特許第5739605号(P5739605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5739605
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】エンジンの排気浄化システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/023 20060101AFI20150604BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   F01N3/02 321D
   F01N3/02 321Z
   B01D53/36 103B
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2009-122574(P2009-122574)
(22)【出願日】2009年5月20日
(65)【公開番号】特開2010-270658(P2010-270658A)
(43)【公開日】2010年12月2日
【審査請求日】2012年3月1日
【審判番号】不服2014-15696(P2014-15696/J1)
【審判請求日】2014年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕之
(72)【発明者】
【氏名】原 道彦
【合議体】
【審判長】 伊藤 元人
【審判官】 金澤 俊郎
【審判官】 槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−343287(JP,A)
【文献】 特開2004−278405(JP,A)
【文献】 特開2008−133740(JP,A)
【文献】 特開平4−50417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気経路の途中に配置され、パティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタと、エンジンの吸気経路に配置され、吸気絞り用アクチュエータを駆動制御して開度を変更する吸気量調整手段と、エンジンの排気経路に配置され、排気絞り用アクチュエータを駆動制御して開度を変更する排気量調整手段と、前記吸気量調整手段および/または前記排気量調整手段とを制御することにより、前記パティキュレートフィルタに捕集されたパティキュレートを燃焼させて除去する再生手段と、エンジンの負荷検出センサと、エンジンの回転数検出センサと、エンジンの排気温度検出手段とを有するエンジンの排気浄化システムにおいて、
前記エンジン回転数検出センサが検出した回転数およびエンジン負荷検出センサが検出した負荷率の検出結果に基づいて、エンジンの運転状態が定常状態であるか過渡状態であるかを判定し、該判定結果に基づいて過渡用フィルタまたは定常用フィルタを適用フィルタとして選択するエンジンの運転状態判定手段を具備し、
前記排気温度検出手段により検出された排気温度に応じて、排気温度が所定温度より高温の場合は、前記排気量調整手段の制御動作を開始するとともに、同時に、または設定時間の経過後、または排気ガス温度が設定温度に到達後に、前記吸気量調整手段の制御動作を開始し、排気温度が所定温度より低温の場合は、前記排気量調整手段の制御動作を開始し、設定時間の経過後、または排気ガス温度が設定温度に到達後に、前記吸気量調整手段の制御動作を開始し、
エンジンの回転数および負荷率と、前記吸気量調整手段および/または前記排気量調整手段の動作との関係を決定する関係マップを記憶した記憶手段を備え、前記記憶手段の関係マップより、前記吸気量調整手段および/または前記排気量調整手段の目標動作を設定するとともに、前記エンジンの運転状態判定手段の判定結果に応じて、前記過渡用フィルタまたは定常用フィルタを適用フィルタとして信号を通過させることにより、目標動作への変更速度を設定し、
前記吸気量調整手段および/または前記排気量調整手段を、前記吸気絞り用アクチュエータと排気絞り用アクチュエータの駆動速度を制御して、その設定した変更速度で前記目標動作をなすように制御する
ことを特徴とするエンジンの排気浄化システム。
【請求項2】
請求項1記載のエンジンの排気浄化システムにおいて、前記記憶手段には、燃料噴射弁の、噴射時期、噴射回数、噴射圧と、エンジンの回転数および負荷率との燃料噴射用の関係マップも記憶され、燃料噴射用の関係マップより、燃料噴射弁の目標噴射時期、目標噴射回数、目標噴射圧の少なくともいずれか一つを設定するとともに、前記エンジンの運転状態判定手段の判定結果に応じて、前記過渡用フィルタまたは定常用フィルタを適用フィルタとして信号を通過させることにより、前記目標噴射時期、前記目標噴射回数、前記目標噴射圧への変更速度を設定し、前記燃料噴射弁の燃料噴射用アクチュエータの駆動速度を、その設定した変更速度で前記目標噴射時期、目標噴射回数、目標噴射圧の少なくともいずれか一つで制御が行われるようにすることを特徴とするエンジンの排気浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気浄化システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンから排出される排気ガス中に含まれるパティキュレートを捕集する技術として、パティキュレートフィルタを有する排気浄化装置が知られている。