(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5739706
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】リアスポイラ
(51)【国際特許分類】
B62D 37/02 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
B62D37/02 C
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-69153(P2011-69153)
(22)【出願日】2011年3月28日
(65)【公開番号】特開2012-201280(P2012-201280A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2013年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126468
【弁理士】
【氏名又は名称】田久保 泰夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信次
(72)【発明者】
【氏名】志水 勝司
【審査官】
芦原 康裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−341667(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0108830(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフの延長上に配設され、車両後方を覆うように形成されるアウタパネルと、前記アウタパネルに対して車両側に配設され、前記アウタパネルの車両前後方向の両端部に接合されるインナパネルとを備えるリアスポイラにおいて、
前記アウタパネル及び前記インナパネルは、板金によって形成され、
前記アウタパネルは、
前記ルーフに沿って車両後方に延在するアウタアッパと、
前記アウタアッパの車両後方端部に一端部が接合され、車両前方に延在するアウタセンタと、
前記アウタセンタの他端部に一端部が接合され、他端部が前記インナパネルの車両後方端部に接合されるアウタロアと、
を備えることを特徴とするリアスポイラ。
【請求項2】
請求項1記載のリアスポイラにおいて、
前記アウタセンタと前記アウタロアとの接合部は、前記アウタパネルと前記インナパネルとによって囲繞される空間に突出するリブを形成することを特徴とするリアスポイラ。
【請求項3】
請求項2記載のリアスポイラにおいて、
前記アウタセンタと前記アウタロアとの前記接合部は、前記アウタロアと前記インナパネルとの接合部に略平行に形成されることを特徴とするリアスポイラ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリアスポイラにおいて、
前記アウタアッパの車両後方端部には、ガーニッシュが装着されることを特徴とするリアスポイラ。
【請求項5】
請求項4記載のリアスポイラにおいて、
前記ガーニッシュには、ストップランプが配設されることを特徴とするリアスポイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のルーフの延長上に配設され、車両後方を覆うように形成されるアウタパネルと、前記アウタパネルに対して車両側に配設され、前記アウタパネルの車両前後方向の両端部に接合されるインナパネルとを備えるリアスポイラに関する。
【背景技術】
【0002】
車両、特に自動車の後部には、空気抵抗を低減させて燃費の向上を図ることを目的として、ルーフの延長上にリアスポイラを装着したものがある(特許文献1参照)。この場合、リアスポイラは、ルーフを通過する空気の空気抵抗が最も小さくなるように、車長方向に長く、且つ、下方向に傾斜した形状とすることが理想的であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−341667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リアスポイラを最適な形状に設計した場合、外径寸法が相当に大きくなってしまうため、このようなリアスポイラを一体成形することは極めて困難である。特に、従来のリアスポイラは、樹脂材料から成形されているため、大型のリアスポイラを一体成形しようとすると、フローマーク等の成形不良が発生したり、樹脂回りの不良による剛性の低下という問題が発生する。
【0005】
