【文献】
The Journal of Organic Chemistry,2011年,Vol.76,p.6548-6557,Scheme1, Compound 11-12
【文献】
The Journal of Organic Chemistry,2013年10月 2日,Vol.78,p.10986-10995,Scheme 2, Compound 9-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のメタ−キシリレンジアミン類の製造方法は、反応工程と、脱ハロゲン化工程と、脱保護工程とを含み、好ましくは、回収工程をさらに含んでいる。以下において、それぞれの工程につき詳細に説明する。
[反応工程]
反応工程では、モノハロゲン化ベンゼン類と、ホルムアルデヒド類と、第1級アミド基または第2級アミド基を有するアミド化合物とを、酸性液体の存在下において反応させて、ビスアミド化合物を生成する。
【0023】
モノハロゲン化ベンゼン類は、ベンゼン環に結合する水素原子の1つが、ハロゲン原子に置換された芳香族化合物であって、例えば、下記一般式(4)で示されるモノハロゲン化ベンゼン類や、下記一般式(5)で示されるモノハロゲン化ベンゼン類などが挙げられる。
一般式(4):
【0025】
(一般式(4)中、Xは、ハロゲン原子を示す。R
2は、水素原子、アルキル基、アミノ基、水酸基またはアルコキシ基を示す。R
2は、同一または互いに相異なっていてもよい。)
一般式(5):
【0027】
(一般式(5)中、XおよびR
2は、上記一般式(4)のXおよびR
2と同意義を示す。)
一般式(4)および一般式(5)のそれぞれにおいて、Xで示されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。このようなハロゲン原子のなかでは、原料コストの観点から好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、さらに好ましくは、塩素原子が挙げられる。
【0028】
一般式(4)および一般式(5)のそれぞれにおいて、R
2で示されるアルキル基としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、n−オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基など)、炭素数1〜12の分岐状のアルキル基(例えば、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、イソデシル基など)などが挙げられる。
【0029】
一般式(4)および一般式(5)のそれぞれにおいて、R
2で示されるアミノ基としては、1級、2級および3級のいずれのアミノ基であってもよい。2級または3級のアミノ基としては、例えば、上記のアルキル基などを含有するアミノ基が挙げられる。
【0030】
一般式(4)および一般式(5)のそれぞれにおいて、R
2で示されるアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜12のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基など)などが挙げられる。
【0031】
また、一般式(4)および一般式(5)のそれぞれにおいて、R
2のなかでは、モノハロゲン化ベンゼン類の配向性の観点から好ましくは、水素原子が挙げられる。また、一般式(4)および一般式(5)のそれぞれにおいて、すべてのR
2は、好ましくは同一である。なお、一般式(4)および一般式(5)のそれぞれにおいて、R
2のすべてが、水素原子である場合、一般式(4)および一般式(5)のそれぞれで示されるモノハロゲン化ベンゼン類は、同一である。
【0032】
このようなモノハロゲン化ベンゼン類のなかでは、原料コストおよび配向性の観点から好ましくは、モノクロロベンゼンが挙げられる。また、このようなモノハロゲン化ベンゼン類は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0033】
ホルムアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、および、パラホルムアルデヒドなどが挙げられ、取扱性の観点から好ましくは、パラホルムアルデヒドが挙げられる。
【0034】
パラホルムアルデヒドは、ホルムアルデヒドのみが重合したホモポリマーであって、下記一般式(6)で示される。
一般式(6):
HO(CH
2O)
nH (6)
(一般式(6)中、nは、2以上100以下の整数を示す。)
一般式(6)において、nは、好ましくは、8以上100以下である。
【0035】
このようなホルムアルデヒド類は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0036】
このようなホルムアルデヒド類は、取扱性の観点から好ましくは、水溶液として調製される。ホルムアルデヒド類が水溶液である場合、ホルムアルデヒド類の濃度は、例えば、70質量%以上、反応性の観点から好ましくは、80質量%以上、例えば、100質量%以下である。
【0037】
また、ホルムアルデヒド類の配合割合は、モノハロゲン化ベンゼン類1molに対して、例えば、1.0mol以上、ビスアミド化合物の収率の観点から好ましくは、1.2mol以上、例えば、10.0mol以下、原料コストの観点から好ましくは、3.0mol以下である。
【0038】
また、ホルムアルデヒド類の配合割合は、モノハロゲン化ベンゼン類100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、40質量部以上、例えば、70質量部以下、好ましくは、60質量部以下である。
【0039】