前記パティキュレートフィルタは、セラミック等からなる多孔質のハニカム構造となっており、格子状に区画された各流路の入口が交互に目封じされている。そして、入口が目封じされていない流路については、その出口が目封じされるように構成され、各流路を区画する多孔質壁を透過した排気ガスのみが下流に排出される。排気ガスは、多孔室壁を透過する際に、排気ガス中のパティキュレートがその多孔室壁内部に捕集されることで浄化される。
【0003】
しかし、多孔室壁内部に捕集されたパティキュレートは、次第に堆積していくため、その堆積によって排気抵抗の増加や、パティキュレートフィルタの入口側と出口側との差圧等が発生して、エンジンの性能に影響を及ぼすことがあった。よって、前記パティキュレートフィルタに堆積したパティキュレートを適宜に燃焼除去して、パティキュレートフィルタの再生を行う必要がある。
【0004】
そこで、エンジンに備えられる燃料噴射弁を制御して、いわゆるポスト噴射(メイン噴射後に行われる燃料噴射であって、シリンダ内で燃焼させずに排気とともに未燃の炭化水素(HC)をパティキュレートフィルタに供給することを狙った燃料噴射)を行う技術が公知となっている。例えば、特許文献1の如くである。この技術では、未燃の炭化水素(HC)をパティキュレートフィルタに担持されている酸化触媒で反応させ、その反応熱を利用してパティキュレートフィルタに堆積したパティキュレートを燃焼除去する。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術は、燃料噴射弁のポスト噴射により強制的に排気浄化装置内の排気ガスを昇温させるものであるので、エンジンの運転状態が急変する恐れがある。よって、パティキュレートフィルタの再生を行う場合、前記排気浄化装置を備えた車両等のエンジン搭載機器の動作を停止させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−83139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされるものであり、その解決しようとする課題は、エンジン搭載機器を用いた作業や走行等を中断することなく、パティキュレートフィルタの再生を行うことができるエンジンの排気浄化システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
請求項1においては、エンジンの排気経路の途中に配置され、パティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタと、エンジンの吸気経路に配置され、吸気絞り用アクチュエータを駆動制御して開度を変更する吸気量調整手段と、エンジンの排気経路に配置され、排気絞り用アクチュエータを駆動制御して開度を変更する排気量調整手段と、前記吸気量調整手段および/または前記排気量調整手段とを制御することにより、前記パティキュレートフィルタに捕集されたパティキュレートを燃焼させて除去する再生手段と、エンジンの負荷検出センサと、エンジンの回転数検出センサと、エンジンの排気温度検出手段とを有するエンジンの排気浄化システムにおいて、前記エンジン回転数検出センサが検出した回転数およびエンジン負荷検出センサが検出した負荷率の検出結果に基づいて、エンジンの運転状態が定常状態であるか過渡状態であるかを判定し、該判定結果に基づいて過渡用フィルタまたは定常用フィルタを適用フィルタとして選択するエンジンの運転状態判定手段を具備し、前記排気温度検出手段により検出された排気温度に応じて、排気温度が所定温度より高温の場合は、前記排気量調整手段の制御動作を開始するとともに、同時に、または設定時間の経過後、または排気ガス温度が設定温度に到達後に、前記吸気量調整手段の制御動作を開始し、排気温度が所定温度より低温の場合は、前記排気量調整手段の制御動作を開始し、設定時間の経過後、または排気ガス温度が設定温度に到達後に、前記吸気量調整手段の制御動作を開始し、エンジンの回転数および負荷率と、前記吸気量調整手段および/または前記排気量調整手段の動作との関係を決定する関係マップを記憶した記憶手段を備え、前記記憶手段の関係マップより、前記吸気量調整手段および/または前記排気量調整手段の目標動作を設定するとともに、前記エンジンの運転状態判定手段の判定結果に応じて、前記過渡用フィルタまたは定常用フィルタを適用フィルタとして信号を通過させることにより、目標動作への変更速度を設定し、前記吸気量調整手段および/または前記排気量調整手段を、前記吸気絞り用アクチュエータと排気絞り用アクチュエータの駆動速度を制御して、その設定した変更速度で前記目標動作をなすように制御する
ものである。
【0010】
