特許第5739660号(P5739660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オオサキメディカル株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5739660
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】内視鏡下手術用の圧排体
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
   A61B17/00 320
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-291283(P2010-291283)
(22)【出願日】2010年12月27日
(65)【公開番号】特開2012-135542(P2012-135542A)
(43)【公開日】2012年7月19日
【審査請求日】2013年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】391057258
【氏名又は名称】オオサキメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081628
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 桂
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴之
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/024244(WO,A1)
【文献】 登録実用新案第3158948(JP,U)
【文献】 国際公開第2004/110322(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00 − 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉗子で掴んでトロカールを通して患者の体腔に持ち込む内視鏡下手術用の圧排体において、
圧排体は、横断面がトロカールの通路断面より大きくてトロカールに入るときに横断面が縮小し、トロカールから出たときに横断面が拡大して原形に復元する弾性体にし、
スポンジ体と織物ガーゼを有し、
スポンジ体は、織物ガーゼで覆い、トロカールに入って通過する時に、織物ガーゼがトロカールに接触してスポンジ体がトロカールに接触しない構成にし、
トロカール通過時にスポンジ体の前側になる位置には、スポンジ体のない織物ガーゼの部分を設け、この部分を、鉗子で掴む掴み部にしたことを特徴とする圧排体。
【請求項2】
織物ガーゼは、袋にし、織物ガーゼの袋にスポンジ体を封入したことを特徴とする請求項1に記載の圧排体。
【請求項3】
織物ガーゼは、スポンジ体に巻き付けたことを特徴とする請求項1に記載の圧排体。
【請求項4】
織物ガーゼは、縦糸又は横糸の方向を、スポンジ体のトロカール進入方向と斜に配置したことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の圧排体。
【請求項5】
スポンジ体は、板状にし、2枚にし、
2枚のスポンジ体は、前後に並べ、端同士を向かい合わせ、間隔を空け、この配列状態の両スポンジ体を織物ガーゼで覆い、
両スポンジ体の間の部分を折り曲げ部にして二つ折り可能にし、2枚のスポンジ体が重なってブロック状になる構成にしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧排体。
【請求項6】
スポンジ体は、細長板状にし、中央部分を折り曲げ部にして二つ折り可能にし、二つ折りにすると、スポンジ体の前半部と後半部が重なってブロック状になり、原形の細長板状に復元しようとする復元力が作用する構成にしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧排体。
