(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ブーム角度調整手段により角度調整された前記ブームの前記ブーム支持アームに対する傾斜状態を初期位置として設定し、この初期位置から回動した前記ブームに対して反対方向の回動力を付与して初期位置に復帰させるブーム位置復帰手段を有する請求項1または請求項2に記載のブームスプレーヤ。
前記ブーム角度調整手段により角度調整された前記ブームの前記ブーム支持アームに対する傾斜状態を固定するブーム固定手段を有する請求項1から請求項3のいずれかに記載のブームスプレーヤ。
互いに交差させて接触しつつ軸回転可能な一対のブームガイドローラを前記基部フレームと前記ブームとの間に設け、一方を前記基部フレームに固定するとともに他方を前記ブームに固定し、前記基部フレームに対する前記ブームの揺振または回動の動作を案内する請求項1から請求項4のいずれかに記載のブームスプレーヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、防除ブームの左右方向の傾斜度を計測してからアクチュエータを作動させるためタイムラグが生じるおそがある。そのようなタイムラグを短くするためには、高精度な検出手段が必要であり、高性能の制御プログラムも必要であるところ、開発コストの問題や圃場を走行する振動にも強い耐衝撃性を高める装置が必要になるという問題がある。また、傾斜地においては、制御手段によってブームが水平に保たれるため、傾斜の山側ではブームの先端が圃場に接近し、ブームが作物に接触して傷つけたり、ブームが圃場と接触して破損するおそれもある。よって、特許文献1のようなブーム水平制御装置は、傾斜面のある圃場では使用できない。
【0008】
また、特許文献2に記載された発明においては、台形リンクを用いる場合、ブームが揺れると、節の長さが短い方のブーム側が高くなって圃場との水平を保てないという問題がある。よって、特許文献2のような台形リンクを用いたブームスプレーヤは、傾斜面で、かつブームが常に揺れるような凹凸が連続している圃場では使用できない。
【0009】
また、ブームが圃場との平行を保てなくなる要因は、走行路面の小石やぬかるみ等による外乱のみならず、圃場の傾斜が変化する場合、あるいは方向転換する場合の遠心力によるもの等、様々である。さらに、上記外乱も小石等の場合は揺れの周期が短く、ぬかるみ等の場合は揺れの周期が長くなり、それらの周期は走行装置の速度によっても変化する。
【0010】
よって、圃場の様々な状況に応じてブームの傾斜を適切に調整して薬剤や肥料を散布できるブームスプレーヤが望まれていた。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、圃場の走行路面の状態や作業状況に応じてブームの角度調整手段を適宜選択し、前記ブームの傾斜角を適切に調整可能なブームスプレーヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るブームスプレーヤは、圃場に薬剤を散布するブームスプレーヤであって、前記圃場を走行する走行装置に固定される基部フレームと、前記薬剤を散布する複数の散布ノズルを備える薬剤散布手段と、前記各散布ノズルを長手方向に配置しているブームと、上端側に設けた上支点において前記基部フレームに揺振自在に支持されているとともに、下端側に設けた下支点において前記ブームを重心近傍で回動自在に支持しているブーム支持アームと、前記ブーム支持アームに対する前記ブームの傾斜角度を任意に調整可能なブーム角度調整手段とを有する。
【0013】
また、本発明の一態様として、前記上支点において、前記ブーム支持アームを前記基部フレームに対して所定の角度で固定するアーム固定手段を有してもよい。
【0014】
さらに、本発明の一態様として、前記ブーム角度調整手段により角度調整された前記ブームの前記ブーム支持アームに対する傾斜状態を初期位置として設定し、この初期位置から回動した前記ブームに対して反対方向の回動力を付与して初期位置に復帰させるブーム位置復帰手段を有してもよい。
【0015】
