低燃費性、耐摩耗性が得られる。
【0020】
非変性のSBRとしては、特に限定されない。非変性のSBRの好適な結合スチレン量は、前述の変性SBRの結合スチレン量と同様である。
【0021】
ゴム成分100質量%中の非変性のSBRの含有量は、好ましくは20質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。該含有量が上記範囲内であると、良好な加硫速度、低燃費性、耐摩耗性が得られる。
【0022】
ゴム成分100質量%中の溶液重合SBRの含有量は、60質量%以上であり、好ましくは80質量%以上である。60質量%未満であると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。該含有量は、100質量%であってもよいが、好ましくは90質量%以下である。90質量%を超えると、充分な耐摩耗性が得られないおそれがある。
【0023】
溶液重合SBRとして、変性SBR及び非変性のSBRを含む場合、該変性SBRと該非変性のSBRとの配合比(変性SBRの質量/非変性のSBRの質量)は、好ましくは30/70〜90/10、より好ましくは45/55〜80/20、更に好ましくは55/45〜70/30である。配合比が上記範囲内であると、良好な加硫速度、低燃費性、耐摩耗性が得られる。
【0024】
他に使用できるゴム成分としては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルニトリル(NBR)などのジエン系ゴムが挙げられる。なかでも、良好な加硫速度が得られ、耐摩耗性の顕著な改善効果が得られるという点から、BRが好ましい。なお、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、乳化重合のスチレンブタジエンゴムを使用しても良いが、その含有量は、ゴム成分100質量%中、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下であり、含まなくてもよい。
【0025】
BRのシス含量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。上記範囲内であると、優れた加硫速度、低燃費性、耐摩耗性が得られる。
なお、BRのシス含量(シス−1,4−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0026】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。該含有量が上記範囲内であると、良好な加硫速度、低燃費性、耐摩耗性が得られる。
【0027】
ゴム成分100質量%中の溶液重合SBR及びBRの合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。これにより、良好な加硫速度、低燃費性、耐摩耗性が得られる。
【0028】
カーボンブラックとしては特に限定されず、一般的なものを使用できる。カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは70m/g以上、より好ましくは100m/g以上である。70m/g未満では、充分な補強性が得られないおそれがある。該NSAは、好ましくは150m/g以下、より好ましくは120m/g以下である。150m/gを超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
【0029】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以下であり、好ましくは6質量部以下である。10質量部を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。該含有量は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。1質量部未満であると、充分な補強性が得られないおそれがある。
【0030】
シリカとしては特に限定されず、一般的なものを使用できる。シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは100m/g以上、より好ましくは150m/g以上である。100m/g未満では、充分な補強性が得られないおそれがある。該NSAは、好ましくは220m/g以下、より好ましくは190m/g以下である。220m/gを超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0031】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、50質量部以上であり、好ましくは70質量部以上である。50質量部未満であると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは90質量部以下である。120質量部を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0032】
シリカ及びカーボンブラックの合計100質量%中のシリカの含有率は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは85質量%以上である。60質量%未満であると、低燃費性、耐摩耗性がバランスよく得られないおそれがある。また、該含有率は、好ましくは98質量%以下である。
【0033】
カーボンブラック及びシリカの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量部以上である。60質量部未満では、充分な補強性が得られないおそれがある。該合計含有量は、好ましくは130質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。130質量部を超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
【0034】
本発明のゴム組成物は、シランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用でき、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましい。
【0035】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは4質量部以上であり、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。該含有量が上記範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる。
【0036】
ポリエチレングリコールとしては特に限定されないが、下記式で表されるものを好適に使用できる。
HO(CHCHO)
(pは5〜100の整数を表す。)
【0037】
良好な加硫速度、耐摩耗性が得られるという点から、pは80〜100が好ましい。
【0038】
ポリエチレングリコールの重量平均分子量は、好ましくは1000以上、より好ましくは3000以上であり、好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下である。上記範囲内であると、優れた加硫速度、耐摩耗性が得られ、本発明の効果が良好に得られる。
なお、本明細書においてポリエチレングリコールの重量平均分子量(Mw)は、装置 :LC−6A((株)島津製作所製)、検出器 :RID−10A((株)島津製作所製)、カラム :アサヒパックGF−510HQ(直径7.6mm×長さ0.3m;昭和電工(株)製)、移動相 :水、流速 :1mL/min、温度 :30℃の条件の下、ゲル濾過クロマトグラフィにより測定できる。
【0039】
ポリエチレングリコールの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上であり、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。0.1質量部未満であると、本発明の効果が良好に得られないおそれがある。該含有量は、3.5質量部以下であり、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下である。3.5質量部を超えると、スコーチタイムが短くなり過ぎる傾向がある。
【0040】
本発明のゴム組成物は、加硫剤として硫黄を含むことが好ましい。この場合、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3〜3.0質量部、より好ましくは0.5〜2.5質量部、更に好ましくは1.0〜2.0質量部である。0.5質量部未満では、加硫速度が遅く、加硫不足になり、充分な耐摩耗性などの性能が得られない傾向があり、3.0質量部を超えると、逆に加硫速度が速く、スコーチし、耐摩耗性などの性能が低下する傾向がある。
【0041】
本発明のゴム組成物は、通常、加硫促進剤を含む。加硫促進剤としては特に限定されず、一般的なものを使用でき、グアニジン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンデート系の化合物などが挙げられる。これら加硫促進剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