第1級アミド基または第2級アミド基を有するアミド化合物は、少なくとも1つのN−H結合を有するアミド基を有するアミド化合物であって、例えば、イミド基を有するイミド化合物、ウレア基を有するウレア化合物、ウレタン基を有するウレタン化合物などが挙げられる。
【0040】
このようなアミド化合物のなかでは、反応工程において生成するビスアミド化合物の安定性の観点から好ましくは、イミド化合物が挙げられ、さらに好ましくは、下記一般式(1)に示されるフタルイミド類が挙げられる。
一般式(1):
【0042】
(一般式(1)中、R
1は、水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を示し、R
1は、同一または互いに相異なっていてもよい。)
一般式(1)において、R
1で示されるハロゲン原子としては、例えば、一般式(4)においてXで示されるハロゲン原子と同様のハロゲン原子などが挙げられる。
【0043】
一般式(1)において、R
1で示されるアルキル基としては、例えば、上記一般式(4)においてR
2で示されるアルキル基と同様のアルキル基などが挙げられる。
【0044】
一般式(1)において、R
1のなかでは、反応性の観点から好ましくは、水素原子が挙げられる。また、一般式(1)において、すべてのR
1は、好ましくは同一である。
【0045】
酸性液体は、無機酸を含有する液体であって、反応工程において反応溶媒としても用いられる。このような酸性液体は、無機酸のみからなってもよく、また、無機酸が水に溶解された無機酸水溶液であってもよい。
【0046】
無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸が挙げられ、ビスアミド化合物の収率の観点から好ましくは、強酸、すなわち、酸解離定数(PKa(H
2O))が3以下の無機酸が挙げられる。強酸の無機酸として、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられ、ビスアミド化合物の収率の観点から好ましくは、硫酸が挙げられる。このような無機酸は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0047】
また、酸性液体が無機酸水溶液である場合、酸性液体中の無機酸の濃度は、ビスアミド化合物の収率の観点から、80質量%を超過し、好ましくは、88質量%以上、例えば、100質量%未満、無機酸水溶液の調製の容易さから好ましくは、99質量%以下である。
【0048】
このような酸性液体は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。また、このような酸性液体のなかでは、好ましくは、硫酸水溶液が挙げられる。
【0049】
このような酸性液体の配合割合は、モノハロゲン化ベンゼン類100質量部に対して、例えば、300質量部以上、ビスアミド化合物の収率の観点から好ましくは、700質量部以上、例えば、2000質量部以下、コストの観点から好ましくは、1100質量部以下である。
【0050】
また、無機酸の配合割合は、モノハロゲン化ベンゼン類1molに対して、例えば、3mol以上、ビスアミド化合物の収率の観点から好ましくは、8mol以上、例えば、15mol以下、コストの観点から好ましくは、12mol以下である。
【0051】
また、無機酸の水素原子の当量比(モル当量比)は、モノハロゲン化ベンゼン類に対して、ビスアミド化合物の収率の観点から、16を超過し、好ましくは、18以上、さらに好ましくは、20以上、例えば、40以下、コストの観点から好ましくは、30以下である。
【0052】
上記した各成分(モノハロゲン化ベンゼン類、ホルムアルデヒド類およびアミド化合物)を酸性液体の存在下において反応させるには、まず、それら各成分を酸性液体に溶解または分散する。
【0053】
各成分(モノハロゲン化ベンゼン類、ホルムアルデヒド類およびアミド化合物)を酸性液体に溶解または分散するには、例えば、ホルムアルデヒド類およびアミド化合物を酸性液体に溶解して、アルデヒド・アミド溶解液を調製した後、アルデヒド・アミド溶解液と、モノハロゲン化ベンゼン類とを混合する。
【0054】
アルデヒド・アミド溶解液とモノハロゲン化ベンゼン類との混合方法としては、特に限定されず、例えば、いずれか一方に他方を滴下する方法が挙げられ、ビスアミド化合物の収率の観点から好ましくは、アルデヒド・アミド溶解液にモノハロゲン化ベンゼン類を滴下する方法が挙げられる。
【0055】
滴下条件としては、温度が、例えば、0℃以上、好ましくは、10℃以上、例えば、50℃以下、好ましくは、35℃以下であり、滴下に要する時間が、例えば、15分以上、好ましくは、30分以上、例えば、5時間以下、好ましくは、3時間以下である。
【0056】
次いで、アルデヒド・アミド溶解液とモノハロゲン化ベンゼン類との混合溶液を加熱して、モノハロゲン化ベンゼン類、ホルムアルデヒド類およびアミド化合物を反応させる。
【0057】
反応温度としては、ビスアミド化合物の収率の観点から、40℃を超過し、好ましくは、50℃以上、さらに好ましくは、50℃を超過し、設備面および安全面の観点から、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下、さらに好ましくは、80℃以下である。反応温度が上記の範囲内にあると、反応速度が低下せず、また過度の加熱による分解などが起こりにくいため、有利である。
【0058】
また、反応圧力は、特に限定されず、常圧、加圧、減圧のいずれであってもよく、設備面および安全面の観点から好ましくは、常圧(具体的には、90kPa〜110kPa)である。
【0059】
また、反応時間としては、例えば、1時間以上、好ましくは、3時間以上、例えば、10時間以下、好ましくは、8時間以下、さらに好ましくは、8時間未満である。