また、従来のリアスポイラは、板金から形成される車体とは異なる樹脂材料で形成されているため、車体とリアスポイラとを同じ塗装材料を用いて塗装することができない。この場合、これらの間の色合わせが難しく、製造コストが非常に高くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、前記の不具合を解消するためになされたものであって、大型のリアスポイラを容易且つ廉価に製造することのできるリアスポイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るリアスポイラは、車両のルーフの延長上に配設され、車両後方を覆うように形成されるアウタパネルと、前記アウタパネルに対して車両側に配設され、前記アウタパネルの車両前後方向の両端部に接合されるインナパネルとを備えるリアスポイラにおいて、前記アウタパネル及び前記インナパネルは、板金によって形成され、前記アウタパネルは、前記ルーフに沿って車両後方に延在するアウタアッパと、前記アウタアッパの車両後方端部に一端部が接合され、車両前方に延在するアウタセンタと、前記アウタセンタの他端部に一端部が接合され、他端部が前記インナパネルの車両後方端部に接合されるアウタロアと、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るリアスポイラにおいて、前記アウタセンタと前記アウタロアとの接合部は、前記アウタパネルと前記インナパネルとによって囲繞される空間に突出するリブを形成することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るリアスポイラにおいて、前記アウタセンタと前記アウタロアとの前記接合部は、前記アウタロアと前記インナパネルとの接合部に略平行に形成されることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るリアスポイラにおいて、前記アウタアッパの車両後方端部には、ガーニッシュが装着されることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るリアスポイラにおいて、前記ガーニッシュには、ストップランプが配設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリアスポイラは、車両のルーフの延長上に配設され、車両後方を覆うように形成されるアウタパネルを、アウタアッパ、アウタセンタ及びアウタロアに3分割して構成することにより、大型のリアスポイラを容易に製造することができる。
【0013】
また、このように構成されるリアスポイラを板金によって形成することにより、板金からなる車体と同じ塗装材料を用いてリアスポイラの塗装を行うことができる。この場合、車体とリアスポイラとの色合わせを行うための処理が不要となり、リアスポイラを容易且つ廉価に製造することができる。
【0014】
また、アウタセンタとアウタロアとの接合部を、アウタパネルとインナパネルとによって囲繞される空間に突出するリブとして形成することにより、アウタパネルを3分割した構成であっても、十分な剛性を確保することができる。
【0015】
また、アウタセンタとアウタロアとの接合部を、アウタロアとインナパネルとの接合部に略平行に形成することにより、これらの2つの接合部を接合させる作業に際して、溶接ロボット等の接合手段による接合方向を同じ方向とすることができるため、接合作業を容易且つ迅速に行うことできる。
【0016】
また、アウタアッパの車両後方端部にガーニッシュを取り付けることにより、アウタアッパとアウタセンタとの接合部、及び、アウタセンタとアウタロアとの接合部をガーニッシュにより覆い隠すことができるため、外観意匠に優れたリアスポイラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るリアスポイラが装着される自動車の後部の構成説明図である。
【
図2】
図1に示すリアスポイラに取り付けられるガラスの説明図である。
【
図3】ガラスの上端部が位置決めされたリアスポイラの
図2のIII−III線断面図である。
【
図4】ガラスが取り付けられたリアスポイラの
図1のIV−IV線断面図である。
【
図5】ガラスが取り付けられたリアスポイラの
図1のV−V線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明に係るリアスポイラが装着される自動車10の後部の構成説明図である。
【0020】
自動車10の後方には、ルーフ12の延長上にリアウインドウ13のガラス16の上部を覆うように形成されるリアスポイラ14が装着され、また、リアウインドウ13のガラス16とリアスポイラ14との間には、例えば、ストップランプ18が配設されるガーニッシュ20が装着される。
【0021】
図2は、リアスポイラ14の下部に、ガイドピン24を用いてガラス16の上端部を取り付ける状態の説明図である。
【0022】