【請求項7】
前端と後端に、それぞれ、スポンジ体のない織物ガーゼの部分を設け、これらの部分を、それぞれ、鉗子で掴む掴み部にしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の圧排体。
【請求項8】
織物ガーゼは、X線造影糸付きのものにしたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の圧排体。
【請求項9】
スポンジ体と一緒にX線造影糸を織物ガーゼで覆ったことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の圧排体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡下手術において、術野を確保するため、臓器を移動させる圧排体の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡下手術においては、細管のトロカールを患者の体腔に差し込む。体腔に入れる医療用のスポンジ体は、長手方向の端を鉗子の先端の把持部で掴む。鉗子の把持部は、トロカールに入れて押し、スポンジ体をトロカールに引き込む。スポンジ体は、鉗子の把持部に引っ張られてトロカール内を進み、体腔に出る。このスポンジ体は、弾性体であり、横断面がトロカールの通路断面より大きい。スポンジ体は、トロカールに入るときに、横断面が縮小し、棒状になってトロカール内を進む。トロカールから出たときに、横断面が拡大して、原形に復元する。
【0003】
体腔内のスポンジ体は、手術の邪魔になる臓器を退かす圧排体として使用する。また、体腔内の液を吸収する吸液体としても使用する。体腔内の使用済みのスポンジ体は、長手方向の端をトロカールを貫通した鉗子の把持部で掴む。鉗子の把持部は、トロカールに入れて引き、スポンジ体をトロカールに引き込む。スポンジ体は、鉗子の把持部に引っ張られてトロカール内を進み、体腔外に出る。
【0004】
この種の市販のスポンジ体は、長円形状の厚板にし、一端に孔を貫通し、孔にX線造影糸付きの紐を二重に通し、紐の両端を結合している。紐付きにしたスポンジ体は、二重の輪になった紐を掴み部にしている。掴み部は、鉗子の把持部で掴む。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】株式会社ホギメディカルの鏡視下手術用スポンジ「セクレア(登録商標)」のカタログ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1.課 題
1.1 患者の体腔に入れる医療用のスポンジ体は、ポリウレタンフォームのような発泡合成樹脂製であり、金属製の鉗子で掴んで強く引っ張ると、掴んだ部分が千切れることがある。千切れ易いスポンジ体は、トロカールに引き込むのが困難である。
紐付きのスポンジ体は、二本の紐からなる掴み部を鉗子で掴んだとき、掴み残しの紐があると、その紐がトロカールや臓器などに引っ掛かることがある。掴み部の二本の紐を一緒に掴む手間が掛かる。
【0007】
1.2 発泡合成樹脂製のスポンジ体は、トロカールに入るときに、トロカールの開口縁で擦られて稜線部などが擦り取られることがある。スポンジ体の粉末や破片が患者の体腔に残ることは、好ましくない。
【0008】
1.3 弾性体のスポンジ体は、一端側を鉗子の先端で引っ張られてトロカールに入るときに、横断面が急激に縮小する。その際、鉗子で引っ張るのに大きな力を要する。スポンジ体をトロカールに引き込むのが容易ではない。
【0009】
2.着 想
2.1 スポンジ体に比較して、織物ガーゼは、引張に対して千切れ難く、磨耗し難い。そこで、スポンジ体は、織物ガーゼで覆うことにした。具体的には、トロカールに入って通過する時に、織物ガーゼがトロカールに接触し、スポンジ体がトロカールに接触しない構成にする。例えば、織物ガーゼは、袋にし、織物ガーゼの袋にスポンジ体を封入する。また、スポンジ体に織物ガーゼを巻き付ける。