請求項2においては、請求項1記載のエンジンの排気浄化システムにおいて、前記記憶手段には、燃料噴射弁の、噴射時期、噴射回数、噴射圧と、エンジンの回転数および負荷率との燃料噴射用の関係マップも記憶され、燃料噴射用の関係マップより、燃料噴射弁の目標噴射時期、目標噴射回数、目標噴射圧の少なくともいずれか一つを設定するとともに、前記エンジンの運転状態判定手段の判定結果に応じて、前記過渡用フィルタまたは定常用フィルタを適用フィルタとして信号を通過させることにより、前記目標噴射時期、前記目標噴射回数、前記目標噴射圧への変更速度を設定し、前記燃料噴射弁の燃料噴射用アクチュエータの駆動速度を、その設定した変更速度で前記目標噴射時期、目標噴射回数、目標噴射圧の少なくともいずれか一つで制御が行われるようにするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、エンジンで燃料噴射弁のポスト噴射を行わずに、パティキュレートフィルタの再生を適切に行うことが可能となり、エンジン搭載機器である作業車両の動作を停止させずに済む。したがって、パティキュレートフィルタの再生を行う際、作業車両を用いた作業を継続して行うことができる。
【0013】
また、吸気量調整手段および/または前記排気量調整手段の変更速度を適切に設定することができるので、パティキュレートフィルタの再生にともなう排気ガスの色の変化や臭いの発生、または騒音の発生等を軽減することができ、操縦者の操作環境の悪化を防ぐことができる。
【0014】
請求項2においては、燃料噴射弁の噴射時期、噴射回数、噴射時期を変更する際の変更速度を適切に設定することができるので、パティキュレートフィルタの再生にともなう排気ガスの色の変化や臭いの発生、または騒音の発生等を軽減することができ、操縦者の操作環境の悪化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るエンジンの排気浄化システムの構成を示す概略図。
図2】パティキュレートフィルタの再生制御を示すフローチャート図。
図3図2において、排気浄化装置内の排気温度が所定温度より高温であった場合のパティキュレートフィルタの再生制御を示すフローチャート図。
図4図2において、排気浄化装置内の排気温度が所定温度より低温であった場合のパティキュレートフィルタの再生制御を示すフローチャート図。
図5】吸気絞り弁および排気絞り弁の目標開度の設定手順を示すフローチャート図。
図6】燃料噴射弁の目標噴射時期および目標噴射圧の設定手順を示すフローチャート図。
図7】適用フィルタの設定手順を示すフローチャート図。
図8】制御構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るエンジンの排気浄化システムの一実施形態について図面に基づいて説明する。
【0017】
排気浄化システム1は、図1に示すように、エンジン2から排出される排気を浄化するものである。排気浄化システム1は、エンジン2に設けられ、パティキュレートフィルタ10および酸化触媒11を有する排気浄化装置、吸気絞り弁12、排気絞り弁13、堆積量検出センサ33、温度センサ21、エンジン回転数検出センサ22、エンジン負荷検出センサ23、エンジン制御手段であるECU30等を具備する。
【0018】
エンジン2は、単数または複数の気筒を備え、前記気筒内部に噴射される燃料を燃焼させることで発生するエネルギーを回転動力に変換するものである。エンジン2は、吸気経路3を介して供給される外気と、燃料噴射弁4・4・4・4から供給される燃料とを気筒5・5・5・5内において混合燃焼させる。この際に発生する排気は、排気経路6を介して排出される。なお、本実施形態に係るエンジン2は直列四気筒としたが、これに限定されない。
【0019】
また、燃料噴射弁4は、コモンレールからの高圧の燃料を燃料噴射用アクチュエータ7としてのソレノイドにより弁体を開閉して気筒5へ噴射する際の噴射時期、噴射圧、噴射回数等を変更することによって、エンジン2の回転数や負荷等の変更や、排気ガスの温度の変更や、排気ガスへの未燃燃料の供給を行うことができるように構成される。但し、ラック式の電子ガバナ等によっても実現可能である。
【0020】
パティキュレートフィルタ10は、エンジン2の排気経路6に配設され、排気中のパティキュレート(炭素質からなる煤、高沸点炭化水素成分(SOF)等)を除去するものである。パティキュレートフィルタ10は、具体的にはセラミック等の多孔質壁からなるハニカム構造であり、排気は必ず前記多孔質壁を透過した後に排出されるように構成される。パティキュレートフィルタ10は、排気が前記多孔質壁を通過する際に、排気中のパティキュレートを捕集する。その結果、排気からパティキュレートが除去される。
【0021】
酸化触媒11は、排気ガス中の一酸化炭素と炭化水素と窒素化合物を酸化するものである。酸化触媒11は、排気経路6のパティキュレートフィルタ10よりも上流側に配設され、パティキュレートの酸化除去を促進させる。
【0022】