【0060】
これによって、モノハロゲン化ベンゼン類、ホルムアルデヒド類およびアミド化合物が、酸性液体中で反応して、ビスアミド化合物(ジ置換体)が高選択で生成する。
【0061】
ビスアミド化合物が生成される場合(芳香環に2つのアミド化合物が導入される場合)、モノハロゲン化ベンゼン類の水素原子の2つが上記のアミド化合物に置換される。より詳しくは、モノハロゲン化ベンゼン類の配向性によって、モノハロゲン化ベンゼン類の2位および4位の水素原子がアミド化合物に置換されて、2,4−ジ置換体が生成するか、モノハロゲン化ベンゼン類の2位および6位の水素原子がアミド化合物に置換されて、2,6−ジ置換体が生成する(位置選択性に優れる)。
【0062】
このような2,4−ジ置換体および2,6−ジ置換体は、生成比に関係なく、後述する脱ハロゲン化工程においてハロゲン原子が水素原子に置換すると、ともにメタ体となる。
【0063】
このようなビスアミド化合物は、モノハロゲン化ベンゼン類の水素原子の2つが上記のアミド化合物に置換されたジ置換体であり、モノハロゲン化ベンゼン類の配向性によって、モノハロゲン化ベンゼン類の2位および4位の水素原子がアミド化合物に置換された2,4−ジ置換体、あるいは、モノハロゲン化ベンゼン類の2位および6位の水素原子がアミド化合物に置換された2,6−ジ置換体のいずれかである。
【0064】
2,4−ジ置換体の生成比(モル基準)は、2,6−ジ置換体に対して、例えば、1.5倍以上、好ましくは、2倍以上、例えば、20倍以下、好ましくは、10倍以下である。
【0065】
なお、2,4−ジ置換体の生成比は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定される。
【0066】
より具体的には、モノハロゲン化ベンゼン類として上記一般式(4)においてR
2のすべてが水素原子であるモノハロゲン化ベンゼン類が使用され、アミド化合物として上記一般式(1)に示されるフタルイミド類が使用される場合、反応工程において生成されるビスアミド化合物は、下記一般式(7)で示されるビスフタルイミド化合物(2,4−ジ置換体)、および、下記一般式(8)で示されるビスフタルイミド化合物(2,6−ジ置換体)を含有する。
一般式(7):
【0068】
(一般式(7)中、R
1は、上記一般式(1)のR
1と同意義を示し、Xは、上記一般式(4)のXと同意義を示す。)
上記一般式(7)で示されるビスフタルイミド化合物は、例えば、R
1のすべてが水素原子であり、Xが塩素原子である場合、N,N′‐(4−クロロ−1,3‐フェニレンビスメチレン)ビスフタルイミド(上記化学式(2)参照)である。
一般式(8):
【0070】
(一般式(8)中、R
1は、上記一般式(1)のR
1と同意義を示し、Xは、上記一般式(4)のXと同意義を示す。)
上記一般式(8)で示されるビスフタルイミド化合物は、例えば、R
1のすべてが水素原子であり、Xが塩素原子である場合、N,N′‐(2−クロロ−1,3‐フェニレンビスメチレン)ビスフタルイミド(上記化学式(3)参照)である。
【0071】
このような反応工程において、モノハロゲン化ベンゼン類の転化率は、例えば、80mol%以上、好ましくは、90mol%以上、例えば、100mol%以下である。
【0072】
また、ビスアミド化合物の収率は、モノハロゲン化ベンゼン類に対して、例えば、60mol%以上、好ましくは、70mol%以上、例えば、100mol%以下、好ましくは、90mol%以下である。
【0073】
なお、モノハロゲン化ベンゼン類の転化率およびビスアミド化合物の収率は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定されるピークの積分値から算出される。
【0074】
また、反応工程では、上記のビスアミド化合物に加え、モノハロゲン化ベンゼン類の水素原子の1つが上記のアミド化合物に置換されたモノアミド化合物(モノ置換体)が生成する場合がある。
【0075】
このような場合、モノアミド化合物の収率は、モノハロゲン化ベンゼン類に対して、例えば、1mol%以上、例えば、20mol%以下、好ましくは、15mol%以下である。また、モノアミド化合物の生成比(モル基準)は、ビスアミド化合物に対して、例えば、0.01以上、例えば、0.3以下、好ましくは、0.2以下である。
【0076】
なお、モノアミド化合物の収率およびモノアミド化合物の生成比の収率は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定されるピークの積分値から算出される。
【0077】
また、このような反応工程における反応生成物は、上記のビスアミド化合物およびモノアミド化合物に加え、反応において残存した各成分などの不純物(具体的には、ホルムアルデヒド類、アミド化合物、無機酸など)を含有する場合がある。そのため、反応生成物は、そのまま用いることもできるが、好ましくは、単離精製を経た上で用いられる。
【0078】
反応生成物の精製方法としては、公知の精製方法が挙げられ、例えば、蒸留、溶媒抽出、クロマトグラフィー、結晶化、再結晶などが挙げられる。このような精製方法は、必要に応じて、単一の精製方法による分離精製を繰り返してもよく、2以上の精製方法による分離精製を組み合わせてもよい。このような精製方法のなかでは、簡便性の観点から好ましくは、溶媒抽出が挙げられる。
【0079】
反応生成物を溶媒抽出により精製するには、例えば、反応生成物を、水と有機溶媒との混合溶液に混合した後、水層を除去する。これによって、少なくともビスアミド化合物が有機溶媒(有機層)に分配され、例えば、ホルムアルデヒド類および無機酸などの親水性の不純物が水層に分配される。
【0080】