すると、織物ガーゼで覆われたスポンジ体は、トロカールに入るときに、外側の織物ガーゼがトロカールの開口縁で擦られる。織物ガーゼは、トロカールの開口縁で擦り取られ難い。織物ガーゼの内側のスポンジ体は、トロカールの開口縁に接触しない。トロカールの開口縁で擦り取られない。
【0010】
2.2 スポンジ体を織物ガーゼで覆うに当って、トロカール通過時にスポンジ体の前側になる位置に、スポンジ体のない織物ガーゼの部分を設けることにした。この部分は、鉗子で掴む掴み部にする。
すると、織物ガーゼで覆われたスポンジ体は、トロカールに入れる際、前側の織物ガーゼの掴み部を鉗子で掴んで引っ張ることになる。スポンジ体は、鉗子で掴まれない。千切れない。織物ガーゼは、千切れ難い。
また、織物ガーゼで覆われたスポンジ体は、トロカールに入れる際、前側の掴み部を鉗子で掴んで引っ張ると、スポンジ体を覆った織物ガーゼの掴み部側は、トロカールに進入する方向、トロカールの軸方向が伸び、その直角方向、トロカールの径方向が縮む。太さが縮小する。織物ガーゼの掴み部側の縮小によって、スポンジ体の掴み部側は、トロカールの径方向が縮む。太さが縮小する。スポンジ体の掴み部側は、細くなって、トロカールに入り易くなる。
【0011】
2.3 織物ガーゼは、縦糸又は横糸の方向に引っ張るときより、縦糸又は横糸と斜になる方向に引っ張るときの方が、引っ張り方向の伸長量とその直角方向の縮小量が多くなる。引っ張り方向が縦糸又は横糸と45度位の斜になると、引っ張り方向の伸長量とその直角方向の縮小量が最大になる。
そこで、スポンジ体を覆う織物ガーゼは、縦糸又は横糸の方向を、スポンジ体の前後方向、トロカールへの進入方向と斜に配置することにした。好ましくは45度位の斜に配置することにした。
すると、織物ガーゼで覆われたスポンジ体は、トロカールに進入する際、掴み部側の太さの縮小量が多くなる。トロカールに入る際の抵抗の縮小量が多くなる。
【0012】
2.4 X線造影糸は、スポンジ体に取り付けるのが簡単ではない。
そこで、スポンジ体を覆う織物ガーゼは、X線造影糸付きのものにすることにした。又は、X線造影糸は、スポンジ体と一緒に織物ガーゼで覆うことにした。
すると、X線造影糸は、取り付けが簡単になる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1.鉗子で掴んでトロカールを通して患者の体腔に持ち込む内視鏡下手術用の圧排体において、
圧排体は、横断面がトロカールの通路断面より大きくてトロカールに入るときに横断面が縮小し、トロカールから出たときに横断面が拡大して原形に復元する弾性体にし、
スポンジ体と織物ガーゼを有し、
スポンジ体は、織物ガーゼで覆い、トロカールに入って通過する時に、織物ガーゼがトロカールに接触してスポンジ体がトロカールに接触しない構成にし、
トロカール通過時にスポンジ体の前側になる位置には、スポンジ体のない織物ガーゼの部分を設け、この部分を、鉗子で掴む掴み部にしたことを特徴とする圧排体。
2.上記の内視鏡下手術用の圧排体において、
織物ガーゼは、袋にし、織物ガーゼの袋にスポンジ体を封入したことを特徴とする。
3.上記1の内視鏡下手術用の圧排体において、
織物ガーゼは、スポンジ体に巻き付けたことを特徴とする。
4.上記1、2又は3の内視鏡下手術用の圧排体において、
織物ガーゼは、縦糸又は横糸の方向を、スポンジ体のトロカール進入方向と斜に配置したことを特徴とする。
5.上記1〜4のいずれかの内視鏡下手術用の圧排体において、
スポンジ体は、板状にし、2枚にし、
2枚のスポンジ体は、前後に並べ、端同士を向かい合わせ、間隔を空け、この配列状態の両スポンジ体を織物ガーゼで覆い、
両スポンジ体の間の部分を折り曲げ部にして二つ折り可能にし、2枚のスポンジ体が重なってブロック状になる構成にしたことを特徴とする。
6.上記1〜4のいずれかの内視鏡下手術用の圧排体において、
