(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5739545
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】ポンプ、特に燃料高圧ポンプ
(51)【国際特許分類】
F02M 59/44 20060101AFI20150604BHJP
F02M 59/10 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
F02M59/44 J
F02M59/44 U
F02M59/44 V
F02M59/10 A
【請求項の数】12
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-542498(P2013-542498)
(86)(22)【出願日】2011年12月5日
(65)【公表番号】特表2013-545029(P2013-545029A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】EP2011071784
(87)【国際公開番号】WO2012076484
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2013年6月7日
(31)【優先権主張番号】102010062678.3
(32)【優先日】2010年12月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】ベッキング、フリードリヒ
【審査官】
二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−151085(JP,A)
【文献】
特開2008−163829(JP,A)
【文献】
特開2008−184953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 59/44
F02M 37/08
F02M 51/04
F02M 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する駆動軸(14)によりストローク運動で駆動されるポンププランジャ(20)を有する少なくとも1つのポンプエレメント(18)であって、前記駆動軸(14)は少なくとも1つのカム(16)を有する前記ポンプエレメント(18)と、前記駆動軸(14)がその中に配置されるポンプハウジング(10)であって、前記ポンプハウジング(10)の内部へと導入管(66)を介して液状媒体が導入され排出管(68)を介して液状媒体が排出される、前記ポンプハウジング(10)と、を備えるポンプにおいて、前記ポンプハウジング(10)と、前記駆動軸(14)の前記少なくとも1つのカム(16)と、によって、前記ポンプハウジング(10)の内部で、前記少なくとも1つのカム(16)の円周に沿って広がる空間(64)が画定され、前記空間(64)内へと、前記液状媒体の前記導入管(66)及び前記排出管(68)が通じており、
前記液状媒体の前記排出管(68)は、前記駆動軸(14)の回転方向(13)に見て、前記液状媒体の前記導入管(66)が前記空間(64)に通じる位置に対して少なくとも180°ずれた位置で前記空間(64)内へと通じることを特徴とする、ポンプ。
【請求項2】
前記ポンプは燃料高圧ポンプであることを特徴とする、請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記液状媒体の前記排出管(68)は、前記駆動軸(14)の回転方向(13)に見て、前記液状媒体の前記導入管(66)が前記空間(64)に通じる位置に対して少なくとも270°ずれた位置で前記空間(64)内へと通じることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポンプ。
【請求項4】
前記液状媒体の前記導入管(66)及び/又は前記排出管(68)は、前記駆動軸(14)の回転軸(15)に対して径方向に見て、前記少なくとも1つのカム(16)の上死点(17)と同じ高さ又は前記上死点(17)よりも高い範囲で前記空間(64)へと通じ、又は、前記少なくとも1つのカム(16)の前記上死点(17)よりも、前記回転軸(15)から離れた位置で前記空間(64)へと通じることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項5】
前記カム(16)と前記ポンププランジャ(20)との間には、タペット(42)が配置され、前記タペット(42)は、前記ポンププランジャ(20)の前記ストローク運動の方向に、前記ポンプハウジング(10)内の収容要素(52)内へと摺動自在に案内され、前記収容要素(52)は、前記空間(64)と接続されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項6】
前記タペット(42)はローラタペットであることを特徴とする、請求項5に記載のポンプ。
【請求項7】
前記収容要素(52)は孔として形成され、前記孔(52)は前記駆動軸(14)の方を向いたその末端領域内に、前記タペット(42)を包囲する溝(70)を有し、前記溝(72)は、前記空間(64)と接続されることを特徴とする、請求項5又は6に記載のポンプ。
【請求項8】
前記ポンプは、第1のポンプエレメント(18a)と、前記駆動軸(14)の回転方向(13)に見て前記第1のポンプエレメント(18a)の配置位置に対して90°ずれて配置される第2のポンプエレメント(18b)と、を有し、前記液状媒体の前記排出管(68)は、前記第1のポンプエレメントと前記第2のポンプエレメント(18a、18b)の間が90°の角度範囲内で前記空間(64)内へと通じ、前記液状媒体の前記導入管(66)は、前記第1のポンプエレメントと前記第2のポンプエレメント(18a、18b)の間が270°の角度範囲内で前記空間(64)内へと通じることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項9】