有機溶媒としては、ビスアミド化合物が可溶、かつ、ホルムアルデヒド類およびアミド化合物が不溶の溶媒であれば、特に限定されず、例えば、飽和炭化水素類(ヘキサン、ヘプタンなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素など)などの低極性溶媒などが挙げられる。このような有機溶媒のなかでは、ビスアミド化合物との親和性の観点から好ましくは、芳香族炭化水素類が挙げられ、さらに好ましくは、トルエンが挙げられる。このような有機溶媒は、単独で使用してもよく、あるいは、2種以上併用することもできる。
【0081】
また、反応生成物が、上記のビスアミド化合物およびモノアミド化合物を含有する場合、ビスアミド化合物とモノアミド化合物とは、例えば、クロマトグラフィーにより分離精製することができる。
[脱ハロゲン化工程]
脱ハロゲン化工程では、上記のビスアミド化合物において、モノハロゲン化ベンゼン類に由来するハロゲン原子を水素原子に置換する。
【0082】
ビスアミド化合物のハロゲン原子を水素原子に置換する方法、すなわち、脱ハロゲン化方法としては、ハロゲン化ベンゼンからの公知の脱ハロゲン化方法が挙げられる。このような脱ハロゲン化方法のなかでは、好ましくは、触媒の存在下において、上記のビスアミド化合物に水素を供給する方法が挙げられる。
【0083】
触媒としては、公知の水素添加触媒が挙げられ、例えば、Ni、Mo、Fe、Co、Cu、Pt、Pd、Rhなどの金属を含有する触媒、工業的観点から好ましくは、パラジウムカーボン触媒が挙げられる。このような触媒は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0084】
触媒の使用割合は、反応工程において使用されたモノハロゲン化ベンゼン類100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、反応性の観点から好ましくは、1質量部以上、例えば、7質量部以下、コストの観点から好ましくは、8質量部以下である。
【0085】
また、触媒の使用割合は、ビスアミド化合物100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、反応性の観点から好ましくは、0.5質量部以上、例えば、5質量部以下、コストの観点から好ましくは、2質量部以下である。
【0086】
そして、触媒の存在下において、上記のビスアミド化合物に水素を供給するには、例えば、触媒およびビスアミド化合物を反応器(例えば、オートクレーブ)内に仕込んだ後、反応器内の空気を水素により置換する。
【0087】
また、このような脱ハロゲン化方法では、必要により、金属塩および有機溶媒が添加される。
【0088】
金属塩としては、例えば、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)、アルカリ金属硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなど)、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなど)、アルカリ土類金属硫酸塩(例えば、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなど)などが挙げられる。このような金属塩のなかでは、好ましくは、アルカリ金属炭酸塩が挙げられ、さらに好ましくは、炭酸ナトリウムが挙げられる。また、このような金属塩は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0089】
金属塩の配合割合は、反応工程において使用されたモノハロゲン化ベンゼン類1molに対して、例えば、0.1mol以上、脱離するハロゲン原子の捕捉の観点から好ましくは、0.5mol以上、例えば、3mol以下、コストの観点から好ましくは、1.5mol以下である。
【0090】
有機溶媒としては、例えば、上記した有機溶媒が挙げられ、好ましくは、芳香族炭化水素類が挙げられ、さらに好ましくは、トルエンが挙げられる。このような有機溶媒は、単独で使用してもよく、あるいは、2種以上併用することもできる。
【0091】
また、反応工程において反応生成物が溶媒抽出により精製されている場合、脱ハロゲン化工程において有機溶媒を添加することなく、反応工程において得られた有機層をそのまま用いることができる。
【0092】
次いで、反応器内を加圧するとともに温度を昇温させて、上記のビスアミド化合物のハロゲン原子を水素原子に置換する。
【0093】
このような脱ハロゲン化における反応条件としては、温度が、例えば、40℃以上、反応性の観点から好ましくは、70℃以上、例えば、150℃以下、設備面および安全面の観点から好ましくは、110℃以下であり、圧力が、例えば、0.1MPa以上、反応性の観点から好ましくは、0.2MPa以上、例えば、3.0MPa以下、設備面および安全面の観点から好ましくは、1.0MPa以下であり、時間が、例えば、1時間以上、反応性の観点から好ましくは、2時間以上、例えば、20時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0094】
これによって、1位および3位にアミド化合物が結合した1,3位アミド置換体が生成する。
【0095】
より具体的には、モノハロゲン化ベンゼン類として上記一般式(4)においてR
2のすべてが水素原子であるモノハロゲン化ベンゼン類が使用され、アミド化合物として上記一般式(1)に示されるフタルイミド類が使用される場合、下記一般式(9)で示される1,3位アミド置換体が生成する。
一般式(9):
【0097】
(一般式(9)中、R
1は、上記一般式(1)のR
1と同意義を示す。)
つまり、上記一般式(7)で示されるビスフタルイミド化合物(2,4−ジ置換体)、および、上記一般式(8)で示されるビスフタルイミド化合物(2,6−ジ置換体)の両方は、脱ハロゲン化工程によって、上記一般式(9)で示される1,3位アミド置換体に変換される。