スポンジ体は、細長板状にし、中央部分を折り曲げ部にして二つ折り可能にし、二つ折りにすると、スポンジ体の前半部と後半部が重なってブロック状になり、原形の細長板状に復元しようとする復元力が作用する構成にしたことを特徴とする。
7.上記1〜6のいずれかの内視鏡下手術用の圧排体において、
前端と後端に、それぞれ、スポンジ体のない織物ガーゼの部分を設け、これらの部分を、それぞれ、鉗子で掴む掴み部にしたことを特徴とする。
8.上記1〜7のいずれかの内視鏡下手術用の圧排体において、
織物ガーゼは、X線造影糸付きのものにしたことを特徴とする。
9.上記1〜8のいずれかの内視鏡下手術用の圧排体において、
スポンジ体と一緒にX線造影糸を織物ガーゼで覆ったことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
圧排体は、トロカールに入り易い。スポンジ体は、トロカールの開口縁で擦り取られない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の第1例における内視鏡下手術用の圧排体の正面図。
図2図1のA−A線断面拡大図。
図3図1のB−B線断面拡大図。
図4】同圧排体のスポンジ体の斜視図。
図5】同圧排体の織物ガーゼの正面図。
図6】同織物ガーゼの袋の正面図。
図7】同圧排体をトロカールに引き込む状態の正面図。
図8】実施形態の第2例における内視鏡下手術用の圧排体の正面図。
図9】同圧排体の織物ガーゼの正面図。
図10】同圧排体を二つ折りにした状態の平面図。
図11】実施形態の第3例における内視鏡下手術用の圧排体の正面図。
図12】同圧排体のスポンジ体の斜視図。
図13】同圧排体を二つ折りにした状態の平面図。
図14】実施形態の第4例における内視鏡下手術用の圧排体の正面図。
図15】同圧排体のスポンジ体を織物ガーゼに重ねた状態の正面図。
図16】同スポンジ体に織物ガーゼを巻き付けた状態の正面図。
図17】実施形態の第5例における内視鏡下手術用の圧排体の正面図。
図18】同圧排体のスポンジ体の斜視図。
図19】同圧排体の織物ガーゼを展開した状態の正面図。
図20】同織物ガーゼを二つ折りにした状態の正面図。
図21】同織物ガーゼの袋の正面図。
図22】実施形態の第6例における内視鏡下手術用の圧排体の正面図。
図23】同圧排体を二つ折りにした状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1例(図1図7参照)]
本例の内視鏡下手術用の圧排体は、図1図3に示すように、スポンジ体1を織物ガーゼの袋5に封入している。
スポンジ体1は、図4に示すように、前後方向(図の左右方向)が上下方向より長い長方形の板状にし、前端2の上下の隅角部を斜めに切り落して面取りしている。長手方向の前後方向と直交する横断面がトロカールTの通路断面より大きい。スポンジ体1は、医療用のポリウレタンフォームの平板を切断して製作している。
【0017】
袋5は、2枚の同形同寸の織物ガーゼ6を重ね合わせて縁を糸で縫い合せている。
織物ガーゼ6は、図5に示すように、前後方向(図の左右方向)が上下方向より長い長方形状にし、前端7をくの字形状、三角形状に前側に突出している。スポンジ体1より一回り大きい形状寸法にしている。医療用のX線造影糸8付きの綿織物のガーゼを切断して製作している。X線造影糸8は、ガーゼに縦糸の1本として織り込んでいる。ガーゼの縦糸と横糸は、織物ガーゼ6の前後方向と45度位の斜になる方向に配置している。
【0018】
X線造影糸8付きの織物ガーゼ6は、2枚を重ね合わせ、図6に示すように、くの字形状の前縁部、直線状の上縁部と下縁部を糸9で縫い合せ、袋にする。袋は、後縁部を開口にする。縫製した袋は、裏返して内外を逆にし、糸9で縫い合せた前縁部、上縁部と下縁部を内側に配置する。この袋5は、後縁部の開口からスポンジ体1を前端2から入れ、後縁部の開口を糸9で縫って閉鎖する。スポンジ体1と袋5は、前後方向を一致させる。
織物ガーゼ6の袋5の前端、スポンジ体1の前側には、スポンジ体のない織物ガーゼ6の部分10を設け、この三角形状の部分を掴み部10にしている。掴み部10は、鉗子で掴む。