吸気絞り弁12は、エンジン2の吸気経路3に配設され、吸気絞り用アクチュエータ15の駆動により開度を変更可能に構成される。吸気絞り弁12は開度を変更することにより、エンジン2の吸気経路3内を流通する吸気の流通量を調整し、その結果として排気ガスの温度や速度を変更することができる。吸気絞り弁12には、吸気絞りセンサ14が接続される。吸気絞りセンサ14は、吸気絞り弁12の開度を検出するものである。なお、吸気絞り弁12は吸気量調整手段の一例であり、これに限定されず、吸気経路3内を流通する吸気の流通量を調整することができるものであればよい。また、吸気絞り弁12の開度とは、吸気量調整手段の動作のことであり、本実施形態においては、吸気経路3の開閉度合いのことを指すものである。
【0023】
排気絞り弁13は、エンジン2の排気経路6で酸化触媒11よりも上流側に配設され、排気絞り用アクチュエータ25の駆動により開度を変更可能に構成される。排気絞り弁13は開度を変更することにより、エンジン2の排気経路6内を流通する排気(排気ガス)の流通量を調整し、排気ガスの圧力や速度を変更することができる。排気絞り弁13には、排気絞りセンサ24が接続される。排気絞りセンサ24は、排気絞り弁13の開度を検出するものである。なお、排気絞り弁13は排気量調整手段の一例であり、これに限定されず、排気経路6内を流通する排気ガスの流通量を調整することができるものであればよい。また、排気絞り弁13の開度とは、排気量調整手段の動作のことであり、本実施形態においては、排気経路6の開閉度合いのことを指すものである。
【0024】
堆積量検出センサ33は、パティキュレートフィルタ10の入口側と出口側との差圧や、パティキュレートフィルタ10を通過する排気ガスの流通量から、該パティキュレートフィルタ10に捕集されたパティキュレートの堆積量を検出するものである。
【0025】
温度センサ21は、パティキュレートフィルタ10の出口側(下流側)に配設され、パティキュレートフィルタ10を通過した排気ガスの温度を検出するものである。なお、温度センサ21は、排気温度検出手段の一例であり、これに限定されず、排気ガスの温度を検出することができるものであればよい。
【0026】
エンジン回転数検出センサ22は、エンジン2の図示せぬクランク軸の回転数を検出するものである。
【0027】
エンジン負荷検出センサ23は、エンジン2の図示せぬクランク軸の軸トルクを検出するものである。但し、エンジン負荷は、設定回転数と実回転数から求めたり、設定燃料噴射量に対する実燃料噴射量等から求めたりすることも可能である。
【0028】
次に、ECU30について説明する。
【0029】
ECU30は制御手段の一例であり、演算処理を実行する中央演算処理装置(CPU)等の演算部や、記憶部70(RAMやROM)やインターフェース等からなり、種々のセンサ等からの信号を入力可能とされる。そして、燃料噴射用アクチュエータ7へ出力する制御プログラム等がROMに格納される。
【0030】
記憶部70には、吸気絞り弁12および排気絞り弁13の開度と、エンジン2の回転数および負荷率から導き出されるエンジン状態と、の関係マップ(吸気絞り弁マップおよび排気絞り弁マップ)が記憶されている。そして、吸気絞り弁12および排気絞り弁13の開度は、エンジン2の回転数および負荷率から導き出されるエンジン状態から、前記関係マップである吸気絞り弁マップおよび排気絞り弁マップをそれぞれ参照して前記演算部により演算されるように構成される。
【0031】
ECU30は、図8に示すように、燃料噴射用アクチュエータ7、エンジン回転数検出センサ22、エンジン負荷検出センサ23、吸気絞りセンサ14、吸気絞り用アクチュエータ15、排気絞りセンサ24、排気絞り用アクチュエータ25、堆積量検出センサ33、温度センサ21等に接続される。
【0032】
また、ECU30は、前記エンジン2のエンジン回転数検出センサ22およびエンジン負荷検出センサ23が検出した検出結果に基づいて、エンジン2の運転状態が定常状態であるか過渡状態であるかを判定するものである。すなわち、ECU30は、本発明の一実施形態においてエンジン2の運転状態判定手段を有するものである。なお、エンジン2の運転状態判定手段は、これに限定されるものではなく、エンジン2の運転状態を定常状態であるか過渡状態であるかを判定することができるものであればよい。
【0033】
また、ECU30は、パティキュレートフィルタ10の再生を行う、すなわちパティキュレートフィルタ10に捕集されて堆積した、パティキュレートを燃焼除去するための再生手段を備え、エンジン2の排気浄化システムの制御を行う機能を有するものである。なお、パティキュレートフィルタ10の再生手段は、これに限定されるものではなく、パティキュレートフィルタ10に捕集されて堆積したパティキュレートを燃焼除去することができるものであればよい。
【0034】
そして、ECU30は、パティキュレートフィルタ10の再生を行う際に、各アクチュエータ7・15・25を駆動制御することができるように構成される。
【0035】