また、本発明の一態様として、前記ブーム角度調整手段により角度調整された前記ブームの前記ブーム支持アームに対する傾斜状態を固定するブーム固定手段を有してもよい。
【0016】
さらに、本発明の一態様として、互いに交差させて接触しつつ軸回転可能な一対のブームガイドローラを前記基部フレームと前記ブームとの間に設け、一方を前記基部フレームに固定するとともに他方を前記ブームに固定し、前記基部フレームに対する前記ブームの揺振または回動の動作を案内するようにしてもよい。
【0017】
また、本発明の一態様として、互いに面接触可能な一対のブーム支持板を前記基部フレームと前記ブームとの間に設け、前記ブームが前後方向に傾斜しないように支えてもよい。
【0018】
さらに、本発明の一態様として、前記上支点において前記ブーム支持アームを前記基部フレームに固定し、かつ、前記下支点において前記ブームを前記ブーム支持アームに対して固定する第1モードと、前記上支点において前記ブーム支持アームを揺振自在に支持し、かつ、前記下支点において前記ブームを前記ブーム支持アームに対して固定する第2モードと、前記上支点において前記ブーム支持アームを前記基部フレームに固定し、かつ、前記下支点において前記ブームを回動自在に支持する第3モードと、前記上支点において前記ブーム支持アームを揺動自在に支持し、かつ、前記下支点において前記ブームを回動自在に支持する第4モードとのいずれかのモードに切り換えるモード制御手段を有してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、圃場の走行路面の状態や作業状況に応じてブームの角度調整手段を適宜選択し、前記ブームの傾斜角を適切に調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るブームスプレーヤの一実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態のブームスプレーヤ1を示す背面図である。また、
図2は、本実施形態のブームスプレーヤ1の構成部である、主に、基部フレーム2、ブーム支持アーム5およびセンターブーム41を示す組み立て斜視図である。
【0022】
図1および
図2に示すように、本実施形態のブームスプレーヤ1は、主として、走行装置aに固定される基部フレーム2と、複数の散布ノズル31から薬剤を散布する薬剤散布手段3と、各散布ノズル31を長手方向に配置しているブーム4と、基部フレーム2に揺振自在に支持されているとともにブーム4を重心近傍で回動自在に支持しているブーム支持アーム5と、ブーム支持アーム5に対するブーム4の傾斜角度を任意に調整可能にするブーム角度調整手段6と、ブーム4の傾斜状態を固定するブーム固定手段7と、ブーム支持アーム5を基部フレーム2に対して所定の角度で固定するアーム固定手段8と、ブーム4に対して反対方向の回動力を付与して初期位置に復帰させるブーム位置復帰手段9と、基部フレーム2に対するブーム4の揺振または回動の動作を案内させるブームガイドローラ10と、ブーム4が前後方向に傾斜しないように支えるブーム支持板11と、各手段を適宜制御することで第1モードから第4モードのいずれかのモードに切り換えるモード制御手段(図示しない)とを有している。
【0023】
なお、本実施形態で示すブームスプレーヤ1は、走行装置aとは別体に構成された例を挙げており、この走行装置aとは基部フレーム2を介して固定されているが、この構成に限る必要はない。走行装置aを含むブームスプレーヤ1として構成してもよい。また、走行装置aは、トラクタ等に牽引させる牽引式のものやエンジン等の駆動機関を備えた自走式のもの等から適宜選択してよい。本実施形態における走行装置aは、
図3に示すように牽引式のものである。
【0024】
以下、本実施形態のブームスプレーヤ1の各構成について詳細に説明する。
【0025】
基部フレーム2は、ブーム4を走行装置aに固定するための基部となるものであり、折り曲げられた金属板や金属管等により製造されるフレーム構造体からなる。本実施形態における基部フレーム2は、