【0019】
本例の圧排体は、患者の体腔に入れる際、前端の掴み部10を鉗子の先端の把持部で掴む。鉗子の把持部は、患者の体腔に差し込んだトロカールTの外端の開口に入れ、その開口に掴み部10を引き込む。すると、図7に示すように、織物ガーゼ6の三角形状掴み部10側は、トロカールTの外端の開口縁に接触し、トロカールTに進入する前後方向、トロカールTの軸方向が伸び、その直角方向、トロカールTの径方向が縮む。太さが縮小する。この縮小によって、弾性体であるスポンジ体1の掴み部10側は、トロカールTの径方向が縮む。太さが先細状に縮小する。スポンジ体1の掴み部10側は、細くなって、トロカールTに入り易くなる。
次に、鉗子の把持部は、トロカールT内を押し進め、圧排体を引っ張ってトロカールTに引き込む。圧排体は、鉗子の把持部に引っ張られ、棒状に窄んでトロカールT内を進み、トロカールTの内端の開口から体腔に出る。圧排体は、トロカールTから出たときに、スポンジ体1の弾性力で横断面が拡大して、原形に復元する。
体腔内の圧排体は、臓器の圧排体として、また、体液の吸液体として使用する。
【0020】
体腔内の使用済みの圧排体を体腔外に出す際は、トロカールTを貫通した鉗子の把持部で圧排体の掴み部10を掴む。鉗子の把持部は、トロカールTに入れて引き、圧排体を引っ張ってトロカールTに引き込む。圧排体は、鉗子の把持部に引っ張られてトロカールT内を棒状になって進み、トロカールTの外端の開口から体腔外に出る。使用済みの圧排体は、トロカールTの内端の開口に入る際、トロカールTの外端の開口に入るときと同様に、掴み部10側がトロカールTの内端の開口縁に接触し、トロカールTに進入する方向が伸び、太さが縮小する。トロカールTに入り易くなる。
本例の圧排体は、スポンジ体1が織物ガーゼ6で覆われている。トロカールTに入って通過する時に、織物ガーゼ6がトロカールTに接触し、スポンジ体1がトロカールTに接触しない。
【0021】
[第2例(図8図10参照)]
本例の内視鏡下手術用の圧排体は、第1例におけるスポンジ体1を2枚にして前後に並べ、両スポンジ体1の間の中央部分を折り曲げ可能にしている。また、前端と後端にそれぞれ掴み部10を設けている。
第1例におけるのと同様なスポンジ体1は、図8に示すように、2枚を前後に並べ、前端2と反対側の面取りのない端同士を向かい合わせ、間隔を空けている。両スポンジ体1は、この配列状態で織物ガーゼの袋11に封入している。
【0022】
袋11は、2枚の同形同寸の織物ガーゼ12を重ね合わせて縁を糸で縫い合せている。
織物ガーゼ12は、図9に示すように、前後方向(図の左右方向)に細長い長方形状にし、前後の両端13をそれぞれくの字形状、三角形状に突出している。この織物ガーゼ12は、第1例におけるのと同様に、医療用のX線造影糸8付きの綿織物のガーゼにし、ガーゼの縦糸と横糸の方向を織物ガーゼ12の前後方向と45度位の斜に配置している。
X線造影糸8付きの織物ガーゼ12は、第1例におけるのと同様に、2枚で袋11にし、袋11に2枚のスポンジ体1を入れ、袋11の開口を閉鎖する。
【0023】
本例の圧排体は、両スポンジ体1の間の中央部分を、スポンジ体のない織物ガーゼ12の折り曲げ部14にして、二つ折り可能にしている。二つ折りにすると、図10に示すように、2枚のスポンジ体1が重なってブロック状になる。ブロック状の圧排体になる。二つ折りにしないと、細長板状の圧排体である。
また、圧排体は、前端と後端にそれぞれスポンジ体のない織物ガーゼ12の部分の部分10を設け、この三角形状の部分10を掴み部10にしている。前後のどちらの端からでもトロカールTに挿入可能にしている。どちらかの掴み部10を鉗子の把持部で掴み、トロカールTの開口に引き込む。その際の挙動は、第1例におけるのと同様である。
本例の圧排体は、2枚のスポンジ体1が織物ガーゼ12で覆われている。トロカールTに入って通過する時に、織物ガーゼ12がトロカールTに接触し、スポンジ体1がトロカールTに接触しない。