【0098】
1,3位アミド置換体の収率は、脱ハロゲン化工程に用いられるビスアミド化合物に対して、例えば、80mol%以上、好ましくは、90mol%以上、例えば、100mol%以下、好ましくは、99mol%以下である。
【0099】
なお、1,3位アミド置換体の収率は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定されるピークの積分値から算出される。
[脱保護工程]
脱保護工程では、上記の1,3位アミド置換体が有する、アミド化合物に由来するアミド基をアミノ基に変換する。
【0100】
アミド基をアミノ基に変換する方法としては、特に限定されず公知の方法が挙げられ、好ましくは、加水分解によりアミド基をアミノ基に変換する方法が挙げられる。
【0101】
加水分解によりアミド基をアミノ基に変換するには、酸成分または塩基成分の存在下において、アミド基と水(H
2O)とを反応させる。
【0102】
酸成分としては、特に制限されず、例えば、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸など)、有機酸(スルホン酸、酢酸など)などが挙げられる。このような酸成分は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0103】
塩基成分としては、例えば、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)などが挙げられる。このような塩基成分は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0104】
このような酸成分および塩基成分のなかでは、反応性の観点から好ましくは、塩基成分が挙げられ、さらに好ましくは、アルカリ金属水酸化物、とりわけに好ましくは、水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0105】
また、塩基成分は、好ましくは、水に溶解され、塩基性水溶液として調製される。
【0106】
この場合、塩基性溶液の塩基成分濃度としては、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上、例えば、70質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。
【0107】
そして、上記の1,3位アミド置換体が有するアミド基をアミノ基に変換するには、例えば、1,3位アミド置換体と塩基性水溶液とを撹拌混合する。これによって、1,3位アミド置換体のアミド基が、塩基性水溶液中の水と反応し、アミノ基に変換される。
【0108】
加水分解の反応条件としては、温度が、例えば、60℃以上、反応性の観点から好ましくは、70℃以上、例えば、100℃以下、安全面の観点から好ましくは、90℃以下であり、時間が、例えば、0.1時間以上、好ましくは、0.5時間以上、例えば、10時間以下、好ましくは、5時間以下である。
【0109】
これによって、アミド基がアミノ基に変換され、メタ−キシリレンジアミンが生成する。より具体的には、モノハロゲン化ベンゼン類として上記一般式(4)においてR
2のすべてが水素原子であるモノハロゲン化ベンゼン類が使用される場合、下記化学式(10)で示されるメタ−キシリレンジアミンが生成する。
化学式(10):
【0111】
メタ−キシリレンジアミンの収率は、脱保護工程に用いられる1,3位アミド置換体に対して、例えば、80mol%以上、好ましくは、90mol%以上、例えば、100mol%以下、好ましくは、99mol%以下である。
【0112】
なお、メタ−キシリレンジアミンの収率は、ガスクロマトグラフィー(GC)により測定されるピークの積分値から算出される。
【0113】
また、脱保護工程では、アミド基の加水分解に伴って、カルボン酸塩が脱離する。そのため、脱保護工程における反応生成物(粗生成物)は、上記のメタ−キシリレンジアミンに加え、カルボン酸塩を含有する。
【0114】
そのため、粗生成物は、好ましくは、粗生成物中のカルボン酸塩を除去した上で用いられる。
【0115】
粗生成物中のカルボン酸塩を除去するには、特に制限されず、例えば、上記の精製方法が挙げられる。このような精製方法は、必要に応じて、単一の精製方法による分離精製を繰り返してもよく、2以上の精製方法による分離精製を組み合わせてもよい。このような精製方法のなかでは、好ましくは、結晶化が挙げられる。
【0116】
カルボン酸塩を結晶化により粗生成物中から除去するには、例えば、反応生成物中の水を除去した後、冷却する。これによって、カルボン酸塩が結晶化する。そして、濾過により、カルボン酸塩と、メタ−キシリレンジアミンが溶解する濾液とに分離する。
【0117】
なお、本実施形態では、反応工程後、脱ハロゲン化工程を経て、脱保護工程が実施されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、反応工程後、脱保護工程を経て、脱ハロゲン化工程を実施することもできる。この場合、反応工程において、例えば、上記一般式(7)で示されるビスフタルイミド化合物が生成した後、脱保護工程において、そのビスフタルイミド化合物のアミド基がアミノ基に変換され、ハロゲン化キシリレンジアミンが生成され、脱ハロゲン化工程において、ハロゲン化キシリレンジアミンからハロゲン原子が脱離され、メタ−キシリレンジアミンが調製される。
【0118】
そして、メタ−キシリレンジアミンが溶解する濾液から、溶媒が除去されることにより、メタ−キシリレンジアミンが得られる。
[回収工程]