前記液状媒体の前記導入管(66)は、前記駆動軸(14)の回転方向(13)に見て、前記第2のポンプエレメント(18b)の後に僅かな角距離を置いて前記空間(64)内へと通じることを特徴とする、請求項8に記載のポンプ。
【請求項10】
前記液状媒体の前記排出管(68)は、前記第1のポンプエレメントと前記第2のポンプエレメント(18a、18b)の間が90°の角度範囲内の少なくとも近似的に中央で前記空間(64)内へと通じる、請求項8又は9に記載のポンプ。
【請求項11】
前記導入管(66)を介して、高圧下の前記液状媒体が前記空間(64)内へと導入されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項12】
前記導入管(66)を介して、前記ポンプから圧送される前記液状媒体が前記空間(64)内へと導入されることを特徴とする、請求項11に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に係る種類のポンプ、特に燃料高圧ポンプから出発する。
【背景技術】
【0002】
燃料高圧ポンプの形態によるこのようなポンプは、独国特許出願公開第102004004705号明細書により公知である。このポンプは、回転する駆動軸により少なくとも間接的にストローク運動で駆動されるポンププランジャを有する少なくとも1つのポンプエレメントを有し、その際に、駆動軸は少なくとも1つのカムを有する。ポンププランジャとカムとの間には、当該カム上を滑走するローラと共に、ローラタペットが設けられる。ポンプは、駆動軸がその内部に配置されたポンプハウジングを有し、その際に、ポンプハウジングの内部には導入管を介して液状媒体が導入され、排出管を介して液状媒体が排出される。媒体として、ポンプにより圧送される燃料が、ポンプハウジングの内部に導入される。ポンプハウジングの内部へと導入された燃料によって、ポンプの駆動領域の潤滑及び/又は冷却が達成されるが、駆動領域への的確な媒体導入は行われず、媒体は、ポンプハウジングの内部全体で分配される。ポンプハウジングの内部では媒体が的確に混ぜられないため、駆動領域の周りの媒体は高温である可能性がある。しかしながら、ポンプに対する負荷が高い際には、駆動領域、特に、ローラとカムの間及びローラとローラタペットの間の接触領域の潤滑及び/又は冷却が、状況によっては十分ではない可能性がある。このことは、ポンプの摩耗、及び、最終的にはポンプの故障に繋がりうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
これに対して、請求項1の特徴を備えた本発明に係るポンプは、カム及びポンプハウジングにより画定される空間内で、カムの回転運動によって的確に、当該空間内に存在する媒体が混ぜられるという利点を有する。これにより、駆動領域内での高温、従って摩耗を防止することが可能である。
【0004】
従属請求項には、本発明に係るポンプの有利な構成及び発展形態が示される。請求項
3に係る構成によって、特に良好に媒体が混ぜられる。なぜならば、媒体は、導入管から直接的に排出管に到達することは出来ず、カムの円周の大部分を介して流れなければならないからである。請求項
5に係る構成によって、空間内への媒体の良好な流入、及び/又は、当該空間からの媒体の良好な排出が可能となる。請求項
6に係る発展形態によって、その収容要素内でのタペットの良好な潤滑及び/又は冷却が可能となる。請求項
9に係る構成によって、2つのポンプエレメントを有するポンプにおいて媒体を良好に混ぜることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明の実施例が図に示され、以下の明細書の記載においてより詳細に解説される。
【
図2】
図1のIIで示したポンプの部分の拡大図を示す。
【
図3】
図2の線III−IIIに沿った横断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1〜4では、特に内燃機関の燃料噴射装置のための燃料高圧ポンプであるポンプが示されている。ポンプは、複数の構成要素から成るハウジング10を有し、このハウジング10内では、回転しながら駆動される駆動軸14が、回転軸15の周りに回転自在に保持される。駆動軸14は、少なくとも1つのカム16を有する。カム16は、シングルカム又はマルチカムであってもよい。ポンプは、ポンププランジャ20をそれぞれが備えた少なくとも1つ又は複数のポンプエレメント18を有し、ポンププランジャ20は、駆動軸14のカム16によって少なくとも間接的に、駆動軸14の回転軸15に対して少なくとも近似的に径方向にストローク運動で駆動される。
【0007】
ポンププランジャ20は、ポンプのハウジング部分24のシリンダボア22内に密閉状態で(dicht)案内される。ポンププランジャ20は、駆動軸14とは反対を向くその末端により、シリンダボア22内でポンプ加圧室26を画定する。ポンプ加圧室26は、当該ポンプ加圧室26内へと開く吸込逆止弁30を介して、例えばフィードポンプから通じる入口管32との接続を有し、この入口管32を介して、駆動軸14の回転軸15に対して径方向に内部へと方向付けられるポンププランジャ20の吸入行程の際に、ポンプ加圧室26に燃料が充填される。さらに、ポンプ加圧室26は、当該ポンプ加圧室26から開く吐出逆止弁34を介して、出口管36との接続を有し、この出口管36は例えば高圧貯圧器38へと案内され、及び、この出口管36を介して、駆動軸14の回転軸15から径方向に外側へと方向づけられるポンププランジャ20の送出し行程の際には、燃料が燃料加圧室26から排出される。