ガイドピン24は、ガラス16の一方の面16aの上端部中央に配設され、ガラス16の上端部から面16aに略平行に突出する。一方、リアスポイラ14には、孔部26a、26bが形成され、リアウインドウパネル22の下部には、孔部26c、26dが形成される。ガラス16の他方の面16bの各コーナ部近傍には、ピン28a〜28dが配設される。ガラス16は、ピン28a〜28dが孔部26a〜26dに嵌合することで、リアウインドウパネル22に位置決めされる。ガラス16の面16bの周囲には、セラミックプリント30が形成され、また、ガラス16をリアウインドウパネル22に固定するための接着剤32が塗布される。
【0023】
図3は、ガラス16の上端部が位置決めされたリアスポイラ14の
図2のIII−III線断面図である。
図4は、ガラス16が取り付けられたリアスポイラ14の
図1のIV−IV線断面図である。
図5は、ガラス16が取り付けられたリアスポイラ14の
図1のV−V線断面図である。
【0024】
リアスポイラ14は、板金をプレス成形して形成されるものであり、車両後方を覆うように形成されるアウタアッパ34、アウタセンタ36及びアウタロア38の3枚から構成されるアウタパネル39と、アウタパネル39に対して車両側に配設され、アウタパネル39の車両前後方向の両端部に接合される1枚のインナパネル40とから構成される。アウタアッパ34は、折曲された車両前方端部である一端部34a側がルーフ12に固定され、ルーフ12に沿って車両後方に向かって傾斜して延在した後、車両後方端部である他端部34b側が下方向に大きく湾曲する。アウタセンタ36は、略直線形状を呈し、車両後方から車両前方に延在し、上方向に折曲された車両後方端部である一端部36aがアウタアッパ34の他端部34bに接合される。アウタロア38は、略直線形状を呈し、車両前方に折曲された一端部38aがアウタセンタ36の折曲された他端部36bに接合され、車両後方に折曲された他端部38bがインナパネル40の車両後方端部である一端部40aに接合される。また、インナパネル40は、略直線形状を呈し、車両後方端部である一端部40aがアウタロア38の他端部38bに接合され、車両前方端部である他端部40bがアウタアッパ34の一端部34aに接合される。
【0025】
アウタアッパ34の一端部34aとインナパネル40の他端部40bとの接合部42、アウタアッパ34の他端部34bとアウタセンタ36の一端部36aとの接合部44、アウタセンタ36の他端部36bとアウタロア38の一端部38aとの接合部46、アウタロア38の他端部38bとインナパネル40の一端部40aとの接合部48は、例えば、スポット溶接によって接合される。
【0026】
アウタセンタ36の他端部36bとアウタロア38の一端部38aとの接合部46は、アウタパネル39とインナパネル40とによって囲繞される空間に突出するリブを形成する。この接合部46は、アウタロア38の他端部38bとインナパネル40の一端部40aとの接合部48に略平行に形成される。アウタロア38の車幅方向中央部には、孔部38cが形成されており、この孔部38cには、
図2に示すように、上下方向に長い長穴形状の位置決め用溝部58を有するグロメット60が嵌合装着される。位置決め用溝部58は、ガラス16が取り付けられるリアウインドウパネル22の上部近傍に形成され、ガラス16に装着されたガイドピン24が係合されることで、リアウインドウパネル22に対してガラス16の上端部を位置決めするためのものである。接合部48は、車幅方向の両側部において、リアウインドウパネル22に連結されており(
図2参照)、この接合部48には、ガラス16に配設されたピン28a、28bが嵌合することで、ガラス16の上端部側をリアウインドウパネル22に位置決めするための孔部26a、26bが形成される。
【0027】
アウタアッパ34の車両後方端部である接合部44には、
図5に示すように、ガーニッシュ20の上部の突起部50が係合する孔部52が形成される。なお、ガーニッシュ20の下部には、ガラス16に当接するゴムパッキン54が装着される。また、ガーニッシュ20のリアスポイラ14側の面には、ストップランプ18のための回路ボックス56が配設される。
【0028】
本実施形態のリアスポイラ14は、基本的には以上のように構成される。次に、リアスポイラ14の製造手順及びその作用効果について説明する。
【0029】
先ず、板金をプレス成形することにより、アウタパネル39を、アウタアッパ34、アウタセンタ36及びアウタロア38の3枚に分割して形成するとともに、1枚のインナパネル40を形成する。
【0030】
この場合、アウタパネル39は、アウタアッパ34及びアウタセンタ36がインバース形状とならない形状に分割し、分割したアウタアッパ34及びアウタセンタ36を組み合わせることでインバース形状となるようにしている。そして、これらのアウタアッパ34及びアウタセンタ36にアウタロア38を加えて、アウタパネル39を3枚に分割して形成することにより、大型のアウタパネル39であっても、極めて容易に成形することができる。従って、これらのアウタパネル39とインナパネル40とを組み合わせることにより、所望の空力特性を備えた大型のリアスポイラ14を容易且つ高精度に製造することができる。