その他の点は、第1例におけるのと同様である。
【0024】
[第3例(図11図13参照)]
本例の内視鏡下手術用の圧排体は、1枚のスポンジ体15を第2例における2枚のスポンジ体1を連結したような細長板状にし、中央部分を折り曲げ可能にしている。
スポンジ体15は、図11図12に示すように、前後方向(図の左右方向)に細長い長方形板状にし、前後の両端16についてそれぞれ上下の隅角部を面取りしている。
スポンジ体15は、第2例におけるのと同様な織物ガーゼ12の袋11に封入している。
【0025】
本例の圧排体は、中央部分を、織物ガーゼ12とスポンジ体15からなる折り曲げ部17にして二つ折り可能にしている。二つ折りにすると、図13に示すように、スポンジ体15の前半部と後半部が重なって、ブロック状になる。ブロック状の圧排体になる。二つ折りになった弾性体のスポンジ体15は、弾性力で、原形の細長板状に復元しようとする復元力が作用する。この復元力は、臓器の圧排時に臓器の持上げや移動に利用することができる。
また、圧排体は、前端と後端にそれぞれスポンジ体のない織物ガーゼ12の部分10を設け、この三角形状の部分10を掴み部10にしている。
その他の点は、第2例におけるのと同様である。
【0026】
[第4例(図14図16参照)]
本例の内視鏡下手術用の圧排体は、図14に示すように、第3例におけるスポンジ体15に織物ガーゼ21を巻き付けている。
織物ガーゼ21は、第1例におけるのと同様な医療用のX線造影糸8付きの綿織物のガーゼにし、正方形状にしている。正方形状のガーゼは、各辺を縦糸又は横糸と平行にしている。また、その対角線は、第3例におけるのと同様なスポンジ体15の前後方向の長さより長くしている。一方の対角線は、前後方向に配置している。
正方形状の織物ガーゼ21は、図15に示すように、前後方向の対角線の上に、前後の両端16を面取りしたスポンジ体15を重ねる。織物ガーゼ21の前後方向の対角線とスポンジ体15の前後方向は、一致させる。次に、織物ガーゼ21は、細長板状のスポンジ体15の一方の側の三角形状部分をスポンジ体15側に折り返し、他方の側の三角形状部分をスポンジ体15側に折り返してスポンジ体15に巻き付ける。正方形状の織物ガーゼ21は、図16に示すように、細長板状のスポンジ体15に巻き付ける。その織物ガーゼ21は、スポンジ体15の直前の重なり部分と直後の重なり部分をそれぞれ横断方向に糸22で縫い合せる。スポンジ体15は、織物ガーゼ21で覆われる。
【0027】
本例の圧排体は、中央部分を、織物ガーゼ21とスポンジ体15からなる折り曲げ部23にして二つ折り可能にしている。二つ折りにすると、第3例におけるのと同様に、ブロック状になり、復元力が作用する。
また、圧排体は、前端と後端、前側の糸22の前側部分と後側の糸22の後側部分を、それぞれ、スポンジ体のない織物ガーゼ21の掴み部24にしている。第3例におけるのと同様に、前後のどちらの端からでもトロカールTに挿入可能にしている。トロカールTに入って通過する時に、織物ガーゼ21がトロカールTに接触し、スポンジ体15がトロカールTに接触しない。
その他の点は、第3例におけるのと同様である。
【0028】
[第5例(図17図21参照)]
本例の内視鏡下手術用の圧排体は、スポンジ体31を楔形状にし、織物ガーゼの袋38を1枚のガーゼで構成している。
スポンジ体31は、図17図18に示すように、前後方向(図の左右方向)に細長い長方形板状にし、上側面を前下りの斜面にし、楔形状にしている。前端32は、後端より横断面を小さくしている。
【0029】
袋35は、1枚の織物ガーゼ36を二つ折りにし、縁を糸で縫い合せている。
織物ガーゼ36は、図19に示すように、横転した台形状にし、前端37を後端より短くしている。この織物ガーゼ36は、第1例におけるのと同様に、医療用のX線造影糸8付きの綿織物のガーゼにし、ガーゼの縦糸と横糸の方向を織物ガーゼ36の前後方向と45度位の斜に配置している。