なかでも、ゴム中への分散性、加硫物性の安定性の点から、スルフェンアミド系加硫促進剤(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなど)、グアニジン系加硫促進剤(N,N’−ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリグアニジン、トリフェニルグアニジン、オルトトリルビグアニド、ジフェニルグアニジンフタレートなど)が好ましく、スルフェンアミド系、グアニジン系加硫促進剤を併用することがより好ましく、CBS及びDPGを併用することが特に好ましい。
【0043】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1〜5質量部、より好ましくは2〜4質量部である。本発明では、前述の成分を含み、良好な加硫速度が得られるため、加硫促進剤を減量でき、良好な外観が得られる。
【0044】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、各種老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、ワックス、オイル、加硫剤などを適宜配合できる。
【0045】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物などを用いることができる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。
【0046】
本発明のゴム組成物がオイルを含有する場合、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。
【0047】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造できる。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法などにより製造できる。
本発明のゴム組成物は、タイヤのトレッドに使用される。
【0048】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造できる。すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤが得られる。
【0049】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤなどとして好適に用いられる。
【実施例】
【0050】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0051】
以下、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
SSBR(1):JSR(株)製のHPR355(溶液重合SBR(アルコキシシランでカップリングし末端に導入、R、R及びR=−OCH、R及びR=H、n=3)、スチレン含量:28質量%、ビニル含量56質量%)
SSBR(2):旭化成(株)製のT3830(タフデン3830)(溶液重合SBR、スチレン含量:33質量%、ビニル含量:34質量%、Mw:95万、Mn37万、Mw/Mn:2.6、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
SSBR(3):住友化学(株)製の変性SBR(溶液重合SBR(アルコキシシランでカップリングし末端に導入、R、R及びR=−OCH、R及びR=−CHCH、n=3)、スチレン含量:25質量%、ビニル含量57質量%)
BR:日本ゼオン(株)製のNipol BR1220(シス含量:97質量%以上)
NR:TSR
カーボンブラック:三菱化学(株)製のシーストN220(NSA:114m/g)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラシルVN3(平均一次粒子径:15nm、NSA:175m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
アロマオイル:JX日鉱日石エネルギー(株)製のプロセスX−140
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
PEG:日油(株)製のPEG#4000(ポリエチレングリコール、重量平均分子量:4000)(HO(CHCHO)Hにおいて、pは約90である。)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0052】
(実施例及び比較例)
表1に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を混練りした。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加して練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で15分間、2mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物(加硫ゴムシート)を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をタイヤ成型機上でトレッド形状に成形し、他のタイヤ部材と貼り合わせ、170℃で15分間加硫することにより、試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を製造した。
【0053】
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物及び試験用タイヤを下記により評価した。結果を表1に示す。
【0054】
(ムーニー粘度、スコーチタイム)
JIS K6300「未加硫ゴムの試験方法」に準じて、(株)島津製作所製のムーニー粘度試験機「ムーニービスコメーターSMV−202」を用い、1分間の予熱によって熱せられた130℃の温度条件にて、小ローターを回転させ、4分間経過した時点での未加硫ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4)を測定した。更に、未加硫ゴム組成物の粘度が5ポイント上昇する時間(スコーチタイム(分):T5)を測定した。ムーニー粘度が小さいほど加工性に優れることを示し、スコーチタイムが短いほど加硫時間が短いことを示す。
なお、スコーチタイムとしては、加硫時間と押出し加工性を両立できる点で15分以上25分未満が特に優れている。10分以上15分未満では押出し加工で焼けが生じ易く、10分未満では焼けが生じる。25分以上では加硫時間が長い。
(加工性)
加工性は、下記基準に従いスコーチタイムから評価した。
○:スコーチタイム15分以上25分未満
△:10分以上15分未満又は25分以上30分未満
×:10分未満又は30分以上
【0055】
(Hs)
上記加硫ゴムシートの硬度(Hs)をJIS K6253に準拠した方法で測定した。測定温度は23℃とした。
【0056】
(粘弾性試験)
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用いて、周波数10Hz、初期歪み10%及び動歪2%の条件下で、70℃における上記加硫ゴムシートの損失正接tanδと複素粘弾性Eを測定し、比較例1のtanδ指数を100、E指数を100とし、各配合のtanδ、Eを指数表示した。なお、tanδ指数が大きいほど発熱が小さく、低燃費性に優れることを示し、E指数が大きいほどEが高く、ゴムが硬いことを示す。
【0057】
(耐摩耗性)
試験用タイヤを車両に装着し、走行距離30000km前後のトレッドの溝探さの変化を測定した。溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し、下記式により指数表示した。数値が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(耐摩耗性指数)=(各配合の溝深さが1mm減るときの走行距離)/(比較例1の溝深さが1mm減るときの走行距離)×100
【0058】
(ブルームテスト)
上記加硫ゴムシートを、日光の当たる場所に1ヶ月放置した。その後、外観を目視で観察し、下記の基準で評価した。
◎:白化なし
○:若干白化あり
×:白化して外観が悪い
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
表1〜2から、所定量の溶液重合スチレンブタジエンゴム、カーボンブラック及びシリカを含むゴム組成物に対して所定量のポリエチレングリコールを配合することで、良好な外観、加硫速度を得ながら低燃費性、耐摩耗性をバランスよく改善できることが明らかとなった。実施例3は、実施例2より加硫促進剤が少量であるが、良好な加硫速度が得られ、耐摩耗性、外観も改善された。
一方、比較例1はスコーチタイムが長く、加工性が劣り、比較例3〜5はスコーチタイムが短く、加工性が劣っていた。また、比較例2は加硫促進剤が多く、ブルームにより外観が悪化し、比較例6は良好な加硫速度、外観が得られたが耐摩耗性の改善効果が得られなかった。