【0031】
次いで、アウタアッパ34、アウタセンタ36、アウタロア38及びインナパネル40を、各接合部42、44、46及び48において、スポット溶接等で接合することにより、リアスポイラ14が組み立てられる。組み立てられたリアスポイラ14は、ルーフ12のリアレール部(図示せず)と、リアウインドウパネル22の上部との間に固定される。
【0032】
この場合、アウタセンタ36の他端部36bとアウタロア38の一端部38aとの接合部46は、アウタロア38の他端部38bとインナパネル40の一端部40aとの接合部48に略平行となるように形成される。従って、接合部46及び48は、接合の位置は異なるが、接合方向が略同じであるため、例えば、溶接ロボット等の接合手段を用いた接合部46及び48の接合を行う際、接合作業を容易且つ迅速に行うことができる。この結果、リアスポイラ14を効率的に製造することができる。
【0033】
なお、アウタパネル39を3分割したことにより、アウタパネル39の剛性が低下することが懸念される。しかしながら、アウタセンタ36とアウタロア38との接合部46は、アウタパネル39とインナパネル40とによって囲繞される空間に突出するリブを形成しているため、このリブによってリアスポイラ14の十分な剛性が確保される。
【0034】
また、リアスポイラ14は、車体と同じ材料である板金によって形成されているため、リアスポイラ14を車体に固定した後、車体とともに塗装処理を行うことができる。この場合、車体及びリアスポイラ14は、同一の塗装材料を用いて着色することができるため、色合わせの処理が不要となり、車体の色に一致した所望の色のリアスポイラ14を容易且つ廉価に製造することができる。
【0035】
次に、リアウインドウパネル22に対して、ガラス16を取り付ける作業を行う。
【0036】
作業者は、接着剤32がリアウインドウパネル22に接触しないようにガラス16を傾斜させ、ガイドピン24の先端部をリアスポイラ14のアウタロア38に配設されたグロメット60の位置決め用溝部58に係合させる(
図2及び
図3の矢印A方向参照)。
【0037】
次いで、
図3の状態から、ガイドピン24の先端部を中心にして、ガラス16を矢印B方向に回転させることにより、孔部26a〜26dに、ガラス16のピン28a〜28dが係合するとともに、ガラス16の周囲に塗布されている接着剤32がリアウインドウパネル22に接着し、ガラス16がリアウインドウパネル22に固定される(
図4、
図5参照)。
【0038】
リアウインドウパネル22にガラス16を固定させた後、ガーニッシュ20の上部の突起部50をリアスポイラ14の接合部44に形成されている孔部52に係合させるとともに、下部のゴムパッキン54をガラス16に当接させることで、ストップランプ18が配設されたガーニッシュ20を取り付ける。
【0039】
この場合、アウタアッパ34及びアウタセンタ36間の接合部44と、アウタセンタ36及びアウタロア38間の接合部46とは、ガーニッシュ20によって覆われるため、外部から視認できない状態となる。また、ガラス16をリアウインドウパネル22に取り付けるためのガイドピン24も、ガーニッシュ20によって覆われる。従って、アウタアッパ34の車両後方端部とガラス16との間がガーニッシュ20によって覆われ、良好な外観意匠を得ることができる。
【0040】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において変更することが可能である。
【0041】
例えば、リアスポイラ14を構成するアウタアッパ34は、車両後方を下方向に大きく折曲させた形状としているが、アウタアッパ34を略直線形状とし、アウタアッパ34の車両後方端部に接合されるアウタセンタ36の車両後方端部である一端部36a側を上方向に折曲させ、アウタアッパ34の他端部34bに接合する形状とすることもできる。また、車体とリアスポイラ14とが同一の金属材料で形成されていれば、必ずしも同時に塗装を行う必要はなく、別行程であっても、同一の塗装材料を使用することにより、容易に色合わせを行うことができる。
【符号の説明】
【0042】
10…自動車
12…ルーフ
13…リアウインドウ
14…リアスポイラ
16…ガラス
16a、16b…面
18…ストップランプ
20…ガーニッシュ
22…リアウインドウパネル
24…ガイドピン
26a〜26d…孔部
28a〜28d…ピン
30…セラミックプリント
32…接着剤
34…アウタアッパ
34a、36a、38a、40a…一端部
34b、36b、38b、40b…他端部
36…アウタセンタ
38…アウタロア
39…アウタパネル
40…インナパネル
42、44、46、48…接合部
50…突起部
52…孔部
54…ゴムパッキン
56…回路ボックス
58…位置決め用溝部
60…グロメット