図2に示すように、3本の柱状フレーム材21と、それら柱状フレーム材21を略等間隔平行に固定する上下2つの梁状フレーム材22とを有している。また、左右の柱状フレーム材21の走行装置a側には、油圧制御により上下に伸縮可能なリフト用油圧シリンダー23が設けられている。よって、基部フレーム2は、リフト用油圧シリンダー23によってブーム4の高さを調整可能になっている。
【0026】
また、上記3本の柱状フレーム材21のうち中央の柱状フレーム材21の上部には、ブーム支持アーム5を揺振自在に支持するためのアーム支持軸24が設けられている。
【0027】
薬剤散布手段3は、薬剤を圃場に散布するためのものであり、薬剤を貯留するための薬剤貯留タンク(図示しない)と、前記薬剤を散布するための複数の散布ノズル31と、前記薬剤貯留タンクの薬剤を前記各散布ノズルに供給するための供給ポンプ(図示しない)と、この供給ポンプと前記各散布ノズル31とを繋ぐ薬剤供給管32とを有している。
【0028】
また、本実施形態における貯留タンクおよび供給ポンプは走行装置aに搭載されており、各散布ノズル3はブーム4の下辺に沿って略直線状に配列されている。
【0029】
なお、貯留タンクおよび供給ポンプの設置箇所は、走行装置aに限定されるものではなく、基部フレーム2に設けてもよい。また、薬剤散布手段3の構成は、特に限定されるものではなく、適宜選択変更してよい。例えば、薬剤が固形肥料等の場合は、固形肥料を貯留する貯留タンクを高い位置に設置し、供給ポンプを使用せずに薬剤を自重により供給するような構成を採用してもよい。
【0030】
次に、ブーム4は、複数の散布ノズル31を配置して圃場を走行することにより薬剤を広範囲に散布するためのものであり、本実施形態では、
図1に示すように、走行装置aの背部に設けられ、左右方向に延出された長尺状の金属板や金属管等から構成されたフレーム構造体により構成されている。前記ブーム4は、各散布ノズル31や薬剤供給管32等を含むブーム全体の重心近傍となる位置において、ブーム支持軸45を介してブーム支持アーム5に回転自在に支持されている。
【0031】
また、本実施形態におけるブーム4は、走行装置aの真後ろに配置されるセンターブーム41と、この左右に延出される一対のサイドブーム42,42とから構成されている。また、そのサイドブーム42とセンターブーム41との接続部分には、
図3に示すように、ブーム4を前方の走行装置a側に折り畳むことを可能としたブーム折り畳み機構43が設けられている。
図2に示すように、本実施形態においてブーム折り畳み機構43は、センターブーム41の左右に設けられた軸回転自在なヒンジ431と、そのヒンジ431とセンターブーム41とに接続された伸縮自在なブーム折り畳み用油圧シリンダー432とを有している。
【0032】
さらに、
図3に示すように、前記サイドブーム42の長手方向の略中央部には、その先端側をセンターブーム41側に折り畳むことを可能にしたサイドブーム折り畳み機構44が設けられている。このサイドブーム折り畳み機構44はその先端側を持ち上げるようにセンターブーム41側に折り畳むヒンジ441と、そのヒンジ441と前記サイドブーム44とに接続された伸縮自在なサイドブーム用油圧シリンダー442とを有している。
【0033】
なお、本実施形態においては、サイドブーム44を折り畳むのにブーム折り畳み機構43およびサイドブーム折り畳み機構44において油圧シリンダーを用いているが、特に限定されるものではなく、モーター等のアクチュエータを用いてもよく、手動で行ってもよい。
【0034】
次に、ブーム支持アーム5について説明する。
図2および
図4に示すように、本実施形態のブーム支持アーム5は、ブーム4を振り子動作を可能に支持するためのものであり、上端側に上支点51が設けられ、下端側に下支点52が設けられている。前記上支点51ではアーム支持軸24を介して基部フレーム2に揺振自在に軸支されている。また、下支点52ではブーム支持軸45を介してブーム4を回動自在に軸支している。さらに、ブーム支持アーム5の上支点51と下支点52との間には、左右一対のコイルバネ53,53が配置されており、緩衝材として機能するようになっている。以上の構成により、前記ブーム4は当該ブーム支持アーム5を介して振り子のように揺動可能になっている。