具体的には、ECU30は、燃料噴射用アクチュエータ7を駆動制御して燃料噴射弁4の噴射時期、噴射回数、噴射圧を変更することが可能であるように構成される。なお、電子ガバナの場合には、ラックを移動させる速度を変更することができる。
【0036】
また、ECU30は、吸気絞り用アクチュエータ15を駆動制御して吸気絞り弁12の開度を変更することが可能であり、且つ開度の変更速度、つまり、吸気絞り弁12の弁体を構成するバタフライ弁の回動速度を自在に変更することが可能であるように構成される。
【0037】
また、ECU30は、排気絞り用アクチュエータ25を駆動制御して排気絞り弁13の開度を変更することが可能であり、且つ開度の変更速度、つまり、排気絞り弁13の弁体を構成するバタフライ弁の回動速度を自在に変更することが可能であるように構成される。
【0038】
本発明の一実施形態に係るエンジン2の排気浄化システム1は、排気ガスの温度を従来は600℃程度にまで昇温させていたのを、従来よりも低い400℃程度まで昇温させることによって、パティキュレートフィルタ10の再生を実行可能とするものである。この再生実行時には、燃料噴射弁4によるポスト噴射を行わず、吸気絞り弁12および排気絞り弁13の開度の変更や、この開度の変更に加えて行われる燃料噴射弁4の噴射時期、噴射回数、噴射圧の変更により、エンジン2から排出される排気ガスを400℃程度にまで昇温させる。
【0039】
これによって、パティキュレートフィルタ10の再生を行うのに、燃料噴射弁4のポスト噴射を行う必要がない。よって、本発明の一実施形態に係るエンジン2の排気浄化システム1を備えたエンジン搭載機器、本実施形態においては作業車両を、走行させている場合であっても、パティキュレートフィルタ10の再生を行うために、一時的に停止させる必要がない。すなわち、パティキュレートフィルタ10の再生を行っている間であっても、作業車両を走行させるなどしてこれを用いた作業を行うことができる。なお、エンジン搭載機器は、これに限定されるものではなく、エンジン発電機や船舶などであってもよい。
【0040】
以下に、かかる効果を奏する前記パティキュレートフィルタ10の再生制御について、フローチャートを用いて説明する。なお、同一の処理を行うステップに関しては、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0041】
まず、図2に示すように、パティキュレートフィルタ10の出口側(下流側)における排気ガス温度Tdpfが、排気ガス温度検出センサ21により検出され(S10)、その排気ガス温度Tdpfが第一設定温度よりも高温であるか否かがECU30により判定される(S11)。
【0042】
以下、図3を用いて、排気ガス温度Tdpfが第一設定温度よりも高温である場合について説明する。
【0043】
ECU30により排気ガス温度Tdpfに応じて、排気絞り弁13の目標開度が設定され(S12)、後述する適用フィルタによる処理を施して、排気絞り弁13を目標開度へ変更する際の弁体の変更速度が設定される(S13)。そして、かかる設定に応じてECU30による開度指示がなされ(S14)、排気絞り弁13は、ECU30による排気絞り用アクチュエータ25の駆動制御によって、その設定に応じた開度の変更を開始する。
【0044】
また、排気絞り弁13の開度と同様に、燃料噴射弁4の噴射時期、噴射回数、噴射圧について、ECU30により目標噴射時期、目標噴射回数、目標噴射圧の少なくともいずれか1つが設定される構成であって、後述する適用フィルタ(噴射時期フィルタ、噴射回数フィルタ、噴射圧フィルタ)による処理を施して、前記設定された目標噴射時期、目標噴射回数、目標噴射圧への変更速度が設定される構成とすることができる。かかる設定に応じてECU30による燃料噴射の変更指示がなされ、燃料噴射弁4は、ECU30による燃料噴射用アクチュエータ7の駆動制御によって、その設定に応じた目標噴射時期、目標噴射回数、目標噴射圧に現時点の噴射時期、噴射回数、噴射圧を変更する。
【0045】
この構成においては、まずECU30により吸気絞り弁タイマーフラグ=0であるか否かが判定される(S15)。なお、吸気絞り弁タイマーフラグとは、吸気絞り弁12の目標開度の設定からその目標開度への開度の変更、つまりステップ16〜ステップ18が、所定時間の経過後に実行されるためのフラグである。
【0046】
そして、吸気絞り弁タイマーフラグ=0である場合、つまり、吸気絞り弁12を所定時間後に作動させるフラグが立っていない(信号がOFFである)場合には、ECU30により吸気絞り弁12の目標開度が設定され(S16)、後述する適用フィルタによる処理を施して吸気絞り弁12を目標開度へ変更する際の弁体の変更速度が設定される(S17)。そして、かかる設定に応じてECU30による開度指示がなされ(S18)、吸気絞り弁12は、ECU30による吸気絞り用アクチュエータ15の駆動制御によって、その設定に応じた開度の変更を開始する。なお、この場合において排気絞り弁13および吸気絞り弁12は、それぞれの開度の変更を同時に開始するものである。
【0047】