【0008】
ポンププランジャ20は間接的に、ローラタペット42の形態によるエレメントを介して、駆動軸14のカム16上で支持される。ローラタペット42は中空円筒状のタペット本体44を有し、このタペット本体44内に、ローラシュー46が支持エレメントとして挿入される。ローラシュー46は、駆動軸14の方を向いた側に、円筒状のローラ50のために形成された凹部48を有し、この凹部48内で、ローラ50が軸51の周りを回転自在に支持される。ローラ50は、駆動軸14のカム16上を滑走する。ポンププランジャ20は、その縦軸21の方向に、ローラタペット42と結合される。タペット本体44は、駆動軸14の回転軸15に対して少なくとも近似的に直角の方向に、ポンプハウジング10の一構成要素54内の収容要素52内へと摺動自在に案内される。収容要素52は、例えば孔として形成される。ローラタペット42、及び、当該ローラタペット42と接続されたポンププランジャ20には、ばね40によって、カム16に対して力が加えられる。
【0009】
ポンプハウジング10は、
図2で示すように、基本的に、基本ハウジング部54と、当該基本ハウジング部54と接合されたフランジ状のハウジング部56と、シリンダヘッド状のハウジング部24と、を含む。基本ハウジング部54内には、タペット本体44を案内するための孔52が形成され、この孔52の中に、駆動軸14のための第1の軸受箇所58も配置される。フランジ状のハウジング部56内には、駆動軸14のための第2の軸受箇所60が配置される。基本ハウジング部54は凹部62を有し、この凹部62内に、駆動軸14の少なくとも1つのカム16が配置される。フランジ状のハウジング部56によって、凹部62は、駆動軸14の回転軸15の方向に閉鎖される。ハウジング部54及び56並びに駆動軸14のカム16によって、カム16の円周に沿って広がる空間64が画定される。
【0010】
空間64内へと、液状媒体の導入管66と排出管68とが通じている。媒体としては、好適に、ポンプから圧送される燃料が役立つ。媒体の導入管66及び排出管68は、例えば、基本ハウジング部54を通る孔として形成される。媒体の導入管66及び排出管68は、駆動軸14の回転軸15の方向を示す凹部62の端面上に通じている。空間64への導入管66及び排出管68の合流口は、駆動軸14の回転軸15に対して径方向に見て、少なくともほぼカム16の上死点の高さに配置され、又は、当該上死点よりも高い位置に配置される。その際、カム16の上死点は、駆動軸14の回転軸15から径方向に最も遠い範囲17である。従って、導入管66及び排出管68は、駆動軸14の回転軸15に対して見て、空間64の外側の末端領域で通じている。
【0011】
ポンプがポンプエレメント18を1つだけ有する場合には、媒体の導入管66は、好適に駆動軸14の回転方向13に見て、ポンプエレメント18の後に僅かに離れて配置され、媒体の排出管68は、ポンプエレメント18の前に僅かに離れて配置される。排出管68は、駆動軸14の回転方向13に見て、好適に、導入管66に対して約270°の角度に配置される。導入管66を通じて空間64内へと入った媒体は、駆動軸14の回転運動の際に、当該駆動軸14の回転方向13にカム16によって案内され、排出管68を通じた媒体の排出は、約270°の角度範囲の後にようやく可能である。
【0012】
孔52の、駆動軸14の方を向いた末端領域内には、好適に、空間64と接続している周回する溝70が設けられる。タペット本体44を包囲する溝70によって、ローラシュー46内の凹部48内でのローラ50の保持及び孔52内へのタペット本体44の導入のような、ローラ50の領域内にも媒体が到達し、そこでの潤滑及び冷却を改善することが達成される。
【0013】
図3に示すように、ポンプが2つのポンプエレメント18a及び18bを有することが構想可能であり、その際に、第2のポンプエレメント18bは、第1のポンプエレメント18aに対して、駆動軸14の回転方向13に見て約90°ずれて配置される。駆動軸14の回転方向13に見て、第1のポンプエレメント18aと第2のポンプエレメント18bとの間には、約90°の角度が存在し、第2のポンプエレメント18bと第1のポンプエレメント18aとの間には、約270°の角度が存在する。2つのポンプエレメント18a、18bは、好適に少なくとも基本的に同一に形成される。媒体の導入管66は、駆動軸14の回転方向13に見て、好適に、2つのポンプエレメント18a、18bの間が270°の角度範囲において、第2のポンプエレメント18bの後に僅かに離れて空間64内へと通じており、媒体の排出管68は、好適に、2つのポンプエレメント18a、18bの間が90°の角度範囲の少なくとも近似的に中央で空間64内へと通じ、従って、導入管66に対して約270°の角度分だけずれている。
【0014】
図4では、
図3の矢印IVの方向に見たポンプの図が示され、その際、2つのポンプエレメント18a及び18bを可視化するために、ポンプハウジング10が部分的に示されていない。媒体の導入管66及び排出管68も同様に、分かり易さのために、図示されない基本ハウジング部54を通るにもかかわらず示されている。カム16によりもたらされる空間64内への媒体の流入は、矢印72で示される。
【0015】
導入管66を介して、高圧下の媒体、特に、ポンプから貯圧器38へと圧送される燃料が空間64内へと導入される。燃料は、フィードポンプ80によって、燃料貯蔵器82から導入管66を介して空間64内へと圧送され、排出管68を介して空間64から流れ出て、入口管32を介して、ポンプエレメント18a、18bの入口に到達する。ポンプエレメント18a、18bの排出管68と入口との間には、調量ユニット84を設けることが可能であり、この調量ユニット84によって、ポンプエレメント18a、18bにより吸入される燃料量が可変的に設定されうる。