X線造影糸8付きの織物ガーゼ36は、前後方向の中心線に沿って折り曲げ、図20に示すように、二つ折りにする。二つ折りにして重ねた織物ガーゼ36は、図21に示すように、下縁を折り曲げ縁にし、前縁部と上縁部を糸38で縫い合せ、袋39にする。後縁部を開口にする。縫製した袋39は、裏返して内外を逆にし、糸38で縫い合せた前縁部と上縁部を内側に配置する。この袋39は、後縁部の開口からスポンジ体31を前端32から入れ、後縁部の開口を糸で縫って閉鎖する。スポンジ体31と袋39は、前後方向を一致させる。スポンジ体31は、織物ガーゼ36で覆われる。
【0030】
本例の圧排体は、前端、スポンジ体31の前側部分をスポンジ体のない織物ガーゼ36の部分、掴み部40にしている。
掴み部40は、鉗子の把持部で掴み、トロカールTの開口に引き込む。すると、織物ガーゼ36の掴み部40側は、トロカールTの開口縁に接触し、トロカールTに進入する前後方向が伸び、その直角方向が縮む。この縮小によって、スポンジ体31の掴み部40側は、トロカールTの径方向が縮む。太さが先細状に縮小する。トロカールTに入り易くなる。圧排体がトロカールTに入る際の挙動は、第1例におけるのと同様である。
本例の圧排体は、楔形状にしている。臓器の圧排の際、臓器の間に差し込み易い。
その他の点は、第1例におけるのと同様である。
【0031】
[第6例(図22図23参照)]
本例の内視鏡下手術用の圧排体は、第5例におけるスポンジ体31を2枚にして前後に並べ、両スポンジ体31の間の中央部分を折り曲げ可能にしている。また、前端と後端にそれぞれ掴み部40を設けている。
第5例におけるのと同様なスポンジ体31は、図22に示すように、2枚を前後に並べ、前端32と反対側の長い方の端同士を向かい合わせ、間隔を空けている。両スポンジ体31は、この配列状態で織物ガーゼの袋41に封入している。
袋41は、第5例におけるのと同様に、1枚の織物ガーゼを二つ折りにし、縁を糸で縫い合せている。
袋41の織物ガーゼは、第1例におけるのと同様に、医療用のX線造影糸8付きの綿織物のガーゼにし、ガーゼの縦糸と横糸の方向を織物ガーゼの前後方向と45度位の斜に配置している。
【0032】
本例の圧排体は、両スポンジ体31の間の中央部分を、スポンジ体のない織物ガーゼの折り曲げ部42にして二つ折り可能にしている。二つ折りにすると、図23に示すように、2枚の楔形状のスポンジ体31が重なって楔形状のブロック状になる。楔形状のブロック状の圧排体になる。臓器の間に差し込み易い。
また、圧排体は、前端と後端をそれぞれスポンジ体のない織物ガーゼの部分、掴み部40にしている。前後のどちらの端からでもトロカールTに挿入可能にしている。
その他の点は、第5例におけるのと同様である。
【0033】
[変形例]
1.上記の実施形態において、織物ガーゼは、X線造影糸8付きにしているが、X線造影糸付きでないものにする。
2.上記の実施形態において、X線造影糸は、織物ガーゼの袋に封入していないが、織物ガーゼの袋にスポンジ体と一緒に封入する。また、X線造影糸は、織物ガーゼで包んでいないが、織物ガーゼでスポンジ体と一緒に包む。要するに、X線造影糸は、スポンジ体と一緒に織物ガーゼで覆う。
3.上記の実施形態において、織物ガーゼは、綿の織物にしているが、他の織物にする。
【符号の説明】
【0034】
T トロカール
1 スポンジ体
2 スポンジ体の前端
5 織物ガーゼの袋
6 織物ガーゼ
7 織物ガーゼの前端
8 X線造影糸
9 糸
10 織物ガーゼのみの部分、掴み部
11 織物ガーゼの袋
12 織物ガーゼ
13 織物ガーゼの前端、後端
14 折り曲げ部
15 スポンジ体
16 スポンジ体の前後の両端
17 折り曲げ部
21 織物ガーゼ
22 糸
23 折り曲げ部
24 掴み部
31 スポンジ体
32 スポンジ体の前端
36 織物ガーゼ
37 織物ガーゼの前端
38 糸
39 袋
40 掴み部
41 織物ガーゼの袋
42 折り曲げ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23