一方、吸気絞り弁タイマーフラグ=0ではない(吸気絞り弁タイマーフラグ=1である)場合、つまり、吸気絞り弁12を所定時間後に作動させるフラグが立っている(信号がONである)場合、ECU30により吸気絞り弁タイマーのカウントが開始され、所定時間を経過したならば(S19)、吸気絞り弁タイマーフラグ=0となり(S20)、ECU30により吸気絞り弁12の目標開度が設定されることになる(S16)。
【0048】
また、ECU30による吸気絞り弁タイマーのカウントによらずとも、パティキュレートフィルタ10の出口側における排気ガス温度Tdpfが第二設定温度に到達すれば(S21)、ECU30により吸気絞り弁12の目標開度が設定されることになる(S16)。
【0049】
以下、図5を用いて、前記目標開度の設定について説明する。
【0050】
エンジン2のエンジン回転数検出センサ22は、エンジン2の回転数を一定間隔毎に検出する(S60)。そして検出された検出結果をフィルタにかける(S61)。また、エンジン2のエンジン負荷検出センサ23は、エンジン2の負荷を一定間隔毎、すなわち負荷率を検出する(S62)。そして検出された検出結果をフィルタにかける(S63)。
【0051】
そして、ECU30により前記回転数、および前記負荷率のフィルタを通過した値によりエンジン状態が判定される(S64)。
【0052】
そして、判定された前記エンジン状態に応じて、吸気絞り弁12においては、前記関係マップである吸気絞り弁マップを参照して(S65)、前記吸気絞り弁12の目標開度が設定される(S66)。一方、排気絞り弁13においては、前記関係マップである排気絞り弁マップを参照して(S67)、前記排気絞り弁13の目標開度が設定される(S68)。
【0053】
なお、フィルタとは、所定の範囲または所定の値以上、または、所定の値以下の信号を通過させるものであり、各センサ22・23により検出される値が所望の範囲または所望の値以内に入っているかを判断できる。
【0054】
また、前述したように燃料噴射弁4においても、図5に示したような吸気絞り弁12および排気絞り弁13の目標開度の設定と同様の手順にて、燃料噴射弁4の目標噴射時期、目標噴射回数、目標噴射圧の少なくともいずれか1つが設定される構成とすることができる。以下、燃料噴射弁4の前記目標噴射時期、目標噴射回数、目標噴射圧の設定について説明する。
【0055】
前記ECU30の記憶部70には、燃料噴射弁4の噴射時期、噴射回数、噴射圧と、エンジン2の回転数および負荷率から導き出されるエンジン状態と、の関係マップ(噴射時期マップ、噴射回数マップ、噴射圧マップ)が記憶されている。そして、燃料噴射弁4の噴射時期、噴射回数、噴射圧は、エンジン2の回転数および負荷率から導き出されるエンジン状態から、前記関係マップである噴射時期マップ、噴射回数マップ、噴射圧マップをそれぞれ参照して前記演算部により演算されるように構成される。
【0056】
具体的には、図6に示すように、ECU30により前記回転数および前記負荷率のフィルタを通過した値によりエンジン状態が判定された(S64)あと、判定された前記エンジン状態に応じて、燃料噴射弁4の噴射時期においては、前記関係マップである噴射時期マップを参照して(S69)、燃料噴射弁4の目標噴射時期が設定される(S70)。また、燃料噴射弁4の噴射回数においては、前記関係マップである噴射回数マップを参照して(S71)、燃料噴射弁4の目標噴射回数が設定される(S72)。また、燃料噴射弁4の噴射圧においては、前記関係マップである噴射圧マップを参照して(S73)、燃料噴射弁4の目標噴射圧が設定される(S74)。
【0057】
以下、図7を用いて、前記適用フィルタについて説明する。
【0058】
適用フィルタは、検出したエンジン2の回転数および負荷の値をそれぞれ通過させることにより、そこから所定以上(または以下)の値を除くものである。ECU30は、その除かれた後の値からエンジン2の運転状態を定常状態であるか過渡状態であるかを判定して、その判定結果から排気絞り弁13および吸気絞り弁12が開度を変更する際の変更速度を設定するものである。また、ECU30は、前記定常状態であるか過渡状態であるかの判定結果から、燃料噴射弁4の噴射時期、噴射回数、噴射圧を変更する際の変更速度を設定する構成とすることができる。
【0059】
図7に示すように、定常状態であるか過渡状態であるかのエンジン2の運転状態は、運転状態判定手段(ECU30)により、エンジン2が加速状態のとき立てられる(1となる)加速フラグ(S50)と、負荷の投入時に立てられる(1となる)負荷投入フラグ(S51)から判定することもできる。なお、本実施形態においては、加速フラグは、エンジン回転数が設定加速度以上となったときに立てられ(信号がONになり)、負荷投入フラグは負荷が設定負荷以上となったときに立てられる(信号がONになる)。
【0060】
そして、エンジン2の運転状態検出手段であるECU30により、加速フラグおよび負荷投入フラグの検知結果に基づいてエンジン2の運転状態が過渡状態であるか否かが判定される(S52)。
【0061】