回収工程では、まず、脱保護工程において得られたカルボン酸塩を、カルボン酸塩をカルボン酸に変換した後、カルボン酸と、尿素あるいはアンモニアとを反応させて、上記のアミド化合物を生成する。
【0119】
カルボン酸塩をカルボン酸に変換するには、例えば、カルボン酸塩を酸に分散して、カルボン酸塩にプロトンを供与し、カルボン酸塩をカルボン酸に変換する。
【0120】
酸としては、上記した酸成分と同様の酸が挙げられ、好ましくは、無機酸、さらに好ましくは、塩酸が挙げられる。このような酸は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0121】
このような酸は、好ましくは、酸性水溶液として調製される。酸が水溶液として調製される場合、酸の濃度は、例えば、1mol%以上、好ましくは、10mol%以上、例えば、50mol%以下、好ましくは、30mol%以下である。
【0122】
次いで、カルボン酸と、尿素あるいはアンモニアとを反応させる。
【0123】
反応条件としては、常圧において、温度が、例えば、20℃以上、反応性の観点から好ましくは、40℃以上、例えば、200℃以下、安全性の観点から好ましくは、150℃以下であり、時間が、例えば、30分以上、好ましくは、2時間以上、例えば、50時間以下、好ましくは、25時間以下である。
【0124】
これによって、上記のアミド化合物、すなわち、反応工程において使用されるアミド化合物が生成する。そのため、回収工程において回収されたアミド化合物を、反応工程において使用することができ、経済面のさらなる向上を図ることができる。
【0125】
このようなメタ−キシリレンジアミン類の製造方法は、従来法に対して比較的マイルドな条件下において、安全に、低コストかつ高収率でビスアミド化合物、ひいては、メタ−キシリレンジアミン類を製造することができる。そのため、このようなメタ−キシリレンジアミン類の製造方法は、設備面、安全面および経済面に優れている。その結果、メタ−キシリレンジアミン類の工業的な製造方法として、好適に用いることができる。
【0126】
また、メタ−キシリレンジアミン類およびその塩は、各種工業原料、例えば、ポリウレタン原料や、例えば、ポリアミド原料などの樹脂原料として、好適に用いられる。
【0127】
例えば、ポリウレタン原料として用いられる場合、メタ−キシリレンジアミン類は、公知のホスゲン法やノンホスゲン法により、メタ−キシリレンジイソシアネート類に誘導される。
【実施例】
【0128】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例に関し、反応工程における、処方、酸性液体、反応条件、添加率および収率を、表1に示す。
【0129】
また、実施例中の配合割合などの数値は、上記の実施形態において記載される対応箇所の上限値または下限値に代替することができる。
【0130】
さらに、各工程における各成分は、ガスクロマトグラフィー(GC)または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。より詳しくは、三点検量線を作成して、GCまたはHPLCにより得られるピークの積分値から、各成分の濃度および内容量を算出した。
(実施例1)
[反応工程]
攪拌器、滴下漏斗、温度計、ガス排気管を装備した1Lの4つ口フラスコに、95質量%硫酸水溶液515.8g(硫酸:5mol)を装入した後、さらに、フタルイミド147.1g(1mol)、90質量%パラホルムアルデヒド水溶液33.4g(ホルムアルデヒド:1mol)を装入して、それらを95質量%硫酸水溶液に溶解して、アルデヒド・アミド溶解液を調製した。
【0131】
次いで、フラスコ内を20〜25℃の温度範囲に保ちながら、アルデヒド・アミド溶解液に、モノクロロベンゼン56.3g(0.5mol)を1時間かけて滴下した(滴下速度:8.3×10
−3mol/min)。つまり、硫酸の水素原子の当量比(モル比)は、モノハロゲン化ベンゼン類に対して、20である。
【0132】
その後、フラスコ内を80℃に昇温し、この温度を一定に保ちつつ、常圧で各成分を反応させた。5時間後、反応を終了し、反応生成物を得た。
【0133】
反応生成物をHPLCにより分析したところ、モノクロロベンゼンの転化率は99mol%であり、反応生成物は、ビスフタルイミド化合物(ジ置換体)、および、モノフタルイミド化合物(モノ置換体)を含有していた。
【0134】
また、モノクロロベンゼンに対する、ビスフタルイミド化合物(ジ置換体)の収率は80mol%、モノフタルイミド化合物(モノ置換体)の収率は10mol%であった。つまり、ビスフタルイミド化合物は、合計して0.4mol生成し、その質量の総和は、172.3gであった。
【0135】
また、得られたビスフタルイミド化合物は、下記化学式(2)で示すビスフタルイミド化合物(2,4−ジ置換体)、および、下記化学式(3)で示すビスフタルイミド化合物(2,6−ジ置換体)のみを含んでいた。
化学式(2):
【0136】
【化11】
【0137】
化学式(3):
【0138】
【化12】
【0139】
なお、モノクロロベンゼンの転化率、ビスフタルイミド化合物の収率、および、モノフタルイミド化合物の収率は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定されるピークの積分値から算出された。
【0140】
また、攪拌器を装備した2Lの底抜きフラスコに、トルエン500gと水500gとを装入した後、反応生成物の全量を15分かけて滴下装入し、撹拌した。
【0141】
続いて、水層を抜き出した後、有機層に再度、水500gを加えて、撹拌した。これを4回繰り返して有機層を水洗し、ビスフタルイミド化合物およびモノフタルイミド化合物が溶解された有機層(ビスアミド溶液)を得た。つまり、有機層における、ビスフタルイミド化合物の濃度は、25.6質量%であった。
[脱ハロゲン化工程]