【0035】
また、ブーム支持アーム5には、略L字状の取付アーム54が別途、連結されている。この取付アーム54の上端部は前記上支点51と前記下支点52を結ぶ上方延長線上に配置されている。そして、この取付アーム54には、ブーム角度調整手段6、ブーム固定手段7およびブーム位置復帰手段9がそれぞれ取り付けられている。具体的には、
図2、
図4、
図7および
図8に示すように、前記取付アーム54の上端部にはブーム位置復帰手段9が取り付けられ、その上下中央部にはブーム角度調整手段6およびブーム固定手段7が取り付けられている。
【0036】
また、ブーム支持アーム5の下端部には、アーム固定手段8が取り付けられている。なお、アーム固定手段8の詳細については次のブーム角度調整手段6およびブーム固定手段7の説明の後に説明する。
【0037】
ブーム角度調整手段6は、ブーム支持アーム5に対するブーム4の傾斜角度を任意に調整するものである。本実施形態におけるブーム角度調整手段6は、伸縮自在な角度調整用油圧シリンダー61により構成されており、その角度調整用油圧シリンダー61のシリンダ本体62をブーム4に固定しているとともに、ピストンアーム63を前記取付アーム54の上下中央部に固定している。
【0038】
また、本実施形態におけるブーム角度調整手段6は、ブーム固定手段7としても機能する。すなわち、前記角度調整用油圧シリンダー61は、任意の長さに伸縮することでブーム4の傾斜角を調整するとともに、その状態を維持することでブーム4が回動しないように固定できるようになっている。また、換言すれば、角度調整用油圧シリンダー61を常に伸縮自在にすればブーム4を回動可能に維持することができる。よって、角度調整用油圧シリンダー61は、ピストンアーム63を伸縮自在にするか固定するかを選択的に機能させられるようになっている。
【0039】
なお、ブーム角度調整手段6およびブーム固定手段7に用いられる機構は、油圧シリンダーに限定されるものではなく、空気圧シリンダー、ステッピングモータやスライドモーター等の角度を調整できる機能を有するものから適宜選択することができる。また、ブーム固定手段7は、油圧シリンダーの他、例えばピン等を差し込むことにより固定できる構成にしてもよい。
【0040】
アーム固定手段8は、ブーム支持アーム5が上支点51において揺振するのを規制することにより、前記ブーム支持アーム5を基部フレーム2に対して所定の角度で固定するものである。本実施形態におけるアーム固定手段8は、伸縮自在なアーム固定用油圧シリンダー81により構成されており、そのアーム固定用油圧シリンダー81のシリンダ本体82を基部フレーム2に固定し、ピストンアーム83を前記ブーム支持アーム5の下端部に固定している。そして、前記アーム固定用油圧シリンダー81は、任意の長さに伸縮するとともに、その状態を固定的に維持する機能を有する。
【0041】
なお、アーム固定手段8は、油圧シリンダーに限定されるものではなく、空気圧シリンダー、ステッピングモータやスライドモーター等の角度を調整して固定できる機能を有するものから適宜選択してよい。
【0042】
次に、ブーム位置復帰手段9は、ブーム角度調整手段6により角度調整されたブーム4のブーム支持アーム5に対する傾斜状態を初期位置として設定し、この初期位置から回動した前記ブーム4に対して反対方向の回動力を付与して初期位置に復帰させるものである。本実施形態では、
図2、
図4および
図8に示すように、左右一対の復帰バネ91,91により構成されており、その一端を前述した取付アーム54の上端部に固定し、他端をブーム4の上部に設けた左右の復帰手段設置部92,92に固定している。なお、本実施形態における復帰バネ91は、長さ調整部93を有しており、張力を調整可能に構成されている。
【0043】
本実施形態では、長さ調整部93により、ブーム角度調整手段6により角度調整されたブーム4のブーム支持アーム5に対する傾斜状態を初期位置として設定し、ブーム4がこの初期値に対して所定角度より回動すると、復帰バネ91,91の張力により反対方向の回動力を付与するように、若干の余裕を持たせて架設されている。
【0044】