そして、エンジン2の運転状態が過渡状態であると判定された場合には、検知信号は過渡用フィルタを通過させるようにし(S53)、過渡状態用の適用フィルタが適用される(S55)。また、エンジン2の運転状態が過渡状態でない(定常状態である)と判定された場合には、検知信号は定常用フィルタを通過させるようにして(S54)、定常状態用の適用フィルタが適用される(S55)。
【0062】
次に、図4を用いて、排気ガス温度Tdpfが第一設定温度以下である場合について説明する。
【0063】
この場合、まずECU30により排気絞り弁13の目標開度が設定され(S30)、前記適用フィルタによる処理を施して排気絞り弁13を目標開度へ変更する際の弁体の変更速度が設定される(S31)。そして、かかる設定に応じてECU30による開度指示がなされ(S32)、排気絞り弁13は、ECU30による排気絞り用アクチュエータ25の駆動制御によって、その設定に応じた開度の変更を開始する。
【0064】
また、排気絞り弁13の開度と同様に燃料噴射弁4の噴射時期、噴射回数、噴射圧について、ECU30により目標噴射時期、目標噴射回数、目標噴射圧の少なくともいずれか1つが設定される構成であって、前記適用フィルタである噴射時期フィルタ、噴射回数フィルタ、噴射圧フィルタによる処理を施して、前記設定された目標噴射時期、目標噴射回数、目標噴射圧への変更速度が設定される構成とすることができる。かかる設定に応じてECU30による燃料噴射の変更指示がなされ、燃料噴射弁4は、ECU30による燃料噴射用アクチュエータ7の駆動制御によって、その設定に応じた目標噴射時期、目標噴射回数、目標噴射圧に現時点の噴射時期、噴射回数、噴射圧を変更する。上記の場合、排気ガス温度が低いため、エンジン自体が冷えた状態であり、酸化触媒11が活性する温度にも達していないため、排気絞り弁13は全開とし、燃料噴射弁4は完全燃焼するように設定される。
【0065】
次に、吸気絞り弁フラグ=1であるか否かがECU30により判定される(S33)。
【0066】
まず、吸気絞り弁フラグは後述するように、エンジン始動後の所定時間経過後に立てられる(1とされる)ものである。エンジン始動時や低温時においては、吸気絞り弁フラグは1ではなく、0としており(吸気絞り弁フラグ=0)、この場合、まず吸気絞り弁タイマーフラグ=1であるか否かがECU30により判定される(S34)。
【0067】
吸気絞り弁タイマーフラグ=1ではない場合、ECU30により吸気絞り弁タイマーのカウント値がリセットされ(S41)、吸気絞り弁タイマーフラグを1として(S42)、吸気絞り弁タイマーのカウントを開始する(S43)。そして、吸気絞り弁タイマーのカウントが所定時間を経過したならば(S35)、吸気絞り弁タイマーフラグが0とされ(S36)、吸気絞り弁フラグを1とする(S37)。
【0068】
また、ステップ34において、吸気絞り弁タイマーフラグが1である場合、パティキュレートフィルタ10の出口側の排気ガス温度Tdpfが第二設定温度に到達すれば(S44)、吸気絞り弁フラグを1とする(S37)。
【0069】
そして、吸気絞り弁フラグが1となると(S37)、ECU30により吸気絞り弁12の目標開度が設定され(S38)、適用フィルタによる処理を施して吸気絞り弁12を目標開度へ変更する際の弁体の変更速度が設定される(S39)。そして、かかる設定に応じてECU30による開度指示がなされ(S40)、吸気絞り弁12は、ECU30による吸気絞り用アクチュエータ15の駆動制御によって、その設定に応じた開度の変更を開始する。
【0070】
また、ステップ33において、吸気絞り弁フラグが1である場合も、ECU30により吸気絞り弁12の目標開度が設定され(S38)、前記同様に適用フィルタによる処理を施して(S39)、開度指示がなされる(S40)。吸気絞り弁12は、ECU30による吸気絞り用アクチュエータ15の駆動制御によって、その設定に応じた開度の変更を開始する。
【0071】
以上のような制御の構成により、パティキュレートフィルタ10の再生制御が開始される。
【0072】
そして、パティキュレートフィルタ10の再生を行っている間の吸気絞り弁12および排気絞り弁13は、前記適用フィルタによる処理を施して弁体の変更速度が設定される。また、燃料噴射弁4の噴射時期、噴射回数、噴射圧についても、前記適用フィルタ(噴射時期フィルタ、噴射回数フィルタ、噴射圧フィルタ)による処理を施して変更速度が設定される構成とすることができる。
【0073】
また、パティキュレートフィルタ10の再生処理は、吸気絞り弁12または排気絞り弁13の少なくともいずれか一方が開度の変更を開始してから所定時間経過後、または堆積量検出センサ33により検出されるパティキュレートフィルタ10に捕集されたパティキュレートの堆積量が所定量より減少後に、実行を終了する。
【0074】
再生処理の実行の終了時には、吸気絞り弁12および排気絞り弁13の開度を全開するように構成される。この場合、吸気絞り弁12および排気絞り弁13は、適用フィルタによる処理を施して開度を全開する際の弁体の変更速度が設定される。また、燃料噴射弁4の噴射時期、噴射回数、噴射圧についても、前記適用フィルタ(噴射時期フィルタ、噴射回数フィルタ、噴射圧フィルタ)による処理を施して変更速度が設定される構成とすることができる。