次いで、攪拌器付き1Lのオートクレーブに、パラジウムカーボン(触媒)1.5gと、炭酸ナトリウム無水物53.0g(0.5mol)とを装入した後、さらに上記の有機層の全量を装入した。
【0142】
次いで、オートクレーブ内の気相部を、窒素で置換した後、水素で置換し、水素圧0.5MPaに加圧した。また、オートクレーブ内を90℃に昇温して、ビスフタルイミド化合物の脱ハロゲン化反応を進行させた。5時間後、反応を終了し冷却した。
【0143】
冷却後の反応液を濾過し、触媒と無機塩(塩化ナトリウム)とを濾別して、濾液を得た。次いで、濾液の一部を取り分け、その濾液から溶媒(トルエン)を留去して、N,N’−(1,3−フェニレンビスメチレン)ビスフタルイミド(1,3位アミド置換体)を得た。上記化学式(2)および下記化学式(3)で示すビスフタルイミド化合物の総和に対する、N,N’−(1,3−フェニレンビスメチレン)ビスフタルイミドの収率は、98mol%であった。つまり、N,N’−(1,3−フェニレンビスメチレン)ビスフタルイミドは、0.39mol生成し、その質量は、154.6gであった。
【0144】
なお、N,N’−(1,3−フェニレンビスメチレン)ビスフタルイミドの収率は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定されるピークの積分値から算出された。
[脱保護工程]
攪拌器、ディーンシュタック還流管、温度計、ガス排気管を装備した1Lの4つ口フラスコに、脱ハロゲン化工程で得られた濾液(取り分けた濾液を除く)の全量を装入した後、さらに、48質量%水酸化ナトリウム水91.7g(1.1mol)を装入し攪拌した。フラスコ内を80℃に昇温し、この温度を一定にし、かつ、常圧下で2時間攪拌した。さらに、フラスコ内の温度を110〜120℃に昇温し、ディーンシュタック還流管により水を分離して抜き出した。
【0145】
次いで、水が出てこなくなるまで、水の分離を継続した後、冷却した。そして、その反応液を濾過して、反応により生じたフタル酸ナトリウムを濾別し、濾液を得た。
【0146】
濾液をGCにより分析したところ、メタ−キシリレンジアミンの生成が確認された。また、N,N’−(1,3−フェニレンビスメチレン)ビスフタルイミドに対する、メタ−キシリレンジアミンの収率は97mol%であった。つまり、メタ−キシリレンジアミンは、0.38mol生成し、その質量は、51.5gであった。
[回収工程]
また、脱保護工程において濾別されたフタル酸ナトリウム159.7g(0.76mol)を、1Lのフラスコ中で20mol%塩酸に分散させて、フタル酸(0.76mol)に変換した。次いで、フタル酸と等モルの尿素(45.6g)をフラスコに装入し、フラスコ内を60℃〜130℃の温度範囲に昇温するとともに、生じるアンモニアをフラスコ外に除去しながら攪拌した。これによって、フタルイミドを得た。フタル酸ナトリウムに対する、フタルイミドの回収収率は、92mol%であった。つまり、フタルイミドは、0.70mol回収され、その質量は、102.9gであった。
(実施例2)
反応工程において、95質量%硫酸水溶液の使用量を464.6g(硫酸:4.5mol)に変更した点以外は、実施例1と同様にして、メタ−キシリレンジアミンを調製した。
【0147】
なお、反応工程において、モノクロロベンゼンの転化率は99mol%であり、ビスフタルイミド化合物(ジ置換体)の収率は81mol%、モノフタルイミド化合物(モノ置換体)の収率は12mol%であった。
(実施例3)
反応工程において、95質量%硫酸水溶液の使用量を464.6g(硫酸:4.5mol)に変更した点、反応温度を50℃に変更した点、および、反応時間を8時間に変更した点以外は、実施例1と同様にして、メタ−キシリレンジアミンを調製した。
【0148】
なお、反応工程において、モノクロロベンゼンの転化率は98mol%であり、ビスフタルイミド化合物(ジ置換体)の収率は77mol%、モノフタルイミド化合物(モノ置換体)の収率は14mol%であった。
(実施例4)
反応工程において、硫酸水溶液の濃度を98質量%に変更した点、硫酸水溶液の使用量を、450.4g(硫酸:4.5mol)に変更した点以外は、実施例1と同様にして、メタ−キシリレンジアミンを調製した。
【0149】
なお、反応工程において、モノクロロベンゼンの転化率は99mol%であり、ビスフタルイミド化合物(ジ置換体)の収率は80mol%、モノフタルイミド化合物(モノ置換体)の収率は12mol%であった。
(実施例5)
反応工程において、硫酸水溶液の濃度を88質量%に変更した点、硫酸水溶液の使用量を、557.3g(硫酸:5mol)に変更した点以外は、実施例1と同様にして、メタ−キシリレンジアミンを調製した。
【0150】
なお、反応工程において、モノクロロベンゼンの転化率は99mol%であり、ビスフタルイミド化合物(ジ置換体)の収率は81mol%、モノフタルイミド化合物(モノ置換体)の収率は8mol%であった。
(比較例1)
反応工程において、硫酸水溶液の使用量を、413.0g(硫酸:4mol)に変更した点以外は、実施例1と同様に実施した。
【0151】
なお、反応工程において、モノクロロベンゼンの転化率は90mol%であり、モノフタルイミド化合物(モノ置換体)の収率は70mol%であった。また、ビスフタルイミド化合物(ジ置換体)は生成しなかった。
(比較例2)
反応工程において、95質量%硫酸水溶液の使用量を464.6g(硫酸:4.5mol)に変更した点、反応温度を40℃に変更した点、および、反応時間を8時間に変更した点以外は、実施例1と同様に実施した。
【0152】
なお、反応工程において、モノクロロベンゼンの転化率は92mol%であり、モノフタルイミド化合物(モノ置換体)の収率は77mol%であった。また、ビスフタルイミド化合物(ジ置換体)は生成しなかった。