なお、ブーム位置復帰手段9は、上記復帰バネ91,91に限定されるものではなく、ステッピングモータやスライドモーター等のブームの回転に対して、反対方向の回転力を与えることのできる構成から適宜選択してもよい。
【0045】
次に、ブームガイドローラー10およびブーム支持板11について説明する。
【0046】
まず、ブームガイドローラー10は、走行装置aの揺動がブーム4に伝わらないように、ブーム4がブーム支持アーム5の上支点51において揺振または下支点52において回動する際に、ブーム支持アーム5および基部フレーム2との間で生じる摩擦抵抗を軽減するとともに、略同一面内で揺振または回動するように案内するためのものである。
【0047】
図2および
図5に示すように、本実施形態におけるブームガイドローラー10は、一対の軸回転可能なブームローラー101,101によって構成されており、基部フレーム2とブーム4との間に配置されている。また、それら一対のブームローラー10は、互いに交差してローラー面を接触しつつ、一方が基部フレーム2に軸支されているとともに他方がブーム4に軸支されている。また、前記ブームガイドローラー10は、
図4に示すように、基部フレーム2の左右の柱状フレーム材21において上下の4箇所設けられている。そして、対となるブームローラー101,101同士が適当な角度、本実施形態では約45度の角度で交差されている。なお、ブームガイドローラー10の数や設置位置については特に限定されるものではなく、ブーム4が揺振または回動し易くなるように適宜選択されるものである。
【0048】
ブーム支持板11は、基部フレーム2とブーム4との平行を維持し、ブーム4が基部フレーム2に対して前後方向に倒れないようにしている。特に、上り傾斜や下り傾斜を走行する場合やサイドブーム42が折り畳まれた状態で移動する場合には、ブーム4やブーム支持アーム5が前方または後方に傾くため、ブーム軸支部45やアーム軸支部24が破損しないように支えるものである。
【0049】
図2および
図5に示すように、本実施形態におけるブーム支持板11は、一対の樹脂等からなる低摩擦の板から構成されており、基部フレーム2とブーム4との間で互いに面接触可能に配置されている。また、
図4に示すように、前記ブーム支持板11は、ブームガイドローラー10と同様に、基部フレーム2の左右の柱状フレーム材21において上下の4箇所設けられている。なお、ブーム支持板11の数や設置位置については特に限定されるものではなく、ブーム4が前方または後方に傾かないように適宜選択されるものである。
【0050】
次に、モード制御手段(図示しない)について説明する。モード制御手段は、主に、ブーム角度調整手段6、ブーム固定手段7およびアーム固定手段8を制御する機能を有しており、走行路面状況や作業状況等に応じた、
図6に示す第1モードから第4モードまでの4つのモードを適宜選択可能となっている。
【0051】
本実施形態におけるモード制御手段は、ブーム角度調整手段6およびブーム固定手段7としての角度調整用油圧シリンダー61およびアーム固定手段8としてのアーム固定用油圧シリンダー81を制御するとともに、リフト用油圧シリンダー23、ブーム折り畳み用油圧シリンダー432、サイドブーム用油圧シリンダー442をそれぞれ制御する油圧制御部を備えている。
【0052】
第1モードから第4モードの各モードの詳細については、本実施形態のブームスプレーヤ1における各機構の作用と合わせて、以下で説明する
【0053】
『第1モードについて』
第1モードは、モード制御手段により、上支点51においてブーム支持アーム5を基部フレーム2に固定し、かつ、下支点52においてブーム4をブーム支持アーム5に対して固定するモードである。
【0054】
本実施形態において第1モードを選択して薬剤を散布する場合、ブーム支持アーム5は、アーム固定手段8であるアーム固定用油圧シリンダー81によって任意の角度に固定される。また、ブーム4は、ブーム角度調整手段6およびブーム固定手段7である角度調整用油圧シリンダー61によって圃場と平行となるように回動されて固定される。さらに、必要な場合は、リフト用油圧シリンダー23によって、圃場や圃場の農作物の高さに対して適当な高さに調整される。