【0075】
以上のように、本発明の一実施形態に係るエンジン2の排気浄化システムは、エンジン2の排気経路6の途中に配置され、パティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタ10と、エンジン2の吸気経路3に配置される吸気絞り弁(吸気量調整手段)12と、エンジン2の排気経路6に配置される排気絞り弁(排気量調整手段)13と、吸気絞り弁12および排気絞り弁13を制御するECU(制御手段)30と、を有するエンジン2の排気浄化システム1であって、パティキュレートフィルタ10に捕集されたパティキュレートを燃焼させて除去するための再生手段と、エンジン2の運転状態が定常状態であるか過渡状態であるかを判定する、該エンジン2の運転状態判定手段と、吸気絞り弁12および排気絞り弁13の開度と、エンジン2の回転数および負荷率と、の関係マップが記憶された記憶部(記憶手段)70と、を備え、ECU30は、記憶部70の関係マップを参照して吸気絞り弁12および/または排気絞り弁13の少なくとも一方の目標開度を設定するとともに、エンジン2の前記運転状態判定手段の判定結果に応じて前記目標開度への変更速度を設定し、吸気絞り弁12および/または排気絞り弁13を、その設定した変更速度で前記目標開度をなすように制御するものである。
【0076】
このように構成することによって、エンジン2で燃料噴射弁4のポスト噴射を行わずにパティキュレートフィルタ10の再生を適切に行うことが可能となり、エンジン搭載機器である作業車両の動作を停止させずに済む。したがって、パティキュレートフィルタ10の再生を行う際、作業車両を用いた作業を継続して行うことができる。また、その場合に吸気絞り弁12および排気絞り弁13の開度の変更する際の弁体の変更速度を適切に設定することができるので、パティキュレートフィルタ10の再生にともなう排気ガスの色の変化や臭いの発生、または騒音の発生等を軽減することができ、操縦者の操作環境の悪化を防ぐことができる。
【0077】
また、本発明の一実施形態に係るエンジン2の排気浄化システム1は、記憶部70には、エンジン2の燃料噴射弁4の噴射時期、噴射回数、噴射圧と、エンジン2の回転数および負荷率と、の燃料噴射用の関係マップが記憶され、ECU30は、燃料噴射用の関係マップを参照して燃料噴射弁4の目標噴射時期、目標噴射回数、目標噴射圧の少なくともいずれか1つを設定するとともに、エンジン2の前記運転状態判定手段の判定結果に応じて前記目標噴射時期、前記目標噴射回数、前記目標噴射圧への変更速度を設定し、燃料噴射弁4を、その設定した変更速度で前記目標噴射時期、目標噴射回数、目標噴射圧の少なくともいずれか1つで噴射が行われるように制御するものである。
【0078】
このように構成することによって、エンジン2で燃料噴射弁4のポスト噴射を行わずにパティキュレートフィルタ10の再生をさらに適切に行うことが可能となり、エンジン搭載機器である作業車両の動作を停止させずに済む。したがって、パティキュレートフィルタ10の再生を行う際、作業車両を用いた作業を継続して行うことができる。また、その場合に燃料噴射弁4の噴射時期、噴射回数、噴射時期を変更する際の変更速度を適切に設定することができるので、パティキュレートフィルタ10の再生にともなう排気ガスの色の変化や臭いの発生、または騒音の発生等を軽減することができ、操縦者の操作環境の悪化を防ぐことができる。
【0079】
また、本発明の一実施形態に係るエンジン2の排気浄化システム1は、エンジン2の排気ガス温度を検出する温度センサ21を備え、ECU30は、温度センサ21により検出された排気ガス温度に応じて、吸気絞り弁12または排気絞り弁13の一方を作動させ、吸気絞り弁12または排気絞り弁13の一方の動作から設定時間の経過後、または排気ガス温度が設定温度に到達後に、吸気絞り弁12または排気絞り弁13の他方を作動させるものである。
【0080】
このように構成することによって、エンジン2で燃料噴射弁4のポスト噴射を行わずにパティキュレートフィルタ10の再生をさらに適切に行うことが可能となり、エンジン搭載機器である作業車両の動作を停止させずに済む。したがって、パティキュレートフィルタ10の再生を行う際、作業車両を用いた作業を継続して行うことができる。また、パティキュレートフィルタ10の再生にともなう排気ガスの色の変化や臭いの発生、または騒音の発生等を軽減することができ、操縦者の操作環境の悪化を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0081】
1 排気浄化システム
2 エンジン
3 吸気経路
4 燃料噴射弁
5 気筒
6 排気経路
10 パティキュレートフィルタ
11 酸化触媒
12 吸気絞り弁
13 排気絞り弁
30 ECU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8