(比較例3)
反応工程において、硫酸水溶液の濃度を80質量%に変更した点、硫酸水溶液の使用量を613.0g(硫酸:5mol)に変更した点、反応温度を100℃に変更した点、および、反応時間を8時間に変更した点以外は、実施例1と同様に実施した。
【0153】
なお、反応工程において、モノクロロベンゼンの転化率は88mol%であり、モノフタルイミド化合物(モノ置換体)の収率は70mol%であった。また、ビスフタルイミド化合物(ジ置換体)は生成しなかった。
(比較例4)
反応工程において、90質量%パラホルムアルデヒド33.4g(ホルムアルデヒド:1mol)を、37質量%ホルムアルデヒド水溶液81.2g(ホルムアルデヒド:1mol)に変更した点、フタルイミド147.1g(1mol)を、20質量%アンモニア水85.0g(アンモニア:1mol)に変更した点、および、反応時間を8時間に変更した点以外は、実施例1と同様に実施した。
【0154】
なお、反応工程において、モノクロロベンゼンの転化率は0mol%であり、ビスフタルイミド化合物(ジ置換体)およびモノフタルイミド化合物(モノ置換体)は生成しなかった。
(比較例5)
反応工程において、フタルイミド147.1g(1mol)を、20質量%アンモニア水溶液85.0g(アンモニア:1mol)に変更した点、および、反応時間を8時間に変更した点以外は、実施例1と同様に実施した。
【0155】
なお、反応工程において、モノクロロベンゼンの転化率は0mol%であり、ビスフタルイミド化合物(ジ置換体)およびモノフタルイミド化合物(モノ置換体)は生成しなかった。
(比較例6)
反応工程において、95質量%硫酸水溶液515.8g(硫酸:5mol)を、99質量%メタンスルホン酸水溶液970.7g(メタンスルホン酸:10mol)に変更した点、および、反応時間を8時間に変更した点以外は、実施例1と同様に実施した。
【0156】
なお、反応工程において、モノクロロベンゼンの転化率は2mol%であり、ビスフタルイミド化合物(ジ置換体)およびモノフタルイミド化合物(モノ置換体)は生成しなかった。
(比較例7)
反応工程において、95質量%硫酸水溶液515.8g(硫酸:5mol)を、99質量%酢酸水溶液606.6g(酢酸:10mol)に変更した点、反応温度を100℃に変更した点、および、反応時間を8時間に変更した点以外は、実施例1と同様に実施した。
【0157】
なお、反応工程において、モノクロロベンゼンの転化率は0mol%であり、ビスフタルイミド化合物(ジ置換体)およびモノフタルイミド化合物(モノ置換体)は生成しなかった。
(比較例8)
反応工程において、クロロベンゼン56.3g(0.5mol)を、ベンゼン39.1g(0.5mol)に変更した点以外は、実施例1と同様に実施した。
【0158】
なお、反応工程において、モノクロロベンゼンの転化率は99mol%であり、ビスフタルイミド化合物(ジ置換体)の収率は20mol%、モノフタルイミド化合物(モノ置換体)の収率は5mol%であった。
(比較例9)
反応工程において、硫酸水溶液の濃度を88質量%に変更した点、硫酸水溶液の使用量を557.3g(硫酸:5mol)に変更した点、反応温度を30℃に変更した点、および、反応時間を8時間に変更した点以外は、実施例1と同様に実施した。
【0159】
なお、反応工程において、モノクロロベンゼンの転化率は99mol%であり、モノフタルイミド化合物(モノ置換体)の収率は94mol%であった。また、ビスフタルイミド化合物(ジ置換体)は生成しなかった。
(比較例10)
反応工程において、硫酸水溶液の濃度を70質量%に変更した点、硫酸水溶液の使用量を1050.8g(硫酸:7.5mol)に変更した点、反応温度を100℃に変更した点、および、反応時間を8時間に変更した点以外は、実施例1と同様に実施した。
【0160】
なお、反応工程において、モノクロロベンゼンの転化率は99mol%であり、モノフタルイミド化合物(モノ置換体)の収率は57mol%であった。また、ビスフタルイミド化合物(ジ置換体)は生成しなかった。
(比較例11)
反応工程において、硫酸水溶液の濃度を48質量%に変更した点、硫酸水溶液の使用量を1021.7g(硫酸:5mol)に変更した点、反応温度を100℃に変更した点、および、反応時間を8時間に変更した点以外は、実施例1と同様に実施した。
【0161】
なお、反応工程において、モノクロロベンゼンの転化率は0mol%であり、ビスフタルイミド化合物(ジ置換体)およびモノフタルイミド化合物(モノ置換体)は生成しなかった。
【0162】
【表1】
【0163】
なお、表1の略号などを以下に示す。
CB :モノクロロベンゼン(東京化成株式会社製)
BZ :ベンゼン(和光純薬工業株式会社製)
PFA :パラホルムアルデヒド(東京化成株式会社製)
ホルマリン:37質量%ホルムアルデヒド水溶液(和光純薬工業株式会社製)
PI :フタルイミド(和光純薬工業株式会社製)
NH
3水 :20mol%アンモニア水溶液(和光純薬工業株式会社製)
MSA :メタンスルホン酸(和光純薬工業株式会社製)
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれる。
メタ−キシリレンジアミン類の製造方法は、モノハロゲン化ベンゼン類と、ホルムアルデヒド類と、第1級アミド基または第2級アミド基を有するアミド化合物とを、酸性液体の存在下において反応させる反応工程と、モノハロゲン化ベンゼン類に由来するハロゲン原子を水素原子に置換する脱ハロゲン化工程と、アミド化合物に由来する第1級アミド基または第2級アミド基をアミノ基に変換する脱保護工程とを含む。反応工程において、酸性液体が、無機酸を含有し、モノハロゲン化ベンゼン類に対する、無機酸の水素原子の当量比が、16を超過し、酸性液体中の無機酸の濃度が、80質量%を超過し、反応温度が、40℃を超過している。