【0055】
なお、第1モードにおけるブーム4の角度調整等の作業順は、特に限定されるものではなく、圃場の状況、障害物の有無等から適宜決定すればよい。
【0056】
以上のように、第1モードを選択すると、ブーム4が走行装置aと一体的に動くため、走行路面が平坦である場合にブーム4が所定の角度を維持し、好適である。また、走行中にはブーム4と走行装置aとが一体的に動くため安定した走行ができる。よって、圃場が平坦である場合および車庫から圃場へ移動する場合等には、第1モードを選択するのが有効である。
【0057】
また、第2モード、第3モードおよび第4モードを選択している場合において、進行方向を大きく転換する場合には、一時的に第1モードを選択することによってブーム4が遠心力により大きく傾いてしまうのを防止することができる。
【0058】
『第2モードについて』
第2モードは、上支点51においてブーム支持アーム5を揺振自在に支持し、かつ、下支点52においてブーム4をブーム支持アーム5に対して固定するモードである。
【0059】
本実施形態において第2モードを選択して薬剤を散布する場合、ブーム支持アーム5は、アーム固定用油圧シリンダー81による負荷を与えずに揺振自在に支持される。また、ブーム4は、角度調整用油圧シリンダー61によって圃場と平行となるように回動されて固定される。よって、ブーム4は、
図7に示すように、ブーム支持アーム5を介して懸垂され、圃場の路面状況に合わせて振り子のように揺振する。また、必要な場合は、リフト用油圧シリンダー23によって、圃場や農作物の高さに対して適当な高さに調整される。
【0060】
以上のように、第2モードを選択すると、ブーム4とブーム支持アーム5とは一体的に連結され、揺振の周期が長くなる。周期が長くなると、走行路面の細かな凹凸によって走行装置aが小さく振動してもブーム4は大きく揺れないし、振動してもブーム4およびブーム支持アーム5の自重により垂下状態に戻る。よって、圃場が比較的なだらかで小石等による小さな振動が生じる程度である場合には、第2モード選択するのが有効である。
【0061】
『第3モードについて』
第3モードは、モード制御手段により、上支点51においてブーム支持アーム5を基部フレーム2に固定し、かつ、下支点52においてブーム4を回動自在に支持するモードである。
【0062】
本実施形態において第3モードを選択して薬剤を散布する場合、ブーム支持アーム5は、アーム固定用油圧シリンダー81によって任意の角度に調整をして固定される。また、ブーム4は、
図8に示すように、角度調整用油圧シリンダー61によって圃場と平行となるように回動される。ただし、第3モードでは、角度調整油圧シリンダー61を回動後に固定せずに回動自在に支持させる。このときブーム4を重心位置で軸支しているので回動後の状態が維持される。さらに、必要な場合は、リフト用油圧シリンダー23によって、圃場や農作物の高さに対して適当な高さに調整される。
【0063】
第3モードにおいて、ブーム4は、重心近傍となる位置に設けられたブーム支持軸45によって支持されているため、外力が加わらなければ角度調整油圧シリンダー61により固定せずとも回動しない。よって、ブームは圃場との平行が維持される。
【0064】
また、走行装置aが外乱等により揺れてブーム4に外力が加わると回動することがある。ブーム4が重心位置で軸支しているので、一旦回動を始めると、回動し続けることになる。但し、本実施形態では、ブーム位置復帰手段9が反対方向の回動力を付与するため、回動を抑制しブーム4と圃場の平行を維持する。
【0065】
具体的には、復帰バネ91,91が、若干の余裕を持たせて架設されているため、小石等の比較的小さな走行装置aの傾きに対しては張力を発揮せず、ブーム4は圃場に対する角度を維持する。また、外力によりブーム4が回転し、あるいは圃場の傾斜面によって走行装置aが大きく傾く場合には、復帰バネ91,91の張力により反対方向の回動力を付与して初期位置に復帰させることができる。
【0066】
以上のように、第3モードを選択すると、小石等の比較的小さな外乱に対してはブーム4の角度で維持することができる。また、外乱によってブーム4が回転を始めてもブーム位置復帰手段9によってブーム4を初期位置に復帰させることができる。さらに、圃場の傾斜が変化する場合には、ブーム4がブーム位置復帰手段9によって走行装置aの傾き対して追従し、別途、作業途中にブーム4の角度調整をする必要がないため有効である。
【0067】
『第4モードについて』
第4モードは、上支点51においてブーム支持アーム5を揺動自在に支持し、かつ、下支点52においてブーム4を回動自在に支持するモードである。
【0068】
本実施形態において第4モードを選択して薬剤を散布する場合、ブーム支持アーム5は、アーム固定用油圧シリンダー81による負荷を与えずに揺振自在に支持される。また、ブーム4は、
図7に示すように、角度調整用油圧シリンダー61によって圃場と平行となるように回動され、固定はせずに回転自在に支持させる。さらに、必要な場合は、リフト用油圧シリンダー23によって、圃場や農作物の高さに対して適当な高さに調整される。
【0069】
以上のように、第4モードを選択すると、ブーム支持アーム5の揺振の周期が短くなり、小石等の比較的小さな外乱に対しても、走行路面のぬかるみなどの大きな振動に対してもブーム4の振動を抑制することができる。すなわち、第4モードは、周期の異なる外乱に対しても圃場との平行を保つことができ、圃場が平坦であっても傾斜地であってもよく、適応範囲の広い好適なモードである。なお、圃場の傾斜が変化する場合は、角度調整用油圧シリンダー61によって圃場と平行となるように調整しながら作業することにより、対処することができる。
【0070】
一方、一対のブームガイドローラー10は、互いにローラー面で接触しているためブームローラー101,101同士の摩擦が少ない。また、各ブームローラー101が回動自在に支持されているため、ブーム4の角度調整時や揺振および回動の際に前記ブーム4が円滑に動作するように案内する。さらに、対となるブームローラー101,101同士を適当な角度で交差させているため、ブーム4の上下左右の動きを円滑にし、特に、揺振方向および回動方向に動作しやすくなっている。
【0071】
よって、ブーム4が円滑に動作するため、外乱により生じる振動に対し、上支点51および下支点52を固定しないことで振動を抑制するようになっている。
【0072】
ブーム支持板11は、基部フレーム2とブーム4との平行を維持することができる。よって、ブーム4が必要以上に傾くのを防止し、ブーム支持軸45やアーム支持軸24に曲げ力を与えるのを防止し、破損するのを防止しすることができる。また、各ブーム支持板11が低摩擦の板で構成されているため、ブーム4の揺振および回動を妨げない。さらに、ブーム支持板11が基部フレーム2の左右上下の4箇所設けられているため、ブーム4の前方または後方のみならず、左右にも傾かないようにすることができる。
【0073】
また、本実施形態ではブーム折り畳み機構43およびサイドブーム折り畳み機構44によってサイドブーム42を折り畳むことができるため、移動時や格納時に邪魔にならない。
【0074】
また、本実施形態における薬剤散布手段3の供給ポンプは、貯留タンクから薬剤供給管32を介して散布ノズル31へと薬剤を供給する。よって、ブームスプレーヤ1が走行中に薬剤を複数の散布ノズル31から圃場に散布することで、広範囲に薬剤を散布することができる。
【0075】
以上のような本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
1.傾斜地において、圃場とブーム4を平行に維持することができる。
2.圃場の状況に応じて第1〜第4モードを任意に選択することができる。
3.第1モードを選択することにより、移動時の走行を安定させることができる。
4.第2モードを選択することにより、振動を抑制でき、振動した際もブーム4等の自重により初めの状態に戻すことができる。
5.第3モードを選択することにより、振動を抑制できるとともに、ブーム位置復帰手段9により圃場の傾斜面が変化してもブーム4の角度を適切に追従させることができる。
6.第4モードを選択することにより、周期の異なる振動に対して、ブーム4の角度を維持することができる。